加工びびり振動検出装置、及び工作機械
【課題】加工びびり振動の成分を迅速に特定できる加工びびり振動検出装置、及び工作機械を提供する。
【解決手段】加工びびり振動検出装置10のCPU11は先ず測定処理を実行する。CPU11は測定処理において切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する。CPU11は解析処理において測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中のびびり振動の成分、即ち、自励びびり振動か、強制びびり振動かを解析する。CPU11は解析処理で解析したデータに基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報を画面に表示する。作業者は画面に表示したグラフ情報を確認することで、切削加工中にどのような振動を生じているかを明確かつ容易に把握できる。
【解決手段】加工びびり振動検出装置10のCPU11は先ず測定処理を実行する。CPU11は測定処理において切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する。CPU11は解析処理において測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中のびびり振動の成分、即ち、自励びびり振動か、強制びびり振動かを解析する。CPU11は解析処理で解析したデータに基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報を画面に表示する。作業者は画面に表示したグラフ情報を確認することで、切削加工中にどのような振動を生じているかを明確かつ容易に把握できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工びびり振動検出装置、及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は回転可能な主軸に工具を装着し工作物に対して工具を送ることで工作物に切削加工を施す。工作機械は切削加工における切り込み量を必要以上に大きくすると、加工中に所謂「加工びびり振動」が発生する。故に加工面の仕上げ精度は悪化する。加工びびり振動は「自励びびり振動」と「強制びびり振動」とに分類できる。自励びびり振動は工具と工作物との間に生じる振動成分である。強制びびり振動は工作機械を振動源とする振動成分である。自励びびり振動又は強制びびり振動の何れの成分が発生しているかを特定することは、加工びびり振動を抑制回避する為には重要である。特許文献1は、FFT処理で加工びびり振動の周波数を求めて1刃の加工周波数のN倍に近いか否かで自励びびり振動か強制びびり振動かを判断する工作機械の振動抑制装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4582660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する工作機械の振動抑制装置は、FFT処理で加工びびり振動の周波数を求めている。FFT処理は計算負荷が高い。工作機械の加工びびり振動は刻々と変化するので処理が追いつかないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、加工びびり振動の成分を迅速に特定できる加工びびり振動検出装置、及び工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る加工びびり振動検出装置は、ワークを加工する加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した加工びびり振動又は加工負荷を解析する解析手段とを備えた加工びびり振動検出装置において、前記解析手段は、前記測定手段が測定した前記加工びびり振動又は加工負荷から強制びびりを抽出する強制びびりデジタルフィルタ部と、自励びびりを抽出する自励びびりデジタルフィルタ部と、高周波びびりを抽出する高周波デジタルフィルタ部のうち少なくとも一つ設け、前記強制びびりデジタルフィルタ、自励びびりデジタルフィルタ、高周波びびりデジタルフィルタが抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの内少なくとも一つを出力する出力手段とを備えている。
【0007】
第1態様に係る加工びびり振動検出装置では、解析手段は、強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波デジタルフィルタ部のうち少なくとも一つ設けている。出力手段は、強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波デジタルフィルタ部が抽出した結果を出力する。故に本態様は、加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を容易かつ迅速に特定できる。作業者は出力手段が出力した結果から加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を容易かつ迅速に把握できる。
【0008】
また第1態様において、前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報を測定し、該位置情報に基づき、前記加工びびり振動又は加工負荷を測定してもよい。故に測定手段は駆動軸の位置情報に基づき、加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定できる。
【0009】
また第1態様において、前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報とトルクとに基づいて外乱を推定する外乱オブザーバで構成してもよい。故に測定手段は加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定できる。本態様は外部センサを必要としないので、コストの増加を抑制できる。
【0010】
また第1態様において、前記自励びびりデジタルフィルタ部と前記強制びびりデジタルフィルタ部は、バンドパスフィルタとノッチフィルタとを備え、前記高周波びびりデジタルフィルタ部はハイパスフィルタを備えてもよい。故に測定手段が測定した加工びびり振動又は加工負荷から強制びびり、自励びびり、高周波びびりを容易かつ迅速に抽出できる。
【0011】
また第1態様において、前記ローパスフィルタの遮断周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数であり、前記バンドパスフィルタの通過帯域周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域であり、前記ノッチフィルタのノッチ周波数は加工時の工具の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつ前記バンドパスフィルタの通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタであってもよい。故に測定手段が測定した加工びびり振動又は加工負荷から強制びびり、自励びびり、高周波びびりを容易かつ迅速に抽出できる。
【0012】
また第1態様において、前記解析手段は、前記強制びびりデジタルフィルタ部、前記自励びびりデジタルフィルタ部、前記高周波デジタルフィルタ部において抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの各振幅の平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値算出手段が算出した各平均値の比較に基づき、強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち何れの振動が支配的に発生しているかを時系列で判定する判定手段とを備え、前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力するようにしてもよい。故に作業者は加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を時系列でさらに容易に把握できる。
【0013】
本発明の第2態様に係る工作機械は、請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
第2態様に係る工作機械では、請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えているので、第1態様に記載の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】工作機械1に接続した振動検出装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】加工びびり振動検出処理のフローチャートである。
【図3】測定処理における外乱オブザーバを適用した外乱トルクの推定手順を示す図である。
【図4】側面加工実験の切削条件を示す表である。
【図5】側面加工実験に用いた被削材9と工具8の位置関係を示す図である。
【図6】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクと時間との関係を示すグラフである。
【図7】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクと時間との関係を示すグラフである。
【図8】回転速度6400min−1の条件で切削した被削材9の加工表面の顕微鏡写真である。
【図9】回転速度7800min−1の条件で切削した被削材9の加工表面の顕微鏡写真である。
【図10】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのFFT解析結果を示すグラフである。
【図11】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのFFT解析結果を示すグラフである。
【図12】解析処理におけるフィルタリング処理の処理手順を示す図である。
【図13】デジタルフィルタの振幅特性を示す表である。
【図14】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。
【図15】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。
【図16】回転速度6400min−1のフィルタリング結果を平均化したグラフである(第1変形例)。
【図17】回転速度7800min−1のフィルタリング結果を平均化したグラフである(第1変形例)。
【図18】回転速度6400min−1の振動成分の比率を示したグラフである(第2変形例)。
【図19】回転速度7800min−1の振動成分の比率を示したグラフである(第2変形例)。
【図20】第3変形例の加工びびり振動検出処理のフローチャートである。
【図21】加工びびり成分判定処理のフローチャートである。
【図22】回転速度6400min−1の振動成分の変化を示したグラフである(第3変形例)。
【図23】回転速度7800min−1の振動成分の変化を示したグラフである(第3変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態である振動検出装置10について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本開示が採用し得る技術的特徴を説明する為に用いるものであり、記載している装置の構成、及びフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0017】
振動検出装置10の構成について説明する。図1に示すように、振動検出装置10は、工作機械1の主軸ヘッド5の内部に回転可能に設けた主軸7に生じる「加工びびり振動」を検出し、該加工びびり振動の成分を特定する装置である。工作機械1は主軸7に装着した工具8でテーブル(図示略)上の被削材9を切削する機械である。
【0018】
振動検出装置10は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、表示装置14、操作部15とを備えている。CPU11は振動検出装置10の動作を統括制御する。ROM12は振動検出装置10の制御プログラム、加工びびり振動検出プログラム等を記憶する。RAM13は、後述する加工びびり振動検出処理を実行する為の各種データ等を一時的に記憶する。表示装置14はCPU11が出力したグラフ情報を画面(図示略)に表示する。操作部15は振動検出装置10を操作する為の各種入力キー等を備えている。
【0019】
振動検出装置10のCPU11が実行する加工びびり振動検出処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。CPU11は工作機械1の加工中信号に基づき工作機械1が加工中であることを認識するとROM12に記憶した加工びびり振動検出プログラムを読み込んで本処理を実行する。
【0020】
CPU11は先ず測定処理を実行する(S1)。CPU11は測定処理において工作機械1の切削加工中に発生する加工びびり振動を測定する。CPU11は主軸モータ6の外乱トルクを推定することで加工びびり振動を間接的に測定する。CPU11は主軸モータ6の電流モニタ値、および主軸角速度に「外乱オブザーバ」を適用し、切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する(S2)。CPU11はS1の測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中の加工びびり振動の成分を解析する。CPU11はS2の解析情報に基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する(S5)。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報に基づいてグラフを画面(図示略)に表示する。作業者は画面に表示したグラフを確認することにより、切削加工中にどのような振動成分が発生しているかを明確かつリアルタイムで迅速に把握できる。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したか否か判断する(S6)。CPU11は工作機械1の切削加工が継続していると判断した場合(S6:NO)、S1に戻って処理を繰り返す。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したと判断した場合(S6:YES)、加工びびり振動検出処理を終了する。以下、加工びびり振動検出処理の各処理における原理、手順、効果等について詳細に説明する。
【0021】
測定処理における外乱オブザーバを用いたびびり振動の測定原理について説明する。工作機械1の主軸7における運動方程式は,モータトルクTmと負荷トルクTl(切削トルク、摩擦トルクの合計)を考慮して以下の式1のように表すことができる。
【数1】
ω[rad/s]は主軸角速度である。Ia[A]は電流モニタ値である。J [kg/m2]は主軸慣性モーメントである。Kt[Nm/A]は主軸モータ6のトルク定数である。
【0022】
慣性モーメントとトルク定数は、機械的な構成やトルクリップルなどにより、それぞれΔJ、ΔKtのばらつきがある。通常、切削負荷と比べて微少であり無視できる。故に外乱トルクTdisは切削トルクTcutおよび摩擦トルクTfricの合計と定義される。よって、以下の式2のように電流モニタ値と主軸角速度とから外乱トルクTdisを推定できる。
【数2】
【0023】
図1、図3に示すように、CPU11は測定処理において電流モニタ値をトルク情報として主軸モータ6から取得する。CPU11は取得した電流モニタ値とトルク定数によりトルク(Tm)を算出する。さらにCPU11は主軸モータ6に設けたエンコーダ6A(図1参照)より駆動軸の位置情報として主軸角速度(ω)を取得する。
【0024】
主軸角速度を微分すると高周波域におけるノイズは大きくなる。図3に示すように、CPU11は測定処理においてローパスフィルタ(LPF)を用いて高周波ノイズを遮断して外乱トルクを推定する。推定可能な外乱トルクの周波数はLPFに依存する。CPU11は外乱トルクを推定する為に、LPFの遮断周波数をびびり振動周波数よりも高く設定する。故にCPU11は切削加工中の外乱トルクを推定できる。
【0025】
加工びびり振動は切り込み量の変化に伴う切削トルクの変動により発生する。上記したように、外乱トルクは切削トルクと摩擦トルクとの合計である。工作機械1において、ある操作間において主軸回転速度は一定であるので摩擦はほぼ一定である。故に振動検出装置10は、測定処理において外乱トルクをモニタリングすることで、加工びびり振動の発生要因である切削トルクの変動を検出できる。本実施形態は外部センサを必要としないのでコスト増加を抑止できる。
【0026】
測定処理で推定される外乱トルクについて検証する。本実施例は、測定処理において推定した外乱トルクを検証する為に、主軸7の回転速度を変えた2つの切削条件で、被削材9(図1参照)に対して同一の側面加工実験を行った。図4の表は本実施例の切削条件を示している。側面加工実験は直径10mmのスクエアエンドミル(図5に示す工具8)を用いた。側面加工実験は3軸マシニングセンタである工作機械1を用いた。被削材は、Z軸方向切り込み量を5〜20mmまで変化させるために図5のような被削材9を用いる。振動検出装置10のCPU11は2つの切削条件で側面加工を行った場合の外乱トルクを推定した。推定した外乱トルクの時間変化を図6、図7のグラフに示している。
【0027】
図6に示すように、回転速度6400min−1の条件下で切削加工した場合の外乱トルクによれば、測定開始後2.8〜7.8秒の間でびびり振動が発生している。一方、図7に示すように、回転速度7800min−1の条件下で切削加工した場合の外乱トルクによれば、測定開始後1.5〜6.0秒の間でびびり振動が発生している。びびり振動の発生に伴い、外乱トルクも大きくなっている。6400min−1の切削条件と、7800min−1の切削条件とでは、時間に対する外乱トルクの挙動が異なっている。図8、図9に示すように、被削材9の加工表面も異なっている。具体的には、6400min−1の切削条件で加工した被削材9の加工表面を見ると、切削に生じたびびりマークの形状は、少なくとも図8中(a)、(b)へと変化した。一方、7800min−1の切削条件で加工した被削材9の加工表面を見ると、切削に生じたびびりマークの形状は、少なくとも図9中(a)、(b)、(c)、(d)へと変化した。故に切削加工中に異なる成分の加工びびり振動が生じていたと推定できる。
【0028】
加工びびり振動の成分を特定する為に、振動検出装置10のCPU11が推定した外乱トルクをFFT解析した。FFT解析の時間推移の結果を図10、図11のグラフに示す。横軸は時間、左側の縦軸は周波数、右側の縦軸はピークの値を示している。ピークの値が高い周波数部分ほど濃く示されている。図10は、回転速度6400min−1のFFT解析結果のグラフである。図11は、回転速度7800min−1のFFT解析結果のグラフである。図10、図11に示すように、何れのFFT解析結果も複数のピークをそれぞれ示している。ピーク周波数は被削材9の加工表面の変化と同様に変化していた。故に異なるびびり振動の成分が生じていたと推定できる。
【0029】
図10に示すように、6400min−1の解析結果によれば、2.8〜7.0秒で1800〜2000Hzにピークが見られた。高周波のびびり振動が発生していることがわかった。過去の研究は、自励びびり振動は主軸7の共振周波数付近で発生することを明らかにしている。事前に行ったインパルス応答法より、主軸7の共振周波数は838Hzと2300Hzであった。加工中は工具と被切削物が接触するので接触を考慮しない場合とで力学モデルが異なる。故にインパルス応答法では、同定することの出来ない接触を考慮した力学モデルでの共振周波数に起因するびびり振動が発生したと考えられる。被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に対して斜めであった(図8中(a)参照)。このことから自励びびり振動であることがわかった。さらに7.0〜7.7秒で793Hzにピークが見られた。これは主軸7の838Hzの共振周波数に起因するびびり振動である。被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に対して斜めであった(図8中(b)参照)。このことから自励びびり振動であることがわかった。
【0030】
図11に示すように、7800min−1 の解析結果によれば、1.5〜1.9秒で780Hzにピークが見られた。これは工具8の刃が被削材9に接触する周波数の3倍であることがわかる。この根拠は、(びびり周波数/(回転数/60×刃数)=780/(7800/60×2)=3倍であることによる。さらに被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に垂直であった(図9中(a)参照)。強制びびり振動は、びびり振動と工具8の刃が接触する周波数が同期していることから、送り方向に対して垂直なびびりマークを残すことが知られている。故にこのびびり振動は強制びびり振動である可能性が高い。1.9〜2.6秒、及び3.7〜6.0秒で1800〜2000Hz及び793Hzにピークが見られた。6400min−1と同様に、主軸7の共振周波数に起因する自励びびり振動が生じていることがわかった。2.6〜3.7秒で773Hzと793Hzにピークが見られた。故にこの区間では強制びびり振動から自励びびり振動へ遷移していることがわかった。
【0031】
図6、図7に示す外乱トルクの変化と、図8、図9に示す加工表面と、図10、図11のFFT解析結果とは互いにほぼ一致している。故にCPU11が測定処理で推定する外乱トルクは、加工びびり振動の有無のみならず、びびり振動の成分も反映していることがわかる。
【0032】
解析処理におけるフィルタリング処理について説明する。CPU11は、測定処理で推定した外乱トルクについて、複数のデジタルフィルタを用いたフィルタリング処理を行う。CPU11は切削加工中に発生した加工びびり振動が自励びびり振動か、又は強制びびり振動かを迅速に解析できる。デジタルフィルタはFFT解析と比較して遅れが小さく、さらに計算負荷が小さい。故にCPU11は加工びびり振動の成分を迅速に解析できる。
【0033】
デジタルフィルタの構成について説明する。図12に示すように、CPU11は、ローパスフィルタ(HLPF)51、ハイパスフィルタ(HHPF)52、バンドパスフィルタ(HBPF)53、及びノッチフィルタ(HNF)54により、解析処理を実行する。図13の表に示すように、ローパスフィルタ51は0〜300Hzの帯域を通過させる。ローパスフィルタ51の遮断周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりとが発生する周波数よりも低い周波数であり、本実施例では300Hzである。ハイパスフィルタ52は1600Hz以上の帯域を通過させる。本実施例のハイパスフィルタ52の遮断周波数は1600Hzである。バンドパスフィルタ53は600〜1000Hzの帯域を通過させる。バンドパスフィルタ53の通過帯域周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりとが発生する周波数帯域である。バンドパスフィルタ53の遮断周波数は600、1000Hzである。ノッチフィルタ54は、加工時の工具の刃数と主軸回転数の積(工具接触周波数)の整数倍でかつバンドパスフィルタ53の通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタである。本実施例では帯域幅を30Hzとし、遮断周波数は6400min−1で加工した場合は640Hzと853Hz、7800min−1で加工した場合は780Hzである。
【0034】
CPU11は、図12に示すフィルタリング手順を用いて、測定処理で推定した外乱トルクのフィルタリング処理を行う。バンドパスフィルタ53は主軸共振周波数(838Hz)付近の外乱トルクを抽出する。さらにノッチフィルタ54は工具接触周波数及びその整数倍の周波数を遮断する。故にCPU11は強制びびり振動の成分を遮断し、自励びびり振動成分(Tself)を取り出すことができる。反対にそれを図12に示す手順のように反転させることで、CPU11は強制びびり振動(Tforced)のみの成分を取り出すことができる。
【0035】
ハイパスフィルタ52は高周波のびびり振動(THPF)を抽出する。ローパスフィルタ51は摩擦トルクや通常切削時の切削トルクとして低周波の外乱トルク(TLPF)を抽出する。CPU11はフィルタリング結果の解析情報をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。
【0036】
図14、図15は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図14は、回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。図15は、回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。図14、図15は何れも、上から順に高周波びびり振動成分(THPF)、自励びびり振動成分(Tself)、強制びびり振動(Tforced)を順に示している。
【0037】
図14、図15の何れにグラフにおいても、加工びびり振動の成分によってフィルタリング処理された外乱トルクの各成分が変化している。図14に示すように、6400min−1のフィルタリング結果によれば、1800〜2000Hzにピークが見られた2.8〜7.0秒において、ハイパスフィルタ52によってフィルタリングした高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。さらに793Hzにピークが見られた7.0〜7.7秒において、自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。
【0038】
一方、図15に示すように、7800min−1のフィルタリング結果によれば、工具接触周波数の3倍のピークが見られた1.5〜1.9秒では、強制びびり振動成分の振幅が大きくなっている。1800〜2000Hzにピークが見られた2.0〜2.7秒では、ハイパスフィルタ52によってフィルタリングした高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。793Hzにピークが見られた3.6〜6.0秒では、自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。強制びびり振動から自励びびり振動への遷移状態である2.7〜4.0秒では、強制びびり振動成分、及び自励びびり振動成分ともに振幅が大きくなっている。
【0039】
従って、CPU11は測定処理で推定した外乱トルクをデジタルフィルタを用いてフィルタリング処理を行うことで、加工びびり振動の成分を明確に特定できる。作業者は表示装置14の画面に表示した図14、又は図15のグラフを確認する。作業者は工作機械1の切削加工中に発生した加工びびり振動がどのような成分で発生しているかを明確かつ迅速に確認できる。さらに工作機械1は加工びびり振動を抑制回避する為の重要情報として利用できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の加工びびり振動検出装置10では、CPU11は先ず測定処理を実行する。CPU11は測定処理において切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する。CPU11は解析処理において測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中のびびり振動の成分、即ち、自励びびり振動か、強制びびり振動かを解析する。CPU11はS2で解析したデータに基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報を画面(図示略)に表示する。作業者は画面に表示したグラフ情報を確認することにより、切削加工中にどのような振動を生じているかを明確かつ容易に把握できる。
【0041】
また本実施形態では特に、CPU11は測定処理を実行する場合に、工作機械1の主軸モータ6に設けたエンコーダ6Aにより、主軸モータ6の駆動軸の位置情報を取得する。故に本実施形態は取得した駆動軸の位置情報に基づき、切削加工中の加工びびり振動を測定できる。
【0042】
また本実施形態では特に、工作機械1の主軸モータ6の駆動軸の位置情報と、主軸モータ6の電流モニタ値とに外乱オブザーバを適用することで切削加工中の外乱トルクを容易かつ迅速に推定できる。
【0043】
また本実施形態では特に、CPU11は解析処理において、ローパスフィルタ51、ハイパスフィルタ52、バンドパスフィルタ53、及びノッチフィルタ54を用いて外乱トルクのフィルタリング処理を行う。故に本実施形態は、推定した外乱トルクから加工びびり振動の成分(自励びびり振動、強制びびり振動)を明確かつ迅速に特定できる。
【0044】
また本実施形態では特に、CPU11の解析処理において、ローパスフィルタ51の遮断周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数とする。バンドパスフィルタ53の通過帯域周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域である。ノッチフィルタ54のノッチ周波数は加工時の工具8の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつバンドパスフィルタ53の通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタである。故に本実施形態は、推定した外乱トルクから加工びびり振動の成分(自励びびり振動、強制びびり振動)を明確かつ迅速に特定できる。
【0045】
上記説明において、工作機械1は本発明の「加工機」の一例である。図2のS1の処理を実行するCPU11は本発明の「測定手段」の一例である。S2の処理を実行するCPU11は本発明の「解析手段」の一例である。S5の処理を実行するCPU11は本発明の「出力手段」の一例である。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、CPU11は解析処理において、デジタルフィルタでフィルタリング処理した解析情報をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力している。例えば、CPU11は解析処理で解析したフィルタリング結果についてさらに別の処理を行うことで、切削加工中に発生するびびり振動の成分の変化をさらに分かり易くしたグラフを、表示装置14の画面に表示することもできる。
【0047】
解析処理で得た解析情報をさらに処理してびびり振動の成分の特定をより明確に表示できる第1〜第3変形例について説明する。以下の第1〜第3変形例は上記実施形態と同様の構成、同様の処理を備えているので、異なる点を中心に説明する。
【0048】
第1変形例について説明する。第1変形例のCPU11は、上記の加工びびり振動検出処理の解析処理で解析された加工びびり振動の各成分のデータの絶対値を算出し、例えば400個のデータの移動平均を算出する。CPU11は算出した加工びびり振動の各成分の平均値をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。
【0049】
図16、図17は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。低周波成分の振幅平均値をTave_LPF、高周波成分の振幅平均値をTave_HPF、自励びびり振動成分の振幅平均値をTave_self、強制びびり振動成分の振幅平均値をTave_forcedとして示している。図16、図17に示すように、時間の経過と共に、加工びびり振動の各成分の振幅値が変動していることが確認できる。
【0050】
具体的にいえば、図16に示すように、回転速度6400min−1において、2.8〜7.0秒において高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。さらに7.0〜7.7秒において自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。これは上記実施形態の結果と同じである。一方、図17に示すように、回転速度7800min−1において、1.5〜1.9秒では強制びびり振動成分の振幅が大きくなっている。2.0〜2.7秒では高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。3.6〜6.0秒では自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。強制びびり振動から自励びびり振動への遷移状態である2.7〜4.0秒では強制びびり振動成分、及び自励びびり振動成分ともに振幅が大きくなっている。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第1変形例は、上記実施形態に比較して、1つのグラフで時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分がどの程度発生しているかを明確に表示できる。
【0051】
第2変形例について説明する。第2変形例のCPU11は、第1変形例で算出した加工びびり振動の各成分の平均値を用いて、各成分の合計を1としたときの各成分の割合を算出する。CPU11は算出した加工びびり振動の各成分の割合からグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。一例として自励びびり振動の成分の割合を以下の式3に示す。なお、強制びびり振動成分、低周波成分、高周波成分についても同様に算出すればよい。
【数3】
【0052】
図18、図19は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図18は、回転速度6400min−1の振動成分の比率を示したグラフである。図19は、回転速度7800min−1の振動成分の比率を示したグラフである。低周波成分の振幅平均値をTave_LPF、高周波成分の振幅平均値をTave_HPF、自励びびり振動成分の振幅平均値をTave_self、強制びびり振動成分の振幅平均値をTave_forcedとして示している。
【0053】
図18、図19の各グラフは、図16、図17の各グラフに比較して、どのびびり振動の成分が最も発生しているかをより明確に表示できる。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第2変形例も、上記実施形態に比較して、1つのグラフで時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分が発生しているかを明確に表示できる。
【0054】
第3変形例について説明する。第3変形例のCPU11は、第1変形例で算出した加工びびり振動の各成分の平均値を用いて、どの加工びびり振動の成分が最も支配的に発生しているかを時間の経過に沿って判定する。CPU11は判定した加工びびり振動の各成分の変化に基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。
【0055】
第3変形例のCPU11が実行する加工びびり振動検出処理について、図20、図21のフローチャートを参照して説明する。CPU11は工作機械1の加工中信号に基づき工作機械1が加工中であることを認識すると、ROM12に記憶した加工びびり振動検出プログラム(変形例)を読み込んで本処理を実行する。CPU11は先ず上記の測定処理を実行する(S1)。CPU11は上記の解析処理を実行する(S2)。
【0056】
CPU11はさらに平均値算出処理を実行する(S3)。CPU11は解析処理でフィルタリングした外乱トルクをリアルタイムで比較する為、それぞれの絶対値を算出し、びびり振動の各成分の平均値を算出する。CPU11は加工びびり成分判定処理を実行する(S4)。
【0057】
加工びびり成分判定処理について、図21のフローチャートを参照して説明する。CPU11は、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)よりも大きいか否か判断する(S11)。CPU11は、高周波成分の振幅平均値が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S11:YES)、それは高周波振動成分として判定する。故に、CPU11は高周波振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。
【0058】
CPU11は、高周波成分の振幅平均値が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも小さい又は以下と判断した場合(S11:NO)、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)が4よりも、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)よりも大きいか否か判断する(S12)。CPU11は、自励びびり振動成分の振幅平均値が4よりも、高周波成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S12:YES)、それは自励びびり振動成分として判定する。故に、CPU11は自励びびり振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。
【0059】
CPU11は、自励びびり振動成分の振幅平均値が4よりも、高周波成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも小さい又は以下と判断した場合(S12:NO)、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)が15よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)よりも、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)よりも大きいか否か判断する(S13)。CPU11は、強制びびり振動成分の振幅平均値が15よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、高周波成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S13:YES)、それは強制びびり振動成分として判定する。故に、CPU11は強制びびり振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。CPU11は加工びびり振動判定処理を終了し、図20のメインフローのS5に戻る。高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)と比較するS11、S12、S13の「3」「4」「15」の値は工具の種類によって変わる為、工具毎にパラメータとして設定することが望ましい。
【0060】
CPU11は、RAM13に記憶した判定結果をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する(S5)。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、画面にグラフを表示する。図22、図23は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図22は、回転速度6400min−1における振動の支配成分の変化を示すグラフである。図23は、回転速度7800min−1における振動の支配成分の変化を示すグラフである。図22、図23に示すように、どの振動成分が最も支配的であるかを明確に表示できる。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第3変形例も、上記実施形態に比較して、1つのグラフで、時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分が支配的であるかを明示できる。
【0061】
CPU11は工作機械1の切削加工が終了したか否か判断する(S6)。CPU11は工作機械1の切削加工が継続していると判断した場合(S6:NO)、S1に戻って処理を繰り返す。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したと判断した場合(S6:YES)、加工びびり振動検出処理を終了する。
【0062】
なお、上記変形例1〜3の他にも、上記実施形態は種々の変更は可能である。上記実施形態では、工作機械1の切削加工中に発生する加工びびり振動を、主軸モータ6のトルク情報、エンコーダ6Aからの位置情報とに基づき、外乱オブザーバを適用して外乱トルクを推定することによって間接的に測定している。例えば、振動センサ(振動ピックアップ)等を用いて、主軸7の振動加速度を検出して、切削加工中に発生する加工びびり振動を測定してもよい。この場合、振動センサで得られたデータを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理をすればよい。
【0063】
またびびり周波数は数百Hz以上と高く、サーボのフィードバック制御の応答域よりも高い。トルク情報は実際にはびびり周波数では変化していないので、トルク情報は使わず位置情報のみで外乱推定してもびびりモード判定としては同じ結果が得られる。
【0064】
また上記実施形態では、本発明の加工びびり振動検出装置の一実施例として振動検出装置10を説明したが、工作機械1を数値制御する数値制御装置であってもよい。この場合、例えば、加工びびり振動検出処理で得られた解析結果をフィードバックして、切削条件等を変更するようにしてもよい。
【0065】
また上記実施形態では、主軸モータの位置情報とトルク情報を用いて説明したが、X、Y、Z軸モータの情報を用いてもよいし、主軸、X、Y、Z軸の内から複数の情報を元に総合的に判断してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 工作機械
5 主軸ヘッド
6 主軸モータ
6A エンコーダ
7 主軸
8 工具
9 被切削物
10 振動検出装置
11 CPU
14 表示装置
51 ローパスフィルタ
52 ハイパスフィルタ
53 バンドパスフィルタ
54 ノッチフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工びびり振動検出装置、及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は回転可能な主軸に工具を装着し工作物に対して工具を送ることで工作物に切削加工を施す。工作機械は切削加工における切り込み量を必要以上に大きくすると、加工中に所謂「加工びびり振動」が発生する。故に加工面の仕上げ精度は悪化する。加工びびり振動は「自励びびり振動」と「強制びびり振動」とに分類できる。自励びびり振動は工具と工作物との間に生じる振動成分である。強制びびり振動は工作機械を振動源とする振動成分である。自励びびり振動又は強制びびり振動の何れの成分が発生しているかを特定することは、加工びびり振動を抑制回避する為には重要である。特許文献1は、FFT処理で加工びびり振動の周波数を求めて1刃の加工周波数のN倍に近いか否かで自励びびり振動か強制びびり振動かを判断する工作機械の振動抑制装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4582660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する工作機械の振動抑制装置は、FFT処理で加工びびり振動の周波数を求めている。FFT処理は計算負荷が高い。工作機械の加工びびり振動は刻々と変化するので処理が追いつかないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、加工びびり振動の成分を迅速に特定できる加工びびり振動検出装置、及び工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る加工びびり振動検出装置は、ワークを加工する加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した加工びびり振動又は加工負荷を解析する解析手段とを備えた加工びびり振動検出装置において、前記解析手段は、前記測定手段が測定した前記加工びびり振動又は加工負荷から強制びびりを抽出する強制びびりデジタルフィルタ部と、自励びびりを抽出する自励びびりデジタルフィルタ部と、高周波びびりを抽出する高周波デジタルフィルタ部のうち少なくとも一つ設け、前記強制びびりデジタルフィルタ、自励びびりデジタルフィルタ、高周波びびりデジタルフィルタが抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの内少なくとも一つを出力する出力手段とを備えている。
【0007】
第1態様に係る加工びびり振動検出装置では、解析手段は、強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波デジタルフィルタ部のうち少なくとも一つ設けている。出力手段は、強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波デジタルフィルタ部が抽出した結果を出力する。故に本態様は、加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を容易かつ迅速に特定できる。作業者は出力手段が出力した結果から加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を容易かつ迅速に把握できる。
【0008】
また第1態様において、前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報を測定し、該位置情報に基づき、前記加工びびり振動又は加工負荷を測定してもよい。故に測定手段は駆動軸の位置情報に基づき、加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定できる。
【0009】
また第1態様において、前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報とトルクとに基づいて外乱を推定する外乱オブザーバで構成してもよい。故に測定手段は加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定できる。本態様は外部センサを必要としないので、コストの増加を抑制できる。
【0010】
また第1態様において、前記自励びびりデジタルフィルタ部と前記強制びびりデジタルフィルタ部は、バンドパスフィルタとノッチフィルタとを備え、前記高周波びびりデジタルフィルタ部はハイパスフィルタを備えてもよい。故に測定手段が測定した加工びびり振動又は加工負荷から強制びびり、自励びびり、高周波びびりを容易かつ迅速に抽出できる。
【0011】
また第1態様において、前記ローパスフィルタの遮断周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数であり、前記バンドパスフィルタの通過帯域周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域であり、前記ノッチフィルタのノッチ周波数は加工時の工具の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつ前記バンドパスフィルタの通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタであってもよい。故に測定手段が測定した加工びびり振動又は加工負荷から強制びびり、自励びびり、高周波びびりを容易かつ迅速に抽出できる。
【0012】
また第1態様において、前記解析手段は、前記強制びびりデジタルフィルタ部、前記自励びびりデジタルフィルタ部、前記高周波デジタルフィルタ部において抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの各振幅の平均値を算出する平均値算出手段と、前記平均値算出手段が算出した各平均値の比較に基づき、強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち何れの振動が支配的に発生しているかを時系列で判定する判定手段とを備え、前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力するようにしてもよい。故に作業者は加工機に生じた加工びびり振動、又は加工負荷の成分を時系列でさらに容易に把握できる。
【0013】
本発明の第2態様に係る工作機械は、請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
第2態様に係る工作機械では、請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えているので、第1態様に記載の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】工作機械1に接続した振動検出装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】加工びびり振動検出処理のフローチャートである。
【図3】測定処理における外乱オブザーバを適用した外乱トルクの推定手順を示す図である。
【図4】側面加工実験の切削条件を示す表である。
【図5】側面加工実験に用いた被削材9と工具8の位置関係を示す図である。
【図6】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクと時間との関係を示すグラフである。
【図7】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクと時間との関係を示すグラフである。
【図8】回転速度6400min−1の条件で切削した被削材9の加工表面の顕微鏡写真である。
【図9】回転速度7800min−1の条件で切削した被削材9の加工表面の顕微鏡写真である。
【図10】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのFFT解析結果を示すグラフである。
【図11】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのFFT解析結果を示すグラフである。
【図12】解析処理におけるフィルタリング処理の処理手順を示す図である。
【図13】デジタルフィルタの振幅特性を示す表である。
【図14】回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。
【図15】回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。
【図16】回転速度6400min−1のフィルタリング結果を平均化したグラフである(第1変形例)。
【図17】回転速度7800min−1のフィルタリング結果を平均化したグラフである(第1変形例)。
【図18】回転速度6400min−1の振動成分の比率を示したグラフである(第2変形例)。
【図19】回転速度7800min−1の振動成分の比率を示したグラフである(第2変形例)。
【図20】第3変形例の加工びびり振動検出処理のフローチャートである。
【図21】加工びびり成分判定処理のフローチャートである。
【図22】回転速度6400min−1の振動成分の変化を示したグラフである(第3変形例)。
【図23】回転速度7800min−1の振動成分の変化を示したグラフである(第3変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態である振動検出装置10について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本開示が採用し得る技術的特徴を説明する為に用いるものであり、記載している装置の構成、及びフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0017】
振動検出装置10の構成について説明する。図1に示すように、振動検出装置10は、工作機械1の主軸ヘッド5の内部に回転可能に設けた主軸7に生じる「加工びびり振動」を検出し、該加工びびり振動の成分を特定する装置である。工作機械1は主軸7に装着した工具8でテーブル(図示略)上の被削材9を切削する機械である。
【0018】
振動検出装置10は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、表示装置14、操作部15とを備えている。CPU11は振動検出装置10の動作を統括制御する。ROM12は振動検出装置10の制御プログラム、加工びびり振動検出プログラム等を記憶する。RAM13は、後述する加工びびり振動検出処理を実行する為の各種データ等を一時的に記憶する。表示装置14はCPU11が出力したグラフ情報を画面(図示略)に表示する。操作部15は振動検出装置10を操作する為の各種入力キー等を備えている。
【0019】
振動検出装置10のCPU11が実行する加工びびり振動検出処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。CPU11は工作機械1の加工中信号に基づき工作機械1が加工中であることを認識するとROM12に記憶した加工びびり振動検出プログラムを読み込んで本処理を実行する。
【0020】
CPU11は先ず測定処理を実行する(S1)。CPU11は測定処理において工作機械1の切削加工中に発生する加工びびり振動を測定する。CPU11は主軸モータ6の外乱トルクを推定することで加工びびり振動を間接的に測定する。CPU11は主軸モータ6の電流モニタ値、および主軸角速度に「外乱オブザーバ」を適用し、切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する(S2)。CPU11はS1の測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中の加工びびり振動の成分を解析する。CPU11はS2の解析情報に基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する(S5)。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報に基づいてグラフを画面(図示略)に表示する。作業者は画面に表示したグラフを確認することにより、切削加工中にどのような振動成分が発生しているかを明確かつリアルタイムで迅速に把握できる。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したか否か判断する(S6)。CPU11は工作機械1の切削加工が継続していると判断した場合(S6:NO)、S1に戻って処理を繰り返す。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したと判断した場合(S6:YES)、加工びびり振動検出処理を終了する。以下、加工びびり振動検出処理の各処理における原理、手順、効果等について詳細に説明する。
【0021】
測定処理における外乱オブザーバを用いたびびり振動の測定原理について説明する。工作機械1の主軸7における運動方程式は,モータトルクTmと負荷トルクTl(切削トルク、摩擦トルクの合計)を考慮して以下の式1のように表すことができる。
【数1】
ω[rad/s]は主軸角速度である。Ia[A]は電流モニタ値である。J [kg/m2]は主軸慣性モーメントである。Kt[Nm/A]は主軸モータ6のトルク定数である。
【0022】
慣性モーメントとトルク定数は、機械的な構成やトルクリップルなどにより、それぞれΔJ、ΔKtのばらつきがある。通常、切削負荷と比べて微少であり無視できる。故に外乱トルクTdisは切削トルクTcutおよび摩擦トルクTfricの合計と定義される。よって、以下の式2のように電流モニタ値と主軸角速度とから外乱トルクTdisを推定できる。
【数2】
【0023】
図1、図3に示すように、CPU11は測定処理において電流モニタ値をトルク情報として主軸モータ6から取得する。CPU11は取得した電流モニタ値とトルク定数によりトルク(Tm)を算出する。さらにCPU11は主軸モータ6に設けたエンコーダ6A(図1参照)より駆動軸の位置情報として主軸角速度(ω)を取得する。
【0024】
主軸角速度を微分すると高周波域におけるノイズは大きくなる。図3に示すように、CPU11は測定処理においてローパスフィルタ(LPF)を用いて高周波ノイズを遮断して外乱トルクを推定する。推定可能な外乱トルクの周波数はLPFに依存する。CPU11は外乱トルクを推定する為に、LPFの遮断周波数をびびり振動周波数よりも高く設定する。故にCPU11は切削加工中の外乱トルクを推定できる。
【0025】
加工びびり振動は切り込み量の変化に伴う切削トルクの変動により発生する。上記したように、外乱トルクは切削トルクと摩擦トルクとの合計である。工作機械1において、ある操作間において主軸回転速度は一定であるので摩擦はほぼ一定である。故に振動検出装置10は、測定処理において外乱トルクをモニタリングすることで、加工びびり振動の発生要因である切削トルクの変動を検出できる。本実施形態は外部センサを必要としないのでコスト増加を抑止できる。
【0026】
測定処理で推定される外乱トルクについて検証する。本実施例は、測定処理において推定した外乱トルクを検証する為に、主軸7の回転速度を変えた2つの切削条件で、被削材9(図1参照)に対して同一の側面加工実験を行った。図4の表は本実施例の切削条件を示している。側面加工実験は直径10mmのスクエアエンドミル(図5に示す工具8)を用いた。側面加工実験は3軸マシニングセンタである工作機械1を用いた。被削材は、Z軸方向切り込み量を5〜20mmまで変化させるために図5のような被削材9を用いる。振動検出装置10のCPU11は2つの切削条件で側面加工を行った場合の外乱トルクを推定した。推定した外乱トルクの時間変化を図6、図7のグラフに示している。
【0027】
図6に示すように、回転速度6400min−1の条件下で切削加工した場合の外乱トルクによれば、測定開始後2.8〜7.8秒の間でびびり振動が発生している。一方、図7に示すように、回転速度7800min−1の条件下で切削加工した場合の外乱トルクによれば、測定開始後1.5〜6.0秒の間でびびり振動が発生している。びびり振動の発生に伴い、外乱トルクも大きくなっている。6400min−1の切削条件と、7800min−1の切削条件とでは、時間に対する外乱トルクの挙動が異なっている。図8、図9に示すように、被削材9の加工表面も異なっている。具体的には、6400min−1の切削条件で加工した被削材9の加工表面を見ると、切削に生じたびびりマークの形状は、少なくとも図8中(a)、(b)へと変化した。一方、7800min−1の切削条件で加工した被削材9の加工表面を見ると、切削に生じたびびりマークの形状は、少なくとも図9中(a)、(b)、(c)、(d)へと変化した。故に切削加工中に異なる成分の加工びびり振動が生じていたと推定できる。
【0028】
加工びびり振動の成分を特定する為に、振動検出装置10のCPU11が推定した外乱トルクをFFT解析した。FFT解析の時間推移の結果を図10、図11のグラフに示す。横軸は時間、左側の縦軸は周波数、右側の縦軸はピークの値を示している。ピークの値が高い周波数部分ほど濃く示されている。図10は、回転速度6400min−1のFFT解析結果のグラフである。図11は、回転速度7800min−1のFFT解析結果のグラフである。図10、図11に示すように、何れのFFT解析結果も複数のピークをそれぞれ示している。ピーク周波数は被削材9の加工表面の変化と同様に変化していた。故に異なるびびり振動の成分が生じていたと推定できる。
【0029】
図10に示すように、6400min−1の解析結果によれば、2.8〜7.0秒で1800〜2000Hzにピークが見られた。高周波のびびり振動が発生していることがわかった。過去の研究は、自励びびり振動は主軸7の共振周波数付近で発生することを明らかにしている。事前に行ったインパルス応答法より、主軸7の共振周波数は838Hzと2300Hzであった。加工中は工具と被切削物が接触するので接触を考慮しない場合とで力学モデルが異なる。故にインパルス応答法では、同定することの出来ない接触を考慮した力学モデルでの共振周波数に起因するびびり振動が発生したと考えられる。被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に対して斜めであった(図8中(a)参照)。このことから自励びびり振動であることがわかった。さらに7.0〜7.7秒で793Hzにピークが見られた。これは主軸7の838Hzの共振周波数に起因するびびり振動である。被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に対して斜めであった(図8中(b)参照)。このことから自励びびり振動であることがわかった。
【0030】
図11に示すように、7800min−1 の解析結果によれば、1.5〜1.9秒で780Hzにピークが見られた。これは工具8の刃が被削材9に接触する周波数の3倍であることがわかる。この根拠は、(びびり周波数/(回転数/60×刃数)=780/(7800/60×2)=3倍であることによる。さらに被削材9の加工表面に形成されたびびりマークは送り方向に垂直であった(図9中(a)参照)。強制びびり振動は、びびり振動と工具8の刃が接触する周波数が同期していることから、送り方向に対して垂直なびびりマークを残すことが知られている。故にこのびびり振動は強制びびり振動である可能性が高い。1.9〜2.6秒、及び3.7〜6.0秒で1800〜2000Hz及び793Hzにピークが見られた。6400min−1と同様に、主軸7の共振周波数に起因する自励びびり振動が生じていることがわかった。2.6〜3.7秒で773Hzと793Hzにピークが見られた。故にこの区間では強制びびり振動から自励びびり振動へ遷移していることがわかった。
【0031】
図6、図7に示す外乱トルクの変化と、図8、図9に示す加工表面と、図10、図11のFFT解析結果とは互いにほぼ一致している。故にCPU11が測定処理で推定する外乱トルクは、加工びびり振動の有無のみならず、びびり振動の成分も反映していることがわかる。
【0032】
解析処理におけるフィルタリング処理について説明する。CPU11は、測定処理で推定した外乱トルクについて、複数のデジタルフィルタを用いたフィルタリング処理を行う。CPU11は切削加工中に発生した加工びびり振動が自励びびり振動か、又は強制びびり振動かを迅速に解析できる。デジタルフィルタはFFT解析と比較して遅れが小さく、さらに計算負荷が小さい。故にCPU11は加工びびり振動の成分を迅速に解析できる。
【0033】
デジタルフィルタの構成について説明する。図12に示すように、CPU11は、ローパスフィルタ(HLPF)51、ハイパスフィルタ(HHPF)52、バンドパスフィルタ(HBPF)53、及びノッチフィルタ(HNF)54により、解析処理を実行する。図13の表に示すように、ローパスフィルタ51は0〜300Hzの帯域を通過させる。ローパスフィルタ51の遮断周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりとが発生する周波数よりも低い周波数であり、本実施例では300Hzである。ハイパスフィルタ52は1600Hz以上の帯域を通過させる。本実施例のハイパスフィルタ52の遮断周波数は1600Hzである。バンドパスフィルタ53は600〜1000Hzの帯域を通過させる。バンドパスフィルタ53の通過帯域周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりとが発生する周波数帯域である。バンドパスフィルタ53の遮断周波数は600、1000Hzである。ノッチフィルタ54は、加工時の工具の刃数と主軸回転数の積(工具接触周波数)の整数倍でかつバンドパスフィルタ53の通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタである。本実施例では帯域幅を30Hzとし、遮断周波数は6400min−1で加工した場合は640Hzと853Hz、7800min−1で加工した場合は780Hzである。
【0034】
CPU11は、図12に示すフィルタリング手順を用いて、測定処理で推定した外乱トルクのフィルタリング処理を行う。バンドパスフィルタ53は主軸共振周波数(838Hz)付近の外乱トルクを抽出する。さらにノッチフィルタ54は工具接触周波数及びその整数倍の周波数を遮断する。故にCPU11は強制びびり振動の成分を遮断し、自励びびり振動成分(Tself)を取り出すことができる。反対にそれを図12に示す手順のように反転させることで、CPU11は強制びびり振動(Tforced)のみの成分を取り出すことができる。
【0035】
ハイパスフィルタ52は高周波のびびり振動(THPF)を抽出する。ローパスフィルタ51は摩擦トルクや通常切削時の切削トルクとして低周波の外乱トルク(TLPF)を抽出する。CPU11はフィルタリング結果の解析情報をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。
【0036】
図14、図15は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図14は、回転速度6400min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。図15は、回転速度7800min−1の条件下で推定した外乱トルクのフィルタリング結果を示すグラフである。図14、図15は何れも、上から順に高周波びびり振動成分(THPF)、自励びびり振動成分(Tself)、強制びびり振動(Tforced)を順に示している。
【0037】
図14、図15の何れにグラフにおいても、加工びびり振動の成分によってフィルタリング処理された外乱トルクの各成分が変化している。図14に示すように、6400min−1のフィルタリング結果によれば、1800〜2000Hzにピークが見られた2.8〜7.0秒において、ハイパスフィルタ52によってフィルタリングした高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。さらに793Hzにピークが見られた7.0〜7.7秒において、自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。
【0038】
一方、図15に示すように、7800min−1のフィルタリング結果によれば、工具接触周波数の3倍のピークが見られた1.5〜1.9秒では、強制びびり振動成分の振幅が大きくなっている。1800〜2000Hzにピークが見られた2.0〜2.7秒では、ハイパスフィルタ52によってフィルタリングした高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。793Hzにピークが見られた3.6〜6.0秒では、自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。強制びびり振動から自励びびり振動への遷移状態である2.7〜4.0秒では、強制びびり振動成分、及び自励びびり振動成分ともに振幅が大きくなっている。
【0039】
従って、CPU11は測定処理で推定した外乱トルクをデジタルフィルタを用いてフィルタリング処理を行うことで、加工びびり振動の成分を明確に特定できる。作業者は表示装置14の画面に表示した図14、又は図15のグラフを確認する。作業者は工作機械1の切削加工中に発生した加工びびり振動がどのような成分で発生しているかを明確かつ迅速に確認できる。さらに工作機械1は加工びびり振動を抑制回避する為の重要情報として利用できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の加工びびり振動検出装置10では、CPU11は先ず測定処理を実行する。CPU11は測定処理において切削加工中の外乱トルクを推定する。CPU11は解析処理を実行する。CPU11は解析処理において測定処理で推定した外乱トルクを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理により、切削加工中のびびり振動の成分、即ち、自励びびり振動か、強制びびり振動かを解析する。CPU11はS2で解析したデータに基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14は、CPU11から受信したグラフ情報を画面(図示略)に表示する。作業者は画面に表示したグラフ情報を確認することにより、切削加工中にどのような振動を生じているかを明確かつ容易に把握できる。
【0041】
また本実施形態では特に、CPU11は測定処理を実行する場合に、工作機械1の主軸モータ6に設けたエンコーダ6Aにより、主軸モータ6の駆動軸の位置情報を取得する。故に本実施形態は取得した駆動軸の位置情報に基づき、切削加工中の加工びびり振動を測定できる。
【0042】
また本実施形態では特に、工作機械1の主軸モータ6の駆動軸の位置情報と、主軸モータ6の電流モニタ値とに外乱オブザーバを適用することで切削加工中の外乱トルクを容易かつ迅速に推定できる。
【0043】
また本実施形態では特に、CPU11は解析処理において、ローパスフィルタ51、ハイパスフィルタ52、バンドパスフィルタ53、及びノッチフィルタ54を用いて外乱トルクのフィルタリング処理を行う。故に本実施形態は、推定した外乱トルクから加工びびり振動の成分(自励びびり振動、強制びびり振動)を明確かつ迅速に特定できる。
【0044】
また本実施形態では特に、CPU11の解析処理において、ローパスフィルタ51の遮断周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数とする。バンドパスフィルタ53の通過帯域周波数は、主軸7の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域である。ノッチフィルタ54のノッチ周波数は加工時の工具8の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつバンドパスフィルタ53の通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタである。故に本実施形態は、推定した外乱トルクから加工びびり振動の成分(自励びびり振動、強制びびり振動)を明確かつ迅速に特定できる。
【0045】
上記説明において、工作機械1は本発明の「加工機」の一例である。図2のS1の処理を実行するCPU11は本発明の「測定手段」の一例である。S2の処理を実行するCPU11は本発明の「解析手段」の一例である。S5の処理を実行するCPU11は本発明の「出力手段」の一例である。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、CPU11は解析処理において、デジタルフィルタでフィルタリング処理した解析情報をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力している。例えば、CPU11は解析処理で解析したフィルタリング結果についてさらに別の処理を行うことで、切削加工中に発生するびびり振動の成分の変化をさらに分かり易くしたグラフを、表示装置14の画面に表示することもできる。
【0047】
解析処理で得た解析情報をさらに処理してびびり振動の成分の特定をより明確に表示できる第1〜第3変形例について説明する。以下の第1〜第3変形例は上記実施形態と同様の構成、同様の処理を備えているので、異なる点を中心に説明する。
【0048】
第1変形例について説明する。第1変形例のCPU11は、上記の加工びびり振動検出処理の解析処理で解析された加工びびり振動の各成分のデータの絶対値を算出し、例えば400個のデータの移動平均を算出する。CPU11は算出した加工びびり振動の各成分の平均値をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。
【0049】
図16、図17は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。低周波成分の振幅平均値をTave_LPF、高周波成分の振幅平均値をTave_HPF、自励びびり振動成分の振幅平均値をTave_self、強制びびり振動成分の振幅平均値をTave_forcedとして示している。図16、図17に示すように、時間の経過と共に、加工びびり振動の各成分の振幅値が変動していることが確認できる。
【0050】
具体的にいえば、図16に示すように、回転速度6400min−1において、2.8〜7.0秒において高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。さらに7.0〜7.7秒において自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。これは上記実施形態の結果と同じである。一方、図17に示すように、回転速度7800min−1において、1.5〜1.9秒では強制びびり振動成分の振幅が大きくなっている。2.0〜2.7秒では高周波の外乱トルクの振幅が大きくなっている。3.6〜6.0秒では自励びびり振動成分の振幅が大きくなっている。強制びびり振動から自励びびり振動への遷移状態である2.7〜4.0秒では強制びびり振動成分、及び自励びびり振動成分ともに振幅が大きくなっている。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第1変形例は、上記実施形態に比較して、1つのグラフで時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分がどの程度発生しているかを明確に表示できる。
【0051】
第2変形例について説明する。第2変形例のCPU11は、第1変形例で算出した加工びびり振動の各成分の平均値を用いて、各成分の合計を1としたときの各成分の割合を算出する。CPU11は算出した加工びびり振動の各成分の割合からグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、解析した各グラフを画面(図示略)に表示する。一例として自励びびり振動の成分の割合を以下の式3に示す。なお、強制びびり振動成分、低周波成分、高周波成分についても同様に算出すればよい。
【数3】
【0052】
図18、図19は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図18は、回転速度6400min−1の振動成分の比率を示したグラフである。図19は、回転速度7800min−1の振動成分の比率を示したグラフである。低周波成分の振幅平均値をTave_LPF、高周波成分の振幅平均値をTave_HPF、自励びびり振動成分の振幅平均値をTave_self、強制びびり振動成分の振幅平均値をTave_forcedとして示している。
【0053】
図18、図19の各グラフは、図16、図17の各グラフに比較して、どのびびり振動の成分が最も発生しているかをより明確に表示できる。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第2変形例も、上記実施形態に比較して、1つのグラフで時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分が発生しているかを明確に表示できる。
【0054】
第3変形例について説明する。第3変形例のCPU11は、第1変形例で算出した加工びびり振動の各成分の平均値を用いて、どの加工びびり振動の成分が最も支配的に発生しているかを時間の経過に沿って判定する。CPU11は判定した加工びびり振動の各成分の変化に基づいてグラフ情報を作成し、表示装置14に出力する。
【0055】
第3変形例のCPU11が実行する加工びびり振動検出処理について、図20、図21のフローチャートを参照して説明する。CPU11は工作機械1の加工中信号に基づき工作機械1が加工中であることを認識すると、ROM12に記憶した加工びびり振動検出プログラム(変形例)を読み込んで本処理を実行する。CPU11は先ず上記の測定処理を実行する(S1)。CPU11は上記の解析処理を実行する(S2)。
【0056】
CPU11はさらに平均値算出処理を実行する(S3)。CPU11は解析処理でフィルタリングした外乱トルクをリアルタイムで比較する為、それぞれの絶対値を算出し、びびり振動の各成分の平均値を算出する。CPU11は加工びびり成分判定処理を実行する(S4)。
【0057】
加工びびり成分判定処理について、図21のフローチャートを参照して説明する。CPU11は、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)よりも大きいか否か判断する(S11)。CPU11は、高周波成分の振幅平均値が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S11:YES)、それは高周波振動成分として判定する。故に、CPU11は高周波振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。
【0058】
CPU11は、高周波成分の振幅平均値が3よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも小さい又は以下と判断した場合(S11:NO)、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)が4よりも、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)よりも大きいか否か判断する(S12)。CPU11は、自励びびり振動成分の振幅平均値が4よりも、高周波成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S12:YES)、それは自励びびり振動成分として判定する。故に、CPU11は自励びびり振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。
【0059】
CPU11は、自励びびり振動成分の振幅平均値が4よりも、高周波成分の振幅平均値よりも、強制びびり振動成分の振幅平均値よりも小さい又は以下と判断した場合(S12:NO)、強制びびり振動成分の振幅平均値(Tave_forced)が15よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値(Tave_self)よりも、高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)よりも大きいか否か判断する(S13)。CPU11は、強制びびり振動成分の振幅平均値が15よりも、自励びびり振動成分の振幅平均値よりも、高周波成分の振幅平均値よりも大きいと判断した場合(S13:YES)、それは強制びびり振動成分として判定する。故に、CPU11は強制びびり振動成分としてRAM13(図1参照)に記憶する(S14)。CPU11は加工びびり振動判定処理を終了し、図20のメインフローのS5に戻る。高周波成分の振幅平均値(Tave_HPF)と比較するS11、S12、S13の「3」「4」「15」の値は工具の種類によって変わる為、工具毎にパラメータとして設定することが望ましい。
【0060】
CPU11は、RAM13に記憶した判定結果をグラフ情報に変換し、表示装置14に出力する(S5)。表示装置14はCPU11から受信したグラフ情報に基づき、画面にグラフを表示する。図22、図23は、表示装置14の画面に表示した各グラフを示している。図22は、回転速度6400min−1における振動の支配成分の変化を示すグラフである。図23は、回転速度7800min−1における振動の支配成分の変化を示すグラフである。図22、図23に示すように、どの振動成分が最も支配的であるかを明確に表示できる。これらの結果は上記実施形態の結果と同じである。従って、第3変形例も、上記実施形態に比較して、1つのグラフで、時間の経過と共に加工びびり振動のどの成分が支配的であるかを明示できる。
【0061】
CPU11は工作機械1の切削加工が終了したか否か判断する(S6)。CPU11は工作機械1の切削加工が継続していると判断した場合(S6:NO)、S1に戻って処理を繰り返す。CPU11は工作機械1の切削加工が終了したと判断した場合(S6:YES)、加工びびり振動検出処理を終了する。
【0062】
なお、上記変形例1〜3の他にも、上記実施形態は種々の変更は可能である。上記実施形態では、工作機械1の切削加工中に発生する加工びびり振動を、主軸モータ6のトルク情報、エンコーダ6Aからの位置情報とに基づき、外乱オブザーバを適用して外乱トルクを推定することによって間接的に測定している。例えば、振動センサ(振動ピックアップ)等を用いて、主軸7の振動加速度を検出して、切削加工中に発生する加工びびり振動を測定してもよい。この場合、振動センサで得られたデータを、デジタルフィルタを用いたフィルタリング処理をすればよい。
【0063】
またびびり周波数は数百Hz以上と高く、サーボのフィードバック制御の応答域よりも高い。トルク情報は実際にはびびり周波数では変化していないので、トルク情報は使わず位置情報のみで外乱推定してもびびりモード判定としては同じ結果が得られる。
【0064】
また上記実施形態では、本発明の加工びびり振動検出装置の一実施例として振動検出装置10を説明したが、工作機械1を数値制御する数値制御装置であってもよい。この場合、例えば、加工びびり振動検出処理で得られた解析結果をフィードバックして、切削条件等を変更するようにしてもよい。
【0065】
また上記実施形態では、主軸モータの位置情報とトルク情報を用いて説明したが、X、Y、Z軸モータの情報を用いてもよいし、主軸、X、Y、Z軸の内から複数の情報を元に総合的に判断してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 工作機械
5 主軸ヘッド
6 主軸モータ
6A エンコーダ
7 主軸
8 工具
9 被切削物
10 振動検出装置
11 CPU
14 表示装置
51 ローパスフィルタ
52 ハイパスフィルタ
53 バンドパスフィルタ
54 ノッチフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した加工びびり振動又は加工負荷を解析する解析手段とを備えた加工びびり振動検出装置において、
前記解析手段は、前記測定手段が測定した前記加工びびり振動又は加工負荷から強制びびりを抽出する強制びびりデジタルフィルタ部と、自励びびりを抽出する自励びびりデジタルフィルタ部と、高周波びびりを抽出する高周波デジタルフィルタ部とのうち少なくとも一つ設け、
前記強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波びびりデジタルフィルタ部が抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち少なくとも一つを出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする加工びびり振動検出装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報を測定し、該位置情報に基づき、前記加工びびり振動又は加工負荷を測定することを特徴とする請求項1に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報とトルクとに基づいて外乱を推定する外乱オブザーバで構成したことを特徴とする請求項2に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項4】
前記自励びびりデジタルフィルタ部と前記強制びびりデジタルフィルタ部は、バンドパスフィルタとノッチフィルタとを備え、
前記高周波びびりデジタルフィルタ部はハイパスフィルタを備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項5】
前記ローパスフィルタの遮断周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数であり、
前記バンドパスフィルタの通過帯域周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域であり、
前記ノッチフィルタのノッチ周波数は加工時の工具の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつ前記バンドパスフィルタの通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項6】
前記解析手段は、
前記強制びびりデジタルフィルタ部、前記自励びびりデジタルフィルタ部、前記高周波デジタルフィルタ部において抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの各振幅の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値算出手段が算出した各平均値の比較に基づき、強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち何れの振動が支配的に発生しているかを時系列で判定する判定手段と
を備え、
前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項1】
ワークを加工する加工機の加工びびり振動又は加工負荷を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定した加工びびり振動又は加工負荷を解析する解析手段とを備えた加工びびり振動検出装置において、
前記解析手段は、前記測定手段が測定した前記加工びびり振動又は加工負荷から強制びびりを抽出する強制びびりデジタルフィルタ部と、自励びびりを抽出する自励びびりデジタルフィルタ部と、高周波びびりを抽出する高周波デジタルフィルタ部とのうち少なくとも一つ設け、
前記強制びびりデジタルフィルタ部、自励びびりデジタルフィルタ部、高周波びびりデジタルフィルタ部が抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち少なくとも一つを出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする加工びびり振動検出装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報を測定し、該位置情報に基づき、前記加工びびり振動又は加工負荷を測定することを特徴とする請求項1に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記加工機に設けた駆動軸の位置情報とトルクとに基づいて外乱を推定する外乱オブザーバで構成したことを特徴とする請求項2に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項4】
前記自励びびりデジタルフィルタ部と前記強制びびりデジタルフィルタ部は、バンドパスフィルタとノッチフィルタとを備え、
前記高周波びびりデジタルフィルタ部はハイパスフィルタを備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項5】
前記ローパスフィルタの遮断周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数よりも低い周波数であり、
前記バンドパスフィルタの通過帯域周波数は、主軸の自励びびりと強制びびりが発生する周波数帯域であり、
前記ノッチフィルタのノッチ周波数は加工時の工具の刃数と主軸回転数の積の整数倍でかつ前記バンドパスフィルタの通過帯域の周波数の範囲内の複数のノッチ周波数を持ったフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項6】
前記解析手段は、
前記強制びびりデジタルフィルタ部、前記自励びびりデジタルフィルタ部、前記高周波デジタルフィルタ部において抽出した強制びびり、自励びびり、高周波びびりの各振幅の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値算出手段が算出した各平均値の比較に基づき、強制びびり、自励びびり、高周波びびりのうち何れの振動が支配的に発生しているかを時系列で判定する判定手段と
を備え、
前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の加工びびり振動検出装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の加工びびり振動検出装置を備えたことを特徴とする工作機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−206230(P2012−206230A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75298(P2011−75298)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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