説明

加工ラインモジュール及び加工設備

【課題】複数の機能を備えた加工機を開発し、更に今までにない搬送手段を採用することにより、生産量のニーズの増減に容易に対応できるようにする。
【解決手段】ワーク124に対し機械加工を行う複数の加工機103−106と、ワーク124に対し機械加工以外の作業を行う非加工設備107、108との組み合わせからなり、前記複数の加工機103−106のうちの一つの加工機106はワーク124に対する機械加工機能だけでなくワーク124に対する計測機能も備える機能集約仕上げ加工機であり、更に前記加工機同士の間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークの搬送を行う、ロボット185−187を用いた搬送装置109を備え、ワーク124に対する一連の作業が行えるようにした加工ラインモジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対し一連の加工等を行う加工ラインモジュール及び加工設備に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、機械加工品の加工ラインは、それぞれの加工工程に特化した加工設備や非加工設備の一連の組み合わせで構成されている(特許文献1)。例えば、ワークに対しそれぞれの機械加工を行う多数の加工機(工作機械)と、ワークの洗浄、乾燥、部品の組み付けなどのワークに対する非加工作業を行う多数の装置とを並べて配置した構成となっている。このような加工ラインで生産能力を増大するには、一連のすべての設備(機械及び装置)を増やす必要があり、増産投資も大幅に増加する。一連のすべての設備を増やすので、増産量が予想通りとならない場合には過剰設備、過剰投資となってしまう。
【0003】
近年、あらゆる生産分野において生産要求量とライン能力が常に均等でかつ量変動に比例してライン増減が可能となるようなニーズが増してきているが、機械加工ラインではそれがなかなか達成できない。その主な原因は、上記加工ラインは、所詮工程特化(粗加工、仕上げ加工、組み付け、洗浄、リークテスト、計測、研削など)の機能でしかなく、これらを効率的に機能させる複合化させた設備や、これらをコンパクトにラインとして構成するための搬送手段などが未開発であることによる。
【0004】
【特許文献1】特公平1-16620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような技術的状況に鑑み、複数の機能を備えた加工機を開発し、更に今までにない搬送手段を採用することにより、生産量のニーズの増減に容易に対応できるようにする目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する第1の発明に係る加工ラインモジュールの構成は、ワークに対し機械加工を行う複数の加工機と、ワークに対し機械加工以外の作業を行う非加工設備との組み合わせからなり、前記複数の加工機のうちの少なくとも一つの加工機はワークに対する機械加工機能だけでなくワークに対する計測機能も備える機能集約加工機であり、更に前記加工機間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークの搬送を行う、ロボットを用いた搬送装置を備え、ワークに対する一連の作業が行えるようにしたことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する第2の発明に係る加工ラインモジュールの構成は、第1の発明に係る加工ラインモジュールにおける前記機能集約加工機が、仕上げ加工機能と計測機能とを備えるものであることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第3の発明に係る加工ラインモジュールの構成は、第1の発明に係る加工ラインモジュールにおける前記非加工設備が、ワークに対する部品の組み付けを行う組立装置及びワークの洗浄を行う洗浄装置の少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第4の発明に係る加工ラインモジュールの構成は、第1の発明に係る加工ラインモジュールにおいて、前記搬送装置が、前記加工機及び前記非加工設備に沿って設けられたレールと、このレール上に配され、ワークを搭載可能な台車と、前記加工機と前記非加工設備との間に配置され、前記台車を前記レールに沿って移動させ、かつ前記台車と前記加工機又は前記非加工設備との間、前記加工機間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークを搬送する7軸ロボットとからなるものであることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第5の発明に係る加工設備は、第1乃至第4の発明に係る加工ラインモジュールのいずれかを複数組み合わせてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明に係る加工ラインモジュールによれば、加工ラインモジュールが、ワークに対する一連の作業が行える最小単位となっており、加工ラインモジュールのみで、ワークに対し機械加工、組み付けなどの所望の一連の作業を行うことができる。そして、生産量の増加の要求に対しては、当該加工ラインモジュールを追加することにより対応することができる。
【0012】
上記第2の発明に係る加工ラインモジュールによれば、機能集約加工機が、仕上げ加工機能と計測機能とを備えるものであるので、ワークに対する一連の加工として仕上げ加工、加工後の計測を行うことができる。
【0013】
上記第3の発明に係る加工ラインモジュールによれば、非加工設備が、ワークに対する部品の組み付けを行う組立装置及びワークの洗浄を行う洗浄装置の少なくともいずれか一方であるので、ワークに対する一連の加工として、ワークに対する部品の取付け、洗浄などを行うことができる。
【0014】
上記第4の発明に係る加工ラインモジュールによれば、搬送装置が、前記加工機及び前記非加工設備に沿って設けられたレールと、このレール上に配され、ワークを搭載可能な台車と、前記加工機と前記非加工設備との間に配置され、前記台車を前記レールに沿って移動させ、かつ前記台車と前記加工機又は前記非加工設備との間、前記加工機間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークを搬送する7軸ロボットとからなるものとしたので、台車を駆動装置を有するものとする必要がなく、又ロボットを走行可能なものとする必要がなく、加工ラインモジュールの簡素化、低コスト化が図れる。
【0015】
上記第5の発明に係る加工設備によれば、上記第1乃至第4の発明の加工ラインモジュールのいずれかを複数組み合わせてなるので、生産量の増大、減少に容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1
以下、図面を用いて本件発明の実施の形態1について説明する。
図1は実施の形態1に係る加工ラインモジュールの概略平面図であり、図2A−図2Hはワークに対する加工例及び加工手順を示す斜視図、図3はパーツとトレーを示す斜視図、図4は機能集約組立装置の概略斜視図、図5はその概略平面図、図6は洗浄装置の概略斜視図、図7はその概略平面図、図8は加工ラインモジュールにおける搬送装置の一部を示す部分平面図、図9、10は搬送装置を示す斜視図、図11−図22は機能集約仕上げ加工機の各部を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、加工ラインモジュール101は、ワークに対し必要な部品を貯蔵し、かつ供給するパーツ貯蔵・供給部102と、パーツ貯蔵・供給部102に隣接しかつ対をなす如く設けられ、ワークに対しそれぞれ複数の加工を行う加工機(工作機械)としての第1機能集約加工機103及び第2機能集約加工機104と、第2機能集約加工機104に並べて設けられ、ワークに対し複数の加工を行う加工機としての第3機能集約加工機105と、この第3機能集約加工機105と対をなす如く並べて設けられ、ワークに対し仕上げ加工及び計測を行い得る機能集約仕上げ加工機106と、第1及び第2機能集約加工機103、104に対向しかつ第1及び第2機能集約加工機103、104に対して間隔をあけて設けられた機能集約組立装置107と、第3機能集約加工機105と機能集約仕上げ加工機106に対向しかつ第3機能集約加工機105及び機能集約仕上げ加工機106に対して間隔をあけて設けられた洗浄装置108と、各加工機103−106、機能集約組立装置107及び洗浄装置108にワークを搬送する搬送装置109とを備える。機能集約組立装置107の前記洗浄装置108と反対側の隣には、ワークを搬入するための素材投入レーン110と、加工及び組立終了後の完成品を搬出する完成品投入レーン111が設けられている。これらのレーン110、111は例えばローラコンベアなどで構成される。素材投入レーン110の投入端側の側方には、作業者による各種作業のための作業台112が設けられている。搬送装置109は、素材投入レーン110から供給されるワークを各加工機103−106、機能集約組立装置107、洗浄装置108に運ぶものであり、その詳細については後述する。
【0018】
パーツ貯蔵・供給部102は、パーツ貯蔵棚121と、パーツ貯蔵棚121と間隔をあけて設けられたパーツ供給棚122と、パーツ貯蔵棚121とパーツ供給棚122との間に設けられたパーツ供給ロボット123とからなる。パーツ貯蔵棚121には当該加工ラインモジュール101でのワークに対する作業に必要なパーツが貯蔵される。パーツ貯蔵棚121から、必要なパーツがパーツ供給ロボット123により取り出され、パーツ供給棚122にあるパーツトレーに供給される。パーツ供給ロボット123は、カメラを有し、独自にパーツを認識してパーツを取り出し、トレーに移すことができるようになっている。図3には、図2A−図2Hに示したワーク124(シリンダブロック)に必要なパーツである、ボルト125付きのベアリングキャップ126、及び埋め栓127を、パーツトレー128に配した様子を示す。パーツトレー128は、前述の搬送装置109により、機能集約組立装置107など所定の箇所に運ばれる。
【0019】
第1機能集約加工機103は、図2A、図2Bに示すように、ワーク124の両端面124a、124bを加工するものである。これらの面124a、124bが、後の加工でワーク124をセッティングする際の基準面となる。なお、ワーク124は、第1機能集約加工機103のテーブルに設けられているワーク取付台129に取付具130により反転した状態で固定され、水平面内で回転されることによりその両端面124a、124bが加工される。第2機能集約加工機104も第1機能集約加工機103と同様の加工機であるが、図2C、図2Dに示すように、ワーク取付台131に、ワーク124は立てた状態で取付具132により固定され、水平面内で回転されることによりシリンダブロックの上面及び下面である二面124c、124dが加工される。
【0020】
第3機能集約加工機105も機能集約加工機で、図2E、図2Fに示すように、ワーク124は、ワーク取付台133に、図2A、図2Bで示した状態とは180度反転した状態で、取付具134により固定される。この第3機能集約加工機105では、ワーク124の両側面にある凸部124eなどに、エアコンなどの補器を取り付けるためのボス加工、ねじ加工などがなされる。
【0021】
機能集約仕上げ加工機107は、前述の如く仕上げ加工と計測を行う機能集約加工機であり、ワーク124は、図2G、図2Hに示すように、ワーク取付台135上に設けられた取付治具136に横向き状態で取付具137により固定される。そして、ワーク124の上面124c及び両端面124a、124bが仕上げ加工されると共に、シリンダブロックのボア124fの仕上げ加工がなされる。更に、ボア124fの内径の計測が当該機能集約仕上げ加工機106により計測される。この機能集約仕上げ加工機106の詳細については後述する。
【0022】
機能集約組立装置107は、区画された直方状の部屋141として構成されている。部屋141の加工機103、104側の壁141aには、搬入・搬出口142が設けられている。部屋141内には、この搬入・搬出口142につなげてワーク載置台143が設けられており、ワーク載置台143に対し、3軸を有する作業ヘッド144が設けられている。作業ヘッド144の側方には、各作業用ヘッドを仮置きする作業ヘッド置き台145が設けられている。ワーク載置台143の端部には、ワークに対し種々の作業を行うための治具が位置交換可能に設けられている。治具としては、プラグ圧入治具146、中間リーク治具147、キャップ締め付け治具148、完成リーク治具149が備えられている。ワーク載置台143の側方において前記搬入・搬出口142の近くにはパーツトレー置き場150が設けられている。ワーク載置台143のパーツトレー置き場150が設けられている側には、パーツ移動用ロボット151が設けられている。ワーク載置台143のパーツ移動用ロボット151が設けられている側と反対側には、ワーク移動用ロボット152が設けられている。
【0023】
ワーク124は、搬送装置109により、搬入・搬出口142を通してワーク載置台143に搬入される。ワーク載置台143上に搬入されたワーク124は、ワーク移動用ロボット152により作業ヘッド144に移動され、種々の作業がなされる。一方、図3に示したパーツトレー128も搬送装置109により、搬入・搬出口142からワーク載置台143に搬入される。搬入されたパーツトレー128は、パーツ移動用ロボット151によりパーツトレー置き場150に移される。パーツトレー128のパーツは、パーツ移動用ロボット151により、必要に応じ作業ヘッド144下のワークに供給される。
【0024】
洗浄装置108は、中間洗浄機能と完成洗浄機能とを備えた機能集約型の洗浄装置である。洗浄装置108は区画された部屋161として構成されている。部屋161の加工機105、106側の壁161aには、搬入・搬出口162が設けられている。部屋161の中央部には割り出し機構付きのワーク支持装置163が設けられている。ワーク支持装置163は、90度間隔で配置された4つの脚部164を有し、各脚部164には、それぞれワーク受台165が設けられている。
【0025】
部屋161内においては、搬入・搬出口162のすぐ内側がワークの搬入・搬出ステーション166となっており、更に90度間隔で、第1中間洗浄ステーション167、第2中間洗浄ステーション168、完成洗浄ステーション169が設定されている。各洗浄ステーション167、168、169には、洗浄装置が設置されている。図6では、洗浄装置として、第1中間洗浄ステーション167に設けられている中間洗浄用ノズル170、171及び完成洗浄ステーション169に設けられている完成洗浄用ノズル172が現れている。ワーク支持装置163の中央部の上には洗浄ロボット173が設置されている。洗浄ロボット173は多自由度のロボットであり、ワーク124に生じたバリを除去するバリ取り、局部的に洗浄を行う狙い撃ち洗浄などの機能を備える。中間洗浄ステーションが二つ(第1中間洗浄ステーション167と第2中間洗浄ステーション168)備えられているのは、必要に応じ使い分け等するためである。洗浄に使われた洗浄液は再生されて再度使われる。そのため、洗浄装置108の外側には、洗浄液を回収して再生させる浄化設備174が設けられている。
【0026】
次に、搬送装置109について説明する。
この搬送装置109はロボットと台車を使った搬送装置である。ワークの移動をロボットだけで行おうとすると、各ロボットの届く範囲を大きくする、ロボットの台数を増やす、ロボットを駆動走行できるようにすることになる。いずれにしても設備の大型化やコストアップを招くことになる。この搬送装置109では、ロボットと台車との組み合わせにより、広範囲でのワークの搬送が可能で、しかもコンパクトでコストアップを招くことのない搬送装置を実現している。
【0027】
図1に示すように、ワークの搬入搬出を行う素材投入レーン110と完成品投入レーン111の端部近傍から第1機能集約加工機103と機能集約組立装置107との間にかけて第1レール181が敷かれ、この第1レール181に沿って移動可能に第1台車182が設けられている。第1台車182は、ワークを乗せるワーク受台182aと、ワーク受台182aの両側(第1台車182の移動方向両側)に張り出した設けられた牽引用のアーム部182b、182cを備えている。第2機能集約加工機104と機能集約組立装置107との間から第3機能集約加工機105と洗浄装置108との間にかけて第2レール183が敷かれており、この第2レール183に沿って移動可能に第2台車184が設けられている。第2台車184は、図8−図10に詳細に現れているように、ワーク受台184aを有し、その両側(第2台車184の移動方向両側)に牽引用のアーム部184b、184cが張り出して設けられている。なお、前述の第1台車182も第2台車184と同様の構造となっている。
【0028】
第1レール181の素材投入レーン110側の側方に第1搬送ロボット185が設置され、第1レール181と第2レール183との間に第2搬送ロボット186が設置され、第2レール183の第2搬送ロボット186が設置されている側とは反対側の側方に第3搬送ロボット187が設置されている。これらの搬送ロボット185、186、187はキャリアレス、つまり走行装置は備えていず、床面上を移動できるようにはなっていない固定型のロボットである。搬送ロボット185、186、187は、いずれも7軸以上の多関節ロボットであり、先端には、指188aが開閉してワークなどを把持及び解放可能なグリッパ188が備えられている。
【0029】
第2搬送ロボット186は、第1レール181の延長上で、第1機能集約加工機103と第2機能集約加工機104との間に設置されており、第1機能集約加工機103、第2機能集約加工機104には正対していない。同様に、第3搬送ロボット187も第3機能集約加工機105、機能集約仕上げ加工機106には正対していない。しかし、第2搬送ロボット186、第3搬送ロボット187は7軸以上の多関節ロボットであるので、ひねりの動作ができ、第2搬送ロボット186は第1機能集約加工機103、第2機能集約加工機104に、第3搬送ロボット187は第3機能集約加工機105、機能集約仕上げ加工機106にそれぞれアクセスできる。図8には、第3搬送ロボット187がひねり動作によりそのグリップ188が機能集仕上げ約加工機106に接近している様子を示す。
【0030】
第1搬送ロボット185は、パーツ供給棚122上にあるパーツトレー128を第1台車182のワーク受台182aに移し、素材投入レーン110の端部からワーク124を第1台車182のワーク受台182aに移し、第1台車182のワーク受台182a上のワーク124を完成品投入レーン111に移す作業をなす。
【0031】
第2搬送ロボット186は、第1台車182のワーク受台182a上のパーツトレー128を機能集約組立装置107の搬入・搬出口142から部屋141内におけるワーク載置台143上に移し、第1台車182のワーク受台182aと第1、第2機能集約加工機103、104及び機能集約組立装置107との間、第1機能集約加工機103、第2機能集約加工機104、機能集約組立装置107それぞれの間でワーク124の搬送を行う。第2搬送ロボット186は、更に第2台車184のワーク受台184aとの間でのワークの受け渡しも行う。
【0032】
第3搬送ロボット187は、第2台車184のワーク受台184aと第3機能集約加工機105、機能集約仕上げ加工機106及び洗浄装置108との間、第3機能集約加工機105、機能集約仕上げ加工機106、洗浄装置108それぞれの間でワークの搬送を行う。
【0033】
第3搬送ロボット187による第2台車184の移動例を図9、図10に示す。第2レール183上に第2台車184が位置し、第2台車184のワーク受台184a上にはワーク124が乗せられている。図9において、第2台車184のワーク受台184aは、第3搬送ロボット187の可動範囲D外にある。図8においても、第2台車184のワーク受台184aは、第2搬送ロボット186の可動範囲Dの外にある。
【0034】
図9に示すように、第3搬送ロボット187の先端のグリッパ188は、その可動範囲Dの外側にある第2台車184のワーク受台184a上のワーク124には届かないが、第2台車184の牽引用アーム184cには届く。第3搬送ロボット187のグリッパ188を第2台車184の牽引用アーム184cに引っ掛け、第3搬送ロボット187の動きにより第2台車184を第2レール183に沿って牽引し、第2台車184を第3搬送ロボット187側に引き寄せる。第2台車184が第3搬送ロボット187近くに引き寄せられた状態を図10に示す。第2台車184が近くに来たことにより、第3搬送ロボット187は、そのグリッパ188によりワーク124を把持することができるようになる。
【0035】
次に機能集約仕上げ加工機106について説明する。
機能集約仕上げ加工機6は、ワーク124に対しシリンダボアの内面の仕上げ加工とその内面の計測をも行うことができる。図11は機能集約仕上げ加工機106における主軸装置を示す部分断面図、図12は図11の要部拡大図、図13は図12の要部拡大図、図14は主軸装置に装着される工具を示す断面図、図15は主軸装置に装着される工具の他の断面図、図16は図14のA−A矢視断面図、図17は図14のB−B矢視断面図、図18乃至図20はそれぞれ図14,15,16に示す工具の他の状態を示す断面図、図21乃至図23はそれぞれ図14,15,16に示す工具の更に他の状態を示す断面図である。
【0036】
図11及び図12に示すように、機能集約仕上げ加工機106における主軸装置1は、ハウジング11にベアリング12を介して回動自在に収納支持される主軸13と、主軸13の軸線上に形成された軸孔13aに前後進可能に挿通される主軸側駆動軸としての主軸側ドローバー14とを備えている。
【0037】
主軸13には、先端部に工具ホルダー15を引き込み、この工具ホルダー15を主軸13と一体回転可能にするクランプ機構16が設けられると共に、その周壁に軸方向に沿って貫通する二つの計測エア供給路13bが軸心を挟んで対向するように穿設されている。この主軸13は、主軸側伝達ギヤ17及び主軸駆動モーター側伝達ギヤ18を介して、第一の駆動手段としての主軸駆動モーター19によって回転駆動される。
【0038】
計測エア供給路13bは先端側(工具側の端部)の開口部が工具2に形成された後述する計測エア供給路31dに対向配置され、また、基端側(工具側とは反対の端部)の開口部が、計測エア供給路13bに計測エアを供給するエアマイクロメータのエア供給接続ユニット20に対向配置されている。
【0039】
エア供給接続ユニット20は油圧により軸方向に前後進可能に構成されており、工具側に移動すると計測エア通路20aの先端に設けられたボールチェックバルブ20bのボール20cが主軸13側に当接して押圧され、計測エア通路20aが解放される。これによりエア供給部21から噴射される計測エアを計測エア供給路13bに供給することができるようになっている。なお、図11乃至図13に示す例では、一つの計測エア供給部21が図中下方の計測エア供給路13bに計測エアを供給し、他の計測エア供給部21が図中上方の計測エア供給路13bに計測エアを供給するように構成されている。
【0040】
また、主軸側ドローバー14はその先端部のクランプ機構16で工具ホルダー15の端面の小径部15aを引き込むことにより、工具ホルダー15を主軸13と一体にクランプするようになっており、その軸線上に工具2側にクーラントを供給するためのクーラント供給路14aを有すると共に、その基端部にはクーラントを供給する図示しないホースが接続されるトータルジョイント24が装着されている。この主軸側ドローバー14の基端側はベアリング22を介してドローバー駆動シャフト23に支持されている。
【0041】
ドローバー駆動シャフト23は、その周面にネジ部23aが形成されて、ハウジング11側に固定されたナット25に螺合するように構成される一方、ドローバー駆動シャフト側伝達ギヤ26、ドローバー駆動モーター側伝達ギヤ27を介してドローバー駆動モーター28により回転駆動されるように構成されている。
【0042】
即ち、ドローバー駆動シャフト23はドローバー駆動モーター28によって回転駆動されると、ネジ部23aがナット25に螺合していることにより軸方向に移動する。このとき、ドローバー駆動シャフト23はベアリング22を介して主軸側ドローバー14を支持しているため、主軸側ドローバー14にはドローバー駆動シャフト23の回転は伝達されず、軸方向の運動のみが伝達される。
【0043】
つまり、ドローバー駆動モーター28によりドローバー駆動シャフト23が回転駆動すると、主軸側ドローバー14はドローバー駆動シャフト23とは回転を切り離された状態で軸方向の移動のみを行う。このようにして主軸側ドローバー14を軸方向に移動させることにより、主軸側ドローバー14の前後進により開閉動作を行うコレット30を介して主軸側ドローバー14に着脱可能に連結された後述する工具側ドローバー32を軸方向へ駆動させることができる。
【0044】
上述した主軸装置に対し、図14乃至図17に示すように、本実施形態に係る主軸装置に装着される工具2は、ボーリング加工とホーニング加工とを兼用可能に構成されたボーリング加工及びホーニング加工兼用可変径工具であり、主に、工具本体31と、工具本体31の軸線上にある軸孔31aに軸方向に沿って前後進可能に支持される工具側ドローバー32と、工具本体31に設けられた後述する複数の刃部及び砥石とから構成されている。
【0045】
工具本体31は、その周壁31bにクーラントの流路となるクーラント供給路31c、及び、軸心を挟んで対向するように形成され、エアマイクロメータから計測エアが供給される二つの計測エア供給路31dを備えている。クーラント供給路31cは主軸側の端部が工具本体31の軸孔31aの表面に開口し他端側が工具本体31の先端側に向かって延びている。また、計測エア供給路31dは主軸側の開口部が主軸13に形成された計測エア供給路13bに対向するように配置され、工具先端側の開口部が工具本体31の周壁31bに設けられた測定エアノズル33に連通されている。更に、工具本体31は工具側ドローバー32を工具本体31に対して前後進可能に且つ一体に回転させるための回り止め機構34を備えている。
【0046】
そして、この工具本体31には、上述した刃部である第一の加工部材としての三つの中仕上げ用部材35及び一つの仕上げ用部材36と、第二の加工部材としての四つのホーニング用部材37が径方向に移動可能な状態で取り付けられている。
【0047】
これら中仕上げ用部材35、仕上げ用部材36及びホーニング用部材37は、図16及び図17に示すように中仕上げ用部材35及び仕上げ用部材36の四つの部材が周方向に等間隔に配置されると共に、これらの部材の間にそれぞれホーニング用部材37が等間隔に配置された状態となっている。
【0048】
また、工具側ドローバー32はその軸線上に、上述した工具本体31のクーラント供給路31cへクーラントを供給するクーラント供給路32aを備えている。クーラント供給路32aはその先端側の開口部が主軸側ドローバー14のクーラント供給路14aの開口部に連通する一方、工具先端側の開口部が工具本体31のクーラント供給路31cの軸孔31a側の開口部に対向している。これにより、主軸装置1側から供給されるクーラントを加工部まで供給するように構成されている。
【0049】
図14に示すように、中仕上げ用部材35は軸方向に延びる柱状の中仕上げバイト保持部35aと、該中仕上げバイト保持部35aに固定される中仕上げバイト35bとから構成されている。中仕上げバイト保持部35aはその基端側(図14では右側)がネジ38(図16参照)によって工具本体31に固定される一方、その工具本体31に対向する面のネジ38より工具先端側に、軸方向に直交する方向に沿って形成された切り欠き部35cを有している。そして、中仕上げバイト保持部35aの切り欠き部35cより工具先端側の径方向外方に中仕上げバイト35bが取り付けられている。
【0050】
同様に、仕上げ用部材36は軸方向に延びる柱状の仕上げバイト保持部36aと、該仕上げバイト保持部36aに固定される仕上げバイト36bとから構成されている。仕上げバイト保持部36aはその基端側(図14では右側)がネジ38によって工具本体31に固定される一方、その工具本体31に対向する面のネジ38より工具先端側に、軸方向に直交する方向に沿って形成された切り欠き部36cを有し、仕上げバイト保持部36aの切り欠き部36cより先端側の径方向外方に仕上げバイト36bが取り付けられている。
【0051】
そして、工具側ドローバー32の外周面にあって中仕上げ用部材35に対向する部分、及び、工具側ドローバー32の外周面にあって仕上げ用部材36に対向する部分には、それぞれ傾斜部(以下、それぞれ中仕上げ用テーパー面、仕上げ用テーパー面と呼称する)32b,32cが設けられている。
【0052】
本実施形態において、中仕上げ部材用テーパー面32bは主軸側から工具先端側に向かうに従って軸心からの距離が漸増するように傾斜している(例えば、傾斜角2度)。また、仕上げ部材用テーパー面32cは主軸側からほぼ主軸側ドローバー14の工具本体31に対する可動範囲で工具先端に向かうに従って軸心からの距離が漸増するように傾斜し(例えば、傾斜角3度)、それより工具先端側においては工具先端側に向かって軸心からの距離が漸減するように傾斜している。即ち、中仕上げ部材用テーパー面32bに比較して仕上げ部材用テーパー面32cの傾斜角度が大きくなるように構成されている。
【0053】
そして、中仕上げバイト保持部35aと中仕上げ部材用テーパー面32bとの間、及び、仕上げバイト保持部36aと仕上げ部材用テーパー面32cとの間には、それぞれ径方向に貫通するように設けられた第一の伝達手段としてのテーパー伝達ピン39が介在している。テーパー伝達ピン39は、工具本体31に固定された円筒状の保持部材40に、二つの半球体39aと、これらの間に介装される介装部材39bとを保持部材40の長手方向に摺動自在に収容して構成されている。半球体39aは、それぞれその球面部分が介装部材39bに接するように配置され、平面部分が中仕上げバイト保持部35a或いは中仕上げ部材用テーパー面32b、または、仕上げバイト保持部36a或いは仕上げ部材用テーパー面32cに当接するようになっている。
【0054】
また、図15に示すように、ホーニング用部材37は板状に形成された砥石保持部37aと、該砥石保持部37aの径方向外側の周面に固着された砥石37bとからなり、工具本体31に該工具本体31を径方向に貫通するように且つ径方向に摺動可能に構成されている。砥石保持部37aは工具側ドローバー32に対向する面に、段部を挟んで主軸側から工具先端側に向かって、工具側ドローバー32の中心に対する半径方向の寸法が漸減する二つの傾斜面37c,37dを備えている。なお、図15は図17のC−C矢視図である。
【0055】
更に、ホーニング用部材37と工具側ドローバー32との間には、砥石拡張プレート41が設けられている。砥石拡張プレート41は、砥石保持部37aとほぼ同等の厚みを有するものであって、その砥石拡張プレート41の外周面に、ホーニング用部材37の内周面と概ね同一形状となるように、段部を挟んで主軸側から工具先端側に向かって、工具ドローバー32の中心に対する半径方向の寸法が漸減するように傾斜する二つの傾斜面41a,41bを有している。なお、この砥石拡張プレート41は工具側ドローバー32の表面に貼り付けられた状態となっている。工具側ドローバー32の先端部には工具側ドローバー32と一体をなすように円筒部材47が被せられており、この円筒部材47に設けられたスリット47aに砥石拡張プレート41の内周部が嵌合している。なお、円筒部材47には、伝達ピン用スリット47bも形成されており、そこにテーパー伝達ピン39が通されている。
【0056】
このような砥石拡張プレート41には、砥石連動用ピン42が砥石拡張プレート41の段部から一端が突出するように固着され、また、砥石保持部37aには砥石連動用ピン42の砥石拡張プレート41から突出した部分を摺動可能に嵌入する孔部37eが形成されている。これら砥石連動用ピン42及び孔部37eは、ホーニング用部材37の傾斜面37c,37d及び砥石拡張プレート41の傾斜面41a,41bに平行に延びるように設けられている。
【0057】
なお、図14及び図15に示すように、工具本体31の先端には工具側ドローバー32の先端を覆うように有底の第一の筒状体46が設けられている。この筒状体46の底部には貫通孔が形成されており、この貫通孔に、油圧スプリング43が収納された有底の第二の筒状体45が挿通されている。油圧スプリング43は、工具側ドローバー32の先端に当接し該工具側ドローバー32を主軸側に付勢している。第二の筒状体45は筒状部材47の先端と一体に結合されている。
【0058】
また、第一の筒状体46の内部に位置する第二の筒状体45の開口部の外周縁にはフランジ部が形成されており、第一の筒状体46の内部であって、該第二の筒状体45のフランジ部と第一の筒状体46の底部との間に皿バネ44が介装されている。この皿バネ44は、第二の筒状体45を介して油圧スプリング43を工具側ドローバー32側に付勢している。
【0059】
次に、上記機能集約仕上げ加工機106を含む当該加工ラインモジュール101によるワーク124に対する加工及び作業手順の一例を説明する。この例は、以下の生産順序でなされる。
(1)素材の投入
(2)第1機能集約加工機103による加工
(3)第2機能集約加工機104による加工
(4)第3機能集約加工機105による加工
(5)洗浄装置108による中間洗浄及び真空乾燥
(6)機能集約組立装置107によるリークテスト
(7)機能集約組立装置107によるキャップの組み付けと締め付け
(8)機能集約仕上げ加工機106による仕上げ加工
(9)機能集約仕上げ加工機106によるホーニング加工
(10)機能集約仕上げ加工機106による検査
(11)洗浄装置108による完成洗浄及び真空乾燥
(12)機能集約組立装置107による埋め栓の組み付け
(13)機能集約組立装置107によるリークテスト
(14)完成品の搬出
【0060】
以下、上記生産手順の各手順を詳細に説明する。
(1)素材の投入
先ず、素材投入レーン110により素材であるワーク124が搬入される。この例では、ワーク124はシリンダブロックである。素材投入レーン110の投入側端部(第1搬送ロボット185側端部)にワーク124が来ると、ワーク124は、第1搬送ロボット185により把持されて第1台車182のワーク受台182a上に乗せられる。なお、このとき第1台車182は、第1レール181に沿って第1搬送ロボット185側に移動されている。第1台車182のワーク受台182a上にワークが乗せられると、第2搬送ロボット186により、第1台車182は第1レール181に沿って移動され、第1レール181の第2搬送ロボット186側端まで移動される。第2搬送ロボット186による第1台車182の移動は、前述したように、第1搬送ロボット185のグリッパ188の指188aを、第1台車182のアーム部182bに引っ掛けて引き寄せることにより行う。
【0061】
(2)第1機能集約加工機103による加工
第2搬送ロボット186側に移動された第1台車182のワーク受台182a上のワーク124は、第2搬送ロボット186のグリッパ188に把持されて第1機能集約加工機103のワーク取付台129にセットされる(図2A及び図2B)。第2搬送ロボット186は、7軸を有しているので、ワーク124の第1機能集約加工機103のワーク取付台129へのセットは支障なく行える。第1機能集約加工機103により、図2A及び図2Bに示したように、ワーク124の端面124a、124bの加工がなされる。
【0062】
(3)第2機能集約加工機104による加工
第1機能集約加工機103による加工が終了すると、ワーク124は、第1搬送ロボット185により第1機能集約加工機103のワーク取付台129から取り出され、そのまま第1搬送ロボット185により、第1機能集約加工機103の隣に位置する第2機能集約加工機104のワーク取付台131にセットされる(図2C及び図2D)。ワーク124は、図2C及び図2Dに示すように、図2A及び図2Bとは異なる向きでセットされる。第2機能集約加工機104においては、図2C及び図2Dに示すようにワーク124の上面124cと下面124cの加工がなされる。
【0063】
(4)第3機能集約加工機105による加工
第2機能集約加工機104による加工が終了すると、ワーク124は、第2搬送ロボット186のグリップ188により把持されて、第2レール183の第2搬送ロボット186の側の端に待機されている第2台車184のワーク受台184a上に乗せられる。ワーク受台184a上にワーク124が乗せられると、第2台車184は、そのアーム部184aに第2搬送ロボット186のグリッパ188が係合され、第2搬送ロボット186が伸びることにより押されて第2レール183に沿って移動される。第2台車184は、第2搬送ロボット186が伸びる限度で移動される。次に、図9に示すように、第3搬送ロボット187が伸びてそのグリッパ188の指188aが、第2台車184のアーム部184cに引っ掛けられ、第3搬送ロボット186が折り畳むように駆動されることによって第2台車184は第2レール183に沿って移動され、第2レール183の第3搬送ロボット187側の端まで移動される。つまり、第2搬送ロボット186及び第3搬送ロボット187のストロークが限られていて、ワーク124を移動させる距離がそれを超える場合であっても、当該ロボット186、187によりレール181、183に沿って押し引きされる台車182、184を使うことにより、ロボット186、187のストローク以上の範囲でワーク124を搬送することができるのである。
【0064】
第2レール183の第3搬送ロボット187側の端まで移動された第2台車184のワーク受台184a上のワーク124は、第3搬送ロボット187のグリッパ188により把持され(図10参照)、更に第3搬送ロボット187の回動等により第3機能集約加工機105のワーク取付台133に所定の姿勢で移動され固定される。第3機能集約加工機105により、ワーク124には図2E及び図2Fで示すように、多数の凸部124eなどの加工がなされる。
【0065】
(5)洗浄装置108による中間洗浄及び真空乾燥
第3機能集約加工機105により加工されたワーク124は、洗浄のため洗浄装置108に移される。第3機能集約加工機105から洗浄装置108へのワーク124の移動は、図8に示すように、洗浄装置108の搬入・搬出口162が第3搬送ロボット187の可動範囲D内にあることから、第3搬送ロボット187のグリッパ188で第3機能集約加工機105のワーク取付台133上のワーク124を掴み、第3搬送ロボット187の旋回駆動等により、直接洗浄装置108の搬入・搬出口162より直接搬入することによりなされる。ワーク124は、搬入・搬出口162の内側の搬入・搬出ステーション166に待機しているワーク受台165上に乗せられる。次に、ワーク支持装置163の割り出し回転による脚部164の旋回により、ワーク受台165は第1中間洗浄ステーション167に移動される。第1中間洗浄ステーション167においてワーク124は、中間洗浄用ノズル170、171から噴き出す洗浄液により洗浄される。ワーク124の洗浄後、真空引きによるブローにより水切りがなされる。なお、中間洗浄には、必要に応じ第1と第2の中間洗浄ステーション167、168を選択的にを使うこともできる。
【0066】
(6)機能集約組立装置107によるリークテスト
洗浄装置108により中間洗浄がされた後のワーク124は、次に機能集約組立装置107にてリークテストがなされる。洗浄装置108から機能集約組立装置107へワーク124を移動するには、先ず、洗浄装置108の搬入・搬出ステーション163に戻されたワーク124を第3搬送ロボット187で掴み、第2レール183に沿って第3搬送ロボット187側に待機されている第2台車184のワーク受台184aに載せる。次に、第3搬送ロボット187のグリッパ188を第2台車184のアーム部184cに引っ掛けて、第3搬送ロボット187を伸ばすことにより、第2レール183に沿って第2台車184を移動させる。第3搬送ロボット187の伸びる限度まで第2台車184を第2搬送ロボット186側に押し出す。次いで、第2搬送ロボット186のグリッパ188を第2台車184のアーム部184bに引っ掛け、第2搬送ロボット186を縮める如く作動させ第2台車184を第2レール183に沿って移動させ、第2搬送ロボット186の近くまで移動させる。
【0067】
第2台車184のワーク受台184a上のワーク124を第2搬送ロボット186で掴み、第2搬送ロボット186の回動等により、搬入・搬出口142を通してワーク載置台143上にワーク124を移す。ワーク124は、ワーク移動用ロボット152により作業ヘッド144の下に送られ、そこで、作業ヘッド144及び中間リーク治具147を用いてリークテストがなされる。
【0068】
(7)機能集約組立装置107によるキャップの組み付けと締め付け
機能集約組立装置107内のパーツトレー置き場150には、図3に示すようにベアリングキャップ126、埋め栓127などを配したパーツトレー128が供給される。パーツトレー128は、パーツ供給棚122より第1搬送ロボット185によって第1台車182のワーク受台182a上に移され、第2搬送ロボット186によりワーク受台182aから搬入・搬出口142を通して機能集約組立装置107のワーク載置台143上に移され、パーツ移動用ロボット151によりパーツトレー置き場150に移される。
【0069】
ワーク124には、作業ヘッド144及びキャップ締め付け治具148により、ベアリングキャップ126がボルト125を締め付けることにより取り付けられる。
【0070】
(8)機能集約仕上げ加工機106による仕上げ加工
機能集約組立装置107においてベアリングキャップ126が組み付けられた後、ワーク124は、仕上げ加工のため機能集約仕上げ加工機106に搬送される。先ず、ワーク移動用ロボット152により、ワーク124は、ワーク移動用ロボット152により作業ヘッド144の下方よりワーク載置台143の搬入・搬出口142近くに移動される。次いで、第2搬送ロボット186の先端のグリッパ188が搬入・搬出口142から機能集約組立装置107に入り込み、ワーク124を把持して機能集約組立装置107外に取り出す。一方、第2レール183の第2搬送ロボット186寄りに第2台車184が待機しており、第2搬送ロボット186により取り出されたワーク124は、第2台車184のワーク受台184aに乗せられる。そして、第2搬送ロボット186がそのグリッパ188を第2台車184のアーム部184bに係合させて第2台車184を第3搬送ロボット187側に向けて第2レール183に沿って押して行く。第2搬送ロボット186が所定距離第2台車184を押すと、次いで、第3搬送ロボット187が伸びてそのグリッパ188が第2台車184のアーム部84cに引っ掛けられる。そして、第3搬送ロボット187が、図10に示すように折り畳まれる如く作動されることによって、第2台車184は、第2レール183に沿って第3搬送ロボット187近くに移動される。
【0071】
第2台車184のワーク受台184a上のワーク124は、第3搬送ロボット187のグリッパ188により把持され、第3搬送ロボット187の作動により、機能集約仕上げ加工機106のワーク取付台135に移動され、図2G及び図2Hに示すようにワーク取付台135の取付治具136にセットされ、取付具137により固定される。図8には、第3搬送ロボット187によりワーク124を機能集約仕上げ加工機106にセットしている状態を示す。
【0072】
機能集約仕上げ加工機106により先ず図2G、図2Hに示すように、ワーク24の上面及び両側面の仕上げ加工がなされる。
【0073】
(9)機能集約仕上げ加工機106によるホーニング加工
次に機能集約仕上げ加工機106による穴あけ加工及びホーニングの手順について説明する。
先ず、機能集約仕上げ加工機106の主軸装置1におけるドローバー駆動モーター28によってドローバー駆動シャフト23を回転駆動し、主軸側ドローバー14を介して工具側ドローバー32を中仕上げ加工位置(図18乃至図20に示す位置)に移動させる(以下、この状態を中仕上げ加工配置と呼称する)。
【0074】
図18及び図20に示すように、中仕上げ加工配置においては、図14乃至図16に示した状態に比較して中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cのそれぞれテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅が大きくなっている。そのため、中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cに当接しているテーパー伝達ピン39は、保持部材40内を径方向外側に向かって摺動し、中仕上げバイト保持部35a、仕上げバイト保持部36aの概ね中仕上げバイト35b、仕上げバイト36bに対応する位置を押圧する。
【0075】
ここで、中仕上げバイト保持部35aは、上述したように該中仕上げバイト保持部35aの基端側、換言すると、軸方向の幅に対して偏った位置をネジ止めされることにより工具本体31に固定されていると共に、工具側ドローバー32に対向する面41fに切り欠き部35cを有している。そのため、テーパー伝達ピン39によって押圧されると、主に切り欠き部35cから中仕上げバイト35b側の部分が弾性変形を生じ、それに伴って、中仕上げバイト35bが径方向外側へと移動する。
【0076】
また、仕上げバイト保持部36aについても同様に、基端側、即ち、軸方向の幅に対して偏った位置をネジ止めされることにより工具本体31に固定されていると共に、工具側ドローバー32に対向する面42fに切り欠き部36cを有しているため、テーパー伝達ピン39によって押圧されると、主に切り欠き部36cから仕上げバイト36b側の部分が弾性変形を生じ、それに伴って、仕上げバイト36bが径方向外側へと移動する。
【0077】
このとき、中仕上げ部材用テーパー面32bと仕上げ部材用テーパー面32cとはその傾斜角が異なり、中仕上げ部材用テーパー面32bのテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅が、仕上げ部材用テーパー面32cのテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅に比較して大きくなる。そのため、中仕上げ加工配置においては中仕上げバイト35bが仕上げバイト36bに比較して径方向外側に突出した状態となる。
【0078】
更に、図19及び図20に示すように、ホーニング用部材37は、図15に示した状態に比較して砥石拡張プレート41側、即ち径方向内側に移動し、砥石37bの表面が少なくとも中仕上げバイト35bの外径より径方向内側に位置する状態となる。
【0079】
即ち、中仕上げ加工配置においては、中仕上げバイト35bの外径が仕上げバイト36b、砥石37bの外径に比較して大きくなるように工具側ドローバー32を移動させる。なお、中仕上げバイト35bの外径は、例えば、要求される完成径より直径が0.1mm程度小さくなるようにする。
【0080】
上述したように工具側ドローバー32を中仕上げ加工位置に移動させたら、主軸駆動モーター19によって主軸13を回転駆動し、ワークに対して中仕上げバイト35bによる中仕上げ加工を行う。
【0081】
中仕上げ加工が終了したら、続いて主軸13の回転は維持しつつ、ドローバー駆動モーター28によってドローバー駆動シャフト23を回転駆動し、主軸側ドローバー14を介して工具側ドローバー32を仕上げ加工位置(本実施形態では、図21乃至図23に示す位置)に後退させた状態(以下、このような状態を仕上げ加工配置と呼称する)とする。
【0082】
なお、中仕上げ加工配置から仕上げ加工配置へ工具側ドローバー32を移動させる際、油圧スプリング43及び皿バネ44によって工具側ドローバー32が主軸側へ付勢されるため、コレット30を介して主軸側ドローバー14に連結されている工具側ドローバー32を主軸側ドローバー14に確実に追従させることができる。
【0083】
図21及び図23に示すように、仕上げ加工配置においては、図18乃至図20に示した状態に比較して更に中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cのそれぞれテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅が大きくなっている。そしてそれに伴い、中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cに当接しているテーパー伝達ピン39は、保持部材40内を径方向外側に向かって更に摺動し、中仕上げバイト保持部35a、仕上げバイト保持部36aの概ね中仕上げバイト35b、仕上げバイト36bに対応する位置を更に押圧する。
【0084】
これにより、中仕上げバイト35bは更に切り欠き部35cから中仕上げバイト35b側の部分の弾性変形が大きくなり、中仕上げバイト35bが径方向に対してより外側へ移動した状態となる。また、仕上げバイト36bについても同様に、切り欠き部36cから仕上げバイト36b側の部分の弾性変形が大きくなり、仕上げバイト36bが径方向に対してより外側へと移動した状態となる。
【0085】
そしてこのとき、中仕上げ部材用テーパー面32bと仕上げ部材用テーパー面32cとはその傾斜角の違いにより、図18乃至図19に示した中仕上げ加工配置の場合と異なり、中仕上げ部材用テーパー面32bのテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅が、仕上げ部材用テーパー面32cのテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅に比較して小さくなっている。そのため、仕上げ加工配置においては仕上げバイト36bが中仕上げバイト35bに比較して径方向外側に突出した状態となる。
【0086】
また、図22に示すように、ホーニング用部材37は、図20に示した状態に比較してより砥石拡張プレート41側(径方向内側)に移動し、砥石37bの表面が仕上げバイト36bの外径より径方向内側に位置する状態を維持する。
【0087】
このように、仕上げ加工配置においては、仕上げバイト36bの外径が中仕上げバイト35b、砥石37bの外径に比較して大きくなるように工具側ドローバー32を移動させる。例えば、仕上げバイト36bの外径は完成径に設定される。
【0088】
このようにして仕上げ加工を行ったら、ドローバー駆動モーター28によってドローバー駆動シャフト23を回転駆動し、主軸側ドローバー14を介して工具側ドローバー32を前進(例えば、中仕上げ加工位置まで)させる。これにより、中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cのテーパー伝達ピン39に対向する位置は径方向の幅が小さくなり、保持部材40内でテーパー伝達ピン39が径方向内側へ摺動すると共に、中仕上げバイト保持部35a及び仕上げバイト保持部36aの弾性変形している部分が復元力により軸心方向に移動する。これにより図21乃至図23に示す状態に比較して中仕上げバイト35b、仕上げバイト36bが径方向内側へ移動する。
【0089】
(10)機能集約仕上げ加工機106による検査
続いて主軸駆動モーター19を停止して主軸13の回転駆動を停止させた後、エアマイクロメータを用いてワーク124に形成された穴の径を計測する。
【0090】
以下に、エアマイクロメータによる穴の径の計測について説明する。エアマイクロメータによる穴の径の計測を行う場合、図13に示すNC装置3からシーケンサ29cへ計測指令が出力されて、シーケンサ29cから制御装置29bに計測指令信号が出力されると、制御装置29bによってA/D変換機29aや計測エア供給源29d、エア供給接続ユニット20の制御が開始される。油圧によってエア供給接続ユニット20が工具2側へ移動されると、計測エア供給源29dからA/D変換機29aを介して供給される計測エアが、計測エア供給路13b、計測エア供給路31dを介して測定エアノズル33の噴き出し口からそれぞれ噴出する。
【0091】
このときにA/D変換機29aでは計測用エアの圧力(計測用エアの流量に相当)を検出し、この検出信号を制御装置29bへ出力する。制御装置29bでは、A/D変換機29aから出力された圧力検出信号から計測エアの流量を求め、この計測用エアの流量と、予め記憶されている計測用エア流量と穴径の関係を表すデータに基づいて被測定物の加工穴の直径を求めるようになっている。
【0092】
そして、エアマイクロメータによる計測が終了したら、計測結果に基づいて主軸駆動モーター19によりドローバー駆動シャフト23を回転駆動させ、主軸側ドローバー14を介して工具側ドローバー32をホーニング加工位置(本実施形態では、図14乃至図16に示す位置)まで前進させた状態(以下、このような状態をホーニング加工配置と呼称する)とする。
【0093】
図14乃至図16に示すように、ホーニング加工配置においては、図18乃至図20に示した状態に比較して中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面321cのそれぞれテーパー伝達ピン39に対向する位置の径方向の幅が小さくなっている。そのため、中仕上げ部材用テーパー面32b、仕上げ部材用テーパー面32cに当接しているテーパー伝達ピン39は、保持部材40内を更に径方向内側に向かって摺動し、工具本体31内に収まった状態となる。
【0094】
これにより、中仕上げバイト保持部35a及び仕上げバイト保持部36aは弾性変形が解消されてもとの形状に戻り、中仕上げバイト35b、仕上げバイト36bが中仕上げ加工配置、仕上げ加工配置に比較して径方向内側へ移動した状態となる。
【0095】
これに対し、ホーニング用部材37は、砥石拡張プレート41の傾斜部41a,41bに沿って径方向外側へ移動し、ホーニング用部材37が径方向外側へ移動する。これにより、砥石37bの外径が中仕上げバイト35b及び仕上げバイト36bの外径に比較して径方向外側に突出した状態となる。
【0096】
このように、ホーニング加工配置においては、砥石37bの外径が中仕上げバイト35b、仕上げバイト36bの外径に比較して大きくなるように工具側ドローバー32を移動させる。例えば、砥石37bの外径は完成径+20μm程度となるように設定される。
【0097】
更に、本実施形態では、ホーニング加工を行う際にエアマイクロメータを用いて常時ワーク24の穴の直径を監視し、加工の状態に応じてドローバー駆動モーター28により工具側ドローバー32の位置を補正しつつ、ワーク124の穴の直径が要求寸法になるまでホーニング加工を行うものとする。
【0098】
エアマイクロメータによる計測によってワーク124の穴の直径が所定の寸法に達したら、ドローバー駆動モーター28を用いて工具側ドローバー32の位置を例えば図18乃至図20に示した中仕上げ加工位置まで後退させる。
【0099】
ここで、ホーニング加工位置から主軸側ドローバー14を後退させる場合には、砥石拡張プレート41がホーニング用部材37に対して主軸側へ移動することとなる。ホーニング用部材37と砥石拡張プレート41とは砥石連動用ピン42によって連結されているため、上述したようにホーニング用部材37が移動すると砥石連動用ピン42が孔部37eに進入し、これに伴いホーニング用部材37が径方向内側へ引っ張られるように移動することによりホーニング用部材37が径方向内側へ移動する。
【0100】
このようにして砥石37bの外径を縮小させたら、主軸駆動モーター19を停止して主軸13の回転を停止させ、機能集約仕上げ加工機106による加工処理を終了する。
【0101】
以上に説明したように、本実施形態に係る機能集約仕上げ加工機106によれば、バイトによるボーリング加工から砥石を用いたホーニング加工までの一連の加工工程を一台の機械で行うことができるため、作業性の向上、及び、加工にかかるコストの低減が図れる。
【0102】
(11)洗浄装置108による完成洗浄及び真空乾燥
機能集約仕上げ加工機106による加工及び検査が終了すると、ワーク124は、第3搬送ロボット187より取り出されて、搬入・搬出口162から洗浄装置108内に搬入される。洗浄装置108においては、ワーク124は、搬入・搬出口162の内側の搬入・搬出ステーション166に待機しているワーク受台165上に乗せられる。ワーク支持装置163の割り出し回転による脚部164の移動によりワーク受台165は完成洗浄ステーション169に移動される。完成洗浄ステーション169においてワーク124は、完成洗浄用ノズル172からの洗浄液により洗浄される。ワーク124は、また、洗浄ロボット173に備えられた洗浄ノズルより噴出される洗浄水によっても洗浄がなされる。洗浄ロボット173は、ワーク124の所定箇所に狙いを定めて洗浄水を噴き付けることができ、加工により生じたバリも除去することができる。洗浄後、ワーク124に付着している洗浄水はブローにより真空引き等により噴き飛ばされ、かつ乾燥される。洗浄・乾燥後のワーク124は、ワーク支持装置163のワーク受台165の割り出し回転により洗浄装置108の搬入・搬出ステーション166に移動される。
【0103】
(12)機能集約組立装置107による埋め栓の組み付け
第3搬送ロボット187により、洗浄装置108の搬入・搬出ステーション166に位置するワーク受台125上のワーク124は把持されて洗浄装置108外に取り出され、第3搬送ロボット187側に待機している第2台車184のワーク受台184a上に移され、第2台車184は、第3搬送ロボット187、第2搬送ロボット186により、第2レール183の第2搬送ロボット186側に移動される。第2搬送ロボット186側に来た第2台車184のワーク受台184a上のワーク124は、第2搬送ロボット186により把持されて、機能集約組立装置107の搬入・搬出口142より部屋141内のワーク載置台143に置かれる。この後、ワーク124は、ワーク移動用ロボット152により作業ヘッド144の下方に移動され、プラグ圧入治具146などにより埋め栓127がワーク124の所定の箇所にそれぞれ圧入により組み付けられる。なお、埋め栓127は、前述のようにパーツトレー128により予めパーツトレー置き場150に供給されている。
【0104】
(13)機能集約組立装置107によるリークテスト
埋め栓127が組み付けられたワーク124は、完成リーク治具149を用いて漏れがないかどうか検査される。
【0105】
(14)完成品の搬出
機能集約組立装置107にてリークテストが終了したワーク124は、完成品として搬出される。完成品であるワーク124を搬出するには、先ず、リークテストが終了したワーク124を、ワーク移動用ロボット152によりワーク載置台143における搬入・搬出口142近くに移動する。第2搬送ロボット186のグリッパ188が搬入・搬出口142から入り込んでワーク124を掴み、第2搬送ロボット186側に移動されている第1台車182のワーク受台182aに乗せる。第1台車182は、第2搬送ロボット186に押され、次いで第1搬送ロボット185により引っ張られて第1レール181の第1搬送ロボット185側に移動される。この後、第1台車182のワーク受台182a上のワーク124は、第1搬送ロボット185により掴まれ、搬出レーン111に移される。搬出レーン111上を移動されてワーク124は搬出される。
【0106】
以上説明したように、この実施の形態1に係る加工ラインモジュール101によれば、機械加工だけでなく検査の機能も備えた機能集約仕上げ加工機106を備え、更に、今までにない、ロボット185、186、187と台車182、184とからなる搬送装置109を採用することにより、ワーク124の投入から加工、検査、部品の組み付け等の一連の作業が行えるコンパクトな設備が実現できる。また、この加工ラインモジュール101を組み合わせることにより、生産量のニーズの増減に容易に対応することができる。
【0107】
実施の形態2
図24は、実施の形態2に係る加工ラインモジュール201の概略図である。
この加工ラインモジュール201は、加工機に自動パレット交換装置(APC)を備えて加工機の数を更に減らしたものである。第1機能集約加工機202と、第2機能集約加工機203としての機能集約仕上げ加工機を有している。レイアウトは異なるがパーツ貯蔵・供給部102、機能集約組立装置107、洗浄装置108を備える点については図1に示した加工ラインモジュール101と同じである。加工機の数が少なくなったことから、ワークを運搬する搬送装置204の構成は、図1に示した加工ラインモジュール101における搬送装置109とは違ったものとなっている。搬送装置204は、一つのレール205、それに沿って移動する一つの台車206、レール205の両端にそれぞれ設けられた7軸の搬送ロボット207、208とからなる。
【0108】
この実施の形態2に係る加工ラインモジュール201は、自動パレット交換装置による自動での治具の交換、加工機に備えられた自動工具交換装置(ATC)による自動での工具の交換、7軸ロボットの使用等により更にフレキシビリティを有する。
【0109】
なお、実施の形態1及び2においては、加工機をいずれも機能集約加工機としたが、専用機と機能集約加工機との組み合わせであってもよい。また、非加工設備として洗浄装置と機能集約組立装置を備えているが、必要に応じどちらか一つとされることもある。要は、要求される、切削、研削などの機械加工、組立などの非加工作業、及びそれらの搬送の一連の作業が、一つのラインモジュールで完了するように加工機、非加工設備、搬送装置を組み合わせるのである。
【0110】
実施の形態3
図25は、実施の形態3に係る加工設備の平面概略図である。
この加工設備301は、図1に示した加工ラインモジュール101と同様の構成の4つの加工ラインモジュール302a、302b、302c、302dを組み合わせたものである。パーツ貯蔵・供給部303、304は、隣り合う加工ラインモジュール302aと302b、302cと302dとで共用することができる。パーツ貯蔵・供給部303、304の構成は、図1に示したパーツ貯蔵・供給部102と同じである。なお、図25において、図1に示した機器と同じものには同じ符号を付して示してある。
【0111】
この実施の形態3に示すように、ワークの一連の加工に必要な機能を備えた加工機、装置、設備の組み合わせである加工ラインモジュール101を増設することにより、生産数の増大の要求に応えることができる。各加工ラインモジュール302a−302dにより、所定の加工開始から所定の加工終了までの一連の作業が行えるので、生産量の調整が容易となり、また、一部の加工ラインモジュールに不具合があった場合でも生産が完全に停止することはない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加工ラインモジュールの概略平面図である。
【図2A】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第1機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2B】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第1機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2C】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第2機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2D】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第2機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2E】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第3機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2F】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける第3機能集約加工機による加工例の斜視図である。
【図2G】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける機能集約仕上げ加工機による加工例の斜視図である。
【図2H】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける機能集約仕上げ加工機による加工例の斜視図である。
【図3】パーツトレーの斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける機能集約組立装置の概略斜視図である。
【図5】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける機能集約組立装置の概略平面図である。
【図6】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける洗浄装置の概略斜視図である。
【図7】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける洗浄装置の概略平面図である。本発明の図である。
【図8】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける搬送装置の一部を示す部分平面図である。
【図9】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける搬送装置の斜視図である。
【図10】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける搬送装置の斜視図である。
【図11】実施の形態1に係る加工ラインモジュールにおける機能集約仕上げ加工機の主軸装置全体の構造を示す部分断面図である。
【図12】図11に示した主軸装置の主軸を示す構造断面図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】主軸装置に装着される工具の一例を示す断面図である。
【図15】図14に示す工具の他の断面図である。
【図16】図14のA−A矢視断面図である。
【図17】図14のB−B断面図である。
【図18】図14に示す工具においてドローバーを後退させた状態を示す断面図である。
【図19】図18に示す工具の他の断面図である。
【図20】図16に示す工具においてドローバーを後退させた状態を示す断面図である。
【図21】図18に示す工具においてドローバーを更に後退させた状態を示す断面図である。
【図22】図21に示す工具の他の断面図である。
【図23】図20に示す工具においてドローバーを更に後退させた状態を示す断面図である。
【図24】実施の形態2に係る加工ラインモジュールの概略平面図である。
【図25】実施の形態3に係る加工設備の概略平面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 機能集約仕上げ加工機の主軸装置、13 主軸、14 主軸側ドローバー、15 工具ホルダ、31 工具本体、32 工具側ドローバー、33 測定エアノズル、35b 中仕上げバイト、36b 仕上げバイト、37 ホーニング用部材、37b 砥石、101 加工ラインモジュール、102 パーツ貯蔵・供給部、103 第1機能集約加工機、104 第2機能集約加工機、105 第3機能集約加工機、106 機能集約仕上げ加工機、107 機能集約組立装置、108 洗浄装置、109 搬送装置、110 投入レーン、111 搬出レーン、121 パーツ貯蔵棚、122 パーツ供給棚、123 パーツ供給ロボット、124 ワーク(シリンダブロック)、126 ベアリングキャップ、127 埋め栓、128 パーツトレー、129,131,133,135 ワーク取付台、144 作業ヘッド、146 プラグ圧入治具、147 中間リーク治具、148 キャップ締め付け治具、149 完成リーク治具、150 パーツトレー置き場、151 パーツ移動用ロボット、152 ワーク移動用ロボット、162 搬入・搬出口、163 ワーク支持装置、164 脚部、165 ワーク受台、166 搬入・搬出ステーション、167 第1中間洗浄ステーション、168 第2中間洗浄ステーション、169 完成洗浄ステーション、173 洗浄ロボット、181 第1レール、182 第1台車、182a ワーク受台、182b,182c アーム部、183 第2レール、184 第2台車、184a ワーク受台、184b,184c アーム部、185 第1搬送ロボット、186 第2搬送ロボット、187 第3搬送ロボット、188 グリッパ、201 加工ラインモジュール、301 加工設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対し機械加工を行う複数の加工機と、ワークに対し機械加工以外の作業を行う非加工設備との組み合わせからなり、前記複数の加工機のうちの少なくとも一つの加工機はワークに対する機械加工機能だけでなくワークに対する計測機能も備える機能集約加工機であり、更に前記加工機間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークの搬送を行う、ロボットを用いた搬送装置を備え、ワークに対する一連の作業が行えるようにしたことを特徴とする加工ラインモジュール。
【請求項2】
前記機能集約加工機は、仕上げ加工機能と計測機能とを備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の加工ラインモジュール。
【請求項3】
前記非加工設備が、ワークに対する部品の組み付けを行う組立装置及びワークの洗浄を行う洗浄装置の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の加工ラインモジュール。
【請求項4】
前記搬送装置が、前記加工機及び前記非加工設備に沿って設けられたレールと、このレール上に配され、ワークを搭載可能な台車と、前記加工機と前記非加工設備との間に配置され、前記台車を前記レールに沿って移動させ、かつ前記台車と前記加工機又は前記非加工設備との間、前記加工機間、前記加工機と前記非加工設備との間でワークを搬送する7軸ロボットとからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の加工ラインモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加工ラインモジュールを複数組み合わせてなることを特徴とする加工設備。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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