説明

凍結乾燥方法とその装置

【課題】 被乾燥物を搭載した容器への輻射熱の照射と熱伝導が不十分である上に乾燥時間に24時間以上という長時間の乾燥を強いられ、乾燥に時間を要するという難点がある。
【解決手段】 凍結乾燥における被乾燥物への加熱方法であって、凍結した非加熱前の被乾燥物を遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能及び熱伝導のそれぞれの高い容器に収納する工程と、該容器に収納された凍結した被乾燥物を減圧槽内へ大気圧下で搭載する工程と、前記減圧槽内に設置した遠赤外線ヒーターによる輻射熱による前記容器への加熱及び減圧槽内で被乾燥物の昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物の凍結した水分を昇華させる工程を備えたことを特徴とする遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜、魚介類、果物、加工食品等の食品分野、医薬品等の製薬分野、化粧品分野その他、従来凍結乾燥が用いられてきた分野のすべてに有効であり、各種の被乾燥物を短時間で効率良く凍結乾燥することができる凍結乾燥方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の凍結乾燥では、被乾燥物を加熱するために、被乾燥物を搭載する容器の個々に対してヒーターを設置し、被乾燥物を搭載する容器の個々に対して直接加熱を行うのが通常であった。
上記容器の個々に対してヒーターを設置することが凍結乾燥装置の価格を高価にする主因であった。本発明者は、減圧槽内での遠赤外線の加熱技術を長期にわたり研究してきており、減圧下における遠赤外線による被乾燥物搭載容器への加熱方法及びその装置を発明することにより、出願に及んだ次第である。
【0003】
従来の凍結乾燥では、減圧下では容器に対する輻射熱による加熱が一般的には有効でないために、搭載した各段の個々の搭載容器に直接ヒーターをあてることで容器を直接加熱して熱伝導によって被乾燥物に昇華を起こさせる方法が通常である。従来の凍結乾燥装置では、被乾燥物の容器ひとつひとつにヒーターを準備せざるを得ず、非常に複雑で高価な装置形成を強いられていた。また、基本的に被乾燥物の容器底面への加熱のみであったので、乾燥時間には24時間とか36時間とかの非常に長い時間を要していた。また、底面からだけの加熱であるために、被乾燥物の厚さも最大で7mm程度に限定されており、商品開発には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
従来の食品類の凍結乾燥方法として、魚のすり身を含有した練り製品を凍結させた後、当該練り製品に対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことを特徴とする凍結乾燥方法が開示されている(特開2007−167014)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−167014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の凍結乾燥の方法の発明においては、被乾燥物を搭載した容器への加熱では、ヒーターの上に位置する被乾燥物とヒーターとヒーターの間の上に位置する被乾燥物には加熱むらが発生し、また同時に、容器の底面からのみの加熱であるので乾燥時間に24時間以上という長時間の乾燥を強いられるという難点があり、かつ被乾燥物の厚さが7mm程度未満に限定されており、厚さの大きい物質を昇華乾燥するということは困難であった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて、被乾燥物の凍結乾燥を短時間で効率良く乾燥することができ、被乾燥物が7mm以上の厚さでも乾燥可能とした凍結乾燥方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法は、遠赤外線は減圧下でもよく放射され、かつ黒色又は黒色に近似した色の物質にはよく熱が吸収されるという科学的事実に基づくものである。そこで被乾燥物の搭載容器および蓋を遠赤外線の吸収能の高い色である黒色あるいは黒色に近い色で被覆し、該容器に搭載した被乾燥物を、容器の底面と蓋面に接触するようにし、減圧槽の内壁面である側壁又は側壁及び天井に沿って設置した遠赤外線ヒーターによって放射された熱を搭載容器および蓋に吸収させる。容器および蓋から被加熱物に伝導された熱によって被乾燥物はまんべんなく昇華を起こし、効率のよい乾燥を行う。
【0009】
被乾燥物の容器および蓋を、アルミニウムあるいはステンレスで形成し、遠赤外線吸収能の高い物質で被覆するためには、フッ素系樹脂あるいはシリコン系樹脂等の食品や化粧品等に対する衛生面で良好な素材である樹脂等で焼き付け塗装を行う方法が簡便である。遠赤外線ヒーターから放射された熱は、被乾燥物搭載容器外面およびその蓋外面に吸収され、次いで被乾燥物に効率よく熱伝導され、被乾燥物内の凍結した水分は昇華を起こし乾燥される。
【0010】
したがって、各々の被乾燥物容器にヒーターを接触させるという複雑で困難な構造を採用する必要がない。このために、装置構造が非常に簡便であり、装置価格も極めて廉価なものとなる。また、乾燥時間であるが、本発明では、被乾燥物搭載容器の底面からばかりではなく、蓋面(上面)からも同様にまんべんなく加熱できるので、乾燥時間を10時間内外に短縮することができる。また、被乾燥物の厚さも20〜30mm程度まで広げることができるので、非常に幅広い商品開発に供する。
【0011】
温度制御は、被乾燥物によって許容温度が異なるので、減圧槽内に設けられ、黒色あるいは黒色に近い色で被覆された金属のダミーセンサーを設け、容器に吸収された温度はセンサーによって温度検知され、加熱温度が制御される。
【0012】
すなわち、本発明は凍結乾燥における被乾燥物への加熱方法であって、凍結した被乾燥物又は凍結していない被乾燥物を遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率が良好な容器に搭載するか又は減圧槽内の雰囲気と通じる蓋付容器に前記被乾燥物を搭載する工程と、該容器に搭載された凍結した被乾燥物又は凍結していない被乾燥物を減圧槽内へ大気圧下で搭載する工程と、前記減圧槽内に設置した遠赤外線ヒーターの輻射熱による前記容器又は蓋付き容器への加熱及び熱伝導により減圧槽内で被乾燥物の昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物を昇華させる工程を備えたことを特徴とする遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法である。
【0013】
請求項1における遠赤外線ヒーターによる容器への輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率が良好な容器又は蓋付き容器は、金属製容器の外表面あるいは金属製容器の外表面及び金属製容器の蓋表面のそれぞれに黒色又は黒色に近い色で塗膜を形成し、かつ被乾燥物は前記容器および蓋と接する状態で容器及び蓋の両側から被乾燥物に熱を伝えることを特徴とする。
【0014】
請求項1又は請求項2において、遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率の良好な容器又は蓋付き容器に搭載された被乾燥物は、減圧槽に搭載される前に減圧槽外部で冷凍することを特徴とするか、または凍結していない状態で減圧槽に搭載され、減圧が進められ、被乾燥物自らの水分の蒸発による蒸発潜熱によって冷凍されることを特徴とする。
【0015】
請求項1、請求項2又は請求項3において、遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率の良好な容器又は蓋付き容器に搭載された被乾燥物は、減圧槽内で加熱を行う前に、水の沸騰点が零度以下となる圧力以下に減圧を進めて被乾燥物に起こる水分の蒸発及び氷の昇華によって発生する蒸発潜熱及び昇華潜熱によって被乾燥物の表面を凍結し、次いで容器又は蓋付き容器からの熱伝導によって被乾燥物内部も冷凍することを特徴とする請求項1及び請求項2記載の遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法である。
【0016】
請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4における乾燥方法であって、被乾燥物の容器への搭載の前加工として、蓋を含む容器内面に被乾燥物の面が多く接触するようにするために、被乾燥物にカッティング、スライシング、粉砕等の前処理を行ったことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の遠赤外線ヒーターを用いた凍結乾燥方法である。
【0017】
本発明に係る凍結乾燥装置は、側壁または側壁と天井に沿って遠赤外線ヒーターを設置した減圧槽と、被乾燥物を搭載した複数の容器を該減圧槽内に搬送し、乾燥工程中該容器を支持する該容器キャリアーと、該容器キャリアーに多段に間隔をおいて搭載する輻射熱の吸収能の高い容器と、該容器に収納する凍結した被乾燥物と、該凍結した被乾燥物を収納した各容器は遠赤外線ヒーターからの熱照射が万遍なく照射されるように上下に亘って間隔をおいて多段に設置し、かつ各段に設置した容器が同一角度又は熱照射が万遍なく照射される角度に傾斜して配置される容器キャリアーのトレイ支持部材と、減圧槽内で被乾燥物の昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物を昇華させるための制御部として、減圧槽内に設置した加熱温度検知部と圧力検知部と、減圧槽外に遠赤外線ヒーターの該容器に対する加熱温度制御部と槽内の圧力制御部を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の凍結乾燥装置において、前記被乾燥物を搭載する金属製容器又は減圧槽内の雰囲気と通じる蓋付容器である落とし蓋付き容器の各外面は、フッ素系樹脂又はシリコン系樹脂の黒色あるいは黒色に近い色により焼き付け塗装されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6又は7記載の凍結乾燥装置において、被乾燥物を搭載する金属製容器およびその蓋の金属素材を、アルミニウム板あるいはステンレス板で形成したことを特徴とする。
【0020】
請求項6、請求項7又は請求項8記載の凍結乾燥装置において、被乾燥物を搭載する金属製容器とその蓋のセットを複数段で搭載するための棚をステンレスで形成し、該棚の各段は80mm以上の間隔をあけ、各段に10度以上の勾配をつけた被乾燥物搭載容器を支えるフレームを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項6、請求項7、請求項8、又は請求項9記載の凍結乾燥装置において、減圧槽内部には、側壁、又は側壁と天井に遠赤外線ヒーターを設けるとともに、被乾燥物を搭載する金属容器と同じ黒色あるいは黒色に近い色で塗装した温度検知具を遠赤外線ヒーターと被乾燥物を搭載する容器の中心部近傍との距離相当部位に設置し、遠赤外線ヒーターによる被乾燥物搭載容器外面への加熱温度検知手段を設け、さらに、減圧槽内部に圧力センサーを設け槽内の圧力値を検知する圧力検知手段を設け、減圧槽の外部には、遠赤外線ヒーターの温度制御装置、圧力計、圧力調整弁、圧力制御装置、復圧弁、および真空ポンプを配し、これらを金属製パイプあるいは樹脂製パイプで接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
従来、凍結乾燥装置は非常に高価であるために該装置を採用する企業は限定されるという欠点があった。また、従来の凍結乾燥装置は大変長い乾燥時間を要するので、生産量を確保するためには、大型の装置が必要とされた。本発明は上記請求項記載の構成とすることにより、廉価でかつ性能に優れた凍結乾燥装置を提供できるので、その需要は世界中の被乾燥物を有する地域にも拡大させることができる。また、凍結乾燥できる被乾燥物の個々の厚さは従来の2倍以上に拡大されるので幅広い商品開発に供することとなる。従来の凍結乾燥装置は、その装置価格が高価であるために、発展途上国での利用は困難であったが、本発明の装置であればその生産時間(生産量)、廉価性、簡便なメンテナンス性から、世界の多くの地域での利用が進み、地域経済の発展に供することができる。
【0023】
具体的な効果として、本発明は被乾燥物の凍結乾燥が比較的短時間で効率良く乾燥することができ、凍結乾燥させる被乾燥物の個々の厚さも7mm以上の厚さでも乾燥可能な凍結乾燥方法およびその装置である。
【0024】
本発明では、各々の被乾燥物容器にヒーターを直に接触させるという複雑構造は形成する必要がないために、装置構造が非常に簡便であり、装置価格も極めて廉価なものとなる。また、本発明では、被乾燥物搭載容器の底面からばかりではなく、蓋面(上面)からも同様に加熱できるので、乾燥時間を10時間内外に短縮することができる。さらに、被乾燥物の厚さも20〜30mm程度まで広げることができるので、非常に幅広い商品開発に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】減圧槽と真空ポンプ及び温度、圧力制御部を示す概略説明図である。
【図2】減圧槽にコールドトラップを介して真空ポンプを設置した場合を示す概略説明図である。
【図3】減圧槽の内部側壁と容器キャリアーを示す正面図である。
【図4】図3の左側面図である。
【図5】図3の平面図である。
【図6】被乾燥物を搭載する容器の概略斜視図である。
【図7】被乾燥物を搭載する容器の蓋を示す概略説明図である。
【図8】容器キャリアーに容器を左右から等間隔に傾斜させて収納させた状態を示す側面図である。
【図9】減圧槽内に容器キャリアーを3台収納した内部状態を示す正面図である。
【図10】図9の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の凍結乾燥装置の概略を図面に基づいて説明する。
図1は減圧槽と真空ポンプ及び温度、圧力制御部を示す概略説明図で、図3は減圧槽の内部側壁と容器キャリアーを示す正面図で、図4は図3の左側面図で、図5は図3の平面図をそれぞれ示す。
1は減圧槽、2は減圧槽扉、3は減圧槽1内の温度を測定する温度計、4は減圧槽1内の温度を制御する温度制御器、5は減圧槽1内の圧力を測定する圧力計、6は減圧槽1内の圧力を制御する圧力制御器をそれぞれ示す。9は減圧槽1内の減圧を行うための真空ポンプで、パイプに取り付けた圧力調整弁8を介して接続している。
【0027】
遠赤外線ヒーター13による輻射熱の吸収能及び熱伝導のそれぞれ高い容器10は、図6に示すようにアルミニウム板あるいはステンレス板等の輻射熱の吸収能及び熱伝導度の高い素材で形成し、その表面はフッ素系樹脂又はシリコン系樹脂の黒色あるいは黒色に近い色で焼き付け塗装により形成する。黒色系は遠赤外線による輻射熱の吸収能が良く、かつフッ素コーティングした容器10の内面は例えば野菜、魚類等の食品等の被乾燥物Aと接しても衛生上良好である。
容器10の形状は本例では平面矩形状に形成した場合を示したが、この形状に限定されるものではなく平面楕円形、円形等の形状であっても良いが、要は限られた減圧槽1の収納スペースに効率良く周のできる形状であればよい。
【0028】
減圧槽10の両側壁面には遠赤外線ヒーター13を設置する際に熱効率を考慮して壁面に反射板(図示せず)を敷設する。遠赤外線ヒーター13は被乾燥物Aを搭載した容器10に効率良く、かつ均一に輻射熱を投与するために天井から底面に垂下する如く取り付け、下部はU字形状に曲げ蓋食べ天井に向けて垂直に上るように取り付け、天井付近で下向きU字状に折り曲げ、以後、減圧槽10の扉2側から奥壁面に向けて繰り返すように配設する。図3及び図5は容器キャリアー12が2台収納された状態を示す。
【0029】
図9及び図10は容器キャリアー12を減圧槽1内に3台収納した場合を示す。
容器キャリアー12に収納する容器10は図8に示すように容器10を左右から等間隔に中心部に向けて下降するように傾斜させて収納する。
本例では容器10のサイズを例えば縦450mm、横450mm、高さ30mmの矩形容器10を使用した場合、蓋11は縦448mm、横44mm、板厚1mmとした場合、容器10に被乾燥物Aを搭載した後、蓋11をした状態で容器キャリアー12を9段のそれぞれに傾斜角度が10度である傾斜面にそれぞれ収納する。格段の間隔は本例では148mmに保たれる。このように各容器10を傾斜させることとしたのは、遠赤外線の輻射熱が容器10のどの箇所でも均一に照射できるようにするためである。容器10の傾斜角度は容器のサイズや深さ等により適宜、最適の傾斜角が設定され、かつ上下の容器10間の間隔も容器のサイズ等により適宜決定される。図9及び図10の場合は1台の容器キャリアー12に9段×6枚差し込みで54枚の容器10を搭載した場合を示す。また、容器10の傾斜角度は、遠赤外線ヒーター13による輻射熱が被乾燥物Aに対し万遍なく照射されるならば同一傾斜角度に拘束されない。
【0030】
本発明に係る凍結乾燥装置は、被乾燥物Aを搭載する金属製容器10とその蓋11のセットを複数段で搭載するための棚をステンレスで形成し、該棚の各段は80mm以上の間隔をあけ、各段に10度以上の勾配をつけた被乾燥物搭載容器を支えるフレームを備える。
【0031】
次に、本発明の遠赤外線ヒーター13による凍結乾燥方法は、凍結乾燥における被乾燥物Aへの加熱方法であって、凍結した加熱前の被乾燥物を遠赤外線ヒーター13による輻射熱の吸収能及び熱伝導のそれぞれ高い容器10に収納する工程と、容器10に収納され凍結した被乾燥物A、または凍結していない被乾燥物を減圧槽内へ大気圧下で搭載する工程と、凍結していない被乾燥物を搭載する場合には、減圧を進め被乾燥物の自らの水分の蒸発による蒸発潜熱を利用して被乾燥物を凍結する工程と、減圧槽1内に設置した遠赤外線ヒーター13による輻射熱による容器10への加熱及び減圧槽1内で被乾燥物Aに昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物の凍結した水分を昇華させる工程を備える。
【0032】
〔実施例1〕
従来の凍結乾燥装置を用い、1容器に2kgのコーンを搭載し、全体で16容器10を搭載して乾燥を行った。一方、同様に、本発明による1容器(ただし蓋なし)に2kgのコーンを搭載し、16容器10を搭載して乾燥を行った。従来の凍結乾燥では、乾燥に30時間を要した。一方、本発明による凍結乾燥では、15時間を要したにすぎなかった。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、本該発明による1容器(ただし、落とし蓋状の蓋あり)に2kgを搭載し、全体で16容器10を搭載して乾燥時間の比較を行った。本発明による凍結乾燥では、10時間を要したにすぎなかった。乾燥品の含水率は、従来の凍結乾燥によるものが、平均6.0%、本発明による凍結乾燥によるものが、3.5%であった。
【0034】
〔実施例3〕
スチーム処理をしたホタテ貝柱の乾燥を行った。このホタテ貝柱の平均的な暑さは平均約25mmである。スチーム処理した従来の貝柱、5kを搭載した。従来の凍結乾燥では、30時間を要しても貝の中心部の乾燥が未完了であった。一方、本発明による凍結乾燥で、蓋11をセットして乾燥を行ったところ、10時間で完全乾燥品を得た。乾燥品の含水率は平均3%であった。
【0035】
〔実施例4〕
茹で処理を施した大根を乾燥した。厚さを35mmとし、10kgを搭載した。従来の凍結乾燥では、36時間を経ても中心部の乾燥ができなかった。容器10に蓋11をセットした本発明による凍結乾燥では、14時間で完全乾燥品を得た。乾燥品の含水率は平均3.5%であった。
【0036】
〔実施例5〕
みそのペーストを乾燥した。市販品のみそペースト10kgを使用した。容器10への搭載の厚みを約30mmとした。従来の凍結乾燥では、28時間を要し、容器に接している部分のみが変色し変質してしまっており、味も劣化していた。また、みそペーストの厚さの中心部は未乾燥であった。本発明による凍結乾燥では、蓋を設けダミーセンサーの加熱温度を40℃に設定して乾燥を行ったところ、8時間で乾燥を終了し、変色もなく味の劣化もみられなかった。これを粉砕してパウダーとしたところ、保存性が高く、味もペーストに遜色のないみそパウダーを得た。製薬分野や化粧品分野におけるペースト原料等も当該実施と同様に乾燥される。
【0037】
〔実施例6〕
アロエベラの溶液を乾燥した。当液は、含水率99.5%であった。
まず、冷凍庫で冷凍を行った。1容器に3kgを搭載し、全体で16容器を減圧槽に搭載した。従来の凍結乾燥では、48時間を経過しても完全乾燥には至らなかった。一方、本発明による凍結乾燥では、凍結後に蓋を容器にセットして乾燥を行った。遠赤外線ヒーターによる容器・蓋への加熱をアロエベラの酵素破壊を避けるために、38℃として乾燥を行ったところ、18時間で完全乾燥を得た。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、廉価でかつ性能に優れた凍結乾燥装置が提供できるようになるので、その需要は世界中の被乾燥物を有する地域に広がる。また、被乾燥物の凍結乾燥できる個々の厚さも従来の2倍以上に拡大されるので幅広い商品開発に供する。従来の凍結乾燥装置は、その装置価格が高価であるために、発展途上国での利用は困難であったが、本発明の装置であればその生産時間(生産量)、廉価性、簡便なメンテナンス性から、世界の多くの地域での利用が進み、地域経済の発展に供する。
【符号の説明】
【0039】
1 減圧槽
2 減圧槽扉
3 温度計
4 温度制御器
5 圧力計
6 圧力制御器
7 コールドトラップ
8 圧力調整弁
9 真空ポンプ
10 被乾燥物搭載容器
11 蓋
12 容器キャリアー
13 遠赤外線ヒーター
14 加熱温度検知器
15 圧力検知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥における被乾燥物への加熱方法であって、凍結した被乾燥物又は凍結していない被乾燥物を遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率が良好な容器に搭載するか又は減圧槽内の雰囲気と通じる蓋付容器に前記被乾燥物を搭載する工程と、該容器に搭載された凍結した被乾燥物又は凍結していない被乾燥物を減圧槽内へ大気圧下で搭載する工程と、前記減圧槽内に設置した遠赤外線ヒーターの輻射熱による前記容器又は蓋付き容器への加熱及び熱伝導により減圧槽内で被乾燥物の昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物を昇華させる工程を備えたことを特徴とする遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法。
【請求項2】
請求項1における遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能の高く、かつ熱伝導率が良好な容器又は蓋付き容器は、金属製容器の外表面あるいは金属製容器の外表面及び金属製容器の蓋表面のそれぞれに黒色又は黒色に近い色で塗膜を形成し、かつ被乾燥物は前記蓋に接して容器及び蓋の両側から被乾燥物に熱を伝えることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率の良好な容器又は蓋付き容器に搭載された被乾燥物は、減圧槽に搭載される前に減圧槽外部で冷凍することを特徴とするか、または凍結していない状態で減圧槽に搭載され、減圧が進められ、被乾燥物自らの水分の蒸発による蒸発潜熱によって冷凍されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3において、遠赤外線ヒーターによる輻射熱の吸収能が高く、かつ熱伝導率の良好な容器又は蓋付き容器に搭載された被乾燥物は、減圧槽内で加熱を行う前に、水の沸騰点が零度以下となる圧力以下に減圧を進めて被乾燥物に起こる水分の蒸発及び凍結の昇華によって発生する蒸発潜熱及び昇華潜熱によって被乾燥物の表面を凍結し、次いで熱伝導によって被乾燥物内部も冷凍することを特徴とする請求項1及び請求項2記載の遠赤外線ヒーターによる凍結乾燥方法。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4における乾燥方法であって、被乾燥物の容器への搭載の前加工として、蓋を含む容器内面に被乾燥物の面が多く接触するようにするために、被乾燥物にカッティング、スライシング、粉砕等の前処理を行ったことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の遠赤外線ヒーターを用いた凍結乾燥方法。
【請求項6】
側壁、又は側壁と天井に遠赤外線ヒーターを設置した減圧槽と、該減圧槽内に搬送する容器キャリアーと、該容器キャリアーに多段に間隔をおいて搭載する輻射熱の吸収能の高い容器と、該容器に収納する凍結した被乾燥物または凍結していない被乾燥物と、該凍結した被乾燥物を収納した各容器は遠赤外線ヒーターからの熱照射がまんべんなく照射されるように前記容器キャリアーの傾斜面上に配置され、かつ上下に亘って間隔をおいて多段に設置したトレイ支持部材と、減圧槽内で被乾燥物の昇華が起こる減圧状態下で被乾燥物を昇華させる制御部を備えたことを特徴とする凍結乾燥装置。
【請求項7】
請求項6記載の凍結乾燥装置において、前記被乾燥物を搭載する金属製容器又は減圧槽内の雰囲気と通じる蓋付容器の各外面は、フッ素系樹脂又はシリコン系樹脂の黒色あるいは黒色に近い色により焼き付け塗装されていることを特徴とする請求項6記載の凍結乾燥装置。
【請求項8】
被乾燥物を搭載する金属製容器およびその蓋の金属素材を、アルミニウム板あるいはステンレス板で形成したことを特徴とする請求項6又は7記載の凍結乾燥装置。
【請求項9】
被乾燥物を搭載する金属製容器とその蓋のセットを複数段で搭載するための棚をステンレスで形成し、該棚の各段は80mm以上の間隔をあけ、各段に10度以上の勾配をつけた被乾燥物搭載容器を支えるフレームを備えたことを特徴とする請求項6、請求項7又は請求項8記載の凍結乾燥装置。
【請求項10】
請求項6、請求項7、請求項8、又は請求項9記載の凍結乾燥装置において、減圧槽内部には、側壁、又は側壁と天井に遠赤外線ヒーターを設けるとともに、被乾燥物を搭載する金属容器と同じ黒色あるいは黒色に近い色で塗装した温度検知具を遠赤外線ヒーターと被乾燥物を搭載する容器の中心部近傍との距離相当部位に設置し、遠赤外線ヒーターによる被乾燥物搭載容器外面への加熱温度検知手段を設け、さらに、減圧槽内部に圧力センサーを設け槽内の圧力値を検知する圧力検知手段を設け、減圧槽の外部には、遠赤外線ヒーターの温度制御装置、圧力計、圧力調整弁、圧力制御装置、復圧弁、昇華蒸気の凝集捕集装置および真空ポンプを配し、これらを金属製パイプあるいは樹脂製パイプで接続したことを特徴とする請求項6、請求項7、請求項8、又は請求項9記載の凍結乾燥装置。


【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113532(P2013−113532A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261709(P2011−261709)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(593131585)
【出願人】(397015175)エリー株式会社 (3)
【出願人】(512320939)
【出願人】(595063156)株式会社山和エンヂニアリング (3)
【Fターム(参考)】