説明

医療用カテーテルおよびその製造方法

【課題】医療用カテーテルの遠位側が細径で、生体管腔内での医療用カテーテルの遠位側の曲げ状態をより良く制御可能な医療用カテーテルを提供すること。
【解決手段】可撓性を有するシャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材とを備え、前記操作ワイヤーの遠位側は、前記ワイヤー係合部材の中空部内に挿通され、前記シャフト部の前記係合部材よりも遠位側の内壁面に、または、前記ワイヤー係合部材に、接合または係止して固定されることを特徴とする医療用カテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用カテーテルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬剤などの注入、生体内の内容物の回収、生体細胞の採取、病変部の切除、閉塞部の拡張、心臓内心電図などの電気生理学的検査などの各種の医療処置を行なう際に用いられる医療用カテーテルとして、その先端部分(遠位側部分)を所望の部位に方向づけることができるようにするため、その手元部分(近位側部分)に操作部を設け、この操作部を操作することにより、カテーテルの先端部分を所望の方向に曲げることできるように設計された医療用カテーテルが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このような医療用カテーテルは、一般的に、可撓性のあるチューブと、その手元部分に配される操作部を備えるとともに、チューブの先端部と操作部とに固定された操作ワイヤーが配されている。そして、操作部を操作することにより操作ワイヤーが手元側に引っ張られた場合にカテーテルの先端部が曲がるように構成される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のカテーテルは、直接心筋脈管再生(DMR)処理に使用されるカテーテルであり、DMRを行うに際して、制御操作に優れ、使用者に多量の情報を提供することを目的としたものである。そして、カテーテルの先端部には、使用者に多量の情報を提供するためのセンサーや電極用のケーブル、操作ワイヤーを個別に通すための複数の軸ずれ穴が設けられた3個の穴を有するチューブが配されている。
【0005】
しかしながら、このような3個穴を有するチューブを用いる場合、操作ワイヤーなどを通す穴の内径を確保するためには、実際にはチューブの外径を大きくせざるを得ず、また、各穴の隔壁の厚みが少なく、場合によってはチューブの強度が低下するおそれもあり、医療用カテーテルを挿入可能な部位が限定される場合があり得る。
【0006】
また、特許文献1には、心臓の電気的信号の強度をモニターすること、即ち、心臓内心電図の測定が行われ得ることが記載されている。心臓内心電図を測定する際、心臓が脈動することから、正確な測定を行うためには、心臓内壁ないしは脈管壁とカテーテルのセンサー部分を確実に接触させる必要がある。ところが、心臓内、冠動脈、冠静脈、冠状静脈洞などの構造は複雑であるため、カテーテルの先端部分を操作部による操作により曲げて、このような接触状態を確保することは容易ではなく、特許文献1記載のカテーテルを用いる場合でも、この問題点を十分には解消できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4226117号公報
【特許文献2】特開2006−87554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題点に鑑み、本発明の目的とするところは、医療用カテーテルの遠位側が細径で、生体管腔(例えば、冠動脈、冠静脈、冠状静脈洞などの脈管)内での医療用カテーテルの遠位側の曲げ状態をより良く制御可能な医療用カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、下記構成の医療用カテーテルにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、
(1)可撓性を有するシャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材とを備え、
前記操作ワイヤーの遠位側は、前記ワイヤー係合部材の中空部内に挿通され、前記シャフト部の前記係合部材よりも遠位側の内壁面に、または、前記ワイヤー係合部材に、接合または係止して固定されることを特徴とする医療用カテーテル、
(2)前記ワイヤー係合部材の材質が、前記シャフト部を構成する材質よりも剛性の高い材質である前記(1)記載の医療用カテーテル、
(3)前記シャフト部が、その遠位側の外壁面に電極を備え、
該電極は前記シャフト部の内腔部に配された導線を介して前記操作部または前記シャフト部の近位側に設けられた外部出力装置と電気的に接続可能な端子と電気的に接続された前記(1)または(2)記載の医療用カテーテル、
(4)前記ワイヤー係合部材が、前記電極より近位側に配される前記(3)に記載の医療用カテーテル、
(5)前記操作ワイヤーの遠位側端部が、前記シャフト部の遠位側端部に固定されている前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医療用カテーテル、
(6)前記電極が、シャフト部の遠位側の端部に配された前記(3)〜(5)のいずれかに記載の医療用カテーテル、
(7)前記シャフト部が、外管と、該外管の内腔部に配された内管とを備え、前記シャフト部の内壁面が前記外管の内腔部を形成する内壁面により構成される前記(1)〜(6)のいずれかに記載の医療用カテーテル、
(8)前記シャフト部が、予め湾曲した形状に賦形された前記(1)〜(7)のいずれかに記載の医療用カテーテル、
(9)前記導線が、銅より引張り強度の高い芯線の表面に銅がメッキされたものである前記(3)〜(8)のいずれかに記載の医療用カテーテル、
(10)シャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材とを備えた医療用カテーテルを製造する方法であって、
前記ワイヤー係合部材の中空部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内腔部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内壁面に前記ワイヤー係合部材を固定する工程、
を含むことを特徴とする医療用カテーテルの製造方法、
(11)前記ワイヤー係合部材の外表面上に接着剤を塗布する工程、
前記接着剤が塗布されたワイヤー係合部材を前記シャフト部の内腔部に挿入する工程、
を含む前記(10)記載の医療用カテーテルの製造方法、
(12)シャフト部に、前記内腔部と外部とを連通する少なくとも一つの小孔部を形成する工程、
前記小孔部を介して外部から接着剤を注入して、前記シャフト部の内腔部に予め配された前記ワイヤー係合部材と前記内壁面とに接着剤を塗布する工程、
前記小孔部を封止する工程、
を含む前記(10)に記載の医療用カテーテルの製造方法、
(13)シャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材と、前記シャフト部の外周面に電極を有し、前記シャフト部の内腔部に前記電極と電気的に接続され導線と、を備えた医療用カテーテルを製造する方法であって、
前記ワイヤー係合部材の中空部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内腔部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内壁面に前記ワイヤー係合部材を固定する工程、
シャフト部に、前記内腔部と外部とを連通する少なくとも一つの小孔部を形成する工程、
前記小孔部に導線を挿通した後、電極を前記シャフト部の外表面に固定する工程、
を含む医療用カテーテルの製造方法、
(14)前記小孔を介してシャフト部の外部から接着剤を注入して、前記シャフト部の内腔部に予め配された前記ワイヤー係合部材と前記内壁面とに接着剤を塗布する工程、
を含む前記(13)に記載の医療用カテーテルの製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医療用カテーテルによれば、医療用カテーテルの遠位側が細径で、生体管腔内での医療用カテーテルの遠位側の曲げ状態をより良く制御可能である。
また、本発明に係る医療用カテーテルによれば、特に冠動脈、冠静脈、冠状静脈洞などの脈管内や心臓内で心電図を測定する場合でも、心臓内壁ないしは脈管壁とカテーテルの電極部分を確実に接触させることが可能なため、正確な心電図を測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の第1実施形態の一例の外観を示す模式図である。(b)(a)の遠位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。(c)(a)の近位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。
【図2】(a)本発明の第1実施形態の他の例の遠位側部分のカテーテルの軸方向の断面図である。(b)本発明の第1実施形態の他の例の近位側部分のカテーテルの軸方向の断面図である。
【図3】(a)本発明の第2実施形態の他の例の外観を示す模式図である。(b)(a)の遠位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。
【図4】(a)図3(b)のI−I方向の断面図である。(b)図3(a)の近位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。
【図5】(a)本発明の第2実施形態に係る医療用カテーテルを心臓の右心房から冠状静脈洞に挿入した時の使用状況の概略を示す説明図である。(b)本発明の第2実施形態に係る医療用カテーテルが冠状静脈洞内に挿入された時の状況の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面をもとに、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1(a)は、本発明の第1実施形態の一例の外観を示す模式図であり、図1(b)は、図1(a)の遠位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図であり、図1(c)は図1(a)の近位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。
【0015】
先ず、本発明の第1実施形態の一例の概略を説明する。
図1(a)に示すように、本発明の第1実施形態の一例の医療用カテーテル1は、シャフト部10とシャフト部の近位側に配された操作部40とを備える。また、シャフト部10は、遠位側シャフト部20と近位側シャフト部30とを備えている。そして、図1(b)および(c)に示すように、シャフト部10を構成する遠位側シャフト部20と近位側シャフト部30には、シャフト部10の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部11を有するとともに、内腔部11には、操作部40とシャフト部10の遠位側とに連結される操作ワイヤー12が配される。さらに、遠位側シャフト部20の遠位側において内腔部11を形成する内壁面15には、中空部16を有する筒状のワイヤー係合部材13が固定される。そして、操作ワイヤー12は、ワイヤー係合部材13の近位側開口部17から中空部16内に挿通され、その遠位側開口部18から突出して、ワイヤー係合部材13よりも遠位側の内壁面15に、その遠位側端部14が固定される。
【0016】
また図1(c)に示すように、操作部40は、内管部41と、内管部41と摺動可能に嵌合する外管部43と、シャフト部10の内腔部11に連通するチューブ部50とを備える。また、操作ワイヤー12は、シャフト部10の内腔部11、操作部40の内管部41の内腔部42および外管部43の内腔部44に挿通され、その近位側端部19が外管部43の近位側端部45に連結されている。
【0017】
上記のような構成を有する医療用カテーテル1では、操作部40の内管部41に対して外管部43を近位側に移動させると、操作ワイヤー12が近位側に引っ張られる。その結果、ワイヤー係合部材が固定された内壁面15の方向に、医療用カテーテル1の遠位側が湾曲することとなる。その後、操作部40の内管部41に対して外管部43を遠位側に移動させ、元の状態に戻すと、医療用カテーテル1の遠位側が湾曲した状態から、元の状態に戻ることとなる。
【0018】
次に、本例の各構成について説明する。
シャフト部10の構成は特に限定はないが、本例では、遠位側シャフト部20と近側シャフト部20とを備えたものとしている。このような構成にすることにより、シャフト部10の遠位側と近位側の剛性を調整することが可能となり、医療用カテーテル1の操作性が向上する。特に、操作部40を操作して医療用カテーテル1の遠位側の曲げ状態をより良く制御する観点からは、近位側シャフト部30は遠位側シャフト部20よりも剛性が高いものが好ましい。
【0019】
このような観点からは、近位側シャフト部20の構成としては、例えば、ポリエチレンなどのオレフィン樹脂、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリイミド系樹脂やこれらのアロイ材料などの比較的剛性の高い樹脂を用いた樹脂製のチューブや、ステンレス等の金属を用いた金属製チューブを用いることができる。また、剛性の異なる樹脂を積層したチューブや、各種の樹脂層と金属及び/又は樹脂製の素線を用いて形成されたコイル(例えば、密巻きコイルやピッチ巻きコイルなど)や編組を用いて形成した補強層とからなるチューブなどを用いることができる。また、補強層としてピッチ巻きコイルを用いる場合、当該コイルのピッチ間隔は、全長に亘り一定にしてもよいし、医療用カテーテルの操作性などを考慮して、任意に変化させてもよい。また、補強層として各種の素線を編組して構成したものを用いる場合、その編組構造は特に限定はなく、各種のカテーテルにおいて一般的に用いられている構造のものを適用することができる。
【0020】
このような樹脂層と補強層とからなるチューブにおける樹脂層としては、各種の樹脂材料を用いることができ、上記の樹脂のほか、ポリウレタンエラストマーなどのポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド系樹脂などの比較的剛性の低い樹脂を用いることができる。また、補強層を上記の素線により構成する場合、素線の構成としては特に限定はなく、例えば、金属もしくは樹脂製の単線、またはこれらの単線を複数用いて得られる撚り線などを用いることができる。単線の断面形状は扁平な方形、円形、楕円形など各種の断面形状を採用することができる。
【0021】
本例では、図1(b)、(c)に示すように、近位側シャフト部30は、外層31と補強層32とを備えたものである。本例では、補強層32の具体的構成は、特に明示していないが、例えば、金属製または樹脂製の扁平な方形の素線(平線)を編んだ編組を適用することができる。
【0022】
また、遠位側シャフト部30に使用可能な材質としては、特に限定はないが、近位側シャフト部20より剛性が低いものが好ましく、ポリウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やこれらのアロイ材料などが挙げられる。
【0023】
また、医療用カテーテル1を血管用として用いる場合は、シャフト部10は抗血栓性の高いものが好ましく、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを用いたチューブが挙げられる。
【0024】
また、必要に応じて、シャフト部10の外表面及び/又は内表面に、抗血栓性、潤滑性などを付与するコーティング層を形成してもよい。
【0025】
また、本例では、図1(b)に示すように、シャフト部10(遠位側シャフト部20)の遠位側端部には遠位側開口部21が設けられているが、用途によっては、遠位側端部は閉塞していてもよい。遠位側端部を閉塞する方法としては特に限定はなく、樹脂や金属を用いて別部材(先端キャップと称する。)を配し接合する方法などが挙げられる。
【0026】
先端キャップの材料は特に限定はなく、医療用カテーテル1の用途などに応じて適宜選択することができる。後述するように、医療用カテーテル1を心電図の測定に用いる場合において、先端キャップを電極として使用する場合は、電極として使用可能な導電性材料を用いることができ、例えば、白金、白金イリジウム合金、ステンレスなどの各種の金属や導線性樹脂等が挙げられる。また、電極として使用しない場合は、各種の樹脂を用いることができ、例えばポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるがこれらに限定されない。また、先端キャップの接合方法としては、使用する部材などに応じて適宜選択することができ、溶着、接着剤による固定などが挙げられる。
【0027】
また、本例では、シャフト部10には予め湾曲した形状に賦形されていてもよい。湾曲した形状としては、医療用カテーテル1を挿入する対象となる生体内の管腔の湾曲形状を模したものなどが挙げられる。これにより、操作部40による操作と相俟って、医療用カテーテル1の遠位側の曲げ状態をさらにより良く制御可能となる。
【0028】
湾曲した形状の付与方法としては、例えば、樹脂製のシャフト部10の外側に、予め所望の湾曲形状に賦形されたチューブを被せ、シャフト部10を構成する樹脂のガラス転移点よりも高く、融点よりも低い温度で加熱することにより、シャフト部10に所望の湾曲形状を付与することができる。また、このような賦形を行う場合にシャフト部10を構成する材質としては、上記の温度条件で加熱することが可能な樹脂であれば特に限定はないが、製造工程上シャフト外径のばらつき防止のため、ガラス転移点と融点とが30〜40℃以上離れた樹脂を用いるのが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
【0029】
湾曲形状を付与する部位としては、操作部40の操作によるシャフト部10の曲がりを制御する観点からは、遠位側シャフト20に付与するのが好ましい。
【0030】
ワイヤー係合部材13の構成は、シャフト部10の内壁面に配置可能で、かつ操作ワイヤー12を挿通可能な筒状であれば特に限定はなく、例えば、一様な壁面を有するチューブ、コイル状、その他の筒状体などが挙げられる。また、ワイヤー係合部材13に使用可能な材質としては、金属、樹脂などを用いることができる。具体的には、近位側シャフト部20および遠位側シャフト部30において使用可能な材質を用いることができる。但し、カテーテルの曲げ形状を所望の形状に制御する観点からは、ワイヤー係合部材13を構成する材質が、シャフト部10(本例の場合は、遠位側シャフト部20)を構成する材質よりも剛性の高い材質であることが好ましい。これにより、ワイヤー係止部材13を固定している部分においてシャフト部10(遠位側シャフト部20)の剛性が高くなるため、操作ワイヤー12を引っ張ったときに、ワイヤー係止部材13を配置した部分が、曲がりにくくなり、曲がり形状をより好適に制御することが可能となる。
【0031】
また、ワイヤー係合部材13の大きさは、上記のように、シャフト部10の内壁面に配置可能で、かつ操作ワイヤー12を挿通可能であれば特に限定はなく、医療用カテーテル1の用途、操作部40における操作によりシャフト部10の遠位側の曲がり具合などを考慮して適宜決定可能である。但し、ワイヤー係合部材13の長さについては、その長さが大きくなるに従って、シャフト部10の遠位側の曲げ形状がL字状になる。これは、上記のように、ワイヤー係合部材にシャフト部10より剛性の高い材質を使用した場合に、ワイヤー係合部材が配置されている部位は、例えば操作ワイヤーを近位側に引っ張ったときでも曲がらなくなる傾向が高くなるため、ワイヤー係合部材を長くすれば、曲がり難い部分がより長くなり、曲げ形状がL字状になり易くなるためである。
【0032】
ワイヤー係合部材13の固定位置は、操作部40によるシャフト部10の遠位側の曲がり具合や、後述する電極を用いる場合は電極の位置などを考慮して、適宜決定することができる。また、固定方法は特に限定はなく、使用する材料などを考慮して、溶着、溶接、接着剤による固定などを適宜選択することができる。接着剤を使用する場合は、例えば、ポリウレタン系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
本例では、図1(b)に示すように、ワイヤー係合部材13は、その近位側には近位側開口部17が、その遠位側には遠位側開口部18が設けられ、近位側開口部17から遠位側開口部18に亘り貫通した単一の中空部16が設けられた一様な壁面を有する筒状体である。また、ワイヤー係合部材13の遠位側の端部(遠位側開口部18)は、遠位側シャフト部20(シャフト部10)の遠位側端部である遠位側開口部21よりも近位側に配されている。このように、ワイヤー係合部材13の遠位側の端部がシャフト部10の遠位側端部より近位側に配されることにより先端キャップの配置が容易となる場合がある。また、ワイヤー係合部材の固定位置を適宜変化させることで、操作部を操作して操作ワイヤーを引張ったときのカテーテルの曲げ形状を所望の形状に制御することができる。
例えば、遠位側シャフト部の長さが80mmの場合、カテーテルの先端部をU字状に曲げる場合は、カテーテル(遠位側シャフト部)の遠位側端部から20mm以内の位置にワイヤー係合部材(長さ10mm)の近位側端部が位置することが好ましい。また、遠位側シャフト部の長さが同じく80mmの場合、カテーテルの先端部をL字状に曲げる場合は、カテーテル(遠位側シャフト部)の遠位側端部から好ましくは40〜60mm、より好ましくは50〜60mmの位置にワイヤー係合部材の近位側端部が位置するとよい。
また、シャフト部10に予め湾曲した形状に賦形したものを用いる場合は、例えば賦形してL字状に曲げた頂点よりも近位側にワイヤー係合部材を配するとよい。このように、賦形した部分よりも近位側にワイヤー係合部材を配することで、予め生体内管腔の特定の部位の形状に適した形状のシャフト部10を用いることが可能となり、必要に応じて操作部により操作ワイヤーを引っ張ることで、賦形した部分の近位側の変形を防止しつつ、賦形部分を直線状にすることが可能となる。
尚、上記の遠位側シャフト部におけるワイヤー係合部材の固定位置についての具体的な構成は、いずれも例示であって、遠位側シャフト部の長さなどに応じて適宜変更することができる。
【0034】
操作ワイヤー12の構成は、特に限定はなく、単一の素線や、単一の素線を複数用いた複線などが挙げられる。単一の素線を複数用いる場合の構成も特に限定はなく、例えば、撚り線や撚らずに束ねたものなどが挙げられる。素線の材質としても特に限定はなく、操作部40を操作した時などに破断しない程度の引張強度を有するものであれば良い。このような材質としては、各種の樹脂や金属を用いることできる。
【0035】
このような操作ワイヤー12としては、例えば、ステンレス線、ピアノ線、鉄線、などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
また、後述する図1(c)に示す構造の操作部40を用いる場合は、操作ワイヤー12の遠位側と近位側への移動を確実に行う観点から、操作ワイヤー12のうち操作部40内に位置する部分は、剛直で曲がらない構成を有するのが好ましい。
【0037】
操作ワイヤー12は、シャフト部10の内腔部11に配され、操作部40とシャフト部10の遠位側とに連結される。本例では、図1(b)に示すように、操作ワイヤー12は、その遠位側端部14が遠位側シャフト部20の内壁面15に接合されている。この場合の接合方法としては、特に限定はなく、各部材の使用材質などを考慮して、公知の方法を適用可能である。例えば、半田付け、溶接、接着剤による接着などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、半田付けを行う場合、半田の種類は特に限定されないが、安全性の観点から、鉛フリーの半田であることが好ましい。
【0038】
本例では、操作ワイヤー12は、遠位側シャフト部20の内壁面15に固定されたワイヤー係合部材13の中空部16に挿通され、その遠位側開口部18から突出して、ワイヤー係合部材13よりも遠位側の内壁面15に、その遠位側端部14が接合されているが、ワイヤー係合部材内に接合してもよいし、操作ワイヤー12の遠位側端部14に、ワイヤー係合部材13の中空部16の最小幅よりも大きい係止部材(図示せず)を設け、操作部40の操作により操作ワイヤー12が近位側に引っ張られたときに、係止部材がワイヤー係合部材13の遠位側端部に係止して固定されるようにしてもよいし、操作ワイヤー12の遠位側に雄ネジ部(図示せず)を設けるとともに、ワイヤー係合部材13の中空部16を構成する内壁面に雌ネジ部(図示せず)を設け、両者を螺合させることで係止して固定してもよいし、その他の物理的機構を採用してもよい。但し、カテーテルの曲がり形状を制御する観点からは、操作ワイヤー12の遠位側端部14は、カテーテル内腔壁に固定するのが好ましい。
【0039】
また、本発明では、このように、操作ワイヤー12を遠位側シャフト部20の内壁面15に固定されたワイヤー係合部材13の中空部16に挿通させることで、操作ワイヤー12が近位側に引っ張られたときに、シャフト部10のワイヤー係合部材13が固定されている側が効率的に曲がることになる。また、ワイヤー係合部材13は筒状であるため、容易にシャフト部10の内腔部11に配置することができる。
【0040】
また操作ワイヤー12の近位側は、操作部40に連結される。本例では、図1(c)に示すように、操作部40を構成する外管部43に連結されている。外管部43への固定方法は特に限定はなく、各部材の材質、操作部の操作機構などに応じて半田付け、溶接、接着剤による接着や、物理的な固定方法などを適宜採用することができる。
【0041】
操作部40は、当該操作部40を操作することで、操作ワイヤー12を近位側に引っ張ることができ、かつ、遠位側に戻すことができれば、どのような機構を有するものであってもよい。例えば、操作ワイヤー12の移動方向と操作部40の操作する部分の移動方向が同じになるような機構でも良いし、操作ワイヤー12の移動方向と操作部40の操作する部分の移動方向が異なる(例えば回転方向など)機構でも良いし、その他の機構を採用してもよい。但し、術者が片手で操作可能な機構であるのが好ましい。
【0042】
本例の操作部40は、図1(c)に示すように、操作ワイヤー12の移動方向と操作部40の操作する部分の移動方向が同じになるような機構を有するものである。操作部40は、内管部41と外管部43を有し、内管部41の遠位側において近位側シャフト部30の近位側とが接合されている。
【0043】
近位側シャフト部30の近位側と内管部41の遠位側の接続方法は、特に限定はないが、例えば、接着剤による接着することができる。この際に使用可能な接着剤としては、特に限定はないが、例えば一液タイプ、二液混合タイプ、紫外線硬化型、熱硬化型などの接着剤が挙げられる。また、接着剤を構成する材質としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などの他、シアノアクリレート系接着剤を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
また、内管部41は、外管部43と摺動可能に嵌合されている。また、内管部41の内腔部42は近位側シャフト部30の近位側端部で内腔部11と連通するとともに、内管部41の近位側端部にはチューブ部50の遠位側端部が連結され、チューブ部50の内腔部53とも連通し、チューブ部50の遠位側に固定されたコネクタ52から、生体内の管腔に薬剤などを注入したり、内容物を吸引したり、ガイドワイヤーを挿通したりすることができる。また、内管部41の近位側端部には操作ワイヤー12を気密又は液密を保持しつつ摺動可能なシール部を備えた開口部46を有する。これにより、操作部40を操作しつつ、薬剤注入や内容物吸引を確実に行うことができる。また、外管部43の内腔部44の遠位側端部の壁面には操作ワイヤー12の近位側端部19が連結されている。また、外管部43の近位側端部には、チューブ部50を挿通可能な貫通穴48が設けられている。
また、図示しないが、内管部41に対して外管部43を移動させた時に、所望の位置に固定可能な停止機構を有することが好ましい。
【0045】
このような操作部40により、外管部43を手で把持するとともに、内管部41の近位側外周部に形成された突起部47を指で動かすことで、内管部41と外管部43とを相対的に移動させることができ、その結果、操作ワイヤー12を近位側に引っ張ったり、遠位側に押し戻したりすることができる。
【0046】
また、操作部40の形状としては特に限定はないが、片手で操作ができる形状であることが好ましい。また、内管部41の突起部47や外管部43は、血液や生理食塩水で表面が濡れても滑らない表面構造を備えることが好ましく、例えば、表面に細かな凹凸やグリップ加工をしたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
このように、本発明では、上記のように中空部16を有する筒状のワイヤー係合部材13を用いることで、医療用カテーテル1の遠位側部分の曲がり形状を制御することが可能であるが、ワイヤー係止部材13の固定位置、長さおよび材質、並びに、操作ワイヤー12の固定位置を考慮することで、医療用カテーテル1の遠位側部分の曲がり形状を所望の形状に制御することが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第1実施形態の他の例を説明する。
本例は、図2(a)および(b)に示すように、図1(a)〜(c)に示す例において、シャフト部10(遠位側シャフト部20)の遠位側開口部21に先端キャップ23を配する点、操作ワイヤー12の遠位側端部14がシャフト部10の遠位側端部に位置する先端キャップ23に連結し、固定されている点、先端キャップ23に導線24が電気的に接続されている点、チューブ部50に替えて、導線24を配した点で異なるが、その他の構成は、同様であるため、図面には対応する部材には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0049】
本例では、図2(a)に示すように、遠位側シャフト部20の遠位側開口部21に先端キャップ23が配され、遠位側シャフト部20の遠位側は閉塞されている。先端キャップ23は、導線24と接合されており、導線24の近位側端部に設けられた端子25と電気的に接続されている。また、図2(b)に示す端子25は、図示しない外部出力装置と接続され、端子25および導線24を介して先端キャップ23から外部出力装置に電気信号が伝わる。このように本例の医療用カテーテル2は、先端キャップ23が電極として機能する一般に電極カテーテルと称されるもので、心臓内心電図を測定する場合に用いられるものである。
【0050】
先端キャップ23は、電極として機能するため、電極として使用可能な金属を用いることができ、例えば、導電性樹脂、白金、白金イリジウム合金、ステンレスなどの金属が挙げられる。
【0051】
尚、本例では、先端キャップ23を電極とした例を示したが、先端キャップ23以外にも、シャフト部10の遠位側、例えば、遠位側シャフト部20の外壁面22に電極(図示せず)を設けてもよい。この場合も、外壁面22に配された電極は、シャフト部10の内腔部11内に配された他の導線(図示せず)を介して端子25と電気的に接続される。外壁面22に電極を配する場合は、ワイヤー係合部材13は、電極より近位側に配されるのが好ましい。これにより、電極を心臓内壁ないしは脈管壁により確実に接触させることが可能な曲がり形状を形成することができる。また、本例のように、シャフト部10が遠位側シャフト部20と近位側シャフト部30とからなる場合は、近位側シャフト部30よりも遠位側にワイヤー係合部材13を配するのが好ましい。これにより、電極を心臓内壁などに更に確実に接触させることが可能な曲がり形状を形成することができる。
【0052】
導線24は、先端キャップ23の内壁に接合されている。接合方法は接触不良が生じなければ、特に限定はなく、半田付け、溶接、接着剤による接着の他に、かしめなどの物理的な接合方法を用いることができる。
【0053】
導線24に使用可能な材質としては、一般に導線として使用可能な材質のものを用いれば良いが、医療用カテーテル2が手技中に断線しない引張強度を有すること、導単位面積当たりの抵抗値が低い素材を用いることが好ましく、例えばニッケル−チタン線、ステンレス線、銅めっき線が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、銅めっき線としては、銅より引張強度の高い芯線の表面に銅がメッキされたものが好ましい。また、導線24の外表面は、複数の電極と導線を使用する場合に、各導線が接触して通電しないようにする観点から、絶縁性を有する樹脂により被覆されていることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド樹脂が用いられる。
【0054】
端子25は、本例では、電極である先端チップ23に接続された導線24と接続されている。また、他の電極を設ける場合は、各電極に接続された各導線に各端子が接続される。また、端子25は、心電図計や診断システムなど各種の外部出力装置(図示せず)に容易に接続可能な構成を有することが好ましい。このような構成としては、各種の外部出力装置に適合したコネクタ(図示せず)に端子25を接続することが好ましく、例えば、REDEL社製のコネクタが挙げられるが、これに限定されるわけではない。このような構成により、例えば電極で測定された電気信号が、導線12、端子25を通って、外部出力装置に出力される。
【0055】
導線24と端子25との接合は、導線24と先端キャップ23との接合方法と同様にして行うことができる。
【0056】
操作部40は、基本的構造は、図1(c)に示した例と同じであるが、図2(b)に示す例では、図1の例におけるチューブ部50は配さないで、内管部41の基端側端部に、貫通穴49を設けて、導線24を挿通させている。また、導線24は外管部43の近位側端部に設けられた貫通穴48を挿通し、その遠位側端部で端子25が配されている。また、端子25は図示しないコネクタに接続されていてもよい。
【0057】
図2に示す本例でも、図1に示す例の場合と同様に、上記のように中空部16を有する筒状のワイヤー係合部材13を用いることで、医療用カテーテル2の遠位側部分の曲がり形状を制御することが可能であるが、ワイヤー係止部材13の固定位置および材質、並びに、操作ワイヤー12の固定位置を考慮することで、医療用カテーテル2の遠位側部分の曲がり形状を所望の形状に制御することが可能となる。
【0058】
第1の実施形態の医療用チューブ1、2の製造方法は、簡易的に説明すると、例えば、以下のとおりである。
予め作製したシャフト部10の内壁面15にワイヤー係合部材13を固定する。
ワイヤー係合部材13の固定方法として接着剤を用いる場合は、必要によりワイヤー係合部材13の中空部16に芯材を配した後、ワイヤー係合部材13の外表面上に接着剤を塗布し、これを、シャフト部10の内腔部11に挿入して、接着剤を塗布部分が内壁面15に接するようにしてワイヤー係合部材13をシャフト部10に接合、固定する。
その後、ワイヤー係合部材13の中空部16に操作ワイヤー12を挿通するとともに、シャフト部10の内腔部11に操作ワイヤー12を挿通する。
そして、図1に示した例では、操作ワイヤー12を操作部40に連結し、固定する。また、操作ワイヤー12の遠位側端部14をシャフト部10の内壁面に接合する。
また、図2に示した例では、導線24をシャフト10の内腔部11と操作部40の内腔部42、44に通し、外管部43の貫通穴48に通して端子25を接続する。また、操作ワイヤー12を操作部40に連結し、固定する。さらに、先端キャップ23に操作ワイヤー12と導線24の遠位側端部を接合し、先端キャップ23を遠位側シャフト部20の遠位側端部に接続する。
以上のようにして、第1の実施形態の医療用チューブ1、2が製造される。
【0059】
また、ワイヤー係合部材13をシャフト部10の内壁面に固定する際、上記以外の方法として、シャフト部10に内腔部11と外部とを連通する小孔部を設ける方法が挙げられる。この場合、先ず、シャフト部10に、内腔部11と外部とを連通する少なくとも一つの小孔部を形成し、内腔部11内にワイヤー係合部材13を挿入する。そして、この小孔部を介して、外部から接着剤(ノズル付容器に入れられたものなどを用いるとよい。)を注入し、ワイヤー係合部材13とその内壁面とに接着剤を塗布する。その後、小孔部を接着剤などを用いて封止する。その後は、上記と同様にして、第1の実施形態の医療用チューブ1、2が製造される。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3(a)は本発明の第2実施形態の一例の外観を示す模式図であり、図3(b)は図3(a)の遠位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図であり、図4(a)は図3(b)のI−I方向の断面図であり、図4(b)は図3(a)の近位側部分のカテーテルの軸方向の拡大断面図である。
【0061】
先ず、本発明の第2実施形態の一例の概略を説明する。
図3(a)に示すように、本発明の第2実施形態の一例の医療用カテーテル3は、シャフト部110とシャフト部110の近位側に配された操作部140とを備える。また、図3(b)ならびに図4(a)および(b)に示すように、シャフト部110は、外管100と内管160とを備え、外管100は、遠位側シャフト部120と近位側シャフト部130とを備えるとともに、シャフト部110を構成する遠位側シャフト部120と近位側シャフト部130には、シャフト部110の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部111を有し、外管100の内腔部111には、内管160が配されている。また、遠位側シャフト部120の外壁面122には電極170、171が設けられている。さらに、外管100の内腔部111であって、外管100の内壁面115と内管160の外壁面162とで構成される中空部163には、シャフト部110(遠位側シャフト部120)の遠位側と操作部140とに連結される操作ワイヤー112が配されるとともに、電極170および171と端子125、126とにそれぞれ電気的に接続された導線124とが配されている。
【0062】
さらに、遠位側シャフト部120の遠位側において内腔部111を形成する内壁面115には、中空部116を有する筒状のワイヤー係合部材113が固定される。そして、操作ワイヤー112は、ワイヤー係合部材113の近位側開口部117から中空部116内に挿通され、その遠位側開口部118から突出して、ワイヤー係合部材113よりも遠位側の内壁面115に、その遠位側端部114が固定される。
【0063】
また図4(b)に示すように、操作部140は、内管部141と、内管部141と摺動可能に嵌合する外管部143と、シャフト部110の内腔部11に連通するチューブ部50とを備える。また、操作ワイヤー112、内管160および導線124は、シャフト部110の内腔部111、操作部140の内管部141の内腔部142および外管部143の内腔部144に挿通される。このうち、操作ワイヤー112は、その近位側端部119が外管部143の近位側端部145に連結されているが、内管160および導線124は、それぞれ、外管部143の近位側端部145に設けられた貫通穴146および148に挿通され、当該貫通穴から外部に突出している。
【0064】
上記のような構成を有する医療用カテーテル3では、操作部140の内管部141に対して外管部43を近位側に移動させると、操作ワイヤー112が近位側に引っ張られる。その結果、ワイヤー係合部材113が固定された内壁面115の方向に、医療用カテーテル3の遠位側が湾曲することとなる。その結果、後述するように、例えば、心室から複雑に屈曲して形成されている冠状静脈洞内において心臓内心電図を測定する際には、電極170、171がそれぞれ冠状静脈洞内壁に接触して、心筋の活動により発生する微弱電流を確実に捕捉することができる。測定後は、操作部140の内管部141に対して外管部143を遠位側に移動させ、元の状態に戻すと、医療用カテーテル3の遠位側が湾曲した状態から、元の状態に戻ることとなる。
【0065】
次に、本例の各構成について説明する。
シャフト部110の構成は、本実施形態の例では、外管100と内管160とを備え、外管100は、遠位側シャフト部120と近位側シャフト部130とを備える。
【0066】
外管100の構成は、用途等を考慮して、上述した実施形態1におけるシャフト部10と同様の構成を採用することができる。従って、第2実施形態の例における外管100の遠位側シャフト120と近位側シャフト部130は、それぞれ、第1実施形態の例におけるシャフト部10の遠位側シャフト20と近位側シャフト部30に対応する構成とすることができる。即ち、外管100が、遠位側シャフト120と近位側シャフト部130を備えることで、シャフト部110の遠位側と近位側の剛性を調整することが可能となり、医療用カテーテル3の操作性が向上する。特に、操作部140を操作して医療用カテーテル3の遠位側の曲げ状態をより良く制御する観点からは、近位側シャフト部130は遠位側シャフト部120よりも剛性が高いものが好ましい。
【0067】
近位側シャフト部120の構成としては、上述した第1実施形態の近位側シャフト部20と同様の構成を採用することができるため、詳細な説明は省略する。本例では、図3(b)、および図4(b)に示すように、近位側シャフト部130は、外層131と補強層132とを備えたものである。本例でも、補強層132としては、第1実施形態の補強層32と同様の構成を採用することができる。
【0068】
遠位側シャフト部120は、基本的に、上述した第1実施形態の遠位側シャフト部20と同様の構成を採用することができるが、第2実施形態では、遠位側シャフト部120の外壁面122に電極170、171を備えるとともに、これらの電極170、171に、外管100の内壁面115と内管160の外壁面162とで構成される中空部163に配された導線124とを接続するために形成された小孔部127、128を備えている点で異なる。
【0069】
この第2実施形態の例では、電極は2つ設けられているが、その配置の数は、特に限定はなく、1つでも良いし、3つ以上でも良い。また、本例では、遠位側シャフト部120の遠位側端部に先端キャップ123を設けているが、当該先端キャップ123に部分的に電極を配してもよいし、それ自体を電極としてもよい。
【0070】
シャフト部110の側壁部分(先端キャップ以外の部分)に配される電極の配置位置は、特に限定はないが、カテーテル先端部から200mm以内に配置されることが好ましい。
【0071】
電極170、171に使用可能な材質としては、導電性のある材質であれば特に限定はなく、例えば、導電性樹脂、白金、白金イリジウム合金、ステンレスなどの金属が挙げられる。
【0072】
また、導線124は、電極170および171とそれぞれ別々の導線が接続される。この際、それぞれの導線の外表面は、各導線が接触して通電しないようにする観点から、絶縁性を有する樹脂により被覆されていることが好ましい。また、図4(b)に示すように、各導線はまとめて一束になるように外部から絶縁性を有する樹脂などでさらに被覆してもよい。尚、導線の材質、絶縁性樹脂、導線124と電極170、171の接続、導線124と端子125、126との接続は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
小孔部127、128は、導線124が挿通可能な程度の大きさであれば良く、電極170、171を配することで、小孔部127、128が塞がれ、外部から中空部163への液体などの流入が防止可能な構成にするのが好ましく、例えば、小孔部の大きさを電極170、171のカテーテル軸方向の幅より小さく、電極を遠位側シャフト部120の外壁面122に接着剤などで固定するとよい。電極170、171の形状は特に限定はないが、遠位側シャフト部120の外壁面122に1周に亘り連続しているものが好ましく、例えば、リング状(環状)のものなどが挙げられる。
【0074】
遠位側シャフト部30に使用可能な材質としては、特に限定はないが、近位側シャフト部120より剛性が低いものが好ましく、例えば、ポリウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やこれらのアロイ材料などが挙げられる。
【0075】
第2実施形態では、外管100の内腔部111に内管160を備える点で、第1実施形態と異なる。本例では、内管160は、シャフト部110の全長に亘り、外管100とほぼ同軸状に配される(図4(a)参照)。また、内管160の近位側は、近位側シャフト部130の近位側開口部121から近位側に突出し、更に、操作部140の内管部141の内腔部142および外管部143の内腔部144を通って、外管部143の近位側端部145に設けられた貫通穴146から外部に突出している。更に、内管160の近位側端部にはコネクタ162が配され、コネクタ162は、シリンジ(図示せず)などが接続固定可能な構造を有している。また、内管160には、その全長に亘り、内腔部161が設けられ、コネクタ162の開口部163から挿入したガイドワイヤー(図示せず)を、内管160の遠位側開口部164(先端キャップ123の開口部165)から突出させることができる。また、薬剤を注入したり、生体内の管腔から内容物を排出したりすることもできる。
【0076】
内管160の構成としては特に限定はなく、図3および図4に示す一般的な単一の内腔部161(ルーメン)を有するチューブを用いてもよいし、複数のルーメンを有するチューブを用いてもよい。また、シャフト部110の外管100と同様、遠位側と近位側とが剛性が異なるような構成にしてもよい。また、内管160に使用可能な材質としても特に限定はなく、外管100の遠位側シャフト部120、近位側シャフト部130と同様のものを用いることができる。
【0077】
また、本例では、図3(b)に示すように、シャフト部110(遠位側シャフト部120および内管160)の遠位側端部には先端キャップ123を設けている。先端キャップ123には、内管160の遠位側開口部164と連通する開口部165を有する。また、先端キャップ123が遠位側シャフト部120および内管160の遠位側端部と接合固定されることにより、外管100の内壁面115と内管160の外壁面162とで構成される中空部163が、シャフト部110の遠側端部で封止される。本例では、先端キャップ123は、電極として機能するものではないが、必要に応じて、先端キャップ部に電極を配したり、先端キャップ123自体を電極としてもよい。
【0078】
先端キャップ123に使用可能な材質としては、特に限定はなく、電極としての機能を付与するか否かなどを考慮して、適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、導電性樹脂、白金、白金イリジウム合金、ステンレスなどの各種の金属などが挙げられるがこれらに限定されない。また、先端キャップの接合方法としては、使用する部材などに応じて適宜選択することができ、溶着、接着剤による固定などが挙げられる。
【0079】
また、図示しないが、先端キャップを用いることなく、内管160と遠位側シャフト部120の遠位側端部同士を熱溶着などにより接合してもよい。
【0080】
また、第1実施形態の場合と同様に、シャフト部110には予め湾曲した形状に賦形されていてもよい。外管100と内管160と両方に形状を付与してもよいし、外管100のみに形状を付与してもよい。湾曲した形状の付与方法は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略するが、外管100と内管160とに形状を付与する場合は、それぞれ別々に賦形してもよいし、両者を組立てた後に賦形してもよい。また、このような賦形を行う場合にシャフト部110(外管100および内管160)を構成する材質も、実施形態1の場合と同様にすればよい。
【0081】
また、医療用カテーテル3を血管用として用いる場合は、シャフト部110の外管100および内管160に使用可能な材質は抗血栓性の高いものが好ましく、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0082】
また、必要に応じて、外管100の外表面及び/又は内管160の内表面に、抗血栓性、潤滑性などを付与するコーティング層を形成してもよい。
【0083】
第2実施形態でのワイヤー係合部材113は、外管100の内壁面115に配置可能で、かつ操作ワイヤー112を挿通可能な筒状であれば特に限定はなく、例えば、一様な壁面を有するチューブ、コイル状、その他の筒状体などが挙げられる。また、ワイヤー係合部材113に使用可能な材質としては、金属、樹脂などを用いることができる。具体的には、近位側シャフト部120および遠位側シャフト部130において使用可能な材質を用いることができる。但し、カテーテルの曲げ形状を所望の形状に制御する観点からは、ワイヤー係合部材113を構成する材質が、シャフト部110(本例の場合は、遠位側シャフト部120)を構成する材質よりも剛性の高い材質であることが好ましい。尚、ワイヤー係合部材113の大きさ、固定方法は、第1の実施形態の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
第2実施形態における本例でも、図3(b)に示すように、ワイヤー係合部材113は、その近位側には近位側開口部117が、その遠位側には遠位側開口部118が設けられ、近位側開口部117から遠位側開口部118に亘り貫通した単一の中空部116が設けられた一様な壁面を有する筒状体である。また、ワイヤー係合部材113の遠位側の端部(遠位側開口部118)は、遠位側シャフト部120(シャフト部110)の遠位側端部である先端キャップ部123よりも近位側に配されている。このような構成により、第1実施形態の場合と同様の機能を奏する。また、第1の実施形態の場合と同様に、ワイヤー係合部材113の固定位置を適宜変化させることで、操作部を操作して操作ワイヤーを引張ったときのカテーテルの曲げ形状を所望の形状に制御することができる。また、ワイヤー係合部材113と電極127、128および近位側シャフト部130との位置関係も、実施形態1の場合と同様である。
【0085】
第2実施形態における操作ワイヤー112の構成も、構造、材質は第1実施例における操作ワイヤー12とほぼ同様であるため、詳細な説明は省略する。尚、第2実施形態における例では、操作部140の構造が第1実施形態の操作部40とは異なり、その結果、操作ワイヤー112のうち操作部140内に位置する部分に剛直な部分を設ける必要はない。
また、操作ワイヤー112の遠位側端部114および近位側端部119の固定位置、固定方法は、第1実施形態の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
第2実施形態における操作部140も、第1実施形態と同様に、操作部140を操作することで、操作ワイヤー112を近位側に引っ張ることができ、かつ、遠位側に戻すことができれば、どのような機構を有するものであってもよい。例えば、操作ワイヤー112の移動方向と操作部140の操作する部分の移動方向が同じになるような機構でも良いし、操作ワイヤー112の移動方向と操作部140の操作する部分の移動方向が異なる(例えば回転方向など)機構でも良いし、その他の機構を採用してもよい。但し、術者が片手で操作可能な機構であるのが好ましい。
【0087】
本例の操作部140は、図4(b)に示すように、操作ワイヤー112の移動方向と操作部140の操作する部分の移動方向が同じになるような機構を有するものである。操作部140は、内管部141と外管部143を有し、内管部141の遠位側において近位側シャフト部130の近位側とが接合されている。また、内管部141は、外管部143と摺動可能に嵌合されている。また、内管部141の内腔部142は近位側シャフト部130の近位側端部で内腔部111(中空部163)と連通する。また、外管部143の内腔部144の遠位側端部の壁面には操作ワイヤー112の近位側端部119が連結されている。また、外管部143の近位側端部には、内管160および導線124をそれぞれ挿通可能な貫通穴146および貫通穴148が設けられている。
【0088】
第2実施形態の図3および図4に示した例では、内管160が医療用カテーテル3の全長に亘り配されており、内管160の内腔部161から液体の注入、排出を行うことができるため、第1実施形態の例とは異なり、内管部141の近位側端部に操作ワイヤー112を気密又は液密を保持しつつ摺動可能なシール部を備えた開口部を配する必要がない。そのため、上述のように、操作ワイヤー112のうち操作部140内に位置する部分が、剛直で曲がらない構成を有するものである必要がない。
また、図示しないが、内管部141に対して外管部143を移動させた時に、所望の位置に固定可能な停止機構を有することが好ましい。
【0089】
また、操作部140の形状としては特に限定はないが、片手で操作ができる形状であることが好ましい。また、内管部141の突起部147や外管部143は、血液や生理食塩水で表面が濡れても滑らない表面構造を備えることが好ましく、例えば、表面に細かな凹凸やグリップ加工を施したものなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0090】
図3および図4に示す第2実施形態の本例でも、図1および図2に示す第1実施形態の例の場合と同様に、中空部116を有する筒状のワイヤー係合部材113を用いることで、医療用カテーテル3の曲がり形状を制御することが可能であるが、ワイヤー係止部材113の固定位置および材質、並びに、操作ワイヤー112の固定位置を考慮することで、医療用カテーテル3の遠位側部分の曲がり形状を所望の形状に制御することが可能となる。
【0091】
第2実施形態の図3および図4に示した例の医療用カテーテル3を用いて、心臓内心電図を測定する際の医療用カテーテル3の使用方法を、図5をもとに説明する。
【0092】
図5(a)は、ヒトの心臓200と、右心房201に存在する、冠状静脈洞205の開口部206から冠状静脈洞205内へ挿入されている状態の医療用カテーテル3とを示した模式図である。冠状静脈洞205は、心臓200の後面で、左心房203と左心室204の間にある冠状溝を左上方から、右下方に斜めに走行し、下大静脈の開口部207より右心室202寄りの部分で、右心房201に開口して開口部206を形成する。
【0093】
医療用カテーテル3は、内管160の内腔部161に挿通したガイドワイヤー208に沿って心臓200内の右心房201に挿入された後、冠状静脈洞205の開口部206から冠状静脈洞205内へ挿入される。この時、必要に応じて、右心房201から冠状静脈洞205の開口部206への挿入の際に、医療用カテーテル3の遠位側を操作部140の操作により、湾曲させることで、右心房201から冠状静脈洞205の開口部206への挿入を容易にすることができる。
【0094】
冠状静脈洞205の開口部206から挿入されると、ガイドワイヤー208に沿って冠状静脈洞205の所望の位置に医療用カテーテル3の電極170、171を配し、冠状静脈洞205の内壁面に沿って、電極170、171を確実に接触させて、心電図を測定する。しかし、上記のように、右心房201から冠状静脈洞205の開口部206を通って冠状静脈洞205へ至る構造は、極めて複雑かつ屈曲が大きいため、電極170、171を冠状静脈洞205の内壁面に接触させることは、困難であった。本発明では、操作部140の外管部143を内管部141に対して近位側に移動させ、操作ワイヤー112を近位側に引っ張ると、遠位側シャフト部120の内壁115に固定されたワイヤー係合部材113に挿通され、遠位側端部114が固定された操作ワイヤー112により、ワイヤー係合部材113が固定されている方向に遠位側シャフト部120および内管160が湾曲する。また、操作部140の外管部143の内管部141に対する移動距離を制御することで、冠状静脈洞205の開口部206から冠状静脈洞205内の所望の位置に至る冠状静脈洞205の内壁の構造に合わせて、位側シャフト部120および内管160の湾曲の程度を合せることが可能であるため、電極170および171を冠状静脈洞205の内壁面に確実に接触させることができる(図5(b)参照)。
【0095】
このように、電極170および171を冠状静脈洞205の内壁面に確実に接触させた後、導線124の近位側に接続された電極170および171にそれぞれ対応した端子125および126を、外部出力装置(図示せず)に接続し、電極170および171により検出した心筋の活動により発生する微弱電流を電気信号として外部出力装置へ出力して、心電図が測定される。このように心臓内の心電図を確実に測定できるため、不整脈の原因となる部位を特定することが可能となる。
【0096】
尚、外部出力装置と端子125および126とを予め接続してもよい。また、端子125および126は外部出力装置の接続に適したコネクタ(図示せず)に接続してもよい。
【0097】
外部出力装置としては、心電図計や診断システムなどが例示できるが、これらに限定されるわけではない。
【0098】
第2の実施形態の医療用チューブ3の製造方法は、簡易的に説明すると、例えば、以下のとおりである。
予め作製した外管100の遠位側シャフト120の内壁面115にワイヤー係合部材113を固定する。
ワイヤー係合部材113の固定方法として接着剤を用いる場合は、以下の(a)、(b)を行うことができる。
(a)必要によりワイヤー係合部材113の中空部116に芯材を配した後、ワイヤー係合部材113の外表面上に接着剤を塗布し、これを、遠位側シャフト120の内腔部111に挿入して、接着剤を塗布部分が内壁面115に接するようにしてワイヤー係合部材113を遠位側シャフト120の内壁面115に接合、固定する。
(b)必要によりワイヤー係合部材113の中空部116に芯材を配した後、ワイヤー係合部材113を遠位側シャフト120の内壁面115に接するように配する。そして、小孔部127及び/又は128からノズルを挿入して接着剤をワイヤー係合部材113と内壁面115とが接している部分の近傍部に塗布し、接着剤を硬化させ、ワイヤー係合部材113を遠位側シャフト120の内壁面115に接合、固定する。
その後、ワイヤー係合部材113の中空部116に操作ワイヤー112を挿通するとともに、シャフト部110のうちの外管100を構成する遠位側シャフト部120の内腔部111に操作ワイヤー112を挿通する。その後、外管100の遠位側シャフト120の側壁に、ドリルなどを用いて、内腔部111と外部とを連通する小孔部127、128を設ける。
そして、導線124を小孔部127、128からシャフト110の内腔部111と操作部140の内腔部142、144に通し、外管部143の貫通穴148に通す。そして、導線124の遠位側端部に電極170、171を接続した後、各電極を遠位側シャフト部120の外壁面122に接合、固定する。また、導線124の近位側端部には端子125、126を接続する。尚、電極は予め導線と接続しておいてもよい。
また、操作ワイヤー112の近位側端部119を操作部140に連結し、固定する。また、操作ワイヤー112の遠位側端部114を遠位側シャフト部120の内壁面115に接合する。操作ワイヤー112の端部は何れを先に接合してもよい。
そして、内管160を外管100の内腔部111に挿入する。
さらに、先端キャップ123を内管160および遠位側シャフト部120の遠位側端部に接合固定する。
以上のようにして、第2の実施形態の医療用チューブ3が製造される。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例に基づき、本発明の医療用カテーテルをより詳細に説明する。
(実施例1)
遠位側シャフト部として、外径/内径=1.90mm/1.45mm、長さ80mmのチューブ(ポリアミドエラストマー、ショアD硬度:55D、製品名「PEBAX」)、近位側シャフト部として、外層(製品名「PEBAX」)とステンレス鋼線(厚み0.07mm×幅0.14mm)で編組した補強層を有する外径/内径=1.90mm/1.45mm、長さ1000mmのチューブを使用し、遠位側シャフトの近位側端部と近位側シャフト部の遠位側端部とを260℃で加熱して両者を溶着により接合した。
ワイヤー係合部材として、外径/内径=0.23mm/0.19mm、長さ20mmのポリイミド製のチューブ(ショア硬度は74D相当)を用い、その中空部にφ0.16mmの芯材を差込み、ポリイミドチューブ外表面にシアノアクリレート系接着剤を塗布した。接着剤塗布後のポリイミドチューブを遠位側シャフト部の内腔部に挿入し、遠位側シャフト部の内壁面にポリイミドチューブを接合した後、芯材を引き抜いた。ポリイミドチューブは、その遠位側開口部が遠位側シャフト部の遠位側端部から2mmとなるように固定した(ポリイミドチューブの近位側開口部は遠位側シャフト部の遠位側端部から22mmに位置する。)。
遠位側シャフト部の内壁面に接着、固定されたポリイミドチューブの中空部に、操作ワイヤーとしてφ0.16(mm)のステンレス製のワイヤーを挿入した後、ワイヤーの近位側端部を操作部に固定し、遠位側端部を遠位側シャフトの内壁面に接合、固定し、近位側シャフト部と操作部を接合し、医療用カテーテルが得られた。
得られた医療用カテーテルの操作部を操作して、操作ワイヤーを引っ張ることにより、遠位側部分がU字状に曲がることを確認した。
【0100】
(実施例2)
遠位側シャフト部である、外径/内径=1.90mm/1.45mm、長さ80mmのチューブ(ポリアミドエラストマー、ショアD硬度:55D、製品名「PEBAX」)に、予め、L字状に賦形したチューブを被せた後、200℃で30秒加熱した。室温まで冷却した後、賦形チューブを除去して、遠位側シャフト部のチューブをL字状に賦形したこと、ワイヤー係合部材を、L字状に賦形したチューブの近位側に接合、固定したこと以外は、実施例1と同様にして医療用カテーテルを作製した。
得られた医療用カテーテルは、遠位側シャフト部はL字状に曲げられた形状であるが、操作部を操作して操作ワイヤーを引っ張ることで、予めL字状に賦形した部分を含めて医療用カテーテル全体を略直線上にすることができることを確認した。
【0101】
(実施例3)
外管の遠位側シャフト部として、外径/内径=1.90mm/1.45mm、長さ80mmのチューブ(ポリアミドエラストマー、ショアD硬度:55D、製品名「PEBAX」)、外管の近位側シャフト部として、外層(ポリアミドエラストマー、ショアD硬度:72D、製品名PEBAX)とステンレス鋼線(厚み0.07mm×幅1.40mm)で編組した補強層を有する外径/内径=1.90mm/1.45mm、長さ1000mmのチューブを使用し、遠位側シャフトの近位側端部と近位側シャフト部の遠位側端部とを260℃で加熱して両者を溶着により接合し外管を作製した。
ワイヤー係合部材として、外径/内径=0.23mm/0.19mm、長さ20mmのポリイミド製(ショアD硬度:74D相当)のチューブ(ポリイミドチューブ)を用い、その中空部にφ0.16mmの芯材を差込み、ポリイミドチューブ外表面にシアノアクリレート系接着剤を塗布した。接着剤塗布後のポリイミドチューブを遠位側シャフト部の内腔部に挿入し、遠位側シャフト部の内壁面にポリイミドチューブを接合した後、芯材を引き抜いた。ポリイミドチューブは、その遠位側開口部が遠位側シャフト部の遠位側端部から20mmとなるように固定した(ポリイミドチューブの近位側開口部は遠位側シャフト部の遠位側端部から40mmに位置する。)。
遠位側シャフト部の内壁面に接着、固定されたポリイミドチューブの中空部に、操作ワイヤーとしてφ0.16(mm)のステンレス製のワイヤーを挿入した後、遠位側シャフト部の外表面からφ0.30(mm)のドリルで内腔部に連通する小孔部を遠位側シャフト部の遠位側端部から2〜30mmの位置に10個形成した。
電極として白金リング(10個)を、導線として銅線を使用し、白金リングの内表面に銅線の一方端部を半田付けした。銅線の他方端部を上記の小孔部から挿入し、端子と半田付けした。
内管(ポリイミド樹脂、ショアD硬度:74D相当)を外管の内腔部の全長に亘り挿入し、操作ワイヤーの近位側端部を操作部に固定し、その遠位側端部を遠位側シャフトの遠位側端部から2mmの位置の内壁面に接合、固定した。
内管と連通する開口部を有する先端キャップ(外径1.90mm、材質:白金)を外管の遠位側シャフト部と内管の遠位側端部に配してポリウレタン系接着剤にて接合固定し、内管外壁面と外管内壁面とで形成される中空部を封止した。また、内管の近位側は操作部を貫通して外部に突出させ、その近位側端部にコネクタを接続した。そして、外管の近位側シャフト部と操作部を接合し、医療用カテーテルが得られた。
得られた医療用カテーテルの操作部を操作して、操作ワイヤーを引っ張ることにより、遠位側部分がL字状に曲がることを確認した。
【0102】
(実施例4)
ポリイミド製のチューブに代えて、ステンレス製のチューブを使用した以外は実施例3と同様にして医療用カテーテルを作製した。得られた医療用カテーテルの操作部を操作して、操作ワイヤーを引っ張ることにより、遠位側部分がL字状に曲がることを確認した。
【0103】
(実施例5)
ポリイミド製のチューブに代えて、ポリアミド製(ショアD硬度:74D)のチューブを使用した以外は、実施例3と同様にして医療用カテーテルを作製した。得られた医療用カテーテルの操作部を操作して、操作ワイヤーを引っ張ることにより、遠位側部分がL字状に曲がることを確認した。
【0104】
(実施例6)
実施例3の外管の遠位側シャフト部を実施例2と同様にL字状に賦形したこと、および、ワイヤー係合部材を実施例2と同様の位置に配したことを除き、実施例3と同様にして医療用カテーテルを得た。
得られた医療用カテーテルは、遠位側シャフト部は略L字状に曲げられた形状であるが、操作部を操作して操作ワイヤーを引っ張ることで、予めL字状に賦形した部分を含めて医療用カテーテル全体を略直線上にすることができることを確認した。
【符号の説明】
【0105】
1、2、3 医療用カテーテル
10、110 シャフト部
11、111 内腔部
12、112 操作ワイヤー
13、113 ワイヤー係合部材
16、116 中空部
20、120 遠位側シャフト部
23、123 先端キャップ
24、124 導線
25、26、125、126 端子
30、130 近位側シャフト部
40、140 操作部
50 チューブ部
100 外管
127、128 小孔部
160 内管
170、171 電極
200 心臓
201 右心房
202 右心室
203 左心房
204 左心室
205 冠状静脈洞
206 冠状静脈洞の開口部
207 下大静脈の開口部
208 ガイドワイヤー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材とを備え、
前記操作ワイヤーの遠位側は、前記ワイヤー係合部材の中空部内に挿通され、前記シャフト部の前記係合部材よりも遠位側の内壁面に、または、前記ワイヤー係合部材に、接合または係止して固定されることを特徴とする医療用カテーテル。
【請求項2】
前記ワイヤー係合部材の材質が、前記シャフト部を構成する材質よりも剛性の高い材質である請求項1記載の医療用カテーテル。
【請求項3】
前記シャフト部が、その遠位側の外壁面に電極を備え、
該電極は前記シャフト部の内腔部に配された導線を介して前記操作部または前記シャフト部の近位側に設けられた外部出力装置と電気的に接続可能な端子と電気的に接続された請求項1または2記載の医療用カテーテル。
【請求項4】
前記ワイヤー係合部材が、前記電極より近位側に配される請求項3に記載の医療用カテーテル。
【請求項5】
前記操作ワイヤーの遠位側端部が、前記シャフト部の遠位側端部に固定されている請求項1〜4のいずれかに記載の医療用カテーテル。
【請求項6】
前記電極が、シャフト部の遠位側の端部に配された請求項3〜5のいずれかに記載の医療用カテーテル。
【請求項7】
前記シャフト部が、外管と、該外管の内腔部に配された内管とを備え、前記シャフト部の内壁面が前記外管の内腔部を形成する内壁面により構成される請求項1〜6のいずれかに記載の医療用カテーテル。
【請求項8】
前記シャフト部が、予め湾曲した形状に賦形された請求項1〜7のいずれかに記載の医療用カテーテル。
【請求項9】
前記導線が、銅より引張り強度の高い芯線の表面に銅がメッキされたものである請求項3〜8のいずれかに記載の医療用カテーテル。
【請求項10】
シャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材とを備えた医療用カテーテルを製造する方法であって、
前記ワイヤー係合部材の中空部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内腔部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内壁面に前記ワイヤー係合部材を固定する工程、
を含むことを特徴とする医療用カテーテルの製造方法。
【請求項11】
前記ワイヤー係合部材の外表面上に接着剤を塗布する工程、
前記接着剤が塗布されたワイヤー係合部材を前記シャフト部の内腔部に挿入する工程、
を含む請求項10記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項12】
シャフト部に、前記内腔部と外部とを連通する少なくとも一つの小孔部を形成する工程、
前記小孔部を介して外部から接着剤を注入して、前記シャフト部の内腔部に予め配された前記ワイヤー係合部材と前記内壁面とに接着剤を塗布する工程、
前記小孔部を封止する工程、
を含む請求項10に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項13】
シャフト部と、該シャフト部の近位側に配された操作部と、前記シャフト部の近位側から遠位側に亘り連通する内腔部に配され、前記操作部と前記シャフト部の遠位側とに連結される操作ワイヤーと、前記シャフト部の遠位側において前記内腔部を形成する内壁面に固定された中空部を有する筒状のワイヤー係合部材と、前記シャフト部の外周面に電極を有し、前記シャフト部の内腔部に前記電極と電気的に接続され導線と、を備えた医療用カテーテルを製造する方法であって、
前記ワイヤー係合部材の中空部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内腔部に前記操作ワイヤーを挿通する工程、
前記シャフト部の内壁面に前記ワイヤー係合部材を固定する工程、
シャフト部に、前記内腔部と外部とを連通する少なくとも一つの小孔部を形成する工程、
前記小孔部に導線を挿通した後、電極を前記シャフト部の外表面に固定する工程、
を含む医療用カテーテルの製造方法。
【請求項14】
前記小孔を介してシャフト部の外部から接着剤を注入して、前記シャフト部の内腔部に予め配された前記ワイヤー係合部材と前記内壁面とに接着剤を塗布する工程、
を含む請求項13に記載の医療用カテーテルの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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