説明

切削工具

【課題】切れ刃を備える刃部を任意に交換することができる切削工具において、刃部を簡易に精度よく位置決めして取り付けることができ、作業効率が良く、加工精度に優れた切削工具を提供する。
【解決手段】軸線Oを有する略円筒状のボデー10と、該ボデー10の先端に着脱可能に取り付けられる切れ刃3を有する刃部1と、該刃部1を前記軸線O周りに回転させるための回転機構と、前記刃部1を前記ボデー10側に引き込ませるための引込機構とを備え、前記回転機構および前記引込機構により前記刃部1が前記軸線O方向および前記回転方向に位置決めされて前記ボデー10に固定されることを特徴とするボールエンドミル20を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切れ刃を備える刃部が着脱可能に装着されてなる切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フライス工具の一種で穴明け加工や曲面加工等に用いられる底刃が球状をなすボールエンドミルが知られており、刃先が磨耗等した場合に簡易に刃部を交換することができるボールエンドミルとして、超硬切刃がロウ付けされた切削用ヘッドを備える切削用インサートを工具ホルダーから着脱可能としたボールエンドミルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−103130号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の発明では、作業者による切削用インサートのねじ込み具合のいかんによって切削用インサートの取付位置が異なってしまい、切削用インサートを安定して工具ホルダーの所定位置に取り付けることができないという問題があった。そのため、切削加工時にびびり振動が発生して、仕上げ面粗さが悪化したり刃先が欠けたりする恐れがあった。また、ねじが固く締まりすぎて、切削用インサートを工具ホルダーから取り外すことが困難となる恐れがあり、さらには、ねじ山が潰れて使用できなくなる恐れもあった。また、例えば、ボデーに切りくずを排出するための溝をもつドリルなどには、切削インサートに設けられることとなる溝と工具ホルダーに設けられることとなる溝とを常に正確に一致させて固定することができないため適さないという問題もあった。
さらに、切削用インサートにスパナやモンキーレンチを係合させるためのフラットカット面を設けるので、切削用インサートの軸方向の長さをある程度長く設計せざるを得ず、切削加工中にびびり振動が発生する、工具のたわみが大きくなる、送りを高くりできない等の問題が生ずるおそれがあった。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、切れ刃を備える刃部を任意に交換することができる切削工具において、刃部を簡易に精度よく位置決めして取り付けることができ、作業効率が良く、加工精度に優れた切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の切削工具は以下の手段を採用する。
本発明は、軸線を有する略円筒状の工具本体と、該工具本体の先端に着脱可能に取り付けられる切れ刃を有する刃部と、該刃部を前記軸線周りに回転させるための回転機構と、前記刃部を前記工具本体側に引き込ませるための引込機構とを備え、前記回転機構および前記引込機構により前記刃部が前記軸線方向および前記回転方向に位置決めされて前記工具本体に固定されることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、前記刃部を任意に着脱することができるので、例えば、切れ刃が磨耗した場合には刃部のみを交換すればよく、また、加工形状に合わせて他の種類の工具に取り替えたい場合には、工具本体はそのままで刃部のみを異なる形状の切れ刃を備えるものに取り替えればよいので、非常に経済的で作業効率に優れる。
【0007】
この場合において、本発明に係る切削工具は、前記回転機構および前記引き込み機構により、前記刃部が軸線回りに回転するとともに工具本体側に引き込まれて、前記軸線方向および前記回転方向に位置決めされ、工具本体に強固に固定されることになる。したがって、刃部を簡易に精度良く工具本体の所定位置に取り付けることができ、作業効率が良く、加工精度に優れる。
【0008】
上記発明においては、前記回転機構が、前記工具本体に形成されたねじ穴および前記刃部の回り止めのためのキー溝と、前記刃部に形成された係止穴および前記キー溝と係合するキーと、先端部が前記係止穴と係合する前記ねじ穴に螺合される締付ねじとから構成され、これらねじ穴および係止穴が前記軸線から該軸線に垂直な横線方向にずらした位置に偏心して設けられることとしてもよい。
【0009】
このように構成することで、前記締付ねじを前記工具本体のねじ穴に螺入してその先端部を前記刃部の係止穴に係止させることにより、前記刃部が軸線回りに回転させられて前記キーが前記工具本体のキー溝に突き当たって工具本体に固定されることとなる。したがって、締付ねじを締めるだけで、刃部を前記回転方向に精度良く位置決めして工具本体に取り付けることができ、また、締付ねじを緩めるだけで刃部を工具本体から取り外すことができるため、刃部の交換に要する時間が短く、作業効率に優れる。
【0010】
また、上記発明においては、前記引込機構が、前記ねじ穴をその軸心が前記横線に対して工具先端側に傾斜するように設けることにより構成されることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記引込機構が、前記ねじ穴をその軸心が前記係止穴の軸心に対して工具基端側にずれるように設けることにより構成されることとしてもよい。
【0011】
このように構成することで、前記締付ねじを前記工具本体のねじ穴に螺入してその先端部を前記刃部の係止穴に係止させることにより、前記刃部が工具基端側に引き込まれて前記工具本体の先端面に突き当たって工具本体に固定されることとなる。したがって、締付ねじを締めるだけで、刃部を前記軸線方向に精度良く位置決めして工具本体に取り付けることができ、クランプ剛性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の切削工具によれば、切れ刃を備える刃部を任意に交換することができる切削工具において、刃部を簡易に精度よく位置決めして取り付けることができ、作業効率が良く、加工精度に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
本実施形態に係るボールエンドミル20は、図1に示されるように、軸線O周りに回転される略円筒状のボデー10と、締付ねじ30によりボデー10の先端にボデー10の軸線Oと同心に固着される刃部1とから構成される。
【0014】
前記ボデー10は、高速度鋼、工具鋼、合金鋼、ステンレス鋼、超硬合金、サーメット、セラミックス等から構成され、図2に示されるように、例えば、その先端面11に刃部1を取り付けるための軸線Oと同心の略円筒状の取付穴12と、刃部1の回り止めのための2つのキー溝13,13とを備えるとともに、その外周面に取付穴12へ向かって貫通するねじ穴14と、2つの切りくず排出のための切屑ポケット4b,4bとを備えている。
【0015】
そして、前記ねじ穴14は、図3に示されるように、工具回転方向と逆方向に向かって、軸線Oから該軸線Oに垂直な横線X方向に、すなわち、ボデー10の軸心から径方向に、わずかに所定距離dだけずらした位置に偏心して設けられるとともに、図4(a)に示されるように、ねじ穴の軸心C1が横線Xに対してわずかに所定角度αだけ工具先端側に傾斜するように設けられている。
例えば、本実施形態では、ねじ穴14の中心は、取付穴12の直径に対して20%だけ軸線Oから離れた位置となっており、ねじ穴の軸心C1は、横線Xに対して5〜10°だけ傾斜した位置となっている。
【0016】
前記刃部1は、高速度鋼、工具鋼、合金鋼、ステンレス鋼、超硬合金、サーメット、セラミックス、超高圧焼結体等から構成され、図2に示されるように、例えば、略球状のヘッド部2と該ヘッド部2と同心に一体形成された略円筒状の挿入部7とを有し、前記ヘッド部2に2枚の切れ刃3,3と、前記切屑ポケット4b,4bへとつながる2つの切屑ポケット4a,4aと、ボデー10の先端面11に着座させるための着座面5と、ボデー10のキー溝13,13と係合する2つのキー6,6とを備えるとともに、前記挿入部7の外周面に略凹球面状の係止穴8を備えている。
前記切れ刃3は、ヘッド部2の外周面に形成される外周刃とヘッド部2の先端面に形成される略球状の底刃とを有し、刃部1と一体に形成されている。
前記挿入部は、ボデー10の取付穴12の直径と同等かわずかに小さい直径を有する取付穴12と同形の略円筒状に形成されている。
【0017】
そして、前記係止穴8は、図3に示されるように、工具回転方向と逆方向に向かって、軸線Oから該軸線Oに垂直な横線X方向に、すなわち、挿入部7の軸心から径方向に、わずかに所定距離dだけずらした位置に設けられるとともに、図4(a)に示されるように、係止穴の軸心C2が横線Xに対して所定角度αだけ工具先端側に傾斜するように設けられている。
例えば、本実施形態では、係止穴8の中心は、挿入部7の直径に対して20%だけ軸線Oから離れた位置となっており、係止穴の軸心C2は、横線Xに対して5〜10°だけ傾斜した位置となっている。
【0018】
前記締付ねじ30は、図1に示されるように、ボデー10のねじ穴14と螺合するねじ部と、刃部1の係止穴8と係合する係止穴8の半径と同等かわずかに小さい半径を有する略凸球面状の先端部31とを備えている。丸先のねじとすることで、締付ねじ30の先端部31がどのような状態で係止穴8に接しても、確実に安定して係止できるようになっている。締付ねじ30としては、高価なリーマボルトとする必要はなく、一般に汎用されているねじを使用することができる。
【0019】
このように構成された本実施形態に係るボールエンドミル20の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るボールエンドミル20によれば、刃部1の挿入部7をボデー10の取付穴12に挿入し、刃部の着座面5をボデー10の先端面11に着座させた状態で、ボデー10のねじ穴14に締付ねじ30を螺入して、該締付ねじ30の先端部31を刃部1の係止穴8に係合させることにより、刃部1の中心線を軸線Oに一致させて、刃部1をボデー10の先端に着脱可能に取り付けることができる。つまり、刃部1の着脱を任意かつ容易に行うことができる。
したがって、例えば、切れ刃3が磨耗した場合には、磨耗した刃部1のみを交換すればよいので加工コストを低減でき、また、ボールエンドミル20に替えて加工形状に合わせて他の刃先形状を持つエンドミルを使用したい場合には、ボデー10はそのまま同じものを使用して刃部1のみを異なる形状の切れ刃を備えるものに取り替えればよいので工具管理の手間や工具費を低減でき、非常に経済的である。
【0020】
この場合において、本実施形態に係るボールエンドミル20は、ねじ穴14および係止穴8が軸線Oに対し横線X方向に、工具回転方向と逆方向に向かってわずかに偏心しているので、締付ねじ30をねじ穴14に螺入して先端部31を係止穴8に係止させる際に、回転モーメントが発生し、刃部1が軸線O周りに工具回転方向と逆方向に向かって回転することとなる。換言すると、刃部1が、主分力が加わる方向と同方向に回転することとなる。そして、ボデー10の先端面11および刃部1の着座面5に互いに係合するキー溝13,13およびキー6,6を設けているので、刃部1の回転によりキー6,6がキー溝13,13に突き当たって、刃部1がボデー10に係止されることとなる。これにより、刃部1がキー溝の工具回転方向を向く面13aを基準として、刃部1の回転方向に精度良く位置決めされてボデー10に固着される。
【0021】
これと同時に、ねじ穴14の軸心C1および係止穴8の軸心C2が横線Xに対してわずかに工具先端側に傾斜しているので、締付ねじ30をねじ穴14に螺入して先端部31を係止穴8に係止させると、刃部1が工具先端側から工具後端側に向かって引き込まれることとなる。これにより、刃部1の着座面5がボデー10の先端面11に突き当たって、刃部1が先端面11を基準として、軸線O方向に精度良く位置決めされてボデー10に固着される。
【0022】
つまり、締付ねじ30を締めるだけで、刃部1が工具回転方向と逆方向に回転しながら工具後端側に引き込まれて、刃部1の回転方向に位置決めされると同時に軸線O方向に位置決めされるので、刃部1を簡易にボデー10の所定位置に精度よく取り付けることができる。
【0023】
そのため、ボデー10に設けられた切屑ポケット4bと刃部1に設けられた切屑ポケット4aとを正確に一致させることができ、切くず障害等を起こすことがない。換言すると、切屑ポケット4が刃部1とボデー10とで分断される構成を採っても、取付時においては両切屑ポケット4a,4bが精度よく一致して刃部1からボデー10へとつながる一の切屑ポケット4として機能するので支障がない。したがって、切屑ポケット確保の観点から設計上の制限を受けることがなく、ヘッド部2の軸方向の長さを短くして刃部1を小さくすることができる。そして、ヘッド部2の軸方向の長さを短くして刃部1を小さくすることにより、工具のたわみが小さくなり、びびり振動の発生が抑制され、切削時の送りを高くする等の加工能率の向上を図ることができる。
また、刃部1をボデー10の先端面に強固に密着させることができるので、刃部1が浮き上がってびびり振動を誘発することもない。
その結果、びびり振動による加工物の仕上げ面粗さ等の悪化を防止することができ、加工精度に優れる。さらに、びびり振動による刃先の欠け等の刃部の欠損を防止することができ、刃部の交換頻度が低減されて作業効率に優れるとともに、切削時の送りを高くする等の加工能率の向上を図ることで加工コストが削減される。
【0024】
さらに、本実施形態に係るボールエンドミル20によれば、ボデー10をマシニングセンタ、フライス盤等の工作機械に取り付けたままで、締付ねじ30をボデー10から完全に抜き取ることなく、ねじを緩めるだけで刃部1をボデー10から取り外すことができる。したがって、刃部の交換に要する時間が短く作業効率に優れ、ねじを紛失することもない。
また、ねじ1本だけで刃部1をボデー10に取り付けるため、構造が簡単で安価に製造することができ、工具点数が少なく工具管理が容易である。また、設計的にもコンパクトであることから、工具径の小さなエンドミル等であっても対応することができる。
【0025】
また、本実施形態に係るボールエンドミル20によれば、ねじ穴14および係止穴8を軸線Oから工具回転方向と逆方向に偏心させることにより、刃部1が工具回転方向と逆方向、つまり主分力が加わる方向と同方向に回転するような構成を採っているので、切削加工時の主分力が過大となっても、締付ねじ30にかかる負担は少なくて済む。これにより、締付ねじ30の破損を防止することができる。
【0026】
また、取付時において刃部1の中心線とボデーの軸線Oとを正確に一致させることが重要となるところ、刃部1とボデー10とが嵌合する部分である挿入部7および取付穴12をボデー10と同軸に製造して高精度の円筒度を得るだけで足りるので、製造が比較的容易であり短時間で安価にボールエンドミル20を提供することができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、ねじ穴14を取付穴12の直径に対して20%の距離だけ、係止穴8を挿入部7の直径に対して20%の距離だけ、軸線Oから偏心した位置に設けることとしたが、これに限定されるものではない。偏心距離dとしては、取付穴12または挿入部7の直径に対して5%以上50%未満の範囲内で設定するのが好ましい。5%より小さいと刃部1を十分に回転させることができず、50%以上になると締付ねじ30の先端部31と係止穴8との接触面積が極端に減少して十分なクランプ力が得られないからである。
また、上記実施形態においては、ねじ穴14および係止穴8を工具回転方向と逆方向に向かって横線X方向にずれるように形成することとしたが、これとは逆に、ねじ穴14および係止穴8を工具回転方向に向かって横線X方向にずれるように形成することにしてもよい。この場合、刃部1が工具回転方向と同方向に回転することとなる。
【0028】
また、上記実施形態においては、ねじ穴14を横線Xから5〜10°傾斜するように形成することとしたが、これに限定されるものではない。傾斜角度αとしては、1°以上45°以下の範囲内で設定するのが好ましい。1°より小さいと刃部1を十分に引き込むことができず、45°を超えると刃部1を引き込む力が過大となり、これに対応する刃部1の回転モーメントが不足して、刃部1を十分に回転させることができず、キー溝13,13とキー6,6との間に隙間が空いてしまうおそれがあるからである。
また、上記実施形態においては、係止穴8もねじ穴と同様に横線Xに対して5〜10°傾斜するように形成されることとしたが、これに限定されるものではない。係止穴8をその軸心C2が横線Xと平行になるように形成したり、ねじ穴14とは異なる角度で傾斜するように形成したりしても、係止穴8は略凹球面状から構成されているので、上記と同様の効果を奏することができる。
【0029】
また、上記実施形態においては、ねじ穴14の軸心C1および係止穴8の軸心C2を横線Xに対してわずかに工具先端側に傾斜するように形成することとしたが、これに代えて、図4(b)に示されるように、刃部1の挿入部7をボデー10の取付穴12に挿入して刃部1の着座面5をボデー10の先端面11に着座させた状態で、ねじ穴14の軸心C1が係止穴8の軸心C2に対してわずかに工具基端側にずれるように形成することにしてもよい。このように構成することで、ねじ穴14の軸心C1および係止穴8の軸心C2が横線Xと平行であっても、締付ねじ30をねじ穴14に螺入して先端部31を係止穴8に係止させると、刃部1が工具先端側から工具後端側に向かって引き込まれることとなり、上記と同様の効果を奏することができる。
前記ねじ穴14と係止穴8の軸心C1,C2間の距離としては、例えば、取付穴12または挿入部7の直径に対して5%以上50%未満の範囲内で設定するのが好ましい。5%より小さいと刃部1を十分に引き込むことができず、50%以上になると刃部1を引き込む力が過大となり、これに対応する刃部1の回転モーメントが不足して、刃部1を十分に回転させることができず、キー溝13,13とキー6,6との間に隙間が空いてしまうおそれがあるからである。
【0030】
また、上記実施形態においては、ボデー10に取付穴12およびねじ穴14を形成し、刃部1に挿入部7および係止穴8を形成することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、これとは逆に刃部1に取付穴およびねじ穴を形成し、ボデーに挿入部および係止穴を形成することにしてもよい。
また、上記実施形態においては、1つの締付ねじ30を用いて刃部1をボデー10に取り付ける構成を採用したが、締付ねじ30、ねじ穴14、係止穴8の数としてはこれに限定されるものではない。大径のボールエンドミル20の場合には、クランプ力向上の観点から、複数の締付ねじ30で取り付ける構成としてもよい。例えば、工具径が30〜40mmの場合において、ねじ穴14および係止穴8を各々2つ設け、締付ねじ30を2つ用いて刃部1をボデーに取り付ける構成とすることができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、2対のキー6およびキー溝13を設けることとしたが、これに代えて、1対のキー6およびキー溝13のみを設けることにしてもよい。このようにすることで、例えば、締付ねじ30を複数用いる構成とした場合や、非対称の切れ刃を備える場合において、作業者による刃部の取付ミスを防止することができるという利点がある。
また、上記実施形態においては、刃部1の挿入部7を略円筒状としたが、挿入部7の形状としては特に限定されるものではなく、図5に示されるように、その外周面が取付穴12の一部と係合する円筒面と平面とから構成され、該平面に係止穴8を備えることにしてもよい。
また、上記実施形態においては、係止穴8を略凹球面状としたが、係止穴8の形状としては特に限定されるものではなく、他の任意の形状とすることができる。少なくとも一部において締付ねじ30の先端部31と係合するような形状であればよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、2枚刃のボールエンドミル20を採用することとしたが、切れ刃3の枚数としてはこれに限定されるものではなく、例えば、1枚刃や3枚刃のボールエンドミルとすることができる。
また、上記実施形態においては、切れ刃3を刃部1と同一の材料で一体に形成することとしたが、これに代えて、例えば、超硬合金から構成された刃部1に、ダイヤモンド焼結体や立方晶窒化ホウ素(cBN)焼結体等の超高圧焼結体から構成されたチップを、切れ刃としてろう付けすることにしてもよい。このようにすることで、切れ刃を超高圧焼結体とした場合の利益を享受しつつ、刃部1全体を非常に高価な超高圧焼結体から構成する場合に比べて製造コストを低減することができる。また、ヘッド部2にスローアウェイチップを着座させるためのチップ取付座を設け、該チップ取付座にスローアウェイチップを着脱可能に可能に装着するスローアウェイ式を採用してもよい。この場合にはさらに経済的である。
【0033】
また、上記実施形態においては、刃部1からボデー10へと延びる2つの切屑ポケット4,4を設けることとしたが、切屑ポケット4の配置、形状、数としては特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
また、上記実施形態においては、クランプ力向上の観点から締付ねじ30として丸先のねじを使用することとしたが、締付ねじ30の先端部31の形状としてはこれに限定されるものではなく、他の任意の形状とすることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係るリーマについて、図6を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係るボールエンドミル20と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係るリーマ40は、第1の実施形態に係るボールエンドミル20が略球状のヘッド部2を有し、該ヘッド部1に2枚の切れ刃3,3を備え、該切れ刃3として底刃が設けられていたのに対し、図6に示されるように、略円柱状のヘッド部2を有し、該ヘッド部2に1枚の切れ刃3を備え、該切れ刃3として食付き切れ刃が設けられている点で相違している。さらに、刃部1側にのみ切屑ポケットが形成され、1対のキー6およびキー溝13のみを備えている点で相違している。
このように構成された本実施形態に係るリーマ40によれば、第1の実施形態に係るボールエンドミル20と同様の効果を奏する。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態に係るドリルについて、図7を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係るボールエンドミル20と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
本実施形態に係るドリル50は、第1の実施形態に係るボールエンドミル20が略球状のヘッド部2を有し、該ヘッド部2に切れ刃3として外周刃が設けられるとともに、比較的短い切屑ポケット4bが備えられていたのに対し、図7に示されるように、先端角を有する略円筒状のヘッド部2を有し、該ヘッド部2の先端に切れ刃3として工具進行方向を向く先端切れ刃が設けられるとともに、工具先端側から工具後端側へと延びる切りくずを排出するための溝51を備えている点で相違している。
このように構成された本実施形態に係るドリル50によれば、第1の実施形態に係るボールエンドミル20と同様の効果を奏する。
【0038】
特に、このようにドリルに適用した場合には、刃部1が該刃部1の回転方向に精度よく位置決めされる結果、刃部1に設けられた溝51aとボデー10に設けられた溝51bとを常に正確に一致させることができるという利点がある。
【0039】
なお、上記実施形態においては、2枚刃の直刃ドリルを採用することとしたが、切れ刃3の枚数および溝51の形状、数としては特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態に係るバイト60について、図8を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係るボールエンドミル20と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係るバイト60は、第1の実施形態に係るボールエンドミル20が略球状のヘッド部2と略円筒状の挿入部7とから構成される刃部1と、軸線O周りに回転される略円筒状のボデー10とを備えていたのに対し、図8に示されるように、略角形の傾斜したヘッド部2と略円盤状のフランジ部61と略円筒状の挿入部7とから構成される刃部1と、旋盤等に取り付けられて固定される略円筒状のボデー10を備える点で相違している。さらに、前記フランジ部61に着座面5とキー6とが備えられ、前記ヘッド部2にスローアウェイチップ63を着座させるためのチップ取付座62を設け、該チップ取付座62にスローアウェイチップ63がねじで着脱可能に装着されている点で相違している。
【0042】
また、ねじ穴14はボデー10の軸心から該軸心に垂直な横線方向に、前記係止穴8は挿入部7の軸心から該軸心に垂直な横線方向に、切削方向と逆方向に向かって、わずかに所定距離dだけずらした位置に偏心して設けられ、刃部1が切削方向と逆方向に回転するように構成されている。これにより、第1の実施形態に係るボールエンドミル20と同様に、刃部1が、主分力が加わる方向と同方向に回転するような構成となっている。
【0043】
前記スローアウェイチップ63は、超硬合金、サーメット、セラミックス、超高圧焼結体等から構成され、例えば、略四角形の平板状をなし、その上下面と側面との交差稜線部に複数の切れ刃3が形成されている。
また、前記バイト60としては、例えば、中ぐりバイト、穴ぐりバイト等の円筒状のシャンクをもつ丸シャンクバイトが挙げられる。
このように構成された本実施形態に係るバイト60によれば、第1の実施形態に係るボールエンドミル20と同様の効果を奏する。
【0044】
特に、このように旋盤などに工具を固定して工作物を回転させて使用するバイトに適用した場合には、刃部1の回転方向に刃部1が精度よく位置決めされる結果、切削途中に刃部1を交換した場合であっても、工作物の軸心に対する心高を安定して正確な高さに固定できるという利点がある。つまり、刃部1の着脱を繰り返したときの刃先位置の再現性に優れるので、高精度の加工精度を得ることができるという利点がある。
【0045】
また、複数の切れ刃3を有するスローアウェイチップ63が着脱可能に装着されていることから、切削加工に伴い切れ刃3が磨耗した場合には、スローアウェイチップ63の向きを変えて付け替えることにより、1つのスローアウェイチップ63を数回にわたって使用することができ非常に経済的である。
【0046】
なお、上記実施形態においては、ねじを用いてスローアウェイチップ63を刃部1に固定するスクリューオン方式のスローアウェイバイト60を採用することとしたが、これに代えて、スローアウェイチップ63をチップ取付座62にろう付けすることにしてもよく、また、刃部1と一体に形成することにしてもよい。
また、上記実施形態においては、スローアウェイチップ63として略四角形の平板状をなすネガティブチップを採用したが、スローアウェイチップ63の形状としてはこれに限定されるものではなく、例えば、三角形、菱形、五角形、円形等の任意の形状とすることができ、また、ポジティブチップでもよい。
また、上記実施形態においては、刃部1を略角形の傾斜したヘッド部2と略円盤状のフランジ部61と略円筒状の挿入部7とから構成することとしたが、刃部1の構成としてはこれに限定されるものでなく、また、ヘッド部1およびフランジ部61を他の任意の形状とすることができる。
【0047】
また、本発明に係る切削工具の実施形態として、ボールエンドミル20、リーマ40、ドリル50、バイト60を例に挙げて説明したが、本発明に係る切削工具としてはこれに限定されるものではなく、エンドミル、リーマ、ドリル、バイト、フライス、ボーリングカッタ、カセットツール等多種の切削工具に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るボールエンドミルを示す斜視図である。
【図2】図1に示すボールエンドミルの先端部の構造を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示すボールエンドミルの刃部の取付機構を説明する正面図である。
【図4】(a)は図1に示すボールエンドミルの刃部の取付機構を説明する縦断面図であり、(b)は図4(a)の変形例を示す縦断面図である。
【図5】図2に示す刃部の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るリーマを示す図であり、(a)は斜視図、(b)はリーマの先端部の構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るドリルを示す図であり、(a)は斜視図、(b)はドリルの先端部の構造を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るバイトを示す図であり、(a)は斜視図、(b)はバイトの先端部の構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 刃部
3 切れ刃
4 切屑ポケット
6 キー
7 挿入部
8 係止穴
10 ボデー(工具本体)
12 取付穴
13 キー溝
14 ねじ穴
20 ボールエンドミル(切削工具)
30 締付ねじ
40 リーマ
50 ドリル
60 バイト
O 軸線
X 横線
C1 ねじ穴の軸心
C2 係止穴の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を有する略円筒状の工具本体と、
該工具本体の先端に着脱可能に取り付けられる切れ刃を有する刃部と、
該刃部を前記軸線周りに回転させるための回転機構と、
前記刃部を前記工具本体側に引き込ませるための引込機構とを備え、
前記回転機構および前記引込機構により前記刃部が前記軸線方向および前記回転方向に位置決めされて前記工具本体に固定される
ことを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記回転機構が、前記工具本体に形成されたねじ穴および前記刃部の回り止めのためのキー溝と、前記刃部に形成された係止穴および前記キー溝と係合するキーと、先端部が前記係止穴と係合する前記ねじ穴に螺合される締付ねじとから構成され、これらねじ穴および係止穴が前記軸線から該軸線に垂直な横線方向にずらした位置に偏心して設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記引込機構が、前記ねじ穴をその軸心が前記横線に対して工具先端側に傾斜するように設けることにより構成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記引込機構が、前記ねじ穴をその軸心が前記係止穴の軸心に対して工具基端側にずれるように設けることにより構成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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