説明

切削工具ユニット及びその切削工具ユニットに使用される切削工具

【課題】工具剛性を確保して、工具寿命の向上を図ることができる切削工具ユニット及びその切削工具ユニットに使用される切削工具を提供すること。
【解決手段】切削工具ユニット1によれば、ボールエンドミル20は、吸引路27が本体部21の外周面に凹設され、かかる吸引路27を通じて切り屑を排出するように構成されているので、従来品のように、本体部21を中空に構成し、かかる本体部21内を通じて切り屑を排出する場合と比較して、工具剛性を確保することができ、工具寿命の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具ユニット及びその切削工具ユニットに使用される切削工具に関し、特に、工具剛性を確保して、工具寿命の向上を図ることができる切削工具ユニット及びその切削工具ユニットに使用される切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、切削工具による切削加工において、切削液を使用して、切り屑を排除することは、工具寿命の延長や加工精度の確保などのために重要である。しかしながら、切削液には塩素やリン等の有害な物質が含まれているため、環境汚染を引き起こす恐れがあった。このため、近年では、切削液の使用を抑制し得る技術の開発が望まれていた。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、切り屑を吸引し、その吸引した切り屑を中空の工具本体内を通じて排出するドリルが開示されている。
【特許文献1】特開昭40−19634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1におけるドリルでは、工具本体を中空とすることで、工具剛性が低下して、工具寿命の低下を招くという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、工具剛性を確保して、工具寿命の向上を図ることができる切削工具ユニット及びその切削工具ユニットに使用される切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するために請求項1記載の切削工具ユニットは、軸心回りに回転される本体部とその本体部の先端に配設されると共に切れ刃を有する刃部とその刃部に設けられると共に前記切れ刃のすくい面を形成する溝とを有する切削工具と、その切削工具の本体部が挿入される挿入孔を有するホルダとを備え、そのホルダの挿入孔に前記切削工具の本体部を焼きばめて、前記ホルダにより前記切削工具を保持するものであって、前記切削工具は、前記本体部の外周面に凹設され、前記溝に連設されると共に前記本体部の後端面まで延設される吸引路を備え、前記ホルダの挿入孔内の吸気が行われることで、前記切削工具の切れ刃により生成され、前記溝に収容された切り屑を前記吸引路を通じて吸引し、前記本体部後端から排出するように構成されている。
【0007】
請求項2記載の切削工具ユニットは、請求項1記載の切削工具ユニットにおいて、前記切削工具の吸引路は、前記本体部の回転方向と同一方向へねじれて形成されている。
【0008】
請求項3記載の切削工具ユニットは、請求項1又は2に記載の切削工具ユニットにおいて、前記切削工具は、前記軸心方向への前記刃部の長さが、前記刃部の外径の50%以上、かつ、150%以下の長さに設定されている。
【0009】
請求項4記載の切削工具は、請求項1から3のいずれかに記載の切削工具ユニットに使用される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の切削工具ユニットによれば、切削工具は、吸引路が本体部の外周面に凹設されているので、ホルダにより切削工具が保持された状態では、ホルダと切削工具との間に吸引路の断面積に相当する隙間を設けることができる。また、吸引路は溝に連設されると共に本体部の後端面まで延設されているので、ホルダの挿入孔内の吸気を行うことで、切れ刃により生成され、溝に収容された切り屑を吸引路を通じて強制的に吸引し、その吸引した切り屑を本体部後端からホルダを介して排出することができる。
【0011】
よって、従来品と比較して、切り屑を排除するための切削液の使用を抑制する(或いは、不要とする)ことができ、環境汚染の予防を図ることができる。また、切削工具は、吸引路が本体部の外周面に凹設され、かかる吸引路を通じて切り屑を排出するように構成されているので、従来品のように、本体部を中空に構成し、かかる本体部内を通じて切り屑を排出する場合と比較して、工具剛性を確保することができ、工具寿命の向上を図ることができるという効果がある。
【0012】
また、吸引路が本体部の後端面まで延設されることで本体部の後端面に開口されているので、例えば、本体部の側面に開口する場合と比較して、切り屑を排出するためのホルダの構造を簡素化することができるという効果がある。
【0013】
また、本発明における切削工具ユニットによれば、ホルダと切削工具とが別体に構成され、ホルダの挿入孔に切削工具の本体部を焼きばめて、ホルダにより切削工具を保持するので、切削工具をスローアウェイ工具として構成することができる。よって、強度が必要とされる切削工具のみを高価な材料で構成することができ、切削工具ユニット全体を高価な材料で構成する場合と比較して、工具コストの低下を図ることができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の切削工具ユニットによれば、請求項1記載の切削工具ユニットの奏する効果に加え、切削工具の吸引路は、本体部の回転方向と同一方向へねじれて形成されているので、本体部が回転される回転力により、切り屑を吸引路に沿って円滑に排出することができる。よって、切り屑排出性の向上を図ることができるという効果がある。
【0015】
請求項3記載の切削工具ユニットによれば、請求項1又は2に記載の切削工具ユニットの奏する効果に加え、切削工具は、軸心方向への刃部の長さが、刃部の外径の50%以上、かつ、150%以下の長さに設定されているので、切削性能の確保と加工精度の向上との両立を図ることができるという効果がある。
【0016】
即ち、軸心方向への刃部の長さが刃部の外径の50%よりも短い場合には、ホルダによる切削工具の保持力を確保するべく、ホルダの挿入孔に切削工具の本体部全てを挿入すると、刃部の外周に形成される切れ刃、いわゆる外周刃の露出が少なくなるため、切削加工時に被加工物とホルダとが干渉して、外周刃により切削加工を正常に行えなくなるところ、本発明によれば、軸心方向への刃部の長さを刃部の外径の50%以上としたので、外周刃を十分に露出させることができ、その結果、外周刃による切削加工を可能とすることができる。
【0017】
一方、軸心方向への刃部の長さが刃部の外径の150%よりも長い場合には、切削加工時に切削工具の振れが生じ易くなるところ、軸心方向への刃部の長さを刃部の外径の150%以下とすることで、切削工具の振れを抑制することができる。これにより、切削性能の確保と加工精度の向上との両立を図ることができる。
【0018】
請求項4記載の切削工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載の切削工具ユニットに使用される切削工具と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、切削工具ユニット1の概略構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における切削工具ユニット1の正面図である。なお、図1では、ホルダ10の一部を断面視している。また、図1では、切り屑の移動方向を矢印Aで模式的に示している。
【0020】
切削工具ユニット1は、加工機械(図示せず)から伝達される回転力により被加工物(図示せず)に切削加工を行うためのものであり、図1に示すように、ホルダ10と、そのホルダ10に保持されるボールエンドミル20とを備えて構成されている。
【0021】
ホルダ10は、コレット(図示せず)を介して加工機械に取り付けられると共にボールエンドミル20を保持するためのものであり、図1に示すように、高速度工具鋼から円柱状に形成され、その内部には、挿入孔11が貫通形成されている。但し、ホルダ10は、高速度工具鋼に限られず、超硬合金などから構成しても良い。
【0022】
挿入孔11は、その先端側(図1右側)に、後述するボールエンドミル20の本体部21が挿入される部位であり、断面円形状に形成されると共にホルダ10の長手方向(図1左右方向)へ直線状に延設されている。この挿入孔11は、常温においてボールエンドミル20の本体部21の外径よりも小径に形成されており、ボールエンドミル20の本体部21を焼きばめて、ボールエンドミル20を保持することができるように構成されている。
【0023】
即ち、ホルダ10が加熱された場合には、挿入孔11の内径が熱膨張により拡径して、ボールエンドミル20の本体部21が挿入可能となる一方、ボールエンドミル20の本体部21が挿入された状態でホルダ10が冷却された場合には、挿入孔11の内径が熱収縮により縮径して、ボールエンドミル20を離脱不能に保持することができる。
【0024】
ボールエンドミル20は、ホルダ10により保持されることで加工機械の回転力が伝達され、その伝達された加工機械の回転力によって回転しつつ被加工物に切削加工を行うための切削工具であり、図1に示すように、タングステンカーバイト(WC)等を加圧焼結した超硬合金から構成されている。但し、ボールエンドミル20は、超硬合金に限られず、高速度工具鋼などから構成しても良い。
【0025】
ここで、図2を参照して、ボールエンドミル20の詳細構成について説明する。図2(a)は、ボールエンドミル20の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視におけるボールエンドミル20を拡大して示す拡大側面図である。
【0026】
図2に示すように、ボールエンドミル20は、本体部21と、その本体部21の先端側(図2(a)右側)に配設される刃部22と、本体部21の外周面に凹設される吸引路27とを主に備えて構成されている。なお、本実施の形態では、刃部22の外径(刃部22の一番大きい箇所の直径)Dが10mmに設定されている。
【0027】
本体部21は、上述したように、ホルダ10の挿入孔11に挿入される部位であり、図2(a)に示すように、軸心Oを有する円柱状に形成されている。この本体部21は、外径が刃部22の外径Dと略同一に構成されている。
【0028】
刃部22は、切削加工(例えば、自由曲面加工)を行うための部位であり、図2に示すように、溝23と、外周刃24と、ボール刃25とを主に備えて構成されている。溝23は、切削加工時に生成される切り屑を収容するためのものであり、2本の溝23a,23bが、本体部21の回転方向(図2(b)反時計回り)と同一方向へねじれて形成されている。即ち、本実施の形態では、溝23が右ねじれに形成されている。
【0029】
外周刃24は、刃部22の外周に形成される切れ刃であり、刃部22に所定の幅を有して形成されるランド26a,26bと溝23a,23bとがそれぞれ交差する各稜線部分に2枚の外周刃24a,24bが軸心Oに対して対称に形成されている。
【0030】
ボール刃25は、刃部22の先端側(図2(a)右側)に形成され、その回転軌跡が半球状となる切れ刃であり、ランド26a,26bと溝23a,23bとがそれぞれ交差する各稜線部分に2枚のボール刃25a,25bが軸心Oに対して対称に形成されると共に、それら2枚のボール刃25a,25bが上述した2枚の外周刃24a,24bにそれぞれ連設されている。
【0031】
また、ボール刃25は、図2(b)に示すように、ボールエンドミル20の側面視において、本体部21の回転方向に凸となる円弧状に形成されている。
【0032】
吸引路27は、溝23に収容された切り屑を排出するためのものであり、2本の吸引路27a,27bが、本体部21の回転方向と同一方向へねじれ(即ち、本実施の形態では、右ねじれ)、溝23のリードと略同一のリードで形成されると共に、それら2本の吸引路27a,27bが上述した2本の溝23a,23bにそれぞれ連設されている。
【0033】
なお、請求項2に記載した、本体部の回転方向と同一方向へねじれて形成されているとは、本実施の形態のように、本体部21の回転方向が右回転(図2(b)反時計回り)の場合には、吸引路27が右ねじれに形成されることを意味する一方、本体部21の回転方向が左回転(図2(b)時計回り)の場合には、吸引路27が左ねじれに形成されることを意味している。
【0034】
また、吸引路27は、図2(a)に示すように、本体部21の後端面(図2(a)左側の面)まで延設されており、吸引路27が本体部21の後端面に開口され、ホルダ10によりボールエンドミル20が保持された状態では、ホルダ10の挿入孔11内に連通されるように構成されている(図1参照)。
【0035】
更に、吸引路27の溝幅は、本体部21の外径の50%の幅に構成されると共に、吸引路27の溝深さは、本体部21の外径の17.5%の深さに構成されている。なお、吸引路27の溝幅は、本体部21の外径の45%以上、かつ、55%以下の幅に設定することが望ましい。
【0036】
即ち、吸引路27の溝幅が本体部21の外径の45%よりも狭い場合には、吸引路27の断面積が小さくなり、吸引路27を通じて切り屑を排出する際に吸引路27に切り屑が詰まり易くなるところ、吸引路27の溝幅を本体部21の外径の45%以上とすることで、吸引路27の断面積を確保して、切り屑詰まりを抑制することができる。
【0037】
一方、吸引路27の溝幅が本体部21の外径の55%よりも広い場合には、ホルダ10とボールエンドミル20との接触面積が減少して、ホルダ10によるボールエンドミル20の保持力が低下するところ、吸引路27の溝幅を本体部21の外径の55%以下とすることで、ホルダ10とボールエンドミル20との接触面積を確保して、保持力の低下を抑制することができる。これにより、切り屑排出性の向上とホルダ10によるボールエンドミル20の保持力の向上との両立を図ることができる。
【0038】
更に、吸引路27の溝深さは、本体部21の外径の15%以上、かつ、20%以下の深さに設定することが望ましい。即ち、吸引路27の溝深さが本体部21の外径の15%よりも浅い場合には、吸引路27の断面積が小さくなり、吸引路27を通じて切り屑を排出する際に吸引路27に切り屑が詰まり易くなるところ、吸引路27の溝深さを本体部21の外径の15%以上とすることで、吸引路27の断面積を確保して、切り屑詰まりを抑制することができる。
【0039】
一方、吸引路27の溝深さが本体部21の外径の20%よりも深い場合には、工具剛性が低下して、工具寿命が低下するところ、吸引路27の溝深さを本体部21の外径の20%以下とすることで、工具剛性を確保して、工具寿命の低下を抑制することができる。これにより、切り屑排出性の向上と工具寿命の向上との両立を図ることができる。
【0040】
また、ボールエンドミル20は、軸心O方向への刃部22の長さXが、刃部22の外径Dと略同等の長さに構成されている。なお、軸心O方向への刃部22の長さXは、刃部22の外径Dの50%以上、かつ、150%以下の長さに設定することが望ましい。
【0041】
即ち、軸心O方向への刃部22の長さXが刃部22の外径Dの50%よりも短い場合には、ホルダ10によるボールエンドミル20の保持力を確保するべく、ホルダ10の挿入孔11にボールエンドミル20の本体部21全てを挿入すると、外周刃24の露出が少なくなるため、切削加工時に被加工物とホルダ10とが干渉して、外周刃24により切削加工を正常に行えなくなるところ、軸心O方向への刃部22の長さXを刃部22の外径Dの50%以上とすることで、外周刃24を十分に露出させることができ、その結果、外周刃24による切削加工を可能とすることができる。
【0042】
一方、軸心O方向への刃部22の長さXが刃部22の外径Dの150%よりも長い場合には、切削加工時にボールエンドミル20の振れが生じ易くなるところ、軸心O方向への刃部22の長さXを刃部22の外径Dの150%以下とすることで、ボールエンドミル20の振れを抑制することができる。これにより、切削性能の確保と加工精度の向上との両立を図ることができる。
【0043】
図1に戻って説明する。図1に示すように、ホルダ10によりボールエンドミル20が保持された状態において、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yは、ボールエンドミル20の刃部22の外径Dと略同等の大きさとされている。但し、ホルダ10によりボールエンドミル20を保持する場合、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yは、ボールエンドミル20の刃部22の外径Dの50%以上、かつ、150%以下とすることが望ましい。
【0044】
即ち、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yが刃部22の外径Dの50%よりも小さい場合には、外周刃24の露出が少なくなるため、切削加工時に被加工物とホルダ10とが干渉して、外周刃24により切削加工を正常に行えなくなるところ、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yを刃部22の外径Dの50%以上とすることで、外周刃24を十分に露出させることができ、その結果、外周刃24による切削加工を可能とすることができる。
【0045】
一方、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yが刃部22の外径Dの150%よりも大きい場合には、ホルダ10によるボールエンドミル20の保持力が低下するため、切削加工時にボールエンドミル20の振れが生じ易くなるところ、ホルダ10からのボールエンドミル20の突き出し量Yを刃部22の外径Dの150%以下とすることで、ホルダ10によるボールエンドミル20の保持力を十分に確保することができ、その結果、ボールエンドミル20の振れを抑制することができる。これにより、切削性能の確保と加工精度の向上との両立を図ることができる。
【0046】
上述のように構成された切削工具ユニット1を用いて被加工物に切削加工を行う場合には、まず、コレットを介してホルダ10を加工機械に取り付ける。次いで、加工機械から伝達される回転力によって切削工具ユニット1により被加工物に切削加工を行う。
【0047】
この際、ホルダ10の挿入孔11に接続された吸気ポンプ(図示せず)により挿入孔11内の吸気を行うことで、矢印Aで示すように、ボールエンドミル20の外周刃24及びボール刃25により生成され、溝23に収容された切り屑を吸引路27を通じて強制的に吸引し、その吸引した切り屑を本体部21後端からホルダ10を介して排出することができる。よって、従来品と比較して、切り屑を排除するための切削液の使用を抑制する(或いは、不要とする)ことができ、環境汚染の予防を図ることができる。
【0048】
また、ボールエンドミル20の吸引路27は、本体部21の回転方向と同一方向へねじれて形成されているので、本体部21が回転される回転力により、切り屑を吸引路27に沿って円滑に排出することができる。よって、切り屑排出性の向上を図ることができる。
【0049】
上述したように、本発明における切削工具ユニット1によれば、ボールエンドミル20は、吸引路27が本体部21の外周面に凹設され、かかる吸引路27を通じて切り屑を排出するように構成されているので、従来品のように、本体部21を中空に構成し、かかる本体部21内を通じて切り屑を排出する場合と比較して、工具剛性を確保することができ、工具寿命の向上を図ることができる。
【0050】
また、吸引路27が本体部21の後端面まで延設されることで本体部21の後端面に開口されているので、例えば、本体部21の側面に開口する場合と比較して、切り屑を排出するためのホルダ10の構造を簡素化することができる。
【0051】
また、ホルダ10とボールエンドミル20とが別体に構成され、ホルダ10の挿入孔11にボールエンドミル20の本体部21を焼きばめて、ホルダ10によりボールエンドミル20を保持するので、ボールエンドミル20をスローアウェイ工具として構成することができる。よって、強度が必要とされるボールエンドミル20のみを高価な材料で構成することができ、切削工具ユニット1全体を高価な材料で構成する場合と比較して、工具コストの低下を図ることができる。
【0052】
次に、図3を参照して、第2実施の形態について説明する。図3(a)は、第2実施の形態におけるドリル30の正面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢印IIIb方向視におけるドリル30を拡大して示す拡大側面図である。
【0053】
第1実施の形態では、ホルダ10により保持される切削工具がボールエンドミル20により構成される場合を説明したが、第2実施の形態では、切削工具をドリル30により構成する。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
ドリル30は、ホルダ10により保持されることで加工機械の回転力が伝達され、その伝達された加工機械の回転力によって回転しつつ被加工物に切削加工(例えば、穴あけ加工)を行うための切削工具であり、図3に示すように、タングステンカーバイト(WC)等を加圧焼結した超硬合金から構成されている。但し、ドリル30は、超硬合金に限られず、高速度工具鋼などから構成しても良い。
【0055】
図3に示すように、ドリル30は、本体部31と、その本体部31の先端側(図3(a)右側)に配設される刃部32と、本体部31の外周面に凹設される吸引路37とを主に備えて構成されている。なお、本実施の形態では、刃部32の外径(刃部32の一番大きい箇所の直径)Dが10mmに設定されている。
【0056】
本体部31は、ホルダ10の挿入孔11に挿入される部位であり、図3(a)に示すように、軸心Oを有する円柱状に形成されている。この本体部31は、外径が刃部32の外径Dと略同一に構成されている。なお、第2実施の形態では、ホルダ10の挿入孔11に本体部31を焼きばめて、ホルダ10によりドリル30を保持する。
【0057】
刃部32は、切削加工を行うための部位であり、図3に示すように、溝33と、切れ刃34とを主に備えて構成されている。溝33は、切れ刃34により生成される切り屑を収容するためのものであり、2本の溝33a,33bが、軸心Oと略平行に形成されている。
【0058】
切れ刃34は、刃部32の先端側(図3(a)右側)に形成される切れ刃であり、刃部32の先端に形成される逃げ面35a,35bと溝33a,33bとがそれぞれ交差する各稜線部分に2枚の切れ刃34a,34bが軸心Oに対して対称に形成されている。
【0059】
吸引路37は、溝33に収容された切り屑を排出するためのものであり、2本の吸引路37a,37bが、軸心Oと略平行に形成されると共に、それら2本の吸引路37a,37bが上述した2本の溝33a,33bにそれぞれ連設されている。
【0060】
また、吸引路37は、図3(a)に示すように、本体部31の後端面(図3(a)左側の面)まで延設されており、吸引路37が本体部31の後端面において開口され、ホルダ10によりドリル30が保持された状態では、ホルダ10の挿入孔11内に連通されるように構成されている。
【0061】
上述したように、第2実施の形態によれば、吸引路37は、軸心Oと略平行に形成されているので、切り屑を排出するための構造を簡素化することができる。よって、切削工具の製造コストを低減することができる。
【0062】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0063】
例えば、上記第1実施の形態では、切削工具がボールエンドミル20により構成されると共に、上記第2実施の形態では、切削工具がドリル30により構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の切削工具、例えば、ラジアスエンドミル等により構成しても良い。
【0064】
また、上記第1実施の形態では、ボールエンドミル20の吸引路27がねじれて形成されると共に、上記第2実施の形態では、ドリル30の吸引路37が軸心Oと略平行に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ボールエンドミル20の吸引路27を軸心Oと略平行に形成しても良く、或いは、ドリル30の吸引路37をねじれて形成しても良い。但し、吸引路27,37は、切り屑排出性の向上を図るべく、連設される溝23,33の形状に合わせてねじれ、又は、軸心Oに対して略平行に形成することが望ましい。
【0065】
また、上記第1実施の形態では、ボールエンドミル20の吸引路27が右ねじれに形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左ねじれに形成しても良い。但し、吸引路27は、上述したように、切り屑排出性の向上を図るべく、本体部21の回転方向と同一方向へねじれて形成することが望ましい。
【0066】
また、上記第1実施の形態では、ボールエンドミル20の吸引路27が溝23のリードと略同一のリードで形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、溝23のリードとは異なるリードで形成しても良く、或いは、不等のリードで形成しても良い。
【0067】
また、上記各実施の形態では、ボールエンドミル20の刃部22及びドリル30の刃部32の外径Dが本体部21,31の外径と略同一に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、外径Dを本体部21,31の外径よりも大径に構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施の形態における切削工具ユニットの正面図である。
【図2】(a)は、ボールエンドミルの正面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視におけるボールエンドミルを拡大して示す拡大側面図である。
【図3】(a)は、第2実施の形態におけるドリルの正面図であり、(b)は、図3(a)の矢印IIIb方向視におけるドリルを拡大して示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 切削工具ユニット
10 ホルダ
11 挿入孔
20 ボールエンドミル(切削工具)
21 本体部
22 刃部
23 溝
24 外周刃(切れ刃)
25 ボール刃(切れ刃)
27 吸引路
30 ドリル(切削工具)
31 本体部
32 刃部
33 溝
34 切れ刃
37 吸引路
O 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りに回転される本体部とその本体部の先端に配設されると共に切れ刃を有する刃部とその刃部に設けられると共に前記切れ刃のすくい面を形成する溝とを有する切削工具と、その切削工具の本体部が挿入される挿入孔を有するホルダとを備え、そのホルダの挿入孔に前記切削工具の本体部を焼きばめて、前記ホルダにより前記切削工具を保持する切削工具ユニットにおいて、
前記切削工具は、
前記本体部の外周面に凹設され、前記溝に連設されると共に前記本体部の後端面まで延設される吸引路を備え、
前記ホルダの挿入孔内の吸気が行われることで、前記切削工具の切れ刃により生成され、前記溝に収容された切り屑を前記吸引路を通じて吸引し、前記本体部後端から排出するように構成されていることを特徴とする切削工具ユニット。
【請求項2】
前記切削工具の吸引路は、前記本体部の回転方向と同一方向へねじれて形成されていることを特徴とする請求項1記載の切削工具ユニット。
【請求項3】
前記切削工具は、前記軸心方向への前記刃部の長さが、前記刃部の外径の50%以上、かつ、150%以下の長さに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切削工具ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の切削工具ユニットに使用されることを特徴とする切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−173705(P2008−173705A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8048(P2007−8048)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成18年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究(吸引式切り屑完全回収型次世代切削加工システムの開発)、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】