説明

凝縮性ガス処理機におけるシール装置

【課題】シール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に供給するための特別な液体を不要とし、かつ、その液体を供給するための特別な供給駆動装置をも不要とし得る凝縮性ガス処理機におけるシール装置の提供。
【解決手段】ケーシング2内で凝縮性ガスと接触しながら回転する回転体1が、ケーシング2を貫通する回転軸6に一体回転するように支持され、ケーシング2内を流動する凝縮性ガスが回転軸6のケーシング2に対する貫通箇所からケーシング2外に漏出するのを防止するシール体10が設けられている凝縮性ガス処理機におけるシール装置で、ケーシング2内を流動する凝縮性ガスの一部を分岐流動させて冷却により液化し、液化した液体をケーシング2内を流動する凝縮性ガスの圧力を利用して、シール体10におけるケーシング2または回転軸6に対する接触面10a,10bに供給する液化供給手段LSが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ケーシング内に収納されて、そのケーシングに対して流入出される凝縮性ガスと接触しながら回転する回転体が、前記ケーシングを貫通する回転軸に一体回転するように支持され、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスが前記回転軸のケーシングに対する貫通箇所からケーシング外に漏出するのを防止するシール体が設けられている凝縮性ガス処理機におけるシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】このような凝縮性ガス処理機としては、例えば、回転体を回転駆動することによって凝縮性ガスの一例である水蒸気を昇温昇圧するコンプレッサや、水蒸気によって回転体を回転駆動して、その回転力により発電機を駆動するタービンなどがある。そして、いずれの場合にも、ケーシング内を流動する凝縮性ガスが、ケーシングに対する回転軸の貫通箇所からケーシング外に漏出するのを防止するために、シール体が設けられてはいるものの、そのシール体とケーシングとの間、または、シール体と回転軸との間には、微小ではあるが多少の隙間が存在し、その隙間から凝縮性ガスが漏出する虞がある。
【0003】そこで、従来では、ポンプなどを用いてシール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に水などの液体を強制的に供給し、その液体によってシール体とケーシングまたは回転軸との間に存在する隙間を封鎖して、凝縮性ガスのケーシング外への漏出を防止するように構成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、上述した従来技術では、シール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に供給するための特別な液体を必要とし、しかも、その液体を強制的に供給するためのポンプなどの特別な供給駆動装置をも必要としていた。
【0005】本発明の目的は、ケーシング内を流動する凝縮性ガスを有効に利用することによって、シール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に供給するための特別な液体を不要とし、かつ、その液体を供給するための特別な供給駆動装置をも不要とし得る凝縮性ガス処理機におけるシール装置の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、ケーシング内に収納されて、そのケーシングに対して流入出される凝縮性ガスと接触しながら回転する回転体が、前記ケーシングを貫通する回転軸に一体回転するように支持され、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスが前記回転軸のケーシングに対する貫通箇所からケーシング外に漏出するのを防止するシール体が設けられている凝縮性ガス処理機におけるシール装置であって、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスの一部を分岐流動させて冷却により液化し、その液化した液体を前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスの圧力を利用して、前記シール体における前記ケーシングまたは前記回転軸に対する接触面に供給する液化供給手段が設けられている。
【0007】すなわち、ケーシング内を流動する凝縮性ガスの一部を液化して、その液化した液体をシール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に供給するものであるから、従来のような特別な液体が不要となり、しかも、その液体をケーシング内を流動する凝縮性ガスの圧力を利用して前記接触面に供給するものであるから、従来必要とされたポンプなどの特別な供給駆動装置も不要となる。
【0008】請求項2に記載の発明によれば、前記液化供給手段が、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスから分岐流動された凝縮性ガスをケーシング外部に設けた冷却部に流動させて液化したのち、その液化した液体を前記ケーシングの壁部に形成した流路を通して前記シール体における接触面に供給するように構成されている。
【0009】すなわち、ケーシングの外部に設けられた冷却部により凝縮性ガスを冷却して液化するものであるから、その冷却部として、例えば、冷却効率の良い冷却装置を使用することが可能で、分岐流動された一部の凝縮性ガスを効率良く液化して、シール体におけるケーシングまたは回転軸に対する接触面に供給することができる。
【0010】請求項3に記載の発明によれば、前記液化供給手段が、前記ケーシングの壁部に設けられて、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスを前記シール体における接触面に案内流動させる案内部と、前記ケーシングの壁部の外面部に設けられて前記案内部を流動する凝縮性ガスを冷却して液化する冷却部とを備えて構成されている。
【0011】すなわち、液化供給手段が、ケーシングと一体化された状態となるので、ケーシングとは別に冷却装置などを設ける必要もなく、装置そのものをコンパクトに構成することができる。
【0012】請求項4に記載の発明によれば、前記案内部が、前記シール体の近傍から前記回転体の径方向外方に延びる状態で、かつ、そのケーシング内部側を開口させる状態で前記ケーシングの壁部の内面に設けられている。
【0013】すなわち、凝縮性ガスを案内流動させる案内部が、ケーシング壁部の内面に設けられているので、ケーシング壁部の内部に案内部としての孔などを穿設する必要もなく、案内部の形成が簡単、容易で、装置のコストダウンを図ることができ、それでいて、ケーシング内において凝縮により液化された液滴が、回転体の回転に伴って案内部に集められて、シール体における接触面に案内流動されるので、前記接触面への液体の供給は所望通りに行われる。
【0014】請求項5に記載の発明によれば、前記案内部が、前記回転体の径方向外方側に位置するほど、前記回転体の回転方向後方側に位置するように構成されている。
【0015】したがって、回転体の回転に伴ってケーシング内の液滴が、効率良く集められ、多量の液体が前記接触面に供給される。
【0016】請求項6に記載の発明によれば、前記案内部が、前記シール体の近傍から前記回転体の径方向外方に延びる直線状に構成されている。
【0017】したがって、上述のように、ケーシング内の液滴が効率良く集められるにもかかわらず、案内部が直線状であるため、案内部の形成が簡単、容易となる。
【0018】請求項7に記載の発明によれば、前記案内部が、前記回転体の回転方向前方側に膨出する曲線状に構成されている。
【0019】したがって、案内部を直線状に構成するのに比べて、案内部の形成は多少むずかしくなるが、液滴をより一層効率良く集めることができ、多量の液体を接触面に供給することができる。
【0020】請求項8に記載の発明によれば、前記案内部が、凹入溝状に構成されている。
【0021】したがって、例えば、前記案内部を凸条体などで構成するのに比べて、案内体の形成が容易で、装置のコストダウンを図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。この凝縮性ガス処理機としては、電動モータなどによって回転体を回転駆動することにより、凝縮性ガスの一例である水蒸気を昇温昇圧するコンプレッサや、水蒸気によって回転体を回転駆動して、その回転力により発電機を駆動するタービンなどがあり、かかるコンプレッサやタービンなどは、例えば、コージェネレーションシステムなどに使用される。
【0023】(第1の実施形態)図1は、本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の第1の実施形態を示すもので、凝縮性ガス処理機としてのコンプレッサが示されている。このコンプレッサは、凝縮性ガスの一例である水蒸気と接触しながら回転する回転体としてのインペラ1を備え、そのインペラ1が、ケーシング2の内部に収納されていて、インペラ1の回転中心と同心状に設けられた吸引口3から水蒸気を吸引し、その水蒸気と接触しながら回転して水蒸気を昇温昇圧して、インペラ1の接線方向に沿って設けられた吐出口4から、昇温昇圧後の水蒸気を吐出するように構成されている。
【0024】前記ケーシング2の壁部である背板2aには、貫通孔5が設けられ、その貫通孔5を回転軸6が貫通していて、その回転軸6には、段部6aが設けられ、段部6aより先端側には、シール用の環状凹部7aを備えたシール用筒体7が、段部6aより根元側には、環状凹部8aを備えた筒体8が、それぞれ回転軸6と一体的に回転するように外嵌されている。その回転軸6のシール用筒体7よりも先端側には、インペラ1のボス部1aが外嵌され、かつ、回転軸6の先端部に一体的に形成されたボルト6bにはナット9が螺合され、インペラ1のボス部1aが、シール用筒体7とナット9とに挟み付けられた状態で、インペラ1が、回転軸6に対して一体的に回転するように支持されている。
【0025】前記背板2aの貫通孔5内には、弾性的に拡径する金属製のシール体としてのシール用リング10が縮径状態で内嵌され、そのシール用リング10がシール用環状凹部7aの側面に摺接して、シール用リング10に対する回転軸6の相対回転を許容するように構成されている。つまり、シール用リング10の側面が、回転軸6に対する接触面10aに構成されて、その接触面10aに対して回転軸6側のシール用筒体7が摺接しながら回転し、シール用リング10の外周面が、ケーシング2に対する接触面10bに構成されて、その接触面10bが、ケーシング2の背板2aに設けられた貫通孔5の内面に弾性的に接触して回転不能な状態に取り付けられている。
【0026】前記吐出口4に連通の吐出路11の側面には、吐出路11内を流動する水蒸気の一部を分岐流動させる分岐路12が設けられ、かつ、ケーシング2の背板2aの内部には、シール用リング10の近傍に開口する流路13が形成されていて、分岐路12と流路13とが、管路14によって互いに連通接続されている。その管路14の途中には、冷却部としての空冷式の冷却装置15と流量調節弁16とが介装されてケーシング2の外部に配設され、前記分岐路12、管路14、冷却装置15、ならびに、流路13などによって、ケーシング2内を流動する水蒸気の一部を分岐流動させて冷却により液化し、その液化した水をケーシング内の水蒸気の圧力を利用して、シール用リング10の前記接触面10a,10bに供給する液化供給手段LSが構成されている。
【0027】前記ケーシング2に隣接する軸受ケース17の貫通孔18にも、弾性的に拡径する金属製のリング19が縮径状態で内嵌され、そのリング19が筒体8に設けられた環状凹部8aの側面に摺接して、そのリング19とシール用リング10とによって閉鎖空間が形成され、その閉鎖空間にドレン排出路20が連通されている。なお、前記軸受ケース17には、図外の軸受が保持されて、その軸受により前記回転軸6が回転自在に保持されるとともに、その回転軸6には図外の電動モータが連動連結されていて、その電動モータによって回転駆動されるように構成されている。
【0028】以上の構成からなるコンプレッサにおいては、図外の電動モータによって回転軸6を介してインペラ1が回転されると、吸引口3から水蒸気が吸引され、昇温昇圧されて吐出口4から吐出される。吐出された水蒸気は、吐出路11を介して種々の機器に供給されて各種の用途に供され、その一部が分岐路12と管路14を介して冷却装置15に供給され、冷却装置15による冷却作用で液化される。液化されたのちの水は、吐出口4からの水蒸気の圧力によって、管路14と流路13を介してシール用リング10の近傍に供給され、そのシール用リング10の接触面10bとケーシング2の背板2aとの間の微小な隙間や、接触面10aとシール用環状凹部7aの側面との間の微小な隙間を通ってドレン排出路20からケーシング2の外部へと排出される。
【0029】このようにして、液化されたのちの水が、シール用リング10の接触面10bと背板2aとの間の微小な隙間や、接触面10aとシール用環状凹部7a側面との間の微小な隙間を通過するため、その水の通過によって微小な隙間が封鎖されて、ケーシング2内の水蒸気が、ケーシング2に対する回転軸6の貫通箇所からケーシング2外に漏出することが防止される。同時に、その水によって、シール用リング10が冷却され、シール用リング10に対するシール用環状凹部7aの摺接回転による過熱が抑制され、かつ、リング19と環状凹部8aとの過熱も抑制される。その際、水の一部は、加熱されて再び水蒸気となるが、その際の潜熱によっても冷却効果が促進される。
【0030】なお、上述したコンプレッサにおいては、例えば、吸引口3が標準大気圧であると、吸引口3における水蒸気の温度は少なくとも100℃以上で、吸引口3で100℃の場合、吐出口4における水蒸気の圧力が標準大気圧の2倍であれば、吐出口における水蒸気の温度は200℃となる。標準大気圧の2倍の圧力下において、水蒸気の飽和温度は約120℃となるため、冷却装置15によって、200℃の水蒸気を120℃まで冷却すれば、水蒸気を液化することができる。したがって、空冷式の冷却装置15によっても、水蒸気を液化することは十分に可能であり、液化したのちの水の量が多い場合には、流量調節弁16で流量調節を行うことになる。
【0031】つぎに、第2〜第5の実施形態について説明するが、第1の実施形態と同じ構成部品や同じ作用を有する構成部品については、重複説明を避けるため、同じ符号を付すことにより説明を省略し、主として異なる構成についてのみ説明する。
【0032】(第2の実施形態)図2は、本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の第2の実施形態を示すもので、凝縮性ガス処理機としてのコンプレッサが示されている。このコンプレッサも、第1の実施形態と同様に、回転体としてのインペラ1、吸引口3と吐出口4を有するケーシング2、回転軸6などを備え、ケーシング2の背板2aの貫通孔5内には、シール体としてのシール用リング10が縮径状態で内嵌され、その接触面10aが、シール用環状凹部7aの側面に摺接して、回転軸6の相対回転を許容するように構成されている。
【0033】この第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では、液化供給手段LSを構成する冷却装置15がケーシング2の外部に設けられていたのに対し、第2の実施形態では、冷却装置を含む液化供給手段LS全体がケーシング2と一体化された状態で設けられている点である。すなわち、第2の実施形態では、ケーシング2の背板2aの内部に環状の流路21が設けられ、その環状流路21に分岐路12が連通されるとともに、その環状流路21に連通してシール用リング10の近傍にまで至る案内部としての複数の案内流路22が、ケーシング2の背板2aの内部に放射状に設けられている。そして、ケーシング2の背板2aと軸受ケース17との間には、冷却用の空気が通流する空間が設けられ、その背板2aの外面には、冷却部としての複数の冷却用フィン23が、放射状に配設されて背板2aと一体的に形成されている。
【0034】この第2の実施形態によれば、分岐路12、環状流路21、案内流路22、冷却用フィン23、ならびに、背板2aなどによって液化供給手段LSが構成されて、分岐路12から環状流路21に至った水蒸気が、案内流路22を通過する間に冷却フィン23と背板2aとによる冷却作用で液化され、液化されたのちの水が、吐出口4からの水蒸気の圧力によって、シール用リング10の接触面10a,10bに供給されて、ケーシング2の背板2aと軸受ケース17との間の空間、つまり、ドレン排出路20からケーシング2の外部へと排出される。
【0035】なお、この第2の実施形態においては、図2R>2中で仮想線で示すように、吐出路11と環状流路21とを管路14によって互いに連通接続し、その管路14の途中に流量調節弁16を介装して構成することもできる。
【0036】(第3の実施形態)図3〜図5は、本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の第3の実施形態を示すもので、凝縮性ガス処理機としてのコンプレッサが示されている。このコンプレッサも、第1および第2の実施形態と同様に、インペラ1、ケーシング2、回転軸6などを備え、ケーシング2の背板2aの貫通孔5内には、シール体としてのシール用リング10が縮径状態で内嵌されている。
【0037】この第3の実施形態が第2の実施形態と異なる点は、第2の実施形態では、液化供給手段LSを構成する分岐路12、環状流路21、ならびに、案内流路22が、ケーシング2の背板2aの内部に設けられていたのに対し、第3の実施形態では、第2の実施形態における分岐路12や環状流路21のようなものはなく、案内流路22に相当する凹入溝24aが、ケーシング2の背板2aの内面に設けられている点である。すなわち、第3の実施形態では、ケーシング2の背板2aの内面に、図4に示すように、シール用リング10の近傍からインペラ1の径方向の外方に延びる状態で、ケーシング2の内部側に開口する案内部としての複数の凹入溝24aが、インペラ1の回転中心に向かって放射状に設けられている。なお、各凹入溝24aは、例えば、図5の(イ)に示すように、断面形状U字状に構成することも、図5の(ロ)に示すように、断面形状V字状に構成することもでき、その他、種々の断面形状に構成することもできる。
【0038】この第3の実施形態によれば、凹入溝24a、冷却用フィン23、ならびに、背板2aなどによって液化供給手段LSが構成される。すなわち、ケーシング2内を流動する水蒸気の一部は、図4に示すように、凝縮によって水滴aとなり、インペラ1の回転に伴って、インペラ1と背板2aとの間でインペラ1の回転方向Aに、インペラ1の回転速度のほぼ半分程度の速度で回転している。その水滴aが、各凹入溝24a内に集められるとともに、冷却用フィン23と背板2aとによる冷却作用で水滴aの周りの水蒸気も液化され、このようにして各凹入溝24aに集められた水が、各凹入溝24aにおける圧力差、つまり、インペラ1の径方向外方ほど圧力が高く、インペラ1の径方向内方ほど圧力が低いことに起因して、シール用リング10の接触面10a,10bに供給され、ドレン排出路20からケーシング2の外部へと排出される。
【0039】(第4の実施形態)図6は、本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の第4の実施形態を示すもので、凝縮性ガス処理機としてのコンプレッサは、第3の実施形態のものとほぼ同じで、第3の実施形態と異なる点は、第3の実施形態では、背板2aの内面に設けられた複数の凹入溝24aが、インペラ1の回転中心に向かって放射状に設けられていたのに対し、第4の実施形態では、複数の凹入溝24bが、インペラ1の径方向外方側ほど、インペラ1の回転方向Aの後方側に位置するように傾斜した直線状に構成されている点である。
【0040】この第4の実施形態においても、凹入溝24b、冷却用フィン23、ならびに、背板2aなどによって液化供給手段LSが構成されて、インペラ1と背板2aとの間で回転している水滴aが、各凹入溝24b内に集められるとともに、冷却用フィン23と背板2aとによる冷却作用で水滴aの周りの水蒸気も液化され、このようにして集められた水が、各凹入溝24bにおける圧力差によって、シール用リング10の接触面10a,10bに供給され、ドレン排出路20からケーシング2の外部へと排出される。そして、各凹入溝24bが、インペラ1の径方向外方側ほど、インペラ1の回転方向Aの後方側に位置するように傾斜した直線状に構成されているので、水滴aの回収率が向上するのである。
【0041】(第5の実施形態)図7は、本発明による凝縮性ガス処理機におけるシール装置の第5の実施形態を示すもので、その凝縮性ガス処理機としてのコンプレッサも、第3および第4の実施形態のものとほぼ同じで、異なる点は、背板2aの内面に設けられた複数の凹入溝24cの具体的な構成のみである。すなわち、この第5の実施形態では、複数の凹入溝24cが、インペラ1の径方向外方側ほど、インペラ1の回転方向Aの後方側に位置するように構成され、それに加えて、インペラ1の回転方向Aの前方側に膨出する曲線状、例えば、インボリュート曲線やサイクロイド曲線状に構成されている点である。この第5の実施形態においても、凹入溝24c、冷却用フィン23、ならびに、背板2aなどによって液化供給手段LSが構成され、インペラ1と背板2aとの間で回転している水滴aが、更に一層効率良く各凹入溝24c内に集められて、シール用リング10の接触面10a,10bに供給される。
【0042】〔別実施形態〕
(1)第1〜第5の実施形態では、全てコンプレッサを例に説明したが、いずれの実施形態においても、そのままタービンに置き換えて実施することができ、また、凝縮性ガスの一例として水蒸気を例に説明したが、凝縮性ガスとしては水蒸気に限るものではなく、冷凍用の凝縮性ガスなどの種々のガスに適用することができる。さらに、シール体を金属製のリング10で構成して、そのリング10を回転軸6に外嵌したシール用筒体7の環状凹部7aに摺接される構成を示したが、リング10の材質については金属に限るものではなく、また、そのリング10を摺接させる環状凹部を回転軸6に直接形成することも、環状凹部を設けずに、回転軸6の外周面にリング10を直接摺接させるように構成することもできる。また、回転軸6側にリング10を一体回転自在に外嵌し、そのリング10の外周面や側面をケーシング2側に対して摺接させて回転させるように構成することもできる。
【0043】(2)第1の実施形態では、ケーシング2の外部に設ける冷却部として、空冷式の冷却装置15を示したが、空冷式の冷却装置15に代えて、水冷式の冷却装置など、種々の冷却装置を使用することができる。
【0044】(3)第2〜第5の実施形態では、ケーシング2の背板2aの外面に空冷用フィン23を一体的に設け、それによって水蒸気を冷却して液化する構成を示したが、冷却用フィン23をなくして実施することもできる。つまり、ケーシング2の背板2aの外面に沿って流動する空気の温度が低い場合や、流動する空気の量が多ければ、殊更、背板2aの外面に空冷用フィン23を設けなくとも、水蒸気を冷却して液化することは可能であり、その場合には、ケーシング2の背板2aが冷却部として機能することになる。
【0045】また、第2〜第5の実施形態では、ケーシング2の背板2aの内面に凹入溝24a,24b,24cを設けて案内部を構成した例を示したが、このような凹入溝24a,24b,24cに代えて、背板2aの内面からインペラ1側に突出する凸条を設け、その凸条によって案内部を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態を示すコンプレッサの断面図
【図2】第2の実施形態を示すコンプレッサの断面図
【図3】第3の実施形態を示すコンプレッサの断面図
【図4】第3の実施形態によるコンプレッサの要部の正面図
【図5】第3の実施形態によるコンプレッサの要部の断面図
【図6】第4の実施形態を示すコンプレッサの要部の正面図
【図7】第5の実施形態を示すコンプレッサの要部の正面図
【符号の説明】
1 回転体
2 ケーシング
2a ケーシングの壁部
6 回転軸
10 シール体
10a,10b シール体の接触面
13 流路
15,23 冷却部
22,24a,24b,24c 案内部
LS 液化供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング内に収納されて、そのケーシングに対して流入出される凝縮性ガスと接触しながら回転する回転体が、前記ケーシングを貫通する回転軸に一体回転するように支持され、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスが前記回転軸のケーシングに対する貫通箇所からケーシング外に漏出するのを防止するシール体が設けられている凝縮性ガス処理機におけるシール装置であって、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスの一部を分岐流動させて冷却により液化し、その液化した液体を前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスの圧力を利用して、前記シール体における前記ケーシングまたは前記回転軸に対する接触面に供給する液化供給手段が設けられている凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項2】 前記液化供給手段が、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスから分岐流動された凝縮性ガスをケーシング外部に設けた冷却部に流動させて液化したのち、その液化した液体を前記ケーシングの壁部に形成した流路を通して前記シール体における接触面に供給するように構成されている請求項1に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項3】 前記液化供給手段が、前記ケーシングの壁部に設けられて、前記ケーシング内を流動する凝縮性ガスを前記シール体における接触面に案内流動させる案内部と、前記ケーシングの壁部の外面部に設けられて前記案内部を流動する凝縮性ガスを冷却して液化する冷却部とを備えて構成されている請求項1に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項4】 前記案内部が、前記シール体の近傍から前記回転体の径方向外方に延びる状態で、かつ、そのケーシング内部側を開口させる状態で前記ケーシングの壁部の内面に設けられている請求項3に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項5】 前記案内部が、前記回転体の径方向外方側に位置するほど、前記回転体の回転方向後方側に位置するように構成されている請求項4に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項6】 前記案内部が、前記シール体の近傍から前記回転体の径方向外方に延びる直線状に構成されている請求項5に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項7】 前記案内部が、前記回転体の回転方向前方側に膨出する曲線状に構成されている請求項5に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。
【請求項8】 前記案内部が、凹入溝状に構成されている請求項4〜7のいずれか1項に記載の凝縮性ガス処理機におけるシール装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−346201(P2000−346201A)
【公開日】平成12年12月15日(2000.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−153719
【出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】