冷暖房装置と冷暖房パネル
【課題】本願発明の課題は、半導体ヒーター表面に発生する熱を効率よく伝搬して床面を所望温度まで上昇させるとともに、床面からの繰り返し荷重による半導体ヒーターの損傷や破断を防ぎ、かつ火災を起こす恐れがなく、そのうえ温度調節を可能とし、冷房機能も併せ持つ冷暖房装置及び冷暖房暖房パネルを提供することにある。
【解決手段】本願発明の冷暖房装置は、半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。
【解決手段】本願発明の冷暖房装置は、半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、冷暖房装置に関するものであり、より具体的には半導体ヒーターを用いた冷暖房装置と冷暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ヒーターは、PTC(Positive Temperature Coefficient)と呼ばれる正の温度特性をもつサーミスタを備えたものであり、通電すると温度上昇するが、それと同時に電流を通しにくくするため所定温度を超えて上昇することがないという特徴を有し、自己温度制御ヒーターとも呼ばれている。半導体ヒーターは、少ない消費電力で一定の温度を保つものであり、エネルギーの有効活用を重視する昨今では、最も注目されているヒーターのひとつである。
【0003】
従来、例えば床下に暖房パネルを敷設した床暖房を行う場合、暖房パネル内に設けた通水管に適温の温水を流通させることで暖気を与えるという手法を採ることが多かった。しかしながら、この従来手法では、水を温水にするための加熱設備や、水を循環させる圧力装置など設備に掛かる初期費用に加え、燃料などの運転費、あるいは維持費など多くの費用が掛かり、消費者にとっては比較的高価な暖房方式とされていた。
【0004】
そこで昨今では、パネル内に半導体ヒーターを備える暖房装置、特に暖房パネルが提案されるようになり、例えば特許文献1では半導体ヒーターを用いたパネルヒーターを提案している。この特許文献1のパネルヒーターは、従来の温水を流通させる通水管に代えて半導体ヒーターを用いるものであり、例えばフローリングの下に敷設して電源に接続するだけで利用できるため、初期費用の削減に加え運転費や維持費も縮小することができる。また、半導体ヒーターは自己温度制御機能を備えているので、必要以上に温度上昇することがなく床暖房には好適な暖房設備である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3156655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパネルヒーターを含め、従来の半導体ヒーターを備えた暖房装置は種々の問題を抱えていた。半導体ヒーターは、その表面では十分に高温となるものの、この表面温度を床面に伝搬する間に放熱されてしまい、床面では所望の温度とならないという問題が生じていた。この問題を解消すべく床面に接触するように半導体ヒーターを配置すると、今度は、半導体ヒーターの主な構成材であるポリマー強度が脆弱であることから、床下で繰り返し荷重を受けることにより半導体ヒーターが損傷し、あるいは圧壊するおそれがあるという問題が生じ、その上、半導体ヒーターが周辺の床材を集中的に加熱してしまうことから火災のおそれがあるという問題を生じることになる。
【0007】
半導体ヒーターの損傷や破断を防ぎ、あるいは火災を起こさないように、半導体ヒーターを金属管内に収容して床暖房設備に利用することも提案されているが、後に説明するようにパイプ内に半導体ヒーターを挿入しただけの単管形式では、半導体ヒーターから放出された熱が十分広く伝搬されず、その結果所望の暖房効果が得られないという問題を生じる。
【0008】
また、半導体ヒーターはその温度特性から一定の温度を保つことが可能であるが、一方で、例えばもう少し暖かくあるいはもう少し低温にしたいという利用者の要望に応じた温度調整が困難であるという一面も持っていた。
【0009】
さらに、従来の通水管に適温の温水を流通させることで暖気を与えるという暖房方式であれば、夏場は冷水を流通させることで冷房装置としても利用することができたが、特許文献1のパネルヒーターには冷却させる機能がないので冷房装置としては利用できず、別途冷房装置を設置する必要があった。
【0010】
その他、特許文献1のパネルヒーターは施工上の問題も抱えていた。本来、暖房パネルは現場での施工手間を簡略化させるためにパネル化されたものであるが、特許文献1のパネルヒーターは、必要数のブリッジ架体500を根太に順次セットし、その後に半導体ヒーター603を敷設するものであって、現場での作業簡略化が十分達成されていなかった。
【0011】
本願発明の課題は、半導体ヒーター表面に発生する熱を効率よく伝搬して床面を所望温度まで上昇させるとともに、床面からの繰り返し荷重による半導体ヒーターの損傷や破断を防ぎ、かつ火災を起こす恐れがなく、そのうえ温度調節を可能とし、冷房機能も併せ持つ冷暖房装置及び冷暖房暖房パネルを提供し、現場における設置作業が容易かつ短時間となる冷暖房パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の冷暖房装置は、半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。この場合、外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置された冷暖房装置とすることもできる。
【0013】
本願発明の冷暖房パネルは、半導体ヒーターを用いた冷暖房パネルにおいて、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、パネル内に、外部収容管が配置されるとともに、この外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。この場合、外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置された冷暖房パネルとすることもできる。
【0014】
本願発明の冷暖房パネルは、一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、 前記線状半導体ヒーターの一端には外部電源と接続可能な電源接続部が設けられ、前記線状半導体ヒーターの他端には終端部が設けられ、一の冷暖房パネルを単独で使用可能なものとすることもできる。また、一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、前記線状半導体ヒーターの一端には、外部電源と接続可能な電源接続部、又は他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部が設けられ、前記線状半導体ヒーターの他端には、他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部、又は終端部が設けられ、一の電源に対して複数の冷暖房パネルを接続配置して使用するものとすることもできる。
【0015】
本願発明の冷暖房パネルは、パネル表面にパネル内部側に凹陥する収容部が溝状に設けられ、この収容部に外部収容管が収容され、前記外部収容管を収容した収容部の表面側が、帯状の薄肉材で封鎖されたものとすることもできる。また、パネル表面に、遠赤外線塗布材が塗布されたものとすることもできるし、パネルが、発泡セラミック板であるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の冷暖房装置には次のような効果がある。
(1)半導体ヒーターを収容する外部収容管の隣に金属製の流通管を設置するので、半導体ヒーターから放出される熱が一旦外部収容管内で蓄熱されるとともに、流通管が効率よく熱を伝達する機能を果たすため、半導体ヒーターの熱が大きく失われることなく効率よく対象物の温度を上昇させることができる。
(2)流通管を設置するので、これに適宜所定温度の液体を流通することによって、暖房温度を調整することができる。
(3)また流通管を設置するので、夏季は流通管に冷水を流通することによって冷房設備としても利用できる。
(4)半導体ヒーターが外部収容管で保護されているので、不測の荷重が作用しても半導体ヒーターが損傷等するおそれがないし、火災になる心配がない。
【0017】
本願発明の冷暖房パネルには上記(1)〜(4)に加え、次のような効果もある。
(5)予めパネル内に半導体ヒーターを内挿する外部収容管等を収納しておくと、現場では暖房パネルの敷設作業だけで済むので、現場における設置作業が容易かつ短時間となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1における暖房パネルを示す平面図。
【図2】(a)は幅が短い暖房パネルを示す平面図。(b)は正方形の暖房パネルを示す平面図。
【図3】(a)はヒーター管と通水管を隣接配置した斜視図。(b)はヒーター管と通水管を断熱材内に埋設した場合の暖房パネルの断面図。(c)はその要部詳細断面図。
【図4】(a)はヒーター管と通水管を収容部内に収めた場合の暖房パネルの断面図。(b)はその要部詳細断面図。
【図5】(a)はヒーター管の一方側に通水管を1本だけ隣接配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。(b)はヒーター管の一方側に通水管を1本配置して他方側に2本配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。(c)は複数のヒーター管と通水管を交互に配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。
【図6】(a)はパネルを発泡セラミック板とした場合の暖房パネルの断面図。(b)はその要部詳細断面図。
【図7】パネル内にある半導体ヒーターのうち曲折部で外部収容管を省略して半導体ヒーターのみを連続させた場合の暖房パネルを示す平面図。
【図8】(a)は一条の半導体ヒーターの両端ともに半導体ヒーター接続部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。(b)は一条の半導体ヒーターの一端に半導体ヒーター接続部を、他端に電源接続部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。(c)は一条の半導体ヒーターの一端に半導体ヒーター接続部を、他端に終端部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。
【図9】複数の暖房パネルを組み合わせて配置した一例を示す平面図。
【図10】複数の暖房パネルを組み合わせて配置した他例を示す平面図。
【図11】(a)は、ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証実験における第一のケースで、中空のアルミ管を隣接配置させることなく、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿した場合を示す説明図。(b)は、ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証実験における第二のケースで、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿し、その両側に中空のアルミ管を隣接配置させた場合を示す説明図。
【図12】実施形態2におけるヒーター管の内部を示す斜視図。
【図13】(a)は実施形態2におけるヒーター管の断面図。(b)は熱伝導材が充填された場合の本実施形態2におけるヒーター管の断面図。(c)は保持具が取り付けられた場合の実施形態2におけるヒーター管の断面図。
【図14】実施形態2における暖房パネルを示す平面図。
【図15】(a)はヒーター管と通水管を収容部内に収めた場合の実施形態2における暖房パネルの断面図。(b)はその腰部詳細断面図。
【図16】(a)は1本の半導体ヒーターが外部収容管に直接収容されたケースを示す断面図。(b)は1本の半導体ヒーターが内部収容管に挿入され、これが外部収容周管に収容されたケースを示す断面図。(c)は1本の半導体ヒーターが内部収容管に挿入され、これが外部収容周管に収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(d)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が2本収容されたケースを示す断面図。(e)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が2本収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(f)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が3本収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
本願発明の冷暖房装置の第1の実施形態について、冷暖房パネルを例として説明する。図1は、冷暖房パネル1を示す平面図である。冷暖房パネル1はパネル2の内部に半導体ヒーター3を配置したものであり、例えばフローリングなどの床材の下に配置されて、対象物である床面を暖める冷暖房装置である。
【0020】
図1に示すように半導体ヒーター3は、パネル2全体を暖めることができるように、パネル2内を往復するように蛇行配置されている。図1のパネル2は、長手方向の寸法(以下、「長さ」という。)が1700mmで、短手方向(以下、「幅」という。)が850mmのサイズであり、この場合長手方向に4列並ぶように(つまり2往復するように)配置することができる。もちろん、同じサイズのパネル2であっても、これより密(例えば6列、3往復)に配置することもできるし、これより疎(例えば2列、1往復)に配置することもできる。また、パネル2のサイズや形状も図1のものに限らず、長さ900mm×幅300mmのパネル2や、図2(a)に示すように幅が短いパネル2、図2(b)に示すように幅と長さが略等しい正方形のパネル2など、種々のサイズや形状のものをパネル2として選択することが可能で、いずれの場合も、パネル2全体を暖めることができるように半導体ヒーター3を配置することが望ましい。
【0021】
半導体ヒーター3は、断面が円形であり、断面の径に対してその長さが極端に長い、いわゆる線状(ロープ状、ひも状)の形状となっている。また半導体ヒーター3は、導線と発熱体から構成されており、導線には銅線をはじめ、銀線、金線、アルミ線、白金線、合金線、各種メッキ線など、導電性に富む材質のものが用いられる。
【0022】
発熱体は、PTC特性を備えたポリマーと導電性のあるカーボンから構成されており、このポリマーには絶縁性の架橋性ポリマーが通常用いられ、導電性カーボンにはカーボンブラックが用いられている。ポリマーと導電性カーボンからなる発熱体と導線の外周を被覆層で覆い、半導体ヒーター3は形成されている。この被覆層の材質としては、テフロン(登録商標)及びゴムの合成材、テフロン(登録商標)及びシリコンの合成材、その他シリコン材が利用されている。なお、半導体ヒーター3は、市販されているものを用いることができる。
【0023】
半導体ヒーター3の導線に通電すると、導電性カーボンを通じて発熱体内にも電気が流れ、このときPTC特性を備えたポリマーは温度上昇を始める。ポリマーは、温度上昇とともに膨張を始め導電性カーボンの通電面積を圧迫していき、最終的には導電性カーボンは通電できない状態となり、これ以上ポリマーは温度上昇しなくなる。ポリマーの温度が下降すると、ポリマーが収縮し導電性カーボンの通電面積が回復されるため、再びポリマーは温度上昇する。このように、半導体ヒーター3は特別な制御を必要とせず、一定の温度を保ち続けることができるという特性を備え、自己温度制御ヒーターと呼ばれる所以でもある。
【0024】
この維持される一定温度、換言すれば半導体ヒーター3の最高到達温度は、半導体ヒーター3の規格によって定められ、例えば市販されている半導体ヒーター3のうち20W/mのものは55℃、30W/mでは70℃、40W/mでは90℃、50W/mでは130℃である。
【0025】
パネル2は、その外形を構成する筺体2aと天板2b、筺体2a内部を構成する断熱材2cで形成されている。筺体2aは上面が開放された中空箱型の形状であり、半導体ヒーター3からの熱を放出しないように断熱材で形成されることが望ましい。一方、天板2bは暖房対象(例えば床面)に最も近づく面であり、効率的に半導体ヒーター3からの熱を伝達するために熱伝導率の高い材質を使うことが好ましく、たとえばアルミ板とするのが好適である。さらに、天板2bの表面に、遠赤外線塗布材(例えば遠赤外線放射パウダー)を塗布すると、より暖房効果が高まるため好適である。
【0026】
図3(a)の斜視図や図3(b)の断面図に示すように、パネル2内にはヒーター管4と通水管5が並べて配置されている。このヒーター管4は、図3(c)の詳細図に示すように外部収容管6の中に半導体ヒーター3が内挿されたもので、通水管5は内部に水などの液体を流通(通水)させることができるように中空となっている。
【0027】
半導体ヒーター3を内挿する外部収容管6は、金属製とするなど熱伝導率の高い材質を使うことが好ましく、たとえばアルミ製の管が好適である。外部収容管6は半導体ヒーター3を収容できる内空面積が必要であり、例えば半導体ヒーター3の外径が8mmの場合、内部収容管12の内径は10mm程度が必要である。図3(c)では、外部収容管6に1本の半導体ヒーター3を挿入しているが、これに限らず内径の大きい外部収容管6の中に2本以上の半導体ヒーター3を挿入することもできる。
【0028】
外部収容管6内に半導体ヒーター3を内挿したヒーター管4に、通水管5を隣接して配置すると、後に説明するようにヒーター管4から冷暖房パネル1表面(天板2b側)への熱の伝搬効率が飛躍的に向上する。また、通水管5を熱伝導率の高い金属製、特にアルミ製の管とすると、ヒーター管4からの熱の伝搬効率の向上がより顕著となり好適である。また、この通水管5は中空であって、水などの液体を流通(通水)させることができるため、暖房時には温水を通水して冷暖房パネル1の暖房補助として機能することも可能であり、さらに夏季など冷房を必要とする場合には、通水管5内に冷水を循環させることによって冷暖房パネル1を冷房設備として利用することもできる。なお、通水管5内には液体に限らず低温(又は高温)のガスを送りこむこともできる。
【0029】
一例として、冷暖房パネル1を暖房装置として利用する場合はヒーター管4内の半導体ヒーター3によって加温しつつ、所望温度の水を通水管5に流通させることで半導体ヒーター3の最高到達温度をさらに上昇又は下降させて温度調整を行い、冷暖房パネル1を冷房装置として利用する場合には半導体ヒーター3に通電せず、通水管5に低温の水を流通させて冷気を与えるものとする。この場合、通水管5に液体を流通させる手段はポンプ等従来からの圧送技術を用いることが可能で、流通させる液体の温度調節も従来の技術を用いることができる。もちろん、暖房装置として利用する場合は、通水管5に液体を流通させずにヒーター管4内の半導体ヒーター3のみによって加温させるものとすることもできる。
【0030】
図3(b)に示すように、ヒーター管4と通水管5を天板2b付近に配置して断熱材2c内に埋設することもできるが、図4(a)に示すように天板2bに設けられた溝状の収容部7内に収めることもできる。この収容部7は、パネル2の表面側から内部側へ天板2bを凹陥させて形成されるものであり、図1に示すように半導体ヒーター3がパネル2内を往復するように蛇行配置される場合、収容部7もこれに合わせて蛇行して形成される。また、ヒーター管4と通水管5を収容部7内に収める場合、図4(b)に示すように収容部7の開放部(パネル2の表面側)をシール材8で封鎖する。このシール材8は、平面視では帯状、断面視では薄肉状であり、熱伝導率の高い材質、例えばアルミ製のテープとすると好適である。
【0031】
図3(b)や図4(a)では、ヒーター管4の両脇に通水管5を1本ずつ隣接配置しているが、これに限らずヒーター管4の一方側に通水管5を1本だけ隣接配置したり(図5(a))、ヒーター管4の一方側に通水管5を1本配置して他方側に2本配置したり(図5(b))、複数のヒーター管4と通水管5を交互に配置する(図5(c))など、種々の配置を選択することができる。なおここでいう隣接配置とは、ヒーター管4と通水管5が接触して並べて配置される場合や、ヒーター管4と通水管5の間に若干の隙間を設けて並べて配置される場合を含む概念である。
【0032】
筺体2aの内部は、空洞のままとすることもできるが、半導体ヒーター3からの熱が必要以上に失われないよう断熱材2cで充填することが望ましい。この断熱材2cには、硬質ウレタンを利用するなど、従来から用いられている材料を利用することができる。
【0033】
また、パネル2を構成する筺体2aと断熱材2cの組み合わせに代えて、パネル2を発泡セラミック板とすることができる。この発泡セラミック板は、多数の連続貫通気孔が設けられたいわゆる多孔質セラミック板であり、有機の発泡剤を混入したセラミックを焼成して製造するもので、軽量であって不燃であるという特長を有する。また、内部に多数の連続貫通気孔が設けられているため断熱保温性に優れており、発泡セラミック板をパネル2として利用すると、半導体ヒーター3からの熱が効率的に床面などの暖房対象物に伝達される。なお、この場合でもアルミ板などの天板2bを設置して表面に遠赤外線塗布材を塗布することもできるし、発泡セラミック板に溝状の収容部7を設けてこの中にヒーター管4と通水管5を配置してシール材8で封鎖することもできる。
【0034】
冷暖房パネル1の製作は、筺体2a内の所定位置にヒーター管4と通水管5を配置し、筺体2a内の空隙部に断熱材2cを充填し、筺体2aの上面に天板2bを固定して行われる。なお、筺体2aの上面に天板2bを固定した後に、筺体2a(又は天板2b)に設けられた充填口から断熱材2cを充填して冷暖房パネル1を製作してもよい。
【0035】
前記のとおり、半導体ヒーター3はパネル2内を往復するように蛇行配置されるため、半導体ヒーター3を内挿する外部収容管6もこれにあわせて蛇行配置される。図1に示すように、パネル2内にある半導体ヒーター3全長にわたって外部収容管6を配置することもできるが、図7に示すように曲折部では外部収容管6を省略して半導体ヒーター3のみを連続させることもできる。外部収容管6の曲折部加工は半導体ヒーター3に比べて手間がかかるため、曲折部で外部収容管6を省略すると、部分的に暖房効果は劣るもののコストの軽減には寄与することができる。
【0036】
図1に示すように、一条の半導体ヒーター3をパネル2内に蛇行配置させて、半導体ヒーターの一端(図では右橋)に電源接続部9を設け、他端(図では左側)に終端部10を設けることができる。電源接続部9が設けられた一端では、半導体ヒーター3がパネル2から外部へ突出しており、終端部10が設けられた他端では半導体ヒーター3はパネル2内に収められている。
【0037】
また、図8(a)〜(c)に示すように、パネル2内に蛇行配置された一条の半導体ヒーター3の両端ともに、パネル2の端部(端面)まで伸ばし、これら両端にそれぞれ半導体ヒーター接続部11を設けた冷暖房パネル1aとすることもできる。この半導体ヒーター接続部11は相互に接続可能で、例えば第一の冷暖房パネル1の半導体ヒーター接続部11と、第二の冷暖房パネル1の半導体ヒーター接続部11を接続すると、第一の冷暖房パネル1の半導体ヒーター3と、第二の冷暖房パネル1の半導体ヒーター3は電気的に接続され通電が可能となる。この電気的な接続には、従来から用いられている結線技術を利用することができる。なおこの場合、半導体ヒーター3の一端を半導体ヒーター接続部11に代えて電源接続部9あるいは終端部10を設けることとし、一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が電源接続部9の冷暖房パネル1b、あるいは一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が終端部10の冷暖房パネル1cとすることもできる。
【0038】
図9は、冷暖房パネル1a、冷暖房パネル1b、及び冷暖房パネル1cを組み合わせて配置した例を示す平面図である。比較的広い面積に配置する場合には、複数の冷暖房パネル1を組み合わせて配置する場合があり、冷暖房パネル1a、冷暖房パネル1b、及び冷暖房パネル1cを組み合わせて配置すれば、一の電源に接続するだけで複数の冷暖房パネル1に対して通電することができるので、消費電力量が軽減できてコストの軽減とともに環境保全への寄与となって好適である。
【0039】
複数の冷暖房パネル1の組み合わせる場合は、図9に限らず、図10のように隣接する2枚の冷暖房パネル1(図では上下に隣接する冷暖房パネル1)を電気的に接続するなど、配置する床面積や形状に合わせて種々選択することができる。
【0040】
(ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証)
本願発明の発明者は、半導体ヒーター3を金属製管内に収容し中空の金属管(アルミ管)を隣接させると熱伝搬効率が向上するという仮説を立て、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容したケース(ケース1)と、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容し通水管5を隣接配置したケース(ケース2)について比較実験を行った。その結果、冷暖房パネル1表面(天板2a)における温度上昇範囲をみると、ケース2の方がケース1よりも広い範囲まで温度上昇していることが判明し、中空のアルミ管を隣接配置すると熱伝搬効果が飛躍的に高まるという事実を突き止めた。以下、その実証実験について図11(a)(b)を用いて説明する。
【0041】
実験には以下の材料を用いた。
・半導体ヒーター3:40W/m、外径8mm、最高到達温度90℃(表面温度)
・外部収容管6:アルミ製、内径は10mm(外径12mm)
・天板2a:ガルバニウム製
【0042】
図11(a)は、中空のアルミ管を隣接配置させることなく、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿したケースである。これをケース1とする。
図11(b)は、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿し、その両側に中空のアルミ管を隣接配置させたケースである。これをケース2とする。
【0043】
常温の実験室内で、上記2ケースについて半導体ヒーター3に100Vを印加した。通電後、半導体ヒーター3の表面温度は90℃になるが、これが如何に天板2aに熱伝播されるかを調べるため、天板2aの表面温度の2か所で温度計測を実施した。第一の計測箇所は図11(a)(b)のP1で示す半導体ヒーター3の直上で、第二の計測箇所は図11(a)(b)のP2で示す半導体ヒーター3の直上からL=15cm離れた位置である。以下、表1に結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
ケース1の結果をみると、天板2a表面におけるP1地点での温度が50℃程度に達したにもかかわらず、そこから15cm離れた位置では22.8℃まで温度が低下し、大きく熱が失われている。
【0046】
一方、ケース2の結果をみると、P1地点では50℃程度でケース1と相違ないが、P2地点では、中空のアルミ管を両側に隣接配置しただけであるにもかかわらず、ケース1の22.8℃に比べ10℃以上も高い33.3℃であった。
【0047】
以上、中空のアルミ管を隣接配置すると熱伝搬効果が高まるという結果が得られ、すなわち暖房設備としての機能を向上させるためには、半導体ヒーター3が内挿された外部収容管6に中空の金属製管(通水管5)を隣接配置することが重要な技術要素であることが証明された。
【0048】
以上、冷暖房装置の実施形態について冷暖房パネル1を例として説明したが、パネル形式に限らず、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容したヒーター管4と、通水管5を隣接配置した冷暖房装置として利用することもできる。つまりこの場合には、パネル2は必要としない。
【0049】
例えば、フローリングの下にヒーター管4と通水管5を隣接配置し床の冷暖房装置として利用したり、道路の舗装面の下にヒーター管4と通水管5を隣接配置してロードヒーティング用の冷暖房装置としたり、積雪する場所(例えば屋根)にヒーター管4と通水管5を隣接配置して融雪用の冷暖房装置とすることができる。またヒーター管4と通水管5を隣接配置した冷暖房装置は、野菜や花卉の栽培、あるいは苗床などのためのハウス温室、果樹園、植物園などの温度調整用として利用したり、牛舎や豚舎や鶏舎といった家畜の飼育施設における温度調整用として利用したり、養魚場やプールや温浴施設などの温度調整用として利用することもできる。なお、本願発明の冷暖房装置でコンクリート構造物を暖めることが、この構造物の構築前にあらかじめわかっている場合には、竹炭粉末、遠赤外線放射天然石粉末、トルマリン粉末といった熱伝搬に効果があると知られるものを混入したコンクリートを打設することも有効である。
【0050】
以上、冷暖房の対象となる場所に直接、ヒーター管4と通水管5を隣接配置することによって、本願発明の冷暖房装置が設けられる。この場合、冷暖房パネル1のような設置における容易さはないものの、様々な場所に設置することが可能となり、すなわち利用範囲が広がるという利点がある。
【0051】
(実施形態2)
本願発明の冷暖房装置の第2の実施形態について、冷暖房パネルを例として説明する。なお本実施形態は、ヒーター管を2重管形式とした場合を説明するためのものであって、本実施形態に記さない基本的構成や機能などは実施形態1と共通する。また、実施形態1で記載した一部の技術と本実施形態の技術を組み合わせたものも、本願発明の技術範囲に属する。
【0052】
図12に示すように、本実施形態のヒーター管4は、半導体ヒーター3と、これを内挿する内部収容管12と、さらに複数の内部収容管12を収容する外部収容管6で構成される。この内部収容管12は熱伝導率の高い材質のものがより好ましく、たとえばアルミ製などの金属製の管が好適である。内部収容管12は半導体ヒーター3を収容できる内空面積が必要であり、例えば半導体ヒーター3の外径が8mmの場合、内部収容管12の内径は10mm程度が必要である。図12では、内部収容管12に1本の半導体ヒーター3を挿入しているが、これに限らず内径の大きい内部収容管12の中に複数の半導体ヒーター3を挿入することもできる。
【0053】
半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12は、さらに金属製の外部収容管6の内部に収容されている。この場合、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本以上(図12では3本)外部収容管6内に収容すると、後に説明するように外部収容管6内での蓄熱効果が飛躍的に向上する。この外部収容管6には、汎用的な一般構造用炭素鋼管(通称、単管パイプ)の利用が可能で、汎用品を使うことで製品コストを抑えることができる。一般的な単管パイプの内径は43.8mm(外径48.6mm)であり、アルミ製の内部収容管12(外径12mm)3本を十分収容することができる。なお、外部収容管6として熱伝導率の高い例えばアルミ製の管を用いると、製品のコストは上がるものの熱伝搬効率が向上し、より性能の高いヒーター管4とすることもできる。
【0054】
図13(a)に示すように、複数の内部収容管12を収容しても、外部収容管6の内部にはなお空隙が残る。この空隙部分には、図13(b)に示すように熱伝導材13を充填(中詰め)することができる。これにより半導体ヒーター3からの放熱は、熱伝導材13を介してより効率的に外部収容管6の外周へ伝達されることが期待できる。この熱伝導材13は、熱伝導率が高く、かつ外部収容管6内の空隙部の複雑な形状にも追随して変形しうるものが適しており、一例としてアルミ不織布が挙げられる。その他、鉄鋼スラグや、やや高価ではあるがアルミ箔なども熱伝導材13として用いることができる。
【0055】
熱伝導材13は、外部収容管6内部の空隙部に限らず、内部収容管12内に半導体ヒーター3を挿入した後に残る空隙部分に充填(中詰め)することもできる。特に、半導体ヒーター3の外径に比して内部収容管12の内径が比較的大きい場合には有効である。
【0056】
外部収容管6内部には複数の内部収容管12を収容するため、内部収容管12の本数分だけ内部収容管12の挿入作業が生じることとなる。とくに外部収容管6の管長が比較的長いと、この挿入作業を繰り返し行うことは手間や時間がかかり、ひいては製品コストを引き上げる一因となる。あるいは先に挿入した内部収容管12が撓んだり、折曲がったり、種々変形することによって、後から挿入する内部収容管12が入りにくいという問題もある。このような場合、図13(c)に示すように内部収容管12に保持具14を取り付けることができる。保持具14で複数(図では3本)の内部収容管12を連結することによって、内部収容管12同士の間隔を維持し(いわゆるスペーサーの機能)、しかも複数の内部収容管12を束ねた状態にすることができるので、内部収容管12の挿入作業も1回で完了し、後続の内部収容管12が挿入し難いといった煩わしさも解消される。
【0057】
この保持具14は、内部収容管12の軸方向に対して間隔をあけて取り付け、樹脂製や金属製などとすることができる。内部収容管12への取り付けは、保持具14が金属製の場合は溶接により行い、樹脂製の場合は接着により行い、あるいは取り付け部を環状にして内部収容管12の周囲を掴むように把持する構造としてもよい。保持具14を内部収容管12へ取り付けるにあたっては、その他の従来技術を用いても構わない。前記のとおり、保持具14は内部収容管12を外部収容管6内に挿入する前に取り付けることが望ましいが、内部収容管12を挿入した後に手や治具が届く範囲で保持具14を取り付けてもよい。
【0058】
図14は、本実施形態の冷暖房パネル1を示す平面図である。図14に示すように、実施形態1と同様、ヒーター管4は、パネル2全体を暖めることができるように、パネル2内を往復するように蛇行配置されている。また、ヒーター管4の両脇には通水管5が1本ずつ隣接配置されている。なお、ヒーター管4と通水管5の配置の組み合わせは、実施形態1で記載したように、図5(a)〜(c)など種々の組み合わせとすることができる。
【0059】
図14では、半導体ヒーターの一端(図では右橋)に電源接続部9を設け、他端(図では左側)に終端部10を設けた独立使用可能な冷暖房パネル1としているが、半導体ヒーター3の両端を半導体ヒーター接続部11である冷暖房パネル1aとしたり、一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が電源接続部9である冷暖房パネル1bとしたり、あるいは一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が終端部10である冷暖房パネル1とするなど、組合せ使用型の冷暖房パネル1cとすることもできる。
【0060】
また実施形態1と同様、ヒーター管4を天板2b付近に配置して断熱材2c内に埋設することもできるが、図15(a)に示すように天板2bに設けられた溝状の収容部7内に収めることもできる。ヒーター管4と通水管5を収容部7内に収める場合には、図15(b)に示すように収容部7の開放部(パネル2の表面側)をシール材8で封鎖する。
【0061】
(本実施形態のヒーター管の検証)
本願発明の発明者は、半導体ヒーター3を金属製管内に収容すると蓄熱効果が期待できるという仮説を立て、半導体ヒーター3と金属製の管を種々組み合わせて実験を重ねた。その結果、二重管形式で半導体ヒーター3を収容すると蓄熱効果が発揮され、さらに外部収容管6内に半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本以上収容すると蓄熱効果が飛躍的に高まり、外部収容管6の表面温度上昇が他例に比べ顕著であるという事実を突き止めた。以下、その実証実験について図16(a)〜(f)を用いて説明する。
【0062】
実験には以下の材料を用いた。
・半導体ヒーター3:40W/m、外径8mm、最高到達温度90℃(表面温度)
・内部収容管12:アルミ製、内径は10mm(外径12mm)
・外部収容管6:一般構造用炭素鋼管、内径は43.8mm(外径48.6mm)
【0063】
図16(a)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入することなく、直接外部収容管6に収容したケースである。これをケース1とする。
図16(b)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入し、これを外部収容管6に収容したケースである。これをケース2とする。
図16(c)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入し、これを外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース3とする。
図16(d)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本、外部収容管6に収容したケースである。これをケース4とする。
図16(e)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本、外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース5とする。
図16(f)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を3本、外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース6とする。
【0064】
常温の実験室内で、上記6ケースそれぞれについて半導体ヒーター3に100Vを印加した。通電後、半導体ヒーター3の表面温度は90℃になるが、これが如何に熱伝播されるかを調べるため、外部収容管6内部の空隙部分と外部収容管6の表面で温度を計測した。外部収容管6内部の空隙部分を温度計測することで、蓄熱効果の優劣も測ることができる。なお、温度計測はいずれも通電後約50分後である。以下、表2に結果を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
ケース1の結果をみると、半導体ヒーター3の表面温度は90℃に達したにもかかわらず、外部収容管6の表面では45.5℃まで大きく温度が下がっている。これは、半導体ヒーター3から放出された熱が外部収容管6の表面に達するまでに、外部収容管6の内部で大きく失われたものと考えられる。
【0067】
一方、ケース2の結果をみると、半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入しただけであるにもかかわらず、外部収容管6の表面温度がケース1の45.5℃よりも52.3℃と7℃ほど上昇している。特に注目すべきは、外部収容管6の内部が78.6℃(ケース1)から92.4℃(ケース2)と著しく上昇している事実である。これは、半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入しさらに外部収容管6で覆った、いわゆる二重管形式にすると蓄熱効果が高まることを示している。
【0068】
ケース4およびケース5は、2本の内部収容管12を外部収容管6に収容したケースである。これをみると、外部収容管6の内部、表面ともに、ケース2や3に比べ飛躍的に温度が上昇していることがわかる。これは、ケース2におけるケース1からの温度上昇(外部収容管6内部で78.6℃→92.4℃)と比較すると、ケース4におけるケース2からの温度上昇(外部収容管6内部で92.4℃→120.7℃)が極めて顕著であることがわかる。
【0069】
以上の結果から、外部収容管6の中に、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本収容すると飛躍的に蓄熱効果が上がることがわかる。なお、ケース4(内部収容管12を2本)とケース6(内部収容管12を3本)とを比較しても、外部収容管6内部の温度において大きな変化はみられなかった。言い換えると、外部収容管6に収容される内部収容管12の本数が多いほど蓄熱効果が上がるわけではなく、内部収容管12の本数を1本から2本に増加させたときにはじめて劇的に効果が現れる、ということを証明するものである。すなわち蓄熱効果を発揮するためには、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を外部収容管6に収容する二重管形式であって、外部収容管6の中には複数の内部収容管12を収容する、ということが重要な技術要素であることが証明された。
【0070】
なお、ケース4(アルミ不織布なし)とケース5(アルミ不織布あり)を比較しても、外部収容管6の表面温度において大きな変化はみられなかった。熱導電性の高いアルミ不織布を充填したほうが外部収容管6の表面に熱を伝達しやすいはずであるが、アルミ不織布を充填しないケース4と結果に大差がないということは、ケース4の蓄熱効果がアルミ不織布による熱伝導効果と同等であることを証明するものである。
【0071】
以上のように、ヒーター管4を2重管形式とすると単管形式に比べ著しく熱伝導効果が向上する。この場合、実施形態1に比べるとヒーター管4の製造手間がかかり、また材料費も上がるが、暖房性能は向上する。ヒーター管4を単管形式とするか、あるいは2重管形式とするかは、利用者の条件に応じて適宜選択することができる。
【0072】
以上、本実施形態でも、冷暖房装置の実施形態について冷暖房パネル1を例として説明したが、パネル形式に限らず、2重管形式としたヒーター管4と、通水管5を隣接配置した冷暖房装置として利用することもできることは、実施機形態1で述べたとおりである。
【0073】
(使用例)
本願発明の冷暖房装置及び冷暖房パネルを使用する場合の一例を示す。なお、ここでは床下に冷暖房装置又は冷暖房パネルが設置された例である。
【0074】
(冬季)
本願発明の冷暖房装置又は冷暖房パネルにおける半導体ヒーター3の電源接続部9をコンセントに接続する。さらにスイッチをONに切り替えて半導体ヒーター3に通電し、半導体ヒーター3から熱が放射されることで、冷暖房装置又は冷暖房パネルが床面を暖める。床面は所定の温度になるとその温度を維持し続けるが、さらに温度を高めたい場合は通水管5に温水を流通させて床面温度を上げる。床面温度を低下させたい場合は、低温の水を流通させて床面温度を下げる。
【0075】
(夏季)
本願発明の冷暖房装置又は冷暖房パネルにおける半導体ヒーター3の電源接続部9をコンセントから外すか、スイッチをOFFに切り替えて半導体ヒーター3に通電させない。この状態で、通水管5に冷水を流通させて床面を冷却する。床面が冷えすぎた場合は、冷水の流通を止めるか、やや高温の水を流通させて温度調整を図る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本願発明の冷暖房装置と冷暖房パネルは、家庭用の床冷暖房・壁冷暖房設備として、マンション・ビル・学校・病院・事務所・作業場・屋内遊技場・工場・家畜舎・等々の「床冷暖房・壁冷暖房設備」としての利用をはじめ、融雪装置としての利用のほか、ロードヒーティング用の設備、温室暖房設備、乾燥機としての設備など、様々なケースで応用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 冷暖房パネル
1a 半導体ヒーター両端部が半導体ヒーター接続部である冷暖房パネル
1b 半導体ヒーター端部が半導体ヒーター接続部と電源接続部である冷暖房パネル
1c 半導体ヒーター端部が半導体ヒーター接続部と終端部である冷暖房パネル
2 パネル
2a 筺体
2b 天板
2c 断熱材
3 半導体ヒーター
4 ヒーター管
5 通水管
6 外部収容管
7 収容部
8 シール材
9 電源接続部
10 終端部
11 半導体ヒーター接続部
12 内部収容管
13 熱伝導材
14 保持具
【技術分野】
【0001】
本願発明は、冷暖房装置に関するものであり、より具体的には半導体ヒーターを用いた冷暖房装置と冷暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ヒーターは、PTC(Positive Temperature Coefficient)と呼ばれる正の温度特性をもつサーミスタを備えたものであり、通電すると温度上昇するが、それと同時に電流を通しにくくするため所定温度を超えて上昇することがないという特徴を有し、自己温度制御ヒーターとも呼ばれている。半導体ヒーターは、少ない消費電力で一定の温度を保つものであり、エネルギーの有効活用を重視する昨今では、最も注目されているヒーターのひとつである。
【0003】
従来、例えば床下に暖房パネルを敷設した床暖房を行う場合、暖房パネル内に設けた通水管に適温の温水を流通させることで暖気を与えるという手法を採ることが多かった。しかしながら、この従来手法では、水を温水にするための加熱設備や、水を循環させる圧力装置など設備に掛かる初期費用に加え、燃料などの運転費、あるいは維持費など多くの費用が掛かり、消費者にとっては比較的高価な暖房方式とされていた。
【0004】
そこで昨今では、パネル内に半導体ヒーターを備える暖房装置、特に暖房パネルが提案されるようになり、例えば特許文献1では半導体ヒーターを用いたパネルヒーターを提案している。この特許文献1のパネルヒーターは、従来の温水を流通させる通水管に代えて半導体ヒーターを用いるものであり、例えばフローリングの下に敷設して電源に接続するだけで利用できるため、初期費用の削減に加え運転費や維持費も縮小することができる。また、半導体ヒーターは自己温度制御機能を備えているので、必要以上に温度上昇することがなく床暖房には好適な暖房設備である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3156655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパネルヒーターを含め、従来の半導体ヒーターを備えた暖房装置は種々の問題を抱えていた。半導体ヒーターは、その表面では十分に高温となるものの、この表面温度を床面に伝搬する間に放熱されてしまい、床面では所望の温度とならないという問題が生じていた。この問題を解消すべく床面に接触するように半導体ヒーターを配置すると、今度は、半導体ヒーターの主な構成材であるポリマー強度が脆弱であることから、床下で繰り返し荷重を受けることにより半導体ヒーターが損傷し、あるいは圧壊するおそれがあるという問題が生じ、その上、半導体ヒーターが周辺の床材を集中的に加熱してしまうことから火災のおそれがあるという問題を生じることになる。
【0007】
半導体ヒーターの損傷や破断を防ぎ、あるいは火災を起こさないように、半導体ヒーターを金属管内に収容して床暖房設備に利用することも提案されているが、後に説明するようにパイプ内に半導体ヒーターを挿入しただけの単管形式では、半導体ヒーターから放出された熱が十分広く伝搬されず、その結果所望の暖房効果が得られないという問題を生じる。
【0008】
また、半導体ヒーターはその温度特性から一定の温度を保つことが可能であるが、一方で、例えばもう少し暖かくあるいはもう少し低温にしたいという利用者の要望に応じた温度調整が困難であるという一面も持っていた。
【0009】
さらに、従来の通水管に適温の温水を流通させることで暖気を与えるという暖房方式であれば、夏場は冷水を流通させることで冷房装置としても利用することができたが、特許文献1のパネルヒーターには冷却させる機能がないので冷房装置としては利用できず、別途冷房装置を設置する必要があった。
【0010】
その他、特許文献1のパネルヒーターは施工上の問題も抱えていた。本来、暖房パネルは現場での施工手間を簡略化させるためにパネル化されたものであるが、特許文献1のパネルヒーターは、必要数のブリッジ架体500を根太に順次セットし、その後に半導体ヒーター603を敷設するものであって、現場での作業簡略化が十分達成されていなかった。
【0011】
本願発明の課題は、半導体ヒーター表面に発生する熱を効率よく伝搬して床面を所望温度まで上昇させるとともに、床面からの繰り返し荷重による半導体ヒーターの損傷や破断を防ぎ、かつ火災を起こす恐れがなく、そのうえ温度調節を可能とし、冷房機能も併せ持つ冷暖房装置及び冷暖房暖房パネルを提供し、現場における設置作業が容易かつ短時間となる冷暖房パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の冷暖房装置は、半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。この場合、外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置された冷暖房装置とすることもできる。
【0013】
本願発明の冷暖房パネルは、半導体ヒーターを用いた冷暖房パネルにおいて、線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、パネル内に、外部収容管が配置されるとともに、この外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、前記流通管内に液体を流通させることが可能なものである。この場合、外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置された冷暖房パネルとすることもできる。
【0014】
本願発明の冷暖房パネルは、一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、 前記線状半導体ヒーターの一端には外部電源と接続可能な電源接続部が設けられ、前記線状半導体ヒーターの他端には終端部が設けられ、一の冷暖房パネルを単独で使用可能なものとすることもできる。また、一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、前記線状半導体ヒーターの一端には、外部電源と接続可能な電源接続部、又は他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部が設けられ、前記線状半導体ヒーターの他端には、他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部、又は終端部が設けられ、一の電源に対して複数の冷暖房パネルを接続配置して使用するものとすることもできる。
【0015】
本願発明の冷暖房パネルは、パネル表面にパネル内部側に凹陥する収容部が溝状に設けられ、この収容部に外部収容管が収容され、前記外部収容管を収容した収容部の表面側が、帯状の薄肉材で封鎖されたものとすることもできる。また、パネル表面に、遠赤外線塗布材が塗布されたものとすることもできるし、パネルが、発泡セラミック板であるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の冷暖房装置には次のような効果がある。
(1)半導体ヒーターを収容する外部収容管の隣に金属製の流通管を設置するので、半導体ヒーターから放出される熱が一旦外部収容管内で蓄熱されるとともに、流通管が効率よく熱を伝達する機能を果たすため、半導体ヒーターの熱が大きく失われることなく効率よく対象物の温度を上昇させることができる。
(2)流通管を設置するので、これに適宜所定温度の液体を流通することによって、暖房温度を調整することができる。
(3)また流通管を設置するので、夏季は流通管に冷水を流通することによって冷房設備としても利用できる。
(4)半導体ヒーターが外部収容管で保護されているので、不測の荷重が作用しても半導体ヒーターが損傷等するおそれがないし、火災になる心配がない。
【0017】
本願発明の冷暖房パネルには上記(1)〜(4)に加え、次のような効果もある。
(5)予めパネル内に半導体ヒーターを内挿する外部収容管等を収納しておくと、現場では暖房パネルの敷設作業だけで済むので、現場における設置作業が容易かつ短時間となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1における暖房パネルを示す平面図。
【図2】(a)は幅が短い暖房パネルを示す平面図。(b)は正方形の暖房パネルを示す平面図。
【図3】(a)はヒーター管と通水管を隣接配置した斜視図。(b)はヒーター管と通水管を断熱材内に埋設した場合の暖房パネルの断面図。(c)はその要部詳細断面図。
【図4】(a)はヒーター管と通水管を収容部内に収めた場合の暖房パネルの断面図。(b)はその要部詳細断面図。
【図5】(a)はヒーター管の一方側に通水管を1本だけ隣接配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。(b)はヒーター管の一方側に通水管を1本配置して他方側に2本配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。(c)は複数のヒーター管と通水管を交互に配置した場合の暖房パネルの要部詳細断面図。
【図6】(a)はパネルを発泡セラミック板とした場合の暖房パネルの断面図。(b)はその要部詳細断面図。
【図7】パネル内にある半導体ヒーターのうち曲折部で外部収容管を省略して半導体ヒーターのみを連続させた場合の暖房パネルを示す平面図。
【図8】(a)は一条の半導体ヒーターの両端ともに半導体ヒーター接続部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。(b)は一条の半導体ヒーターの一端に半導体ヒーター接続部を、他端に電源接続部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。(c)は一条の半導体ヒーターの一端に半導体ヒーター接続部を、他端に終端部を設けた場合の暖房パネルを示す平面図。
【図9】複数の暖房パネルを組み合わせて配置した一例を示す平面図。
【図10】複数の暖房パネルを組み合わせて配置した他例を示す平面図。
【図11】(a)は、ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証実験における第一のケースで、中空のアルミ管を隣接配置させることなく、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿した場合を示す説明図。(b)は、ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証実験における第二のケースで、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿し、その両側に中空のアルミ管を隣接配置させた場合を示す説明図。
【図12】実施形態2におけるヒーター管の内部を示す斜視図。
【図13】(a)は実施形態2におけるヒーター管の断面図。(b)は熱伝導材が充填された場合の本実施形態2におけるヒーター管の断面図。(c)は保持具が取り付けられた場合の実施形態2におけるヒーター管の断面図。
【図14】実施形態2における暖房パネルを示す平面図。
【図15】(a)はヒーター管と通水管を収容部内に収めた場合の実施形態2における暖房パネルの断面図。(b)はその腰部詳細断面図。
【図16】(a)は1本の半導体ヒーターが外部収容管に直接収容されたケースを示す断面図。(b)は1本の半導体ヒーターが内部収容管に挿入され、これが外部収容周管に収容されたケースを示す断面図。(c)は1本の半導体ヒーターが内部収容管に挿入され、これが外部収容周管に収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(d)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が2本収容されたケースを示す断面図。(e)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が2本収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(f)は外部収容周管に、半導体ヒーターが内挿された内部収容管が3本収容され、さらに外部収容周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
本願発明の冷暖房装置の第1の実施形態について、冷暖房パネルを例として説明する。図1は、冷暖房パネル1を示す平面図である。冷暖房パネル1はパネル2の内部に半導体ヒーター3を配置したものであり、例えばフローリングなどの床材の下に配置されて、対象物である床面を暖める冷暖房装置である。
【0020】
図1に示すように半導体ヒーター3は、パネル2全体を暖めることができるように、パネル2内を往復するように蛇行配置されている。図1のパネル2は、長手方向の寸法(以下、「長さ」という。)が1700mmで、短手方向(以下、「幅」という。)が850mmのサイズであり、この場合長手方向に4列並ぶように(つまり2往復するように)配置することができる。もちろん、同じサイズのパネル2であっても、これより密(例えば6列、3往復)に配置することもできるし、これより疎(例えば2列、1往復)に配置することもできる。また、パネル2のサイズや形状も図1のものに限らず、長さ900mm×幅300mmのパネル2や、図2(a)に示すように幅が短いパネル2、図2(b)に示すように幅と長さが略等しい正方形のパネル2など、種々のサイズや形状のものをパネル2として選択することが可能で、いずれの場合も、パネル2全体を暖めることができるように半導体ヒーター3を配置することが望ましい。
【0021】
半導体ヒーター3は、断面が円形であり、断面の径に対してその長さが極端に長い、いわゆる線状(ロープ状、ひも状)の形状となっている。また半導体ヒーター3は、導線と発熱体から構成されており、導線には銅線をはじめ、銀線、金線、アルミ線、白金線、合金線、各種メッキ線など、導電性に富む材質のものが用いられる。
【0022】
発熱体は、PTC特性を備えたポリマーと導電性のあるカーボンから構成されており、このポリマーには絶縁性の架橋性ポリマーが通常用いられ、導電性カーボンにはカーボンブラックが用いられている。ポリマーと導電性カーボンからなる発熱体と導線の外周を被覆層で覆い、半導体ヒーター3は形成されている。この被覆層の材質としては、テフロン(登録商標)及びゴムの合成材、テフロン(登録商標)及びシリコンの合成材、その他シリコン材が利用されている。なお、半導体ヒーター3は、市販されているものを用いることができる。
【0023】
半導体ヒーター3の導線に通電すると、導電性カーボンを通じて発熱体内にも電気が流れ、このときPTC特性を備えたポリマーは温度上昇を始める。ポリマーは、温度上昇とともに膨張を始め導電性カーボンの通電面積を圧迫していき、最終的には導電性カーボンは通電できない状態となり、これ以上ポリマーは温度上昇しなくなる。ポリマーの温度が下降すると、ポリマーが収縮し導電性カーボンの通電面積が回復されるため、再びポリマーは温度上昇する。このように、半導体ヒーター3は特別な制御を必要とせず、一定の温度を保ち続けることができるという特性を備え、自己温度制御ヒーターと呼ばれる所以でもある。
【0024】
この維持される一定温度、換言すれば半導体ヒーター3の最高到達温度は、半導体ヒーター3の規格によって定められ、例えば市販されている半導体ヒーター3のうち20W/mのものは55℃、30W/mでは70℃、40W/mでは90℃、50W/mでは130℃である。
【0025】
パネル2は、その外形を構成する筺体2aと天板2b、筺体2a内部を構成する断熱材2cで形成されている。筺体2aは上面が開放された中空箱型の形状であり、半導体ヒーター3からの熱を放出しないように断熱材で形成されることが望ましい。一方、天板2bは暖房対象(例えば床面)に最も近づく面であり、効率的に半導体ヒーター3からの熱を伝達するために熱伝導率の高い材質を使うことが好ましく、たとえばアルミ板とするのが好適である。さらに、天板2bの表面に、遠赤外線塗布材(例えば遠赤外線放射パウダー)を塗布すると、より暖房効果が高まるため好適である。
【0026】
図3(a)の斜視図や図3(b)の断面図に示すように、パネル2内にはヒーター管4と通水管5が並べて配置されている。このヒーター管4は、図3(c)の詳細図に示すように外部収容管6の中に半導体ヒーター3が内挿されたもので、通水管5は内部に水などの液体を流通(通水)させることができるように中空となっている。
【0027】
半導体ヒーター3を内挿する外部収容管6は、金属製とするなど熱伝導率の高い材質を使うことが好ましく、たとえばアルミ製の管が好適である。外部収容管6は半導体ヒーター3を収容できる内空面積が必要であり、例えば半導体ヒーター3の外径が8mmの場合、内部収容管12の内径は10mm程度が必要である。図3(c)では、外部収容管6に1本の半導体ヒーター3を挿入しているが、これに限らず内径の大きい外部収容管6の中に2本以上の半導体ヒーター3を挿入することもできる。
【0028】
外部収容管6内に半導体ヒーター3を内挿したヒーター管4に、通水管5を隣接して配置すると、後に説明するようにヒーター管4から冷暖房パネル1表面(天板2b側)への熱の伝搬効率が飛躍的に向上する。また、通水管5を熱伝導率の高い金属製、特にアルミ製の管とすると、ヒーター管4からの熱の伝搬効率の向上がより顕著となり好適である。また、この通水管5は中空であって、水などの液体を流通(通水)させることができるため、暖房時には温水を通水して冷暖房パネル1の暖房補助として機能することも可能であり、さらに夏季など冷房を必要とする場合には、通水管5内に冷水を循環させることによって冷暖房パネル1を冷房設備として利用することもできる。なお、通水管5内には液体に限らず低温(又は高温)のガスを送りこむこともできる。
【0029】
一例として、冷暖房パネル1を暖房装置として利用する場合はヒーター管4内の半導体ヒーター3によって加温しつつ、所望温度の水を通水管5に流通させることで半導体ヒーター3の最高到達温度をさらに上昇又は下降させて温度調整を行い、冷暖房パネル1を冷房装置として利用する場合には半導体ヒーター3に通電せず、通水管5に低温の水を流通させて冷気を与えるものとする。この場合、通水管5に液体を流通させる手段はポンプ等従来からの圧送技術を用いることが可能で、流通させる液体の温度調節も従来の技術を用いることができる。もちろん、暖房装置として利用する場合は、通水管5に液体を流通させずにヒーター管4内の半導体ヒーター3のみによって加温させるものとすることもできる。
【0030】
図3(b)に示すように、ヒーター管4と通水管5を天板2b付近に配置して断熱材2c内に埋設することもできるが、図4(a)に示すように天板2bに設けられた溝状の収容部7内に収めることもできる。この収容部7は、パネル2の表面側から内部側へ天板2bを凹陥させて形成されるものであり、図1に示すように半導体ヒーター3がパネル2内を往復するように蛇行配置される場合、収容部7もこれに合わせて蛇行して形成される。また、ヒーター管4と通水管5を収容部7内に収める場合、図4(b)に示すように収容部7の開放部(パネル2の表面側)をシール材8で封鎖する。このシール材8は、平面視では帯状、断面視では薄肉状であり、熱伝導率の高い材質、例えばアルミ製のテープとすると好適である。
【0031】
図3(b)や図4(a)では、ヒーター管4の両脇に通水管5を1本ずつ隣接配置しているが、これに限らずヒーター管4の一方側に通水管5を1本だけ隣接配置したり(図5(a))、ヒーター管4の一方側に通水管5を1本配置して他方側に2本配置したり(図5(b))、複数のヒーター管4と通水管5を交互に配置する(図5(c))など、種々の配置を選択することができる。なおここでいう隣接配置とは、ヒーター管4と通水管5が接触して並べて配置される場合や、ヒーター管4と通水管5の間に若干の隙間を設けて並べて配置される場合を含む概念である。
【0032】
筺体2aの内部は、空洞のままとすることもできるが、半導体ヒーター3からの熱が必要以上に失われないよう断熱材2cで充填することが望ましい。この断熱材2cには、硬質ウレタンを利用するなど、従来から用いられている材料を利用することができる。
【0033】
また、パネル2を構成する筺体2aと断熱材2cの組み合わせに代えて、パネル2を発泡セラミック板とすることができる。この発泡セラミック板は、多数の連続貫通気孔が設けられたいわゆる多孔質セラミック板であり、有機の発泡剤を混入したセラミックを焼成して製造するもので、軽量であって不燃であるという特長を有する。また、内部に多数の連続貫通気孔が設けられているため断熱保温性に優れており、発泡セラミック板をパネル2として利用すると、半導体ヒーター3からの熱が効率的に床面などの暖房対象物に伝達される。なお、この場合でもアルミ板などの天板2bを設置して表面に遠赤外線塗布材を塗布することもできるし、発泡セラミック板に溝状の収容部7を設けてこの中にヒーター管4と通水管5を配置してシール材8で封鎖することもできる。
【0034】
冷暖房パネル1の製作は、筺体2a内の所定位置にヒーター管4と通水管5を配置し、筺体2a内の空隙部に断熱材2cを充填し、筺体2aの上面に天板2bを固定して行われる。なお、筺体2aの上面に天板2bを固定した後に、筺体2a(又は天板2b)に設けられた充填口から断熱材2cを充填して冷暖房パネル1を製作してもよい。
【0035】
前記のとおり、半導体ヒーター3はパネル2内を往復するように蛇行配置されるため、半導体ヒーター3を内挿する外部収容管6もこれにあわせて蛇行配置される。図1に示すように、パネル2内にある半導体ヒーター3全長にわたって外部収容管6を配置することもできるが、図7に示すように曲折部では外部収容管6を省略して半導体ヒーター3のみを連続させることもできる。外部収容管6の曲折部加工は半導体ヒーター3に比べて手間がかかるため、曲折部で外部収容管6を省略すると、部分的に暖房効果は劣るもののコストの軽減には寄与することができる。
【0036】
図1に示すように、一条の半導体ヒーター3をパネル2内に蛇行配置させて、半導体ヒーターの一端(図では右橋)に電源接続部9を設け、他端(図では左側)に終端部10を設けることができる。電源接続部9が設けられた一端では、半導体ヒーター3がパネル2から外部へ突出しており、終端部10が設けられた他端では半導体ヒーター3はパネル2内に収められている。
【0037】
また、図8(a)〜(c)に示すように、パネル2内に蛇行配置された一条の半導体ヒーター3の両端ともに、パネル2の端部(端面)まで伸ばし、これら両端にそれぞれ半導体ヒーター接続部11を設けた冷暖房パネル1aとすることもできる。この半導体ヒーター接続部11は相互に接続可能で、例えば第一の冷暖房パネル1の半導体ヒーター接続部11と、第二の冷暖房パネル1の半導体ヒーター接続部11を接続すると、第一の冷暖房パネル1の半導体ヒーター3と、第二の冷暖房パネル1の半導体ヒーター3は電気的に接続され通電が可能となる。この電気的な接続には、従来から用いられている結線技術を利用することができる。なおこの場合、半導体ヒーター3の一端を半導体ヒーター接続部11に代えて電源接続部9あるいは終端部10を設けることとし、一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が電源接続部9の冷暖房パネル1b、あるいは一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が終端部10の冷暖房パネル1cとすることもできる。
【0038】
図9は、冷暖房パネル1a、冷暖房パネル1b、及び冷暖房パネル1cを組み合わせて配置した例を示す平面図である。比較的広い面積に配置する場合には、複数の冷暖房パネル1を組み合わせて配置する場合があり、冷暖房パネル1a、冷暖房パネル1b、及び冷暖房パネル1cを組み合わせて配置すれば、一の電源に接続するだけで複数の冷暖房パネル1に対して通電することができるので、消費電力量が軽減できてコストの軽減とともに環境保全への寄与となって好適である。
【0039】
複数の冷暖房パネル1の組み合わせる場合は、図9に限らず、図10のように隣接する2枚の冷暖房パネル1(図では上下に隣接する冷暖房パネル1)を電気的に接続するなど、配置する床面積や形状に合わせて種々選択することができる。
【0040】
(ヒーター管と通水管による熱伝搬効率の検証)
本願発明の発明者は、半導体ヒーター3を金属製管内に収容し中空の金属管(アルミ管)を隣接させると熱伝搬効率が向上するという仮説を立て、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容したケース(ケース1)と、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容し通水管5を隣接配置したケース(ケース2)について比較実験を行った。その結果、冷暖房パネル1表面(天板2a)における温度上昇範囲をみると、ケース2の方がケース1よりも広い範囲まで温度上昇していることが判明し、中空のアルミ管を隣接配置すると熱伝搬効果が飛躍的に高まるという事実を突き止めた。以下、その実証実験について図11(a)(b)を用いて説明する。
【0041】
実験には以下の材料を用いた。
・半導体ヒーター3:40W/m、外径8mm、最高到達温度90℃(表面温度)
・外部収容管6:アルミ製、内径は10mm(外径12mm)
・天板2a:ガルバニウム製
【0042】
図11(a)は、中空のアルミ管を隣接配置させることなく、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿したケースである。これをケース1とする。
図11(b)は、アルミ管内に半導体ヒーター3を内挿し、その両側に中空のアルミ管を隣接配置させたケースである。これをケース2とする。
【0043】
常温の実験室内で、上記2ケースについて半導体ヒーター3に100Vを印加した。通電後、半導体ヒーター3の表面温度は90℃になるが、これが如何に天板2aに熱伝播されるかを調べるため、天板2aの表面温度の2か所で温度計測を実施した。第一の計測箇所は図11(a)(b)のP1で示す半導体ヒーター3の直上で、第二の計測箇所は図11(a)(b)のP2で示す半導体ヒーター3の直上からL=15cm離れた位置である。以下、表1に結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
ケース1の結果をみると、天板2a表面におけるP1地点での温度が50℃程度に達したにもかかわらず、そこから15cm離れた位置では22.8℃まで温度が低下し、大きく熱が失われている。
【0046】
一方、ケース2の結果をみると、P1地点では50℃程度でケース1と相違ないが、P2地点では、中空のアルミ管を両側に隣接配置しただけであるにもかかわらず、ケース1の22.8℃に比べ10℃以上も高い33.3℃であった。
【0047】
以上、中空のアルミ管を隣接配置すると熱伝搬効果が高まるという結果が得られ、すなわち暖房設備としての機能を向上させるためには、半導体ヒーター3が内挿された外部収容管6に中空の金属製管(通水管5)を隣接配置することが重要な技術要素であることが証明された。
【0048】
以上、冷暖房装置の実施形態について冷暖房パネル1を例として説明したが、パネル形式に限らず、半導体ヒーター3を外部収容管6内に収容したヒーター管4と、通水管5を隣接配置した冷暖房装置として利用することもできる。つまりこの場合には、パネル2は必要としない。
【0049】
例えば、フローリングの下にヒーター管4と通水管5を隣接配置し床の冷暖房装置として利用したり、道路の舗装面の下にヒーター管4と通水管5を隣接配置してロードヒーティング用の冷暖房装置としたり、積雪する場所(例えば屋根)にヒーター管4と通水管5を隣接配置して融雪用の冷暖房装置とすることができる。またヒーター管4と通水管5を隣接配置した冷暖房装置は、野菜や花卉の栽培、あるいは苗床などのためのハウス温室、果樹園、植物園などの温度調整用として利用したり、牛舎や豚舎や鶏舎といった家畜の飼育施設における温度調整用として利用したり、養魚場やプールや温浴施設などの温度調整用として利用することもできる。なお、本願発明の冷暖房装置でコンクリート構造物を暖めることが、この構造物の構築前にあらかじめわかっている場合には、竹炭粉末、遠赤外線放射天然石粉末、トルマリン粉末といった熱伝搬に効果があると知られるものを混入したコンクリートを打設することも有効である。
【0050】
以上、冷暖房の対象となる場所に直接、ヒーター管4と通水管5を隣接配置することによって、本願発明の冷暖房装置が設けられる。この場合、冷暖房パネル1のような設置における容易さはないものの、様々な場所に設置することが可能となり、すなわち利用範囲が広がるという利点がある。
【0051】
(実施形態2)
本願発明の冷暖房装置の第2の実施形態について、冷暖房パネルを例として説明する。なお本実施形態は、ヒーター管を2重管形式とした場合を説明するためのものであって、本実施形態に記さない基本的構成や機能などは実施形態1と共通する。また、実施形態1で記載した一部の技術と本実施形態の技術を組み合わせたものも、本願発明の技術範囲に属する。
【0052】
図12に示すように、本実施形態のヒーター管4は、半導体ヒーター3と、これを内挿する内部収容管12と、さらに複数の内部収容管12を収容する外部収容管6で構成される。この内部収容管12は熱伝導率の高い材質のものがより好ましく、たとえばアルミ製などの金属製の管が好適である。内部収容管12は半導体ヒーター3を収容できる内空面積が必要であり、例えば半導体ヒーター3の外径が8mmの場合、内部収容管12の内径は10mm程度が必要である。図12では、内部収容管12に1本の半導体ヒーター3を挿入しているが、これに限らず内径の大きい内部収容管12の中に複数の半導体ヒーター3を挿入することもできる。
【0053】
半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12は、さらに金属製の外部収容管6の内部に収容されている。この場合、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本以上(図12では3本)外部収容管6内に収容すると、後に説明するように外部収容管6内での蓄熱効果が飛躍的に向上する。この外部収容管6には、汎用的な一般構造用炭素鋼管(通称、単管パイプ)の利用が可能で、汎用品を使うことで製品コストを抑えることができる。一般的な単管パイプの内径は43.8mm(外径48.6mm)であり、アルミ製の内部収容管12(外径12mm)3本を十分収容することができる。なお、外部収容管6として熱伝導率の高い例えばアルミ製の管を用いると、製品のコストは上がるものの熱伝搬効率が向上し、より性能の高いヒーター管4とすることもできる。
【0054】
図13(a)に示すように、複数の内部収容管12を収容しても、外部収容管6の内部にはなお空隙が残る。この空隙部分には、図13(b)に示すように熱伝導材13を充填(中詰め)することができる。これにより半導体ヒーター3からの放熱は、熱伝導材13を介してより効率的に外部収容管6の外周へ伝達されることが期待できる。この熱伝導材13は、熱伝導率が高く、かつ外部収容管6内の空隙部の複雑な形状にも追随して変形しうるものが適しており、一例としてアルミ不織布が挙げられる。その他、鉄鋼スラグや、やや高価ではあるがアルミ箔なども熱伝導材13として用いることができる。
【0055】
熱伝導材13は、外部収容管6内部の空隙部に限らず、内部収容管12内に半導体ヒーター3を挿入した後に残る空隙部分に充填(中詰め)することもできる。特に、半導体ヒーター3の外径に比して内部収容管12の内径が比較的大きい場合には有効である。
【0056】
外部収容管6内部には複数の内部収容管12を収容するため、内部収容管12の本数分だけ内部収容管12の挿入作業が生じることとなる。とくに外部収容管6の管長が比較的長いと、この挿入作業を繰り返し行うことは手間や時間がかかり、ひいては製品コストを引き上げる一因となる。あるいは先に挿入した内部収容管12が撓んだり、折曲がったり、種々変形することによって、後から挿入する内部収容管12が入りにくいという問題もある。このような場合、図13(c)に示すように内部収容管12に保持具14を取り付けることができる。保持具14で複数(図では3本)の内部収容管12を連結することによって、内部収容管12同士の間隔を維持し(いわゆるスペーサーの機能)、しかも複数の内部収容管12を束ねた状態にすることができるので、内部収容管12の挿入作業も1回で完了し、後続の内部収容管12が挿入し難いといった煩わしさも解消される。
【0057】
この保持具14は、内部収容管12の軸方向に対して間隔をあけて取り付け、樹脂製や金属製などとすることができる。内部収容管12への取り付けは、保持具14が金属製の場合は溶接により行い、樹脂製の場合は接着により行い、あるいは取り付け部を環状にして内部収容管12の周囲を掴むように把持する構造としてもよい。保持具14を内部収容管12へ取り付けるにあたっては、その他の従来技術を用いても構わない。前記のとおり、保持具14は内部収容管12を外部収容管6内に挿入する前に取り付けることが望ましいが、内部収容管12を挿入した後に手や治具が届く範囲で保持具14を取り付けてもよい。
【0058】
図14は、本実施形態の冷暖房パネル1を示す平面図である。図14に示すように、実施形態1と同様、ヒーター管4は、パネル2全体を暖めることができるように、パネル2内を往復するように蛇行配置されている。また、ヒーター管4の両脇には通水管5が1本ずつ隣接配置されている。なお、ヒーター管4と通水管5の配置の組み合わせは、実施形態1で記載したように、図5(a)〜(c)など種々の組み合わせとすることができる。
【0059】
図14では、半導体ヒーターの一端(図では右橋)に電源接続部9を設け、他端(図では左側)に終端部10を設けた独立使用可能な冷暖房パネル1としているが、半導体ヒーター3の両端を半導体ヒーター接続部11である冷暖房パネル1aとしたり、一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が電源接続部9である冷暖房パネル1bとしたり、あるいは一条の半導体ヒーター3の一端が半導体ヒーター接続部11で他端が終端部10である冷暖房パネル1とするなど、組合せ使用型の冷暖房パネル1cとすることもできる。
【0060】
また実施形態1と同様、ヒーター管4を天板2b付近に配置して断熱材2c内に埋設することもできるが、図15(a)に示すように天板2bに設けられた溝状の収容部7内に収めることもできる。ヒーター管4と通水管5を収容部7内に収める場合には、図15(b)に示すように収容部7の開放部(パネル2の表面側)をシール材8で封鎖する。
【0061】
(本実施形態のヒーター管の検証)
本願発明の発明者は、半導体ヒーター3を金属製管内に収容すると蓄熱効果が期待できるという仮説を立て、半導体ヒーター3と金属製の管を種々組み合わせて実験を重ねた。その結果、二重管形式で半導体ヒーター3を収容すると蓄熱効果が発揮され、さらに外部収容管6内に半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本以上収容すると蓄熱効果が飛躍的に高まり、外部収容管6の表面温度上昇が他例に比べ顕著であるという事実を突き止めた。以下、その実証実験について図16(a)〜(f)を用いて説明する。
【0062】
実験には以下の材料を用いた。
・半導体ヒーター3:40W/m、外径8mm、最高到達温度90℃(表面温度)
・内部収容管12:アルミ製、内径は10mm(外径12mm)
・外部収容管6:一般構造用炭素鋼管、内径は43.8mm(外径48.6mm)
【0063】
図16(a)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入することなく、直接外部収容管6に収容したケースである。これをケース1とする。
図16(b)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入し、これを外部収容管6に収容したケースである。これをケース2とする。
図16(c)は、1本の半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入し、これを外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース3とする。
図16(d)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本、外部収容管6に収容したケースである。これをケース4とする。
図16(e)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本、外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース5とする。
図16(f)は、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を3本、外部収容管6に収容し、さらに外部収容管6の内部の空隙部分に熱伝導材13としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース6とする。
【0064】
常温の実験室内で、上記6ケースそれぞれについて半導体ヒーター3に100Vを印加した。通電後、半導体ヒーター3の表面温度は90℃になるが、これが如何に熱伝播されるかを調べるため、外部収容管6内部の空隙部分と外部収容管6の表面で温度を計測した。外部収容管6内部の空隙部分を温度計測することで、蓄熱効果の優劣も測ることができる。なお、温度計測はいずれも通電後約50分後である。以下、表2に結果を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
ケース1の結果をみると、半導体ヒーター3の表面温度は90℃に達したにもかかわらず、外部収容管6の表面では45.5℃まで大きく温度が下がっている。これは、半導体ヒーター3から放出された熱が外部収容管6の表面に達するまでに、外部収容管6の内部で大きく失われたものと考えられる。
【0067】
一方、ケース2の結果をみると、半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入しただけであるにもかかわらず、外部収容管6の表面温度がケース1の45.5℃よりも52.3℃と7℃ほど上昇している。特に注目すべきは、外部収容管6の内部が78.6℃(ケース1)から92.4℃(ケース2)と著しく上昇している事実である。これは、半導体ヒーター3を内部収容管12に挿入しさらに外部収容管6で覆った、いわゆる二重管形式にすると蓄熱効果が高まることを示している。
【0068】
ケース4およびケース5は、2本の内部収容管12を外部収容管6に収容したケースである。これをみると、外部収容管6の内部、表面ともに、ケース2や3に比べ飛躍的に温度が上昇していることがわかる。これは、ケース2におけるケース1からの温度上昇(外部収容管6内部で78.6℃→92.4℃)と比較すると、ケース4におけるケース2からの温度上昇(外部収容管6内部で92.4℃→120.7℃)が極めて顕著であることがわかる。
【0069】
以上の結果から、外部収容管6の中に、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を2本収容すると飛躍的に蓄熱効果が上がることがわかる。なお、ケース4(内部収容管12を2本)とケース6(内部収容管12を3本)とを比較しても、外部収容管6内部の温度において大きな変化はみられなかった。言い換えると、外部収容管6に収容される内部収容管12の本数が多いほど蓄熱効果が上がるわけではなく、内部収容管12の本数を1本から2本に増加させたときにはじめて劇的に効果が現れる、ということを証明するものである。すなわち蓄熱効果を発揮するためには、半導体ヒーター3が内挿された内部収容管12を外部収容管6に収容する二重管形式であって、外部収容管6の中には複数の内部収容管12を収容する、ということが重要な技術要素であることが証明された。
【0070】
なお、ケース4(アルミ不織布なし)とケース5(アルミ不織布あり)を比較しても、外部収容管6の表面温度において大きな変化はみられなかった。熱導電性の高いアルミ不織布を充填したほうが外部収容管6の表面に熱を伝達しやすいはずであるが、アルミ不織布を充填しないケース4と結果に大差がないということは、ケース4の蓄熱効果がアルミ不織布による熱伝導効果と同等であることを証明するものである。
【0071】
以上のように、ヒーター管4を2重管形式とすると単管形式に比べ著しく熱伝導効果が向上する。この場合、実施形態1に比べるとヒーター管4の製造手間がかかり、また材料費も上がるが、暖房性能は向上する。ヒーター管4を単管形式とするか、あるいは2重管形式とするかは、利用者の条件に応じて適宜選択することができる。
【0072】
以上、本実施形態でも、冷暖房装置の実施形態について冷暖房パネル1を例として説明したが、パネル形式に限らず、2重管形式としたヒーター管4と、通水管5を隣接配置した冷暖房装置として利用することもできることは、実施機形態1で述べたとおりである。
【0073】
(使用例)
本願発明の冷暖房装置及び冷暖房パネルを使用する場合の一例を示す。なお、ここでは床下に冷暖房装置又は冷暖房パネルが設置された例である。
【0074】
(冬季)
本願発明の冷暖房装置又は冷暖房パネルにおける半導体ヒーター3の電源接続部9をコンセントに接続する。さらにスイッチをONに切り替えて半導体ヒーター3に通電し、半導体ヒーター3から熱が放射されることで、冷暖房装置又は冷暖房パネルが床面を暖める。床面は所定の温度になるとその温度を維持し続けるが、さらに温度を高めたい場合は通水管5に温水を流通させて床面温度を上げる。床面温度を低下させたい場合は、低温の水を流通させて床面温度を下げる。
【0075】
(夏季)
本願発明の冷暖房装置又は冷暖房パネルにおける半導体ヒーター3の電源接続部9をコンセントから外すか、スイッチをOFFに切り替えて半導体ヒーター3に通電させない。この状態で、通水管5に冷水を流通させて床面を冷却する。床面が冷えすぎた場合は、冷水の流通を止めるか、やや高温の水を流通させて温度調整を図る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本願発明の冷暖房装置と冷暖房パネルは、家庭用の床冷暖房・壁冷暖房設備として、マンション・ビル・学校・病院・事務所・作業場・屋内遊技場・工場・家畜舎・等々の「床冷暖房・壁冷暖房設備」としての利用をはじめ、融雪装置としての利用のほか、ロードヒーティング用の設備、温室暖房設備、乾燥機としての設備など、様々なケースで応用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 冷暖房パネル
1a 半導体ヒーター両端部が半導体ヒーター接続部である冷暖房パネル
1b 半導体ヒーター端部が半導体ヒーター接続部と電源接続部である冷暖房パネル
1c 半導体ヒーター端部が半導体ヒーター接続部と終端部である冷暖房パネル
2 パネル
2a 筺体
2b 天板
2c 断熱材
3 半導体ヒーター
4 ヒーター管
5 通水管
6 外部収容管
7 収容部
8 シール材
9 電源接続部
10 終端部
11 半導体ヒーター接続部
12 内部収容管
13 熱伝導材
14 保持具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、
線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、
前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、
前記流通管内に液体を流通可能であることを特徴とする冷暖房装置。
【請求項2】
請求項1記載の冷暖房装置において、
外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置されたことを特徴とする冷暖房装置。
【請求項3】
半導体ヒーターを用いた冷暖房パネルにおいて、
線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、
パネル内に、外部収容管が配置されるとともに、この外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、
前記流通管内に液体を流通可能であることを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項4】
請求項3記載の冷暖房パネルにおいて、
外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の冷暖房パネルにおいて、
一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、
前記線状半導体ヒーターの一端には外部電源と接続可能な電源接続部が設けられ、
前記線状半導体ヒーターの他端には終端部が設けられ、
一の冷暖房パネルを単独で使用可能であることを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、
前記線状半導体ヒーターの一端には、外部電源と接続可能な電源接続部、又は他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部が設けられ、
前記線状半導体ヒーターの他端には、他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部、又は終端部が設けられ、
一の電源に対して複数の冷暖房パネルを接続配置して使用することを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネル表面にパネル内部側に凹陥する収容部が溝状に設けられ、この収容部に外部収容管が収容され、
前記外部収容管を収容した収容部の表面側が、帯状の薄肉材で封鎖されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネル表面に、遠赤外線塗布材が塗布されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネルが、発泡セラミック板であることを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項1】
半導体ヒーターを用いた冷暖房装置において、
線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、
前記外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、
前記流通管内に液体を流通可能であることを特徴とする冷暖房装置。
【請求項2】
請求項1記載の冷暖房装置において、
外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置されたことを特徴とする冷暖房装置。
【請求項3】
半導体ヒーターを用いた冷暖房パネルにおいて、
線状半導体ヒーターと、外部収容管と、金属製の流通管と、を備え、
パネル内に、外部収容管が配置されるとともに、この外部収容管の片側又は両側に前記流通管が隣接配置され、前記線状半導体ヒーターは外部収容管内に配置され、
前記流通管内に液体を流通可能であることを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項4】
請求項3記載の冷暖房パネルにおいて、
外部収容管内に2本以上の内部収容管が配置され、ぞれぞれの内部収容管内に線状半導体ヒーターが配置されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の冷暖房パネルにおいて、
一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、
前記線状半導体ヒーターの一端には外部電源と接続可能な電源接続部が設けられ、
前記線状半導体ヒーターの他端には終端部が設けられ、
一の冷暖房パネルを単独で使用可能であることを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
一条の線状半導体ヒーターが、パネル内に配置されるとともに、
前記線状半導体ヒーターの一端には、外部電源と接続可能な電源接続部、又は他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部が設けられ、
前記線状半導体ヒーターの他端には、他の冷暖房パネルの線状半導体ヒーターの端部と接続可能な半導体ヒーター接続部、又は終端部が設けられ、
一の電源に対して複数の冷暖房パネルを接続配置して使用することを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネル表面にパネル内部側に凹陥する収容部が溝状に設けられ、この収容部に外部収容管が収容され、
前記外部収容管を収容した収容部の表面側が、帯状の薄肉材で封鎖されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネル表面に、遠赤外線塗布材が塗布されたことを特徴とする冷暖房パネル。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8のいずれかに記載の冷暖房パネルにおいて、
パネルが、発泡セラミック板であることを特徴とする冷暖房パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−179738(P2011−179738A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43755(P2010−43755)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(309034858)
【出願人】(310003164)
【出願人】(310003120)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(309034858)
【出願人】(310003164)
【出願人】(310003120)
【Fターム(参考)】
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