説明

分散電源の出力推定方法

【課題】 分散電源および負荷の接続方法に限定されることなく、汎用性に優れた分散電源の出力推定方法を提供する。
【解決手段】 分散電源をインバータにより系統電源と連系させ、分散電源からの電力あるいは系統電源からの電力を負荷に供給する分散電源システムであって、系統電源と分散電源との間に介在した系統変圧器の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置を設置し、その計測装置により母線電圧および系統変圧器の一次、二次電流あるいは配電線電流を計測し、その計測波形をフーリエ変換して高次の高調波を算出し、分散電源の定格出力に対する高次の高調波の含有率と、計測した高次の高調波の含有率とを比較することにより、分散電源の出力量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源をインバータにより系統電源と連系させ、分散電源からの電力あるいは系統電源からの電力を負荷に供給する分散電源システムにおいて、分散電源の出力量を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からクリーンな自然エネルギーの一つとして太陽光を利用した太陽光発電システムが注目されている。この太陽光発電システムは、パワーコンディショナ(電力変換装置)と称されるインバータにより分散電源である太陽電池を商用電源などの系統電源と連系させた構成を具備する。
【0003】
この太陽電池と系統電源とを連系させた太陽光発電システムでは、昼間、太陽電池で発電された直流電力をインバータによるスイッチング動作によって交流変換し、その交流電力を負荷に供給する。一方、太陽電池の発電電力が得られない夜間では、系統電源からの電力をインバータを介してバッテリ等の蓄電器(図示せず)に充電し、昼間にこれを利用することにより昼間の発電電力のピークを抑制し、夜間電力の有効利用を図るようにしている。
【0004】
この太陽光発電システムでは、太陽電池と系統電源とを効率よく連系させて負荷に電力を安定供給するため、太陽電池の発電状態を的確に把握しておく必要があり、その太陽電池の出力量を推定する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に開示された分散電源の出力推定方法は、第1の相間であるAB相間に接続された第1の負荷容量と第2の相間であるBC相間に接続された第2の負荷容量との負荷容量比率が、AB相間に接続された第1の分散電源容量とBC相間に接続された第2の分散電源容量との分散電源容量比率に対して異なるように、分散電源および負荷を接続することによって、AB相間の高圧配電線側で計測された有効電力、負荷容量比率および分散電源容量比率に基づいて分散電源の出力量を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−226798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の特許文献1に開示された分散電源の出力推定方法では、分散電源および負荷を、第1の相間であるAB相間に接続された第1の負荷容量と第2の相間であるBC相間に接続された第2の負荷容量との負荷容量比率が、AB相間に接続された第1の分散電源容量とBC相間に接続された第2の分散電源容量との分散電源容量比率に対して異なるように接続しなければならない。
【0008】
このように、特許文献1に開示された分散電源の出力推定方法では、分散電源および負荷の接続方法が限定されてしまい、汎用性に欠けるという問題があった。また、分散電源の出力量を算出するための計測要素として、有効電力、負荷容量比率および分散電源容量比率からなる多くの計測データを必要とする問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は前述した問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、分散電源および負荷の接続方法に限定されることなく、汎用性に優れた分散電源の出力推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、分散電源をインバータにより系統電源と連系させ、分散電源からの電力あるいは系統電源からの電力を負荷に供給する分散電源システムであって、前記インバータの出力に現出する高次の高調波と分散電源の定格出力との関係に基づいて前記分散電源の出力量を推定することを特徴とする。なお、この分散電源としては太陽電池が好適である。
【0011】
本発明では、インバータのスイッチング動作によりその出力に現出する高次の高調波と分散電源の定格出力との関係に基づいて分散電源の出力量を推定することにより、分散電源および負荷の接続方法に限定されることなく、汎用性に優れた分散電源の出力推定方法を提供できる。しかも、分散電源の出力を推定する上で必要とする計測要素がインバータの出力に現出する高次の高調波のみであるため、必要最小限の計測データでもって分散電源の出力量を推定することができる。
【0012】
本発明において、系統電源と分散電源との間に介在した系統変圧器の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置を設置し、その計測装置により電圧および電流を計測し、その計測波形をフーリエ変換して高次の高調波を算出することが望ましい。このように、系統変圧器の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置を設置すれば、各分散電源の直下に計測装置を設置する必要がなく、遠方からの監視でもって分散電源の出力量を推定することが可能である。
【0013】
本発明において、分散電源の定格出力に対する高次の高調波の含有率と、計測した高次の高調波の含有率とを比較することにより、分散電源の出力量を推定することが望ましい。このようにすれば、分散電源の出力量を的確に推定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インバータのスイッチング動作によりその出力に現出する高次の高調波と分散電源の定格出力との関係に基づいて分散電源の出力量を推定することにより、分散電源および負荷の接続方法に限定されることなく、汎用性に優れた分散電源の出力推定方法を提供できる。しかも、分散電源の出力量を推定する上で必要とする計測要素がインバータの出力に現出する高次の高調波のみであるため、必要最小限の計測データでもって分散電源の出力量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態で、分散電源の出力推定方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態で、分散電源の一例としての太陽電池を持つ太陽光発電システムに計測装置を設置した一つの接続例を示す構成図である。
【図3】図2の太陽光発電システムに計測装置を設置した他の接続例を示す構成図である。
【図4】図2の太陽光発電システムに計測装置を設置した他の接続例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る分散電源の出力推定方法の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、分散電源の一例としての太陽電池を持つ太陽光発電システムに適用した場合を例示する。また、本発明は、この太陽光発電システム以外に、電力変換装置であるインバータを備えた風力発電システムにも適用可能である。
【0017】
この実施形態における太陽光発電システムは、図2に示すように、パワーコンディショナ(電力変換装置)と称されるインバータ10により分散電源である太陽電池20を商用電源などの系統電源30と連系させた構成を具備する。なお、図中の符号40は、変電所などに設置され、系統電源30と太陽電池20との間に介在する系統変圧器である。この系統変圧器40は、系統電源30から延びる系統母線70に接続され、太陽電池20は、その系統母線70から分岐する配電線80に接続されている。
【0018】
この太陽電池20と系統電源30とを連系させた太陽光発電システムでは、昼間、太陽電池20で発電された直流電力をインバータ10によるスイッチング動作によって交流変換し、その交流電力を負荷50に供給する。一方、太陽電池20の発電電力が得られない夜間では、系統電源30からの電力をインバータ10を介してバッテリ等の蓄電器(図示せず)に充電し、昼間にこれを利用することにより昼間の発電電力のピークを抑制し、夜間電力の有効利用を図るようにしている。
【0019】
この太陽光発電システムでは、太陽電池20と系統電源30とを効率よく連系させて負荷50に電力を安定供給するため、太陽電池20の発電状態を的確に把握しておく必要がある。そこで、この実施形態における太陽光発電システムでは、以下のような太陽電池20の出力推定方法を採用している。
【0020】
この太陽光発電システムでは、系統電源30と太陽電池20との間に介在した系統変圧器40の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置60を設置する。このように、系統変圧器40の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置60を設置すれば、計測装置60やその計測装置60で得られた測定データを伝送するための通信装置を太陽電池20の直下に設置する必要がなく、遠方からの監視でもって太陽電池20の出力量を推定することが可能である。
【0021】
図2は系統変圧器40の二次側に計測装置60を設置した場合を例示する。この場合、計測装置60のVT(計器用変圧器)を系統母線70に接続して母線電圧を計測すると共にCT(変流器)も系統母線70に接続して系統変圧器40の二次電流を計測する。また、図3も系統変圧器40の二次側に計測装置60を設置した場合を例示する。この場合、計測装置60のVTを系統母線70に接続して母線電圧を計測すると共にCTを配電線80に接続して配電線電流を計測する。さらに、図4は系統変圧器40の一次側に計測装置60を設置した場合を例示する。この場合、計測装置60のVTを系統母線70に接続して母線電圧を計測すると共にCTも系統母線70に接続して系統変圧器40の一次電流を計測する。
【0022】
この計測装置60では、図1に示すように、VTおよびCTを介して母線電圧および系統変圧器40の一次、二次電流あるいは配電線電流を計測し(STEP1)、その計測波形をフーリエ変換してインバータ10のスイッチング動作により現出する高次の高調波を算出する(STEP2)。そして、インバータ10の出力に現出する高次の高調波と太陽電池20の定格出力との関係に基づいて太陽電池20の出力量を推定する。つまり、太陽電池20の定格出力に対する高次の高調波の含有率と、計測した高次の高調波の含有率とを比較することにより(STEP3)、太陽電池20の出力量を推定する(STEP4)。例えば、この高調波の含有率が高いほど、太陽電池20の出力量が大きい場合がある。
【0023】
ここで、パワーエレクトロニクス技術の急速な進歩により、太陽電池20を含め、家電機器、OA機器や産業用機器に至るまで多くの負荷50にインバータ10が使用され、電力系統に高調波の発生源が多く存在している。この実施形態における太陽電池20は、例えば100kW程度の出力量を有するものである。高次の高調波とは、例えば13次を超える高調波を意味し、この実施形態で設置する計測装置60では、例えば50次程度までの高調波を算出することが可能である。
【0024】
このように13次を超える高次の高調波の含有率を算出することにより、太陽電池20以外の負荷50から発生する低次(例えば3,5,7次などの13次以下)の高調波の影響が受け難くなり、太陽電池20を駆動するためにスイッチング動作するインバータ10の出力に現出する高次の高調波のみを計測することができ、太陽電池20の出力量を的確に推定することができる。
【0025】
以上の実施形態では、インバータ10のスイッチング動作によりその出力に現出する高次の高調波と太陽電池20の定格出力との関係に基づいて太陽電池20の出力量を推定することにより、太陽電池20および負荷50の接続方法に限定されることなく、汎用性に優れた太陽電池20の出力推定方法を提供できる。しかも、太陽電池20の出力量を推定する上で必要とする計測要素がインバータ10の出力に現出する高次の高調波のみであるため、必要最小限の計測データでもって太陽電池20の出力量を推定することができる。また、このように太陽電池20の出力量を推定することにより、太陽電池20が設置された現場での気象情報(天気や日射量)などの推定も可能となる。
【0026】
例えば、異なったキャリア周波数を持つ複数のインバータ10と、それらのインバータ10により駆動される複数の太陽電池20とが同一の系統電源30に接続された太陽光発電システムでは、それぞれのキャリア周波数に伴う特定次数の高調波の含有率を算出することにより、複数の太陽電池20のそれぞれについてその出力量を推定することも可能である。
【0027】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0028】
10 インバータ
20 分散電源(太陽電池)
30 系統電源
40 系統変圧器
50 負荷
60 計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散電源をインバータにより系統電源と連系させ、分散電源からの電力あるいは系統電源からの電力を負荷に供給する分散電源システムであって、前記インバータの出力に現出する高次の高調波と分散電源の定格出力との関係に基づいて前記分散電源の出力量を推定することを特徴とする分散電源の出力推定方法。
【請求項2】
前記系統電源と分散電源との間に介在した系統変圧器の一次側あるいは二次側のいずれか一方に計測装置を設置し、その計測装置により電圧および電流を計測し、その計測波形をフーリエ変換して高次の高調波を算出する請求項1に記載の分散電源の出力推定方法。
【請求項3】
前記分散電源の定格出力に対する高次の高調波の含有率と、計測した高次の高調波の含有率とを比較することにより、分散電源の出力量を推定する請求項1又は2に記載の分散電源の出力推定方法。
【請求項4】
前記分散電源は太陽電池である請求項1〜3のいずれか一項に記載の分散電源の出力推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−244655(P2012−244655A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109306(P2011−109306)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 DVD−ROM 平成23年 電気学会全国大会 講演論文集 発行日 平成23年3月5日 発行所 社団法人電気学会 該当ページ 第6分冊 第18〜19頁(6−011)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】