説明

刈払機およびこれに用いられる切断ユニット

【課題】刈刃の交換をすることなく、フェンスや壁面等の草を取り除く作業を容易且つ効率よく行うことができる刈払機を提供することである。
【解決手段】出力軸14に取り付けられた刃受け金具17との間に刈刃15を挟み込んで固定する刃押え金具18を基盤32として構成し、この基盤32の刈刃15とは反対側を向く固定面32aに3本のワイヤ33a,33b,33cを固定する。各ワイヤ33a,33b,33cの両端を出力軸14を中心として点対称の位置に固定するとともに、各ワイヤ33a,33b,33cを互いに周方向に等間隔にずらして並べて配置する。各ワイヤ33a,33b,33cの中間部を固定面32aから突出する湾曲形状に形成し、出力軸14とともに回転するワイヤ33a,33b,33cによりフェンスに巻き付いたツル等の被切断部材を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作棹の先端に設けた刈刃を駆動源により回転駆動して雑草や下草等の被切断物を刈り払う携帯式の刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
田畑の畦道や山林等に生えた雑草や下草などを刈り払うために、携帯式の刈払機が使用されている。刈払機は中空棒状に形成された操作棹を備えており、操作棹の先端にはギヤケースが取り付けられ、このギヤケースから突出する出力軸に刈刃が取り付けられている。操作棹の後端には駆動源が取り付けられ、刈刃はこの駆動源により回転駆動される。駆動源としてはエンジンや電動モータ等が用いられ、駆動源の回転は操作棹の内部に収容された伝達軸とギヤケース内に収容されたベベルギヤ対とを介して出力軸に伝達される。このような刈払機としては、駆動源を背負い架台に搭載するようにした背負い式、操作棹に取り付けられたループ状のベルトを肩に掛けるようにした肩掛け式とがあり、何れの場合も操作棹に取り付けられたハンドルを手に持って作業が行われる。
【0003】
刈払機に用いられる刈刃としては、チップソー等の丸鋸タイプや径方向外方に突出する2〜4枚程度の角刃を備えた異形タイプなどの金属製のものと、ナイロンコードを用いたナイロンカッターとがあり、使用場所や環境に応じて各種の刈刃が使い分けられている。
【0004】
チップソーや異形3枚刃等の金属製の刈刃は、硬い草を効率よく刈り払うことができるので広く用いられている。しかしながら、壁際や道路上の草を刈り払う作業やフェンスに巻き付いているツルを取り除く作業は、刃の破損のおそれがあるため、金属製の刈刃で行うことは困難である。
【0005】
そのため、壁際や道路、フェンス等など、金属製の刈刃は刃の破損のおそれがある場所では、ナイロンカッターが刈刃として用いられる。この場合、例えば特許文献1に示されるように、出力軸にはナイロンコードを収容したリールケースが取り付けられ、リールケースから引き出されたナイロンコードによりナイロンカッターが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−41282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ナイロンカッターは細いナイロンコードを回転させて草などの被切断物を切断する構成であるので、フェンスに巻き付いたツルや壁面に取り付いた草をナイロンカッターにより取り除こうとしても、ナイロンカッターはそのツルや草の一部しか切断することができない。そのため、ナイロンカッターを用いてフェンスや壁面からツルや草を取り除くためには、何度も位置を変えてツルや草を切断し、場合によっては手でツルや草を剥がす作業が必要となる。また、ナイロンカッターはナイロンコードがフェンス等に当たると切れてしまうため、その都度、ナイロンコードをリースケースから引き出す必要があり、その作業効率はよくなかった。
【0008】
また、ナイロンカッターは小石などを飛散させるおそれが高いので、住宅街での刈り払い作業には主にチップソーが用いられることになる。そのため、フェンスや壁面のツルや草を取り除く際には、刈刃をチップソーからナイロンカッターに交換する必要があり、その作業は煩雑であった。
【0009】
本発明の目的は、刈刃の交換をすることなく、フェンスや壁面等の草を取り除く作業を容易且つ効率よく行うことができる刈払機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の刈払機は、操作棹の先端に取り付けられたケースから突出するとともに先端側に刈刃が取り付け可能な出力軸と、前記操作棹に取り付けられ前記出力軸を回転駆動する駆動源とを備えた携帯式の刈払機であって、前記出力軸の先端側に取り付けられ、前記出力軸の軸方向に突出するとともに、周方向に互いに離間して配設される複数の突出部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の刈払機は、前記突出部は、屈曲して設けられることを特徴とする。本発明の刈払機は、前記出力軸の先端側に取り付けられ、前記出力軸とともに回転する基盤をさらに備え、前記突出部は、前記基盤の前記刈刃とは反対側を向く固定面に周方向に並べて設けられ、それぞれ両端が前記基盤に固定されるとともに中間部が前記固定面から突出する複数の線材であり、回転する複数の前記線材により被切断物を切断可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明の刈払機は、前記出力軸の前記刈刃よりも前記ケース側に取り付けられる刃受け金具と、前記出力軸の前記刈刃よりも先端側に取り付けられ前記刃受け金具との間に前記刈刃を挟み込んで固定する刃押え金具とを備え、前記基盤が前記刃押え金具により構成されていることを特徴とする。本発明の刈払機は、前記出力軸の前記刈刃よりも前記ケース側に取り付けられる刃受け金具と、前記出力軸の前記刈刃よりも先端側に取り付けられ前記刃受け金具との間に前記刈刃を挟み込んで固定する刃押え金具とを備え、前記基盤が前記刃押え金具に対して前記刈刃とは反対側に重ねて配置されていることを特徴とする。本発明の刈払機は、前記線材は、それぞれ両端が前記出力軸の軸心を中心とした点対称の位置において前記固定面に固定されるとともに中間部が湾曲形状に形成され、互いに周方向に等間隔にずれて配置されていることを特徴とする。本発明の刈払機は、前記線材はワイヤであることを特徴とする。
【0013】
本発明の切断ユニットは、刈払機の操作桿の先端に取り付けられたケースから突出する出力軸に取り付け可能であり、前記出力軸の軸方向に突出するとともに、周方向に互いに離間して配設される複数の突出部を有することを特徴とする。本発明の切断ユニットは、刈払機の操作棹の先端に取り付けられたケースから突出する出力軸に取り付けられる基盤と、前記基盤の前記ケースとは反対側を向く固定面に周方向に並べて設けられ、それぞれ両端が前記基盤に固定されて中間部が前記固定面から突出する複数の線材とを有し、回転する複数の前記線材により被切断物を切断可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出力軸の刈刃よりも先端側に基盤を取り付けるとともに、基盤の刈刃とは反対側を向く固定面に、それぞれ両端が基盤に固定され中間部が固定面から突出する複数の線材を周方向に並べて設け、出力軸とともに回転するこれらの線材により被切断物を切断することができるようにしたので、広い場所においては刈刃により刈り払い作業を行うとともに、フェンスや壁面の草等を取り除く際には、刈刃の交換をすることなく、線材によりフェンスや壁面の草等を容易且つ効率よく切断し、取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態である刈払機の斜視図である。
【図2】刈払機の先端側部分の要部の一部切り欠き断面図である。
【図3】出力軸に取り付けられた切断ユニットの側面図である。
【図4】図3に示す切断ユニットの底面図である。
【図5】フェンスに巻き付いたツルを切断ユニットにより切断する際の刈払機の使用状態を示す説明図である。
【図6】フェンスに巻き付いたツルを切断ユニットにより切断している状態を示す説明図である。
【図7】出力軸に刈刃を取り付けずに切断ユニットのみを取り付けた状態を示す説明図である。
【図8】図7の一部切り欠き断面図である。
【図9】図4に示す切断ユニットの変形例であって、切断ユニットの基盤を刃押え金具とは別体に形成した場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す刈払機11は携帯式の刈払機であり、例えば、田畑の畦道や山林等に生えた雑草や下草などを刈り払う際に使用される。
【0018】
この刈払機11は操作棹12を有しており、この操作棹12は中空棒状の部材により形成されている。操作棹12の先端にはギヤケース13が取り付けられ、図2に示すように、このギヤケース13から突出する出力軸(駆動軸)14にカッターとも呼ばれる刈刃15が取り付けられている。
【0019】
出力軸14の基端部には略円板状に形成されたベース16が軸心において固定されている。ベース16のギヤケース13とは反対側を向く面は支持面16aとなっており、この支持面16aにはギヤケース13とは反対側(出力軸14の先端側)に向けて突出する環状の凸部16bが一体に設けられている。
【0020】
出力軸14にはベース16に重ねて刃受け金具17が取り付けられている。刃受け金具17は鋼板等により円板状に形成されており、その軸心に設けられた貫通孔17aがベース16の凸部16bに嵌め合わされることにより、ベース16の支持面16aに出力軸14と同軸に配置されている。刃受け金具17のギヤケース13とは反対側を向く面は受け面17bとなっており、この受け面17bの外周縁にはフランジ部17cが一体に設けられ、このフランジ部17cがギヤケース13の外周縁を覆っている。
【0021】
刈刃15は鋼板等の金属板により外周部に多数の鋸刃15aを備えた円板状に形成ており、つまり刈刃15は丸鋸タイプとなっている。刈刃15は刃受け金具17にギヤケース13とは反対側に重ねて出力軸14に取り付けられ、その軸心に設けられた取付孔15bがベース16の凸部16bに嵌め合わされることにより出力軸14と同軸に配置されている。
【0022】
出力軸14には、さらに刈刃15よりも出力軸14の先端側に位置して刃押え金具18が取り付けられている。刃押え金具18は、鋼材等により円板状に形成されており、その軸心に設けられた貫通孔18aにおいて出力軸14に取り付けられている。刃押え金具18のギヤケース13の側を向く軸方向端面は押え面18bとなっており、この押え面18bの軸心にはギヤケース13とは反対側に向けて凹む環状の凹部18cが設けられている。凹部18cの軸方向の深さ寸法はベース16の凸部16bの軸方向への高さ寸法よりも大きくなっており、ベース16の凸部16bは刃押え金具18の凹部18cに係合している。刃押え金具18が出力軸14に取り付けられると、刈刃15は刃受け金具17の受け面17bと刃押え金具18の押え面18bとの間に挟み込まれる。
【0023】
出力軸14の先端部には雄ねじ14aが一体に設けられており、この雄ねじ14aにはナット19がねじ結合されている。そして、このナット19が雄ねじ14aにねじ込まれることにより、刃受け金具17と刃押え金具18との間に挟み込まれて刈刃15が出力軸14に固定されるようになっている。
【0024】
ベース16の凸部16bは、二方幅やキー溝、コッター等の周り止め部を備えた形状に形成されており、刃受け金具17と刃押え金具18の貫通孔17a,18aや刈刃15の取付孔15bは、凸部16bの周り止め部に係合可能な形状に形成されている。これにより、刃受け金具17、刃押え金具18および刈刃15はベース16つまり出力軸14に対して周り止めされ、出力軸14とともに回転することができる。
【0025】
図1に示すように、操作棹12の後端には駆動源としてのエンジン21が取り付けられている。このエンジン21は2サイクルのガソリンエンジンであり、その出力は操作棹12の内部に回転自在に収容された図示しない伝達軸を介してギヤケース13に伝達される。ギヤケース13には図示しないベベルギヤ対(傘歯車対)が収容され、伝達軸の回転はベベルギヤ対を介して出力軸14に伝達される。これにより、エンジン21が作動すると、伝達軸とベベルギヤ対とを介してエンジン21の出力が出力軸14に伝達され、エンジン21により出力軸14とともに刈刃15が回転駆動される。このように、この刈払機11は操作棹12により刈刃15とエンジン21とが連結されたアーム連結タイプとなっている。
【0026】
図示はしないが、操作棹12には肩掛バンドが装着され、この肩掛バンドにより刈払機11は肩掛け式として使用される。また、操作棹12のエンジン21側に軸上に沿ってハンドル部が設けられ、長手方向中央部分にはループハンドル22が取り付けられ、作業者は肩掛バンドを肩に掛けるとともにハンドル部とループハンドル22を両手で把持することにより、刈払機11を携帯して、草の刈り払い作業を行うことができる。さらに、操作棹12には刈刃15の外周側に位置してガード板23が取り付けられ、このガード板23により刈刃15が刈り払った草が作業者の側に飛ぶことが防止される。
【0027】
この刈払機11は、金属製の刈刃15では刈り払い作業を行うことが困難であるフェンスのツルや壁面の草を取り除く作業を行うために、切断ユニット31を備えている。この切断ユニット31は、基盤32と、この基盤に固定される3本の線材としてのワイヤ33a,33b,33cとで構成されている。本実施の形態においては、切断ユニット31の基盤32は刃押え金具18により構成されている。つまり、本実施の形態においては、切断ユニット31の基盤32は刃押え金具18と一体とされている。
【0028】
刃押え金具18により構成された基盤32の刈刃15とは反対側を向く面は、出力軸14の軸方向に垂直且つ円形の固定面32aとなっており、この固定面32aに3本のワイヤ33a,33b,33cが固定されている。これらのワイヤ33a,33b,33cとしては、例えばピアノ線を用いることができる。
【0029】
ワイヤ33aの長手方向の一端は、出力軸14から所定距離だけ径方向外側に離れた位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。また、ワイヤ33aの長手方向の他端は、その一端が固定面32aに固定される位置に対して出力軸14の軸心を中心として点対称の位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。
【0030】
ワイヤ33bは、その長手方向の一端が、ワイヤ33aの長手方向の一端が固定される位置に対して出力軸14を中心とした周方向に60度ずれた位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。また、ワイヤ33bの長手方向の他端は、その一端が固定面32aに固定される位置に対して出力軸14の軸心を中心として点対称の位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。
【0031】
ワイヤ33cは、その長手方向の一端が、ワイヤ33aの長手方向の一端が固定される位置に対して出力軸14を中心としてワイヤ33bとは反対側に向けて周方向に60度ずれた位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。また、ワイヤ33cの長手方向の他端は、その一端が固定面32aに固定される位置に対して出力軸14の軸心を中心として点対称の位置において、埋め込みや溶接等の手段により固定面32aに固定されている。
【0032】
このように、3本のワイヤ33a,33b,33cの固定面32aへの固定位置は互いに周方向に60度ずれている。つまり、図3に示すように、3本のワイヤ33a,33b,33cは、それぞれ両端において固定面32aに固定され、軸方向からの平面視において固定面32aの径方向に沿うとともに、互いに出力軸14を中心として周方向に等間隔にずれて並べて配置されている。
【0033】
これらのワイヤ33a,33b,33cの固定面32aに固定された両端の間の中間部は、それぞれ放射線状に湾曲しており、固定面32aから刈刃15とは反対側に向けて出力軸14の先端よりも軸方向外側に達する位置にまで突出している。各ワイヤ33a,33b,33cの長さ寸法は同一となっており、これにより、各ワイヤ33a,33b,33cの中間部は出力軸14の軸方向の延長線上において互いに接した状態で交差している。
【0034】
エンジン21により出力軸14が回転駆動されると、各ワイヤ33a,33b,33cは出力軸とともに回転する。また、各ワイヤ33a,33b,33cの中間部は弾性変形自在である。
【0035】
この刈払機11は、出力軸14に取り付けられた刈刃15を用いて刈り払い作業を行うことができるとともに、金属製の刈刃15では刈り払い作業を行うことが困難であるフェンスのツルや壁面の草を取り除く作業を行う際には、切断ユニット31により当該作業を行うことができる。
【0036】
図5に示すように、例えばフェンス41に巻き付いたツル(被切断物)42を切断してフェンス41からツル42取り除く作業を行う際には、刈刃15ではなく切断ユニット31を用いて作業が行われる。このとき、刈払機11は、フェンス41に対して刈刃15が平行となるよう、つまり刈刃15の軸方向がフェンス41に垂直となるように配置される。そして、エンジン21が作動して出力軸14とともに切断ユニット31が回転した状態で、ワイヤ33a,33b,33cが軸方向からフェンス41に押し当てられる。
【0037】
回転する切断ユニット31のワイヤ33a,33b,33cが出力軸14の軸方向に沿う方向からフェンス41に押し付けられると、図6に示すように、ワイヤ33a,33b,33cは、その中間部がフェンス41に沿った直線状に弾性変形する。フェンス41に当接して直線状となったワイヤ33a,33b,33cの中間部とワイヤ33a,33b,33cの固定面32aとの固定部分との間の部分(図6において円Aで囲んで示す部分)はツル42に対して垂直となるので、ワイヤ33a,33b,33cのこの部分でツル42を切断することができる。このとき、回転する3本のワイヤ33a,33b,33cがそれぞれ中間部の2箇所において連続してツル42を切断することになるので、ツル42を効率よく切断することができる。
【0038】
また、フェンス41に押し付けられたワイヤ33a,33b,33cの中間部はフェンス41に沿って直線状となっているので、ワイヤ33a,33b,33cにより切断されたツル42をワイヤ33a,33b,33cの直線状となった部分(図6中に範囲Bで示す部分)により、フェンス41から引き剥がすことができる。このとき、回転する3本のワイヤ33a,33b,33cが連続してツル42を引き剥がすことになるので、ツル42を効率よくフェンス41から引き剥がすことができる。
【0039】
このように、この刈払機11では、刃押え金具18として構成された基盤32の刈刃15とは反対側を向く固定面32aに、中間部が固定面32aから突出する3本のワイヤ33a,33b,33cを周方向に並べて設けるようにしたので、これらのワイヤ33a,33b,33cにより、フェンス41に巻き付いたツル42や壁面を這う草等を容易に切断することができる。したがって、広い場所においては出力軸14に取り付けた刈刃15により刈り払い作業を行い、フェンス41に巻き付くツル42や壁面を這う草等を取り除く際には、刈刃15を交換することなく、3本のワイヤ33a,33b,33cを備えた切断ユニット31により、フェンスや壁面の草等を取り除く作業を行うことができる。これにより、この刈払機11によりフェンスや壁面の草等を取り除く作業を容易にするともに、その作業効率を高めることができる。また、刈刃15を用いることなくワイヤ33a,33b,33cによりフェンスや壁面の草等を取り除く作業を行うことができるので、刈刃15を用いて当該作業を行う場合に比べて、その作業の安全性を高めることができる。
【0040】
また、3本のワイヤ33a,33b,33cはそれぞれ屈曲した形状をしているため、草を絡めとりながら取り除く作業を容易に行うことができる。さらに、それぞれのワイヤ33a,33b,33cは両端が固定面32aに固定される構造としたため、ワイヤ33a,33b,33cの強度が向上し、太い草や蔓の切断作業をより効率的に行うことができる。
【0041】
なお、この切断ユニット31は、フェンス41や壁面だけでなく、道路や床面などに生えた草等に対しても、道路や床面に刈刃15を当てることなく、ワイヤ33a,33b,33cにより刈り払い作業を行うことができる。
【0042】
図2〜図4に示すように、基盤32の固定面32aには、フェンス等に押し付けられてワイヤ33a,33b,33cが弾性変形しても、ナット19や出力軸14の先端部がフェンスや壁面等に当接して摩耗することを防止するために、ガード壁43が設けられている。ガード壁43は出力軸14と同軸の円筒状となっており、基盤32つまり刃押え金具18と一体に形成され、固定面32aから刈刃15とは反対側に向けて突出している。ガード壁43の軸方向への突出高さは、固定面32aからのナット19の高さや固定面32aからの出力軸14の突出高さよりも大きくされている。これにより、フェンス等に押し付けられてワイヤ33a,33b,33cが変形しても、ナット19や出力軸14の先端がフェンス等に接して摩耗することが防止される。
【0043】
図7に示すように、この刈払機11は、出力軸14に刈刃15を取り付けることなく、切断ユニット31のみを出力軸14に取り付けて、刈り払い作業を行うこともできる。図8に示すように、刃押え金具18の凹部18cの軸方向の深さ寸法はベース16の凸部16bの軸方向への高さ寸法よりも大きくなっているので、刈刃15が刃受け金具17と刃押え金具18との間に挟み込まれなくても、ベース16の凸部16bが刃押え金具18の凹部18cに入り込んで、刃押え金具18を刃受け金具17の側に移動させて、押え面18bを受け面17bに当接させて切断ユニット31を出力軸14に確実に固定することができる。
【0044】
このように、出力軸14に刈刃15を取り付けることなく、切断ユニット31のみを出力軸14に取り付けることにより、刈刃15がフェンスに当たることを心配することなく、フェンスのツルや壁面の草を取り除く作業をさらに容易且つ安全に行うことができる。
【0045】
以上説明した実施の形態においては、切断ユニット31の基盤32を刃押え金具18と一体に形成するようにしているが、図9に示すように、切断ユニット31の基盤32は、刃押え金具18と別体に構成することもできる。
【0046】
この場合、切断ユニット31の基盤32は鋼材等により刃押え金具18と同径の円板状に形成され、刃押え金具18に対して刈刃15とは反対側に重ねて配置され、出力軸14の雄ねじ14aにねじ結合するナット19により刃押え金具18とともに出力軸14に固定される。また、ナット19や出力軸14を保護するためのガード壁43は、基盤32の刈刃15とは反対側を向く固定面32aに一体に設けられ、各ワイヤ33a,33b,33cは基盤32の固定面32aに固定される。
【0047】
図9に示す構造では、切断ユニット31を出力軸14から取り外して、刈刃15のみを刃受け金具17と刃押え金具18との間に挟み込んで出力軸14に取り付けることができる。また、必要に応じて、ナット19と刃押え金具18との間に基盤32を挟み込むだけの簡単な作業で刈刃15に加えて切断ユニット31を出力軸14に取り付けることができる。さらに、刈刃15を取り付けずに切断ユニット31のみを出力軸14に取り付けることもできる。このように、必要に応じて切断ユニット31の出力軸14に着脱することができる。
【0048】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0049】
例えば、前記実施の形態においては、切断ユニット31のワイヤ33a,33b,33cはそれぞれ屈曲し、両端が固定面32aに固定される構造となっているが、それぞれの部材が間隔をもって配置されていれば、これに限らず、それぞれが直線であり、また、片持ち支持されるものであっても良い。
【0050】
また、切断ユニット31は、線材としてのワイヤ33a,33b,33cを有する構成としたが、出力軸14の軸方向面の草を取り除くものであれば、これに限らず、例えば固定面32aから一体に突出する突起により構成されていても良い。この場合、突起は出力軸14の先端より軸方向に突出するものであれば、傾斜した方向に延びるものであってもよい。
【0051】
また、刃受け金具17、刃押え金具18および刈刃15を、出力軸14の先端に設けられた雄ねじ14aにねじ結合するナット19により出力軸14に固定するようにしているが、これに限らず、刃押え金具18の貫通孔18aをねじ孔として構成し、刃押え金具18を出力軸14の雄ねじ14aに直接ねじ結合させて、刃受け金具17、刃押え金具18および刈刃15を出力軸14に固定する構成としてもよい。
【0052】
また、前記実施の形態においては、線材として3本のワイヤ33a,33b,33cを用いているが、これに限らず、例えばピアノ線、ナイロンコード等、湾曲方向に弾性変形可能で草等を切断可能な線材であれば他の材質の線材を用いるようにしてもよい。また、ワイヤ33a,33b,33cの本数は3本に限らず、任意の本数を設けるようにしてもよい。さらに、ワイヤ33a,33b,33cの固定面32aへの配置は、その両端を固定面32aの出力軸14を中心とした点対称の位置に固定する配置に限らず、ワイヤ33a,33b,33cが、互いにその中間部の一部が重なるように周方向に並べて配置されていれば他の配置としてもよい。
【0053】
さらに、前記実施の形態においては、駆動源としてエンジン21が用いられているが、駆動源として電動モータを用いるようにしてもよい。駆動源として電動モータを用いる場合には、電動モータを刈刃15と同軸にギヤケース13に固定してもよい。この場合、操作棹12の後端にバッテリを装着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
11 刈払機
12 操作棹
13 ギヤケース(ケース)
14 出力軸
14a 雄ねじ
15 刈刃
15a 鋸刃
15b 取付孔
16 ベース
16a 支持面
16b 凸部
17 刃受け金具
17a 貫通孔
17b 受け面
17c フランジ部
18 刃押え金具(基盤)
18a 貫通孔
18b 押え面
18c 凹部
19 ナット
21 エンジン(駆動源)
22 ループハンドル
23 ガード板
31 切断ユニット
32 基盤
32a 固定面
33a,33b,33c ワイヤ(線材)
41 フェンス
42 ツル(被切断物)
43 ガード壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作棹の先端に取り付けられたケースから突出するとともに先端側に刈刃が取り付け可能な出力軸と、前記操作棹に取り付けられ前記出力軸を回転駆動する駆動源とを備えた携帯式の刈払機であって、
前記出力軸の先端側に取り付けられ、前記出力軸の軸方向に突出するとともに、周方向に互いに離間して配設される複数の突出部を有することを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記突出部は、屈曲して設けられることを特徴とする請求項1記載の刈払機。
【請求項3】
前記出力軸の先端側に取り付けられ、前記出力軸とともに回転する基盤をさらに備え、
前記突出部は、前記基盤の前記刈刃とは反対側を向く固定面に周方向に並べて設けられ、それぞれ両端が前記基盤に固定されるとともに中間部が前記固定面から突出する複数の線材であり、
回転する複数の前記線材により被切断物を切断可能であることを特徴とする請求項1または2記載の刈払機。
【請求項4】
前記出力軸の前記刈刃よりも前記ケース側に取り付けられる刃受け金具と、前記出力軸の前記刈刃よりも先端側に取り付けられ前記刃受け金具との間に前記刈刃を挟み込んで固定する刃押え金具とを備え、前記基盤が前記刃押え金具により構成されていることを特徴とする請求項3記載の刈払機。
【請求項5】
前記出力軸の前記刈刃よりも前記ケース側に取り付けられる刃受け金具と、前記出力軸の前記刈刃よりも先端側に取り付けられ前記刃受け金具との間に前記刈刃を挟み込んで固定する刃押え金具とを備え、前記基盤が前記刃押え金具に対して前記刈刃とは反対側に重ねて配置されていることを特徴とする請求項3記載の刈払機。
【請求項6】
前記線材は、それぞれ両端が前記出力軸の軸心を中心とした点対称の位置において前記固定面に固定されるとともに中間部が湾曲形状に形成され、互いに周方向に等間隔にずれて配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の刈払機。
【請求項7】
前記線材はワイヤであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の刈払機。
【請求項8】
刈払機の操作桿の先端に取り付けられたケースから突出する出力軸に取り付け可能であり、前記出力軸の軸方向に突出するとともに、周方向に互いに離間して配設される複数の突出部を有することを特徴とする切断ユニット。
【請求項9】
刈払機の操作棹の先端に取り付けられたケースから突出する出力軸に取り付けられる基盤と、
前記基盤の前記ケースとは反対側を向く固定面に周方向に並べて設けられ、それぞれ両端が前記基盤に固定されて中間部が前記固定面から突出する複数の線材とを有し、
回転する複数の前記線材により被切断物を切断可能であることを特徴とする請求項8に記載の切断ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59289(P2013−59289A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200157(P2011−200157)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】