説明

切土工事の情報化施工方法

【課題】地山の変状を面的に評価することができる切土工事の情報化施工方法を提供する。
【解決手段】切土予定領域11を切土し、切土により露出した切土法面10に複数の地山補強材21を所定ピッチで打設して切土法面10の補強を行う切土工事の情報化施工方法において、切土法面に打設される複数の地山補強材21には打設後に切土法面10より突出する端部に加速度計31が設けられた地山補強材21が含まれ、切土法面10に打設された地山補強材21の固有振動数に基づいて地山の状況の評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山補強材の固有振動数測定による切土工事の情報化施工に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に地山の切土法面の斜面には、多数の地山補強材(例えばロックボルト)を、所定のピッチで打設して斜面の崩壊を防止する斜面補強が行われている(例えば、特許文献1)。この際、切土工事においては施行前に得られる地山の情報が限定的であるため、地山の状況にかかわらず斜面に打設する地山補強材の長さ、打設ピッチは安全側に設計され、該設計に基づいて斜面補強が行われている。つまり、強固な岩盤層を有する地山や、脆い砂礫層を有する地山など、その地山の状況は地山ごとに異なるものの、その地山の状況に応じて使用する地山補強材の長さ、打設ピッチ等の設計を個別に行うことは行われておらず、十分な安全面を担保できる一律の設計に基づいて斜面補強が行われている。
【0003】
このことは、地山における切土予定領域を切土し、切土法面の形成を上方から段階的に行う切土工事においても同様であり、一の切土予定領域を掘削により切土し切土法面を形成し、十分に安全面を担保できる設計に基づいて斜面補強を行い、この一連の作業を下方にむかって順次繰り返すことが行われている。つまり、切土法面毎に地山の状況に応じた個別の設計は行われておらず、地山の状況にかかわらず十分に安全面を担保できる設計に基づいて、各切土法面の斜面補強が行なわれている。
【0004】
上記のように十分な安全面を担保できる設計に基づいて斜面補強を行うことで地山の状況にかかわらず斜面の崩壊を防止することができるものの、斜面補強の合理化、斜面補強の簡素化を考慮すると、本来であれば、地山の状況に応じて、斜面に打設する地山補強材の長さ、打設ピッチを設計することが好ましい。具体的には、切土中に得られる情報(地山の状態)をその後の施行に反映する情報化施工を行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213744公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に、切土工事における地山の状況評価は、変位計、層別沈下計あるいは目視確認により行われており、これらの地山の状況評価は、点、線による計測に過ぎず、地山補強材を打設しようとする地山が、安定している領域なのか、不安定な領域なのかを領域単位で識別することができない。そのため、地山の状況の計測データを情報化施工(斜面補強の合理化、斜面補強の簡素化)に反映することができていない。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、地山の状況を面的に評価することができる切土工事の情報化施工方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、切土工事の情報化施工方法であって、切土予定領域を切土し、切土により露出した切土法面に、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計が設けられた地山補強材を含む複数の地山補強材を所定ピッチで打設する工程と、前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数の変化に基づいて地山の状況変化の評価を行う評価工程を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記切土予定領域が複数ある場合において、一の切土予定領域の切土を行う前に、該一の切土予定領域よりも上方に位置する切土予定領域の切土を行う第1切土工程と、前記第1切土工程により露出した切土法面に、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計が設けられた地山補強材を含む複数の地山補強材を所定ピッチで打設する工程と、前記打設工程後に、前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数を測定する第1測定工程と、前記第1測定工程後に、前記一の切土予定領域の切土を行う第2切土工程と、前記第2切土工程後に、前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数を再度測定する第2測定工程と、を更に有し、前記評価工程が、前記第1測定工程及び前記第2測定工程において測定された固有振動数の変化に基づいて、地山の状況変化の評価を行う工程であってもよい。
【0010】
また、前記評価工程による地山の状況変化の評価に基づいて、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の本数を決定することとしてもよく、また、前記評価工程による地山の状況変化の評価に基づいて、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の長さを決定することとしてもよい。
【0011】
また、前記第1測定工程により測定される固有振動数に対して、前記第2測定工程により測定される固有振動数が上昇した場合に、前記打設工程により打設される地山補強材の本数よりも、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の本数を増やすこととしてもよい。
【0012】
また、本発明の切土工事の情報化施工方法をトンネル工事に適用することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地山補強材を一種の計測器として利用することで、地山の状況を面的に評価することでき、該地山の状況に基づいた情報化施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の切土工事の情報化施工方法における第1の実施形態を説明するための状態図である。
【図2】X部の拡大断面図である。
【図3】本発明の切土工事の情報化施工方法における第2の実施形態の各工程を説明するための状態図である。
【図4】実施例のロックボルトの固有振動数を示すフーリエスペクトルである。
【図5】実施例のロックボルトの固有振動数を示すフーリエスペクトルである。
【図6】実施例のロックボルトの固有振動数を示すフーリエスペクトルである。
【図7】実施例のロックボルトの固有振動数を示すフーリエスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の切土工事の情報化施工方法について図面を用いて具体的に説明する。なお、図1(A)は、本発明の切土工事の情報化施工方法における第1の実施形態を説明するための地山断面図であり、図1(B)は、本発明の切土工事の情報化施工方法における第1の実施形態を説明するための地山正面図であり、図2は、X部の拡大断面図である。
【0016】
(本願第1の実施形態)
図1(A)に示すように、本発明の切土工事の情報化施工方法は、切土予定領域11を切土し、切土により露出した切土法面10に、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計31が設けられた地山補強材21(以下、加速度計が設けられた地山補強材を、特別地山補強材22という場合がある。)を含む複数の地山補強材21を所定ピッチで打設する工程と、特別地山補強材22の固有振動数の変化に基づいて地山の状況変化の評価を行う評価工程を備えることを特徴とする。以下、本発明の切土工事の情報化施工方法について具体的に説明する。
【0017】
<切土>
切土は、切土予定領域11を掘削機等により掘削することにより行われ、図1(A)に示すように、切土により切土法面10及び造成地3が形成される。切土予定領域11は、所望する造成地3に応じて適宜設定することができる。
【0018】
<地山補強材の打設>
図1(B)に示すように、切土により形成される切土法面10には、所定長さの地山補強材21が所定のピッチで打設される。地山補強材21の打設は、切土工事の分野で用いられる従来公知の地山補強材(例えば、ロックボルト)、打設方法を適宜選択して行うことができ、地山補強材21の構造、及び打設方法について特に限定はされない。
【0019】
例えば、図2に示す地山補強材21は、切土法面10を掘削機等によって所定孔径に削孔し、短尺の鉄筋棒等より構成される補強材32を挿入し、次いで、グラウト材33を注入、充填して補強材32を固定し、頭部プレート35、ナット34を取り付けることにより、切土法面10に打設されている。
【0020】
また、図1、図2に示すように、切土法面10に打設される地山補強材21には、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計31が取り付けられた地山補強材21(特別地山補強材22)が含まれる。特別地山補強材22を構成し、地山補強材21に取り付けられる加速度計31は、後述する評価工程において、該地山補強材22を振動させることで生ずる固有振動数を測定するために設けられ、固有振動数を測定することができる全ての計測装置、機器は、本発明の加速度計31の範囲に含まれる。
【0021】
また、加速度計31は、切土法面10に地山補強材21を打設後に該切土法面より突出する端部であればその位置について特に限定はないが、図2に示すように、地山補強材21の頂部に設けられていることが好ましい。また、特別地山補強材22は、切土法面10に少なくとも1つ打設されていればよく、図1(B)に示すように、複数打設されていてもよい。
【0022】
<評価工程>
評価工程は、切土法面10に打設された特別地山補強材22の固有振動数を測定し、該測定された固有振動数に基づいて地山の状況の評価を行う工程である。
【0023】
特別地山補強材22の固有振動数の測定方法は、特別地山補強材22を振動させ、該振動に基づく固有振動数を加速度計31により計測することができればよく、特別地山補強材22を振動させる方法としては、例えば、特別地山補強材22をハンマー等で叩いて振動させる方法が挙げられる。
【0024】
特別地山補強材22を叩いて振動させる場合に、特別地山補強材22のいずれの位置を叩くかについては特に限定はないが、切土法面10に対して垂直方向に特別地山補強材22を叩いた場合には、縦振動が生じ正確に固有振動数を計測することが困難となる。このような点を考慮すると、切土法面10に対し水平方向に特別地山補強材22を叩き、横振動に基づく固有振動数を計測することが好ましい。
【0025】
また、特別地山補強材22を振動させることにより生ずる固有振動数は、地山補強材21、特別地山補強材22を打設後の地山の状況に応じて異なる。本願発明者は、特別地山補強材22の固有振動数と地山の状況との関連性について鋭意検討した結果、地山の状況に変化が生じた場合には、特別地山補強材22にかかる土圧が変化し、これに伴い固有振動数が変化するとの知見を得た。より具体的には、特別地山補強材22にかかる土圧が上昇し固有振動数が高くなった場合には、地山の状況が不安定な状態であるとの知見を得た。そこで、本発明は、特別地山補強材22の固有振動数の計測結果に基づいて地山の状況の評価を行うことを特徴とする。
【0026】
地山の状況の評価は、特別地山補強材22の固有振動数に基づいた評価であればよく、例えば、特別地山補強材22の固有振動数を用いた地山の状況の評価として、以下の(i)、(ii)を挙げることができる。
【0027】
(i)基準値として設定された固有振動数(以下、基準値として設定された固有振動数を基準固有振動数という。)と、特別地山補強材22の固有振動数とを比較し地山の状況の評価を行うこととしてもよい。具体的には、特別地山補強材22の固有振動数が、基準固有振動数からどの程度変動したかに基づいて、複数の地山補強材21(特別地山補強材22を含む)が打設された後の地山の状況の評価を行うこととしてもよい。
【0028】
基準固有振動数の設定範囲により、その変動結果による評価は異なるが、例えば、地山の状況が安定な状態と不安定な状態との境界における固有振動数を基準固有振動数とした場合には、基準固有振動数よりも、特別地山補強材22の固有振動数が変動したか否かに応じて現在の地山の状況が安定であるか、不安定であるかを評価することができる。具体的には、特別地山補強材22の固有振動数が上昇したか否かに基づいて地山の状況の評価を行い、固有振動数が上昇した場合には、地山の状況が不安定な状態に移行したと評価することができる。
【0029】
ここで、上記評価により地山の状況が不安定な状態に移行していると評価した場合には、切土法面10に地山補強材21を追加して打設することで、特別地山補強材22にかかる土圧を低減させ地山の状況が安定する方向に移行させることができる。また、地山補強材21を追加して打設した後の地山の状況が安定した状態であるか否かは、地山補強材21を追加して打設した後に、特別地山補強材22の固有振動数を再度計測し、上述の基準固有振動数と比較することで評価可能である。
【0030】
(ii)また、評価を所望する箇所に特別地山補強材22を複数打設し、各特別地山補強材22の固有振動数を計測し、計測された個々の固有振動数を比較することで、評価を所望する位置近傍の地山の状況の評価を行うこととしてもよい。
【0031】
例えば、図1(B)に示すように、特別地山補強材22a〜22eを打設した場合に、各特別地山補強材22の固有振動数を測定した結果、特別地山補強材22cの固有振動数が他の特別地山補強材(22a、22b、22d、22e)の固有振動数と比較して高い場合には、22c近傍の地山の状況が不安定であると評価することができる。この場合、22c近傍に地山補強材21を追加打設することで、地山の状況が安定する方向に移行させることができる。この場合において、22c近傍の地山の状況が安定した状態となったか否かは、上記と同様、地山補強材21を追加打設後に、特別地山補強材22cの固有振動数を再度計測し、他の特別地山補強材の固有振動数と比較することで評価可能である。
【0032】
(本願第2の実施形態)
次に、図3を参照して本願第2の実施形態について説明する。なお、図3(A−1)は、切土予定領域を説明するための地山断面図であり、図3(A―2)は、切土予定領域を説明するための地山正面図である。また、図3(B−1)は、第1切土工程後の地山断面図であり、図3(B−2)は、第1切土工程後の地山正面図である。また、図3(C−1)は、打設工程後の地山断面図であり、図3(C−2)は、打設工程後の地山正面図である。また、図3(D−1)は、第2切土工程後の地山断面図であり、図3(D−2)は、第2切土工程後の地山正面図である。
【0033】
本願第2の実施形態は、切土予定領域を複数有し(図3に示す場合にあっては、切土予定領域41〜43)、一の切土予定領域の切土を行う前に、該一の切土予定領域よりも上方に位置する切土予定領域の切土を行う「第1切土工程」と、前記第1切土工程により露出した切土法面101に、前記特別地山補強材22を含む複数の地山補強材21を打設する「打設工程」と、前記打設工程により打設された前記特別地山補強材22の固有振動数を測定する「第1測定工程」と、前記第1測定工程後に、前記一の切土予定領域(切土予定領域42)の切土を行う「第2切土工程」と、前記第2切土工程後に、前記打設工程により打設された前記特別地山補強材22の固有振動数を再度測定する「第2測定工程」と、前記第1測定工程及び前記第2測定工程において測定された固有振動数の変動に基づいて、地山の状況の評価を行う「評価工程」を含む点に特徴を有する。以下、各工程について説明する。
【0034】
<第1切土工程>
第1切土工程は、図3(A)に示される複数の切土予定領域を有する地山において、図3(B)に示すように一の切土予定領域(切土予定領域42)の切土を行う前に、該一の切土予定領域よりも上方に位置する切土予定領域(切土予定領域41)の切土を行う工程である。
【0035】
<打設工程>
打設工程は、図3(C)に示すように、第1切土工程により露出した切土法面101に、上記で説明した特別地山補強材22を含む複数の地山補強材21を打設する工程である。
【0036】
<第1測定工程>
第1測定工程は、打設工程で切土法面101に打設された前記特別地山補強材22の固有振動数を測定する工程である。具体的には、一の切土予定領域(切土予定領域42)が切土される前に、上記打設工程で打設された特別地山補強材22の固有振動数を測定する工程である。
【0037】
<第2切土工程>
第切土工程は、図3(D)に示すように、第1測定工程後に、一の切土予定領域(切土予定領域42)の切土を行う工程である。
【0038】
<第2測定工程>
第2測定工程は、第2切土工程後に、打設工程で切土法面101に打設された特別地山補強材22の固有振動数を測定する工程である。具体的には、一の切土予定領域(切土予定領域42)が切土された後に、上記打設工程で打設された特別地山補強材22の固有振動数を測定する工程である。
【0039】
<評価工程>
一の切土予定領域(切土予定領域42)を切土した場合に地山の状況が変化する場合には、その上方に位置する切土予定領域(切土予定領域41)を切土することにより露出する切土法面101に打設された特別地山補強材22にかかる土圧は変動し、これに伴い特別地山補強材22の固有振動数も変動することとなる。そこで、評価工程においては、第1測定工程及び第2測定工程において測定された固有振動数の変動に基づいて、地山の状況の評価を行う。具体的には、一の切土予定領域(切土予定領域42)の切土前後における地山補強材22の固有振動数の変動に基づいて、地山の状況の評価を行う。
【0040】
ここで、第2切土工程により地山の状況が変化し、地山の状況が不安定な状態に移行した場合には、第2切土工程前の特別地山補強材22の固有振動数に対し、第2切土工程後の特別地山補強材22の固有振動数は上昇することとなる。したがって、上記の評価工程において固有振動数が上昇した場合には、地山の状況が変化し、地山の状況が不安定な状態であると評価することができる。一方、固有振動数に変化が生じていない場合には、地山の状況が安定な状態であると評価することができる。
【0041】
また、上記評価に基づいて、地山の状況が不安定な状態であると評価した場合には、一の切土予定領域(切土予定領域42)を切土することにより露出する切土法面102を補強することで、地山の状況を安定した状態に移行することができる。一方、地山の状況が安定した状態であると評価した場合には、切土法面102に打設する地山補強材21を簡素化することが可能となる。
【0042】
このように、本発明によれば、次の切土法面に地山補強材21を打設する前に、現在の地山の状況を評価することができる。換言すれば、切土工事中に得られる情報(地山の状況)をその後の施行に反映すること(情報化施工)ができ、斜面補強の合理化、斜面補強の簡素化を達成することができる。
【0043】
なお、切土により造成地を構成するための切土工事の情報化施工方法を中心に説明を行ったが、本発明の切土工事の情報化施工方法は、全ての切土工事に適用が可能であり、例えば、地山を掘削しトンネルを形成するトンネル工事等にも適用可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の方法について、更に具体的に説明する。
【0045】
縦2m、横2m、高さ3mの模型土槽の中に、地山を模擬した湿潤砂(細粒分まじり砂)を構築し、その内部に長さ1mのロックボルトの模型を設置した。このロックボルトの頭部に加速度計を設置し、以下の手順にしたがって、応答加速度を計測した。
【0046】
(手順1)模型土槽初期状態の固有振動数の測定
ロックボルトの頭部を水平方向にハンマーで叩いた後の自由振動から、ロックボルトの固有振動数を計測した。このときのフーリエスペクトルを図4に示す。なお、図中のピーク値が、地山に拘束された状態におけるロックボルトの固有振動数である。(以下の図5〜図7についても同様)
(手順2)せん断変形後の固有振動数の測定(1)
実際に地山の状況に変化が生じた状態を模擬するために、模型土槽全体を側方に強制的にせん断変形させた(10mm載荷)。せん断変形後のロックボルトの固有振動数を、上記手順1と同様に行った。このときのフーリエスペクトルを図5に示す。
(手順3)せん断変形後の固有振動数の測定(2)
手順2の後に、さらに模型土槽全体を側方に強制的にせん断変形させた(20mm載荷)。次いで、上記手順1と同様にして、ロックボルトの固有振動数の測定を行った。このときのフーリエスペクトルを図6に示す。
(手順4)初期状態に復元後の固有振動数の測定
模型土槽を初期の状態に戻したのちに、上記手順1と同様にして、ロックボルトの固有振動数の測定を行った。このときのフーリエスペクトルを図7に示す。
【0047】
模型土槽の初期状態における固有振動数は229kHz(図4参照)であったが、土槽のせん断変形に伴い、固有振動数は、282kHz(図5参照)、290kHz(図6参照)に上昇した。このことは、地山の状況に変化が生じた場合には、地山補強材にかかる土圧が変化し、これに伴い固有振動数が変化することを示している。また、この際の土槽の変位(地山の変位に相当)は20mm〜30mm程度であり、実際の切土工事の管理基準値と同レベルであることから、本発明の方法が、情報化施工に十分適用可能であることがわかる。
【0048】
また、手順4に示すように、土槽を初期の状態に戻した場合、ロックボルトの固有振動数は232kHz(図7参照)となり、初期状態の固有振動数(図4参照)とほぼ一致した。このことからも、ロックボルトに作用する土圧の増減に応じて固有振動数が増減することが明らかである。
【符号の説明】
【0049】
10、101、102・・・切土法面
11・・・切土予定領域
21・・・地山補強材
22・・・加速度計が取り付けられた地山補強材
31・・・加速度計
32・・・補強材
33・・・グラウト材
34・・・ナット
35・・・頭部プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切土予定領域を切土し、切土により露出した切土法面に、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計が設けられた地山補強材を含む複数の地山補強材を所定ピッチで打設する工程と、
前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数の変化に基づいて地山の状況変化の評価を行う評価工程を備えることを特徴とする切土工事の情報化施工方法。
【請求項2】
前記切土予定領域が複数ある場合において、
一の切土予定領域の切土を行う前に、該一の切土予定領域よりも上方に位置する切土予定領域の切土を行う第1切土工程と、
前記第1切土工程により露出した切土法面に、打設後に切土法面より突出する端部に加速度計が設けられた地山補強材を含む複数の地山補強材を所定ピッチで打設する工程と、
前記打設工程後に、前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数を測定する第1測定工程と、
前記第1測定工程後に、前記一の切土予定領域の切土を行う第2切土工程と、
前記第2切土工程後に、前記加速度計が設けられた地山補強材の固有振動数を再度測定する第2測定工程と、
を更に有し、
前記評価工程が、前記第1測定工程及び前記第2測定工程において測定された固有振動数の変化に基づいて、地山の状況変化の評価を行う工程であることを特徴とする請求項1に記載の切土工事の情報化施工方法。
【請求項3】
前記評価工程による地山の状況変化の評価に基づいて、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の本数を決定することを特徴とする請求項2に記載の切土工事の情報化施工方法。
【請求項4】
前記評価工程による地山の状況変化の評価に基づいて、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の長さを決定することを特徴とする請求項2に記載の切土工事の情報化施工方法。
【請求項5】
前記第1測定工程により測定される固有振動数に対して、前記第2測定工程により測定される固有振動数が上昇した場合に、前記打設工程により打設される地山補強材の本数よりも、前記一の切土予定領域が切土されることにより露出した切土法面に打設される地山補強材の本数を増やすことを特徴とする請求項2に記載の切土工事の情報化施工方法。
【請求項6】
トンネル工事に用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の切土工事の情報化施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132270(P2012−132270A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286977(P2010−286977)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】