説明

削岩リグにおける方法および装置

削岩リグ(1)に削岩機(6)が設けられ、削岩機は、衝撃装置(4)と、送り装置(9)と、削岩用ドリルビット(8)を端部に備えたツール(7)とを有する。衝撃装置は応力波をツールに対して発生し、ここからさらに、被掘削岩盤に対して発生するよう配設されている。掘削中、ツールに対して発生した圧縮応力波(σ)の少なくとも一部は、岩盤から反射されて応力波(σ)としてツールへ戻る。本方法では、岩盤から反射されてツールへ戻る応力波(σ)の運動量(P)を求め、衝撃装置の作動および/または送り装置の作動を運動量に基づいて調節する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、衝撃装置と、送り装置と、端部にドリルビットがある削岩用ツールとを含む削岩機が設けられた削岩リグの制御方法に関するものであり、衝撃装置はツールに対して応力波を生成するよう配設され、ツールは衝撃装置により生成された応力波を圧縮応力波としてドリルビットへ、さらにここから被掘削岩盤へ送るよう配設され、送り装置はツールおよびドリルビットを被掘削岩盤に対して押圧するよう配設され、これによって、掘削中、衝撃装置によりツールに対して生成された圧縮応力波の少なくとも一部が応力波として被掘削岩盤から反射してツールへ戻る。
【0002】
さらに、本発明は、衝撃装置と、送り装置と、端部にドリルビットがある削岩用ツールとを含む削岩機が設けられた削岩リグに接続される装置に関するものであり、衝撃装置はツールに対して応力波を生成するよう配設され、ツールは衝撃装置により生成された応力波を圧縮応力波としてドリルビットへ、またこれから被掘削岩盤へ送るよう配設され、送り装置はツールおよびドリルビットを被掘削岩盤に対して押圧するよう配設され、これによって、掘削中、衝撃装置によりツールに対して生成された圧縮応力波の少なくとも一部が応力波として被掘削岩盤から反射してツールへ戻る。
【0003】
削岩リグは地下鉱山、採石場および掘削現場における削岩および掘削に使用される。公知の削岩リグおよび掘削方法は、たとえば次のような切削方法、破砕方法および衝撃方法がある。すなわち、衝撃方法は硬岩類に対して最も一般的に使用される。衝撃方法は削岩機のツールに対して回転と衝撃の両方を与えるものである。しかし、主として岩盤を破壊するのが衝撃である。回転は主に、ツールの遠位端にあるドリルビットのボタンもしくは他の切削部品を岩盤の新規の箇所に常に確実に打ち付ける働きをする。削岩機は通常、液圧式衝撃装置を有し、その衝撃ピストンにより必要な圧縮応力波をツールに対して生成することができる。衝撃方法による岩盤の効率的な破砕には、打撃の瞬間にドリルビットを岩盤に当接させる必要がある。衝撃装置の衝撃に伴うエネルギーによってツールに対して、ここからさらにツールの端部のドリルビットへ、次いで岩盤へ圧縮応力波が生成される。通常、すべての掘削条件において、岩盤へ送られる圧縮応力波の一部は応力波の形で岩盤から反射されて削岩機のツールへ戻る。
【0004】
国際公開WO2006/126933号公報は、被穿孔岩盤からツールへ反射された応力波におけるエネルギー量に基づいて掘削を制御する方法を開示している。この方法によれば、少なくとも1つのパラメータ値を定義して岩盤から反射される応力波におけるエネルギー量を表す。さらに、このパラメータ値を使用して、衝撃装置のパルス発生器により生成される応力波の立上り時間および/または持続時間を調節する。このパラメータ値によって、パルス発生器により生成される応力波の振幅も調節することができる。この公報の解決策の目的は、反射エネルギー量を最小化し、これによって掘削システムの効率を改善することである。
【0005】
しかし、このシステムの弱点の一つは、反射される応力波のエネルギー量の測定が困難なことである。図2は、掘削中に岩盤へ侵入する圧縮応力波および岩盤から反射された応力波を示す模式図である。図2における反射応力波では、被掘削岩盤から反射されてツールへ戻る圧縮応力を正で、引張り応力は負で示している。パルス発生器によって生成される圧縮応力波σのエネルギー量は次の式によって算出することができ、
【0006】
【数1】

被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波σのエネルギー量は次の式によって算出することができる。
【0007】
【数2】

ただし、Aはツールすなわちドリルロッドの横断面、Yは弾性係数、cはツール内の波速、tiはツールから被掘削岩盤へはいる圧縮応力波σの圧縮応力波の持続時間、trは被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波σの持続時間である。式(2)は、反射応力波エネルギーの計算における累乗によって反射応力波の符号情報、すなわち反射応力波エネルギーのどの部分が圧縮応力波でありどの部分が引張応力であるかの情報であるが失われることを明確に示している。
【0008】
さらに、反射エネルギー量は普遍的な岩盤条件を確実に説明することはできない。掘削が突然空洞に入り込んだ場合、衝撃装置のパルス発生器により生成される圧縮応力波は、ツールの岩盤側端部から全部、反射引張波として反射して戻る。したがって、応力波の効率はもちろんゼロパーセントである。極度に硬質の岩盤を掘削する場合、圧縮応力波はほとんど全部、圧縮応力波の形で反射して戻る。このような場合においても効率はゼロパーセントになる。換言すれば、両方の場合において圧縮応力波のエネルギーは、掘削条件がまったく異なり正反対の調節が掘削に必要であるにもかかわらず、ほとんど全部、反射して戻る。
【0009】
したがって、さまざまな掘削条件において確実に作動するような衝撃装置の制御を、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波のエネルギー量に基づいて行なうことはできない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、掘削機の作動を制御する新規の方式を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の方法は、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波を表す少なくとも1つの測定信号で測定し、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータを測定信号に基づいて求め、衝撃装置の作動および/または送り装置の作動を、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータに基づいて調節することを特徴とする。
【0012】
本発明の装置は、本装置がさらに、少なくとも1つの測定装置を含み、この測定装置は、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波を表す少なくとも1つの信号を測定するよう配設され、本装置はさらに、少なくとも1つの制御およびデータ処理装置を含み、これは、測定装置の測定信号に基づいて、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータを求めるよう配設され、制御およびデータ処理装置は、衝撃装置作動および/または送り装置の作動を、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータに基づいて調節するよう配設されていることを特徴とする。
【0013】
衝撃装置と、送り装置と、端部にドリルビットがある削岩用ツールとを含む削岩機が設けられ、衝撃装置はツールに対して応力波を生成するよう配設され、ツールは、衝撃装置により生成された応力波を圧縮応力波としてドリルビットへ、さらにここから被掘削岩盤へ送るよう配設され、送り装置は、ツールおよびドリルビットを被掘削岩盤に対して押圧するよう配設され、これによって、掘削中、衝撃装置によりツールに対して生成された圧縮応力波の少なくとも一部が応力波として被掘削岩盤から反射してツールへ戻る削岩リグの制御方法は、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波を表す少なくとも1つの測定信号を測定し、測定信号に基づいて、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータを求め、衝撃装置の作動および/または送り装置の作動を、被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量、もしくは運動量を表すパラメータに基づいて調節するものである。
【0014】
被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波の運動量は、反射応力波が引張応力であるか圧縮応力であるかの情報を維持している。すなわち、反射応力波の運動量によって、特定の掘削時点に対応する掘削条件を常時、確認することができ、したがって、削岩機の作動、および削岩リグ全体としての作動も、一般的な掘削条件に基づいて、不要なひずみを掘削装置に生じることなく正確に制御および調節することができる。
【0015】
一実施例によれば、運動量が小さい場合、送り装置の送り力は増す。小さな運動量は不十分な送り状況を表すものであり、これによって送り装置の送り力を大きくして通常の掘削状況を得ることができる。
【0016】
第2の実施例によれば、運動量が小さい場合、衝撃装置により生成される応力波の長さもしくは持続時間を増し、および/または衝撃装置により生成される応力波の強度もしくは振幅を増す。したがって、送り装置の送り力が増大しても反射応力波の運動量が影響されない場合、運動量が小さいのは、軟質の岩盤によって生じた引張応力に起因すると結論でき、引張応力は、衝撃装置により生成される応力波の強度もしくは振幅を減少させることによって小さくすることができる。その結果、引張応力波の振幅は減少し、掘削装置に対するひずみが減少する。同時に、衝撃装置により生成される応力波の長さもしくは持続時間を増すことができ、これによって、応力波振幅の減少により生じる掘削速度の低下を補償することができる。
【0017】
第3の実施例によれば、運動量が大きい場合、衝撃装置により生成される応力波の長さを短縮し、衝撃装置により生成される応力波の強度を増大させる。衝撃装置により生成される応力波の長さの減少によって、被掘削岩盤へ送られそこから反射される圧縮応力波の長さが減少し、これによって掘削効率が改善する。衝撃装置の衝撃パルスの強度を増せば、圧縮応力波の振幅が増大し、これによって岩盤への掘削貫入度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明のいくつかの実施例をさらに詳細に説明する。
【図1】明細書に記載の方式を適用した削岩リグの模式的側面図である。
【図2】削岩すべき岩盤へ侵入した圧縮応力波と、岩盤から反射した応力波の模式図である。
【図3】削岩すべき岩盤へ侵入した圧縮応力波と、岩盤から反射した対応する応力波の模式図である。
【図4】図3の応力波に対応する運動量の模式図である。
【図5】図3および図4に対応するツール変位の模式図である。
【図6】削岩すべき岩盤へ侵入した第2の圧縮応力波と岩盤から反射した対応する応力波の模式図である。
【図7】図6の応力波に対応するツール変位の模式図である。
【0019】
明瞭にするため、各図では本発明の実施例を簡略化して示す。同様の部分は全図を通して同様の参照番号で示す。
【詳細な発明の説明】
【0020】
図1は、本発明の方式を適用できる削岩リグ1の模式的かつ大幅に簡略化した図である。図1の削岩リグ1にはブーム2が設けられ、その端部には、衝撃装置4および回転装置5を有する削岩機6を設けた送りビーム3がある。回転装置5は連続的な回転力をツール7へ伝達し、これによって、ツール7に連結されたビット8は衝撃後にその位置を変え、次の衝撃で岩盤上の新規の位置を打撃する。衝撃装置4は通常、衝撃ピストンが設けられ、これは圧力媒体の影響を受けて移動し、ツール7の上端部へ配設されまたはツール7と衝撃装置4の間に配設された中間片を打撃する。当然、さまざまな構造の衝撃装置4も可能である。したがって、ツールに対して送られる応力波を、たとえば圧力媒体に対して圧力パルスを与えることによって、または電磁気現象に基づく手段によって、機械作動式衝撃ピストンなしに発生させることができる。このように衝撃装置という語は、このような特徴に基づく衝撃装置のことも言う。ツール7の近位端は削岩機6へ接続され、ツール7の遠位端には固定の、もしくは脱着可能な削岩用のビット8が設けられている。ツール7の近位端は図1において破線で模式的に示す。掘削中、ビット8は送り装置9によって岩盤に対して押圧される。送り装置9は送りビーム3へ配設され、これに対して削岩機6が可動に配設されている。ビット8は一般には、ボタン8aが設けられたドリルビットとして公知のものであるが、他のビット構造でも可能である。また長尺孔掘削として公知である組合せ式ドリルロッドによる掘削では、掘削すべき穴の深さにより、多数のドリルロッド10aないし10cがドリルビット8と削岩機6の間に取り付けられ、ドリルロッドがツール7を形成する。
【0021】
図1は、実在の削岩機6の構体に比べてかなり小さく削岩リグ1を示す。明瞭にするため、図1の削岩リグ1は、単一のブーム2、送りビーム3、削岩機6および送り装置9を有するが、削岩リグには一般に、複数のブーム2が設けられ、それぞれの端部には、送りビーム3、削岩機6および送り装置9を有することは明らかである。削岩機6は通常、ドリルビット8が閉塞するのを防止するフラッシング装置を含んでいることも明らかであるが、明瞭にするために図1ではフラッシング装置を図示しない。削岩機6を液圧作動式のものでよいが、空圧作動式もしくは電気作動式でもよい。
【0022】
衝撃装置4により生成される応力は、圧縮応力波の形でドリルロッド10aないし10cに沿って最外部のドリルロッド10cの端部のビット8へ向けて送られる。圧縮応力波がビット8に到達すると、ビット8およびそのボタン8aが掘削すべき物質を打撃し、これによって強力な圧縮応力を生成し、このため被掘削岩盤の中にひび割れが発生する。衝撃装置4により与えられた応力波が岩盤の硬度に対して強すぎる場合、掘削装置に対して生じる引張応力の度合いが不必要に大きくなるという問題が生じる。過剰な衝撃エネルギーで軟質な岩盤を連続して掘削すると、たとえばドリルロッド10aないし10c間のねじ継手の損耗、および/または疲労による掘削装置の早期破損につながる。
【0023】
削岩リグおよび削岩機の作動を制御および調節するために、とくに被掘削岩盤から反射してツールへ戻る応力波σの運動量もしくはこれを表すパラメータを求め、衝撃装置4および/または送り装置9の作動を運動量もしくはこれを表すパラメータに基づいて制御および調節する。ツール7から被掘削岩盤への圧縮応力波σの運動量Pは次の式によって算出することができる。
【0024】
【数3】

ただし、Aはツール7すなわちドリルロッド10aないし10cの横断面であり、tiは圧縮応力波σの持続時間である。岩盤から反射してツール7へ戻る応力波σの運動量Pは次の式によって算出することができる。
【0025】
【数4】

ただし、trは被掘削岩盤から反射してツール7へ戻る応力波σの持続時間である。式(4)は、反射応力波σの運動量Pの計算が反射応力波の符号情報、すなわち反射応力のどの部分が圧縮応力を表し、どの部分が引張応力を表すかの情報を維持する様子を明確に示している。運動量Pが大きい場合、反射応力波は主として圧縮反射からなり、運動量Pが小さい場合、主に引張反射が関係している。運動量Pがゼロ値を得た場合、岩盤から反射してツール7へ戻る応力波σは引張および圧縮の両方が同量であることを表している。
【0026】
被掘削岩盤から反射してツール7へ、すなわち図1の場合、1本以上のドリルロッド10aないし10cへ戻る応力波σはツール7の端部から伝播して削岩機6へ戻るので、ツール7の端部で変位が生じる。岩盤から反射した応力波が主に引張応力を含む場合、この応力波はツールの端部を掘削方向へ変位させる。岩盤から反射した応力波が主に圧縮応力を含む場合、この応力波はツールの端部を削岩機の方へ変位させる。この情報に基づき、反射した引張応力波の運動量もしくはこれを表すパラメータをさまざまに決めることができる。
【0027】
たとえば、反射応力波の運動量は、ツール7の変位を、たとえばその端部もしくは中央部から直接測定することによって決めることができる。ツール7の削岩機6端部の直近へ、またはこれに接続して、たとえば測定手段11を図1に模式的に示すように配置して、被掘削岩盤から反射してツール7へ戻る応力波σを表す測定信号MSを測定することができる。このような測定手段11は、たとえば反射応力波を測定信号MSとして表す電圧もしくは電力メッセージを送信する電磁距離センサであってよい。測定手段11により測定された測定信号MSは、制御およびデータ処理装置12へ送られ、同装置は、ツール7の変位などの応力波σの運動量Pもしくはこれを表すパラメータを測定手段11の測定信号MSに基づいて決める。反射応力波は、ツール7の端部から進んで削岩機の端部へ戻るので、ツールの変位が発生する。反射引張応力が主であるとすると、ツールもしくはドリルロッドは反射波の衝撃によって掘削方向へ移動する。反射波がほとんど圧縮応力からなるとすれば、ドリルロッドは掘削機の方へ移動する。変位の程度は次の式によって算出することができる。
【0028】
【数5】

【0029】
【数6】

ただし、dはツールから被掘削岩盤への応力により生じた変位、dは反射応力波により生じた変位、νは測定点においてツールから被掘削岩盤への応力波により生じた粒子速度、νは反射応力波により生じた粒子速度、c はツールもしくはドリルロッド内の応力波の速度、ρはツール材料の密度である。反射応力波により生じた変位dは、反射応力波が負の速度に対応するとした符号則を考慮している。
【0030】
式(5)および(6)に基づけば、反射応力波の運動量Pをツールの変位として求めるのは容易である。換言すれば、ツールの変位dは反射応力波の運動量を表すパラメータである。測定手段11を配設してツールの端部からのツールの変位を測定する場合、ツール7の削岩機6端部からの応力波の再反射も考慮に入れる必要がある。
【0031】
制御およびデータ処理装置12は、削岩機6専用で削岩機6の作動だけを制御する別個の制御およびデータ処理装置であっても、または削岩リグ1の作動を全体的に制御する装置であってもよい。制御およびデータ処理装置12の作動は、たとえばプログラマブル論理回路に基づくものでよいが、一般にこれは、さまざまな計算および制御動作をソフトウエア制御により行なうさまざまなマイクロプロセッサおよび信号処理装置を含む装置である。さらに、制御およびデータ処理装置12は、相互接続された2台以上の個別の装置で構成され、それぞれがおのおの決められたタスクを遂行し、ある装置は、たとえば反射応力波の運動量を測定し、別な装置は測定した運動量に基づいて必要な制御動作を行なうこともできる。
【0032】
図1に非常に概略的に示すが、図1の例では削岩機6の端部にあるツール7に液圧式補助装置13を設けることにより、反射応力波σの運動量Pを測定することもでき、これは、ツール7端部の変位によってこの変位に比例する圧力を生じるものである。測定手段11を配設して圧力を測定することによって、すなわち測定手段11が圧力計もしくはセンサ式、または同様の装置である場合、岩盤から液圧式補助手段へ反射された応力波により生成される圧力は測定手段11によって測定することができ、これに基づいて反射応力波の運動量もしくはこれを表すパラメータを求めることができる。
【0033】
反射応力波σの運動量Pを決める他の可能な例は、応力波によりツール7に対して生じる変化をツール7から直接測定することである。これは、たとえばツール7のひずみを測定することによって行なうことができ、この場合、測定手段11は、たとえばツール7へ配置されたひずみ計でよい。しかし、ツール7が回転するため、この種の接触測定は、測定信号MSを伝送するのにケーブル配線が必要なので、問題があることがある。これに代わるものとして、反射応力波の運動量をたとえば非接触測定により、たとえばツール7の応力波の走行方向における粒子速度を測定することによって、すなわち、反射応力波の走行方向におけるツール7の特定点もしくは特定部分の速度を測定することによって求めることができる。粒子速度は反射応力波に直接比例する。測定手段11は、たとえばレーザでよく、これは、粒子速度を光学的に測定することができる。測定手段11は、たとえばコイルでもよく、これは、ツール7において応力波により生じた磁界の変化を測定することができる。
【0034】
被掘削岩盤から反射する応力波σの運動量Pに基づく、もしくはこの運動量を表すパラメータに基づく削岩機6の制御もしくは調節は、たとえば次のように行なうことができる。運動量が小さい場合、送り不足が関係したか、あるいは被掘削岩盤が軟質であるかのいずれかであり、いずれの場合においても結果は引張応力に応じた反射応力波となる。送り不足状態では、ツール7の端部におけるビット8すなわちドリルビットは衝撃の際、岩盤に対して適切に当接しない。したがって、ビット8と岩盤との間に間隙が形成されて、自由端の境界条件によって引張応力波が生じる。軟質岩盤では、ビット8は、少なくとも応力パルスがツール7へ送られ、これによってドリルビットへ始めた時点では、実質的に自由端境界条件に従い、その結果、主に引張応力を含有する反射応力波が生成される。
【0035】
送り不足状態か軟質岩盤の掘削かを区別する非常に簡単な方法がある。送り不足状態では、削岩機6へ送り装置9により送られる送り力は、たとえば制御およびデータ処理装置12から制御リンク21を通して送り装置のポンプ15を制御することで行なわれるポンプ15の給送圧力の調節によって送り装置9の圧力導管14内の圧力を増圧させることによって、増大させることができる。削岩機6とツール7およびこれに付随するビット8を被掘削岩盤へ向けて駆動中、加圧流体は矢印Aの方向に送り装置9へ流れる。送り装置9の戻り動作中、加圧流体は送り装置9の戻り導管16を通って矢印Bで示す方向に流れて容器17へ戻る。
【0036】
送り力を増大させても運動量に対して実質的な影響がない場合、軟質岩盤により生じた引張応力が関係していると結論づけてもよい。このような場合、削岩機6の作動は、衝撃装置により生成された応力波の強度もしくは振幅を減少させることによって制御もしくは調節することができる。その結果、引張応力波の振幅は減少し、これによって掘削装置のひずみが減少する。これと同時に、衝撃装置により生成された応力波の長さすなわち持続時間が増すことがあり、これによって、減少した振幅により生じる掘削速度の減速を補償することができる。これはたとえば、制御リンク20を通して制御およびデータ処理装置12を使用し、衝撃装置4の圧力導管内に配置されている衝撃装置4のポンプ19の圧力を適切に変化させ、加圧流体を矢印A’の方向に衝撃装置4へ送ることによって行なうことができる。したがって、送り装置9の送り力は、元の値より高く保ち、またはその前の値へ戻すことができる。衝撃装置4により生成された応力波の振幅を減少させると、岩盤へ送られる圧縮応力波の振幅が減少し、これによって当然、岩盤から反射した引張応力波の振幅も減少し、したがって反射応力波の運動量が減少する。
【0037】
引張応力波の振幅を減少させれば、掘削装置の保護になる。なぜなら、岩盤から反射された応力波に含まれる引張応力が主に掘削機の損傷に関与しているからである。衝撃装置4により生じる応力波の長さを増せば、応力波の振幅の減少によって生じる掘削速度の減速の補償になる。ツール7へ反射する応力波の運動量が小さい場合は当然、衝撃装置4により生じた応力波の長さすなわち持続時間を先ず増し、および/または応力波の強度もしくは振幅を減少させてから送り装置9の送り力を増大することもできる。
【0038】
ツール7へ反射された応力波σの運動量Pが大きい、もしくは巨大である場合、硬質岩盤が関係しているという結論が導き出される。硬質岩盤の場合、ツール7およびビット8にはビット8の貫入に対抗する大きな力を生じる。したがって、ツール7から被掘削岩盤への圧縮応力波σは、ドリルビット8を岩盤中へ深く貫入させるのに十分な力を含んでいない。ビット8の岩盤への貫入が止まった場合、そのツール7の端部は固定端部境界条件に従い、岩盤へ侵入する圧縮応力波は反射されて圧縮応力波としてツール7へ戻る。このような場合、削岩機6は、衝撃装置4により生成される応力波の長さを短縮し、かつ衝撃装置4により生成される応力波の振幅を大きくすることによって、制御もしくは調節することができるが、この目的は、貫入速度を増大させ、掘削効率を高めることにある。
【0039】
場合によっては、衝撃装置4の衝撃周波数すなわち掘削パルス周波数を変えることも可能である。硬質岩盤へ掘削する場合、衝撃周波数を高くすることは常に有利である。このような場合、その目的は、個々の衝撃に対して大きな貫入を得ることではなく、むしろ小さな貫入であっても十分である。実際の掘削速度は、こうして小さな貫入の1回の衝撃を高い衝撃周波数と組み合わせることによって得られる。
【0040】
被掘削岩盤から反射してツール7へ戻る応力波σの運動量Pは、反射応力波が引張応力を含むのか圧縮応力を含むのかの情報を保持しているので、反射応力波の運動量に基づいて特定の掘削時の掘削条件を常時正確に確認することができる。これによって削岩機6および削岩リグ1は全体として、現行の掘削条件に基づいて正しく制御および調節することができる。
【0041】
次に、被掘削岩盤から反射した応力波σの運動量P、またはこれを表すツール7の変位drを求める他の例を、図3ないし7を参照して一例として説明する。図3ないし図5は、非常に軟質な岩盤を掘削して非常に大きな反射引張応力を生じた場合を示す。次いで、図6および図7は、非常に硬質な岩盤へ掘削する場合を示す。この掘削に用いるドリルロッドの横断面は1178 mm2であり、ドリルロッドの材料パラメータは、ドリルロッド内の応力波速度c=5188 m/s、ドリルロッド材料密度ρ=7800 kg/m3である。各図では、ツール7から被掘削岩盤へ向かう圧縮応力波は参照符号σで示し、岩盤から反射して戻る応力波は参照符号σで示す。応力波の測定はドリルロッドの中央で行なった。
【0042】
図4は、反射された運動量が約-29.6Nsであり、これは、式(6)によれば被掘削岩盤の方向に対する約0.6mmの変位に相当することを示している。この変位は図5から確認することができる。次いで図7は、ドリルロッドの掘削機6の方向への動きが約0.48 mmであることを示す。式(4)によれば、対応する運動量は23 Nsであることが求まる。これに基づいて、この反射は主として圧縮応力からなり、非常に硬質な岩盤への掘削が関係したと結論づけてもよい。
【0043】
場合に応じて、本願に開示した構成要件を他の構成要件とは無関係に使用してもよい。他方、本願に開示した各構成要件を組み合わせて、さまざまな組合せを作ることができる。
【0044】
図面およびこれに関連した明細書は、本発明の概念の説明のみを意図している。本発明の内容は特許請求の範囲内で改変してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃装置(4)と、送り装置(9)と、端部にドリルビット(8)がある削岩用ツール(7)とを含む削岩機(6)が設けられ、前記衝撃装置(4)は前記ツール(7)に対して応力波を生成するよう配設され、該ツールは、前記衝撃装置(4)により生成された応力波を圧縮応力波(σ)として前記ドリルビット(8)へ、さらにここから被掘削岩盤へ送るよう配設され、前記送り装置(9)は、前記ツール(7)およびドリルビット(8)を前記被掘削岩盤に対して押圧するよう配設され、これによって、掘削中、前記衝撃装置(4)により前記ツール(7)に対して生成された圧縮応力波(σ)の少なくとも一部が応力波(σ)として前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る削岩リグ(1)の制御方法において、該方法は、
前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)を表す少なくとも1つの測定信号(MS)を測定し、
前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)の運動量(P)、もしくは該運動量を表すパラメータを前記測定信号に基づいて求め、
前記衝撃装置(4)の作動および/または前記送り装置(9)の作動を、前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)の運動量(P)、もしくは該運動量を表すパラメータに基づいて調節することを特徴とする削岩リグの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該方法は、前記ツール(7)の変位(D)を測定し、該ツール(7)の変位(D)に基づいて、前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)を求めることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、該方法は、液圧式補助装置(13)を前記ツール(7)へ配設して該液圧式補助装置(13)に対して作用する圧力を測定し、該圧力に基づいて、前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)の運動量(P)、もしくは前記ツール(7)の変位(D)などの前記運動量を表すパラメータを測定することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記反射応力波(σ)により前記ツール(7)に対して生じた変化を該ツール(7)から直接測定することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記ツール(7)の伸びを測定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、該方法は、前記ツール(7)の粒子速度を光学的に測定することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、該方法は、前記ツール(7)の粒子速度を前記反射応力波(σ)により生じた該ツール(7)の磁界の変化に基づいて測定することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記運動量(P)が小さい場合、前記送り装置(9)の送り力を増大させることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記運動量(P)が小さい場合、前記衝撃装置(4)により生成される応力波の長さもしくは持続時間を増し、および/または該衝撃装置(4)により生成される応力波の強度もしくは振幅を増大させることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記運動量(P)が大きい場合、前記衝撃装置(4)により生成される応力波の長さを減少させ、該衝撃装置(4)により生成される応力波の振幅を増大させることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、前記衝撃装置(4)の衝撃周波数を変化させることを特徴とする方法。
【請求項12】
衝撃装置(4)と、送り装置(9)と、端部にドリルビット(8)がある削岩用ツール(7)を含む削岩機(6)が設けられ、前記衝撃装置(4)は前記ツール(7)に対して応力波を生成するよう配設され、該ツール(7)は、前記衝撃装置(4)により生成された応力波を圧縮応力波(σ)として前記ドリルビット(8)へ、さらに被掘削岩盤へ送るよう配設され、前記送り装置(9)は、前記ツール(7)および前記ドリルビット(8)を前記被掘削岩盤に対して押圧するよう配設され、これによって、掘削中、前記衝撃装置(4)により前記ツール(7)に対して生成された圧縮応力波(σ)の少なくとも一部が応力波(σ)として前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る削岩リグ(1)に接続する装置において、
該装置はさらに、前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)を表す少なくとも1つの測定信号(MS)を測定するよう配設された少なくとも1つの測定装置(11)を含み、
該装置はさらに、少なくとも1つの制御およびデータ処理装置(12)を含み、該制御およびデータ処理装置は、前記測定装置(11)の測定信号に基づいて、前記被掘削岩盤から反射して前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)の運動量(P)、もしくは該運動量を表すパラメータを求めるよう配設され、該制御およびデータ処理装置(12)は、前記衝撃装置(4)の作動および/または前記送り装置(9)の作動を、前記被掘削岩盤から反射し前記ツール(7)へ戻る応力波(σ)の運動量(P)、もしくは該運動量を表すパラメータに基づいて調節するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項13】
請求項12に記載の削岩リグに接続する装置において、前記測定手段(11)は前記ツール(7)の変位(D)を測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項14】
請求項12に記載の削岩リグに接続する装置において、該装置はさらに、前記ツール(7)に配設された液圧式補助装置(13)を含み、前記測定手段(11)は、前記液圧式補助装置(13)に対して働く圧力を測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項15】
請求項12に記載の削岩リグに接続する装置において、前記測定手段(11)は、前記反射応力波(σ)により前記ツール(7)に対して生ずる変化を該ツール(7)から直接測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項16】
請求項15に記載の削岩リグに接続する装置において、前記測定手段(11)は前記ツール(7)の伸びを測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項17】
請求項15に記載の削岩リグに接続する装置において、前記測定手段(11)は、前記ツール(7)の粒子速度を光学的に測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項18】
請求項15に記載の削岩リグに接続する装置において、前記測定手段(11)は、前記ツール(7)の粒子速度を、前記反射応力波(σ)により生じた前記ツール(7)の磁界に基づいて測定するよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項19】
請求項12ないし18のいずれかに記載の削岩リグに接続する装置において、前記運動量が小さい場合、前記制御およびデータ処理装置(12)は、前記送り装置(9)の作動を制御して該送り装置(9)の送り力を増大させるよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項20】
請求項12ないし19のいずれかに記載の削岩リグに接続する装置において、前記運動量が小さいが場合、前記制御およびデータ処理装置(12)は、前記衝撃装置(4)の作動を制御して、該衝撃装置(4)により生成される応力波の長さもしくは持続時間を増大させ、および/または該衝撃装置(4)により生成される応力波の強度もしくは振幅を増大させるよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項21】
請求項12ないし18のいずれかに記載の削岩リグに接続する装置において、前記運動量(P)が大きい場合、前記制御およびデータ処理装置(12)は、前記衝撃装置(4)により生成された応力波の長さを短縮させ、該衝撃装置(4)により生成された応力波の振幅を増大させるよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。
【請求項22】
請求項12ないし21のいずれかに記載の削岩リグに接続する装置において、前記制御およびデータ処理装置(12)は、前記衝撃装置(4)の衝撃周波数を増大させるよう配設されていることを特徴とする削岩リグに接続する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−504197(P2012−504197A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528381(P2011−528381)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050781
【国際公開番号】WO2010/037905
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(506286478)サンドビク マイニング アンド コンストラクション オサケ ユキチュア (70)
【氏名又は名称原語表記】SANDVIK MINING AND CONSTRUCTION OY
【Fターム(参考)】