説明

剥離シート、剥離シート付き偏光板、及び基材レス両面粘着シート

【課題】クロスニコル法による検査において精度の高い検査を実施でき、かつ剥離性能が良好な剥離シートを提供する。
【解決手段】剥離シート基材の上に剥離剤層が設けられてなる剥離シートであって、剥離シート基材は、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムである。剥離剤層は、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものである。剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シート、剥離シート付き偏光板、及び基材レス両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDは技術進歩が著しく大画面化されつつあり、それに伴いバックライトの輝度を上げた、いわゆる高輝度タイプのLCDが普及しつつある。このようなLCDでは、偏光板等のLCDを構成する各部材における異物や欠陥等(いわゆる、欠点)が微小であっても、ディスプレイ中に視認可能な輝点となって現われるので、欠点の検査精度を向上させることが重要となってきている。
【0003】
例えば、偏光板における欠点検査は、クロスニコル法による目視検査で行われるのが一般的である。クロスニコル法は、2枚の偏光板をその配向主軸が直交するように重ねて消光状態としたとき、欠点があればそこが輝点となって現れるので、それにより目視による欠点検査ができるというものである。
【0004】
偏光板は、粘着剤によって液晶セル等の他の部材に貼付されてLCDに組み入れられるものであるが、操作の簡便性等を目的として、偏光板の一面には予め剥離シート付きの粘着剤が貼合されているのが一般的である。このような偏光板は通常、剥離シートが貼付されたまま、クロスニコル法による目視検査が行われる。そのため、剥離シートの基材には、クロスニコル法による検査の障害とならないように、配向主軸の傾き(配向角)が小さいフィルムが使用されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来、偏光板用途で使用される剥離シートの剥離剤層は、基材の一方の面にシリコーン樹脂組成物が塗布、加熱硬化されて形成されることが知られている。上記シリコーン樹脂組成物の主剤には、例えば、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンが使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−172694号公報
【特許文献2】特開平7−101026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載されたシリコーン樹脂組成物を用いて剥離剤層を形成すると、剥離剤層の硬化性を良好にするために、硬化温度を高くしなければならないが、剥離シート基材はそのような高温加熱により、熱収縮して配向角の分布範囲(最大値と最小値の差)が変化してしまうことがある。したがって、剥離シート基材として配向角の分布範囲が小さいフィルムを用いても、剥離剤層形成後には剥離シート基材の配向角の分布範囲が大きくなって、剥離シート基材がクロスニコル法による検査の妨げとなり、検査精度を十分に向上させることができないという問題がある。一方、剥離シート基材の配向角変化を抑えるために、硬化時の加熱温度を低くすると、剥離剤層が十分に硬化されず、剥離剤層の剥離性能が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこれら問題点に鑑みてなされたものであり、偏光板に貼付されたときにクロスニコル法による検査において、精度の高い検査を実現でき、かつ剥離性能が良好な剥離シート、並びにその剥離シートが用いられた剥離シート付き偏光板及び基材レス両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る剥離シートは、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられた剥離シートであって、剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲(最大値と最小値の差)が5°以下であることを特徴とする。
【0009】
上記直線軸を上記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、上記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることが好ましい。
【0010】
MQレジンは、SiO単位、(CHSiO1/2単位、及びCH=CH(CH(CHSiO1/2単位(式中、zは0〜4の整数を示す)を有する構造のシリコーンレジンであることが好ましい。
【0011】
本発明に係る剥離シート付き偏光板は、偏光板、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に設けられた剥離シート付き偏光板であって、剥離シートは、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられて構成されると共に、剥離剤層が粘着剤層に剥離可能に仮着されており、剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、上記剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下であることを特徴とする。
【0012】
上記直線軸を上記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、上記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の両面に、軽剥離シート、重剥離シートそれぞれが積層される基材レス両面粘着シートであって、重剥離シートが、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられて構成されると共に、剥離剤層が粘着剤層に剥離可能に仮着されており、軽剥離シートの粘着剤層に対する剥離力が、重剥離シートの粘着剤層に対する剥離力より低く、剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、前記剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下であることを特徴とする。
【0014】
上記直線軸を上記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、上記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることが好ましい。
【0015】
上記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である粘着剤によって形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、剥離剤に所定のシリコーン樹脂組成物を用いることにより、比較的低い温度で剥離剤層を硬化しても、その硬化性を良好にすることができるので、剥離シートの剥離性能を良好なものにすることができる。また、剥離剤層を低温で硬化することにより、剥離剤層形成後においても、剥離シート基材の小さな配向角の分布範囲を維持することができるので、クロスニコル法による検査において、精度の高い検査を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明について、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る剥離シートは、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が積層されて構成されたものであり、例えば偏光板用途で使用されるものである。
【0018】
剥離シートにおける剥離シート基材としては、配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が低い一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムが使用されるが、好ましくは二軸延伸ポリエステルフィルムが使用される。剥離シート基材の上に剥離剤層が硬化形成された後における剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向角の分布範囲は、5°以下、より好ましくは4°以下となっている。上記ポリエステルフィルムとしては、帯状のフィルムが幅方向(或いは長手方向)に延伸された一軸延伸フィルム、又は帯状のフィルムが幅方向及び長手方向に延伸された二軸延伸フィルムが使用される。そして、上記サンプリングした試料において、上記直線軸を延伸時のフィルムの長手方向又は幅方向に設定した場合の、剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下となっていることが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が例示されるが、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に使用される。その理由は、透明性、耐熱性、平面性、強度に優れているためである。
【0019】
本実施形態における剥離剤層は、剥離シート基材上に、適当な有機溶剤で希釈された付加反応型シリコーン樹脂組成物が塗工された後、加熱により、或いは加熱と紫外線等の光照射が併用されて、付加反応型シリコーン樹脂組成物が硬化被膜されて形成される。付加反応型シリコーン樹脂組成物は分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンから成る主剤に、分子中にアルケニル基を備えたMQレジン、架橋剤、及び触媒が加えられたものであり、所望により付加反応抑制剤、密着向上剤等が加えられても良い。また、剥離剤を硬化する工程で、加熱に加えて紫外線等の光照射が行われる場合、上記組成物には光開始剤が添加されていても良い。上記剥離剤層硬化時の加熱温度は、通常の剥離剤層を硬化させるときの加熱温度より低く、例えば、95〜105℃であることが好ましい。
【0020】
炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンとしては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが使用される。炭素数6〜10のアルケニル基としては例えばヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられるが、コスト等の観点からヘキセニル基が好ましい。このオルガノポリシロキサンの具体例としては、以下の一般式(I)で示されるものが例示される。
(3−a)SiO(RSiO)(RRSiO)SiR(3−b)
・・(I)
【0021】
一般式(I)において、a、b、m及びnは整数であって、0≦a≦3、0≦b≦3であると共に、m≧1、n≧0である。Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一又は異種の一価炭化水素基であると共に、Rは上述したように炭素数6〜10のアルケニル基である。Rの一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜10のものが挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、トリル基やフェニル基等のアリール基が挙げられる。但し、硬化性及び剥離性の観点から、Rのうち80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0022】
分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとしては、例えば、SiO単位、(CHSiO1/2単位、及びCH=CH(CH(CHSiO1/2単位(式中、zは0〜4の整数を示す)を有する構造のシリコーンレジンが使用される。MQレジンの分子中のアルケニル基の含有量は、例えば、0.5〜5質量%であることが好ましい。本実施形態では、付加反応型シリコーン樹脂組成物にMQレジンが添加されることにより、剥離剤層の剥離力を向上させ、所望の剥離力に設定することが可能になる。シリコーン樹脂組成物においてMQレジンは、炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサン100質量部に対して、1〜50質量部添加されることが好ましい。
【0023】
架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を有するオルガノポリシロキサンの架橋剤が使用される。具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。本実施形態では、架橋剤のヒドロシリル基と、シリコーン樹脂組成物中のアルケニル基との付加反応により硬化被膜が形成される。
【0024】
架橋剤は、付加反応型シリコーン樹脂100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは0.3〜50質量部含まれる。そして、架橋剤に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数は、付加反応型シリコーン樹脂組成物中のアルケニル基の数に対して、好ましくは1.0〜5.0(モル比)、より好ましくは1.2〜3.0(モル比)となる。上記モル比が1.0を下回ると組成物の硬化性が悪化し、5.0を超えると得られる剥離シートの剥離力が重くなりすぎる虞がある。
【0025】
付加反応型シリコーン樹脂組成物に使用される触媒としては、例えば白金系化合物が使用される。白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。白金族金属系触媒は、付加反応型シリコーン樹脂及び架橋剤の合計量に対し、白金系金属として1〜1000質量ppm程度添加される。
【0026】
本実施形態では、剥離剤の主剤に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンを用いることにより、剥離剤層の加熱硬化時の加熱温度を比較的低温(例えば95〜105℃)にしても、優れた硬化性を有する剥離剤層を形成することができる。このように硬化性の良好な剥離剤層は、剥離力の経時安定性に優れ、また粘着剤層から剥離シートを剥離したときに粘着剤層の接着力をほとんど低下させずに、残留接着力を良好なものとすることができる。さらに、加熱硬化時の加熱温度を低温にすることにより、剥離シート基材の熱収縮を抑え、基材本来の配向性を維持することができるので、上述したように剥離シート基材の剥離剤層形成後の配向角の分布範囲を5°以下とすることが可能になる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る剥離シート付き偏光板は、偏光板(偏光フィルム)、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層されたものであって、剥離シートとしては上述した剥離シートが使用され、剥離シートの剥離剤層と粘着剤層とが剥離可能なように仮着されている。剥離シート付き偏光板において剥離シートは、上記延伸時のポリエステルフィルムの長手方向又は幅方向が偏光板の偏光軸方向に一致するように積層されている。剥離シート付き偏光板は、剥離シートが剥離された後、露出された粘着剤層によって偏光板がその他の部材に貼り合わされるものである。
【0028】
粘着剤層を形成する粘着剤としては、偏光板用として用いられる粘着剤であれば特に制限なく使用されるが、好ましくは23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である粘着剤が使用される。23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である粘着剤は、高い光漏れ防止性を有するため、偏光板用途に好適に使用可能である。23℃における貯蔵弾性率(G’)の上限については特に限定されないが、50MPa以下であることが好ましく、さらに15MPa以下であることが好ましい。粘着剤の23℃における貯蔵弾性率(G’)の範囲は、特に好ましくは0.35〜12MPaであり、最も好ましくは0.5〜5MPaである。
【0029】
例えば上記粘着剤としては、特開2007−197659号公報に開示されるように、カルボキシル基を含有するモノマーがモノマー組成比で0.5質量%以下であるアクリル系共重合体と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含む粘着性材料に、紫外線等の活性エネルギー線が照射されてなり、その活性エネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上となる粘着剤が挙げられる。なお、上記アクリル系共重合体は、例えば(メタ)アクリル酸エステル重合体であり、またカルボキシル基を含有しないモノマーの重合体であることが好ましい。
【0030】
また粘着剤としては例えば、特開2007−212995号公報に開示されるように、水酸基を含有するモノマーがモノマー組成比で10質量%以下である重量平均分子量100万以上のアクリル系重合体((A)成分)と、カルボキシル基を含有するモノマーがモノマー組成比で10質量%以下である重量平均分子量100万以上のアクリル系重合体((B)成分)と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含む粘着性材料に、活性エネルギー線が照射されてなるものが挙げられる。この粘着剤は活性エネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であり、かつ上記(A)成分と(B)成分の質量比が100:1〜100:50である。上記(A)成分及び(B)成分は、例えば(メタ)アクリル酸エステル重合体であり、またそれぞれモノマー組成として0.1質量%以上の水酸基を含有するモノマー、及び0.1質量%以上のカルボキシル基を含有するモノマーを有していたほうが良い。
【0031】
これら粘着剤は、例えば剥離シートの剥離剤層の上に粘着性材料が塗工され適宜乾燥等された後に、活性エネルギー線が照射されることにより硬化されて粘着剤層に形成される。偏光板用途で用いられる粘着剤層は、貼合ずれ等を直すために、偏光板に貼り合わされた後剥がされることがある。上述した配合の粘着剤は、比較的低い粘着力を長期間にわたって安定して維持することが可能であるので、偏光板に貼り合わされてから長期間経過した後でも、偏光板から容易に剥がすことが可能である。また、上述した粘着剤は凝集力が高く、剥離シートの剥離力を高くすることを阻害するが、本実施形態のように炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、アルケニル基を備えたMQレジンとを含有する剥離剤組成物を用いれば、剥離シートの剥離力を十分に高めることができる。
【0032】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。また、23℃における貯蔵弾性率(G’)とは、厚さ30μmの粘着剤を積層し、8mmΦ×3mm厚の円柱状の試験片を作製して、ねじり剪断法により、下記の条件で測定したものをいう。
測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
周波数 :1Hz
温度 :23℃
【0033】
本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の一方の面に剥離シートが、他方の面に保護シートが積層されて構成されたものである。基材レス両面粘着シートにおいて、粘着剤層及び剥離シートは、上述したものと同様の構成を有する。基材レス両面粘着シートにおいて、剥離シートは、いわゆる重剥離シートであり、剥離シートの剥離剤層と粘着剤層とが剥離可能なように仮着されている。保護シートは、いわゆる軽剥離シートであり、例えば、保護シート基材の一方の面に剥離剤層が積層されて構成され、その剥離剤層が粘着剤層に剥離可能に仮着されている。保護シートの剥離剤層は、好ましくはシリコーン系樹脂、特に好ましくは付加反応型シリコーン系樹脂によって形成されたものである。本実施形態における基材レス両面粘着シートは、例えば偏光板用途で使用され、保護シートが剥離された後、露出された粘着剤層が偏光板等に貼り合わされて使用される。このとき、上述した延伸時のポリエステルフィルムの長手方向又は幅方向が、偏光板の偏光軸方向に一致させられる。基材レス両面粘着シートは、保護シートによって使用直前まで粘着剤を保護して保管することが可能である。
【0034】
剥離シート付き偏光板及び基材レス両面粘着シートにおいて、剥離シート(重剥離シート)の粘着剤層に対する剥離力は、25〜100mN/20mmであることが好ましく、30〜90mN/20mmであることがさらに好ましい。
【0035】
基材レス両面粘着シートにおいて、保護シート(軽剥離シート)の粘着剤層に対する剥離力は、剥離シート(重剥離シート)の粘着剤層に対する剥離力より低く、2〜80mN/20mmであることが好ましく、25〜70mN/20mmであることがさらに好ましい。保護シート(軽剥離シート)の粘着剤層に対する剥離力をX[mN/20mm]、剥離シート(重剥離シート)の粘着剤層に対する剥離力をY[mN/20mm]とすると、Y−X>20の関係を満足することが好ましい。このように、両シートの剥離力差を所定値以上にすることにより、保護シートを粘着剤層から剥離するときに生じる剥離不良を防止することができる。なお、ここで説明した剥離シート及び保護シートの剥離力は、下記で詳述するように、JIS−Z0237に準拠して測定されたものである。
【0036】
本発明の各実施形態において、シリコーン樹脂組成物及び粘着剤材料は、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法によって塗工される。
【実施例】
【0037】
本発明について、以下実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるわけではない。
【0038】
[実施例1]
〈剥離シートの作製〉
ヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサン及びヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名「LTC−750A」)を固形分換算で30質量部と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名「SD7292」)を固形分換算で30質量部とを、トルエン溶媒にて固形分濃度が2.0質量%となるように希釈混合した。この溶液に白金系触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名「SRX−212」)を3質量部添加し、付加反応型シリコーン樹脂組成物の溶液を得た。この溶液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように、厚さ38μmの幅方向及び長手方向に延伸された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーR64」)の上に、マイヤバーを用いて塗工した後、100℃で30秒間加熱乾燥させることにより上記組成物を硬化させて、剥離シート基材の上に剥離剤層を形成した剥離シートを得た。
【0039】
〈剥離シート付き偏光板の作製〉
上記剥離シートの剥離剤層の上に、粘着性材料溶液を乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した後、90℃1分間乾燥して、粘着性材料層を形成した。なお、粘着性材料溶液は、それぞれ固形分換算で、アクリル酸ブチルの重合体100質量部、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM−315」)15質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア500」)1.5質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」4質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」)0.1質量部を添加混合したものに、さらに溶剤としてトルエンを加えて固形分を20質量%に調整した溶液であった。次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムから成る偏光板を、粘着性材料層とディスコティック液晶層とが密着するように、剥離シートに貼り合わせた。このとき、剥離シート基材に用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの延伸時の幅方向に設定した直線軸が偏光板の偏光軸と平行になるように貼り合わせた。貼り合わせてから30分経過した後、剥離シート基材側から紫外線(UV)を下記の条件で照射して粘着性材料を硬化させて粘着剤層を形成し、剥離シート付き偏光板を得た。この剥離シート付き偏光板において、粘着剤層の厚さは25μmであった。また、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(G’)は0.94MPaであった。
【0040】
〈UV照射条件〉
フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
照度:600mW/cm、光量150mJ/cm
UV照度・光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用した。
【0041】
[比較例1]
シリコーン樹脂溶液として、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサン及びヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名「BY−24−561」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、剥離シート及び剥離シート付き偏光板を作製した。
【0042】
[比較例2]
付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化させるときの加熱乾燥温度を、120℃にした以外は、実施例1と同様にして、剥離シート及び剥離シート付き偏光板を作製した。
【0043】
各実施例及び比較例の剥離シートを以下の方法により評価した。
(1)残留接着率
各実施例、比較例において得られた剥離シートの剥離剤層側の面に、幅20mm、長さ20cmの粘着テープ(日東電工社製、製品名「ポリエステル粘着テープ31B」)を貼り合わせ、その上に9.81×10−3N/mmの荷重をかけて70℃で24時間放置した。その後、さらに23℃湿度65%の条件下で24時間放置した後、粘着テープを剥離シートから剥がして、ステンレス板に貼り付けた。そして、この粘着テープをステンレス板から180°の角度で速度300mm/分の速度で剥がして接着力(A)を測定した。また、ブランクとして剥離シートに貼り合わしていない粘着テープをステンレス板に貼り合わせて同様に接着力(B)を測定した。残留接着率を100×(A/B)として、以下の評価基準で評価した。
○:残留接着率が90%以上であり、残留接着率が良好である。
△:残留接着率が80%以上90%未満であり、使用可能である。
×;残留接着率が80%未満であり、使用不可能である。
【0044】
(2)基材収縮率
各実施例、比較例において、剥離剤層形成前後の剥離シート基材の幅方向における長さを測定して、剥離シート基材の収縮率を下記計算式を用いて算出した。
基材収縮率(%)=100−(剥離剤層形成後の剥離シート基材の幅方向における長さ/剥離剤層形成前の剥離シート基材の幅方向における長さ)×100
【0045】
(3)配向角
各実施例、比較例において、剥離剤層形成前後の剥離シート基材の配向主軸が、剥離シート基材の幅方向に設定した直線軸に対して何度傾いているかを明度計(大塚電子社製、商品名「RETS R&D」)により測定した。その測定は、幅方向における端部から端部まで均等に10点で行い、配向角の最大値、最小値および分布範囲(最大値と最小値の差)を求めた。
【0046】
(4)剥離力
各実施例、比較例において得られた剥離シート付き偏光板について、JIS−Z0237に準拠して引っ張り試験機を用いて剥離シートの剥離力を測定した。具体的には、剥離シート付き偏光板を幅20mm、長さ200mmに裁断して、偏光板を固定し、剥離シートを剥離速度300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより、偏光板に対する剥離シートの剥離力を測定した。
【0047】
(5)剥離力の経時変化
各実施例、比較例の剥離シート付き偏光板を作製した後、温度23℃湿度50%の条件下で7日間放置したときの剥離シートの剥離力(F1)を上記(4)の方法で測定した。同様に、温度23℃湿度50%の条件下で、作製後30日間放置したときの剥離シートの剥離力(F2)を測定し、剥離力変化率(F2/F1)を算出して以下の基準で評価した。
○:0.6≦F2/F1≦1.4であるもの。
△:0.5≦F2/F1<0.6又は1.4<F2/F1≦1.5であるもの。
×:0.5≦F2/F1≦1.5の範囲外であるもの。
【0048】
(6)欠点検査性
各実施例、比較例において得られた剥離シート付き偏光板に、検査用の偏光板を重ねてクロスニコル法で目視観察して、欠点検査性を確認した。このとき、検査用の偏光板の偏光軸は、剥離シート付き偏光板の偏光軸と直交するようにし、かつ2枚の偏光板の間に剥離シートが配置されるようにした。光干渉が無く、目視検査可能であるものを○、光干渉があり、目視検査できないものを×とした。
【0049】
【表1】



【0050】
【表2】



【0051】
以上のように、実施例1では、剥離剤の硬化温度を比較的低温(100℃)にして、剥離シート基材の熱収縮を抑えることにより、剥離剤層形成前の配向角の分布範囲を、剥離剤層形成後においても維持することができ、欠点検査性を良好にすることができた。一方、比較的高温(120℃)で剥離剤層を硬化した比較例2では、剥離シート基材が熱収縮して、剥離剤層形成前の配向角の分布範囲を維持することができず、欠点検査性を良好にすることができなかった。
【0052】
また、実施例1では、剥離剤組成物にヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、アルケニル基を備えたMQレジンとを用いたため、硬化温度を低温にしても残留接着率及び剥離力の経時変化のいずれも優れたものとすることができた。一方、剥離剤組成物にビニル基を備えたオルガノポリシロキサンを用いた比較例1では、硬化温度を低温にすると、剥離剤組成物が十分に硬化されないことにより、残留接着率が低下し、さらに剥離力の経時変化も大きくなり、良好な剥離性能を有する剥離シートを提供することができなかった。なお、実施例1と剥離剤組成物を同一のものを使用した比較例2においても、硬化温度を高くすることによって、剥離力の経時変化が大きくなり、良好な剥離性能を有する剥離シートを提供できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられた剥離シートであって、
前記剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
前記剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、
前記剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する前記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下であることを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記直線軸を前記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、前記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記MQレジンは、SiO単位、(CHSiO1/2単位、及びCH=CH(CH(CHSiO1/2単位(式中、zは0〜4の整数を示す)を有する構造のシリコーンレジンであることを特徴とする請求項1または2に記載の剥離シート。
【請求項4】
偏光板、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に設けられた剥離シート付き偏光板であって、
前記剥離シートは、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられて構成されると共に、前記剥離剤層が前記粘着剤層に剥離可能に仮着されており、
前記剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
前記剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、
前記剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する前記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下であることを特徴とする剥離シート付き偏光板。
【請求項5】
前記直線軸を前記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、前記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることを特徴とする請求項4に記載の剥離シートシート付き偏光板。
【請求項6】
前記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である粘着剤によって形成されることを特徴とする請求項4または5に記載の剥離シート付き偏光板。
【請求項7】
粘着剤層の両面に、軽剥離シート、重剥離シートそれぞれが積層される基材レス両面粘着シートであって、
前記重剥離シートが、剥離シート基材の一方の面に剥離剤層が設けられて構成されると共に、前記剥離剤層が前記粘着剤層に剥離可能に仮着されており、
前記軽剥離シートの前記粘着剤層に対する剥離力が、前記重剥離シートの前記粘着剤層に対する剥離力より低く、
前記剥離シート基材が、一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
前記剥離剤層が、分子中に炭素数6〜10のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンと、分子中にアルケニル基を備えたMQレジンとを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を硬化被膜したものであると共に、
前記剥離シートからサンプリングした試料において、任意方向に設定した直線軸に対する剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の分布範囲が5°以下であることを特徴とする基材レス両面粘着シート。
【請求項8】
前記直線軸を前記ポリエステルフィルムの延伸時の長手方向又は幅方向に設定した場合の、前記剥離シート基材の配向主軸の傾き(配向角)の最大値が5°以下であることを特徴とする請求項7に記載の基材レス両面粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である粘着剤によって形成されることを特徴とする請求項7または8に記載の基材レス両面粘着シート。

【公開番号】特開2009−220496(P2009−220496A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69424(P2008−69424)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】