説明

動物侵入防止フェンス用ネット

【課題】フェンスに使用されるネットの方形の網目が平行四辺形状に自在に変形することにより、フェンスが設置される地面が平坦地のみならず傾斜地にも自在に追従して設置を可能にするのは勿論のこと、動物が侵入のためにネットの網目を広げようとしても簡単に広がることのない動物侵入防止フェンス用ネットを提供する。
【解決手段】ネット2の縦線3a、横線3bの線材3を側面視で山部31と谷部32が形成される波形形状に形成し、波形高低差Hと直径Dとの比率をH/D=2.24〜2.52とし、平面視で山部33と谷部34が形成される波形形状に形成し、波形振幅差Bと線材の直径Dとの比率をB/D=1.44〜1.48とし、波形形状の線材3の側面視及び平面視のピッチλの間隔を同一にすると共に、ピッチλと直径Dとの比率をλ/D=7.6〜8.2とし、側面視と平面視でλ/4±λ/20ずらし、側面視の縦線3a、横線3bの山部31を谷部32にピッチλの所要倍数の間隔をあけて係合させながら所要の大きさの方形の網目21のネット2に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動物侵入防止のために設置するフェンスに使用されるネットに係り、特に、ネットの方形の網目が平行四辺形状に自在に変形することによりフェンスが敷設される地面が平坦地のみならず傾斜地にも自在に設置可能な動物侵入防止フェンス用ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
山間部などの鉄道や自動車道或いは各種の施設には、山に生息する例えば狐、狸、イノシシなどの動物が侵入するのを防ぐ動物侵入防止フェンスが設置されていることがある。そして、これに使用するものとして次のようなフェンスやネット等が開発され、出願されている。
特許文献1の発明の構成は、「縦線と横線が組まれた、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンス本体が複数の支柱間に固定されているフェンスにおいて、前記金網は、波形凹凸部分が形成された縦線と横線が各々縦横平行に配置されてなり、前記縦線は、隣接する半ピッチずれた2本線以上の横線の凹凸部分に通されて係合され、この2本線以上の横線を1組として、前記横線の組の上、および下の横線の組が互いに3ピッチ以上離れて、金網が平行四辺形に変形可能なことを特徴とするフェンス(請求項1)」。叉「前記縦線および横線の線径が、波型の凹部の深さ(h)以下であることを特徴とする請求項1記載のフェンス(請求項2)」。なお請求項3、4は省略。そして特許文献1の発明では、クリンプされた線材を使用した金網からなるフェンスは勾配が0°から約30°の範囲で平行四辺形を保持して自由に変形できると共に、柱・胴縁への取り付けが自由であることにより、平地に設置できるのは勿論、どんな傾斜地でも、現場にて角度を決めて容易に施工可能である、としている。
特許文献2の発明の構成は、「それぞれ波形成形をした縦線と横線の交差編みによって構成し、縦線の波形の波の形を横線の波形の波の形よりもゆるやかに形成して横線と縦線が編み上がった状態で相互鋏状に幾分動き得るように成し、金網全体を菱形状に変形可能に構成してなるフェンス用金網(請求項3)」。なお請求項1、2は省略。そして特許文献2の発明では、金網の縦線と横線が鋏状に動き得ることで、金網全体を菱形に変形させることができるから、地盤に高低差のある場所に設置するときは、上下にずれた支柱間に適合するよう金網の方を変形させることができ、従来例のように金網を切り揃えてやる必要がなくなる、としている。
特許文献3の発明の構成は、「横胴縁および縦胴縁を回動可能に連結し、これら胴縁に囲まれた金綱部分を構成する各列線の交点を単に接触状態に保持せしめてなる傾斜地布設可能なネットフェンス(請求項1)」。なお請求項2は省略。そして特許文献3の発明では、強度の大きい例えばアルミ被覆鋼線を採用し、単に接触だけの編み込みで十分な強度維持を行なわせて斜め変形を可能にし、胴縁も変形自在に構成したから、平地のみならず傾斜地においても何等の困難なく傾斜になじんだ取付ができるものであって、取付作業が容易な上取付後の外観をとくに美しく保持できるなど、としている。
このように、特許文献1〜3の発明にあっては、何れも、フェンスのネットはその網目が平行四辺形状に変形して平坦地のみならず傾斜地にも自在に対応できるとしている。
また、これら前記の特許文献1〜特許文献3の発明にあっては、ネットを構成する縦線及び横線は側面からみると波形凹凸形状に形成され、側面視が波形凹凸形状に形成された縦線及び横線を平面からみた平面視では直線状に形成されている。そして縦線及び横線の相互の凹部と凸部とをそれぞれ係合させながらネット状に形成されている。
【0003】
ところで、動物侵入防止フェンス用のネットではないが、ネットを構成する縦線と横線が螺旋体のものからなる特許文献4の発明が出願されている。この特許文献4の発明の構成は、「所要の直径の線材を、螺旋径が線材径の約2倍で相対する形状の山部及び谷部が軸線方向へ交互に形成されると共に谷部が螺旋中心より外側に位置する所要のリード及びピッチで所定の方向へ巻回して形成された螺旋体を縦線及び横線とし、相互の山部を谷部に係合させながら所要の網目の網体に形成した螺旋構造物(請求項7)」。そして、特許文献4の発明では、上記のように形成された網65は線材径の約2倍の螺旋径で螺旋形成された螺旋体61・63の山部61a・63a及び谷部61b・63bが互いに係合し合うため、網65に対して網目を拡大或いは縮小させる方向の力が作用した際、互いに係合し合う山部61a・63a及び谷部61b・63bの斜面によりこの力を三次元方向へ分散させながら受承するため、網目の大きさが変化するのを防止することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−152616
【特許文献2】実公平6−33150
【特許文献3】実開昭61−85670
【特許文献4】特開平8−153321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネットを形成する縦線及び横線の波形凹凸形状のピッチを一般に狭くすると、縦横に交差係合する凹部と凸部の係合状態が高まり交差箇所での網目の平面内角度方向への変形が拘束されて、方形の網目の平行四辺形状への変形の自由度が小さくなってネット全体が変形しにくくなり、ネット設置場所の地形の傾斜に追従できなくなる。
このため、特許文献1の発明にあっては、縦線および横線の線径が、波型の凹部の深さ(h)以下にしている(請求項2)。つまり、波型の凹部に凸部を遊嵌状に係合させることで、縦横に交差係合する凹部と凸部の係合状態を緩やかにして、交差箇所での方形の網目の平面内角度方向への変形の自由度を高めている。
また、特許文献2の発明にあっては、縦線又は横線の何れかの波形凹凸形状のピッチをゆるやかに(長く)している(請求項3)。つまり、凹部と凸部の傾斜角度を小さくしてゆるやかにすることで、凹部の緩やかな傾斜にそって係合する他方の線材(縦線又は横線)がスライドでき、交差箇所での方形の網目の平面内角度方向への変形の自由度を高めている。
しかしながら、これらのような構造にすると、縦線および横線の凹部と凸部の係合状態が緩やかなため、現場搬送の途中で或いは現場作業中に、その係合部分で線材が横又は縦にずれて網目が崩れネットとして使用できなくなることがあり、その取り扱いが非常に面倒である。また、このようなネットで形成されたフェンスを設置したとき、動物はネットの網目の中を通過しようとして力づくで網目を広げることがあり、この場合、係合部分で線材が横又は縦に容易にずれて網目が広がり、動物がその広げた網目を通過して侵入し、動物侵入防止フェンスとして機能しなくなることがある。
なお、特許文献3の発明にあっては、ネットを形成する縦線及び横線の波形凹凸形状についての構造上の特徴について何ら言及されていない。しかし、本願の出願人の実験によれば、縦線及び横線の線材が一定の強度を有する場合には、側面視が波形凹凸形状に形成され平面視で直線状に形成された縦線及び横線を縦横に交差させて網を形成したとき、上述した特許文献1又は特許文献2の構成にしないと交差箇所での角度方向への変形の自由度を高めることが困難との認識を得ている。縦線及び横線の線材の強度が弱い場合には人力で平行四辺形状へ変形可能であるが、同様に動物が力ずくで網目を広げようとしたとき線材の強度が弱いと網目が簡単に広がり動物の侵入を防ぐことができない。
これらに対して、特許文献4の発明にあっては、本願の出願人の実験によれば、図21に図示された網目は強固であり、イノシシのような動物でも網目を広げることは困難との認識を得たが、同時に平行四辺形状への変形も全く困難との認識を得た。つまり、傾斜地にこのネットを使用したフェンスを設置しようとすると、従来のように、ネットの一部を傾斜地の傾斜角度に合わせて切断する必要がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、フェンスに使用されるネットの方形の網目が平行四辺形状に自在に変形することにより、フェンスが設置される地面が平坦地のみならず傾斜地にも自在に追従して設置を可能にするのは勿論のこと、動物が侵入のためにネットの網目を広げようとしても簡単に広がることのない動物侵入防止フェンス用ネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を達成するために、この発明は、ネットの縦線及び横線として使用される所要の直径の線材を側面視において線材の軸線方向に山部と谷部が交互に形成される波形形状に形成し、山部の最上縁と谷部の最下縁の波形高低差Hと線材の直径Dとの比率をH/D=2.24〜2.52とし、側面視に対して線材の軸線回りに90度方向となる平面視において線材の軸線方向に山部と谷部が交互に形成される波形形状に形成し、山部の最外縁と谷部の最外縁の波形振幅差Bと線材の直径Dとの比率をB/D=1.44〜1.48とし、波形形状の線材の側面視及び平面視における隣り合う山部間又は谷部間のピッチλの間隔を同一にすると共に、ピッチλと直径Dとの比率をλ/D=7.6〜8.2とし、側面視における山部と平面視における山部の位置又は側面視における谷部と平面視における谷部の位置を、λ/4±λ/20ずらして形成し、側面視における縦線及び横線の互いの山部を対応する谷部にピッチλの所要倍数の間隔をあけて係合させながら所要の大きさの方形の網目のネットに形成した手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0008】
課題を解決するための手段よりなるこの発明に係る動物侵入防止フェンス用ネットによれば、フェンスに使用されるネットの方形の網目を平行四辺形状に自在に変形させることができ、方形の網目は0度〜40度の変位角度で平行四辺形状に変形可能となる。これにより、フェンスが設置される地面が平坦地のみならず傾斜地にも自在に追従して設置をさせることができる。しかも、波形高低差Hの大きい側面視における縦線及び横線の互いの山部を対応する谷部に係合させるので、縦線と横線との係合を高めて交差部分がずれるのを防ぐことができ、動物が侵入のためにネットの網目を広げようとしても簡単に広がるのを阻止でき、動物侵入防止フェンス用ネットとして使用することできるという、極めて新規的有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)はこの発明を実施するための形態を示す線材の側面図、(B)はこの発明を実施するための形態を示す線材の平面図、(C)はこの発明を実施するための形態を示す線材の正面図である。
【図2】(A)はこの発明を実施するための形態を示すネットの部分拡大平面図、(B)はこの発明を実施するための形態を示すネットの部分拡大側面図である。
【図3】この発明を実施するための形態を示すネットの変形前の平面図である。
【図4】この発明を実施するための形態を示すネットの変形後の平面図である。
【図5】この発明を実施するための形態を示すネットの変形後の部分拡大平面図である。
【図6】この発明を実施するための形態を示すネットを使用した動物侵入防止フェンスの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に記載の発明を実施するための形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
図において、動物侵入防止のために設置するフェンス1に使用されるネット2は、フェンス1が設置される地面が平坦地ではネット2の網目21を長方形又は正方形の方形の状態で設置される。傾斜地の場合には、その方形の網目21が0度〜40度の変位角度で平行四辺形状に自在に変形するので、その傾斜角度に合わせてネット2の網目21を変形させることで、傾斜地にもネット2の一部をカットすることなく設置することができる。しかも、このネット2の網目21は、動物が侵入のためにこれを広げようとしても簡単に広がることもなく、このため、このネット2を使用したフェンス1は動物が侵入するのを防止することができる。
【0011】
ネット2の縦線3a及び横線3bとして使用される線材3は、所要の直径Dからなる。線材3の断面は円形になっている。線材3の材質には例えば金属製、合成樹脂製、セラミック、炭素繊維等が使用される。山間部での設置作業にあっては、ネット2を作業が直に持って運ぶことになる。そこで、山間部での作業性及び安全性のために、線材3の材質として、重たい金属製に代わり、軽量のプラスチックなどの合成樹脂の使用が望ましい。
【0012】
線材3は、側面視つまり側面からみて、線材3の軸線方向に山部31と谷部32が交互に形成される波形形状に形成されている。山部31の最上縁31aと谷部32の最下縁32aの波形高低差Hと線材3の直径Dとの比率がH/D=2.24〜2.52の範囲内になるように波形形状に形成されている。この比率は各種の実験の結果、得られたものである。
【0013】
波形高低差Hと線材3の直径Dとの比率のH/Dが2.24より小さい場合には、縦線3aと横線3bとの係合状態が強くなって、方形の網目21が平行四辺形状に変形する変位角度が40度よりも小さくなる。比率のH/Dが小さくなるのに比例して変位角度も小さくなって、フェンス1の設置箇所の傾斜地形に追従しにくくなる。また、この変位角度の40度は、これまでのフェンス1の設置の実務経験から照らしてみて、これよりも地形の傾斜角度が大きい場合にはフェンス1の設置作業が難しく、作業の危険度が増すことになる。
【0014】
側面視に対して線材3の軸線回りに90度方向となる平面視つまり平面からみて、線材3の軸線方向に山部33と谷部34が交互に形成される波形形状に形成されている。山部33の最外縁33aと谷部34の最外縁34aの波形振幅差Bと線材の直径Dとの比率がB/D=1.44〜1.48の範囲内になるように波形形状に形成されている。この比率は各種の実験の結果、得られたものである。
【0015】
本願発明の特徴は、線材3は側面視において山部31と谷部32が交互になった波形形状が形成されていると共に、平面視においても側面視の波形高低差Hより小さい波形振幅差Bを有する山部33と谷部34が交互になった波形形状が形成されていることである。線材3は正面からみると、楕円型螺旋状になっており、叉螺旋方向は右巻き或いは左巻きの何れでもよい。特許文献1〜特許文献3の発明にあっては、線材の側面視においては本願発明と同様に山部と谷部が交互になった波形形状が形成されているが、線材の平面視においては本願発明と異なり波形形状に形成されてなく、直線状になっている。
【0016】
本願の出願人は種々の実験を通じて、側面視で波形形状が形成された線材3の平面視において、これを直線状から波形形状に徐々に変形させることで、縦線3aと横線3bからなる網目21を広げる方向に働く力に対しての抵抗力を低下させることなく、長方形又は正方形からなる方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度を高めることができるのを知ったのである。
【0017】
また、実験を通じて、線材3の平面視での波形形状の波形振幅差Bが特定の値までは徐々に方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度は高まる。しかし、波形振幅差Bが特定の値を超えると、あたかも逆比例するかのようにして、今度は逆に方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度が徐々に小さくなることを知った。側面視の波形高低差Hと平面視の波形振幅差Bが同一である特許文献4では、方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度は殆ど無いことである。そのときの実験結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
波形形状の線材3は、その側面視の隣り合う山部31、31間と、平面視の隣り合う山部33、33間とのピッチλの間隔が同一になっている。或いはその側面視の隣り合う山部32、32間と、平面視の隣り合う山部34、34間とのピッチλの間隔が同一になっている。またこのときのピッチλと線材3の直径Dとの比率がλ/D=7.6〜8.2の範囲内になるように波形形状に形成されている。この比率は各種の実験の結果、得られたものである。
【0020】
側面視における山部31と平面視における山部33の位置が約λ/4ずらして形成されている。制作誤差は±λ/20程度である。或いは側面視における谷部32と平面視における谷部34の位置が約λ/4ずらして形成されている。製作誤差は±λ/20程度である。約λ/4ずれていることにより、方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度は高まり、方形の網目21は0度〜40度の変位角度で平行四辺形状に変形可能となっている。
【0021】
側面視における縦線3a及び横線3bの互いの山部31を対応する谷部32に、ピッチλの所要倍数、例えば、数倍の間隔をあけて係合させながら所要の大きさの長方形又は正方形からなる方形の網目21のネット2に形成されている。波形高低差Hの大きい山部31と谷部32を係合させることで、網目21の広がりに対する抵抗となる。
【0022】
次に、上記発明を実施するための形態の構成に基づく作用について以下説明する。
線材3の縦線3aと横線3bとを縦横に組んで一定の大きさの網目21を有するネット2を形成する場合には、縦線3a及び横線3bは共に、波形形状の波形振幅差Bの小さい方がネット2の平面向きになるようにする。即ち波形形状の波形高低差Hの大きい方がネット2の側面つまりネット2の厚みになるようにして編み上げる。横線3b及び縦線3aの波形高低差Hの大きい山部31と谷部32とを所定の間隔をあけて交差しながら係合させて編み上げていく。この場合、前後又は左右箇所での、上下の交差は常に反対になるように編み上げる。
【0023】
前述したように、線材3の縦線3a及び横線3bは、波形形状の波形振幅差Bの小さい方を平面にし、波形形状の波形高低差Hの大きい方を側面として、ネット2に編み上げる構成にすることで、網目21を広げる方向に作用する力に対してその抵抗力を低下させることなく、方形の網目21の平行四辺形状への変形の自由度を高めることができる。これにより、ネット2の長方形又は正方形の方形の網目21は0度〜40度の変位角度で平行四辺形状に変形可能となったのである。
【0024】
このようにして、製作されたネット2を山間部の現場に運び、例えば鉄道や高速自動車道に沿って動物侵入防止用のフェンス1を設置する。支柱11を所定の間隔で設置し、支柱11の間にこの発明に係るネット2を取り付ける。フェンス1を設置する箇所の地面が平坦地の場合にはネット2を変形させる必要がないので、ネット2の網目21は長方形又は正方形の方形の状態で取り付けられる。
【0025】
これに対して、フェンス1を設置する箇所の地面が傾斜地の場合には、傾斜地の傾斜角度に合わせてネット2の網目21を変形させる。ネット2は横線3bに対して縦線3aを例えば上側にずらすと、横線3b及び縦線3aの山部31と谷部32とが交差して係合しているので、ネット2の網目21は、山部31と谷部32とが交差して係合している4箇所を回動支点として、向かい合う2箇所の角度が90度より大きくなり、別の向かい合う2箇所の角度は90度よりそれぞれ小さくなる。大きくなる角度の増加分と小さくなる角度の減少分は同一である。長方形又は正方形の直角四角形であったネット2の網目21は、傾斜地の勾配に合った平行四辺形に変形する。
【0026】
全体が平行四辺形状に変形したネット2を傾斜地に設置された支柱11同士の間に取り付ける。全体が平行四辺形状に変形したネット2は、その下端が傾斜地の地面に密着するので、ネット2の下端と傾斜地の地面との間に隙間が作られるのを防ぐことができる。これによって、動物がネット2の下端と傾斜地の地面と隙間をくぐり抜けようとするのを未然に防止することができる。
【0027】
ネット2は地面の傾斜に追従するので、ネット2の下端側を地面の傾斜角度に合わせて切断する必要もなくなり、切断に伴うネット2の材料の無駄が生じることもない。また、現地でのネット2の切断時にネット2の縦線3aと横線3bとが解けて、ネット2を維持できなくなって、ネット2として使用不能になるという事態を招くこともない。
【0028】
なお、この発明は上記発明を実施するための形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 フェンス
11 支柱
2 ネット
21 網目
3 線材
3a 縦線
3b 横線
31 山部
31a 最上縁
32 谷部
32a 最下縁
33 山部
33a 最外縁
34 谷部
34a 最外縁
B 波形振幅差
D 直径
H 波形高低差
λ ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットの縦線及び横線として使用される所要の直径の線材を側面視において線材の軸線方向に山部と谷部が交互に形成される波形形状に形成し、山部の最上縁と谷部の最下縁の波形高低差Hと線材の直径Dとの比率をH/D=2.24〜2.52とし、側面視に対して線材の軸線回りに90度方向となる平面視において線材の軸線方向に山部と谷部が交互に形成される波形形状に形成し、山部の最外縁と谷部の最外縁の波形振幅差Bと線材の直径Dとの比率をB/D=1.44〜1.48とし、波形形状の線材の側面視及び平面視における隣り合う山部間又は谷部間のピッチλの間隔を同一にすると共に、ピッチλと直径Dとの比率をλ/D=7.6〜8.2とし、側面視における山部と平面視における山部の位置又は側面視における谷部と平面視における谷部の位置を、λ/4±λ/20ずらして形成し、側面視における縦線及び横線の互いの山部を対応する谷部にピッチλの所要倍数の間隔をあけて係合させながら所要の大きさの方形の網目のネットに形成したことを特徴とする動物侵入防止フェンス用ネット。
【請求項2】
方形の網目は0度〜40度の変位角度で平行四辺形状に変形可能である請求項1記載の動物侵入防止フェンス用ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5467(P2012−5467A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146957(P2010−146957)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度及び平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開事業(地域ニーズ即応型)委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(390032757)粕谷製網株式会社 (4)
【Fターム(参考)】