説明

動電型スピーカーおよびそれに用いる磁気回路

【課題】 小型又は薄型のコーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーおよびそれに用いる磁気回路に関し、特に、車両、または、ディスプレイ等の音響機器に取り付けるのに適する動電型スピーカーを提供する。
【解決手段】 動電型スピーカーは、磁性体で形成される支持部材が、その一方端に磁気回路が連結する軸部と、軸部の他方端側からフレームに連結するフランジ部と、を含み、ボビンの内側を通過する軸部が、ボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有し、フランジ部が、軸部の他方端から軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されて磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有し、磁気回路が、同一の磁極性を有する面同士がポールを主マグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、を含む反発型磁気回路であり、反発マグネットが、支持部材の軸部の一方端に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型又は薄型の動電型スピーカーおよびそれに用いる磁気回路に関し、特に、車両、または、ディスプレイ等の音響機器に取り付けるのに適する動電型スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカーを取り付ける設置空間が限定される自動車等の車両、あるいは、ディスプレイ等の音響機器、または、ゲーム機やスロットマシン等の遊戯機においては、スピーカーを取り付けるのに要する空間を小型化することが要望されている。スピーカーは、特に、小型又は薄型の動電型スピーカーは、振動板面積が限られる、厚みが必要な大型磁気回路を備える全高が高いスピーカーを採用できない、といった様々な理由から再生能力において不利であるので、これを解決するために様々な動電型スピーカーが提案されている。
【0003】
例えば、コーン型振動板の凹面側に突出するように磁気回路を設ける動電型スピーカーがある(特許文献1)。特許文献1の図5に示すように、フレーム58に対して断面がT字状になるセンターポール57のみで磁気回路70を支持・固定する動電型スピーカーがある。ただし、特許文献1の図5に示す磁気回路70に連結するセンターポール57は、その材料について具体的には説明されていない。また、磁気回路70は、内磁型磁気回路であり、反発マグネットを備えない。
【0004】
また、コーン型振動板と、コイルをコーン型振動板の凹面側に突出するように配置してコーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、コーン型振動板の外周端を支持するエッジと、ボビンと連結してコーン型振動板の内周端側を支持するダンパーと、エッジおよびダンパーの外周端をそれぞれ固定する第1フレームと、コイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路と、第1フレームと連結して磁気回路をコーン型振動板の凹面側に配置する第2フレームと、を備える動電型スピーカーであって、第1フレームおよび第2フレームが、コーン型振動板の凹面側へ放射される音波を直接自由空間へ放射する場合に比べて高い空気の圧縮および膨張を生じさせて、自由空間へと導出する音導部を形成し、音導部は、コーン型振動板の凹面側の第1フレーム周縁部に対応して規定された音源空間と、コーン型振動板の凹面側から放射される音波を自由空間に導出する音道とを有し、磁気回路を音源空間内に収容する動電型スピーカーがある(特許文献2)。特許文献2の図4または図5に示すように、反発型磁気回路である磁気回路10は、樹脂またはアルミニウム等の非磁性体で形成された成型品である凸台座43により台座フレーム42と連結する。
【0005】
また、コーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーではないものの、断面が略T字状になる部材を、磁気回路を構成するセンターポールに取り付けた動電型スピーカーがある(特許文献3)。特許文献3の図1〜図4に示すように、この動電型スピーカーでは、磁性体であるダンパー押さえ金具13とセンターポール金具14とにより磁束の流れ(ニ)を設けて、磁気漏洩(ハ)の防止を図ることができる。
【0006】
しかしながら、コーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーでは、音響放射の前面側である凹面側に磁気回路を設けるので、磁気回路ができるだけ小さいことが好ましい。ただし、磁気回路が小型化されると磁気空隙の磁束密度が低下して再生能率も低下しやすいという問題がある。また、磁気回路に反発型磁気回路を用いる場合には、漏洩磁束が多くなりやすいという問題がある。なお、コーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーではないものの、漏洩磁束の防止を図る内磁型の反発磁気回路を有する動電型スピーカーがある(特許文献4)。
【0007】
【特許文献1】特開平9−18983号公報
【特許文献2】特開2008−85528号公報
【特許文献3】特開昭61−161900号公報
【特許文献4】特開2003−219496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型又は薄型のコーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーおよびそれに用いる磁気回路に関し、特に、車両、または、ディスプレイ等の音響機器に取り付けるのに適する動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の動電型スピーカーは、コーン型振動板と、コイルをコーン型振動板の凹面側に突出するように配置してコーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、コーン型振動板の外周端を支持するエッジと、ボビンと連結してコーン型振動板の内周端側を支持するダンパーと、エッジおよびダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、コイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路と、フレームと連結して磁気回路をコーン型振動板の凹面側に配置する支持部材と、を備える動電型スピーカーであって、磁性体で形成される支持部材が、その一方端に磁気回路が連結する軸部と、軸部の他方端側からフレームに連結するフランジ部と、を含み、ボビンの内側を通過する軸部が、ボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有し、フランジ部が、軸部の他方端から軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されて磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有し、磁気回路が、磁気空隙を規定するヨークおよびポールと、ヨークの底部およびポールを連結する主マグネットと、同一の磁極性を有する面同士がポールを主マグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、を含む反発型磁気回路であり、反発マグネットが、支持部材の軸部の一方端に連結する。
【0010】
また、本発明の磁気回路は、磁気空隙を規定するヨークおよびポールと、ヨークの底部およびポールを連結する主マグネットと、同一の磁極性を有する面同士がポールを主マグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、磁性体で形成されて反発マグネットに連結する第2ポールと、を含む反発型磁気回路であって、第2ポールが、ボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有してその一方端に反発マグネットが連結する軸部と、軸部の他方端側から軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されて磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有するフランジ部と、を含む。
【0011】
また、好ましくは、本発明の動電型スピーカーは、コーン型振動板と、コイルが巻回されてコーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、コーン型振動板の外周端を支持するエッジと、ボビンと連結してコーン型振動板の内周端側を支持するダンパーと、エッジおよびダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、フレームと連結してコイルが配置される磁気空隙を有する上記の磁気回路と、を備える。
【0012】
以下、本発明の作用について説明する。
【0013】
本発明の動電型スピーカーは、コーン型振動板と、コイルをコーン型振動板の凹面側に突出するように配置してコーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、コイルが配置される磁気空隙を有しコーン型振動板の凹面側に配置される磁気回路と、を備えている、いわゆる、前面磁気回路型の動電型スピーカーである。また、本発明の磁気回路は、前面磁気回路型の動電型スピーカーに適する反発磁気回路であり、コーン型振動板の背面側に磁気回路が位置する動電型スピーカーにも適用可能である。
【0014】
上記の本発明の前面磁気回路型の動電型スピーカーは、フレームと連結して磁気回路をコーン型振動板の凹面側に配置する支持部材を備え、この支持部材は、磁性体で形成されるとともに、その一方端に磁気回路が連結する軸部と、軸部の他方端側からフレームに連結するフランジ部と、を含む。また、本発明の磁気回路は、磁性体で形成されるこの支持部材と略同形状の第2ポールを含む。この磁気回路の第2ポールの軸部が、ボイスコイルのボビンを通過し、磁気回路のヨークが該フレームと連結する場合には、コーン型振動板の凸面側に突出するように磁気回路を配置する動電型スピーカーが構成される。また、磁気回路の第2ポールのフランジ部がフレームと連結する場合には、前面磁気回路型の動電型スピーカーが構成される。
【0015】
支持部材または第2ポールの軸部の一方端に連結する磁気回路は、磁気空隙を規定するヨークおよびポールと、ヨークの底部およびポールと連結するマグネットと、同一の磁極性を有する一方面がポールをマグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、を含む反発型磁気回路である。支持部材または第2ポールの軸部は、スピーカーの振動系を構成するボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有し、ボビンの内側を通過してその一方端に磁気回路が連結する。したがって、反発マグネットが、支持部材または第2ポールの軸部の一方端に連結する。
【0016】
また、支持部材または第2ポールのフランジ部は、軸部の他方端から延設されて磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有する。つまり、支持部材または第2ポールは、磁性体で形成されてその断面が略T字状になる部材である。したがって、支持部材または第2ポールの軸部の一方端に反発磁気回路を構成する反発マグネットが連結するので、磁気回路からの磁束が、磁性体である支持部材または第2ポールを通過する。磁性体で形成される支持部材または第2ポールは、軸部とフランジ部とを一体に形成するものであってもよく、また、それぞれ磁性体の別部品を組み合わせるものであっても良い。
【0017】
前面磁気回路型の動電型スピーカーでは、磁気回路が小さいことが好ましいので、磁気回路の小型化と、磁気空隙の磁束密度の低下の防止と、を両立させる必要がある。特に、反発型の磁気回路を用いて磁気空隙の磁束密度を高くする場合には、反発マグネットからの漏洩磁束も多くなりやすい。したがって、本発明の動電型スピーカーでは、前面磁気回路型を支える支持部材を磁性体で形成し、軸部およびフランジ部を有する断面が略T字状の形状に形成して、磁気回路の中央の反発マグネットから漏洩する磁束を支持部材の軸部に導いて、支持部材のフランジ部から磁気回路へ帰還する磁路を形成する。第2ポールを有する反発磁気回路を含む他の動電型スピーカーも、同様である。
【0018】
その結果、ボイスコイルのコイルが配置される磁気回路の磁気空隙での磁束密度を、支持部材を磁性体で形成しない場合に比べて大きく向上させることが出来る。磁気回路の磁気空隙での磁束密度が上がると、動電型スピーカーの再生能率が向上する。結果的に、同等の磁束密度を得る磁気回路を、前面磁気回路型の動電型スピーカーに適するように、さらに小さくすることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
小型又は薄型のコーン型振動板の凹面側に磁気回路を設ける動電型スピーカーおよびそれに用いる磁気回路に関し、特に、車両、または、ディスプレイ等の音響機器に取り付けるのに適する動電型スピーカーを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーを説明する正面図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーを説明する側面図および一部断面図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーでの磁束の分布を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーの磁気回路での磁束密度分布を説明するグラフである。(実施例1、比較例1)
【図5】比較例の動電型スピーカーを説明する図である。(比較例1)
【図6】比較例の動電型スピーカーでの磁束の分布を説明する図である。(比較例1)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0022】
図1および図2は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。図1は、動電型スピーカー1の正面図であり、図2は、側面図および一部断面図である。なお、後述するように、動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、図示を省略している。
【0023】
本実施例の動電型スピーカー1は、口径16cmのコーン型振動板2と、コーン型振動板の凹面側に位置する磁気回路10と、を備える前面磁気回路型スピーカーである。動電型スピーカー1の全高Hは、口径16cmの動電型スピーカーとしては極めて低く、動電型スピーカー1は、車両、または、ディスプレイ等の音響機器に取り付けるのに適する薄型の前面磁気回路型スピーカーである。
【0024】
動電型スピーカー1のコーン型振動板2は、その外周端にエッジ4が接着されており、また、内周端にボイスコイル3のボビン32が接着されている。コーン型振動板2は、漏斗状形状の内側、つまり、コーン型形状の凹面側に空間を形成するようなものであれば、その材料やコーンカーブの形状を問わない。コーン型振動板2は、スピーカーの振動板として代表的に用いられる、紙繊維を製紙して成形した紙振動板、樹脂を成形した樹脂振動板(織布または不織布等を基材として樹脂を含浸して成形した樹脂振動板を含む。)、他の材料でコーン型に形成した振動板であればよい。
【0025】
エッジ4は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するもののほか、他の動電型スピーカーに使用されるエッジ材料で成形するものであればよい。また、エッジ4の形状は、図示したコルゲーションエッジだけでなく、ロールエッジであってもよい。エッジ4は、後述するフレーム7の固定部71にその外周側が固定され、その結果、コーン型振動板2は振動可能に支持されている。
【0026】
ボイスコイル3は、音声電流が供給されるコイル31と、コイル31がその一端側に巻回されるボビン32から形成される。ボビン32は、コイル31をコーン型振動板2の凹面側に突出するように、コイル31が巻回されない他端側がコーン型振動板2の内周端と、接着剤により連結される。なお、図1では、コイル31からの引出線と、引出線をハンダ付けしてフレーム7の連結部73に固定される(図示しない)ターミナルまで導通させる錦糸線は、省略されている。錦糸線は、コーン型振動板2に金属ハトメを設けてターミナルまで導通させるようにすればよい。また、ボイスコイル3は、2つの音声信号電流に対応してコイル31が二重に巻き回しされたダブルボイスコイルであってもよい。
【0027】
ダンパー5は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するコルゲーションダンパーであり、ボビン32のコイル31が巻回されない他端側と連結してコーン型振動板2の内周端側を支持する。ダンパー5の外周端側は、フレーム7の固定部72に固定される。ダンパー5は、他の材料で形成するものであってもよく、内周側リングと外周側リングを連結するアームを有し、金属または樹脂で形成する蝶ダンパーであってもよい。
【0028】
フレーム7は、バスケット状に成型された非磁性体であるアルミフレームであり、エッジ4を固定する径の大きな固定部71と、ダンパー5を固定する径の小さな固定部72と、固定部71および72を連結する連結部73と、複数の連結部73の間に規定される窓74と、ターミナルを取り付ける(図示しない)取付孔75と、固定部72から延設されて支持部材6と連結するフランジ固定部76と、を備える。したがって、コーン型振動板2、ボイスコイル3、エッジ4およびダンパー5からなるスピーカー振動系は、フレーム7に対して振動可能に支持される。
【0029】
ボビン32に巻回されたボイスコイル3のコイル31は、ボビン32がコーン型振動板2の内周端に接着されて、コーン型振動板2の凹面側に突出するように配置される。そして、コイル31は、同様にコーン型振動板2の凹面側に、後述する支持部材6で配置される磁気回路10が有する磁気空隙に配置される。磁気回路10は、ヨーク11と、ヨークのセンター部に固着されるマグネット12と、マグネット12に固着されるポール13と、ポール13に固着されてマグネット12とともに反発磁界をヨーク11およびポール13が形成する磁気空隙に発生させる反発マグネット14と、から構成される。なお、磁気回路10には、図示するように、中心軸を貫通する貫通孔が形成されている。
【0030】
ボイスコイル3のコイル31に音声電流が供給されると、ボイスコイル3には磁気空隙での直流磁界による駆動力が作用し、ボイスコイル3は磁気空隙内を図1における上下方向に振動し、連結されたコーン型振動板2も図1における上下方向に振動する。磁気回路10は、ボイスコイル3のボビン32が投影する内部に磁石が収まる内磁型磁気回路であり、かつ、同一の磁極性を有する面同士がポール13をマグネット12とともに挟んで対峙するように配置される反発マグネット14を含む反発型磁気回路であるので、本発明の動電型スピーカー1のような前面磁気回路型スピーカーに適する。ヨーク11の最大外径を小さくすることができれば、コーン型振動板2の凹面側に形成される空間に収まるからである。
【0031】
支持部材6は、磁性体である鉄で形成される部材である。支持部材6は、その一方端に磁気回路10が連結する軸部61と、軸部61の他方端側からフレーム7に連結するフランジ部62と、を含む。動電型スピーカー1では、ボビン32の内側を通過する軸部61が、ボビン32の内径寸法よりも小さい外径直径を有しており、フランジ部62が、軸部61の他方端から軸部61の伸びる方向に直交する方向に延設されて磁気回路10の外径直径よりも大きい外径直径を有して、フレーム7のフランジ固定部76と連結する。このように、支持部材6は、磁性体で形成されてその断面が略T字状になる部材である。なお、軸部61またはフランジ固定部76は、磁気回路10の磁気空隙にボイスコイル3を配置する際に使用する治具を挿通させる貫通孔を有していても良い。
【0032】
前述の通り、磁気回路10は磁気空隙を規定するヨーク11およびポール13と、ヨーク11の底部およびポール13を連結するマグネット12と、同一の磁極性を有する面同士がポール13をマグネット12とともに挟んで対峙するように配置される反発マグネット14と、を含む反発型磁気回路であるので、反発マグネット14が、この支持部材6の軸部61の一方端に連結する。支持部材6の軸部61の一方端には、中心軸を通るネジ孔が設けられており、磁気回路10の貫通孔を通過するネジ8により、支持部材6と磁気回路10は連結する。
【0033】
図3は、本実施例の動電型スピーカー1での磁束の分布を説明する図である。図3における動電型スピーカー1は、支持部材6および磁気回路10以外の構成の図示を省略している。また、大きなループを描く磁束の一部は、その途中で図示を省略している。
【0034】
図3に図示するように、動電型スピーカー1では、支持部材6の軸部61の一方端に反発磁気回路10を構成する反発マグネット14が連結するので、磁気回路10からの磁束が、磁性体である支持部材6を通過する。支持部材6のフランジ部62は、軸部61の他方端から延設されて磁気回路10の外径直径よりも大きい外径直径を有しているので、支持部材6のフランジ部62と磁気回路10のヨーク11との間を大きなループを描く磁束が飛ぶことになる。反発型の磁気回路10は、反発マグネット14からの漏洩磁束が多くなりやすいので、前面側に配置される磁気回路10を支える支持部材6を磁性体で形成し、軸部61およびフランジ部62を有する断面が略T字状の形状に形成することによって、磁気回路10の中央の反発マグネット14から漏洩する磁束を支持部材6の軸部61に導いて、支持部材6のフランジ部62から磁気回路10へ帰還する磁路を形成することができる。その結果、磁気回路10の磁気空隙に集まる磁束が増加する。
【0035】
図4は、動電型スピーカー1を構成する磁気回路10の磁気空隙での磁束密度分布を説明するグラフである。横軸が磁気空隙でのボイスコイルが振動する方向の位置・距離であり、縦軸が磁束密度の絶対値である。なお、図4では、後述する比較例の動電型スピーカー100を構成する磁気回路10の磁気空隙での磁束密度分布も、比較対象として記載されている。
【0036】
前面磁気回路型の動電型スピーカー1では、コーン型振動板2の前面側に位置する磁気回路1が小さいことが好ましいので、磁気回路10の小型化と、磁気回路10の磁気空隙で磁束密度が低下することの防止と、を両立させる必要がある。本実施例の動電型スピーカー1では、ボイスコイル3のコイル31が配置される磁気回路10の磁気空隙での磁束密度が約0.92[T]であり、動電型スピーカー1の再生能率が向上する。また、図4に示すように、動電型スピーカー1では、磁気空隙を外れた位置を含む左右対称性が改善されるので、駆動力の偶数次歪を低減することができる。
【0037】
図5は、比較例の動電型スピーカー100を説明する側面図および一部断面図である。比較例の動電型スピーカー100は、実施例と同じ口径16cmのコーン型振動板2と、コーン型振動板の凹面側に位置する磁気回路10と、を備える点で共通する前面磁気回路型スピーカーである。比較例の動電型スピーカー100において、実施例の動電型スピーカー1との相違点は、コーン型振動板2を支持するフレーム70が磁気回路10を支持する軸部77をフランジ連結部76から非磁性体で一体成形されている点である。その結果、比較例の動電型スピーカー100の反発マグネット14には、実施例の動電型スピーカー1での磁性体である支持部材6に相当する部材が連結しない。
【0038】
図6は、比較例の動電型スピーカー100での磁束の分布を説明する図である。図6における動電型スピーカー100は、磁気回路10以外の構成の図示を省略し、説明のために実施例の動電型スピーカー1での支持部材6が配置される位置に、点線でその形状を図示している。
【0039】
図6に図示するように、比較例の動電型スピーカー100では、反発磁気回路10を構成する反発マグネット14に磁性体がポール13以外に何も連結しないので、反発マグネット14がフレーム70の軸部77で支えられる側からの磁束が、短いループを描く磁路でポール13へ戻ってしまうことが多くなる。その結果、反発マグネット14からの漏洩磁束を有効に利用できずに、比較例の動電型スピーカー100の磁気回路10の磁気空隙での磁束密度が、低くなる。
【0040】
図4に示すように、比較例の動電型スピーカー100では、ボイスコイル3のコイル31が配置される磁気回路10の磁気空隙での磁束密度が約0.82[T]であり、動電型スピーカー100の再生能率も、実施例の動電型スピーカー1の場合よりも低下する。また、図4に示すように、比較例の動電型スピーカー100では、磁気空隙を外れた位置を含む左右対称性が、実施例の動電型スピーカー1の場合よりも劣化する。
【0041】
このように、実施例の動電型スピーカー1は、磁性体で形成する支持部材6を備えているので、ボイスコイル3のコイル31が配置される磁気回路10の磁気空隙での磁束密度を、支持部材6を備えない場合に比べて大きく向上させ、再生能率を向上させることができる。結果的に、同等の磁束密度を得る磁気回路10を、前面磁気回路型の動電型スピーカー1に適するように、さらに小さくすることが出来る。前面磁気回路型の動電型スピーカー1では、磁気回路10が小さいことが好ましいので、さらに再生音質に優れる動電型スピーカー1を実現するのに有利である。
【0042】
なお、磁性体で形成される支持部材6は、本実施例のように、軸部61とフランジ部62とを、鉄等の磁性体で一体に形成するものであってもよく、また、それぞれ磁性体の別部品を組み合わせて形成するものであっても良い。また、本実施例のフレーム7は、非磁性体のアルミ材で形成されているが、樹脂で形成されていてもよい。
【実施例2】
【0043】
先の実施例の動電型スピーカー1を構成する磁気回路10は、他の(図示しない)動電型スピーカーにも利用することが可能な反発型磁気回路である。また、先の実施例の動電型スピーカー1を構成する磁性体で形成される支持部材6は、磁気回路10の中央の反発マグネット14から漏洩する磁束を、磁気回路10へ帰還する磁路を形成する(図示しない)第2ポール16として利用可能である。
【0044】
つまり、この第2ポール16は、磁性体で形成されるとともに、その一方端に磁気回路10が連結する軸部と、軸部の他方端から軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されるフランジ部と、を含む。また、第2ポール16の軸部の一端側が、磁気回路10を構成する反発マグネット14と連結する。したがって、この第2ポール16を含む磁気回路10は、他の反発磁気回路を含む他の動電型スピーカーに比較して、磁気空隙での磁束密度を上げて、動電型スピーカーの再生能率を向上させることができる。
【0045】
動電型スピーカーは、前面磁気回路型の場合だけでなく、コーン型振動板の凸面側に突出するように磁気回路を配置する動電型スピーカーにも利用可能である。前面磁気回路型の場合には、磁気回路10の第2ポール16のフランジ部がフレーム7と連結する。一方で、コーン型振動板の凸面側に突出するように磁気回路を配置する動電型スピーカーの場合には、磁気回路10の第2ポール16の軸部が、ボイスコイル3のボビン32を通過し、磁気回路10のヨーク11がフレーム7と連結する。第2ポール16は、断面が略T字状になり、振動するコーン型振動板2、ボイスコイル3、および、エッジ4を含む振動系に接触しない寸法・配置であれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の動電型スピーカー1は、全高が低く、小型・薄型の取付部分に取り付けられるので、設置空間が限定される車両用のスピーカーに特に適する。もちろん、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するディスプレイ等の映像・音響機器にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、100 動電型スピーカー
2 コーン型振動板
3 ボイスコイル
4 エッジ
5 ダンパー
6 支持部材
7 フレーム
8 ネジ
10 磁気回路
11 ヨーク
12 マグネット
13 ポール
14 反発マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーン型振動板と、コイルを該コーン型振動板の凹面側に突出するように配置して該コーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、該コーン型振動板の外周端を支持するエッジと、該ボビンと連結して該コーン型振動板の内周端側を支持するダンパーと、該エッジおよび該ダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、該コイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路と、該フレームと連結して該磁気回路を該コーン型振動板の凹面側に配置する支持部材と、を備える動電型スピーカーであって、
磁性体で形成される該支持部材が、その一方端に該磁気回路が連結する軸部と、該軸部の他方端側から該フレームに連結するフランジ部と、を含み、該ボビンの内側を通過する該軸部が、該ボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有し、該フランジ部が、該軸部の他方端から該軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されて該磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有し、
該磁気回路が、該磁気空隙を規定するヨークおよびポールと、該ヨークの底部および該ポールを連結する主マグネットと、同一の磁極性を有する面同士が該ポールを該主マグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、を含む反発型磁気回路であり、該反発マグネットが、該支持部材の該軸部の該一方端に連結する、
動電型スピーカー。
【請求項2】
磁気空隙を規定するヨークおよびポールと、該ヨークの底部および該ポールを連結する主マグネットと、同一の磁極性を有する面同士が該ポールを該主マグネットとともに挟んで対峙するように配置される反発マグネットと、磁性体で形成されて該反発マグネットに連結する第2ポールと、を含む反発型磁気回路であって、
該第2ポールが、該ボビンの内径寸法よりも小さい外径直径を有してその一方端に該反発マグネットが連結する軸部と、該軸部の他方端側から該軸部の伸びる方向に直交する方向に延設されて該磁気回路の外径直径よりも大きい外径直径を有するフランジ部と、を含む、
磁気回路。
【請求項3】
コーン型振動板と、コイルが巻回されて該コーン型振動板の内周端と連結するボビンを有するボイスコイルと、該コーン型振動板の外周端を支持するエッジと、該ボビンと連結して該コーン型振動板の内周端側を支持するダンパーと、該エッジおよび該ダンパーの外周端をそれぞれ固定するフレームと、該フレームと連結して該コイルが配置される磁気空隙を有する請求項2に記載の前記磁気回路と、を備える動電型スピーカー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−223165(P2011−223165A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87973(P2010−87973)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】