説明

剥離ライナーの製造方法

【課題】 植物由来フィルムを基材とする、良好な外観、剥離性及び密着性を有する剥離ライナーを効率よく製造する。
【解決手段】 植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーを製造する方法であって、下記の工程を具備することを特徴とする剥離ライナーの製造方法。
工程A:熱硬化型シリコーン系樹脂100重量部に対し、硬化触媒を0.05〜0.55重量部含む熱硬化型シリコーン系剥離処理剤を、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布する工程
工程B:工程Aの後、40〜90℃且つ10〜60秒の条件で乾燥を行う工程
工程C:工程Bの後、紫外線光を50〜300mJ/cm2照射する工程
工程D:工程Cの後、30〜70℃且つ12〜240時間でエージングを行う工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離ライナーの製造方法、より詳しくは植物由来フィルムを基材とする良好な外観を有する剥離ライナーの製造方法に関する。本発明は、また、該製造方法で得られる剥離ライナーに関する。この剥離ライナーは、粘着テープ、粘着シート、ラベルなどの粘着剤層を保護するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
植物由来のポリマーは、石油由来のポリマーに代わる樹脂として注目されている。一方、剥離ライナーは、一般に、剥離ライナー基材の表面に熱架橋シリコーン樹脂を塗布し、熱硬化させることにより製造される。上記植物由来のポリマーフィルムであるポリ乳酸フィルムやセロファンを剥離ライナー基材として用いる場合、一般的に行われている100℃以上という硬化条件で熱架橋シリコーン樹脂を硬化させると、皺などの変形が発生する。そこで、従来、これら植物由来フィルム基材への熱架橋シリコーン樹脂の塗布方法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2003−026837号公報には、100℃未満で硬化するシリコーン樹脂を使用する方法が提案されている。しかし、この方法では使用できる熱架橋シリコーン樹脂が特定のものに限定され、また反応遅延剤の添加量を減らす必要があり、ポットライフが短くなるため、特別な塗布装置が必要になる。
【0004】
また、特許第4200405号明細書、特許第4200406号明細書及び特許第4214254号明細書には、剥離フィルム基材に2軸延伸ポリ乳酸フィルムを用いる方法が開示されている。しかし、これらの方法では、145℃〜ポリ乳酸の溶融温度という特定の温度範囲で熱固定を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−026837号公報
【特許文献2】特許第4200405号明細書
【特許文献3】特許第4200406号明細書
【特許文献4】特許第4214254号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、熱架橋シリコーン樹脂を特に限定することなく使用でき、また反応遅延剤を減らす必要もなく、さらには特別な塗布装置を用いることなく、植物由来フィルムを基材とする良好な外観を有する剥離ライナーを製造できる方法、及び該製造方法により得られる剥離ライナーを提供することにある。
本発明の他の目的は、良好な剥離性を有するとともに、剥離処理層の剥離ライナー基材に対する密着性が高く、しかも変形やシワのない外観が良好な、植物由来フィルムを基材とする剥離ライナーを工業的に効率よく製造できる方法、及び該製造方法により得られる剥離ライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、熱硬化型シリコーン系樹脂に対して特定量の硬化触媒を用いるとともに、特定条件の乾燥工程、紫外線照射工程、及びエージング工程を設けることにより、植物由来フィルムの熱変形が発生しない低温で、比較的短時間で硬化させても、剥離性、剥離処理層の基材密着性及び外観の良好な植物由来フィルムを基材とする剥離ライナーが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーを製造する方法であって、下記の工程を具備することを特徴とする剥離ライナーの製造方法である。
工程A:熱硬化型シリコーン系樹脂100重量部に対し、硬化触媒を0.05〜0.55重量部含む熱硬化型シリコーン系剥離処理剤を、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布する工程
工程B:工程Aの後、40〜90℃且つ10〜60秒の条件で乾燥を行う工程
工程C:工程Bの後、紫外線光を50〜300mJ/cm2照射する工程
工程D:工程Cの後、30〜70℃且つ12〜240時間でエージングを行う工程
【0009】
この製造方法において、硬化触媒は白金系触媒であってもよい。
【0010】
植物由来フィルム基材として、ポリ乳酸フィルム、セルロースフィルム、又はポリアミドフィルムを使用できる。
【0011】
前記ポリ乳酸フィルムは2軸延伸処理が施されたポリ乳酸フィルムであってもよい。
【0012】
本発明は、また、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーであって、前記の剥離ライナーの製造方法により得られる剥離ライナーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温で短時間硬化が可能なため、塗工速度の低下を抑制でき、植物由来フィルム基材を用いた剥離ライナーを工業的に効率よく製造できる。また、広範な熱硬化型シリコーン系樹脂を使用できるとともに、反応遅延剤を減らす必要もなく、さらには特別な塗布装置を用いることなく、植物由来フィルムを基材とする良好な外観を有する剥離ライナーを製造できる。さらに、良好な剥離性を有し、剥離処理層の剥離ライナー基材に対する密着性が高く、しかも変形やシワのない植物由来フィルムを基材とする剥離ライナーを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーを製造する方法である。
【0015】
[植物由来フィルム基材]
本発明において、植物由来フィルム基材としては、植物に由来するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ乳酸フィルム、セルロースフィルム(セロファン等)、ポリアミドフィルム(ポリアミド11フィルム等)などを用いることができる。ポリ乳酸は、トウモロコシ、さつまいも、ジャガイモ、サトウキビ、米などから製造され、セルロースは、木や綿などから製造され、ポリアミドは、ヒマシ油などの植物性油から製造される。これらのフィルム基材は1軸又は2軸延伸処理が施されていてもよい。延伸処理後の熱固定温度は特に限定されない。これらの中でも、成膜性、コストの面からポリ乳酸フィルムが好ましい。また、ポリ乳酸フィルムの中でも、耐熱性等の点から、2軸延伸処理を施したポリ乳酸フィルムが好ましい。
【0016】
上記フィルム基材の厚さは、特に限定されず、用途、使用目的などに応じて適宜に選択できるが、例えば、5〜300μmが好ましく、さらに好ましくは10〜200μm程度である。なお、フィルム基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0017】
[熱硬化型シリコーン系樹脂]
本発明において、熱硬化型シリコーン系樹脂としては、フィルム基材上に硬化皮膜を形成でき、該硬化皮膜が用途に応じた適度な剥離性を発揮しつつ、粘着剤への悪影響を及ぼすことのないものである限り特に制限されないが、例えば、粘着テープ又はシート等の粘着面に対して優れた剥離特性を発揮させる観点からは、該粘着面に対する剥離力が0〜300cN/50mm程度、好ましくは1〜100cN/50mm程度となる硬化皮膜を形成できるものが好ましい。
【0018】
熱硬化型シリコーン系樹脂としては、特に限定されないが、その代表的なものとして、熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤(熱硬化性付加型ポリシロキサン系剥離剤)が挙げられる。
【0019】
熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤は、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)及び分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンを必須の構成成分とする。
【0020】
上記分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、中でも、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。なお、上記アルケニル基は、通常、主鎖又は骨格を形成しているポリオルガノシロキサンのケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している。
【0021】
また、上記主鎖又は骨格を形成しているポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリアルキルアルキルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン)や、ポリアルキルアリールシロキサンの他、ケイ素原子含有モノマー成分が複数種用いられている共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)等]などが挙げられる。中でも、ポリジメチルシロキサンが好適である。即ち、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、具体的には、ビニル基、ヘキセニル基等を官能基として有するポリジメチルシロキサンが好ましく例示される。
【0022】
上記分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン架橋剤は、分子中にケイ素原子に結合している水素原子(特に、Si−H結合を有するケイ素原子)を有しているポリオルガノシロキサンであり、特に分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。上記Si−H結合を有するケイ素原子としては、主鎖中のケイ素原子、側鎖中のケイ素原子のいずれであってもよく、すなわち、主鎖の構成単位として含まれていてもよく、あるいは、側鎖の構成単位として含まれていてもよい。なお、Si−H結合のケイ素原子の数は、2個以上であれば特に制限されない。上記分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン架橋剤としては、具体的には、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやポリ(ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン)等が好適である。
【0023】
本発明において、剥離処理剤(熱硬化型シリコーン系剥離処理剤)には、前記熱硬化型シリコーン系樹脂とともに、室温における保存安定性を付与するために反応抑制剤(反応遅延剤)が用いられていてもよい。該反応抑制剤としては、例えば、剥離剤として熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤が用いられている場合、具体的には、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどが挙げられる。
【0024】
また、前記剥離処理剤には、上記成分の他にも必要に応じて、剥離コントロール剤等が用いられていてもよい。例えば、剥離剤として熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤が用いられている場合、具体的には、MQレジンなどの剥離コントロール剤、アルケニル基又はヒドロシリル基を有しないポリオルガノシロキサン(トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなど)などが添加されていてもよい。これらの成分の剥離処理剤中の含有量は、特に限定されないが、固形分全体に対して、1〜30重量%が好ましい。
【0025】
さらに、前記剥離処理剤には、必要に応じて、各種添加剤が用いられてもよい。必要に応じて用いられる添加剤としては、例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)などが例示される。
【0026】
本発明において、前記剥離処理剤は硬化触媒を含んでいる。該硬化触媒としては、特に限定されないが、熱硬化性付加型シリコーン用の触媒として一般的に用いられる白金系触媒を用いることが好ましい。中でも、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体から選ばれた少なくとも1つの白金系触媒が好ましい。硬化触媒はそのまま、又は溶剤に溶解又は分散した形態で使用できる。
【0027】
硬化触媒の配合量(固形分)は、熱硬化型シリコーン系樹脂100重量部(樹脂分)に対して、0.05〜0.55重量部が好ましく、0.06〜0.50重量部がさらに好ましい。前記硬化触媒の配合量が0.05重量部未満であると硬化速度が遅くなり、0.55重量部を超えるとポットライフが著しく短くなる。
【0028】
本発明において、剥離処理層を設ける際に用いられる剥離処理剤を含む塗工液には、塗工性を向上させるため、通常、有機溶剤が使用される。該有機溶剤としては、特に制限されず、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤などが使用できる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0029】
[剥離ライナー製造方法]
本発明の剥離ライナーの製造方法は、下記の工程A〜工程Dを具備する。
工程A:熱硬化型シリコーン系樹脂100重量部(樹脂分)に対し、硬化触媒を0.05〜0.55重量部(固形分)含む熱硬化型シリコーン系剥離処理剤を、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布する工程
工程B:工程Aの後、40〜90℃且つ10〜60秒の条件で乾燥を行う工程
工程C:工程Bの後、紫外線光を50〜300mJ/cm2照射する工程
工程D:工程Cの後、30〜70℃且つ12〜240時間でエージングを行う工程
【0030】
工程Aでは、先ず、上記有機溶剤中に、熱硬化型シリコーン系樹脂(例えば、熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤等)、硬化触媒、及び必要に応じて用いられる各種添加成分(添加剤)を所定の割合で加え、塗工可能な粘度を有する塗工液を調製する。上記熱硬化型シリコーン系樹脂はそのまま、又は該熱硬化型シリコーン系樹脂を有機溶剤で希釈した溶液(熱硬化型シリコーン系樹脂組成物)の形態で用いることができる。
【0031】
次いで、上記のようにして調製した塗工液を、上記の植物由来フィルム基材(シート状基材)の片面又は両面に塗工(塗布)して、熱硬化型シリコーン系剥離剤層(塗布層)を設ける。
【0032】
上記塗工に際しては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤコーター、バーコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0033】
熱硬化型シリコーン系剥離剤層(塗布層)の厚さは特に制限されないが、乾燥後の塗布量(固形分)が、0.01〜3.0g/m2の範囲となるように塗工されることが好ましく、より好ましくは0.03〜2.0g/m2、さらに好ましくは0.05〜1.0g/m2である。
【0034】
工程Bでは、上記塗工後、熱硬化型シリコーン系剥離剤層(塗布層)が設けられたフィルム基材を加熱して、熱硬化型シリコーン系剥離剤層を乾燥、予備硬化させる[乾燥(予備硬化)工程]。
【0035】
上記加熱温度は、40〜90℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃、さらに好ましくは60〜75℃である。加熱温度が40℃未満では予備硬化(加熱)工程に極端に時間がかかるため生産性が低下する。また、加熱温度が90℃を超えると加熱によるシワが生じやすくなる。特にフィルム基材がポリ乳酸フィルムやセロファンなどの熱に弱い基材である場合には加熱によるシワが生じやすい。
【0036】
また、加熱時間は、生産性向上とフィルム基材の熱によるダメージ低減の観点から、10〜60秒が好ましく、より好ましくは15〜50秒、さらに好ましくは20〜35秒である。
【0037】
工程Cでは、上記のようにして加熱処理された予備硬化層に、好ましくはインラインで紫外線照射を行い、予備硬化層の硬化を促進させる(硬化促進工程)。
【0038】
この際、紫外線ランプとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプなどを用いることができるが、紫外線発光効率が高く、赤外線放射量が少ないため、基材に対する熱損傷が少なく、かつ熱硬化型シリコーン系樹脂を含む層(予備硬化層)の硬化性が良好であるなどの観点から、無電極紫外線ランプが好ましい。
【0039】
上記無電極紫外線ランプとしては、例えば、フュージョン社製のDバルブ、Hバルブ、H+バルブ、Vバルブなどを用いることができるが、中でも、フュージョン社製のHバルブおよびH+バルブが好適である。
【0040】
紫外線照射において、照射する紫外線はピーク照度200〜1000mW/cm2が好ましく、より好ましくは300〜800mW/cm2、さらに好ましくは400〜600mW/cm2である。ピーク照度が200mW/cm2未満では、紫外線照射による硬化性向上効果が得られにくくなる傾向にある。一方、照度が1000mW/cm2を超えると、温度上昇により、フィルム基材にシワが生じやすくなる。
【0041】
また、照射する紫外線の積算照射量(光量)は50〜300mJ/cm2が好ましく、より好ましくは75〜200mJ/cm2、さらに好ましくは100〜150mJ/cm2である。積算照射量が50mJ/cm2未満では紫外線照射による硬化速度向上効果が得られにくく、300mJ/cm2を超えるとセパレータの剥離力が大きくなる場合があり好ましくない。
【0042】
工程Dでは、上記のようにして紫外線照射され硬化を促進された層を、さらに、例えばオフラインでエージングして硬化を完了させる(本硬化工程)。
【0043】
上記エージング温度は、30〜70℃が好ましく、より好ましくは35〜50℃である。加熱温度が30℃未満では本硬化工程に極端に時間がかかるため生産性が低下する。また、70℃を超えると加熱によるシワが生じやすくなる。
【0044】
また、加熱時間は、生産性向上とフィルム基材の熱によるダメージ低減の観点から、12〜240時間が好ましく、より好ましくは24〜72時間である。エージング時間が12時間未満では硬化が不十分となり、240時間を超えてエージングしても硬化反応は終了しているので意味が無い。
【0045】
上記方法により、植物由来フィルム基材の片面又は両面に、熱硬化型シリコーン系剥離剤を硬化させた剥離処理層が基材と密着性よく形成され、さらに熱収縮によるシワなどがなく剥離性に優れた剥離ライナー(セパレータ)を生産性よく得ることができる。
【0046】
こうして得られる剥離ライナー(セパレータ)の用途としては、特に限定されないが、例えば、粘着シート、粘着テープ、ラベルなどの粘着剤層の保護などが挙げられる。
【0047】
また、本発明の剥離ライナー(セパレータ)を粘着剤層の少なくとも片面側に設けることによりセパレータ付き粘着テープ(セパレータ付き粘着シートを含む)を得ることができる。上記粘着テープは、片面のみが粘着面となっている片面粘着テープであってもよいし、両面が粘着面となっている両面粘着テープであってもよい。また、粘着剤層のみからなる基材レスタイプの粘着テープであってもよいし、基材の少なくとも片面側に粘着剤層を有する基材付きタイプの粘着テープであってもよい。
【0048】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、公知乃至慣用の粘着剤(感圧性接着剤)を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。これらの中でも、植物由来材料系粘着剤が特に好ましい。
【0049】
上記粘着剤層の厚さは、特に限定されず、例えば、3〜100μm程度が好ましく、より好ましくは5〜50μm程度である。
【0050】
上記基材付き粘着テープの基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0051】
上記のセパレータ付き粘着テープは、例えば、偏光板保護用などの表面保護テープなどの公知乃至慣用の粘着テープの用途に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0053】
なお、実施例で用いた、植物由来フィルム基材、熱硬化型シリコーン系剥離処理剤、硬化触媒、紫外線照射ランプ、紫外線のピーク照度、積算照射量測定機器は以下のとおりである。
[植物由来フィルム基材]
ポリ乳酸フィルム(ユニチカ社製、商品名「テラマック」、厚さ35μm)
[熱硬化型シリコーン系剥離処理剤]
熱硬化性付加型シリコーン組成物(信越化学工業社製、商品名「KS−847T」、有効成分30重量%トルエン溶液、粘度15000mPa・s(25℃))
[硬化触媒]
白金系触媒(信越化学工業社製、商品名「PL−50T」、2重量%トルエン溶液)
[紫外線照射ランプ]
フュージョン社製、HバルブF600(240W/cm)
[紫外線のピーク照度、積算照射量測定機器]
TOPCON社製、UVチェッカ 「UVR−T1」
【0054】
実施例1
工程Aとして、ヘプタン2900重量部に、熱硬化性付加型シリコーン組成物[商品名「KS−847T」(樹脂分30重量%)]100重量部および白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]1重量部を、順次添加溶解して塗工液を調製し、この塗工液を、マイヤーバー#4にて、厚さ35μmの植物由来フィルム基材(テラマック)の片面に塗布した。塗布量は固形分で約0.1g/m2であった。
工程Bとして、上記塗布フィルムを、熱風オーブンで70℃、30秒の条件で乾燥し、次いで、工程Cとして、照度500mW/cm2で紫外線を照射して(光量100mJ/cm2)、塗布層の硬化を促進させた後、さらに工程Dとして、40℃雰囲気に48時間放置し、剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0055】
実施例2
工程Aにおいて白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]を3重量部配合し、工程Bにおいて熱風オーブンで50℃、50秒の条件で乾燥した以外は、実施例1と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0056】
実施例3
工程Aにおいて白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]を3重量部配合し、工程Dにおいてエージングを35℃雰囲気で100時間行った以外は、実施例1と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0057】
実施例4
工程Dにおいてエージングを40℃雰囲気で48時間行った以外は、実施例3と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0058】
実施例5
工程Dにおいてエージングを60℃雰囲気で20時間行った以外は、実施例3と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0059】
実施例6
工程Bにおいて熱風オーブンで80℃、10秒の条件で乾燥した以外は、実施例2と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0060】
実施例7
工程Aにおいて白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]を7重量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0061】
比較例1
工程Aにおいて白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]を0.5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0062】
比較例2
工程Aにおいて白金系触媒[商品名「PL−50T」(触媒成分2重量%)]を10重量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0063】
比較例3
工程Bにおいて熱風オーブンで30℃、60秒の条件で乾燥し、工程Cにおいて紫外線照射を光量250mJ/cm2で行い、工程Dにおいてエージングを70℃雰囲気で240時間行った以外は、実施例4と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0064】
比較例4
工程Bにおいて熱風オーブンで100℃、10秒の条件で乾燥した以外は、実施例4と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0065】
比較例5
工程Bにおいて熱風オーブンで70℃、60秒の条件で乾燥し、工程Cにおいて紫外線照射を250mJ/cm2で行い、工程Dにおいてエージングを25℃雰囲気で240時間行った以外は、実施例4と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0066】
比較例6
工程Dにおいてエージングを80℃雰囲気で20時間行った以外は、実施例4と同様にして剥離ライナー(セパレータ)を得た。
【0067】
[評価]
実施例および比較例で得られた塗工液、剥離ライナー(セパレータ)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
1.ポットライフ
塗工液配合後、3時間後に下記の硬化試験を行い、ポットライフの良否を判断した。
表1では、実用上ポットライフの問題がないものを「○」、ポットライフの点で劣るものを「×」で示した。
【0069】
(硬化性試験)
実施例および比較例で得られた塗工液を、マイヤーバー#4にて、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。この塗布フィルムを、熱風オーブンで130℃で60秒間乾燥し、取り出した後、塗工液を塗布した表面(塗布面)を指で擦って硬化性を確認した。指で10往復擦った後、くもりや塗布層の脱落が見られないものを硬化したと判断した。
【0070】
2.外観評価
得られた剥離ライナーの外観を目視し、変形やシワなどが発生していなければ○とし、変形やシワなどが発生したものは×とした。
【0071】
3.剥離ライナー(セパレータ)の剥離力
粘着テープ(日東電工(株)製、「No.31B #25」、テープ幅50mm)を、実施例および比較例で得られたセパレータの剥離処理面(熱硬化性付加型シリコーン組成物の硬化皮膜表面)に、長手方向にハンドローラーで仮圧着し、それをテープ幅(50mm)に切断して約150mmの長さとした。
さらに2kgローラーを1往復させて圧着した後、70℃環境下でサンプル面積(50mm×150mm)に対して5kg荷重をかけて24時間放置後、23℃の環境下で1時間冷却して、測定用サンプルを作製した。
引張試験機にて、上記サンプルの剥離力(180°剥離、引張速度300mm/分)を測定した。剥離力は0.03〜0.20N/50mmであれば良好な剥離性である。
【0072】
4.剥離処理層の密着性
実施例、比較例で剥離ライナー(セパレータ)を作製した後、1週間ごとに、剥離ライナー(セパレータ)の剥離処理層(熱硬化性付加型シリコーン組成物の硬化皮膜)表面を指で10往復擦って密着性を確認した。以下の基準で判断した。
◎:くもりや剥離処理層の脱落がない。
○:僅かにくもりがみられる。
△:はっきりとくもりが見られる、及び/又は、僅かに剥離処理層の脱落が見られる。
×:明らかに剥離処理層の脱落が見られ、基材が露出している。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーを製造する方法であって、下記の工程を具備することを特徴とする剥離ライナーの製造方法。
工程A:熱硬化型シリコーン系樹脂100重量部に対し、硬化触媒を0.05〜0.55重量部含む熱硬化型シリコーン系剥離処理剤を、植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布する工程
工程B:工程Aの後、40〜90℃且つ10〜60秒の条件で乾燥を行う工程
工程C:工程Bの後、紫外線光を50〜300mJ/cm2照射する工程
工程D:工程Cの後、30〜70℃且つ12〜240時間でエージングを行う工程
【請求項2】
硬化触媒が白金系触媒である請求項1記載の剥離ライナーの製造方法。
【請求項3】
植物由来フィルム基材がポリ乳酸フィルム、セルロースフィルム、又はポリアミドフィルムである請求項1又は2に記載の剥離ライナーの製造方法。
【請求項4】
前記ポリ乳酸フィルムが2軸延伸処理が施されたポリ乳酸フィルムである請求項3に記載の剥離ライナーの製造方法。
【請求項5】
植物由来フィルム基材の少なくとも一方の面に、熱硬化型シリコーン系樹脂による剥離処理層を有している剥離ライナーであって、請求項1〜4の何れか1項に記載の剥離ライナーの製造方法により得られる剥離ライナー。

【公開番号】特開2012−200651(P2012−200651A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66217(P2011−66217)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】