説明

刈取収穫機の刈取搬送構造

【課題】短稈を収穫する収穫作業時での収穫効率の低下を防止する。
【解決手段】2条の未刈り穀稈を導入可能に左右に配置した2つの分草杆部Ac,Adの間に引起装置13Cを配備して2条の未刈り穀稈を引き起こし可能に構成した2条用の引起枠18Cと、2条用の引起枠18Cで引き起こした未刈り穀稈の株元側を無端回動帯33Cで機体の後方側に掻き込み搬送する2条用の掻込搬送機構31Cとを備え、2条用の掻込搬送機構31Cを、2条用の掻込搬送機構31Cの前端が引起装置13Cから離れて2条用の掻込搬送機構31Cの搬送領域が隣り合う2つの分草杆部Ac,Adにほぼわたる第1搬送姿勢と、2条用の掻込搬送機構31Cの前端が第1搬送姿勢よりも引起装置13Cに近づいて引起装置13Cが引き起こす未刈り穀稈に対して2条用の掻込搬送機構31Cがより速く掻き込み搬送作用する第2搬送姿勢とに姿勢変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う2つの分草杆部を、それらの間に2条の未刈り穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置し、前記2つの分草杆部の間に、前記2つの分草杆部の間に導入した未刈り穀稈を引き起こす引起装置を配備して、2条の未刈り穀稈の引き起こしが可能となるように構成した2条用の引起枠と、前記2条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈の株元側を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送するように構成した2条用の掻込搬送機構とを備えた刈取収穫機の刈取搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような刈取収穫機の刈取搬送構造では、2条用の掻込搬送機構を、その前端が引起装置から離れて、2条用の掻込搬送機構の搬送領域が2条用の掻込搬送機構に隣接する2つの分草部材にわたる又はほぼわたる所定の搬送姿勢で固定装備するように構成していた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−11769号公報(図7、図8、図13〜15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
稈長の短い短稈を収穫する収穫作業時において、2条用の引起枠に2条の未刈り穀稈を導入すると、その2条の未刈り穀稈のうちの引起装置の引き起こし領域から遠い側の未刈り穀稈の引き起こし代が極端に短くなることから、その遠い側の未刈り穀稈が引起装置による引き起こしの途中で引起装置から外れることがある。このような場合に、2条用の掻込搬送機構を前述した所定の搬送姿勢で固定配備していると、引起装置から外れた未刈り穀稈が2条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送作用を受けずに、引起装置と2条用の掻込搬送機構との間に倒伏して刈り残されるなどの不都合を招き易くなっていた。
【0005】
本発明の目的は、短稈を収穫する収穫作業時での収穫効率の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段では、
隣り合う2つの分草杆部を、それらの間に2条の未刈り穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置し、前記2つの分草杆部の間に、前記2つの分草杆部の間に導入した未刈り穀稈を引き起こす引起装置を配備して、2条の未刈り穀稈の引き起こしが可能となるように構成した2条用の引起枠と、前記2条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈の株元側を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送するように構成した2条用の掻込搬送機構とを備えた刈取収穫機の刈取搬送構造において、
前記2条用の掻込搬送機構を、前記2条用の掻込搬送機構の前端が前記引起装置から離れて前記2条用の掻込搬送機構の搬送領域が前記隣り合う2つの分草杆部にわたる又はほぼわたる第1搬送姿勢と、前記2条用の掻込搬送機構の前端が前記第1搬送姿勢よりも前記引起装置に近づいて前記引起装置が引き起こす未刈り穀稈に対して前記2条用の掻込搬送機構がより速く掻き込み搬送作用する第2搬送姿勢とに姿勢変更可能に構成してある。
【0007】
この課題解決手段によると、稈長の長い長稈を収穫する場合には、2条用の掻込搬送機構を第1搬送姿勢にすることで、2条用の引起枠に導入されて引起装置で引き起こされる未刈り穀稈の株元側を、1条導入状態と2条導入状態とにかかわらず掻込搬送機構によって機体の後方側に適切に掻き込み搬送することができる。
【0008】
又、稈長の短い短稈を収穫する場合には、2条用の掻込搬送機構を第2搬送姿勢にすることで、2条用の引起枠に導入されて引起装置で引き起こされる未刈り穀稈が、引起装置による引き起こしの途中で引起装置から外れたとしても、その未刈り穀稈を2条用の掻込搬送機構が引起装置の近くに位置する前端側で受け止めて機体の後方側に掻き込み搬送するようになる。これにより、稈長の短い未刈り穀稈(特に2条用の引起枠に対する2条導入状態での引起装置の引き起こし領域から遠い側の未刈り穀稈)が引起装置から外れて倒伏することに起因した刈り残しなどの発生を防止することができる。
【0009】
従って、長稈を収穫する収穫作業時と短稈を収穫する収穫作業時とにかかわらず収穫効率の低下を防止することができる。
【0010】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記2条用の掻込搬送機構を、その搬送終端部に備えた回転体を支持する上下向きの後支軸を支点にして前記第1搬送姿勢と前記第2搬送姿勢とに姿勢変更するように構成してある。
【0011】
この課題解決手段によると、2条用の掻込搬送機構の搬送終端位置を変更することなく2条用の掻込搬送機構を第1搬送姿勢と第2搬送姿勢とに姿勢変更することができる。つまり、2条用の掻込搬送機構の姿勢変更にかかわらず、2条用の掻込搬送機構からその直後方の機器への穀稈の受け渡しを良好に行うことができる。
【0012】
従って、2条用の掻込搬送機構からその直後方の機器への穀稈の受け渡し不良に起因した搬送詰まりの発生を防止することができる。
【0013】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記2条用の掻込搬送機構を支持する支持フレームに、前記支持フレームに対する前記2条用の掻込搬送機構の搬送始端部に備えた回転体を支持する上下向きの前支軸の取り付け位置の変更で前記2条用の掻込搬送機構の前記第1搬送姿勢と前記第2搬送姿勢との姿勢変更を可能にする2つの取付孔を形成してある。
【0014】
この課題解決手段によると、支持フレームに2つの取付孔を形成するだけの簡単な構成で、2条用の掻込搬送機構を第1搬送姿勢と第2搬送姿勢とに姿勢変更することができる。
【0015】
従って、構成の簡素化を図りながら長稈を収穫する収穫作業時と短稈を収穫する収穫作業時とにかかわらず収穫効率の低下を防止することができる。
【0016】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第1〜3のいずれか一つの課題解決手段において、
隣り合う2つの分草杆部を、それらの間に1条の未刈り穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置し、前記2つの分草杆部の間に、前記2つの分草杆部の間に導入した未刈り穀稈を引き起こす引起装置を配備して、1条の未刈り穀稈を引き起こすように構成した1条用の引起枠と、前記1条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送する1条用の掻込搬送機構とを備え、
前記2条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度が前記1条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度よりも速くなるように構成してある。
【0017】
ところで、2条用の掻込搬送機構は、2条の未刈り穀稈の掻き込み搬送を可能にするために1条用の掻込搬送機構よりも搬送領域が長くなるように構成してある。そのため、2条用の掻込搬送機構を、その掻き込み搬送速度が1条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度と同じになるように構成すると、2条用の引起枠に2条の未刈り穀稈を導入する収穫作業時に、2条用の掻込搬送機構での搬送能力が不足して2条用の掻込搬送機構において未刈り穀稈が滞留して詰まるなどの不都合を招く虞がある。
【0018】
そこで、この課題解決手段では、2条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度が1条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度よりも速くなるように構成しているのであり、これにより、2条用の引起枠に2条の未刈り穀稈を導入する収穫作業時に、2条用の掻込搬送機構での搬送能力が不足することに起因した穀稈詰まりなどの発生を防止することができる。
【0019】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第4の課題解決手段において、
前記2条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体として、前記1条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体よりも大径のものを採用してある。
【0020】
この課題解決手段によると、1条用の掻込搬送機構と2条用の掻込搬送機構とにおいて、それらに備える駆動用の回転体の回転数を同じにしながらも、2条用の掻込搬送機構に備えた駆動用の回転体の周速度が1条用の掻込搬送機構に備えた駆動用の回転体の周速度よりも速くなるとともに、2条用の掻込搬送機構に備えた無端回動体の回動速度が1条用の掻込搬送機構に備えた無端回動体の回動速度よりも速くなり、2条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度が1条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度よりも速くなる。
【0021】
つまり、2条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体として、1条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体よりも大径のものを採用するだけの簡単な構成でありながら、1条用と2条用の両掻込搬送機構の掻き込み搬送速度が同じであることに起因して、2条用の引起枠に2条の未刈り穀稈を導入する収穫作業時に2条用の掻込搬送機構において穀稈詰まりなどが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自脱型コンバインの全体左側面図である。
【図2】刈取搬送装置の構成を示す要部の概略平面図である。
【図3】2条用の掻込搬送機構を第1搬送姿勢に姿勢変更した状態を示す要部の横断平面図である。
【図4】2条用の掻込搬送機構を第2搬送姿勢に姿勢変更した状態を示す要部の概略横断平面図である。
【図5】左右の掻込搬送機構への伝動構造を示す要部の一部展開縦断背面図である。
【図6】1条用の掻込搬送機構の構成及び支持構造を示す要部の左側面図である。
【図7】2条用の掻込搬送機構の構成及び支持構造を示す要部の縦断右側面図である。
【図8】右側の支持フレームの一部切り欠き平面図である。
【図9】右側の支持フレームの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る刈取収穫機の刈取搬送構造を、刈取収穫機の一例である自脱型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、この実施形態で例示する自脱型コンバインは、走行機体1の前部右側に搭乗運転部2を形成し、走行機体1の下部に左右一対のクローラ3を配備してある。走行機体2の前部には、機体の走行に伴って収穫対象の未刈り穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送装置4を、走行機体1から機体前方に向けて延出した状態で昇降揺動可能に装備してある。走行機体2の後部左側には、刈取搬送装置4からの刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)に扱き処理を施し、扱き処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置5を搭載してある。走行機体2の後部右側には、脱穀装置5での扱き処理及び選別処理で得た単粒化穀粒を貯留する穀粒タンク6を搭載してある。脱穀装置5の後端部には、脱穀処理後の刈取穀稈である排ワラを細断して機外に排出することを可能にする排ワラ細断装置7を連結してある。穀粒タンク6には、穀粒タンク6に貯留した単粒化穀粒の機外への排出を可能にするスクリュ搬送式の穀粒排出装置8を装備してある。
【0025】
刈取搬送装置4の昇降揺動は、走行機体1と刈取搬送装置4とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ9の伸縮作動で、刈取搬送装置4の後端に左右向きに備えた刈り取り搬送用の入力軸10を中心にして行うように構成してある。
【0026】
図示は省略するが、走行機体1の前部右側にエンジンを搭載してあり、このエンジンからの動力を、ベルト式伝動装置、トランスミッションケースに一体装備した静油圧式無段変速装置、及び、トランスミッションケースの内部に備えた走行伝動系、などを介して左右のクローラ3に伝達するように構成してある。又、静油圧式無段変速装置の入力軸から分岐した動力を、刈り取り搬送用の動力としてベルトテンション式の刈取クラッチなどを介して刈り取り搬送用の入力軸10に伝達するように構成してある。
【0027】
図1〜7に示すように、刈取搬送装置4は、走行機体1における左側の前端上部から機体前方に向けて昇降揺動可能に延出する刈取搬送フレーム11を備え、この刈取搬送フレーム11に、3つの穀稈導入経路を形成する4つの分草部材12A〜12D、対応する穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈を引き起こす3基の引起装置13A〜13C、対応する穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈を機体後方側に掻き込み搬送する3基の掻込搬送装置14A〜14C、各掻込搬送装置14A〜14Cによる搬送中の未刈り穀稈の株元側を切断するバリカン型の切断装置15、対応する掻込搬送装置14A〜14Cが搬送した刈取穀稈を機体の左右中央側の後方に向けて挟持搬送する左右一対の挟持搬送装置16A,16B、及び、左右の挟持搬送装置16A,16Bからの刈取穀稈を脱穀装置5に供給する供給搬送装置17、などを備えて構成してある。そして、4つの分草部材12A〜12Dを左右方向に所定間隔をあけて配置し、それらの分草部材12A〜12Dが形成する3つの穀稈導入経路に対応する引起装置13A〜13Cを立設配備することで、刈取搬送装置4の前部に3つの引起枠18A〜18Cを形成してある。
【0028】
刈取搬送フレーム11は、その後端に丸パイプ材などから構成した左右向きの揺動支点部材19を備え、この揺動支点部材19を走行機体1に相対回動可能に支持させてある。揺動支点部材19には、丸パイプ材などから構成した延出部材20を揺動支点部材19から機体前方に向けて延出するように前後向きに連結してあり、この延出部材20の延出端部(前端部)に、丸パイプ状の中間部材21を延出部材20の延出端部から左右に延出するように左右向きに連結してある。中間部材21には、中間部材21から機体前方に向けて延出するように補助フレーム22を連結してあり、又、丸パイプ材などから構成した3つの引起上部支持部材23A〜23Cを対応する引起装置13A〜13Cの上部を支持するように立設してある。
【0029】
揺動支点部材19、延出部材20、中間部材21、及び、各引起上部支持部材23A〜23Cは、刈り取り搬送用の動力を刈り取り搬送用の入力軸10から各引起装置13A〜13Cや各掻込搬送装置14A〜14Cなどに伝達する刈取搬送伝動系24を内蔵する伝動ケースを兼ねるように、それらの内部を連通させてある。
【0030】
つまり、刈取搬送フレーム11は、揺動支点部材19、延出部材20、中間部材21、及び、各引起上部支持部材23A〜23Cなどから刈り取り搬送用の伝動ケースを兼用するように構成してある。
【0031】
補助フレーム22は、対応する分草部材12A〜12Dの後端部を支持する4つの分草用支持部材25A〜25Dを、それらが機体の左右方向に所定間隔をあけて位置するように左右向きの連結部材26を介して連結し、左右両端の分草用支持部材25A,25Dと左から2番目の分草用支持部材25Bのそれぞれに、対応する引起装置13A〜13Cの下部を支持する逆L字状の引起下部支持部材27A〜27Cを立設して構成してある。
【0032】
左端の分草用支持部材25Aは、中間部材21の左端部から機体前方に向けて延出するL字状に形成してあり、この左端の分草用支持部材25Aの前後向き部分と左端の分草部材12Aとから左端の分草杆部Aaを構成してある。左から2番目(右から3番目)の分草用支持部材25Bは、連結部材26における左寄りの部位から機体前方に向けて一直線状に延出するように形成してあり、この左から2番目の分草用支持部材25Bと左から2番目の分草部材12Bとから左から2番目の分草杆部Abを構成してある。左から3番目(右から2番目)の分草用支持部材25Cは、連結部材26における右寄りの部位から機体前方に向けて一直線状に延出するように形成してあり、この左から3番目の分草用支持部材25Cと左から3番目の分草部材12Cとから左から3番目(右から2番目)の分草杆部Acを構成してある。右端の分草用支持部材25Dは、中間部材21の右端部から機体前方に向けて延出するL字状に形成してあり、この右端の分草用支持部材25Dの前後向き部分と右端の分草部材12Dとから右端の分草杆部Adを構成してある。
【0033】
左から2番目と3番目の分草用支持部材25B,25Cの前端部には、各穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈を対応する掻込搬送装置14A〜14Cに案内する複数のガイド杆28A,28Bを取り付けてある。
【0034】
各分草部材12A〜12Dは、対応する分草用支持部材25A〜25Dから機体前方に向けて延出する分草支持杆29A〜29Dの延出端部(前端部)に板金製の分草具30A〜30Dを連結して構成してある。そして、各分草具30A〜30Dの先端が機体の左右方向に所定間隔をあけた状態で位置するように配置設定してある。具体的には、右から2番目の分草具30Cの先端と右端の分草具30Dの先端との間から右側の穀稈導入経路への2条の未刈り穀稈の導入が可能で、かつ、それらの分草具30C,30Dの先端の間から右側の穀稈導入経路に1条の未刈り穀稈を導入する場合と2条の未刈り穀稈を導入する場合のいずれの作業状態においても、左端の分草具30Aの先端と左から2番目の分草具30Bの先端との間から左側の穀稈導入経路への1条の未刈り穀稈の導入と、左から2番目の分草具30Bの先端と左から3番目(右から2番目)の分草具30Cの先端との間から左右中央の穀稈導入経路への1条の未刈り穀稈の導入とが可能になるように配置設定してある。
【0035】
各引起装置13A〜13Cは、対応する引起上部支持部材23A〜23Cと引起下部支持部材27A〜27Cとにわたって後傾姿勢で架設してある。そして、刈取搬送伝動系24で分岐して各引起上部支持部材23A〜23Cの上端部に備えた引き起し用の駆動軸(図示せず)から取り出した動力で、各引起装置13A〜13Cに備えた複数の引起爪13Aa〜13Caが引き起こし作動することにより、収穫作業時の走行に伴って対応する穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈を引き起こすように構成してある。各引起装置13A〜13Cの底部には、対応する穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈を複数の引起爪13Aa〜13Caによって引き起こし領域に掻き寄せる左右向きの掻き寄せ領域を備えている。そして、右側の引起装置13Cは、その掻き寄せ領域の長さが他の引起装置13A,13Bの掻き寄せ領域よりも長くなるように構成してあり、これにより、右側の穀稈導入経路に2条の未刈り穀稈を導入した場合であっても、2条の未刈り穀稈の引き起こしを良好に行うことができる。
【0036】
上記の構成により、左側と左右中央の引起枠18A,18Bを、収穫作業時の走行に伴って1条の未刈り穀稈を梳き分けて引き起こす1条用に構成し、かつ、右側の引起枠18Cを、収穫作業時の走行に伴って最大2条の未刈り穀稈を梳き分けて引き起こす2条用に構成してある。
【0037】
各掻込搬送装置14A〜14Cは、対応する穀稈導入経路に導入された未刈り穀稈に掻き込み搬送作用する掻込搬送機構としてのベルト式掻込搬送機構31A〜31Cとパッカ32A〜32Cとを上下に所定間隔をあけて配備して構成してある。各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cは、掻き込み搬送用の複数の突出部33Aa〜33Caを一定ピッチで一体形成した無端回動体としてのゴム製の掻込搬送ベルト33A〜33Cを、各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cの搬送終端部に備える駆動用の回転体としての大径の駆動プーリ34A〜34Cと、各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cの搬送始端部に備える回転体としての小径のテンションプーリ35A〜35Cとにわたって巻き掛けて構成してある。そして、右側のベルト式掻込搬送機構31Cは、2条の未刈り穀稈の導入が可能な右側の穀稈導入経路に、2条の未刈り穀稈の掻き込み搬送が可能となるように配備することから、他の穀稈導入経路に配備する1条用のベルト式掻込搬送機構31A,31Bよりも搬送領域が長くなるように構成してある。各駆動プーリ34A〜34Cは対応するパッカ32A〜32Cと一体回転するように構成してあり、各パッカ32A〜32Cの外周部には掻き込み搬送用の複数の突出部32Aa〜32Caを一定ピッチで一体形成してある。そして、左右中央のパッカ32Bは右側のパッカ32Cと噛み合い連動するように構成してあり、左右中央のパッカ32Bには他のパッカ32A,32Cよりも小径のものを採用してある。
【0038】
切断装置15は、左右両端の分草用支持部材25A,25Dにわたって架設してある。そして、刈取搬送伝動系24で分岐して中間部材21に備えた切断用の駆動軸36から取り出した動力で作動することにより、各引起装置13A〜13Cが引き起こして各掻込搬送装置14A〜14Cが機体後方側に掻き込み搬送する最大4条の未刈り穀稈の株元側を切断するように構成してある。
【0039】
左側の挟持搬送装置16Aは、駆動スプロケット37Aと従動スプロケット38Aと板金製のチェーンガイド39とにわたって巻き掛けた突起付き搬送チェーン40Aに、左から2番目の分草用支持部材25Bから機体後方に向けて延出した挟持搬送杆41Aの後部側を対向させてあり、この対向領域において、左側の掻込搬送装置14Aが掻き込み搬送した1条分の刈取穀稈を機体後方に向けて挟持搬送するように構成してある。
【0040】
右側の挟持搬送装置16Bは、駆動スプロケット37Bと従動スプロケット38Bとガイドスプロケット42とにわたって巻き掛けた突起付き搬送チェーン40Bに、左から2番目の分草用支持部材25Bから機体後方に向けて延出した挟持搬送杆41Bの後部側を対向させてあり、この対向領域において、左右中央の掻込搬送装置14Bと右側の掻込搬送装置14Cとが掻き込み搬送した最大3条分の刈取穀稈を機体後方に向けて挟持搬送するように構成してある。
【0041】
供給搬送装置17は、刈取穀稈の株元側を挟持搬送する挟持搬送機構17Aと刈取穀稈の穂先側を係止搬送する係止搬送機構17Bとを上下に備えて、左右の挟持搬送装置16A,16Bが挟持搬送した最大4条分の刈取穀稈を受け取り、受け取った刈取穀稈を、受け取り時の起立姿勢から脱穀用の右倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置5に供給搬送するように構成してある。
【0042】
つまり、この自脱型コンバインに装備する刈取搬送装置4は、3つの引起枠18A〜18Cを備えて最大4条の未刈り穀稈を刈り取って脱穀装置5に搬送することができる3枠4条刈り仕様に構成してある。
【0043】
図1〜5に示すように、刈取搬送伝動系24において、刈り取り搬送用の動力は入力軸10の左端部から第1ベベルギア機構(図示せず)を介して供給搬送装置17の駆動軸43に伝達してある。又、入力軸10の左右中間部から第2ベベルギア機構(図示せず)を介して前後向き伝動軸44に伝達し、前後向き伝動軸44から第3ベベルギア機構45を介して左右向き伝動軸46に伝達してある。そして、左右向き伝動軸46の左右両端部から、左右の下部ベベルギア機構47A,47B、左右の下側伝動軸48A,48B、左右の中間ベベルギア機構49A,49B、左右の上側伝動軸50A,50B、及び、左右の上部ベベルギア機構(図示せず)、を介して、左右の引き起し用の駆動軸に伝達してある。又、左右向き伝動軸46の左右中間部から、後下部ベベルギア機構51、下部伝動軸52、後下部ベベルギア機構53、上下向き伝動軸54、及び、上部ベベルギア機構(図示せず)、を介して、左右中央の引き起し用の駆動軸に伝達してある。更に、左右向き伝動軸46から切断用のベベルギア機構55を介して切断用の駆動軸36に伝達してある。
【0044】
左右の下側伝動軸48A,48Bには、左右の対応する挟持搬送装置16A,16Bの駆動スプロケット37A,37Bを一体回転するように外嵌装備してある。左右の挟持搬送装置16A,16Bは、それらの従動スプロケット38A,38Bが左右の対応するベルト式掻込搬送機構31A,31Cの駆動プーリ34A,34C及びパッカ32A,32Cと一体回転するように構成してある。そして、前述したように、左右中央のベルト式掻込搬送機構31A,31Cの駆動プーリ34Aと一体回転する左右中央のパッカ32Bが右側のパッカ32Cと噛み合い連動する。
【0045】
つまり、引き起こし伝動用の左右の下側伝動軸48A,48Bから分岐した動力で、各掻込搬送装置14A〜14C及び左右の挟持搬送装置16A,16Bを駆動するように構成してある。
【0046】
図1及び図3〜7に示すように、左右の引起上部支持部材23A,23Cは、前側ケース56Aと後側ケース56Bとを備える前後2分割構造の下側支持部材56、及び、丸パイプ材などで構成した上側支持部材57、などから構成してある。各下側支持部材56には、内蔵する下側伝動軸48A,48Bと一体回転する駆動スプロケット37A,37Bへの突起付き搬送チェーン40A,40Bの巻き掛けを可能にする開口56Cを形成してある。
【0047】
図3、図4及び図6に示すように、左側の下側支持部材56には、左側の掻込搬送装置14A及び左側の挟持搬送装置16Aを支持する左側の支持フレーム58に備えた連結部材59をボルト連結してある。この連結部材59には、左側の下側支持部材56の前側ケース56A及び後側ケース56Bの各機体内側に上下向きに形成した連結フランジ56Aa,56Baに外嵌するチャンネル材を採用してあり、丸パイプ材などから構成した支持部材60の後側連結部60Aを溶接してある。
【0048】
支持部材60は、その後側連結部60Aを上下向きに形成してあり、後側連結部60Aの上端部から機体前方に向けて延出する平面視くの字状の前向き延出部60Bを備えるように屈曲形成してある。そして、その前向き延出部60Bの前端に備えた板状の前側連結部60Cを、左側の引起下部支持部材27Aに備えた板状の連結部27Aaにボルト連結してある。支持部材60における前向き延出部60Bの後半部内側には支持板61の左端部を溶接してあり、この支持板61には、支持板61から下向きに延出する後支軸62を溶接してある。
【0049】
支持板61は、その後端部61Aが下向きになるように屈曲形成してあり、その後端部61Aの下端をチェーンガイド39の上面に溶接してある。チェーンガイド39は、その左端部の横側縁を連結部材59に溶接し、又、その左端部の上面を支持部材60における後側連結部60Aの下端に溶接してある。後支軸62は、その上部と支持板61とに溶接した一対のリブ63A,63Bで補強してあり、この後支軸62に左側のベルト式掻込搬送機構31Aの駆動プーリ34Aと左側のパッカ32Aと左側の挟持搬送装置16Aの従動スプロケット38Aとを相対回転可能に支持させてある。
【0050】
支持部材60における前向き延出部60Bの前端部には、テンションプーリ支持用の支持金具60Dを前向き延出部60Bの右側に延出するように溶接してあり、この支持金具60Dに、左側のベルト式掻込搬送機構31Aのテンションプーリ35Aを、このテンションプーリ用のホルダ64Aとともに、テンションプーリ35Aの相対回転を許容するようにボルト連結してある。そして、このボルト連結用のボルト65が左側のベルト式掻込搬送機構31Aのテンションプーリ35Aを支持する上下向きの前支軸となる。
【0051】
図3、図4及び図7〜9に示すように、右側の下側支持部材56には、右側の掻込搬送装置14C及び右側の挟持搬送装置16Bを支持する右側の支持フレーム66に備えた連結部材67をボルト連結してある。この連結部材67には、右側の下側支持部材56の前側ケース56A及び後側ケース56Bの各機体内側に上下向きに形成した連結フランジ56Aa,56Baに外嵌するチャンネル材を採用してあり、丸パイプ材などから構成した支持部材68の中間連結部68Aを溶接してある。
【0052】
支持部材68は、その中間連結部68Aを上下向きに形成してあり、中間連結部68Aの上端部から機体前方に向けて延出する平面視くの字状の前向き延出部68Bと、中間連結部63Aの下端部から左上後方に向けて延出する後向き延出部68Cとを備えるように屈曲形成してある。そして、その前向き延出部68Bの前端に備えた板状の前側連結部68Dを、右側の引起下部支持部材27Cに備えた板状の連結部27Caにボルト連結してある。又、その後向き延出部68Cの後端に備えた板状の後側連結部68Eを、刈取搬送フレーム11の延出部材20に備えた板状の連結部20Aにボルト連結してある。支持部材68における前向き延出部68Bの後半部内側には支持板69の右端部を溶接してあり、この支持板69には、支持板69から下向きに延出する後支軸70を溶接してある。
【0053】
支持板69は、その後端部69Aが下向きになるように屈曲形成してあり、その後端部69Aの下端を後向き延出部68Cに溶接してある。後支軸70は、その上部と支持板69とに溶接した一対のリブ71A,71Bで補強してあり、この後支軸70に右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cと右側のパッカ32Cと右側の挟持搬送装置16Bの従動スプロケット38Bとを相対回転可能に支持させてある。
【0054】
支持部材68の前側連結部68Dには、右側のベルト式掻込搬送機構31Cのテンションプーリ35Cを、このテンションプーリ用のホルダ64Cとともに、テンションプーリ35Cの相対回転を許容するようにボルト連結してある。そして、このボルト連結用のボルト72が右側のベルト式掻込搬送機構31Aのテンションプーリ35Aを支持する上下向きの前支軸となる。又、支持部材68の後側連結部68Eには、後側連結部68Eから下向きに延出する支軸73を装備してあり、この支軸73にガイドスプロケット42を相対回転可能に支持させてある。
【0055】
図3に示すように、左右中央の引起上部支持部材23Bには、左右中央の掻込搬送装置14Bなどを支持する左右中央の支持フレーム74の後端部とのボルト連結を可能にする板状の連結部23Baを備えてある。支持フレーム74は、角パイプ材などから構成した後側部材74Aの前端部に板金製の前側部材74Bの後端部を溶接して平面視くの字状に形成してある。そして、前側部材74Bの前端部を、左右中央の引起下部支持部材27Bに備えた板状の連結部(図示せず)にボルト連結してある。又、後側部材74Aと前側部材74Bとの重合部に、この重合部から下向きに延出する後支軸75を溶接してあり、この後支軸75に左右中央のベルト式掻込搬送機構31Bの駆動プーリ34Bと左右中央のパッカ32Bとを相対回転可能に支持させてある。支持フレーム74における前側部材74Bの前端部には、左右中央のベルト式掻込搬送機構31Bのテンションプーリ35Bを、このテンションプーリ用のホルダ64Bとともに、テンションプーリ35Bの相対回転を許容するようにボルト連結してある。そして、このボルト連結用のボルト76が左右中央のベルト式掻込搬送機構31Aのテンションプーリ35Aを支持する上下向きの前支軸となる。
【0056】
図3及び図7〜9に示すように、各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cの直上方には、各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cによる未刈り穀稈及び刈取穀稈の掻き込み搬送を許容しながら各ベルト式掻込搬送機構31A〜31Cへの未刈り穀稈及び刈取穀稈の巻き付きを防止するカバー77A〜77Cを配備してある。各カバー77A〜77Cは板金製で、対応する支持フレーム58,66,74に溶接してある。左右のカバー77A,77Cには、対応する後支軸62,70及びリブ63A,63B,71A,71Bの挿通を許容する平面視くの字状の開口77Aa,77Caを形成してあり、左右中央のカバー68Bには、後支軸75の挿通を許容する円形の開口77Baを形成してある。
【0057】
図3に示すように、右側の挟持搬送装置16Bには、ガイドスプロケット42から駆動スプロケット37Bに向けて移動する突起付き搬送チェーン40Bを上方から覆うチェーンカバー78を、右側の引起上部支持部材23Aと右側の支持フレーム66の後側連結部68Eとにわたるように備えてある。チェーンカバー78は板金製で、その左端部を右側の支持フレーム66の後側連結部68Eとともに刈取搬送フレーム11における延出部材20の連結部20Aにボルト連結してある。
【0058】
図3及び図4に示すように、左側の支持フレーム58の支持金具60Dと左側のカバー77Aの前端部には、後支軸62に対する左側のテンションプーリ35A及びホルダ64Aの遠近方向での位置調節を可能にする長孔60Da,77Abを形成してあり、この位置調節により、左側のベルト式掻込搬送機構31Aにおける掻込搬送ベルト33Aのテンションを調節することができる。
【0059】
左右中央の支持フレーム74の前側部材74Bの前端部と左右中央のカバー77Bの前端部には、後支軸75に対する左右中央のテンションプーリ35B及びホルダ64Bの遠近方向での位置調節を可能にする長孔74Ba,77Bbを形成してあり、この位置調節により、左右中央のベルト式掻込搬送機構31Bにおける掻込搬送ベルト33Bのテンションを調節することができる。
【0060】
図3、図4及び図8に示すように、右側の支持フレーム66において、支持部材68の前向き延出部68Bは、その前部側が右側の引起下部支持部材27Cに備えた連結部27Caに向けて右前方向きに延出するように形成してあり、その前向き延出部68Bの前端に備える前側連結部68Dは、前向き延出部68Bから更に右横側に張り出す張り出し領域を備えた平面視三角形状に形成してある。又、前側連結部68Dは、その張り出し領域を備える後部側の高さ位置が右側の引起下部支持部材27Cの連結部27Caに連結する前端部よりも低くなるように屈曲形成してある。
【0061】
そして、前側連結部68Dの後部側には、後支軸70に対する右側のテンションプーリ35C及びホルダ64Cの遠近方向での位置調節を可能にし、かつ、右側の穀稈導入経路に対する後支軸70を支点にした右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢変更を可能にする2つの取付孔としての長孔68Da,68Dbを形成してあり、各長孔68Da,68Dbでのテンションプーリ35C及びホルダ64Cの位置調節により、右側のベルト式掻込搬送機構31Cにおける掻込搬送ベルト33Cのテンションを調節することができ、又、2つの長孔68Da,68Dbに対するテンションプーリ35C及びホルダ64Cの付け替えにより、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢を、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの前端が右側の引起装置13Cから離れて、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの搬送領域が右端から2番目の分草杆部Acと右端の分草杆部材Adとにほぼわたる(右側の穀稈導入経路の左右幅全域にほぼわたる)ようになる右側の穀稈導入経路に対する開き角度の大きい第1搬送姿勢と、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの前端が第1搬送姿勢よりも右側の引起装置13Cに近づいて、右側の引起装置13Cが引き起こす未刈り穀稈に対して右側のベルト式掻込搬送機構31Cがより速く掻き込み搬送作用するようになる右側の穀稈導入経路に対する開き角度の小さい第2搬送姿勢とに変更することができる。
【0062】
第1搬送姿勢用の長孔68Daは、前側連結部68Dにおける後部側の張り出し領域に、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cなどを支持する後支軸70に向かう姿勢で形成してある。第2搬送姿勢用の長孔68Dbは、前側連結部68Dの後部側における支持部材68の前方箇所に、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cなどを支持する後支軸70に向かう姿勢で形成してある。
【0063】
この構成により、稈長の長い長稈を収穫する場合には、右側のベルト式掻込搬送機構31Cのテンションプーリ35C及びホルダ64Cを、機体右外側の長孔68Daを使用して右側の支持フレーム66の前側連結部68Dにボルト連結することで、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢を第1搬送姿勢とすることができ、これにより、右側の穀稈導入経路に導入されて右側の引起装置13Cで引き起こされる未刈り穀稈の株元側を、1条導入状態と2条導入状態とにかかわらず右側のベルト式掻込搬送機構31Cによって機体の左右中央側の後方に向けて適切に掻き込み搬送することができる。
【0064】
又、稈長の短い短稈を収穫する場合には、右側のベルト式掻込搬送機構31Cのテンションプーリ35C及びホルダ64Cを、機体の左右内側の長孔68Dbを使用して右側の支持フレーム66の前側連結部68Dにボルト連結することで、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢を第2搬送姿勢とすることができ、これにより、右側の穀稈導入経路に導入されて右側の引起装置13Cで引き起こされる未刈り穀稈が、その稈長が短いことにより、右側の引起装置13Cの引起爪13Caによる引き起こしの途中で右側の引起装置13Cの引起爪13Caから外れたとしても、その引起爪13Caから外れた未刈り穀稈を右側のベルト式掻込搬送機構31Cが右側の引起装置13Cの近くに位置する前端側で受け止めて機体の左右中央側の後方に向けて掻き込み搬送するようになり、これにより、稈長の短い未刈り穀稈(特に右側の穀稈導入経路に対する2条導入状態での右側の未刈り穀稈)が右側の引起装置13Cの引起爪13Caから外れて倒伏することに起因した刈り残しなどの発生を防止することができる。
【0065】
そして、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢変更を可能にする2つの長孔68Da,68Dbは、上述した右側の支持部材68における前向き延出部68Bの形状、前側連結部68Dの形状、及び、前側連結部68Dにおける各長孔68Da,68Dbの形成箇所から、刈取搬送装置4の右端近くに位置するようになっており、これにより、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの姿勢変更を刈取搬送装置4の右外側箇所から容易に行うことができる。
【0066】
図2〜4に示すように、右側のベルト式掻込搬送機構31Cは、前述したように2条の未刈り穀稈の掻き込み搬送が可能となるように他の穀稈導入経路に配備する1条用のベルト式掻込搬送機構31A,31Bよりも搬送領域が長くなるように構成してある。そのため、左右のベルト式掻込搬送機構31Cの掻き込み搬送速度が同じになるように構成すると、4条収穫作業時に右側のベルト式掻込搬送機構31Cでの搬送能力が不足して右側のベルト式掻込搬送機構31Cにおいて未刈り穀稈が滞留して詰まるなどの不都合を招く虞がある。
【0067】
そこで、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cには、左側のベルト式掻込搬送機構31Aに採用する駆動プーリ34Aよりも大径のものを採用してあり、これにより、左右の駆動プーリ34A,34Cの回転数を同じにしながらも、右側の駆動プーリ34Aの周速度が左側の駆動プーリ34Cの周速度よりも速くなるとともに、右側の掻込搬送ベルト33Cの回動速度が左側の掻込搬送ベルト33Aの回動速度よりも速くなって、右側のベルト式掻込搬送機構31Cによる掻き込み搬送速度が左側のベルト式掻込搬送機構31Aによる掻き込み搬送速度よりも速くなるように構成してある。
【0068】
その結果、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cに左側のベルト式掻込搬送機構31Aの駆動プーリ34Aよりも大径のものを採用するだけの簡単な構成でありながら、4条収穫作業時に右側のベルト式掻込搬送機構31Cにおいて未刈り穀稈が滞留して詰まるなどの不都合が生じる虞を防止することができる。
【0069】
尚、左右中央のベルト式掻込搬送機構31Bは、その駆動プーリ34Bと一体回転する左右中央のパッカ32Bと、右側のベルト式掻込搬送機構31Cの駆動プーリ34Cと一体回転する右側のパッカ32Cとの噛み合い連動によって、左右中央のベルト式掻込搬送機構31Bによる掻き込み搬送速度が左側のベルト式掻込搬送機構31Aによる掻き込み搬送速度と同じ又は略同じになるように、その駆動プーリ34Bに他のベルト式掻込搬送機構31A,31Cの駆動プーリ34A,34Cよりも小径のものを採用してある。
【0070】
〔別実施形態〕
【0071】
〔1〕2条の未刈り穀稈の引き起こしが可能となるように構成した2条用の引起枠と、この2条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送するように構成した2条用の掻込搬送機構とを備えた歩行型刈取収穫機(バインダ)あるいは歩行型の自脱型コンバインなどであってもよい。
【0072】
〔2〕刈取搬送装置4としては、刈取搬送装置4に備える複数の引起枠18A〜18Cのうちの少なくともいずれか1つが2条の未刈り穀稈の導入が可能となるように構成したものであれば種々の変更が可能であり、例えば、2条の未刈り穀稈の導入が可能な1つの引起枠18Aと1条用の1つの引起枠18Bとを備えた2枠3条刈り仕様、2条の未刈り穀稈の導入が可能な2つの引起枠18A,18Bを備えた2枠4条刈り仕様、又は、左側の引起枠18Aへの2条の未刈り穀稈の導入が可能で、左右中央と右側の引起枠18B,18Cへは1条の未刈り穀稈の導入のみが可能となるように構成した3枠4条刈り仕様のものなどであってもよい。
【0073】
〔3〕掻込搬送機構31A〜31Cとしては、無端回動帯33A〜33Cにその一例である掻き込み搬送用の突出部33Aa〜33Caを備えた掻込搬送チェーンを採用して構成したチェーン式のものであってもよい。又、その搬送終端部に備えた回転体34Cをテンション用とし、その搬送始端部に備えた回転体35Cを駆動用とするように構成したものであってもよい。
【0074】
〔4〕2条用の掻込搬送機構31Cとしては、第1搬送姿勢において、2条用のベルト式掻込搬送機構31Cの前端が引起装置13Cから離れて、2条用のベルト式掻込搬送機構31Cの搬送領域が2条用のベルト式掻込搬送機構31Cに隣接する分草杆部材Ac,Adにわたる(隣接する分草杆部Ac,Adの間に形成される穀稈導入経路の左右幅全域にわたる)ように構成したものであってもよい。
【0075】
〔5〕2条用の掻込搬送機構31Cの姿勢変更を可能にする構成としては種々の変更が可能であり、例えば、2条用の掻込搬送機構31Cに、搬送終端部の回転体34Cと搬送始端部の回転体35Cを支持する支持部材を備え、この支持部材に、2条用の掻込搬送機構31Cの姿勢変更を可能にする上下向きの揺動支点軸と、支持フレーム66に対して2条用の掻込搬送機構31Cを第1搬送姿勢又は第2搬送姿勢で連結固定する上下向きの連結軸とを備えるように構成してもよい。
【0076】
〔6〕支持フレーム66に形成する取付孔68Da,68Dbの形状や数量は種々の変更が可能であり、例えば、上記の実施形態で例示した2つの長孔68Da,68Dbの後支軸70側の端部を繋いだコの字状の単一の取付孔を支持フレーム66に形成するようにしてもよい。又、姿勢変更用の2つの取付孔68Da,68Dbを円形に形成してもよく、更に、姿勢変更用とテンション用とを兼ねる複数の円形の取付孔を支持フレーム66に形成するようにしてもよい。又更に、2条用の掻込搬送機構31Cに搬送終端部の回転体34Cと搬送始端部の回転体35C以外にテンション用の回転体を備えた上で、2つの取付孔68Da,68Dbを円形に形成してもよく、又、2条用の掻込搬送機構31Cの揺動支点となる後支軸70を中心とする円弧状の単一の取付孔を支持フレーム66に形成するようにしてもよい。
【0077】
〔7〕搭乗運転部2からの2条用の掻込搬送機構31Cの姿勢変更が可能となるように、搭乗運転部2に備えた操作レバーと2条用の掻込搬送機構31Cとを連係ワイヤや連係リンクなどで機械的に連係するように構成してもよく、搭乗運転部2に備えたスイッチなどと2条用の掻込搬送機構31Cを姿勢変更する電動アクチュエータとを電気的に連係するように構成してもよい。
【0078】
〔8〕2条用の掻込搬送機構31Cの掻き込み搬送速度を1条用の掻込搬送機構31A,31Bの掻き込み搬送速度よりも速くする構成としては種々の変更が可能であり、例えば、刈取搬送伝動系24に、2条用の掻込搬送機構31Cの掻き込み搬送速度を1条用の掻込搬送機構31A,31Bの掻き込み搬送速度よりも速くするためのギア式の増速機構を備えるようにしてもよい。
【0079】
〔9〕2条用の引起枠に左右一対の引起装置をそれらの引き起こし領域が対向するように配備してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る刈取収穫機の刈取搬送構造は、少なくとも、2条の未刈り穀稈の引き起こしが可能となるように構成した2条用の引起枠と、この2条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送するように構成した2条用の掻込搬送機構とを備えるものであれば、1枠2条刈り仕様や2枠3条刈り仕様の歩行型刈取収穫機(バインダ)、あるいは、2枠3条刈り仕様や2枠4条刈り仕様の自脱型コンバイン、などの刈取収穫機に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
13A 引起装置
13C 引起装置
13B 引起装置
18A 引起枠(1条用)
18B 引起枠(1条用)
18C 引起枠(2条用)
31A 掻込搬送機構(1条用)
31B 掻込搬送機構(1条用)
31C 掻込搬送機構(2条用)
33A 無端回動帯
33B 無端回動帯
33C 無端回動帯
34A 駆動用の回転体
34B 駆動用の回転体
34C 駆動用の回転体(搬送終端部の回転体)
35C 搬送始端部の回転体
66 支持フレーム
68Da 取付孔
68Db 取付孔
70 後支軸
72 前支軸
Aa 分草杆部
Ab 分草杆部
Ac 分草杆部
Ad 分草杆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2つの分草杆部を、それらの間に2条の未刈り穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置し、前記2つの分草杆部の間に、前記2つの分草杆部の間に導入した未刈り穀稈を引き起こす引起装置を配備して、2条の未刈り穀稈の引き起こしが可能となるように構成した2条用の引起枠と、前記2条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈の株元側を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送するように構成した2条用の掻込搬送機構とを備えた刈取収穫機の刈取搬送構造において、
前記2条用の掻込搬送機構を、前記2条用の掻込搬送機構の前端が前記引起装置から離れて前記2条用の掻込搬送機構の搬送領域が前記隣り合う2つの分草杆部にわたる又はほぼわたる第1搬送姿勢と、前記2条用の掻込搬送機構の前端が前記第1搬送姿勢よりも前記引起装置に近づいて前記引起装置が引き起こす未刈り穀稈に対して前記2条用の掻込搬送機構がより速く掻き込み搬送作用する第2搬送姿勢とに姿勢変更可能に構成してある刈取収穫機の刈取搬送構造。
【請求項2】
前記2条用の掻込搬送機構を、その搬送終端部に備えた回転体を支持する上下向きの後支軸を支点にして前記第1搬送姿勢と前記第2搬送姿勢とに姿勢変更するように構成してある請求項1に記載の刈取収穫機の刈取搬送構造。
【請求項3】
前記2条用の掻込搬送機構を支持する支持フレームに、前記支持フレームに対する前記2条用の掻込搬送機構の搬送始端部に備えた回転体を支持する上下向きの前支軸の取り付け位置の変更で前記2条用の掻込搬送機構の前記第1搬送姿勢と前記第2搬送姿勢との姿勢変更を可能にする2つの取付孔を形成してある請求項1又は2に記載の刈取収穫機の刈取搬送構造。
【請求項4】
隣り合う2つの分草杆部を、それらの間に1条の未刈り穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置し、前記2つの分草杆部の間に、前記2つの分草杆部の間に導入した未刈り穀稈を引き起こす引起装置を配備して、1条の未刈り穀稈を引き起こすように構成した1条用の引起枠と、前記1条用の引起枠で引き起こした未刈り穀稈を無端回動帯で機体の後方側に掻き込み搬送する1条用の掻込搬送機構とを備え、
前記2条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度が前記1条用の掻込搬送機構の掻き込み搬送速度よりも速くなるように構成してある請求項1〜3のいずれか一つに記載の刈取収穫機の刈取搬送構造。
【請求項5】
前記2条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体として、前記1条用の掻込搬送機構に備える駆動用の回転体よりも大径のものを採用してある請求項4に記載の刈取収穫機の刈取搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−90578(P2012−90578A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241121(P2010−241121)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】