説明

包装容器

【課題】高級感のある外観と、内部を観察しうる透明性とを兼ね備えた包装容器を提供する。
【解決手段】管状の口部1cを有する容器本体1と、該口部1cを嵌め込んで係合するキャップ2からなる包装容器において、口部1cの表面に鏡面光沢を付与し、一方、キャップ2は平均粒子径が1〜180nmの金属酸化物顔料を0.01〜10重量%配合してなる樹脂組成物で形成することにより、偏光奏効効果と透明性を兼ね備えたキャップを有する包装容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップと容器本体からなる包装容器に関し、特に、優れた意匠性と透明性とを兼ね備えたキャップを有する包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品や医薬品、食品などの包装容器として、種々の形態が知られているが、最近では特に化粧品などにおいて、金属光沢などによって高級感を持たせた外観の包装容器への要望が高まっている。例えば、特許文献1にはパール光沢を呈する容器の製造方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−124091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、化粧品や医薬品、食品などの物品で、液状成分を含むものの流動性が低く、複数回に分けて使用するような物品の包装には、物品を充填する容器本体と、該容器本体の開口部を覆うキャップとの組み合わせが広く用いられている。このような物品の場合、衛生面から容器本体の開口部付近の状況をキャップを開けずに観察できるように、キャップが透明であることが望まれる。しかしながら、上記したようなパール光沢をキャップに持たせた場合には、キャップの透明性が失われてしまう。
【0005】
本発明の課題は、従来にない高級感のある外観と、内部を観察しうる透明性とを兼ね備えたキャップを有する包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一端に開口部を有する管状の口部を備えた容器本体と、該容器本体の口部を挿入する凹部を有し、該口部に着脱自在に係合されるキャップとを有する包装容器であって、上記容器本体の口部の外側表面が鏡面光沢を有し、上記キャップが透明樹脂に少なくとも平均粒子径が1〜180nmの金属酸化物顔料を配合してなる樹脂組成物で形成されていることを特徴とする包装容器である。
【0007】
本発明においては、上記樹脂組成物が金属酸化物顔料を0.01〜10重量%配合してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の包装容器においては、キャップが見る方向によって色が変わる偏光奏効効果と透明性とを兼ね備えた従来にない優れた意匠性を備え、また、係るキャップが透明であることから、容器本体の口部をキャップをはめたままの状態で観察することができる。さらに、キャップの偏光奏効効果は容器本体の口部に鏡面光沢を付与することによって容易に得られるため、係る包装容器の製造に煩雑な工程や高価な工程を必要とせず、安価な大量生産が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の包装容器は、開口部を有する容器本体と、該開口部を覆って該容器本体に着脱自在に係合されるキャップとからなる。係る開口部は管状の口部の一端に形成されており、キャップは該口部に対応する凹部を有しており、口部をキャップの凹部に挿入して互いに係合させる。係る包装容器の具体的な形態としては、例えば、チューブ容器が挙げられる。チューブ容器は練り歯磨きやクリーム状の化粧品、軟膏、練りわさびといった物品に広く用いられている包装容器である。その一例の構成を図1に示す。
【0010】
図1は一般的なチューブ容器において、キャップを容器本体に係合させた状態(キャップをはめた状態)のキャップ付近を示す図であり、左半分は外側から見た状態を示し、右半分は断面模式図である。また、係るチューブ容器のキャップを外した状態を図2に示す。図2において、容器本体は外側から見た状態を示し、キャップは断面模式図で示している。
【0011】
チューブ容器は、容器本体1とキャップ2とからなり、容器本体1は物品を取り出すための開口部1dを一端に有する管状の口部1cを有している。該口部1cの他端には物品を充填するための胴部1aが設けられるが、通常、胴部1aと口部1cの間に、内径が胴部1aから口部1cに向かって漸減する肩部1bが形成される。
【0012】
一方、キャップ2には、口部1cを嵌め込む凹部2cが形成されている。図1、図2では、キャップ2が天板2aと該天板2aの周縁から垂下する周壁2bとからなる断面が略コ字形の形状を例示したが、天板2a部分が凸或いは凹となった形状であっても良い。また、天板2a部分に内側に凹む凹部を形成し、該凹部の中心に外側に突出する突起を形成しておき、一方、容器本体1の開口部1dを物品充填後に封止し、該封止部分を使用開始時に上記キャップ2に設けた突起で押し破る形態も広く利用されている。本発明においては、後述するように容器本体1の口部1cと重なる領域がキャップ2に有れば良く、凹部2cの形状や天板2a部分の形状は限定されない。
【0013】
また、図1,図2の例においては、キャップ2の周壁2bの内側と、口部1cの外側にそれぞれ対応するネジ加工が施され、螺合により互いに係合するように形成されているが、本発明において、キャップ2と口部1cとの係合形態はこれに限定されるものではない。例えば、キャップ2の内側と口部1cの外側にそれぞれ凸部を形成し、少なくとも一方の凸部に弾性を持たせておくことにより、キャップ2の着脱時に弾性を有する側の凸部を変形させて係合する形態であっても良い。
【0014】
係る包装容器においては、胴部1aが可撓性のある金属や合成樹脂シート、或いは金属箔と合成樹脂シートとの複合材や、合成樹脂シートに金属を蒸着したシートなどで形成され、キャップ2を外して開口部13を開放した状態で胴部1aを押すことにより、充填されている物品を必要量だけ押し出すことができる。
【0015】
本発明の特徴は、容器本体1の口部1cの外側表面が鏡面光沢を有し、キャップ2が透明樹脂に少なくとも平均粒子径が1〜180nmの金属酸化物顔料を配合してなる樹脂組成物で形成されていることにある。
【0016】
平均粒子径が1〜180nmの金属酸化物顔料を配合した塗料を光沢面に塗布した場合、視角によって色が変わることは、例えば国際公開WO2003/047871号公報に記載されているように、従来から知られていた。しかしながら、係る効果を樹脂成形体で得ようとすると、樹脂成形体の背面に金属層を蒸着等により積層しなければならない。従って、図1,図2に例示したような包装容器のキャップ2の場合には、凹部1cに金属層を積層しなければならず、製造上問題があった。
【0017】
本発明においては、係る問題を、全く異なる観点から取り組み、容器本体1の口部1cに金属光沢面を持たせることにより解決したものである。即ち、透明樹脂に上記金属酸化物顔料を配合してキャップ2を形成し、口部1cの外側表面に鏡面光沢を持たせることによって、キャップ2を容器本体1にはめた際に、キャップ2を透過した光が口部1cによって反射され、レイリー散乱による偏光奏効効果が得られる。係る偏光奏効効果で認識される色は金属光沢を有するメタリックカラーであり、高級感が得られる。しかも、透明樹脂本来の透明性が実質的に損なわれておらず、また、キャップ2の凹部2cに金属層が蒸着されていないことによって、開口部1dを含む口部1c全体をキャップ2をはめた状態で外側から観察することができる。
【0018】
本発明において用いられる金属酸化物顔料は、透明な金属酸化物顔料が好ましく、具体的には、二酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、ミクロ硫化バリウム、無定形シリカ等を挙げることができ、これらは単独でも、複数を併用してもかまわない。中でも二酸化チタンが好ましく用いられる。
【0019】
また、金属酸化物顔料は、有機処理剤または無機処理剤で表面処理したものを用いても良い。有機処理剤として、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面活性剤、金属石鹸、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。無機処理剤として、アルミナ、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。
【0020】
金属酸化物顔料としては、平均粒子径が1〜180nmであるが、偏光奏効効果を得る上で好ましくは20nm〜180nm、更に好ましくは30nm〜170nmのものが用いられる。また、平均粒子径が20nm以上の金属酸化物顔料を使用した場合には全体的に僅かに金色味を帯びて見えるという現象が生じるが、平均粒子径が20nm未満の場合には係る現象が起こらない。
【0021】
ここで、平均粒子径は、画像解析装置(ルーゼックIIIU、ニレコ社製)により粒度分布曲線を得、その50容量%値から求める。
【0022】
また粒子径の変動係数は、60%以下が好ましく、更に好ましくは45%以下である。ここで変動係数は100×(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)(%)により定義される。
【0023】
尚、所定平均粒子径の金属酸化物顔料は、コロイド法(化学処方)、硫酸法、塩素法等により調製される。
【0024】
金属酸化物顔料の透明樹脂への配合量は係る顔料を配合した樹脂組成物中において0.01〜10重量%が好ましい。尚、係る樹脂組成物には、偏光奏効効果と透明性を損なわない範囲で金属顔料が含まれていてもかまわないが、その含有量は0.6重量%以下である。
【0025】
また、本発明で用いられる透明樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS樹脂等が挙げられる。
【0026】
具体的な配合例としては、ポリプロピレン樹脂99重量部に上記金属酸化物顔料1重量部を配合してなるマスターバッチが市販されているので、このマスターバッチ1重量部をポリプロピレン樹脂20重量部に配合して樹脂組成物を調整し、成形することにより本発明に係るキャップが得られる。
【0027】
本発明においては、キャップ2に偏光奏効効果を生じさせるために、口部1cの外側表面が鏡面光沢を有することが必要である。また、図1,図2に例示したように、容器本体1が肩部1bを有する場合には、該肩部1bも同様の光沢を有していることが好ましい。本発明において、係る鏡面光沢は、JIS Z 8741(85度鏡面光沢度、好ましくは60度鏡面光沢度)に基づく鏡面光沢度が測定可能な範囲であることを意味する。従って、測定可能である限り、表面が平滑でない艶消し面であっても光沢を有する表面に含まれる。また、この光沢度(60度鏡面光沢度)は、10%以上が好ましい。
【0028】
本発明において、口部1c或いは口部1cと肩部1bに係る鏡面光沢を付与する方法としては特に限定されないが、好ましくは、金属塗装を施す、金属層を設ける、或いは、必要な領域を金属にて形成する方法が挙げられる。容器本体1の製造上の利便性を考慮すれば、容器本体1全体を金属で形成することも好ましい。
【0029】
本発明において、鏡面光沢を付与するために用いられる金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、クロム合金(ステンレス)等及びこれらを含有する合金が好ましい。特に、偏光奏効効果に優れると言う観点から、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを含有する合金が好ましい。
【0030】
尚、図1,図2には一般的なチューブ容器を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャップの外径が容器本体の外径とほぼ同等或いはそれ以下の広口の開口部を有する容器にも好ましく適用される。
【実施例】
【0031】
透明性を有するポリプロピレン99重量部に平均粒子径が50nmの金属酸化物顔料を1重量部配合してなるマスターバッチ(日本コレス社製、商品名「ルミニスト」)を用い、該マスターバッチ1重量部を透明性を有するポリプロピレン(日本ポリプロ社製)20重量部に配合し、射出成形機(住友ネスタール社製)に供給して、200〜250℃のシリンダー温度にて図1,図2に示す形状の透明キャップ2を射出成形した。
【0032】
キャップ2のサイズは、天板2aの外径が14mm、キャップ2の開口側の外径が18mm、キャップ2の高さが20mm、凹部2cの最大径が11mm、凹部2cの深さが10mmとした。
【0033】
また、容器本体1は、図1,図2に示す胴部1aが厚さ0.10〜0.15mmのチューブ容器で、アルミニウムのスラグ(アルミニウム純度:99.7%)をプレス機でプレス成形し、底部はチューブをつぶして直線状に封止した。係る容器本体1のサイズは、胴部1aの高さが150mm、肩部1bの高さが7mm、口部1cの高さが10mmで、胴部1aの外径が28.5mm、口部1cの最大径が11mmとした。口部1cと肩部1bの表面は鏡面光沢を有していた。
【0034】
上記キャップを容器本体にはめたところ、キャップをはめた状態で外部から容器本体の口部の様子を観察することができ、同時に、良好な偏光奏効効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の包装容器の一例であるチューブ容器のキャップ周辺を示す図である。
【図2】図1のチューブ容器のキャップを外した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 容器本体
1a 胴部
1b 肩部
1c 口部
1d 開口部
2 キャップ
2a 天板
2b 周壁
2c 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する管状の口部を備えた容器本体と、該容器本体の口部を挿入する凹部を有し、該口部に着脱自在に係合されるキャップとを有する包装容器であって、上記容器本体の口部の外側表面が鏡面光沢を有し、上記キャップが透明樹脂に少なくとも平均粒子径が1〜180nmの金属酸化物顔料を配合してなる樹脂組成物で形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
上記樹脂組成物が金属酸化物顔料を0.01〜10重量%配合してなる請求項1に記載の包装容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−68884(P2008−68884A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247680(P2006−247680)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】