説明

加熱調理器

【課題】触媒の高さを調理庫の天井面から焼き網付近までとし、製品の奥行きに制限されず触媒の油煙通過面の投影面積を広くし、触媒の除煙能力を高めること。
【解決手段】触媒38の後面が排気筒の前方壁面よりも前方で調理庫後面に略平行に配置し、加熱ヒーター32の後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、庫内加熱面43と触媒加熱面44とを形成し、触媒加熱面を触媒の風上側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭等で使用する、魚などの被調理物を調理する調理庫を備える加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、調理庫内で発生した調理中の油煙を外部に排出するための第1の排気経路の隣に、同じく油煙を外部に導く第2の排気経路を、遮熱板を隔てて設け、第1の排気経路と第2の排気経路は上流側で合流し、第2の排気経路に排気の温度を検知する温度検知手段を設けている。
【0003】
また、調理庫内の上部の調理用ヒーターの後部を、排気経路途中に設けた触媒の直下近傍まで延長し設けているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された従来の加熱調理器を示すものである。
【0005】
図6に示すように、調理庫2内で発生した調理中の油煙を外部に排出するための第1の排気経路6の隣に、同じく油煙を外部に導く第2の排気経路9(図示せず)を、遮熱板10を隔てて設け、第1の排気経路と第2の排気経路は上流側で合流し、第2の排気経路に排気の温度を検知する温度検知手段11を設けている。
【0006】
調理庫2の入り口と反対面の後方上部に、調理庫2内で発生した調理中の油煙を外部に排出するための第1の排気経路6を設け、排気経路6の途中には触媒7を設けている。
【0007】
調理庫2内の上部の調理用ヒーター17の後部を触媒7直下近傍まで延長し設けている。
【0008】
調理を開始すると、調理用ヒーター17が通電され触媒7も同時に温度が上昇し、調理用ヒーター17で触媒加熱ヒーターの働きを得ることができるように構成されている。
【特許文献1】特開2004−261486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の加熱調理器の構成では、第1の排気経路6の隣に、同じく油煙を外部に導く第2の排気経路9を、遮熱板10を隔てて設け、第1の排気経路6と第2の排気経路9は上流側で合流し、第2の排気経路9に排気の温度を検知する温度検知手段11を設けることで、第2の排気経路9が触媒加熱ヒーターの熱的影響を受けず、排気温度を正確に検知して調理用ヒーター17への的確な通電制御を行うものである。
【0010】
また、調理用ヒーター17の後部を触媒7直下近傍まで延長し設けることで、調理用ヒーター17で触媒加熱ヒーターの働きを得て、構成の簡略化を図るものである。
【0011】
以上から従来技術では、触媒の除煙性能を向上することや、触媒の損傷を保護すること、また、調理庫内の加熱分布に関する記載はなく、そのため、触媒の除煙性能、触媒の損傷保護、加熱分布の性能は製品寸法の制約から充分ではないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ヒーター構成を簡素にして除煙機能を搭載しつつ、除煙性能の向上と触媒の損傷防止および調理庫内の加熱分布の均一化を図った
加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、調理庫内に設けた庫内の加熱ヒーターと、庫内で発生する油煙を分解する触媒と、排気筒とを備え、庫内の油煙を含む排熱が庫内から触媒と排気筒を通り調理器外に導かれる排気経路を構成し、触媒の後面が排気筒の前方壁面よりも前方で調理庫後面に略平行に配置し、加熱ヒーターの後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、庫内加熱面と触媒加熱面とを形成し、触媒加熱面を触媒の風上側に配置したものである。
【0014】
これによって、触媒を調理庫後面壁に略平行に配置することで、触媒の高さを調理庫の天井面から焼き網付近までとすることができ、製品の奥行きに制限されず、触媒の油煙通過面の投影面積を広くし、触媒の除煙能力を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱調理器は、ヒーター構成を簡素にして除煙機能を搭載しつつ、除煙性能の向上と排気筒外部からの液体や異物浸入から触媒の損傷防止および調理庫内の加熱分布の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の発明は、調理庫内に設けた庫内の加熱ヒーターと、庫内で発生する油煙を分解する触媒と、排気筒とを備え、庫内の油煙を含む排熱が庫内から触媒と排気筒を通り調理器外に導かれる排気経路を構成し、触媒の後面が排気筒の前方壁面よりも前方で調理庫後面に略平行に配置し、加熱ヒーターの後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、庫内加熱面と触媒加熱面とを形成し、触媒加熱面を触媒の風上側に配置している。
【0017】
これにより、従来のように触媒を、調理庫後方の排気経路で、後方に延長して設けた調理用ヒーターの上に配置したものでは、調理器本体の奥行き寸法で触媒の奥行き寸法が制限されるが、触媒を調理庫後面壁に略平行に配置することで、触媒の高さを調理庫の天井面から焼き網付近までとすることができ、製品の奥行きに制限されず、触媒の油煙通過面の投影面積を広くし、触媒の除煙能力を高めることができる。
【0018】
さらに、触媒の後面が排気筒の前方壁面よりも前方に位置するよう触媒を配置するので、触媒が排気筒上方からは見えない位置に配置され、排気筒から異物が落下しても触媒に当たり難いので触媒が損傷し難く、また、排気筒からの水・油等液体浸入に対し、触媒が濡れにくく、触媒の破損や触媒の反応熱による油等の発火を防止できる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明において、調理庫内には調理物を上下両面から加熱する上ヒーターと下ヒーターとを備え、上ヒーターの後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、前記上ヒーターに庫内加熱面と触媒加熱面とを形成した構成とする。
【0020】
これにより、上ヒーターと下ヒーターとを個別に通電制御し、調理開始時に上ヒーターを下ヒーターよりも先に通電開始して、下ヒーターの温度上昇開始前に上ヒーターと同時に触媒を加熱できる。
【0021】
魚などの調理中に発生する油煙は、調理物から直接発散するもの以外に、調理物から油が高温になった下ヒーターや受け皿に滴下して発生するものも大量にある。
【0022】
ヒーターの触媒加熱面を上ヒーターに形成することで、触媒の温度を下ヒーターよりも早く上昇させることができ、下ヒーターや受け皿から発生する油煙の除煙効果を高めるこ
とができる。
【0023】
また、受け皿に水を入れずに調理する水無し調理においては、受け皿からの発煙を低減するため受け皿の温度上昇抑制を下ヒーターの通電率を下げて達成することが多く、下ヒーターと一体に触媒加熱面を形成すると、通電率がヒーターの低いため触媒の温度を十分に上昇させることが難しいが、上ヒーターと一体に触媒加熱面を形成することで触媒の温度を十分に上昇させ、水無し調理での除煙性能を得ることができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第2の発明において、調理庫の後面を構成する調理庫後面壁は、加熱ヒーター後部の触媒加熱面前方に位置し、触媒に通じる通気孔を配して成る。
【0025】
これにより、触媒加熱部のヒーターが調理庫に露出せず、調理庫後面壁が触媒加熱部の遮熱層となり、触媒加熱部の発熱が庫内に届き難くでき、調理庫奥部の温度が上がりやすく調理物が焦げやすくなる加熱ムラを低減できる。
【0026】
第4の発明は、特に、第3の発明において、調理庫後面壁の通気孔は、調理庫を前方から投影視して触媒加熱面を構成するヒーターと重ならない位置に配している。
【0027】
これにより、調理庫を前方から投影視して触媒加熱面を構成するヒーターが見えないよう加熱庫後面壁で覆われるので、触媒加熱面を構成するヒーターの輻射熱が直接調理庫に達しない。
【0028】
すなわち、調理庫後面壁が触媒加熱面を構成するヒーターの輻射熱の遮断層となり、触媒加熱面の輻射熱が庫内に直接届き難くなり、調理庫奥部調理物の焦げを低減し、加熱ムラ低減を向上できる。
【0029】
第5の発明は、特に、第2〜4のいずれか1つの発明において、上ヒーターの庫内加熱面と略L字状に曲げた触媒加熱面とを連結する引き出し部の下方を、第1の遮熱板で覆った構成とする。
【0030】
上ヒーターの庫内加熱面と略L字状に曲げた触媒加熱面とを連結する引き出し部があることで、調理庫上面側のヒーター長さが調理庫奥部で長くなり、調理庫奥部の庫内発熱分布密度が高くなって、庫内温度分布が庫内後部で高くなる。
【0031】
これにより、上ヒーターの庫内加熱面と略L字状に曲げた触媒加熱面とを連結する引き出し部の下方を、第1の遮熱板で覆うことにより、調理庫内での調理性能を得る形状に対し不要である引き出し部が発生する熱が調理庫内に輻射することを低減して調理庫内後部の温度上昇を抑制し、調理物の加熱ムラを低減することができる。
【0032】
第6の発明は、特に第2〜5のいずれか1つの発明において、第1の遮熱板と調理庫内の天井面との間の開口を制限する第2の遮熱板を配し、第1の遮熱板と第2の遮熱板とで上ヒーターを挟持した構成とする。
【0033】
調理庫内で発生する油煙など熱気の流れは、上ヒーター周囲が高温のため温度上昇による気流上昇現象により、調理庫上部に溜まりやすい。一方、触媒は、調理庫後面に略平行に配置している。すなわち触媒の通気面を縦に配置している。
【0034】
調理庫内で発生する油煙等熱気の流れが調理庫上部に溜まりやすいと、触媒の上部に油煙など熱気が集中し触媒の下部側の通気が減少し、触媒全体の除煙効果が低下する。
【0035】
これに対し、第1の遮熱板と調理庫内の天井面との間の開口を制限する第2の遮熱板を配することで、調理庫内天井付近の熱気の流れ量を制限し、触媒上部に排気が集中することを防ぎ、油煙など熱気の流れを触媒面に拡散し、触媒全体の除煙効果を高めることができる。
【0036】
また、上ヒーターを保持するために生じる上ヒーターとの接触部を、調理庫の天井面側に設けることで、調理庫後面壁側での保持を不要とし、調理庫後面壁が上ヒーターに直接触れることが無くなる。
【0037】
これにより、調理庫後面壁への上ヒーターからの直接熱伝導による温度上昇を防ぎ、調理庫内後部の調理物の焦げを低減し、加熱ムラを抑制することができる。
【0038】
第7の発明は特に第6の発明の第1の遮熱板および第2の遮熱板を、調理庫内を構成する前記第1の遮熱板および第2の遮熱板の周囲金属よりも低熱伝導率かつ低輻射率の材料で構成したものである。
【0039】
これにより、ヒーターに近接あるいは直接触れて高温になる第1の遮熱板および第2の遮熱板を、周囲金属よりも低熱伝導率とすることで、周囲金属への熱伝導を低減して周囲金属の温度上昇を抑制することができる。
【0040】
また、第1の遮熱板および第2の遮熱板を、周囲金属よりも低輻射率とすることで、第1の遮熱板および第2の遮熱板から調理庫内に輻射する熱量を抑制する。これらの効果により庫内加熱ムラを改善することができる。
【0041】
第8の発明は、特に第2〜7のいずれか1つの発明において、触媒の上端位置を、調理庫の天井面よりも上に配置することにより、上ヒーター周囲が高温のため温度上昇による気流上昇現象が発生し、調理庫上部に溜まりやすい調理庫内天井付近の熱気の流れは、触媒の上端部付近を通過するまで障害物のない流路を流れることになる。
【0042】
これにより、触媒部手前での通気抵抗の増加を抑制し、庫内上部の油煙が触媒を通って排出され、調理庫内に除煙が滞留することを抑制することができる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0044】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の斜視図を示すものである。図2は同加熱調理器の図1のA−Aにおける断面図を示すものである。図3は同加熱調理器の図1のB−Bにおける部分断面図を示すものである。図4は同加熱調理器の構成部品の斜視図を示すものである。図5は同加熱調理器の要部斜視図を示すものである。
【0045】
図1、図2、図3において、調理器本体21はキッチン台22に設置されている。
【0046】
本体21の上面は結晶化ガラスを素材としたトッププレート23の周囲を金属製のトップフレーム24で囲んで覆われている。
【0047】
トッププレート23には加熱部25a、25bが印刷されている。トッププレート24後方で本体21後部の部分には外部通気口を覆う通気パネル26を配置している。加熱部25a、25bに対応する本体内部には誘導加熱手段を構成する加熱コイル27a、27b(図示せず)が配されている。
【0048】
トップフレーム24下部で本体21の前面はグリル扉28と、グリル扉28側方で本体前面を覆う前面カバー29とでその大部分を覆われている。前面カバー29内方には本体21の内部部品を冷却する冷却ファン30(図示せず)を備えている。
【0049】
本体21内部加熱コイル27a下方には、前方をグリル扉28で覆った調理庫31がある。調理庫31は、庫内を加熱する上ヒーター32および下ヒーター33と、調理物を載せる焼き網34、下ヒーター33と焼き網34下方の受け皿35を備える。
【0050】
調理庫31は、後面を構成する調理庫後面壁36に配した通気孔37の後方に、調理庫31内で発生する油煙を分解する触媒38と排気筒39とを備え、調理庫31内の油煙を含む排熱が調理庫31内から触媒38と排気筒39を通り本体21外部に導かれる排気経路40を構成している。
【0051】
触媒38の後面は、通気開孔41を配した排気筒39の前方壁面42よりも前方で調理庫後面壁36に略平行に配置している。すなわち触媒38は縦方向に配置されている。
【0052】
なお、触媒38はセラミックハニカムなどの基材に白金やパラジウムなどの触媒機能成分をコーティングしている。
【0053】
上ヒーター32は、後部が触媒38に面するように略L字状に曲げられ、庫内加熱面43と触媒加熱面44とを形成し、触媒加熱面44は触媒38の風上側に配置して成る。
【0054】
図4は、上ヒーター32を示したもので、調理庫31の天井面側から調理庫31内部を加熱する庫内加熱面43と、前記庫内加熱面43と一体で連続したヒーターがL字状に折れ曲がり、図4中に仮想線で描いた触媒38に面する触媒加熱面44とから成っている。
【0055】
調理庫31の後面を構成する調理庫後面壁36は、上ヒーター32後部の触媒加熱面44前方に位置し、通気孔37を通じ触媒38に排熱が通じる排気経路40が構成される。
【0056】
排気筒39は、上方の排出口が排気パネル26で覆われている。また、排気筒39の下部には凹部45を設け、水抜き孔46が配設されている。
【0057】
従来例のように触媒を調理庫後方の排気経路の中に水平方向に配置し排熱が上下方向に抜けるもので、調理庫内を加熱する調理用ヒーターをさらに後方直線状に延長して設け、延長した部分の上に触媒を配置したものでは、通常キッチン寸法制約から調理器本体の奥行き寸法に限度があり、触媒の奥行き寸法が制限される。また、調理庫を広くするため奥行きを大きくすると、その分触媒寸法が小さくなる。
【0058】
しかし、本実施の形態の構成とすることで、触媒38は調理庫後面壁36に略平行に縦向きに配置され、触媒38の高さ寸法を調理庫31の天井面から焼き網34付近までとすることができる。
【0059】
従って、本体21と調理庫31の奥行き寸法に制限されずに触媒38の投影寸法を大きくでき、油煙通過面の投影面積を広くして触媒38の除煙能力を高めることができる。
【0060】
また、上ヒーター32に一体で庫内加熱面43と触媒加熱面44とを形成することで、従来必要であった上ヒーターと触媒用ヒーターの2個のヒーターを1個で構成でき、ヒーター構成を簡素にして除煙機能を搭載できる。
【0061】
また、従来触媒用ヒーターを個別に設けた際は触媒用ヒーターの固定部や引き出し部のスペースを確保するため、そのスペース分は触媒や触媒用ヒーターを大きくすることが困難であったが、上ヒーター32に一体で触媒加熱面44を形成するので触媒加熱面44の固定部が触媒に干渉することを避け、触媒の投影面積を広くできるのと同時に、加熱ヒーターの一部である触媒加熱面の面積を広くできる。
【0062】
さらに、触媒加熱面44のヒーター形状をジグザグ状に形成するなどによりヒーターの触媒面に対する発熱部重なり面積を高め、大きくした触媒38に対応して触媒38全面の温度を高めて活性にし、除煙能力を高めることができる。
【0063】
さらに、触媒38の後面が排気筒39の前方壁面42よりも前方に位置するよう触媒38を配置するので、排気筒39上方からは触媒38が見えない位置に配置される。これにより、排気筒39の上部から調理物のかけら等の異物が落下しても触媒38に当たらないよう触媒38が排気筒39の前方壁面42で保護され触媒38が損傷し難い。
【0064】
また、排気筒39からの水・油等液体が浸入した場合は、前方壁面42で水・油等液体が触媒38に達することを防ぎ、凹部45で一時的に受け止め水抜き孔46から本体21内に滴下させ、触媒38は濡れにくく、触媒38の破損や触媒の反応熱による油等の発火を防止できる。
【0065】
また、調理庫31内に上ヒーター32と下ヒーター33とがあることで、上ヒーター32と下ヒーター33とを個別に通電制御でき、調理開始時には上ヒーター32を下ヒーター33よりも先に通電開始する。
【0066】
上ヒーター32通電と同時に上ヒーター32を構成する庫内加熱面43と触媒加熱面44とが発熱し、下ヒーター33の温度上昇開始前に触媒38を加熱し、いち早く触媒38を活性温度に達することができる。
【0067】
魚などの調理中に発生する油煙は、調理物から直接発散するもの以外に、高温になった下ヒーター33や受け皿35に、調理物から出た油が滴下して発生するものも大量にある。
【0068】
上ヒーター32に触媒加熱面44を形成することで、触媒38の温度を下ヒーター33や受け皿35の温度上昇に対し、いち早く上昇させることができ、下ヒーター38や受け皿35から発生する油煙の除煙効果を高めることができる。
【0069】
また、受け皿35に水を入れずに調理する水無し調理においては、受け皿からの発煙を低減するため、受け皿35の温度上昇抑制を下ヒーター33の通電率を下げて達成することが多く、下ヒーター33と一体に触媒加熱面44を形成すると、下ヒーター33の通電率が低いため触媒38の温度を十分に上昇させることが難しいが、通電率の制約が少ない上ヒーター32と一体に触媒加熱面44を形成することで触媒38の温度を十分に上昇させ、水無し調理での除煙性能を得ることができる。
【0070】
また、上ヒーター32に構成した触媒加熱面44に対し調理庫31側前方には調理庫後面壁36があるので、触媒加熱面43のヒーター発熱部が調理庫31に露出しない。調理庫後面壁36が触媒加熱面43の遮熱層となって、触媒加熱面43での発熱を庫内に届き難くでき、調理庫31奥部の局部的な温度上昇を低減し、調理庫31に入れた調理物の奥方一部が焦げる加熱ムラを低減できる。
【0071】
また、図3に示すように、調理庫31の後部を構成する調理庫後面壁36に配した通気
孔37は、調理庫31を前方から投影視して触媒加熱面44を構成するヒーターと重ならない位置に配して成る。
【0072】
図3において、触媒加熱面44を構成するヒーターは破線で示す。
【0073】
これにより、調理庫31を前方から投影視して触媒加熱面44を構成するヒーターが見えないよう加熱庫後面壁36で覆われるので、触媒加熱面44を構成するヒーターの輻射熱が直接調理庫31に達しない。
【0074】
すなわち、調理庫後面壁36が触媒加熱面44を構成するヒーターの輻射熱の遮断層となり、触媒加熱面44の輻射熱が調理庫31内に直接届き難くなり、調理庫31奥部に置いた調理物の焦げを低減し、加熱ムラ低減を向上できる。
【0075】
上ヒーター32を構成する庫内加熱面43と触媒加熱面44とは引き出し部47で略L字状に曲がって一体に繋がっている。引き出し部47の下方は、第1の遮熱板48で覆っている。第1の遮熱板48は調理庫31内の天井面49に固定している。
【0076】
第1の遮熱板48と調理庫31内の天井面49との間の開口を制限する第2の遮熱板50を配し、第1の遮熱板48と第2の遮熱板50とで上ヒーター32を挟持した構成とする。第2の遮熱板50は調理庫31内の天井面49に固定している。
【0077】
第1の遮熱板48には、上ヒーター32の引き出し部47を保持する第1のヒーター保持部51を備えている。第2の遮熱板50には、第1のヒーター保持部51とは引き出し部47を挟んで対向した位置に、上ヒーター32の引き出し部47を保持する第2のヒーター保持部52を備えている。
【0078】
第1のヒーター保持部51と第2のヒーター保持部52とで、上ヒーター32の引き出し部47を挟んで保持している。
【0079】
第1の遮熱板48と第2の遮熱板50とが組み合わさり、加熱庫31を前方から見た隙間を塞ぎ、第2の遮熱板50には、油煙を含む熱気を抜くための開口面積を調整する抜き孔53を設けている。
【0080】
上ヒーター32に構成した庫内加熱面43と、略L字状に曲がった面に構成した触媒加熱面44との間には、電気的・構造的に庫内加熱面43と触媒加熱面44とを連結する引き出し部47が必要である。
【0081】
しかし引き出し部47の大部分は調理庫31の天井面49に面して調理庫後面壁36の前方に配置されるので、調理庫31の天井面49側のヒーター発熱部が調理庫31奥部で庫内加熱面43以外に構成されて長くなり、調理庫31奥部での庫内発熱量分布密度が高くなって、調理庫31内部の温度分布が調理庫31内後部で高くなる。
【0082】
引き出し部47の下方に第1の遮熱板48を配し、第1の遮熱板48を調理庫31内の天井面49に固定することにより、上ヒーター32の庫内加熱面43と略L字位置に配置される触媒加熱面44とを連結する引き出し部47の下方を、第1の遮熱板48で覆うことができる。
【0083】
この構成により、調理庫31内での調理性能を得るヒーター形状に対し、調理庫31内部の温度分布が調理庫31内後部で高くなるため、調理性能に対し不要である引き出し部47から発生する熱が、調理庫31内に輻射することに対し、第1の遮熱板48が遮熱壁
となって輻射熱を低減して調理庫31内後部の温度上昇を抑制し、調理物の加熱ムラを低減することができる。
【0084】
第1の遮熱板48に設けた第1のヒーター保持部51と、第2の遮熱板50に設けた第2のヒーター保持部52とで上ヒーター32を挟持することで、調理庫31の壁面が上ヒーター32の発熱部に直接触れず、天井面49や調理庫後面壁36の温度上昇を抑制し、メッキやホーローなど壁面の表面処理の耐熱性を得ることができる。
【0085】
調理庫31内で発生する油煙など熱気の流れは、上ヒーター32周囲が高温のため温度上昇による気流上昇現象により、調理庫31上部に溜まりやすい。一方、触媒38は、調理庫31後面に略平行に配置している。すなわち触媒38の通気面が縦で通気方向を横に配置している。
【0086】
調理庫31内で発生する油煙等熱気の流れが調理庫31の上部に溜まりやすいと、触媒38の上部に油煙など熱気が集中して触媒31下部側の通気油煙等熱気通過が減少し、触媒31全体の除煙効果が低下する。
【0087】
これに対し、第1の遮熱板48と調理庫31内の天井面49との間の開口を制限する第2の遮熱板50を配し、抜き孔53の大きさや数で開口面積を制限することで、調理庫31内天井面49付近の熱気の流れ量を制限し、触媒38上部に排気が集中することを防ぎ、油煙など熱気の流れを触媒38の通気面に分散し、触媒38全体の除煙効果を高めることができる。
【0088】
また、上ヒーター32を保持するために必要な上ヒーター32との接触部を、調理庫の天井面側に設けることで、調理庫後面壁側での保持を不要とし、調理庫後面壁が上ヒーターに直接触れることが無くなる。
【0089】
これにより、調理庫後面壁への上ヒーターからの直接熱伝導による温度上昇を防ぎ、調理庫内後部の調理物の焦げを低減し、加熱ムラを抑制することができる。
【0090】
第1の遮熱板48および第2の遮熱板50は、近接する調理庫31を構成する壁面よりも低熱伝導率かつ低輻射率の材料で構成している。
【0091】
具体的には、天井面49および調理庫後面壁36は鋼板で、メッキ処理やホーロー処理を施している。これに対し、第1の遮熱板48および第2の遮熱板50はステンレス鋼板で構成している。
【0092】
これにより、上ヒーター32に近接あるいは直接触れて高温になる第1の遮熱板48および第2の遮熱板50を、周囲壁面である天井面49および調理庫後面壁36よりも低熱伝導率材料とすることで、天井面49および調理庫後面壁36への熱伝導量を低減して天井面49および調理庫後面壁36の温度上昇を抑制する。
【0093】
また、第1の遮熱板48および第2の遮熱板50を、周囲壁面である天井面49および調理庫後面壁36よりも低輻射率表面とすることで、第1の遮熱板48および第2の遮熱板50から調理庫31内に輻射する熱量を抑制する。これらの効果により調理庫31内の加熱ムラを改善することができる。
【0094】
第1の遮熱板48および第2の遮熱板50は、近接する調理庫31を構成する壁面の材料は上記に限るものではなく、調理庫壁面がステンレス鋼板であれば、第1の遮熱板および第2の遮熱板は磁器などステンレス鋼板よりも低熱伝導率かつ低輻射率の材料であれば
よい。
【0095】
排気筒39と調理庫後面壁36との間に置く触媒38を収納する触媒収納部54の、触媒収納部上面55は、触媒38の上端位置が調理庫31の天井面49よりも上に配置されるよう、調理庫31の天井面49よりも高く構成している。
【0096】
これにより、上ヒーター43周囲が高温のため温度上昇による気流上昇現象により、調理庫31上部に溜まりやすい天井面49付近の熱気の流れが、触媒38の上端部付近を通過するまで障害物がなく自然に流れる構成となる。
【0097】
触媒38部手前での通気抵抗を増加させる障害物をなくし、調理庫31内上部の油煙を滞留することを低減して触媒38を通って排出し、調理庫内に油煙の排出を良好にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、触媒の後面が排気筒の前方壁面よりも前方で調理庫後面に略平行に配置し、加熱ヒーターの後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、庫内加熱面と触媒加熱面とを形成し、触媒加熱面を触媒の風上側に配置して、触媒の高さを調理庫の天井面から焼き網付近までとすることで、製品の奥行きに制限されず、触媒の油煙通過面の投影面積を広くし、触媒の除煙能力を高めることができるので、ヒーターと加熱調理庫を有したガス加熱調理器、電子レンジ等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の図1のA−Aにおける断面図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器の図1のB−Bにおける部分断面図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成部品の斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器の要部斜視図
【図6】従来の加熱調理器の断面図
【符号の説明】
【0100】
31 調理庫
32 上ヒーター(加熱ヒーター)
33 下ヒーター
36 調理庫後面壁
38 触媒
39 排気筒
40 排気経路
43 庫内加熱面
44 触媒加熱面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫内に設けた庫内の加熱ヒーターと、前記庫内で発生する油煙を分解する触媒と、排気筒とを備え、前記庫内の油煙を含む排熱が前記庫内から前記触媒と前記排気筒を通り調理器外に導かれる排気経路を構成し、前記触媒の後面が前記排気筒の前方壁面よりも前方で前記調理庫後面に略平行に配置し、前記加熱ヒーターの後部を前記触媒に面するように略L字状に曲げ、庫内加熱面と触媒加熱面とを形成し、前記触媒加熱面を前記触媒の風上側に配置した加熱調理器。
【請求項2】
調理庫内には調理物を上下両面から加熱する上ヒーターと下ヒーターとを備え、前記上ヒーターの後部を触媒に面するように略L字状に曲げ、前記上ヒーターに庫内加熱面と触媒加熱面とを形成した請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
調理庫の後面を構成する調理庫後面壁は、加熱ヒーター後部の触媒加熱面前方に位置し、触媒に通じる通気孔を配した請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
調理庫後面壁の通気孔は、調理庫を前方から投影視して触媒加熱面を構成するヒーターと重ならない位置に配した請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
上ヒーターの庫内加熱面と略L字状に曲げた触媒加熱面とを連結する引き出し部の下方を、第1の遮熱板で覆った請求項2〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
第1の遮熱板と調理庫内の天井面との間の開口を制限する第2の遮熱板を配し、前記第1の遮熱板と前記第2の遮熱板とで上ヒーターを挟持した請求項2〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
第1の遮熱板および第2の遮熱板を、調理庫内を構成する前記第1の遮熱板および第2の遮熱板の周囲金属よりも低熱伝導率かつ低輻射率の材料で構成した請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
触媒上端位置を、調理庫の天井面よりも上に配置した請求項2〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−216305(P2009−216305A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60657(P2008−60657)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】