説明

前立腺上皮細胞分化のための方法および組成物

本発明は、前立腺上皮細胞分化を促進することによって前立腺ガンを治療する方法および組成物を提供する。治療方法は、活性形態の前立腺由来因子(PDF)、または不活性PDF前駆体、またはプロタンパク質転換酵素(PC)とPDF前駆体との組合せを投与して、対象中でPDFの生物学的活性を増大させ、前立腺上皮細胞分化を促進することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2002年11月8日に出願され、出典明示してその明細書が全て本明細書に含まれるとみなされる米国仮出願番号第60/424,948号を基礎とする優先権を主張する。
連邦政府により資金提供を受けた研究開発
適用せず。
配列表の参照
この開示の一部である配列表は、フロッピーディスク上に、本発明のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を含むテキストファイルを含む。配列表の構成要素は出典明示して全て本明細書に含まれるとみなされる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概略、ガン治療に関し、特に、前立腺ガン治療としての前立腺上皮細胞分化の調節に関する。
【0003】
前立腺ガンは男性の前立腺内に発生する悪性腫瘍である。前立腺は陰茎基部の後方、直腸の前方で膀胱の下方に位置するクルミ大の腺である。それは、陰茎を通り尿および精液を運ぶ管状チャネルである尿道を取り囲む。前立腺の主たる機能は、精子を保護し、支持し、輸送を助ける精液中の液体成分を産生することにある。95%を超える前立腺ガンは、腺組織内で発生するガン、腺ガンである。もうひとつの重要な型の前立腺ガンは、神経内分泌腺、すなわち、小細胞悪性ガンとして知られている。この型は早期に転移するが、前立腺特異抗原(PSA)を産生しない。
【0004】
前立腺ガンは男性では最もありふれたガンである。2002年、約189,000人が新たな前立腺ガン患者であると米国で診断されることが予測される。前立腺ガンは男性ではガンによる死亡原因の第2位であり[S.L. Parker et al., Cancer statistics, CA. Cancer J. Clin. 47:5-27 (1997)]、2002年中に推定30,200例の死亡が発生すると予測される。前立腺ガンによる死亡数は全男性中減少しているが、死亡率は、白人において、黒人の2倍以上である。
【0005】
全ての前立腺ガン患者の83パーセントが、その病気が前立腺内部およびその周辺臓器にとどまっているうちに発見される。これらの場合、100%の患者が診断後少なくとも5年間は生存することが予測される。前立腺ガンの全ての段階での全相対的5年生存率は96%である。10年および15年生存率は、それぞれ、75%および54%である。
【0006】
現在の前立腺ガン治療オプションは、外科手術、放射線治療、医学的療法、医学的療法と外科手術または放射線治療の組合せ、化学療法、および経過観察を含む。患者の治療オプションは、一般的に、患者の年齢および病気の段階による。しかしながら、これらの治療オプションは多くの副作用を有し、多くの場合、その増殖の早期における新生物の治療には用いられない。
【0007】
形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーの特定のメンバーであるタンパク質は前立腺ガン細胞の分化および増殖に影響することが示された。骨形成タンパク質(BMP)は正常なラットおよびヒトの前立腺および前立腺ガン中で発現された[S.E. Harris et al., Prostate 24:204-211 (1994)]。TGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3は、正常および腫瘍化ヒト前立腺中で発現された[K.T. Perry et al., Prostate 33:133-140 (1997)]。TGF−β1は前立腺の腫瘍化と関連付けられた[P. Wikstorm et al., Role of transforming growth factor-β1 in prostate cancer, Microscopy Res. Tech. 52:4111-419 (2001)]。
【0008】
一旦分泌されたTGF−β1スーパーファミリーのタンパク質は生物学的効果を有するように活性化されなければならない。まず、TGF−Bタンパク質が比較的大きな生物学的に不活性な前駆体(プロタンパク質ともいう)として合成され、それらが二塩基部位(R−X−X−R)にてタンパク質分解的にプロセシングされて成熟した活性TGF−β類を放出する。プロセシング部位はフリンのごときプロタンパク質転換酵素に対する共通切断モチーフである。しかしながら、現在では、前立腺細胞におけるTGF−β類の分泌およびプロセシングについて非常に小さな別のものが知られている。
【0009】
前立腺由来因子(PDF)はTGF−βスーパーファミリータンパク質の分派メンバーであり、それは胎盤および前立腺内で高度に発現され、前立腺上皮の分化にも関与する。PDFはPLAB[R. Hromas et al., Biochem. Biophys. Acta. 1354:40-44 (1997)]、胎盤形質転換成長因子−β(PTGF−β)[M. Yokoyama-Kobayashiet al., J. Biochem. 122:622-626 (1997)]、マクロファージ阻害性サイトカイン−1(MIC−1)[M.R. Bootcov et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 94:11514-11519 (1997)]、および増殖分化因子−15(GDF−15)[M. Bottner et al., Gene 237:105-111 (1999)]としても知られている。
【0010】
PDFは正常および腫瘍化前立腺細胞内で発現される[V.M. Paralkar et al, J. Biol Chem. 273:13760-13767 (1998); R. Thomas et al., Int. J. Cancer 93:47-52 (2001)]。PDF遺伝子は、非新生物前立腺組織と比較して、初期前立腺ガン組織においてダウンレギュレートされるが、骨およびリンパ節における二次転移損傷において再発する[R. Thomas et al., (2001)]。様々な前立腺ガン細胞によるPDFの分化合成および分泌は以前調査されていなかった。かくして、PDFの分泌およびプロセシングの正確な特徴および前立腺における腫瘍形成との関係は不明である。
【0011】
【非特許文献1】S.L. Parker et al., Cancer statistics, CA. Cancer J. Clin. 47:5-27 (1997)
【非特許文献2】S.E. Harris et al., Prostate 24:204-211 (1994)
【非特許文献3】K.T. Perry et al., Prostate 33:133-140 (1997)
【非特許文献4】P. Wikstorm et al., Role of transforming growth factor-β1 in prostate cancer, Microscopy Res. Tech. 52:4111-419 (2001)
【非特許文献5】R. Hromas et al., Biochem. Biophys. Acta. 1354:40-44 (1997)
【非特許文献6】M. Yokoyama-Kobayashiet al., J. Biochem. 122:622-626 (1997)
【非特許文献7】M.R. Bootcov et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 94:11514-11519 (1997)
【非特許文献8】M. Bottner et al., Gene 237:105-111 (1999)
【非特許文献9】V.M. Paralkar et al, J. Biol Chem. 273:13760-13767 (1998)
【非特許文献10】R. Thomas et al., Int. J. Cancer 93:47-52 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前立腺ガン治療および前立腺上皮細胞分化の調節のための方法および組成物を提供する。特に、本発明は活性PDF、PDF前駆体およびプロタンパク質転換酵素を単独でまたは組み合わせて用いて、前立腺ガン細胞におけるPDFの発現および活性を促進する細胞分化療法を提供する。本発明の具体例は、活性形態のPDFをPDFの受容体を有するガン性細胞に投与し、プロタンパク質転換酵素(PC)を投与して、プロタンパク質PDFを分泌する能力を有するがそれをプロセシングしないかまたは不十分にしかプロセシングしない細胞において活性PDFの産生を促進することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
代表的な具体例において、その必要のある対象の前立腺ガンを治療する方法は、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することによって、前立腺上皮細胞分化を促進することを含む。例えば、その剤は、治療上有効量の活性PDFである。あるいは、その剤は、ある量のPDF前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素であって、ある量のPDF前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。あるいは、その剤は治療上有効量のプロタンパク質転換酵素である。
【0014】
もうひとつの具体例において、その必要のある対象の前立腺ガンを治療する方法は、その対象から前立腺組織の試料を採取し、組織試料中のガン性細胞の特性を調べて細胞がPDFの受容体を有するかどうか決定し、細胞の特性を調べて細胞がPDFの前駆体をプロセシングして活性PDFを産生するかどうかを決定することを含む。この方法の一つの代替的な具体例において、細胞はPDFの前駆体を合成も分泌もせず、本発明の方法はその対象に治療上有効量のPDFを投与することをさらに含む。この方法のもうひとつの代替的な具体例において、細胞はPDFの前駆体を合成も分泌もせず、本発明の方法はその対象にある量のPDF前駆体をある量のプロタンパク質転換酵素と一緒に投与するステップをさらに含み、ある量のPDF前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。この方法のさらにもうひとつの代替的な具体例において、細胞はPDFの前駆体を合成し分泌するが、PDFの前駆体を有さず、本発明の方法は、その対象に治療上有効量のPDFを投与するステップをさらに含む。この方法のなおもうひとつの代替的な具体例において、細胞はPDFの前駆体を合成し分泌するが、PDFの前駆体を有さず、本発明の方法は、その対象にPDFの前駆体をプロセシングするための治療上有効量を投与するステップを含む。
【0015】
もうひとつの具体例において、その必要のある対象の前立腺ガンを治療する方法は、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤を、前立腺ガンの早期に、その対象に投与することによって前立腺細胞分化を促進させることを含む。
【0016】
もうひとつの具体例において、対象の前立腺ガンを治療または予防するための組成物は、医薬上許容される担体中の治療上有効量の活性PDFを含む。
【0017】
もうひとつの具体例において、対象の前立腺ガンを治療または予防するための組成物は、医薬上許容される担体中のある量のPDFの不活性前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を含み、ある量のPDFの不活性前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。
【0018】
もうひとつの具体例において、対象の前立腺ガンを治療または予防するための組成物は、医薬上許容される担体中の治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を含む。
【0019】
本発明の他の特徴は、ある部分当業者にとって明白であり、ある部分下記の詳細な説明に指摘される。
本発明のこれらのおよび他の特徴、局面および利点は明細書、特許請求の範囲および不随する図面を参照してより理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
全般的に、以下用いる命名法および実験手順は、当業者によく知られ、かつ、普通に採用されているものである。とくに断りなければ、ここで用いる技術的および科学的用語は、本発明が関する分野の当業者に普通に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の範囲および目的から逸脱することなく、ここに記載されるものと同様または同等のいかなる方法および物質を本発明の実施または試験に用い得るが、好ましい方法および物質を記載する。
【0021】
本発明の細胞分化療法は、ある部分、限定されないが、LNCaP、PC3およびDU145を含む様々な前立腺ガン細胞系統のPDFの分化的産生、分泌およびプロセシングの発見に基礎をおく。本発明の細胞分化療法は、ある部分、サイトケラチン発現パターンおよびアンドロゲン依存前立腺特異抗体(PSA)産生によって評価された前立腺上皮分化のプロタンパク質転換酵素依存変化の発見にも基礎をおく。
【0022】
ここで用いるとき、「前立腺由来因子(prostate-derived factor)」または「PDF」[V.M. Pralkar et al., J. Biol. Chem. 273:13760-13767 (1998)]はPDFの全ての種および同族体をいい、PLAB[R. Hromas et al., Biochem. Biophys. Acta. 1254:40-44 (1997)]、PTGF−β[M. Yokoyama-Kobayashi et al., J. Biochem. 122:622-626 (1997)]、MIC−1[M.R. Bootcov et al., Proc. Nat'l Acad. Sci, USA 94:11541-11519 (1997)]、およびGDF−15(GDF−15)[M. Bottner et al., Gene237:105-111 (1999)]、ならびに組換えPDFタンパク質およびPDF、PLAB、PTGF−β、MIC−1およびGDF−15の機能的誘導体を含む。
【0023】
ここで交換可能に用いられるとき、「前立腺由来因子前駆体 (prostate-derived factor precursor)」、「PDF前駆体(PDF precursor)」、「PDFの前駆体(precursor of PDF)」および「プロPDF(pro-PDF)」は、不活性PDFプロタンパク質をいい、それは分泌された比較的大きな未成熟形態のPDFであって、それは、まず、プロタンパク質転換酵素によってタンパク質分解的にプロセシングして成熟した生物学的に活性なPDFにしなければならない
【0024】
ここで交換可能に用いられるとき、「プロタンパク質転換酵素(proprotein convertases)」および「PC(PCs)」は、限定されないが、フリン、PC1/3、PC2、PACE4、PC4、PC5/6、BMP1およびPC7/8、ならびにそれらの機能的誘導体および同族体、およびほ乳類においてPDFを調節するように働く組換えPCを含む。
【0025】
ここで用いるとき、「組換えPDFタンパク質(recombinant PDF protein)」は、組換え核酸技術の使用により得られるタンパク質である。そのような組換えタンパク質の主な構造は、その天然に産出する対応PDFのものと同一であるか、または単一または複数の突然変異を含むさらなるまたは異なるアミノ酸残基を含有することができる。
【0026】
ここで用いるとき、「組換えPC(recombinant PC)」は組換え核酸技術の使用により得られるプロタンパク質転換酵素である。そのような組換えプロタンパク質転換酵素の主たる構造は、その天然に産出するプロタンパク質転換酵素対応物のものと同一であるか、または単一または複数の突然変異を含むさらなるまたは異なるアミノ酸残基を含有することができる。
【0027】
ここで用いるとき、PDF、PLAB、PTGF−β、MIC−1、GDF−15の「機能的誘導体(functional derivative)」であるタンパク質は、PDFに対する構造的および機能的類似性を有するタンパク質である。構造的に類似するタンパク質は、例えば、細胞分化を促進する機能を実質的に減じないアミノ酸欠損、挿入または保存的置換によってPDFとは異なるタンパク質を含む。
【0028】
ここで用いるとき、PCの「機能的誘導体(functional derivative)」であるプロタンパク質転換酵素は、PCに対して構造的および機能的類似性を有するプロタンパク質転換酵素である。構造的に類似するプロタンパク質転換酵素は、例えば、PDF発現および/または細胞分化を促進する機能を実質的に減じないアミノ酸欠損、挿入または保存的置換によってPCとは異なるプロタンパク質転換酵素である。
【0029】
ここで用いるとき、「医薬上許容される担体(pharmaceutically-acceptable carriers)」は、リン酸バッファーまたは生理食塩水のように当業者によく知られている。そのような医薬上許容される担体は水性または非水性溶液、懸濁液および乳化液である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびオレイン酸エチルのごとき注射用有機エステルである。水性担体は、水、アルコール/水溶液、乳化液または懸濁液を含み、生理食塩水およびバッファー化媒体を含む。非経口賦形剤は塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース等を含む。例えば、抗生剤、抗酸化剤、キレート化剤、不活性ガス等のごとき保存剤その他の添加物を存在させてもよい。
【0030】
ここで用いるとき、「対象(subject)」は、前立腺ガンを発生するか被ることが可能ないかなる動物または人工修飾動物を意味する。人工修飾動物は、限定されないが、マウス、ラット、イヌ、モルモット、フェレット、ウサギ、および霊長類を含む。好ましい具体例において、対象はヒトである。
【0031】
ここで用いるとき、「投与する(administering)」ことは、当業者に知られている様々な方法のいずれかによって行いまたは実行することができる。投与することは静脈内、筋肉内および皮下投与を含む。
【0032】
ここで用いるとき、「治療上有効量(therapeutically-effective dose)」は、罹患した対象の前立腺ガン細胞の増殖を選択的に阻害する用量である。投与レベルは疾患または状況の本質、患者の状態、担当医の判断、および投与の頻度および態様に高度に依存する。
【0033】
ここで用いるとき、「細胞分化(cell differentiation)」は、細胞が成熟して、成熟した成体形態および機能を獲得するプロセスの全体を意味し、例えば、基底上皮細胞の管内分泌細胞への分化である。
【0034】
ここで用いるとき、「治療する(treating)」または「治療すること(to treat)」なる用語は、一時的にもしくは恒久的にかのいずれかで症状を軽減し、原因を除去すること、または症状の発現を予防することもしくは遅延させることを意味する。「治療(treatment)」なる用語は、前立腺ガンの軽減、原因の排除または予防を含む。
【0035】
PDFに関してここで用いるとき、「生物学的活性(biological activity)」なる用語は、プロPDFおよびPDFのイン・ビボでの生化学的挙動をいい、それによってPDFが最終的にその効果を体組織に対して有効にする。「生物学的活性(biological activity)」は、プロPDFの合成、プロPDFの分泌およびプロタンパク質転換酵素による成熟活性PDF形態へのプロPDFのプロセシングを包含する意図である。
【0036】
PDFの生物学的活性に関してここで用いるとき、「増大させる(increase)」および「増大させる(increasing)」なる用語は、実施例に記載するように、ガン性前立腺組織に観察されるPDFの生物学的活性のダウンレギュレーションを促進し、または、少なくとも部分的に復活させることをいう。
【0037】
前立腺ガンに関してここで用いるとき、「早期(early stage)」なる用語は、前立腺内の腫瘍負荷の観点で限定された発現を示す前立腺ガンであり、腫瘍体積は触診直腸検査(DRE)では検出されないが、ガン性前立腺組織は前立腺特異抗原(PSA)のごときバイオマーカーの測定のような微視的証拠によって検出可能である。PSA倍加時間(PSADT)およびPSA速度の増加(PSA速度、またはPSAV)などの方法が当該分野で知られており、DREで体積が検出可能になる前に前立腺ガンを検出するために用いられる。
【0038】
代表的な具体例において、その必要のある対象の前立腺ガンを治療する方法は、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することによって、前立腺上皮細胞分化を促進することを含む。例えば、その剤は、治療上有効量の活性PDFである。あるいは、その剤は、ある量のPDF前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素であって、ある量のPDF前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。あるいは、その剤は治療上有効量のプロタンパク質転換酵素である。これらの剤のいずれも、医薬上許容される担体とともにその剤を含有する医薬組成物の形態で投与することができる。
【0039】
投与する剤の選択は、ある部分、対象の前立腺組織におけるPDF活性のダウンレギュレーションに寄与する因子の評価に依存する。ダウンレギュレーションは、細胞中のPDF受容体発現のダウンレギュレーションに起因するか、プロPDFの合成および分泌のダウンレギュレーションに起因するか、成熟した活性PDF形態へのプロPDFのプロセシングのダウンレギュレーションに起因するか、またはこれらの因子の全てのいくつかの組合せに起因するであろう。これらの可能性を区別するため、前立腺組織の試料を採取し、組織試料中のガン性細胞の特性を調べて、まず、細胞がPDFの受容体を有するかどうか決定して、細胞が外因性PDF療法に反応することを示す。それらの細胞の特性をさらに調べて細胞がPDFの前駆体を合成し分泌するかどうかを決定し、特性を調べて活性PDFを産生するためのPDFの前駆体を有するかどうかを決定する。細胞がPDFの前駆体を合成も分泌もしなければ、ひとつの具体例において、治療上有効量の成熟した活性PDFを対象に投与する。あるいは、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒に対象に投与する。細胞がプロPDFを合成し分泌するが、成熟した活性PDFへプロPDFをプロセシングしなければ、ひとつの具体例において、治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を対象に投与して、対象のプロPDFをプロセシングし得るようにする。
【0040】
本発明は、単一剤形で、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒に投与することを含むことを意図し、また、第1の剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体を投与し、次いで、第1の剤形とは別の第2の剤形で医薬上許容される担体中のある量のプロタンパク質転換酵素を投与すること含むことも意図する。
【0041】
もうひとつの具体例において、その必要のある対象の前立腺ガンの発現を予防する方法は、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤を、前立腺ガンの早期に、その対象に投与することによって前立腺細胞分化を促進させることを含む。その剤は、治療上有効量の活性PDF、治療上有効量のプロタンパク質転換酵素、または、ある量のプロPDFおよびある量のプロタンパク質転換酵素であって、ある量のプロPDFおよびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。このプロPDFおよびプロタンパク質転換酵素は、医薬上許容される担体中の単一剤形で一緒に投与し得、または、第1の剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFを投与し、第2の剤形で医薬上許容されるある量のプロタンパク質転換酵素を投与し得る。
【0042】
PDF、プロPDFまたはプロタンパク質転換酵素を単独でまたは組み合わせて、医薬上許容される担体と共に提供するとき、前立腺ガンの治療用の新規組成物となる。動物対象の治療の使用のため、本発明の組成物を医薬組成物または獣医学的組成物として調剤し得る。治療する対象、投与の態様および所望する治療のタイプ、例えば、予防、防止、治療に依存して;これらのパラメータにふさわしいように調剤する。そのような技術の要約は、例えば、[Remington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, Mack Publishing Co., Easton PA]に見られる。例えば、所望の治療効果を達成するようなPDFの量、またはプロPDFとプロタンパク質転換酵素の総量は、特定の個別化合物または選ばれた化合物を含む因子数、特定の使用、投与経路、対象の臨床学的状態、対象の年齢、体重、性別および規定食に依存することを理解すべきである。
【0043】
前立腺ガン治療用の新規化合物は、例えば、ある量の活性PDFを医薬上許容される担体中に含む組成物を含む。代替的な具体例において、前立腺ガン治療用の組成物は、ある量のPDFの不活性な前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を医薬上許容される担体中に含み、ある量のPDFの不活性な前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は治療上有効量の活性PDFを与えるのに十分である。ある量のPDFの不活性な前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を医薬上許容される担体中で一緒に組み合わせることができ、または、2つの個別注射液または2つの個別の錠剤もしくはカプセル剤のごとき2つの個別剤形に調剤することができる。あるいは、前立腺ガン治療用の組成物はある量のプロタンパク質転換酵素および医薬上許容される担体を含む。
【0044】
本発明の組成物の投与は、投与の頻度、用量、持続態様および経路を含む投与の様々なパラメータを修正することによって、薬理動態学的または薬力学的に制御することができる。必要な活性が生じるように投与の用量、持続時間および態様を変更する。
【0045】
プロタンパク質転換酵素と組み合わせたプロPDFの使用を規定すると、本発明の方法は、組合せの有益な効果を奏する投薬計画において連続的に各剤を投与すること、および、これらの有効成分を固定比率で含む単一のカプセルもしくは投与装置で、または、同時期に一緒に摂取し得るか、当該組合せを構成する剤の双方からの有利な効果を受容するのに十分な時間内に摂取し得るような各剤用の複数の個別カプセルもしくは個別投与装置でのごとく、実質的に同時にこれらの剤を共投与することを含むことを意図する。
【0046】
医薬上許容される担体は、限定されないが、生理食塩水、リンガー液、リン酸の溶液またはバッファー、バッファー化食塩水その他当該分野で知られている担体を含む。医薬組成物は安定化剤、抗酸化剤、着色剤、および希釈剤を含むこともできる。医薬上許容される担体および添加物は、その医薬組成物からの副作用が最小限になるように、かつ、治療を無効にする程度にまでその組成物の性能を相殺し阻害しないように選択される。
【0047】
医薬組成物は経小腸および非経口投与することができる。非経口投与は、注入その他の当該分野で知られている投与方法による、皮下、筋肉内、胸骨内、皮内、乳房内、血管内投与を含む。経小腸投与は、水剤、錠剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、およびシロップ剤を含む。投与の際、医薬組成物を体温近くにすることができる。
【0048】
当該組合せは滅菌注射液または油性懸濁液の形態で投与し得る。そのような懸濁液は、上記の湿潤剤および懸濁化剤または他の許容される剤の分散に適したものを用いる公知技術に準じて調剤することができる。滅菌注射用調剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒で非経口的に許容される希釈剤または溶剤中の滅菌注射液または懸濁液であってよい。許容される賦形剤および溶剤のなかでも、水、リンガー液、および等張化塩化ナトリウム溶液を採用することができる。さらに、滅菌キャリアオイルが、溶剤または懸濁媒体として従来から採用されている。この目的のため、合成モノまたはジグリセリド類を含むいずれのブランドキャリアオイルを用いることもできる。さらに、n−3ポリ不飽和脂肪酸が注射製剤での使用が見出される。
【0049】
当該組合せは、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣錠、トローチ、薬用ドロップ、水性もしくは油性懸濁剤、分散可能な粉剤もしくは粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤またはエリキシル剤として経口投与し得る。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造技術分野で知られているいずれかの方法に準じて調剤することができ、そのような組成物は、医薬上洗練されたおいしい調剤を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤および防腐剤よりなる群から選択される1以上の剤を含有することができる。
【0050】
錠剤は、錠剤の製造に適した非毒で医薬上許容された補形剤と混合して有効成分を含有する。これらの補形剤は、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;粒状化または崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア、および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってよい。錠剤は、被覆しなくてもよいし、胃腸内での崩壊および吸着を遅らせ、それによって、長期にわたる持続作用を与えるために、公知技術によって被覆することもできる。例えば、モノステアリン酸グリセルまたはジステアリン酸グリセリルのごとき時間遅延物質を用いることができる。
【0051】
硬ゼラチンカプセル剤は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合して有効成分を含有し、軟ゼラチンカプセル剤としては、有効成分はそのように、または水、または油性媒体、例えば、ピーナツ油、液状パラフィンまたはオリーブ油と混合して存在させる。
【0052】
水性懸濁剤の製造に適した補形剤と混合して活性物質を含有する水性懸濁剤を製造し得る。そのような補形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムであり;分散化剤または湿潤剤は天然に産出するリン脂質、例えば、レシチン、または脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合生成物、例えばポリエチレンステアリン酸エステル、または、長鎖ポリオキシエチレンステアリン酸エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分的エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸エステル、または、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分的エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルであってよい。水性懸濁剤は、1以上の保存剤、例えば、エチルもしくはn−プロピルのp−ヒドロキシ安息香酸エステル、1以上の着色剤、1以上の香味剤、またはスクロースもしくはサッカリンのごとき1以上の甘味剤も含有することができる。
【0053】
油性懸濁剤は、有効成分をオメガ−3脂肪酸、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油中に、または、液状パラフィンのごとき鉱物油中に有効成分を懸濁させることによって調剤することができる。これらの油性懸濁剤は粘稠化剤例えば、蜂ロウ、硬パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。
【0054】
上記のごとき甘味剤および香味剤を添加して口あたりのよい経口製剤にすることができる。これらの組成物をアスコルビン酸のごとき硬酸化剤の添加により保存することができる。
【0055】
水性懸濁剤を調剤するのに適した分散可能な粉剤および粒剤は、水の添加によって分散化剤または湿潤剤、懸濁化剤および1以上の保存剤と混合された有効成分を与える。適当な分散化剤または湿潤剤はすでに上記したもので代表される。さらなる補形剤、例えば、甘味剤、香味時遭および着色剤も入れることができる。
【0056】
新規の組合せを含有するシロップ剤およびエリキシル剤は甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロースとともに調剤することができる。そのような製剤は粘滑剤、保存剤ならびに香味および甘味剤も含有することができる。
【0057】
本発明の第1の具体例において、未分化前立腺ガン細胞を対象から採取し、特性を調査して、それらの細胞がPDFの受容体を有しているかどうか決定する。そうであれば、対象に活性形態のPDFを投与してガン細胞中の分化を促進し得る。
【0058】
あるいは、PDF前駆体を対象に投与した後、プロPDFをPDFにプロセシングし、それによって、細胞分化を促進するPCを投与することができる。しかしながら、PDFの受容体を持たない細胞は、そのような治療に応答しないであろう。現在、この具体例は、2つのタンパク質の対象への投与としてはあまり好まれず、免疫応答のリスクを増大し、対象にとって不便である。
【0059】
もうひとつの代替的な具体例において、PDF前駆体は、組換えPCとの独自の相互作用を与えて、活性PDFまたはその機能的同族体を産生するように加工された組換えポリペプチドであってよい。そのような組換えPDF前駆体およびPCは、天然または突然変異1級アミノ酸配列を含むことができ、その中では遺伝子および/またはタンパク質が天然では見出されない細胞以外の細胞中での組換えDNA分子によってもたらされた遺伝子の発現によってそれらは得られる。言い換えれば、その遺伝子は、その中でそれが発現される宿主および/またはそこにそれが投与される対象とは異種のものである。当該遺伝子に対するアフィニティー精製部位をコードするポリヌクレオチドの付加を含む、遺伝子のいずれの改変もその遺伝子をこの目的のためには非天然にすること、かくして、いかなる細胞にも天然にその遺伝子は見いだせないことを特記する。
【0060】
そのような組換えタンパク質をコードするための組換えDNA分子は、その製造方法またはその構造のいずれかによって規定される。その製造方法への言及、例えば、ある製造方法によって作製された物において、プロセスは組換え核酸技術の使用であり、例えば、ヌクレオチド配列への人の介入、典型的には選別または製造に関与する。あるいは、天然では互いに隣接しない2つの断片の融合を含む配列を創製することによって作られた核酸であり得るが、天然の産物、例えば、天然に産出する突然変異体を排除する意味ではない。かくして、例えば、天然に産出しないベクターで細胞を形質転換することによって作られた産物が含まれ、いずれかの合成オリゴヌクレオチドプロセスを用いて誘導された配列を含む核酸である。そのようなことをしばしば行って、同一または保存的アミノ酸をコードするコドンとアルコドンとを置換する一方、配列認識部位を導入したり除去したりする。あるいは、所望する機能の核酸セグメントを一緒にして、普通に入手可能な天然形態には見出されない所望する機能の組合せを含む単一の遺伝子全体を創製する。制限酵素認識部位は、しばしば、そのような人為操作の標的であるが、他の部位特異的標的、例えば、プロモーター、DNA複製部位、調節配列、制御配列または他の有用な特徴を設計により取り込むことができる。
【0061】
そのような組換えPDF前駆体は、組換えPCとのみ相互作用するように加工することができる。かくして、さもなければ、非組み換えPCの投与に起因するかもしれない他のTGF−βメンバーのプロセシングを増大することを回避しつつ、PDF産生の増大を達成することができる。さらに、そのような組換えタンパク質は、副作用を引き起こすかもしれないTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーのプロセシングを回避する助けとなり得る。
【0062】
組換えPCの使用によって、特定の標的天然プロPDFに付与することができる同様の利点を達成することができる。例えば、有効な組換えPCは天然PCのプロPDF結合部位またはPCのフランキング配列の操作から生じ、かくして非PDFプロタンパク質に結合し、それをプロセシングするPCの能力に悪影響を及ぼす。そのような組換えPCは単独で、組換えプロPDFおよび組換えPCの組合せについて上記したものと同様の利点を生じる。
【0063】
第2の具体例として、対象のガン細胞の特性を調べて、細胞がPDFを分泌できるがそれをプロセシングするかまたはそれを十分にプロセシングする能力を有しないかどうかを決定する。そうであれば、対象に、活性形態のPDFを投与するか、または、PDF前駆体に引き続き治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を与えて、細胞分化を促進することができる。
【0064】
第3の具体例において、PDFを分泌する能力およびプロセシングする能力の双方を持つガン細胞を有する対象に、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPCを投与する。プロタンパク質転換酵素はPDFのプロセシングを支援し、それにより、細分化を促進する。
【0065】
本発明の細胞分化療法は、PDFがLNCaPおよびPC3前立腺ガン細胞系統の双方でプロPDF形態として合成されるという発見に支持される。PDFはLNCaP中でプロタンパク質転換酵素(PC)によって活性化されるが、PC3細胞中では活性化されない。LNCaPおよびPC3細胞の細胞表現型の差異は、ある部分、PC3細胞内のTFG−βスーパーファミリーのメンバーの不完全成熟によるのであろう。LNCaPおよびPC3を含む前立腺ガン細胞は、骨芽細胞性骨形成を刺激し、骨芽細胞転移を引き起こす様々なBMPを産生することが示されている[T. Yoneda, Cellular and molecular mechanisms of breast and prostate cancer metastasis to bone, Eur. J. Cancer 34:240-245 (1998)]。同様に、LNCaPおよびPC3細胞中での様々なBMPのmRNA発現が報告されている。イン・ビボで、LNCaP腫瘍は骨芽細胞応答を刺激し、一方、PC3細胞は広範囲にわたる骨崩壊および骨分解応答を生じる[D.H. Shevrin et al., Development of skeletal metastasis by human prostate cancer in athymic nude mice, Clin. Exp. Metastasis 6:401-409 (1988); G. Soos et al., Comparative intraosseal growth of human prostate cancer cell lines LNCap and PC3 in nude mice, Anticancer Res. 17:4253-4258 (1997)]。PCによるPDF含有TGF−βの活性における差異がこれらの応答に寄与しているのであろう。
【0066】
本発明は、さらに、フリンのごときPCがヒト前立腺ガン細胞系統間で異なる活性を発揮するという発見よって支持される。特に、PCの活性レベルは、DU145細胞やPC3細胞と比較してLNCaP細胞中で著しく高い。合成プロテアーゼ阻害剤であるデカノイル−Arg−Val−Lys−Arg−クロロメチルケトン(CMK)での細胞処理は、全ての細胞系統中でPC活性を阻害する。かくして、本発明の療法によれば、LNCaP細胞中のPC活性はPDFプロセシングを生じる。PC3細胞は低活性のPCを有するが、PDFプロセシング活性は検出できず、それにより、PDFへの特異的PC活性がPC3細胞では欠如していることが示唆される。
【0067】
CMKによるPDFプロセシングの阻害は、前立腺ガンにおける管内および基底前立腺上皮細胞分化マーカーの調節に変化を生じる。LNCaP細胞へのCMKの添加は、サイトケラチン8、18および19のダウンレギュレーションおよびサイトケラチン14のアップレギュレーションをもたらし、それによって、分化細胞の特徴の喪失を示す。近年、TGF−βは、ラットの正常前立腺細胞系統において、管内サイトケラチン遺伝子発現のアップレギュレーションおよび基底サイトケラチン遺伝子発現のダウンレギュレーションを誘発することが実証された[D. Danielpour, Transdifferentiation of NRP-152 rat prostatic basal epithelial cells toward a luminal phenotype: regulation by glucocorticoid, insulin-like growth factor-1 and transforming growth factor-beta, J. Cell. Sci. 112:69-179 (1999)]。同様に、本発明において、PC活性の阻害は、PDFを含むTGF−βのプロセシングを低下させ、分化細胞表現型の喪失をもたらす。しかしながら、CMK処理はDU145およびPC3細胞においてサイトケラチンの発現に影響を及ぼさない。これはPCの活性が低いことか特定のPCがないことによるのであろう。
【0068】
さらに、CMKはジヒドロテストステロン誘発PSA発現を阻害する。PDAは十分に分化した前立腺上皮細胞中で発現し、アンドロゲンによって調節される[S.W. Hayward et al., The prostate: development and physiology, Radiol. Clin. North America 38:1-14 (2000)]。アンドロゲン受容体とsmad3とが共同して、PSA遺伝子発現を誘発することが示された[H.Y. Kang et al., From transforming growth factor-β signaling to androgen action: identification of smad3 as an androgen receptor coregulator in prostate cancer cells, Proc Nat'l Acad. Sci. USA (2001)]。本発明はこれらの観察と一致する。かくして、TGF−βスーパーファミリータンパク質のプロセシング阻害はアンドロゲン誘発PSA発現の低減を生じるのであろう。
【0069】
さらなる労力なく、当業者は前記説明を用いて本発明をその完全なる程度まで利用し得ることが確信される。しかしながら、下記の実施例を参照することによって、本発明はより理解されるであろう。詳細な実験は、本発明の単なる例示であって本発明の開示または範囲の残りを制限するものでは全くないと理解されるべきである。
【実施例】
【0070】
原料および方法
CMKはCalbiochem (San Diego, CA)から入手し、ジヒドロテストステロン(DHT)はSigma (St. Louis, MO)から入手した。抗プロPDF抗体、抗サイトケラチン8、18、19抗体、および前立腺特異抗原抗体はSanta Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から購入した。サイトケラチン14および15はChemicon (Temecula, CA)から購入した。N−t−ブトキシカルボニル−Arg−Val−Arg−Arg−7−アミノ−4−メチルクマリン(Boc−RVRR−AMC)はBachem Bioscience (King of Prussia, PA)から入手した。成熟PDFに対する抗血清は、Tan[M. Tan et al., PTGF-β, a type transforming growth factor (TGF-β) superfamily member, is a p53 target gene that inhibit tumor cell growth via TGF-β signaling pathway, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 97:109-114 (2000)]に記載されたように、PDFのC末端に位置する20−aaペプチド配列(CQKTDTGVSLQTYDDLLAKD)をウサギに注射することによって作製した。LNCaP、DU145およびPC3細胞系統はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Rockville, MD)から入手した。RPMI1640はCellgro Mediatech (Herndon, VA)から、胎性ウシ血清はAtlas Biologicals (Fort Collins, CO)から購入した。
【0071】
細胞培養
ヒト前立腺ガン細胞は、10%胎性ウシ血清を補充したRPMI1640中で増殖し、37℃にて95%空気および5%COの湿潤雰囲気下に維持して培養した。
【0072】
逆方向転写PCR分析
全RNAは、RNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、業者の指示に準じて、様々な細胞系統から調製した。cDNAは、Superscript(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて調製した。各cDNA反応の効率は、β−アクチン用プライマー(Promega, Madison, WI)でのβ−アクチン転写物の増幅によって評価した。PDF遺伝子を増幅するのに用いたプライマーは、センス:5’−CATTCAAAAGACCGACACC、アンチセンス:AGGTGCACAGTGGAAGGA−3’であった。PDFのPCR条件は次のようである:94℃にて3分間を1サイクル;95℃にて15秒間、54℃にて30秒間、72℃にて1分間を30サイクル。このPCR反応は2.0mMのMGClおよび2.5単位のPLATINUM Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む50μLの体積を用いた。DNA不純物を調べるために、PCR前に逆方向転写酵素を添加しない対象実験を行った。増幅生成物(10μL)を8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。
【0073】
ウェスターンブロット分析
細胞(約1×10細胞)を100mmの細胞培養皿に播種し、10%胎性ウシ血清で補充したRPMI1640中、5%COにて培養した。低融合細胞をリン酸バッファー化生理食塩水(PBS)で洗浄し、溶解バッファー(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)中で溶解して、細胞ライゼートに用いた。調整培地中のPDFの検出のため、低融合細胞を24時間血清欠乏状態にした。その無血清培地を収集し、10%トリクロロ酢酸で沈殿させた。遠心後、8M尿素、50mM Tris(pH8.0)および0.1%NP−40からなるバッファーにペレットを溶解させた。試料を2%ベータ−メルカプトメタノール入りの5×Laemmli試料バッファーと混合し、15%SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動に付し、PVDF膜に移した。膜を、0.1%Tween20および5%脱脂粉乳を含有するPBSで室温にて1時間ブロックし、適当な一次抗体および抗血清(1:500〜2000)とともに4℃にて一晩インキュベートした。0.1%Tween20を含有するPBSで、これらの膜を3回洗浄した後、これらの膜を適当なワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(1:2000)とともに4℃にて1時間インキュベートした。タンパク質バンドは、SuperSignal West Pico ECLキット(PIERCE, Rockford, IL)を用いるケミルミネッセンスによって可視化した。この手順をPDF、サイトケラチンおよびPSAの検出に用いた。
【0074】
プロタンパク質転換酵素の活性アッセイ
細胞PC活性の決定のため、30,000個の細胞を48ウェルプレートに24時間播種した。翌日、最終濃度が1000μMに達するまで、増殖培地およびCMKを添加した。24時間のインキュベーション後、培地を交換し、細胞をPBSで洗浄した。細胞数を決定するために、さらなる48ウェルプレートを同様に調製し、それを正規化に用いた。浸透化のため0.25%TritonX−100入りのRPMI1640および蛍光基質としてRVRR−amc(100μM)からなる150μLのアッセイ培地を各ウェルに添加した。基質添加の4時間後、360nm励起波長および460nm発光波長で蛍光測定した。データを細胞数に対して正規化した。陽性対象として、ヒト組換えフリン(Sigma, St. Louis, MO)を用いた。
【0075】
統計的解析
データは、2ないし6回の独立した試験の各々において3つの培養ウェルの平均±SDで示している。統計的解析はスチューデントのtテストを用いて行った。P値<0.05が有意であるとした。
【0076】
結果
細胞内および分泌されたPDFは、アンドロゲン依存性(LNCaP)およびアンドロゲン非依存性(PC3およびDU145)の異なる細胞系統中で調べられた。異なる前立腺ガン細胞培養物から単離された全細胞内RNAをRT−PCRに付す。図1Aに示すように、PDF特異的プライマーは、100bpフラグメントを産生した。さらに、PDFmRNA発現は、LNCaP細胞およびPC3細胞中で検出されたが、DU145細胞中では検出されなかった。PDFタンパク質の存在をさらに図1Bに示すように免疫ブロット分析によって確認した。プロPDFは、プロPDFは認識するが成熟PDFは認識しない抗プロPDF抗体(〜40kdプロPDF形態)によってLNCaPおよびPC3細胞系統中で検出された。しかしながら、抗成熟PDF抗血清(〜17kd成熟PDF形態)は全細胞系統由来の細胞ライゼート中で成熟PDFを検出できなかった。プロPDFではなく成熟PDFがLNCaP調整培地中で検出されたが、プロPDFだけはPC調整培地中で検出されなかった。これらの結果は、成熟PDFは、DU145やPC3の細胞にはよらず、LNCaP細胞によってのみ分泌されプロセシングされることを示す。プロPDFはプロセシングなしにPC3によって分泌されるということは、これらの細胞がPCを欠如しているのであろうと示唆する。DU145細胞はPDFを全く発現しなかった。
【0077】
次に、前立腺ガン細胞におけるPC活性およびCMKによるPC活性の阻害を調べた。LNCaP、PC3およびDU145細胞を100μMのCMKの存在下または不存在下で24時間インキュベートした。その後、100μMの蛍光基質boc−RVRR−amcを添加し、細胞をさらに4時間インキュベートした。PC活性は、蛍光基質の切断を測定することによってアッセイした。図2に示した結果は、PC3およびDU145の細胞中よりもLNCaP中で有意に高いPC活性および24時間のCMKによるPC阻害を示す。
【0078】
LNCaP細胞中のPC依存性PDFプロセシングも、CMKの存在下PDFについて免疫ブロットすることによって調べた。細胞を培養し、CMK無しおよび様々な濃度のCMK有りで24時間血清欠乏状態にした。細胞および上清を15%SDS−PAGE上で電気泳動に付した。免疫ブロットを抗プロPDF抗体(〜40kdプロPDF形態)および抗PDF抗血清(〜17kd成熟PDF形態)で行った。図3に示すように、CMKでの処理は、LNCaP調整培地中でのPDFプロセシングの用量依存性様式の低減と同時にプロPDFの増加を生じた。CMKは細胞内PDFに影響を及ぼさなかった。
【0079】
前立腺において、管内上皮細胞は基底上皮細胞から分化する。細胞型は管内上皮細胞においてサイトケラチン8および18、基底上皮細胞においてサイトケラチン5、15および14の発現によって識別される[Y. Xue et al., Identification of intermediate cell types by keratin expression in the developing human prostate, Prostate 34:292-301 (1998)]。サイトケラチン19は、前立腺細胞の分化プロセスの中間段階のマーカーであることが示唆されている[D.L. Hudson et al., Epithelial cell differentiation pathway in the human prostate: identification of intermediate phenotype by keratin expression. J. Histochem. Cytochem. 49:271-278 (2001)]。最近のデータは、NRP−152ラット前立腺基底上皮細胞において、TGF−βが管内サイトケラチン遺伝子発現のアップレギュレーションおよび基底サイトケラチン遺伝子発現のダウンレギュレーションを誘発することを示した[D. Danielpour, Transdifferentiation of NRP-152 rat prostatic basal epithelial cells toward a luminal phenotype: regulation by glucocorticoid, insulin-like growth factor-1 and transforming growth factor-beta. J. Cell. Sci. 112:169-179 (1999)]。
【0080】
CMKが、PDFを含むTGF−βスーパーファミリープロセシングの不活性化の結果として、LNCaP細胞の分化表現型を調節するかどうかを調べるため、無血清RPMI1640の存在下、前立腺ガン細胞系統を様々な濃度のCMKで処理した。培養培地およびCMKを24時間ごとに交換した。細胞を72時間処理し、溶解し、15%SDS−PAGE上で電気泳動に付した。免疫ブロットを抗サイトケラチン8(〜52kd)、14(〜52kd)、18(〜45kd)および19(〜44kd)抗体を用いて行った。サイトケラチン8および18は管内上皮細胞表現型を代表し、サイトケラチン19および14は、それぞれ、中間分化および基底上皮細胞表現型を代表する。図4に示されるように、CMKは、LNCaP細胞中ではサイトケラチン8、18および19の発現をダウンレギュレーションするが、DU145およびPC3の細胞中ではダウンレギュレーションしない。サイトケラチン14は、LNCaP中、用量依存性様式でアップレギュレーションされるが、DU145およびPC3の細胞中では検出されなかった。
【0081】
PSAは患者の前立腺ガンに対して広く用いられ、かつ、重要な血清学的マーカーである。通常、PSA発現は十分に分化した前立腺上皮細胞においてアンドロゲンによって調節される[S.W. Hayward et al., The prostate: development and physiology, Radiol. Clin. N. America 38:1-14 (2000)]。前立腺ガン患者における血漿TGF−βレベルの増大は上昇したPSAレベルと相関する[H.L. Adler et al., Elevated levels of circulating interleukin-6 and transforming growth factor-β1 in patients with matastatic prostatic carcinoma, J. Urol. 161:182-187 (1999)]。アンドロゲン受容体の強力によるPSA遺伝子発現の調節における、TGF−βの細胞内シグナリングメディエーターであるsmad3の役割が、LNCaP細胞中で報告されている[H.Y. Kang et al., From transforming growth factor- signaling to androgen action; identification of smad3 as an androgen receptor coregulator in prostate cancer cells, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 98:3018-3023 (2001)]。したがって、アンドロゲン誘発PSA発現へのCMKの効果を調査することが、前立腺腫瘍発生におけるPDFを含むTGF−βスーパーファミリーの作用メカニズムを理解するために重要であった。DHTの存在下および不存在下、LNCaP細胞を24時間様々な濃度のCMKで処理した。細胞ライゼートを15%SDS−PAGE上で電気泳動に付し、次いで、抗PSA抗体(〜37kd)で免疫ブロットを行った。図4に示すように、アンドロゲン誘発PSA発現はCMKの添加によって阻害され、一方、DHT不存在下での内在PSAのレベルは影響を受けなかった。PSAはPC3およびDU145の細胞中で発現されないので、これらの実験はこれらの細胞型では実行しなかった。
【0082】
上記の詳細な説明は、当業者が本発明を実施する助けとするためにある。そうであっても、本明細書で議論された具体例における修正や変更は、本発明の発見の精神または範囲を逸脱することなく当業者によってなし得るのであり、この詳細な説明が本発明を過度に制限するものと理解されるべきではない。
【0083】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許、特許出願その他の参考文献は、出典明示して、あたかも、個々の刊行物、特許、特許出願そのたの参考文献の各々がその完全なるまで具体的かつ個別的に本明細書に示されているとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】前立腺由来因子mRNA発現のRT−PCR分析(A);様々なヒト前立腺ガン細胞による分化PDF合成および分泌を実証する、抗プロPDF抗体および抗PDF抗血清での免疫ブロット(B)。
【図2】ヒト前立腺ガン細胞系統における蛍光基質boc−RVRR−amcの分解および100μM CMKの効果を測定して決定されたPC活性のアッセイ。
【図3】LNCaP細胞においてCMKによるPDRプロセシング阻害を実証する、抗プロPDF抗体および抗PDF抗血清での免疫ブロット。
【図4】前立腺上皮細胞分化マーカーへのCMKの効果を実証する、抗サイトケラチン8、14、18および19抗体での免疫ブロット。
【図5】LNCaP細胞においてDHT−刺激PSA発現へのCMKの効果を実証する、抗PDA抗体での免疫ブロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要のある対象における前立腺ガンを治療する方法であって、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することによって、対象中で前立腺上皮細胞分化を促進することを含む方法。
【請求項2】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、治療上有効量のPDFをその対象に投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPDFを投与することを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素をその対象に投与することを含み、ここに、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量のPDFを与えるのに十分である請求項1記載の方法。
【請求項5】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、単一剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒に投与することを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、第1の剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体を投与し、次いで、第1の剤形とは別個の第2の剤形で医薬上許容される担体中のある量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、治療上有効量のプロタンパク質転換酵素をその対象に投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
その必要のある対象における前立腺ガンを治療する方法であって、
その対象から前立腺組織の試料を採取し;
その組織試料中のガン性細胞の特性を調べて細胞がPDFの受容体を有するかどうか決定し;
細胞の特性を調べて細胞がPDFの前駆体を合成し分泌するかどうかを調べ;次いで、
細胞の特性を調べて細胞がPDFの前駆体をプロセシングして活性PDFを産生するかどうか決定することを含む方法。
【請求項10】
細胞がPDFの前駆体を合成も分泌もせず、治療上有効量のPDFをその対象に投与するステップをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
治療上有効量の活性PDFを投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPDFを投与することを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
細胞がPDFの前駆体を合成も分泌もせず、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒にその対象に投与するステップをさらに含み、ここに、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量のPDFを与えるのに十分である請求項9記載の方法。
【請求項13】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、単一剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒に投与することを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、第1の剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体を投与し、次いで、第1の剤形とは別個の第2の剤形で医薬上許容される担体中のある量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
細胞がPDFの前駆体を合成し分泌するがPDFの前駆体をプロセシングせず、治療上有効量のPDFをその対象に投与するステップをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項16】
治療上有効量のPDFを投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPDFを投与することを含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞がPDFの前駆体を合成し分泌するがPDFの前駆体をプロセシングせず、PDFの前駆体をプロセシングする治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を対象に投与するステップをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項18】
治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
その必要がある対象における前立腺ガンを治療する方法であって、前立腺ガンの早期に、対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することによって、対象中で前立腺細胞分化を促進することを含む方法。
【請求項20】
対象中でPDFの生物学的活性を増大する剤をその対象に投与することが、治療上有効量のPDFをその対象に投与することを含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療上有効量のPDFを投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPDFを投与することを含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒にその対象に投与することを含み、ここに、ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量のPDFを与えるのに十分である請求項19記載の方法。
【請求項23】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、単一剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を一緒に投与することを含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
ある量のPDFの前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、第1の剤形で医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体を投与し、次いで、第1の剤形とは別個の第2の剤形で医薬上許容される担体中のある量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項22記載の方法。
【請求項25】
対象中でPDFの生物学的活性を増大させる剤をその対象に投与することが、治療上有効量のプロタンパク質転換酵素をその対象に投与することを含む請求項19記載の方法。
【請求項26】
治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することが、医薬上許容される担体中の治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を投与することを含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
対象における前立腺ガンを治療または予防する組成物であって、医薬上許容される担体中の治療上有効量のPDFの前駆体を含む組成物。
【請求項28】
対象における前立腺ガンを治療または予防する組成物であって、医薬上許容される担体中のある量のPDFの不活性前駆体およびプロタンパク質転換酵素を含み、ここに、ある量のPDFの不活性前駆体およびある量のプロタンパク質転換酵素は一緒になって治療上有効量のPDFを与えるのに十分な組成物。
【請求項29】
単一剤形で、ある量のPDFの不活性前駆体、ある量のプロタンパク質転換酵素および医薬上許容される担体を含む請求項28記載の組成物。
【請求項30】
第1の剤形である量の医薬上許容される担体中のある量のPDFの前駆体および、第1の剤形とは別個の第2の剤形である量の医薬上許容される担体中のある量のプロタンパク質転換酵素を含む請求項28記載の組成物。
【請求項31】
対象における前立腺ガンを治療または予防する組成物であって、医薬上許容される担体中の治療上有効量のプロタンパク質転換酵素を含む組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−505617(P2006−505617A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551925(P2004−551925)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035637
【国際公開番号】WO2004/043385
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
フロッピー
【出願人】(300005677)バーンズ − ジューウィッシュ・ホスピタル (2)
【氏名又は名称原語表記】Barnes−Jewish Hospital
【Fターム(参考)】