説明

分枝鎖アルコキシアルカノエートを含む農薬組成物

本発明は、農薬、製剤助剤及びアルコキシアルカノエートを含む液体農薬組成物、並びに、該組成物を調製する方法に関する。本発明は、さらに、式(V):R3-C(O)-(O-R4)n-OH〔式中、R3は、分枝鎖C7-C9-アルキルであり、R4は、C2-C4-アルキレンであり、及び、nは、1〜3である〕で表されるアルコキシアルカノエートにも関する。本発明は、さらに、農薬製剤中におけるアルコキシアルカノエート(V)の使用にも関する。本発明は、さらに、植物病原性菌類及び/又は植物の望ましくない成長及び/又は昆虫類若しくはダニ類による望ましくない侵襲と闘うための、及び/又は、植物の成長を調節するための、本発明による組成物の使用にも関する。本発明は、さらに、昆虫類若しくはダニ類による植物に対する望ましくない侵襲と闘うための、及び/又は、植物病原性菌類と闘うための、及び/又は、植物の望ましくない成長と闘うための、本発明による組成物の使用(ここで、有用な植物の種子を、当該組成物で処理する)にも関する。本発明は、最後に、本発明による組成物で処理された種子にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬、製剤助剤及びアルコキシアルカノエートを含む液体農薬組成物、並びに、そのような組成物を調製する方法に関する。本発明は、さらに、式(V)
R3-C(O)-(O-R4)n-OH V
〔式中、R3は、分枝鎖C7-C9-アルキルであり、R4は、C2-C4-アルキレンであり、及び、nは、1〜3である〕
で表されるアルコキシアルカノエートにも関する。
【0002】
本発明は、さらに、農薬製剤中におけるアルコキシアルカノエート(V)の使用にも関する。本発明は、さらに、植物病原性菌類及び/又は望ましくない植生及び/又は昆虫類若しくはダニ類による望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物の成長を調節するための、本発明による組成物の使用にも関する。さらに、本発明は、昆虫類若しくはダニ類による植物に対する望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物病原性菌類を防除するための、及び/又は、望ましくない植生を防除するための、本発明による組成物の使用(ここで、有用な植物の種子を、当該組成物で処理する)にも関する。最後に、本発明は、本発明による組成物で処理された種子にも関する。本発明は、好ましい態様と別の好ましい態様の組合せを包含する。
【背景技術】
【0003】
農薬、製剤助剤及びアルコキシアルカノエートを含む農薬組成物は、一般に、知られている。
【0004】
WO 2004/010782 A2には、植物を少なくとも14個の炭素原子を有するカルボン酸エステルを含む組成物と接触させることを含む、植物におけるウイルスを防除する方法が開示されている。挙げられているエステル基は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。該組成物は、さらに、非イオン性界面活性剤と、場合により農薬を含む。
【0005】
JP 2005 112 727 Aには、モモの花(peach blossom)を処理するための組成物が開示されており、ここで、該組成物は、C8-C16-脂肪酸の脂肪酸エステルを含む。該エステルのアルコール部分は、例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールであり得る。該脂肪酸は、例えば、2-エチルヘキシル基であり得る。
【0006】
JP 09 059 210 Aには、分枝鎖プロピレングリコールを有するC2-11-脂肪族酸のエステルを99-51%含む溶媒が開示されている。該溶媒は、農薬組成物に適している。
【0007】
WO 2007/110435には、ピレスロイド、有機溶媒及び界面活性剤混合物を含む水性マイクロエマルションが開示されている。記載されている溶媒は、とりわけ、1、2又は3のアルキレンオキシド基を有するポリアルキレンオキシドのC1-C4-アルキルエステルである。
【0008】
EP 1 911 349 A2には、アルコキシ-(C12-30)アルカノエートで農業産物を処理することによる農業産物の収穫量を増大させる方法が開示されている。
【0009】
JP 2004107214 Aには、界面活性剤、高沸点溶媒、水に浮く中空体及びガラス粉末を含む水に浮く農薬製剤が開示されている。オクタン酸、ノナン酸又はデカン酸のエチレングリコールモノエステルが界面活性剤として開示されている。
【0010】
アルコキシアルカノエートも、一般に知られている。
【0011】
「Environmental Pollution 2008, 151, 231-242」において、Grigoriadouらは、2-エチルヘキサン酸2-ヒドロキシプロピル(式9)を開示しており、これは、水サンプルの分析中に確認された。合成方法や単離方法については開示されていない。
【0012】
EP 0 862 861 A1には、例えばプロピレングリコールモノラウレートの中で選択される、脂肪酸エステルを含む殺虫剤組成物が開示されている。
【0013】
WO 99/30559 A1には、C8-C14-脂肪酸エステルを含む組成物を使用することによる線虫の卵を撲滅する方法が開示されている。該エステル基は、好ましくは、エチレングリコールである。
【0014】
EP 1 151 667 A2には、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを有する直鎖又は分枝鎖のC12-C30-酸のエステルの中から選択される、植物を活性化する化合物が開示されている。
【0015】
WO 2001/34898には、芳香族ホルムアルデヒド縮合物、脂肪族カルボン酸、芳香族スルホン酸及び溶媒(ここで、該溶媒は、例えば、1〜10のアルキレンオキシド単位を有するポリアルキレンオキシドのC1-C6-アルキルエステルであり得る)を含む水溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO 2004/010782 A2
【特許文献2】JP 2005 112 727 A
【特許文献3】JP 09 059 210 A
【特許文献4】WO 2007/110435
【特許文献5】EP 1 911 349 A2
【特許文献6】JP 2004107214 A
【特許文献7】EP 0 862 861 A1
【特許文献8】WO 99/30559 A1
【特許文献9】EP 1 151 667 A2
【特許文献10】WO 2001/34898
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Environmental Pollution 2008, 151, 231-242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、安定でありながら多量の農薬を含有することを可能とする農薬含有組成物を提供することであった。これに関連して、「安定な」は、当該組成物、特に、水で希釈されたときにおける当該組成物が、たとえ結晶化するとしても、その傾向を殆ど示さないということを意味する。さらに、農薬が溶解されている場合及び懸濁されている場合のいずれにおいても、上記組成物が結晶化する傾向を殆ど示さないということも、目的であった。さらに、結晶化する傾向を殆ど示さないエマルション濃縮物の形態にある農薬含有組成物を提供することも目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、農薬、製剤助剤及びアルコキシアルカノエート(ここで、該アルコキシアルカノエートは、式(I)
R1-C(O)-(O-R2)n-OH I
〔式中、
R1は、分枝鎖C3-C15-アルキルであり;
R2は、C2-C4-アルキレンであり;及び、
nは、1〜3である〕
で表される)を含む液体農薬組成物によって達成された。
【0020】
R1は、分枝鎖C3-C15-アルキル基である。このことは、該アルキル基が、3〜15個の炭素原子を有していて、その炭素鎖内に少なくとも1、好ましくは、1〜3の分枝鎖を有することを意味する。R1は、飽和していることも又は不飽和であることも可能であり、好ましくは、R1は、飽和している。R1は、さらに、環状構造を含んでいてもよい。好ましくは、R1は、環状構造を含んでいない。R1は、好ましくは、分枝鎖C7-C11-アルキルであり、特に、分枝鎖C8-C9-アルキルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態では、R1は、式(A)〜式(J)
【化1】

【0022】
〔式中、#は、式(I)のカルボニル基への結合を意味する〕
で表される構造である。R1は、特に、式(F)、式(G)又は式(H)で表される構造である。
【0023】
R2は、C2-C4-アルキレン、例えば、-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH(CH2CH3)-、-CH2-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-CH2-である。R2は、好ましくは、C2-C3-アルキレン、例えば、-CH2-CH2-又は-CH2-CH(CH3)-である。
【0024】
添え字nは、特定の範囲内の値、例えば、1〜3であることができる。このことは、1、2又は3などの整数のみではなく、1.15などの整数の間の値であってもよいということを意味する。nは、好ましくは、1又は2であり、特に好ましくは、1である。好ましいさらなる実施形態では、該アルコキシアルカノエートは、酸をアルコキシル化することによって調製し、及び、nは、1.1〜2.9であり、好ましくは、1.3〜2.6である。
【0025】
適切なアルコキシアルカノエート(I)は、例えば、式(II)、式(III)及び式(IV)
【化2】

【0026】
〔式中、nは、1〜3の値であり、好ましくは、1〜2の値であり、特に、1である〕
で表される化合物である。
【0027】
本発明による組成物は、その組成物に基づいて、通常、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも30重量%、特に好ましくは、少なくとも40重量%の、式(I)で表されるアルコキシアルカノエートを含む。殆どの場合、該組成物は、95重量%以下、好ましくは、90重量%以下、特に好ましくは、80重量%以下の、アルコキシアルカノエート(I)を含む。
【0028】
表現「農薬」は、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤及び/又は成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種類の活性物質を意味する。好ましい農薬は、殺菌剤、殺虫剤及び除草剤であり、特に、殺菌剤である。上記で挙げた種類ののうちの2種類以上の農薬の混合物を使用することもできる。当業者は、そのような農薬について精通しており、それらは、例えば、「Pesticide Manual, 14th Ed. (2006), The British Crop Protection Council, London」の中に見いだすことができる。適切な殺虫剤は、カーバメート系、有機リン酸エステル系、有機塩素殺虫剤、フェニルピラゾール系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、スピノシン系、アベルメクチン類、ミルベマイシン類、幼若ホルモン類似体、ハロゲン化アルキル系、有機スズ化合物、ネライストキシン類似体、ベンゾイル尿素系、ジアシルヒドラジン系、METI殺ダニ剤の類から選択される殺虫剤、及び、クロロピクリン、ピメトロジン、フロニカミド、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール、ジアフェンチウロン、プロパルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、DNOC、ブプロフェジン、シロマジン、アミトラズ、ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリム、ロテノン又はそれらの誘導体などの殺虫剤である。適切な殺菌剤は、ジニトロアニリン系、アリルアミン系、アニリノピリミジン系、抗生物質、芳香族炭化水素系、ベンゼンスルホンアミド系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾイソチアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾチアジアゾール系、ベンゾトリアジン系、ベンジルカーバメート系、カーバメート系、カルボキサミド系、カルボン酸アミド系、クロロニトリル系、シアノアセトアミドオキシム系、シアノイミダゾール系、シクロプロパンカルボキサミド系、ジカルボキシイミド系、ジヒドロジオキサジン系、クロトン酸ジニトロフェニル系、ジチオカーバメート系、ジチオラン系、エチルホスホネート系、エチルアミノチアゾールカルボキサミド系、グアニジン系、ヒドロキシ-(2-アミノ-)ピリミジン系、ヒドロキシアニリド系、イミダゾール系、イミダゾリノン系、無機物質、イソベンゾフラノン系、メトキシアクリレート系、メトキシカーバメート系、モルホリン系、N-フェニルカーバメート系、オキサゾリジンジオン系、オキシイミノアセテート系、オキシイミノアセトアミド系、ペプチジルピリミジンヌクレオシド系、フェニルアセトアミド系、フェニルアミド系、フェニルピロール系、フェニル尿素系、ホスホネート系、ホスホロチオレート系、フタルアミド酸系、フタルイミド系、ピペラジン系、ピペリジン系、プロピオンアミド系、ピリダジノン系、ピリジン系、ピリジニルメチルベンズアミド系、ピリミジンアミン系、ピリミジン系、ピリミジノンヒドラゾン系、ピロロキノリノン系、キナゾリノン系、キノリン系、キノン系、スルファミド系、スルファモイルトリアゾール系、チアゾールカルボキサミド系、チオカーバメート系、チオファネート系、チオフェンカルボキサミド系、トルアミド系、トリフェニルスズ化合物、トリアジン系、トリアゾール系の類から選択される殺菌剤である。適切な除草剤は、アセトアミド系、アミド系、アリールオキシフェノキシプロピオネート系、ベンズアミド系、ベンゾフラン系、安息香酸系、ベンゾチアジアジノン系、ビピリジリウム系、カーバメート系、クロロアセトアミド系、クロロカルボン酸系、シクロヘキサンジオン系、ジニトロアニリン系、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル系、グリシン系、イミダゾリノン系、イソオキサゾール系、イソオキサゾリジノン系、ニトリル系、N-フェニルフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサゾリジンジオン系、オキシアセトアミド系、フェノキシカルボン酸系、フェニルカーバメート系、フェニルピラゾール系、フェニルピラゾリン系、フェニルピラダジン系、ホスフィン酸系、ホスホロアミデート系、ホスホロジチオエート系、フタルアメート系(phthalamates)、ピラゾール系、ピリダジノン系、ピリジン系、ピリジンカルボン酸系、ピリジンカルボキサミド系、ピリミジンジオン系、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート系、キノリンカルボン酸系、セミカルバゾン系、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系、スルホニル尿素系、テトラゾリノン系、チアジアゾール系、チオカーバメート系、トリアジン系、トリアジノン系、トリアゾール系、トリアゾリノン系、トリアゾロカルボキサミド系、トリアゾロピリミジン系、トリケトン系、ウラシル系、尿素系の類から選択される除草剤である。
【0029】
一実施形態では、該農薬は、殺虫剤を含む。好ましくは、該農薬は、少なくとも1種類の殺虫剤からなる。さらなる実施形態では、該農薬は、殺菌剤を含む。好ましくは、該農薬は、少なくとも1種類の殺菌剤からなる。好ましい殺菌剤は、ピラクロストロビン、メトコナゾール及びエポキシコナゾールである。さらなる実施形態では、該農薬は、除草剤を含む。好ましくは、該農薬は、少なくとも1種類の除草剤からなる。さらなる実施形態では、該農薬は、成長調節剤を含む。好ましくは、該農薬は、少なくとも1種類の成長調節剤からなる。
【0030】
一実施形態では、該農薬は、20℃で、少なくとも10g/Lまで、好ましくは、少なくとも30g/Lまで、特に好ましくは、少なくとも50g/Lまで、アルコキシアルカノエートに溶解し得る。ここで使用する溶媒系は、何れの場合においても使用されるアルコキシアルカノエートである。
【0031】
さらなる実施形態では、該農薬は、当該液体農薬組成物の中に溶解した形態で存在する。
【0032】
該農薬は、好ましくは、20℃で、その農薬に基づいて、少なくとも90重量%まで、好ましくは、少なくとも98重量%まで、該溶媒系に溶解している。
【0033】
さらなる実施形態では、少なくとも1種類の農薬は、その農薬に基づいて、少なくとも90重量%まで、固体粒子の形態で該溶媒系に懸濁している。該組成物が少なくとも2種類の農薬を含む場合、少なくとも1種類の農薬は、少なくとも90重量%まで、該溶媒系に溶解している。好ましくは、該農薬は、少なくとも95重量%まで、特に好ましくは、少なくとも98重量%まで、該溶媒系に懸濁している。
【0034】
本発明による組成物は、その組成物に基づいて、通常、0.1〜70重量%の農薬を含んでおり、好ましくは、1〜50重量%、特に、3〜30重量%の農薬を含む。
【0035】
本発明による組成物は、製剤助剤を含んでおり、該助剤の選択は、通常、特定の使用形態又は活性物質に依存する。適切な製剤助剤の例は、追加の溶媒、界面活性剤及び別の表面-活性物質(例えば、可溶化剤、保護コロイド、湿潤剤、及び、接着剤)、アジュバント、有機増粘剤及び無機増粘剤、殺細菌剤、不凍剤、消泡剤、着色剤及び粘着付与剤(例えば、飼料に処理する場合)である。
【0036】
組成物の中に、上記溶媒、式(I)で表されるアルコキシアルカノエートに加えて存在させることができる適切な追加の溶媒は、有機溶媒、例えば、中〜高沸点の鉱油留分、例えば、灯油及びディーゼル油、さらに、コールタール油、並びに、植物又は動物起源の油、脂肪族、環式及び芳香族の炭化水素、例えば、パラフィン類、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン類及びそれらの誘導体、アルキル化ベンゼン類及びそれらの誘導体、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール及びシクロヘキサノール、グリコール類、ケトン類、例えば、シクロヘキサノン及びガンマ-ブチロラクトン、ジメチル脂肪酸アミド類、脂肪酸及び脂肪酸エステル類、並びに、強極性溶媒、例えば、アミン類、例えば、N-メチルピロリドンなどである。ベンジルアルコールなどのアルコール類を使用するのが好ましい。原則として、溶媒混合物を使用することも可能である。本発明による組成物に対して、何れの場合にも当該組成物に基づいて、40重量%以下、好ましくは、20重量%以下の量で添加するのが好ましい。
【0037】
界面活性剤は、個別に使用することができるか、又は、混合物の形態で使用することができる。界面活性剤は、水の表面張力を低減させる化合物である。界面活性剤の例は、イオン性(アニオン性、又は、カチオン性)界面活性剤及び非イオン性界面活性剤である。該組成物は、好ましくは、少なくとも2種類の界面活性剤を含有する。特に好ましくは、該組成物は、1種類の非イオン性界面活性剤と1種類のアニオン性界面活性剤を含有する。非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の重量比は、殆どの場合、1:5〜5:1であり、好ましくは、1:3〜3:1である。
【0038】
適切なイオン性界面活性剤は、以下のものである:芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、例えば、リグノスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Borresperse(登録商標)タイプ:Borregaard, Norway)、フェノールスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Morwet(登録商標)タイプ:Akzo Nobel, USA)並びにジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Nekal(登録商標)タイプ:BASF, Germany)、並びに、脂肪酸の、アルキルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートの、アルキルスルフェートの、ラウリルエーテルスルフェート及び脂肪アルコールスルフェートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、並びに、硫酸化ヘキサデカノール、硫酸化ヘプタデカノール及び硫酸化オクタデカノールの塩、並びに、脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合物、ポリカルボキシレート類(Sokalan(登録商標)タイプ:BASF, Germany)、又は、アルコキシル化アルコール類のリン酸エステル。
【0039】
好ましいイオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。適切なアニオン性界面活性剤は、以下のものである:アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシル化アルカノール(エトキシル化度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)及びエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸モノエステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、並びに、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、又は、アルコキシル化アルコールのリン酸エステル、特に、エトキシル化度3〜15のエトキシル化C10-16-脂肪アルコールのリン酸エステル。さらにまた、適しているアニオン性界面活性剤は、一般式(I)
【化3】

【0040】
〔式中、R1及びR2は、H原子又はC4-C24-アルキルであって、同時にH原子であることはなく、M1及びM2は、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであることができる〕
で表される化合物である。一般式(I)において、R1及びR2は、好ましくは、6〜18個のC原子、特に、6個、12個及び16個のC原子を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基又は水素であり、ここで、R1及びR2は、両方とも同時にH原子であることはない。M1及びM2は、好ましくは、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムであり、ナトリウムが特に好ましい。特に有利なのは、M1及びM2がナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖アルキル基であり且つR2がH原子であるか又はR1である化合物(I)である。多くの場合、50〜90重量%のモノアルキル化生成物を含む工業用混合物(technical mixture)、例えば、Dowfax(登録商標) 2A1(「Dow Chemical Company」の商標)等を使用する。好ましいアニオン性界面活性剤は、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)(好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又は分枝鎖アルキルベンゼンスルホン酸)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及び、エトキシル化度3〜15のエトキシル化C10-16-脂肪アルコールのリン酸エステルである。
【0041】
適切な非イオン性界面活性剤は、以下のものである:ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル類、アルコキシル化アルコール類、例えば、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-又はノニルフェノールポリグリコールエーテル類、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール類、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類又はポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル類、リグニン-スルファイト廃液、並びに、タンパク質、変性タンパク質、多糖(例えば、メチルセルロース)、疎水性に変性されたデンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ:Clariant)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)タイプ:BASF SE)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)タイプ:BASF SE)、ポリビニルピロリドン及びそれらのコポリマー又はブロックコポリマー。適切なアルコキシル化アルコールは、好ましくは、エチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)でアルコキシル化されていて、特に、脂肪アルコール残基内に8〜32個の炭素原子(とりわけ、9〜18個の炭素原子)を有する脂肪アルコールである。そのようなアルコキシル化脂肪アルコールは、通常、エトキシル化度が、1〜30、好ましくは、2〜10、特に、4〜8のエチレンオキシド基であり、及び/又は、プロポキシル化度が、1〜30、好ましくは、2〜15、特に、3〜10のプロピレンオキシド基である。上記ブロックコポリマーは、通常、ジブロックコポリマー若しくはトリブロックコポリマー又はそれらの誘導体であり、そのポリマー部分は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドで構成されている。その平均モル質量は、通常、少なくとも1000g/molであり、好ましくは、少なくとも2000g/molである。特に適している物質は、モル質量が少なくとも2000g/molで、C1-10-アルキルエーテルを有するポリ(エチレンオキシドブロックプロピレンオキシド)アルキルエーテルである。好ましい非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールポリグリコールエーテル類、トリスチリルフェノールエトキシレート類、エトキシル化ヒマシ油であり、好ましくは、何れの場合にも、1分子当たり10〜40のエチレンオキシド単位を有しているものである。
【0042】
上記界面活性剤に加えて、適切な表面-活性物質(アジュバント、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤又は乳化剤)は、以下のものである:芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、例えば、リグノスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Borresperse(登録商標)タイプ:Borregaard, Norway)、フェノールスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Morwet(登録商標)タイプ:Akzo Nobel)及びジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩(Nekal(登録商標)タイプ:BASF)、並びに、脂肪酸、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、ラウリルエーテルスルフェート及び脂肪アルコールスルフェートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、並びに、硫酸化ヘキサデカノール、硫酸化ヘプタデカノール及び硫酸化オクタデカノールの塩、並びに、脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、エトキシル化オクチルフェノール又はエトキシル化ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン-スルファイト廃液、並びに、タンパク質、変性タンパク質、多糖(例えば、メチルセルロース)、疎水性に変性されたデンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ:Clariant)、ポリカルボキシレート(Sokolan(登録商標)タイプ:BASF)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)タイプ:BASF)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)タイプ:BASF SE)、ポリビニルピロリドン及びそれらのコポリマー。
【0043】
本発明による組成物は、大量の表面-活性物質及び界面活性剤を含有することができる。本発明による組成物は、その組成物の総量に基づいて、総量で、0.1〜40重量%、好ましくは、1〜30重量%、特に、2〜20重量%の、表面-活性物質及び界面活性剤を含有することができる。
【0044】
アジュバントの例は、以下のものである:有機的に修飾されたポリシロキサン、例えば、BreakThruS 240(登録商標);アルコールアルコキシレート、例えば、Atplus(登録商標) 245、Atplus(登録商標) MBA 1303、Plurafac(登録商標) LF、及び、Lutensol(登録商標) ON;EO/POブロックポリマー、例えば、Pluronic(登録商標) RPE 2035、及び、Genapol(登録商標) B;アルコールエトキシレート、例えば、Lutensol(登録商標) XP 80;並びに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、例えば、Leophen(登録商標) RA。
【0045】
増粘剤(即ち、組成物に対して改変された流動性を付与する化合物、即ち、静止状態においては高い粘性を付与し、運動状態では低い粘性を付与する化合物)は、多糖、並びに、有機及び無機の層鉱物(layer mineral)、例えば、キサンタンガム(Kelzan(登録商標):CP Kelco)、Rhodopol(登録商標) 23(Rhodia)、又は、Veegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt)、又は、Attaclay(登録商標)(Engelhard Corp.)である。
【0046】
組成物を安定化させるために、殺細菌剤を添加することができる。殺細菌剤の例は、ジクロロフェンとベンジルアルコールヘミホルマールに基づく殺細菌剤〔ICI製Proxel(登録商標)、又は、Thor Chemie製Acticide(登録商標) RS、及び、Rohm & Haas製Kathon(登録商標) MK〕、及び、イソチアゾリノン誘導体、例えば、アルキルイソチアゾリノン及びベンゾイソチアゾリノンに基づく殺細菌剤〔Thor Chemie製Acticide(登録商標) MBS〕である。
【0047】
適切な不凍剤の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセロールである。
【0048】
消泡剤の例は、シリコーンエマルション(例えば、Silikon(登録商標) SRE:Wacker, Germany、又は、Rhodorsil(登録商標):Rhodia, France)、長鎖アルコール、脂肪酸、脂肪酸の塩、有機フッ素化合物及びそれらの混合物である。
【0049】
着色剤の例は、水に難溶性の顔料と水中で溶解する染料の両方である。挙げることができる例は、以下の名称で知られている染料及び顔料である:Rhodamine B、C.I. Pigment Red 112 及び C.I. Solvent Red 1、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 80、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 13、Pigment Red 48:2、Pigment Red 48:1、Pigment Red 57:1、Pigment Red 53:1、Pigment Orange 43、Pigment Orange 34、Pigment Orange 5、Pigment Green 36、Pigment Green 7、Pigment White 6、Pigment Brown 25、Basic Violet 10、Basic Violet 49、Acid Red 51、Acid Red 52、Acid Red 14、Acid Blue 9、Acid Yellow 23、Basic Red 10、Basic Red 108。
【0050】
粘着付与剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール及びセルロースエーテル(Tylose(登録商標):Shin-Etsu, Japan)である。
【0051】
本発明による組成物は、通常、農薬製剤の形態で存在する。適切な農薬製剤は、水溶性濃縮物(SL, LS)、分散性濃縮物(DC)、乳化性濃縮物(EC)、エマルション(EW, EO, ES, ME)、懸濁液(SC, OD, FS)又はサスポエマルション(SE)である。該組成物は、好ましくは、乳化性濃縮物(EC)の形態で存在する。好ましい実施形態では、本発明による組成物は、液体組成物の形態で、例えば、水溶性濃縮物(SL, LS)、再分散性濃縮物(redispersible concentrates)(DC)、乳化性濃縮物(EC)、エマルション(EW, EO, ES, ME)、懸濁液(SC, OD, FS)又はサスポエマルション(SE)の形態で存在する。
【0052】
殆どの場合、本発明による組成物は、タンクミックスとして知られているものを調製するために、使用の前に希釈する。そのような希釈に適している物質は、中〜高沸点の鉱油留分、例えば、灯油及びディーゼル油、さらに、コールタール油、並びに、植物又は動物起源の油、脂肪族、環式及び芳香族の炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン類又はそれらの誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又は水である。水を使用するのが好ましい。該希釈組成物は、通常、散布又は噴霧によって施用する。使用(タンクミックス)直前に、該タンクミックスに、さまざまなタイプの油、湿潤剤、アジュバント、除草剤、殺細菌剤、殺菌剤を添加することができる。これらの作用物質は、本発明による組成物と、1:100〜100:1の重量比、好ましくは、1:10〜10:1の重量比で混合させることができる。該タンクミックス内の農薬の濃度は、実質的な範囲内で変えることができる。一般に、該濃度は、0.0001〜10%、好ましくは、0.01〜1%である。植物保護において使用する場合、その施用量は、所望される効果の質に応じて、1ha当たり0.01〜2.0kgの活性物質である。
【0053】
本発明は、さらにまた、植物病原性菌類及び/又は望ましくない植生及び/又は昆虫類若しくはダニ類による望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物の成長を調節するための、本発明による組成物の使用にも関し、ここで、該組成物を、それぞれの有害生物、それらの環境若しくはそのそれぞれの有害生物から保護しようとする植物に作用させるか、または、土壌及び/若しくは望ましくない植物及び/若しくは有用な植物及び/若しくはそれらの環境に作用させる。本発明は、さらに、植物に対する昆虫類若しくはダニ類による望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物病原性菌類を防除するための、及び/又は、望ましくない植生を防除するための、本発明による組成物の使用にも関し、ここで、有用な植物の種子を該組成物で処理する。
【0054】
さらに、本発明は、本発明による組成物で処理された種子にも関する。該種子は、好ましくは、本発明による組成物で粉衣される。「粉衣(dressing)」は、種子が該組成物で処理されていて、該組成物がその種子上に残っていることを意味する。この組成物は、種子に対して、希釈せずに施用するができるか、又は、好ましくは、希釈された形態で施用することができる。ここで、当該組成物は、2〜10倍に希釈することが可能であり、それによって、0.01〜60重量%(好ましくは、0.1〜40重量%)の農薬が種子粉衣のために使用される組成物の中に存在する。そのような施用は、播種前に実施することができる。植物の繁殖材料(propagation material)の処理、特に、種子の処理は、当業者には知られており、そして、それは、植物の繁殖材料に散粉することにより、植物の繁殖材料にコーティングすることにより、植物の繁殖材料をペレット化することにより、植物の繁殖材料を浸漬する(dipping)ことにより、又は、植物の繁殖材料を浸漬する(soaking)ことにより、実施する。当該処理は、好ましくは、ペレット化、コーティング及び散粉により実施し、それによって、例えば、種子の早すぎる発芽が防止される。種子の処理においては、繁殖材料又は種子100kg当たり、一般に、1〜1000g、好ましくは、5〜100gの量の農薬が使用される。
【0055】
本発明は、さらにまた、本発明による組成物を調製する方法にも関し、ここで、該方法においては、農薬とアルコキシアルカノエート(I)を混合させる。好ましいアルコキシアルカノエート(I)及び溶媒は、上記で記載したとおりである。混合は、慣習的な混合プロセスによって、例えば、撹拌することによって、振盪することによって、又は、別の形態でエネルギーを供給することによって、実施する。農薬製剤を調製するために使用されるさらなる助剤は、慣習的な量で添加することができる。適切な製剤助剤の例は、上記で記載したとおりである。
【0056】
本発明は、さらに、式(V)
R3-C(O)-(O-R4)n-OH V
〔式中、
R3は、分枝鎖C7-C9-アルキルであり;
R4は、C2-C4-アルキレンであり;及び、
nは、1〜3である〕
で表されるアルコキシアルカノエートにも関する。
【0057】
R3は、分枝鎖C7-C9-アルキル基である。このことは、該アルキル基が、7〜9個の炭素原子を有していて、その炭素鎖内に少なくとも1(好ましくは、1〜3)の分枝鎖があることを意味する。R3は、飽和していることも又は不飽和であることも可能である。R3は、好ましくは、飽和している。R3は、さらに、環状構造を含んでいてもよい。好ましくは、R3は、環状構造を全く含んでいない。R3は、好ましくは、C8-C9-アルキルである。
【0058】
好ましい実施形態では、R3は、式(F)〜式(J)
【化4】

【0059】
〔式中、#は、式(I)のカルボニル基への結合を意味する〕
で表される構造である。R1は、特に、式(F)、式(G)又は式(H)で表される構造であり、極めて特に、式(G)又は式(H)で表される構造である。
【0060】
R4は、C2-C4-アルキレン、例えば、-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH(CH2CH3)-、-CH2-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-CH2-である。R4は、好ましくは、C2-C3-アルキレン、例えば、-CH2-CH2-又は-CH2-CH(CH3)-である。
【0061】
添え字nは、特定の範囲内の値、例えば、1〜3であることができる。このことは、1、2又は3などの整数のみではなく、2.15などの整数の間の値であってもよいことを意味する。nは、好ましくは、1又は2であり、特に好ましくは、1である。好ましいさらなる実施形態では、該アルコキシアルカノエートは、酸をアルコキシル化することによって調製し、及び、nは、1.1〜2.9であり、好ましくは、1.3〜2.6である。
【0062】
特に好ましいアルコキシアルカノエート(V)は、例えば、式(II)、式(III)及び式(IV)で表される化合物である。
【0063】
式(I)〜式(V)で表されるピロリドンアルキレンオキシドは、ピロリドンをアルコキシル化することによって調製することができる。そのようなアルコキシル化のために使用することが可能な物質は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドである。該アルコキシル化は、強塩基(例えば、アルカリ金属水酸化物、及び、アルカリ土類金属水酸化物)、ブレンステッド酸又はルイス酸(例えば、AlCl3、BF3)によって触媒され得る。分布幅が狭いアルコールアルコキシレートに対しては、ヒドロタルサイト又は二重金属シアン化物(DMC)などの触媒を使用することができる。該アルコキシル化は、好ましくは、約90〜240℃の温度で、特に好ましくは、110〜190℃の温度で実施する。該アルキレンオキシド又はさまざまなアルキレンオキシドとピロリドンの混合物及び触媒は、選択された反応温度において有効な当該アルキレンオキシド混合物の蒸気圧下で、又は、それより高い圧力下で、投入する。所望により、該アルキレンオキシドは、不活性ガス(例えば、希ガス、窒素、CO2)を最大で99.9%まで用いて希釈することができる。特に、エチレンオキシドの場合は、これは、付加的に、該アルキレンオキシドの気相分解を防止する。この実施形態では、本発明の意味の範囲内における不活性ガスとして、さらなるアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)を使用することも可能である。適切なアルコキシル化条件については、「Nikolaus Schoenfeldt, Grenzflaechenaktive Aethylenoxid-Addukte, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart 1984」にも記載されている。一般に、該アルコキシル化は、溶媒を添加することなく、上記触媒の存在下で実施する。しかしながら、該アルコキシル化は、そのアルコキシル化条件下において不活性である溶媒を併用して実施することも可能である。
【0064】
適切な実施形態では、該アルコキシル化は、少なくとも1種類の強塩基で触媒する。適切な強塩基の例は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である。一般に、該塩基は、アルコキシル化しようとするピロリドンの量に基づいて、0.01〜1重量%の量で使用する(cf. G. Gee et al., J. Chem. Soc.(1961), p.1345; B. Wojtech, Makromol. Chem. 66, (1966), p.180)。該アルコキシル化反応は、酸で触媒することも可能である。ブレンステッド酸の他に、ルイス酸、例えば、AlCl3、BF3、BF3-ジエーテラート、BF3×H3PO4、SbCl4×2H2O、ヒドロタルサイト(cf. P. H. Plesch, The Chemistry of Cationic Polymerization, Pergamon Press, New York (1963))なども適している。
【0065】
式(V)で表されるアルコキシアルカノエートは、本発明による組成物の中のアルコキシアルカノエートとして、特に適している。
【0066】
本発明は、さらにまた、上記式(V)で表されるアルコキシアルカノエートの農薬製剤中における使用にも関する。該アルコキシアルカノエートは、好ましくは、農薬を農薬製剤に溶解させるために使用する。好ましいアルコキシアルカノエートは、上記で記載したとおりである。農薬製剤は、当業者には知られている。農薬製剤は、通常、農薬と、場合により、農薬製剤用の助剤(例えば、農薬製剤のための上記で記載した助剤)を、含む。
【0067】
本発明の有利な点は、とりわけ、本発明によって、組成物が安定でありながら多量の農薬を含有することが可能になるということである。該組成物及び水で希釈された該組成物は、たとえ結晶化するとしても、その傾向を殆ど示さない。該組成物は、溶解された農薬と懸濁された農薬の両方に適しており、何れの場合においても、結晶化する傾向を殆ど示さない。特に、乳化性濃縮物の形態にある組成物は、安定であり、結晶化する傾向を有さない。
【0068】
以下の実施例によって本発明について例証するが、それら実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0069】
界面活性剤1: 1モル当たり16モルのエチレンオキシドを有するトリスチリルフェノールエトキシレート(Rhodia S.A.から、「Soprophor(登録商標) BSU」として市販されている);
界面活性剤2: ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(Clariantから、「Calsogen(登録商標) AR 100 ND」として市販されている);
界面活性剤3: ドデシルベンゼンスルホン酸、カルシウム塩(BASFから、「Wettol(登録商標) EM 1」として市販されている);
界面活性剤4: エトキシル化ヒマシ油に基づく非イオン性界面活性剤(BASFから、「Wettol(登録商標) EM 31」として市販されている);
エポキシコナゾール: 純度95.5重量%;
メトコナゾール: 純度98.8重量%;
ピラクロストロビン: 純度99.4重量%。
【0070】
実施例1A: 2-エチルヘキサン酸+1EO
【化5】

【0071】
288.4g(2.0mol)の2-エチルヘキサン酸(1)及び1.5gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、窒素下、90℃及び20mbarで、ロータリーエバポレーターで脱水した。その後、その混合物を加圧反応器の中に移し、窒素を用いて圧力を1.5barとし、88.0g(2.0mol)のエチレンオキシド(2)を、140℃で、6.2bar以下の圧力で、1時間の間に計量供給した。撹拌を15時間継続した後、その混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら、窒素を流した。これにより、365gの淡黄色で透明な生成物(3)が得られた。その構造は、H NMR分析で確認した。
【0072】
実施例1B: 2-エチルヘキサン酸+1PO
【化6】

【0073】
288.4g(2.0mol)の2-エチルヘキサン酸(1)及び1.6gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、窒素下、90℃及び20mbarで、ロータリーエバポレーターで脱水した。その後、その混合物を加圧反応器の中に移し、窒素を用いて圧力を1.5barとし、116.2g(2.0mol)のプロピレンオキシド(4)を、140℃で、4.9bar以下の圧力で、1時間の間に計量供給した。撹拌を15時間継続した後、その混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら、窒素を流した。これにより、399gの淡黄色で透明な生成物(5)が得られた。その構造は、H NMR分析で確認した。
【0074】
実施例1C: イソノナン酸+1PO
【化7】

【0075】
316.5g(2.0mol)のイソノナン酸(6)及び1.74gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、窒素下、90℃及び20mbarで、ロータリーエバポレーターで脱水した。その後、その混合物を加圧反応器の中に移し、窒素を用いて圧力を1.5barとし、116.2g(2.0mol)のプロピレンオキシド(4)を、140℃で、4.9bar以下の圧力で、1時間の間に計量供給した。撹拌を12時間継続した後、その混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら、窒素を流した。これにより、440gの黄色で透明な生成物(7)が得られた。その構造は、H NMR分析で確認した。
【0076】
実施例1D: 2-プロピルヘプタン酸+1EO
【化8】

【0077】
344.6g(2.0mol)の2-プロピルヘプタン酸(8)及び1.74gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、窒素下、90℃及び20mbarで、ロータリーエバポレーターで脱水した。その後、その混合物を加圧反応器の中に移し、窒素を用いて圧力を1.5barとし、88.0g(2.0mol)のエチレンオキシド(4)を、140℃で、7.2bar以下の圧力で、1時間の間に計量供給した。撹拌を12時間継続した後、その混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら、窒素を流した。これにより、441gの淡黄色で透明な生成物(9)が得られた。その構造は、H NMR分析で確認した。
【0078】
実施例2 - エポキシコナゾールの製剤
5.2g又は10.4gのエポキシコナゾール、7.5gの界面活性剤1、7.5gの界面活性剤2及び12.5gのベンジルアルコールを計量し、実施例1のアルコキシアルカノエートを用いて、総体積100mLとした。その混合物を、透明で均質なエポキシコナゾール溶液が得られるまで、室温で撹拌することにより混合させた。
【表1】

【0079】
何れの場合にも、実験A〜実験Fの1つのサンプルをCIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%エマルションとし、20℃で6時間放置した。この期間の間に、エポキシコナゾールの結晶は形成されなかった。
【0080】
実施例3 - ピラクロストロビンの製剤
25.2gのピラクロストロビン、5.0gの界面活性剤3及び5.0gの界面活性剤4を計量し、実施例1のアルコキシアルカノエートを用いて、総体積100mLとした。その混合物を、透明で均質なピラクロストロビン溶液が得られるまで、室温で撹拌することにより混合させた。
【表2】

【0081】
何れの場合にも、実験A〜実験Cの1つのサンプルをCIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%エマルションとし、20℃で6時間放置した。この期間の間に、ピラクロストロビンの結晶は形成されなかった。
【0082】
実施例4 - メトコナゾールの製剤
15.2gのメトコナゾール、5.0gの界面活性剤3及び5.0gの界面活性剤4を計量し、実施例1のアルコキシアルカノエートを用いて、総体積100mLとした。その混合物を、透明で均質なメトコナゾール溶液が得られるまで、室温で撹拌することにより混合させた。
【表3】

【0083】
何れの場合にも、実験A〜実験Cの1つのサンプルをCIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%エマルションとし、20℃で6時間放置した。この期間の間に、メトコナゾールの結晶は形成されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬、製剤助剤及びアルコキシアルカノエートを含む液体農薬組成物であって、該アルコキシアルカノエートが式(I)、
R1-C(O)-(O-R2)n-OH I
〔式中、
R1は、分枝鎖C7-C11-アルキルであり;
R2は、C2-C4-アルキレンであり;及び、
nは、1〜3である〕
で表される、前記液体農薬組成物。
【請求項2】
前記組成物に基づいて、少なくとも20重量%の式(I)で表されるアルコキシアルカノエートが存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
nが1〜2である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
nが1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
R1が分枝鎖C8-C9-アルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記農薬が溶解された形態で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を調製する方法であって、農薬と式(I)で表されるアルコキシアルカノエートを混合させる、前記方法。
【請求項8】
式(V)
R3-C(O)-(O-R4)n-OH V
〔式中、
R3は、分枝鎖C7-C9-アルキルであり;
R4は、C2-C4-アルキレンであり;及び、
nは、1〜3である〕
で表されるアルコキシアルカノエート。
【請求項9】
nが1〜2である、請求項8に記載のアルコキシアルカノエート(V)。
【請求項10】
R3が、式(F)、式(G)、式(H)又は式(J)
【化1】

〔式中、#は、式(V)のカルボニル基への結合を意味する〕
で表される構造である、請求項8又は9に記載のアルコキシアルカノエート。
【請求項11】
R3が、式(G)又は式(H)で表される構造である、請求項10に記載のアルコキシアルカノエート。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載のアルコキシアルカノエートの農薬製剤中における使用。
【請求項13】
植物病原性菌類及び/又は望ましくない植生及び/又は昆虫類若しくはダニ類による望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物の成長を調節するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、該組成物を、それぞれの有害生物、それらの環境若しくはそのそれぞれの有害生物から保護しようとする植物に作用させるか、または、土壌及び/若しくは望ましくない植物及び/若しくは有用な植物及び/若しくはそれらの環境に作用させる、前記使用。
【請求項14】
植物に対する昆虫類若しくはダニ類による望ましくない攻撃を防除するための、及び/又は、植物病原性菌類を防除するための、及び/又は、望ましくない植生を防除するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、有用な植物の種子を該組成物で処理する、前記使用。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物で粉衣された種子。

【公表番号】特表2012−513960(P2012−513960A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542766(P2011−542766)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067137
【国際公開番号】WO2010/076183
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】