説明

包装箱

【課題】開封しなくても収納物を利用することができる包装箱を提供する。
【解決手段】包装箱1は、一枚の板紙を折り曲げて形成され、3面以上の外壁11と、この外壁11に対応して設けられた3面以上の内壁12とにより、中空筒状体10が形成された二重壁構造を有している。中空筒状体10の他方の端部は、外壁11に連続して設けられた外側組合部32と、この外側組合部32及び内壁12に連続して設けられた内側組合部33とを組み合わせることにより、周縁部が覆われており、中心部には開口34が形成されている。外壁11の長さは内壁12の長さよりも長く、外側組合部32は、外壁11から内側組合部33に向かい中空筒状体10の一方の端部側に傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用の箱に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の臨床試験では、被験薬の効果を検討するために、実際には効果のない偽薬や、すでに効果が確認されている基準薬との比較が行われる。その際、投与される薬が被験薬であるのか対照薬であるのかが分かると、薬の有効性を正確に判断できない場合がある。そこで、医師にも被験者にも、被験薬か対照薬なのかが分からないようにして臨床試験を行う二重盲検試験が広く行われている。二重盲検試験では、通常、被験薬と対照薬との外観を同一として、区別できないようにする。しかし、薬の種類によっては、特に注射薬の場合、内容液等の組成の違いにより外観を完全に同一とすることが難しいことがある。そこで、包装により外側を覆い、被験薬と対照薬との区別を出来ないようにすることが対策として考えられる。
【0003】
しかしながら、包装箱は、一般に、四角い筒状体の両端部に閉鎖部を開閉自在に連設した構造とされているので、開封しなければ薬を利用することができず、被験薬か対照薬かが分かってしまうという問題があった。また、薬用の包装箱として、改ざん又は不正な開封を防止する機能を備えたものも開発されているが(例えば、特許文献1参照)、この包装箱においても、開封しなければ利用することができないという点は同じであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−345072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、開封しなくても収納物を利用することができる包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の包装箱は、3面以上の外壁と、この外壁に対応して設けられた3面以上の内壁とにより、中空筒状体が形成された二重壁構造を有するものであって、中空筒状体の一方の端部は、閉鎖部により閉鎖され、中空筒状体の他方の端部は、中心部に開口が形成され、その周縁部が、前記外壁に連続して設けられた外側組合部と、この外側組合部及び前記内壁に連続して設けられた内側組合部とを組み合わせることにより覆われており、内壁の長さは、外壁の長さよりも短く、外側組合部及び内側組合部は、外壁及び内壁に対応してそれぞれ3面以上設けられ、外側組合部は、外壁から内側組合部に向かい、中空筒状体の一方の端部側に傾斜しているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装箱によれば、中空筒状体の他方の端部において、中心部に開口を形成するようにしたので、例えば、開口から容器の口を突出させて包装箱の中に容器を収納することにより、包装箱を開封しなくても開口から容器の中の収納物を利用することができる。また、中空筒状体の他方の端部において、外壁に連続して設けられた外側組合部と、この外側組合部及び内壁に連続して設けられた内側組合部とを組み合わせることにより周縁部を覆い、内壁の長さを外壁の長さよりも短くし、外側組合部を外壁から内側組合部に向かい中空筒状体の一方の端部側に傾斜させるようにしたので、容器を包装箱から取り出そうとしても、簡単に取り出すことができず、改ざん又は不正な開封を防止することができる。
【0008】
よって、例えば、二重盲検試験において、被験薬と対照薬との外観を同一とすることが難しい場合であっても、本発明の包装箱に収納し、使用することで、被験薬と対照薬とを区別できない状態で臨床試験を実施することができ、薬の有効性を正確に判断することができる。また、二重盲検試験に限らず、容器または収納物を保護しつつ、簡便に収納物を利用することができる。
【0009】
また、内側組合部を内壁から外側組合部に向かい中空筒状体の他方の端部側に傾斜させるようにすれば、改ざん又は不正な開封をより効果的に防止することができると共に、容器を安定して収納することができる。
【0010】
更に、外側組合部及び内側組合部に、開口を形成する開口用切抜きをそれぞれ設け、外側組合部と内側組合部とを開口用切抜きの片側において連続させ、開口用切抜きの反対側には、隣接する外側組合部及び内側組合部を挿入するための挿入用切抜きを設けるようにすれば、簡単に包装箱を組み立てて構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る包装箱の外観構成を表す図である。
【図2】図1に示した包装箱のI−I線に沿った構造を表す端面図である。
【図3】図1に示した包装箱を展開した状態を表す図である。
【図4】図3に示した展開した包装箱の内壁が外壁と重なるように折り曲げた状態を表す図である。
【図5】図3に示した展開した包装箱の内壁が外壁と重なるように折り曲げ、更に、両側の内壁及び外壁を折り曲げた状態を表わす図である。
【図6】図1に示した包装箱の内部に容器を収納する手順を表す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態に係る包装箱1の外観構成を表すものであり、図2はI−I線に沿った端面構造を表すものであり、図3は展開した状態を表すものであり、図4及び図5は一部を折り曲げた状態を表すものである。この包装箱1は、例えば、口を有する瓶状のガラス製又はプラスチック製などの容器Mを包装するのに適したものである。容器Mとしては、例えば、医薬品の容器として一般的に用いられるバイアル瓶、アンプル瓶などが挙げられ、収納した状態での使用に適することから、バイアル瓶が好ましい。この包装箱1は、一枚の板紙を折り曲げて形成されており、3面以上の外壁11と、この外壁11に対応して設けられた3面以上の内壁12とにより、中空筒状体10が形成された二重壁構造を有している。なお、図1から図5では、外壁11及び内壁12がそれぞれ4面の場合について示している。
【0014】
外壁11の各面は、折り曲げ線13Aを介して、幅方向(x方向;図3参照)において連続して設けられており、幅方向における片方の側辺には、糊代14Aが折り曲げ線13Bを介して外壁11に連続して設けられている。内壁12の各面も、折り曲げ線13Cを介して、幅方向において連続して設けられており、幅方向における片方の側辺には、糊代14Bが折り曲げ線13Dを介して内壁12に連続して設けられている。外壁11の長さL1(図3参照)は、内壁12の長さL2(図3参照)よりも長く構成されている。外壁11と内壁12との長さの差L1−L2は、包装する容器Mの大きさにより異なるが、例えば、5mm以上5cm以下の範囲内であれば好ましく、1cm以上4cm以下の範囲内であればより好ましい。
【0015】
中空筒状体10の一方の端部は、閉鎖部21により閉鎖されている。閉鎖部21は、外壁11の長さ方向における一方の端部において、折り曲げ線22Aを介し、外壁11の1つの面に連続して設けられている。閉鎖部21の先端には、差込片23が折り曲げ線22Bを介し連続して設けられている。外壁11の長さ方向における一方の端部には、また例えば、少なくとも1つの折り曲げ片24が、折り曲げ線22Aを介して外壁11の他の面に連続して設けられている。折り曲げ片24は、例えば、図1から図5では、2つ設けられており、長さは閉鎖部21のほぼ半分とされている。
【0016】
中空筒状体10の一方の端部には、また例えば、閉鎖部21及び折り曲げ片24の内側に、中板25が設けられている。中板25は、内壁12の長さ方向における一方の端部に、折り曲げ線22Cを介して、内壁12の1つの面に連続して設けられている。中板25は、例えば、内壁12の内側全体を覆う程度の大きさとされている。
【0017】
中空筒状体10の他方の端部は、外壁11に連続して折り曲げ線31Aを介して設けられた外側組合部32と、この外側組合部32及び内壁12に連続して折り曲げ線31B,31Cを介して設けられた内側組合部33とを組み合わせることにより、周縁部が覆われており、中心部には開口34が形成されている。開口34は、例えば、容器Mの口を外部に露出させるためのものである。外側組合部32及び内側組合部33は、外壁11及び内壁12に対応してそれぞれ3面以上設けられており、図1から図5では、それぞれ4面設けられている。
【0018】
外側組合部32は、外壁11から内側組合部33に向かい、中空筒状体10の一方の端部側に傾斜している。容器Mを取り出し難くすることができるからである。内側組合部33は、内壁12から外側組合部32に向かい、中空筒状体10の他方の端部側に傾斜していることが好ましい。容器Mをより取り出し難くすることができると共に、容器Mを安定して収納することができるからである。なお、内側組合部33は、内壁12に対して垂直とされていてもよく、また、中空筒状体10の一方の端部側に傾斜していてもよい。
【0019】
外側組合部32及び内側組合部33には、開口34を形成する開口用切抜き32A,33Aがそれぞれ設けられている。開口用切抜き32A,33Aは、例えば、外側組合部32と内側組合部33との連続部分を切り抜くように繋がって形成されており、外側組合部32と内側組合部33とは、開口用切抜き32A,33Aの片側において折り曲げ線31Bを介して連続している。開口用切抜き32A,33Aの反対側には、隣接する外側組合部32及び内側組合部33を挿入するための挿入用切抜き32B,33Bがそれぞれ設けられている。
【0020】
外壁11の幅方向(x方向)における外側組合部32及び内側組合部33の高さH(図5参照)、すなわち外壁11から外側組合部32と内側組合部33との間の折り曲げ線31Bまでの距離は、包装する容器Mの大きさにより異なるが、例えば、外壁11の幅の1/3以上4/5以下程度が好ましく、1/2以上3/4以下程度の範囲内であればより好ましい。高さHが低いと収納した容器Mを取り出し難くする効果が低くなり、高さHが高いと簡単に組み立てることが難しくなるからである。
【0021】
この包装箱1は、次のようにして組み立てられる。まず、図3に示したように、一枚の板状に展開された状態の包装箱1を、例えば、外壁11と外側組合部32との間の折り曲げ線31Aで2つ折りにする。次いで、例えば、図4に示したように、外側組合部32と内側組合部33との間の折り曲げ線31B、及び、内側組合部33と内壁12との間の折り曲げ線31Cで折り曲げて、外側組合部32及び内側組合部33を突出させ、内壁12の一方の端部を外壁11の一方の端部に合わせる。
【0022】
続いて、例えば、図5に示したように、両側の外壁11及び内壁12を、折り曲げ線13A,13Cで内側に折り曲げる。その際、外側組合部32及び内側組合部33を、隣接する外側組合部32及び内側組合部33の挿入用切抜き32B,33Bに挿入する。更に、例えば、外壁11及び内壁12を真ん中の折り曲げ線13A,13Cで内側に折り曲げ、同様に、外側組合部32及び内側組合部33を、隣接する外側組合部32及び内側組合部33の挿入用切抜き32B,33Bに挿入する。
【0023】
次いで、例えば、糊代14Bを反対側の内壁12に接着し、糊代14Aを反対側の外壁11に接着して、中空筒状体10を形成する。そののち、例えば、中板25、折り曲げ片24、及び閉鎖部21をこの順に折り曲げ線22C,22Aで内側に折り曲げ、差込片23を折り曲げ線22Bで折り曲げて、外壁11と内壁12との間に挿入し、中空筒状体10の一方の端部を閉鎖する。これにより、包装箱1が組み立てられる。
【0024】
また、この包装箱1は、次のようにして容器Mを収納する。まず、例えば、図6に示したように、閉鎖部21を開け、折り曲げ片24及び中板25を開けて、容器Mを中空筒状体10の他方の端部、すなわち開口34の側から、容器Mの底部を先にして挿入する。その際、突出するように折り曲げられている外側組合部32及び内側組合部33は、平板状に伸びて、内壁12は、中空筒状体10の一方の端部側に移動する。次いで、容器Mの口を外側組合部34の開口用切抜き32Aの付近まで挿入したら、例えば、内壁12を他方の端部側に移動させ、外側組合部32及び内側組合部33を突出させて、容器Mの口を開口34に合わせる(図2参照)。これにより、容器Mは、他方の端部側に引き出すことができなくなり、一方の端部側から引き出すことも難しくなる。続いて、例えば、一方の端部側において、中板25、折り曲げ片24、及び閉鎖部21をこの順に折り曲げ、差込片23を外壁11と内壁12との間に挿入し、外壁11に接着する。これにより、容器Mが収納される。
【0025】
このように本実施の形態によれば、中空筒状体10の他方の端部において、中心部に開口34を形成するようにしたので、例えば、開口34から容器Mの口を突出させて包装箱1の中に容器Mを収納することにより、開封しなくても開口34から容器Mの中の収納物を利用することができる。また、中空筒状体10の他方の端部において、外壁11に連続して設けられた外側組合部32と、この外側組合部32及び内壁12に連続して設けられた内側組合部33とを組み合わせることにより周縁部を覆い、内壁12の長さを外壁11の長さよりも短くし、外側組合部32を外壁11から内側組合部33に向かい中空筒状体10の一方の端部側に傾斜させるようにしたので、容器Mを包装箱1から取り出そうとしても、簡単に取り出すことができず、改ざん又は不正な開封を防止することができる。
【0026】
よって、例えば、二重盲検試験において、被験薬と対照薬との外観を同一とすることが難しい場合であっても、この包装箱1に収納し、使用することで、被験薬と対照薬とを区別できない状態で臨床試験を実施することができ、薬の有効性を正確に判断することができる。また、二重盲検試験に限らず、容器Mまたは収納物を保護しつつ、簡便に収納物を利用することができる。
【0027】
また、内側組合部33を内壁12から外側組合部32に向かい中空筒状体10の他方の端部側に傾斜させるようにすれば、改ざん又は不正な開封をより効果的に防止することができると共に、容器Mを安定して収納することができる。
【0028】
更に、外側組合部32及び内側組合部33に、開口34を形成する開口用切抜き32A,33Aをそれぞれ設け、外側組合部32と内側組合部33とを開口用切抜き32A,33Aの片側において折り曲げ線31Bを介して連続させ、開口用切抜き32A,33Aの反対側には、隣接する外側組合部32及び内側組合部33を挿入するための挿入用切抜き32B,33Bを設けるようにすれば、簡単に包装箱1を組み立てて構成することができる。
【0029】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素の具体的な形について図面に示して説明したが、他の形状を有するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
容器などを包装する包装箱に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…包装箱、10…中空筒状体、11…外壁、12…内壁、13A,13B,13C,13D…折り曲げ線、14A,14B…糊代、21…閉鎖部、22A,22B,22C…折り曲げ線、23…差込片、24…折り曲げ片、25…中板、31A,31B,31C…折り曲げ線、32…外側組合部、32A…開口用切抜き、32B…挿入用切抜き、33…内側組合部、33A…開口用切抜き、33B…挿入用切抜き、34…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3面以上の外壁と、この外壁に対応して設けられた3面以上の内壁とにより、中空筒状体が形成された二重壁構造を有する包装箱であって、
前記中空筒状体の一方の端部は、閉鎖部により閉鎖され、
前記中空筒状体の他方の端部は、中心部に開口が形成され、その周縁部が、前記外壁に連続して設けられた外側組合部と、この外側組合部及び前記内壁に連続して設けられた内側組合部とを組み合わせることにより覆われており、
前記内壁の長さは、前記外壁の長さよりも短く、
前記外側組合部及び前記内側組合部は、前記外壁及び前記内壁に対応してそれぞれ3面以上設けられ、
前記外側組合部は、前記外壁から前記内側組合部に向かい、中空筒状体の一方の端部側に傾斜している、
ことを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記内側組合部は、前記内壁から前記外側組合部に向かい、中空筒状体の他方の端部側に傾斜している
ことを特徴とする請求項1記載の包装箱。
【請求項3】
前記外側組合部及び前記内側組合部には、前記開口を形成する開口用切抜きがそれぞれ設けられ、
前記外側組合部と前記内側組合部とは、前記開口用切抜きの片側において連続しており、
前記開口用切抜きの反対側には、隣接する前記外側組合部及び前記内側組合部を挿入するための挿入用切抜きが設けられた
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12063(P2012−12063A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149254(P2010−149254)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000109831)トーアエイヨー株式会社 (25)
【出願人】(509156686)東近紙工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】