説明

切断機本体

【課題】使用形態の異なる携帯形の切断機と卓上形の切断機について、切断機本体の一部を共通部品化することにより、これらの製作コストの低減及びメンテナンス性の向上を図る。
【解決手段】切断機本体を構成する駆動部P及びハンドル部20を接合部を経て、卓上形切断機用のブレードケースと携帯形切断機のブレードケース61に対して流用可能とし、ハンドル部20に設けた後側支持部22については、卓上形では切断機本体を下動位置に保持する固定部材を装着する固定部材装着部とし、携帯形では切り込み深さ調整用のガイド部材55に対する支持部として流用する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円形の鋸刃や砥石あるいはチップソー等の回転刃具を備えた切断機の切断機の本体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木工用あるいは金工用の切断機には、切断材を固定するテーブルと、このテーブルに対して上下に移動操作可能に支持された切断機本体を備えた卓上形の切断機と、切断材の上面に載せ掛けるベースとこのベースの上面側に支持された切断機本体を備えてベース下面側に突き出された回転刃具を切断材に切り込ませた状態で切断機本体及びベースを一体で移動させる携帯形の切断機が提供されている。
前者の卓上形の切断機と後者の携帯形の切断機は、それぞれ木工用と金工用のいずれにも用いられるもので作業形態等に合わせて適宜使い分けられる。これに対して前者の卓上形の切断機は、切断材を載せるテーブルに切断機本体が支持された構成であり、切断機本体をテーブルに対して変位させることで切断作業がなされる一方、後者の携帯形の切断機は、切断材の上面に載せるベースに切断機本体が支持された構成であり、切断機本体とベースを一体として移動させることにより切断作業がなされる点で両者の基本的構成が異なっており、その結果としてテーブルとベースに対するブレードケースの支持構造が異なっている。
すなわち、前者の卓上形の切断機では、ブレードケースの端部に前側支持部を設け、この前側支持部を介して切断機本体がテーブルの端部に上下に傾動操作可能に支持されて、切断機本体を下方へ傾動させることにより回転刃具が切り込まれて切断加工がなされる。
【0003】
一方、後者の携帯形の切断機では、ブレードケースの一端側の端部に前側支持部を設け、この前側支持部を介して切断機本体がベースの端部(多くの場合切断進行方向の前側の端部)に上下に傾動操作可能に支持された点では卓上形と同様であるものの、ブレードケースの他端側の端部もベースに対して支持されて、切断機本体とベースを一体で移動させることにより回転刃具が切り込まれて切断加工がなされる。この携帯形の切断機の場合、ベース下面側への回転刃具の突き出し寸法を変更して切断材に対する回転刃具の切り込み深さを調整可能とすることを目的として切断機本体がベースに対して上下に傾動可能な構成とされている。
このように、切断作業形態に合わせて卓上形と携帯形の2形態の切断機が提供されており、両者は基本的構成において異なっているものの、切断機本体については構成上共通する点が多い。例えば、卓上形及び携帯形のいずれにおいても、切断機本体は、円形の回転刃具と、回転刃具の上側ほぼ半周の範囲を覆うブレードケースと、回転刃具を回転させる駆動源としての電動モータと、その回転出力を減速するためのギヤ列を収容したギヤケースを備えており、電動モータを収容したモータケース及びギヤケースは、いずれのタイプもブレードケースの背面側に直列状態に取り付けられている。また、いずれのタイプもブレードケースを介して切断機本体がテーブル若しくはベースに回動支持された構成を備えている。
【特許文献1】特開2000−135624号公報
【特許文献2】特開2006−346909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来卓上形についてはテーブルに切断機本体が支持され、携帯形についてはベースに切断機本体が支持される構成の相違等から、切断機本体についてもそれぞれ卓上形専用、携帯形専用として製作されていた。この点で従来の切断機本体については、そのコスト低減を図り、またそのメンテナンス性を一層高める必要があった。
本発明は、使用形態の相違あるいは切断材の材質の相違等から基本的構成が異なる2形態の切断機について、これを製作する段階で切断機本体を共用部品として扱うことができれば、製作工程の簡略化及び製品コストの低減を図り、ひいては製品価格の低減を図ることができる点に着目してなされたもので、使用形態の異なる卓上形の切断機と携帯形の切断機において切断機本体を共通化することができ、ひいてはそのコスト低減を図り、またメンテナンス性を一層高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の切断機本体とした。
請求項1記載の切断機本体によれば、切断材を載置するテーブルを備える卓上形の切断機と、切断材に載置するベースを備える携帯形の切断機との2形態の切断機における切断機本体として駆動部とハンドル部を共用することができる。
このことから、例えば回転刃具としていわゆるチップソーを取り付けた金工用の携帯形切断機について、前側支持部を備えるブレードケースを取り替え、かつ切り込み深さ調整用の後側支持部を備えるベースをテーブルに変更することにより、駆動部及びハンドル部をそのまま流用した上で金工用の卓上形切断機として使用することができる。
このように2形態の切断機における切断機本体について、駆動部とハンドル部を共通化することができるので、これら2形態の切断機の製作コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項2記載の切断機本体によれば、駆動部とハンドル部を、卓上形の切断機における切断機本体に流用する場合に、後側支持部を固定部材装着部として機能させることにより切断機本体を下動位置に固定しておくことができる。切断機本体を固定部材により下動位置に固定しておくことにより、当該切断機の不使用時において主として高さ方向についてコンパクトな状態で保管しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る切断機本体10を備えた卓上形の切断機30の全体を示している。一方、図6は、この切断機本体10の多くの構成部材を流用した切断機本体60を備えた携帯形の切断機50を示している。卓上形の切断機30では、使用者が図1において左側に位置して操作する。これに対して、携帯形の切断機50では、使用者が図6において右側に位置して操作する。以下、各部材等の前後方向については、使用者を基準にして手前側を後側、遠ざかる方向を前側とする。図1は切断機30の正面側を示し、図6は切断機50の背面側を示している。従って、図1において左側が後側で、右側が前側となり、図6において右側が前側で、左側が後側となる。また、左右方向についても使用者を基準とする。従って、切断機30を前側から見た図3では、左右が逆になっている。
以下説明する実施形態は、卓上形と携帯形の2形態の切断機30,50において、切断機本体10が共通部品化されて共用されている点に大きな特徴を有している。
卓上形の切断機30は、切断機W1を載置するためのテーブル31を備えている。このテーブル31の前端部付近に切断機本体10が支持されている。切断機本体10は、支軸32を介して上下に傾動可能に支持されている。上方へ戻した位置が当該切断機本体10の待機位置であり、この待機位置から使用者の操作によって下方へ傾動させることにより切断材W1に対して切断加工がなされる。
テーブル31の上面(切断材載置面)には、切断材W1を固定するためのバイス装置33が装備されている。このバイス装置33の押圧板33aに対向して、テーブル31上には、受け板33bが固定されている。この受け板33bと押圧板33aとの間に挟み込まれて切断材W2が固定される。図1はこの状態を示している。図示は省略したが、テーブル31の上面には、切断加工時において回転刃具を逃がすための刃口(溝部)が設けられている。
【0007】
切断機本体10は、駆動モータ11と、これにより回転する円形の回転刃具12と、回転刃具12の上側ほぼ半周の範囲を覆うブレードケース13を備えている。駆動モータ11はブレードケース13の背面側に変速用のギヤ列14を介して取り付けられている。駆動モータ11はモータケース11aに内装され、ギヤ列14はギヤケース14aに内装されている。図2及び図3に示すようにモータケース11aとギヤケース14aは、概ね相互に連続的(同軸)に連なった状態に接合されている。図中、モータケース11aとギヤケース14aとの接合部に符号J1が付されている。本実施形態において駆動モータ11とギヤ列14が回転刃具12を回転させるための駆動部Pを構成しており、この駆動部Pが特許請求の範囲に記載した駆動部に相当する。図中、ギヤケース14aとブレードケース13との接合部であって、駆動部Pとブレードケース13の背面側との接合部に符号J2が付されている。
モータケース11aとギヤケース14aは、4本の固定ねじ17〜17でブレードケース13の背面側に固定されている。
駆動モータ11の回転出力は、ギヤ列14を経てスピンドル15に伝達される。スピンドル15は、ブレードケース13に回転支持されている。このスピンドル15の先端に回転刃具12が取り付けられている。回転刃具12は、図1においてブレードケース13の正面に表示した白抜きの矢印13bで示すように正面側から見て反時計回り方向に回転する。この回転刃具12には、周囲に多数のチップを取り付けた金工用のチップソーが用いられている。
ブレードケース13には、可動カバー16が支持されている。この可動カバー16は、ブレードケース13に対してスピンドル15を回転自在に支持するベアリングを収容するベアリングホルダを支軸(ボス部)として回転可能に支持されている。ベアリングホルダは、ギヤケース14aの前面に一体に設けられている。
この可動カバー16は、回転することにより、回転刃具12の下側ほぼ半周の範囲を覆う閉じ位置と開放する開き位置との間で開閉可能に設けられている。また、可動カバー16は、回転刃具12とは反対側に回転してブレードケース13内に進入することにより開かれる。
この可動カバー16は、その回転中心に対する重心の相対変位により切断機本体10の下動動作に連動して開かれ、上動動作に連動して閉じられる。また、この可動カバー16は、その先端部が切断材W1の上面に当接することによっても相対的に開かれる。切断機本体10が下動操作されると、可動カバー16が開かれて回転刃具12が露出され、この露出された部分が切断材W1に切り込まれる。
【0008】
切断機本体10には、使用者が把持するループ形のハンドル部20が設けられている。このハンドル部20は、駆動部Pに一体に設けられており、モータケース11aとギヤケース14aの接合部J1の前部側と後部側との間に跨った状態に設けられている。このハンドル部20はいわゆる半割り構造を有するもので、一方の半割り部20aがモータケース11aに一体に設けられ、他方の半割り部20bがギヤケース14aに一体に設けられ、モータケース11aとギヤケース14aが接合部J1で接合されることにより両半割り部20a,20bが相互に突き合わされてハンドル部20が形成される。図2及び図3において、両半割り部20a,20bの相互の接合部に符号J3が付されている。接合部J3は、接合部J1に一致している。
図5に示すように、両半割り部20a,20bは複数の固定ねじ21〜21と1本の支持ボルト22で相互に結合されている。各固定ねじ21は、一方の半割り部20aに挿通されて他方の半割り部20bに締め込まれており、これにより両半割り部20a,20bが相互に接合されている。最も下側(テーブル31側)において、両半割り部20a,20bを接合する支持ボルト22は、切断機本体10を下動位置に固定するための固定部材40を装着するための固定部材装着部として機能する。また、この支持ボルト22は、後述する携帯形の切断機50において切断機本体60の後側をベース51に対して支持する後側支持部として機能する。この点については後述する。この支持ボルト22は両半割り部20a,20bに挿通されている。この支持ボルト22に固定ナット27が締め込まれて両半割り部20a,20bが相互に接合されている。
【0009】
ハンドル部20の内周側上部にトリガ形式のスイッチレバー23が配置されている。スイッチレバー23の後側に使用者が把持するグリップ部24が設けられている。
ハンドル部20の後部には、バッテリパック25が装着されている。このバッテリパック25は、ハンドル部20の後部に下方へ開放した状態に設けたバッテリ装着部26に装着されている。このバッテリ装着部26に対してバッテリパック25を前後方向にスライドさせることにより、当該バッテリパック25をバッテリ装着部26ひいてはハンドル部20の後部(使用者から見て手前側)に装着し、逆にハンドル部20から取り外すことができる。本実施形態の場合、バッテリパック25はバッテリ装着部26に対して前側へスライドさせる(使用者から見て前側へ押す)ことにより装着することができるようになっている。
逆に、このバッテリパック25は使用者から見て手前側にスライドさせることによりハンドル部20から取り外すことができ、取り外して充電することができる。このバッテリパック25を電源として駆動モータ11が起動する。使用者がグリップ部24を把持してその指先でスイッチレバー23を引き操作すると、駆動モータ11が起動して回転刃具12が回転する。スイッチレバー23から指先を離して引き操作を止めると、スイッチレバー23がオフ位置に戻されて駆動モータ11が停止する。
このように本実施形態の場合、比較的重量の大きなバッテリパック25がハンドル部20の後部に装着されて、当該バッテリパック25の前側であって駆動モータ11との間に使用者が把持するグリップ部24が配置されていることから、当該切断機本体10の前後方向の重量バランスをよくすることができ、これにより使用者の操作感をよくすることができる。
【0010】
また、図1に示すようにブレードケース13の内部には、照明具18が設けられている。この照明具18にはLED(発光ダイオード)が用いられている。この照明具18は、上記バッテリパック25を電源として点灯する。この照明具18は、スイッチレバー23を引き操作すると点灯し、引き操作を解除すると消灯する。
この照明具18は、回転刃具12の回転中心(スピンドル15)に対して前側に配置され、かつ当該回転刃具12の板厚方向について当該回転刃具12の背面側(使用者から見て左側であって、ブレードケース13と回転刃具12との間の隙間)に配置されている。このような特定の位置に配置された照明具18によれば、切断機本体10を下動させて切断作業を行う際に、回転刃具12の切断材W1に対する切り込み位置(切断部位)が前側斜め上方から明るく照らされることから、使用者は暗い作業場所であっても切断部位を容易に目視することができ、これにより切断作業を効率よく行うことができる。
この照明具18とバッテリパック25との間の電気配線は、ブレードケース13とギヤケース14との接合部J2においてコネクタ接続(図示省略)されている。このため、ブレードケース13とギヤケース14を接合部J2において分離する場合には、コネクタを分離することにより当該電気配線を簡単に分離することができる。逆に、ブレードケース13の背面側にギヤケース14を接合する際には、当該接合部J2においてコネクタを接続することにより照明具18とバッテリパック25との間の電気配線を簡単に接続することができる。
【0011】
前記したように切断機本体10は、支軸32を介して上下に傾動可能な状態でテーブル31に支持されている。ブレードケース13の前部には、前側支持部13aが一体に設けられている。この前側支持部13aが、テーブル31の上面前部に設けられた支持ブラケット部31aに対して支軸32を介して結合されていることによって切断機本体10がテーブル31の上方において上下に傾動可能に支持されている。また、切断機本体10は、図示省略した捩りばねにより上方の待機位置側へ傾動する方向に付勢されている。従って、使用者はこの付勢力に抗して切断機本体10を下方へ傾動させることによって切断加工を行うことができる。
また、図5に示すように、本実施形態に係る切断機本体10は、固定部材40によってその下動位置に保持しておくことができる。前記したようにハンドル部20は二つの半割部20a,20bにより構成されており、両半割部20a,20bの下部は、1本の支持ボルト22で相互に結合されている。この支持ボルト22を利用してハンドル部20の下部には、フック41が取り付けられている。一方、テーブル31の後部側の上面には、固定部材40の一端が結合されている。図示するように本実施形態では、固定部材40としてチェーン(鎖)が用いられている。切断機本体10をその付勢力に抗して下方へ傾動させて、この固定部材40の他端側をフック41に引き掛けておくことにより、切断機本体10をこの下動位置に保持しておくことができる。切断機本体10をこの下動位置に保持しておくことにより、当該卓上形の切断機30を主として高さ方向にコンパクトな状態で収納しておくことができ、また高さ方向にコンパクトな状態に保持されることから使用者はグリップ部24を把持して当該切断機を楽に持ち運ぶことができる。
【0012】
次に、図6には、携帯形の切断機50が示されている。この切断機50は、切断材W2に載置するベース51と、このベース51の上面側に支持した切断機本体60を備えている。この切断機本体60には、前記卓上形の切断機30における切断機本体10の構成部材であって、駆動モータ11とギヤ列14とハンドル部20等の主要構成部材がそのまま流用されている。従って以下の説明及び図6において、これらの各構成部材については同位の符号を用いている。
この切断機本体50において、駆動モータ11のモータケース11aとギヤ列14のギヤケース14aは、4本の固定ねじ17〜17によってブレードケース61の背面側に取り付けられている。ブレードケース61は、前記卓上形におけるブレードケース13と同じく回転刃具62の上側ほぼ半周の範囲を覆うもので、その前部に前側支持部61aを備えている。携帯形における前側支持部61aは、前記卓上形における前側支持部13aよりも小形かつ薄肉に形成されている。
卓上形の切断機30では、テーブル31に対して前側支持部13aを介した1箇所での支持により重量の大きな切断機本体10を片持ち支持する必要があることから、この前側支持部13aが大形かつ厚肉に形成されて、その高い支持剛性が確保されるようになっている。これに対して、携帯形の切断機50では、ベース51に対して切断機本体60が前後2箇所で支持されることから、前部の前側支持部61aについては卓上形における前側支持部13aよりも小形かつ薄肉化されている。
前側支持部61aが、ベース51の上面前部に設けた支持ブラケット部51aに支軸52を介して上下に傾動可能に支持されている。一方、ベース51の上面後部には、いわゆるデプスガイドと称されるガイド部材55が上方へ起立する状態に設けられている。このガイド部材55には、その長手方向に沿ってガイド溝55aが設けられている。このガイド溝55aは、概ね上記支軸52を中心とする円弧に沿って形成されている。このガイド溝55aに、ハンドル部20の下部において両半割り部20a,20b間に挿通した支持ボルト22が挿通されている。この支持ボルト22に固定ナット27が締め込まれて、切断機本体60の後側がベース51の後部に対して支持されている。このことから、当該携帯形の切断機50においてこの支持ボルト22が特許請求の範囲に記載した後側支持部に相当する。
【0013】
携帯形の切断機50においては、上記固定ナット27に固定レバー63が前記フック41に代えて取り付けられている。この固定レバー63をナット緩み方向(図6において左側)に傾動操作すると、当該支持ボルト22のガイド部材55に対する締め付け状態が緩められ、これにより切断機本体60を支軸52を支点にして上下に傾動可能な状態になる。逆に、固定レバー63をナット締め付け方向(図6において右側)に傾動操作すると、支持ボルト22がガイド部材55に対して締め付けられて切断機本体60の傾動位置がロックされる。
ベース51に対する切断機本体60の傾動位置を変更することにより、回転刃具62のベース51の下面側への突き出し寸法を調整することができる。回転刃具62のベース51の下面側への突き出し寸法が切断材W2に対する切り込み深さに相当する。このため、レバー63を緩めて切断機本体60のベース51に対する傾動位置を変更することにより、切り込み深さの調整を行うことができる。
回転刃具62には、前記卓上形の切断機30と同様、周囲に多数のチップを供えた円形のチップソーが用いられている。従って、この切断機50は、主として金工用の充電式チップソーカッタとして用いることができる。
また、前記卓上形の切断機30と同様、ブレードケース61の内側には、可動カバー64が支持されている。この可動カバー64もギヤケース14aの前部に設けたベアリングボックスを支軸として上下に回動し、これによりブレードケース61から下方へ突き出された回転刃具62の下側ほぼ半周の範囲に対して開閉可能に支持されている。携帯形の切断機50における可動カバー64は、当該切断機50の移動操作に伴って切断材W2の端部に当接して相対的に押されることにより開かれていく。
【0014】
このように、後者の携帯形の切断機50(充電式チップソーカッタ)において、切断機本体60の駆動モータ11とギヤ列14とハンドル部20については、前者の卓上形の切断機30(充電式チップソー切断機)と同じものがそのまま流用されている。このことから、卓上形の切断機30と携帯形の切断機50において、ブレードケース13,61の背面側に取り付けられる駆動部Pであって、駆動モータ11とギヤ列14とハンドル部20が共通部品化されている。
また、両切断機30,50では、回転刃具62,12とこれを取り付けるスピンドル15及びこれを回転支持するベアリングを収容するボックス(図示省略)についても相互に共用されている。スピンドル15は、ギヤ列14の出力側に支持されている。前記したようにスピンドル15はベアリングによって回転支持されている。このベアリングは、ギヤ列14のギヤケース14aの前部に一体に設けたベアリングボックスに収容されている。このベアリングによってスピンドル15がブレードケース13の内部において回転自在に支持されている。
さらに、図6では見えていないが、この携帯形の切断機50においてブレードケース61内にも照明具(発光ダイオード)が設けられている。この照明具も、回転刃具62の回転中心(スピンドル15)に対して前側に配置され、かつ回転刃具62とブレードケース61の背面側との間の隙間(使用者から見て左側)に配置されて、切断部位がその前側斜め上方から明るく照らされるようになっている。
また、この照明具も、ブレードケース61の背面に対するギヤケース14aの接合部J2においてコネクタ接続によりバッテリパック25側に電気的に接続されている。このため、スイッチレバー25を引き操作するとこの照明具が点灯し、スイッチレバー25bの引き操作を解除すると消灯する。
【0015】
以上のように構成した本実施形態の切断機本体10によれば、図6に示す携帯形の切断機50の切断機本体60における、駆動部P(駆動モータ11とギヤ列14)及びハンドル部20をブレードケース61及びベース51から分離して、これに代えてブレードケース13及びテーブル31を用いることにより、卓上形の切断機30として利用することができる。このように卓上形と携帯形の2形態の切断機30,50における切断機本体10,60の駆動部P及びハンドル部20を共通化することができるので、当該切断機30,50の製作コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、後側支持部(支持ボルト22)について、携帯形の切断機50では、切り込み深さ調整のガイド部材55に対する支持部として利用される一方、卓上形の切断機30では、切断機本体10をその下動位置に固定するための固定部材40を装着するための固定部材装着部として利用することができ、当該2形態の切断機30,50において後側支持部をそれぞれ機能させることができる。
さらに、携帯形の切断機50において、スピンドル15がギヤケース14aの前面に支持されている。このため、スピンドル15及びこれを回転支持するベアリングについても、卓上形の切断機30に流用することができる。このことから、携帯形の切断機50において回転刃具62として金工用のチップソーを用いる場合に、これを駆動部Pとハンドル部20とともに卓上形の切断機30において流用することにより、当該卓上形の切断機30を金工用の切断機として利用することができる。
また、携帯形の切断機50のみならず、卓上形の切断機30についても、回転刃具62として金工用のチップソーを用いて切断加工を行う場合に、照明具18で切断部位を明るく照らして効率のよい切断作業を行うことができる。
さらに、携帯形の切断機50においてブレードケース61内に配置した照明具のための配線を、接合部J2におけるコネクタ接続を利用することにより卓上形の切断機30における照明具18の配線として流用することができる。
以上説明した実施形態には、種々変更を加えて実施することができる。例えば、ハンドル部20の後部にバッテリパック25を装着する充電式の切断機を例示したが、駆動モータ11の電源として交流電源を用いる切断機についても同様に適用することができる。
また、例示した卓上形及び携帯形の切断機30,50は、それぞれ回転刃具12,62としてチップソーを備えることにより金工用の切断機として例示したが、回転刃具として鋸刃を備えることにより木工用の切断機として、あるいは回転刃具として砥石を備えることにより石工用の切断機として使用する場合についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る切断機本体を備えた卓上形の切断機の全体正面図である。
【図2】卓上形の切断機を使用者側から見た後面図である。本図は、卓上形切断機を図1において矢印(2)方向から見た図である。
【図3】卓上形の切断機を前側から見た前面図である。本図は、卓上形切断機を図1において矢印(3)方向から見た図である。
【図4】卓上形の切断機の正面図である。本図は、切断機本体を下降端まで下動させた状態を示している。
【図5】卓上形の切断機の背面図である。本図は、切断機本体を下降端まで下動させた状態を示している。
【図6】携帯形の切断機を背面側から見た図である。
【符号の説明】
【0017】
W1,W2…切断材
J1…モータケースとギヤケースとの接合部
J2…ブレードケースと駆動部(ギヤケース)との接合部
J3…半割部の接合部
10…切断機本体(卓上形の切断機)
P…駆動部
11…駆動モータ、11a…モータケース
12…回転刃具(チップソー)
13…ブレードケース、13a…前側支持部
14…ギヤ列、14a…ギヤケース
15…スピンドル
16…可動カバー
17…固定ねじ
18…照明具(LED)
20…ハンドル部、20a,20b…半割り部
21…固定ねじ
22…支持ボルト(後側支持部)
23…スイッチレバー
24…グリップ部
25…バッテリパック
26…バッテリ装着部
27…固定ナット
30…卓上形の切断機
31…テーブル、31a…支持ブラケット部
32…支軸
33…バイス装置
40…固定部材
41…フック
50…携帯形の切断機
51…ベース、51a…支持ブラケット部
55…ガイド部材
60…切断機本体(携帯形の切断機)
61…ブレードケース、61a…前側支持部
62…回転刃具(チップソー)
63…固定レバー
64…可動カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃具と、該回転刃具の周囲を覆うブレードケースと、該ブレードケースの背面側に取り付けられて前記回転刃具を回転させる駆動部と、該駆動部に設けたハンドル部を有する切断機本体であって、
前記ブレードケースに前側支持部を有し、前記ハンドル部に後側支持部を有し、
前記前側支持部を、切断材に載置するベースの前部に対して上下に傾動可能に支持するとともに、前記後側支持部を、前記ベースの後部に設けたガイド部材に対して位置変更可能に支持して、前記切断材に対する切り込み深さ調整可能な携帯形の切断機の切断機本体として使用可能である一方、
前記前側支持部を、切断材を載置するテーブルの前部に対して上下に傾動可能に支持して卓上形の切断機の切断機本体として使用可能として、
前記駆動部と前記ハンドル部を前記携帯形の切断機と前記卓上形の切断機における切断機本体の駆動部とハンドル部として共用可能な構成とした切断機本体。
【請求項2】
請求項1記載の切断機本体であって、前記後側支持部を、前記卓上形の切断機において前記切断機本体を下動位置に固定するための固定部材を装着するための固定部材装着部として機能させる構成とした切断機本体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184177(P2009−184177A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24950(P2008−24950)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】