半導体装置の製造方法、半導体装置及び電子部品
【課題】厚さが15〜75μmの薄い半導体チップをピックアップする場合であっても、割れ、欠け等の破損を生じることなく、従来のコレットを用いてチップを速やかにピックアップすることができる、半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含み、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
【解決手段】半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含み、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル情報機器の小型軽量化、高機能、及び高性能化を実現するために、半導体装置の高密度実装技術の開発が進んでいる。この高密度実装技術の分野において、配線基板上に複数の半導体チップを三次元的に実装する積層パッケージ(スタックドパッケージともいう)が実用化されている。このような積層パッケージを組み立てる際には、薄く加工された半導体チップ(以下、単に「チップ」という)が使用される。
【0003】
図1〜9は、このような薄いチップを配線基板に実装するための、従来の方法を示す模式図である。まず、図1及び図2に示すように、所望の集積回路を形成した半導体ウエハ1(以下、単に「ウエハ」という)の表面上に、集積回路を保護するための保護層2(バックグラインドテープ)を形成する。そして、図3に示すように、ウエハ1を裏返し、集積回路を形成した面が下になるようにした状態で、ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない面)をグラインダ3を用いた研磨及びエッチング行う。これにより、ウエハ1の厚さを薄くする(図4)。続いて、図5aに示すように、このウエハ1の周囲にウェハリング18を配置し、ウエハ1の上側に、粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)6を貼り付ける。そして、図5bに示すように、ウエハ1を再び裏返し、集積回路を形成した面が上側にくるようにし、バックグラインドテープ2を剥離する。次いで、図6に示すように、ダイシングブレード7等を用いてダイシングを行い、ウエハ1を複数個のチップに分割する。その後、図7及び図8に示すように、粘着シート6の裏面に突き上げピン9等を押し当てることで、チップ14を1個ずつダイシングテープ5から剥がし、剥がしたダイボンディングフィルム付きのチップをコレット8でピックアップする。そして、このチップを配線基板10上に搬送し、ダイボンディングする(図9)。
【0004】
ところが、このように薄いチップを使用する積層パッケージの組み立て工程において、ダイシングによって分割されたチップをダイシングテープから剥離、ピックアップする際に、チップに割れや欠けが生じ易い問題があった。具体的には、薄型化して剛性が低下したチップを、従来のコレット8でピックアップしようとする場合、図10に示すように、突き上げピン9を押し当てても、チップがダイボンディングフィルム4及びダイシングテープ5の表面に追従する形で変形してしまい、ダイシングテープ5の表面に対して十分な剥離角度が得られない為、剥離ができなくなる問題が発生していた。一方、突き上げピンの突き上げ高さを高くしたり、コレットの吸引を強くしたりする等して無理に剥離を試みると、チップの割れや欠けが発生してしまう傾向があった。このような問題を解決するために、薄いチップであっても、チップの破損に至るような強い吸引を用いずにチップを吸着してピックアップすることのできる、底部が平坦ではないコレットおよびそれを用いたピックアップ方法が提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−243834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示すような、底部が平坦ではないコレットを用いてピックアップを行なった場合、チップを配線基板上にダイボンディングする際に、チップの端部が十分に配線基板上に接着できない場合があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップをピックアップする場合であっても、割れ、欠け等の破損を生じることなく、従来のコレットを用いてチップを速やかにピックアップすることができる、半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、以下のような特徴を有する本発明を完成した。
(1)半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含む半導体装置の製造方法において、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
(2)樹脂膜は、25℃における伸び率が5〜100%である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(3)樹脂膜は、樹脂組成物を硬化して得られる膜である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(4)樹脂膜は、樹脂組成物を120〜280℃で加熱硬化して得られる膜である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(5)樹脂組成物は、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミド、ポリベンゾオキサゾール及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記記載の半導体装置の製造方法。
(6)ダイボンディングフィルムは、厚さが5〜30μmである、上記記載の半導体装置の製造方法。
(7)ダイシングは、ブレードを用いて行なうものである、上記記載の半導体装置の製造方法。
(8)半導体チップをピックアップする工程は、4〜20本の突き上げピンを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップを突き上げる工程を含む、上記記載の半導体装置の製造方法。
(9)上記記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。
(10)上記記載の半導体装置の製造方法により得られる電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップをピックアップする場合であっても、割れ、欠け等の破損を生じることなく、従来のコレットを用いてチップを速やかにピックアップすることができる。また、本発明によれば、従来の粘着シートを用いた場合も、チップを破損することなく速やかにピックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、集積回路が形成された半導体ウエハの斜視図である。
【図2】図2は、半導体ウエハの側面図である。
【図3】図3は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体ウエハの研削工程を示す側面図である。
【図4】図4は、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハの研削工程により薄くなった半導体ウエハの側面図である。
【図5】図5aは、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハにダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを貼り付ける工程を示す側面図である。また、図5bは、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハのバックグラインドテープを剥離した状態を示す側面図である。
【図6】図6は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体ウエハのダイシング工程を示す側面図である。
【図7】図7は、従来の半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離する方法を示す側面図である。
【図8】図8は、従来の半導体装置の製造方法において、ダイシングテープから剥離されたダイボンディングフィルム付き半導体チップを、ピックアップする方法を示す側面図である。
【図9】図9は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体チップのダイボンディング工程を示す側面図である。
【図10】図10は、従来の半導体装置の製造方法において、半導体チップをダイシングテープから剥離することができない状態を示す側面図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハに樹脂膜を形成した状態を示す側面図である。
【図12】図12は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハの裏面を研削するバックグラインド工程を示す側面図である。
【図13】図13は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、バックグラインと工程により厚みが薄くなった状態の半導体ウエハを示す側面図である。
【図14】図14aは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハにダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが貼り付けられた状態を示す側面図である。また、図14bは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハからバックグラインドテープが剥離された状態を示す側面図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハのダイシング工程を示す側面図。
【図16】図16は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離する方法を示す側面図である。
【図17】図17は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップがダイシングテープから剥離された状態を示す側面図である。
【図18】図18は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップが配線基板にダイボンディングされた状態を示す側面図である。
【図19】図19は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、積層されたダイボンディングフィルム付き半導体チップが配線基板にワイヤボンディングされ、封止樹脂により封止された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0012】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程(樹脂膜形成工程)と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルム及びダイシングテープを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程(ダイシング工程)と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程(ピックアップ工程)と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程(ダイボンディング工程)と、積層パッケージを製造する工程と、を含む半導体装置の製造方法であり、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法である。以下、本実施形態にかかる樹脂膜について説明をし、つづいて各工程について説明をする。
【0013】
[樹脂膜]
半導体ウエハの表面に形成される樹脂膜は、25℃における弾性率が、2〜10GPaであるが、2.5〜8GPaであることが好ましく、3〜5GPaであることがより好ましい。25℃における弾性率が2GPaより小さいと、樹脂膜の剛性が十分に得られないため、コレットによるピックアップ時に半導体チップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまう。これにより、粘着シートの表面に対して十分な剥離角度が得られず、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離できなくなる傾向がある。また、25℃における弾性率が10GPaを超えると、樹脂膜が脆くなり、樹脂膜が半導体ウエハから剥離してしまったり、樹脂膜が割れてしまったりすることがある。また、樹脂膜に起因してチップの反りが大きくなり過ぎることにより、コレットによるピックアップが困難になる傾向がある。
【0014】
ここで、本明細書において、弾性率とは引張弾性率であり、例えば、(株)島津製作所製オートグラフAGS−100NHを用いて、引張試験をすることにより求めることができる。
【0015】
樹脂膜の膜厚は、3〜20μmであるが、4〜15μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。樹脂膜の膜厚が3μmより小さいと、樹脂膜の剛性が十分に得られないため、コレットによるピックアップ時に半導体チップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまう。これにより、粘着シートの表面に対して十分な剥離角度が得られず、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを粘着シートから剥離ができなくなる傾向がある。また、膜厚が20μmを超えると、半導体ウエハの反りが大きくなるため、樹脂膜が半導体ウエハから剥離してしまったり、半導体ウエハ輸送時に半導体ウエハ自体が落下してしまったりするという問題が生じる傾向がある。これは、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張率(CTE)の違いによるものだと考えられる。
【0016】
ここで、樹脂膜の膜厚は、分光エリプソメータ RE− 3100(日立ハイテク製)又は触針式表面形状測定器 Dektak V320 Si(Veeco製)等で測定することができる。
【0017】
また、この樹脂膜の伸び率は、5〜100%であることが好ましく、5〜90%であることがより好ましく、8〜80%であることがさらに好ましい。伸び率が5%より小さい場合、ピックアップ時の突き上げによる半導体チップの変形に伴い、半導体チップ及び樹脂膜に割れが生じやすくなる。また、100%を超えると、ピックアップ時に半導体チップが粘着シートの変形に追従しやすくなり、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを粘着シートから剥離しにくくなる可能性がある。
【0018】
ここで、本明細書において、伸び率とは破断伸びであり、例えば、(株)島津製作所製オートグラフAGS−100NHを用いて、引張試験をすることにより求めることができる。
【0019】
このような樹脂膜は、樹脂組成物を好ましくは120〜280℃、より好ましくは160〜250℃、さらに好ましくは160〜225℃で加熱硬化して得られるものである。加熱硬化温度が280℃より高い樹脂であると、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張係数(CTE)の違いにより、半導体ウエハの反りが発生し、ウエハの割れを引き起こす可能性がある。また、加熱硬化温度が120℃より低い樹脂であると、樹脂の硬化が十分に進行しないため、樹脂に十分な剛性を与えることができずに、後述するピックアップ工程において半導体チップをピックアップしようとする場合、突き上げピンを押し当てても、粘着テープから半導体チップを剥離することができなくなる傾向がある。
【0020】
なお、上記事情に鑑み、本実施形態において使用される半導体ウエハの熱膨張係数(CTE)が3〜10ppm/℃であることから、樹脂膜の熱膨張係数は3〜65ppm/℃であることが好ましく、3〜55ppm/℃であることがより好ましく、3〜40ppm/℃であることがさらに好ましい。なお、熱膨張係数は、例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定することができる。
【0021】
また、ダイボンディング工程において加熱した際に、樹脂膜に十分な機械特性を与えるという観点から、樹脂膜のガラス転移温度(Tg)は100〜400℃であることが好ましく、150〜350℃であることがより好ましく、180〜300℃であることがさらに好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定することができる。
【0022】
このような樹脂組成物としては、硬化後の樹脂膜の弾性率が2〜10GPaであれば特に制限されないが、耐熱性及び機械特性の観点から、ポリイミド、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)、ポリベンゾオキサゾール、ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。通常、これらの樹脂は、感光剤、架橋剤、酸発生剤及び溶剤等を加えた樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0023】
これらの樹脂のうち、機械特性の観点から、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)、ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)、及びフェノール樹脂を用いることが好ましく、低温で硬化でき、良好な弾性率を与える観点から、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
ポリアミド酸は例えば、下記一般式(I)で表されるものを用いることができる。
【化1】
(式中、Xは二価の有機基、単結合、−O−又は−SO2−を示し、Yは四価の有機基を示す。Rは水素原子又は1価の有機基を示す。)
【0025】
ポリアミド酸は、一般的に、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン類との反応を行うことにより合成できる。
【0026】
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(4,4’−オキシジフタル酸)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物及び2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二酸無水物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
ジアミン類としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。具体的には、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、2,2−ジメチルベンジジン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メチレン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、4,4−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,1,3,3,−テトラメチル1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン及びポリ(プロピレングリコール)ジアミン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、一般式(I)においてRが1価の有機基である場合、Rは下記一般式で表される有機基であれば、高感度の感光性を付与できるため好ましい。
【化2】
(但し、R10、R11及びR12は、水素原子、アルキル基、フェニル基、ビニル基及びプロペニル基からなる群よりそれぞれ独立に選択された基であり、R13は2価の有機基を示す。なお、アルキル基としては炭素原子数1〜4のものが好ましい。また、R13で示される2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等の炭素原子数1〜4のアルキレン基が好ましい。)
【0029】
また、ポリアミド酸を合成する際の有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0030】
ポリヒドロキシアミドは例えば、下記一般式(II)で表されるものを用いることができる。なお、耐熱性、耐薬品性及び機械特性に優れ、アルカリ水溶液への溶解性が優れているという観点から、ポリヒドロキシアミドを含有する樹脂組成物を用いることが好ましい。
【化3】
(式中、Uは二価の有機基、単結合、−O−又は−SO2−を示し、Vは二価の有機基を示す。)
【0031】
なお、一般式(II)で表される構造単位において、同一のベンゼン環上に結合しているヒドロキシ基とアミド基は、加熱工程における脱水閉環により、耐熱性、機械特性及び電気特性に優れるオキサゾール環に変換される。
【0032】
ポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸類とヒドロキシ基を有するジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸類をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0033】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸類とハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン及びベンゼン等が使用できる。
【0034】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体のモル数に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。また、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0035】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用いることができる。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0036】
ジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ジカルボン酸類としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
ポリアミド酸及びポリヒドロキシアミドの分子量は、重量平均分子量で3000〜200000が好ましく、5000〜100000がより好ましく、10000〜50000がさらに好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0039】
低温(例えば、225℃以下)で硬化ができるという観点からは、フェノール樹脂を含有する樹脂組成物を用いることが好ましく、ノボラック型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物を用いることがより好ましい。
【0040】
フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂を特にノボラック型フェノール樹脂という。ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂及びフェノール−ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。
【0041】
フェノール樹脂を得るために用いられるフェノール誘導体としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール及び3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール及び2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール及びアリルフェノール等のアルケニルフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール及びピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン;ビスフェノールA及びビスフェノールF等のビスフェノール;α−又はβ−ナフトール等のナフトール誘導体;p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール及びp−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体;p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニルブタン酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸及びジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール誘導体;等が挙げられる。なお、ビスヒドロキシメチル−p−クレゾール等のフェノール誘導体のメチロール化物を、フェノール誘導体として用いてもよい。
【0042】
さらに、フェノール樹脂は、上述のフェノール又はフェノール誘導体をm−キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と縮重合して得られる生成物であってもよい。この場合、縮重合に用いられるフェノール誘導体に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
【0043】
上述のフェノール誘導体及びフェノール化合物以外の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2−ホルミルプロピオン酸及び2−ホルミルプロピオン酸メチル等から選ばれる。なお、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体、並びにアセトン、ピルビン酸、レプリン酸、4−アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のケトン類を反応に用いても良い。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
フェノール樹脂の重量平均分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性や、感光特性(感度、及び解像度)と機械特性(破断伸び、弾性率及び残留応力)とのバランスを考慮すると、500〜150000であることが好ましく、500〜100000であることがより好ましく、1000〜50000であることが特に好ましい。
【0046】
本実施形態で用いる樹脂組成物は、上述のポリヒドロキシアミド、フェノール樹脂等の樹脂とともに、感光剤を含有することが好ましい。ここでいう感光剤とは、樹脂組成物を基板上に塗布し、形成した感光性樹脂膜に光を照射した場合に、光に反応して、照射部と未照射部の現像液に対する溶解性に差異を付与する機能を有するものである。感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
【0047】
このような感光剤としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物中の感光剤の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差及び感度を良好にする点から、樹脂100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、8〜80質量部がより好ましい。
【0049】
樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン及びメチルアミルケトン等が挙げられ、通常、樹脂組成物中の他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。この中でも各成分の溶解性と樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
【0050】
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に樹脂組成物中の溶剤の含有量が、樹脂100質量部に対して20〜90質量部となるように調整されることが好ましい。
【0051】
樹脂組成物は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、樹脂組成物を塗布する工程、またはその後必要により露光及び現像後に加熱処理する工程において、アルカリ可溶性樹脂と反応(架橋反応)したり、又は架橋剤自身が重合したりする。これにより、樹脂組成物を比較的低い温度(例えば、225℃以下)で硬化した場合も、良好な機械特性、薬品耐性及びフラックス耐性を付与させることができる。硬化後の樹脂膜が良好な機械特性を有することにより、半導体チップに十分な剛性を与えることができ、半導体チップを破損すること無くピックアップすることができる。
【0052】
架橋剤としては、下記一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)で示される化合物が挙げられる。
【化4】
(式中、Xは単結合、−O−、−SO2−又は1〜4価の有機基を示し、R11は水素原子又は一価の有機基を示し、R12は一価の有機基を示す。nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【0053】
【化5】
(式中、Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、水素原子の一部がヒドロキシル基で置換された炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に一価の有機基を示し、R15及びR16は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示す。r及びtは各々独立に1〜3の整数であり、s及びuは各々独立に0〜3の整数である)
【0054】
【化6】
(式中、R17及びR18は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R18は互いが結合することで環構造となっていてもよい。)
【0055】
【化7】
(式中、R17は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R17は互いが結合することで環構造となっていてもよい。)
【0056】
【化8】
(式中、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は各々独立に水素原子、メチロール基又はアルコキシメチル基を示す。)
【0057】
尚、一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)において、一価の有機基としては、炭素原子数1〜10の、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基及びヒドロキシアルコキシ基、並びにそれらの水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが好ましいものとして挙げられる。この中でも一般式(IX)で表される化合物を用いると、樹脂組成物を200℃以下の低温で硬化した場合に、優れた耐薬品性を有する硬化膜が得られるため、好ましい。
【0058】
樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び硬化膜物性の点から、樹脂100質量部に対して1〜50質量部が好ましい。また、樹脂組成物を250℃以下で硬化した場合の、硬化膜の良好な薬品耐性及びフラックス耐性を発現させる観点から、架橋剤の含有量は、樹脂100質量部に対して15〜50質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0059】
樹脂組成物は、さらに必要に応じてシランカップリング剤、溶解促進剤、溶解阻害剤、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。
【0060】
[樹脂膜形成工程]
樹脂膜形成工程では、上述の樹脂組成物を用いて、図11に示すように半導体ウエハ1の一方の面(集積回路が形成されている面)に樹脂膜13を形成する。この工程は、乾燥工程、必要に応じパターン形成工程、バックグラインド工程及び加熱工程を備えている。
【0061】
乾燥工程では、単結晶シリコンからなる半導体ウエハ1の表面に公知の製造方法に従って集積回路を形成し、その後、樹脂組成物をスピンナー等を用いて回転塗布し、樹脂組成物膜を形成する。次に必要に応じてホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。この際の加熱温度は80〜150℃であることが好ましい。この加熱による乾燥工程をプリベークという。
【0062】
続いて、必要に応じて、樹脂組成物膜にパターンを形成する。パターン形成工程は、露光工程と現像工程を備える。露光工程では、まず、樹脂組成物膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射することにより露光を行う。露光装置としては、例えば、高圧水銀灯又は低圧水銀灯を有する露光装置、365nm(i線)の単色光での照射が可能なI線ステッパー、平衡露光機、投影露光機及びスキャナー露光機等を用いることができる。
【0063】
露光工程後、現像工程を行なう。現像工程は、露光工程後の樹脂組成物膜を現像液で処理することにより、パターン形成された樹脂組成物膜を得る工程である。一般的に、ポジ型の樹脂組成物を用いた場合には、露光部を現像液で除去し、ネガ型の樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
【0064】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられ、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。これらの水溶液の濃度は、0.1〜10質量%とされることが好ましい。なお、現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で含有することができる。
【0065】
次いで、加熱工程を行なう。(場合によりパターンが形成された)樹脂組成物膜を加熱処理することにより、樹脂がポリアミド酸である場合は脱水閉環しイミド環を与え、樹脂がポリヒドロキシアミドである場合は脱水閉環しオキサゾール環を与える。また、同時に樹脂の官能基同士、又は、樹脂と架橋剤間に架橋構造等を形成され、樹脂組成物膜が硬化した樹脂膜を得ることができる。
【0066】
加熱工程における加熱温度は、120〜280℃であることが好ましく、160〜250℃であることがより好ましく、160〜225℃であることがさらに好ましい。280℃より高い温度であると、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張係数(CTE)の違いにより、半導体ウエハの反りが発生し、ウエハの割れを引き起こす可能性がある。また、120℃より低い温度であると、樹脂の硬化が十分に進行しないため、樹脂に十分な剛性を与えることができずに、後述するピックアップ工程において半導体チップをピックアップしようとする場合、突き上げピンを押し当てても、粘着テープから半導体チップを剥離することができなくなる傾向がある。
【0067】
加熱工程に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉及びマイクロ波硬化炉等が挙げられる。また、加熱雰囲気としては、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので好ましい。
【0068】
また、加熱装置として、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置又は周波数可変マイクロ波硬化装置を用いた場合は、半導体ウエハやデバイスの温度を、例えば、220℃以下に保ったままで、樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0069】
なお、マイクロ波を用いて硬化を行う場合、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができるため、好ましい。
【0070】
樹脂組成物中の樹脂を脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。このようにして、図11のように半導体ウエハ1の表面に樹脂膜13が形成される。
【0071】
[バックグラインド工程]
バックグラインド工程では、半導体ウエハ1の厚さを薄くする。まず、図12に示すように、半導体ウエハ1の一方の面に形成した樹脂膜13の上に、集積回路を保護するための保護層(バックグラインドテープ)2を形成する。そして、この保護層2を形成した面が下側になるように、半導体ウエハ1を裏返し、チャックテーブルと呼ばれる台に半導体ウエハ1を固定する。この状態で、半導体ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない他方の面)をグラインダ3で研削する。続いて、この研削によって生じた裏面のダメージ層を、ウエットエッチング、ドライポリッシング又はプラズマエッチング等の方法によって除去することにより、半導体ウエハ1の厚さを100μm以下、例えば、15〜75μm程度まで薄くする。ウエットエッチング、ドライポリッシング又はプラズマエッチング等の処理方法は、半導体ウエハ1の厚さ方向に進行する処理速度が、グラインダ3による研削の速度に比べて遅い反面、半導体ウエハ1内部に与えるダメージが、グラインダ3による研削に比較して小さいだけでなく、グラインダ3による研削で発生した半導体ウエハ1内部のダメージ層を除去することができ、半導体ウエハ1及び同ウエハから切り出される半導体チップが割れにくくなるという効果がある。このようにして図13に示すような厚さが薄くなった半導体ウエハ1を得る。
【0072】
[ダイシング工程]
ダイシング工程では、半導体ウエハ1の他方の面に、ダイボンディングフィルム4及びダイシングテープ5を備える粘着シート6を貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する。まず、図14aに示すように、半導体ウエハ1の周囲を囲うようにウェハリング(リングフレーム)18と呼ばれるリング形状の部材を配置し、半導体ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない他方の面)に粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)6を貼付ける。ウェハリング18は粘着シート6を固定するために用いられる。なお、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとは、ダイシングテープ5とダイボンドフィルム4とが一体型になったフィルムである。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとしては、例えば、ハイアタッチFH−9011(日立化成工業(株)製)などを用いることができる。
【0073】
なお、粘着シート6中のダイボンディングフィルム4は、厚さが5〜30μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。厚さが5μm未満であると、基板及びチップ表面における段差埋め込み性が悪くなるため、ボイドが発生するなど信頼性が悪化するとなる傾向があり、厚さが30μmを超えると、ダイシング性及びピックアップ性が悪化するとなる傾向がある。
【0074】
ついで、図14bのように、半導体ウエハ1を再び裏返し、半導体ウエハ1の集積回路が形成された面が上側にくるようにし、バックグラインドテープ2を取り除く。次に、図15に示すように、半導体ウエハ1を、スクライブラインによって区画されたチップごとに分割する。ダイシングは、ブレードを用いて行うことが好ましいが(ブレードダイシング)、レーザーフルカットダイシング又はレーザーステルスダイシング等を用いて行なうこともできる。なお、前述のバックグラインド工程は、スクライブラインに200μm程度の深さに切込みを入れた後に行うこともできる(先ダイシング)。
【0075】
[ピックアップ工程]
ピックアップ工程では、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする。すなわち、図16及び17に示すように、ダイシングテープ5上から、分割された複数個のダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を個々にピックアップする。このダイボンディングフィルム付き半導体チップ15のピックアップには、コレット8と称する専用治具(半導体チップに直接接触する吸着用ヘッド部)を有するダイボンダー又はダイピッカーと称する装置(以下、総称してダイボンダーとする)を使用する。半導体チップはコレット8に吸着されたままダイシングテープ5から剥離されることで、ダイボンディングフィルム4付きの状態でピックアップがなされ(ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15)、次いで図18に示される配線基板10ヘダイボンディングする後工程へと移送される。なお、ピックアップ工程では、ダイシングテープ5からダイボンディングフィルム付き半導体チップ15が剥離しやすいように、ダイシングテープ5の下方から突き上げピン9によりダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を突上げる。このようにして、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15に対するダイシングテープ5表面の剥離角度が大きくなるようにすることが一般的に行われる。この際、4〜20本の突き上げピンを用いて半導体チップを突き上げることが好ましい。
【0076】
突き上げピン9の突き上げ高さ(ストローク)は、例えば、0.1〜0.7mm程度であるが、チップのサイズに応じて調整することが好ましい。例えば、チップのサイズが大きい場合は、チップとダイシングテープとの接触面積が大きく、チップとダイシングテープ間の粘着力が大きいため、突き上げ量を大きくする必要がある。一方、チップのサイズが小さい場合は、チップとダイシングテープとの接触面積が小さく、チップとダイシングテープ間の粘着力が小さいため、突き上げ量が小さくても、チップは容易に剥離する。なお、ダイシングテープに用いられる粘着材は、製造元や品種によって粘着力に差がある。したがって、チップのサイズが同じ場合でも、粘着力の大きい粘着剤を使用している場合には、突き上げ量を増やす必要がある。
【0077】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、半導体チップに特定組成を有する樹脂膜13が形成されていることで、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップを用いた場合も、速やかにピックアップを行なうことができ、チップ15の破損を防ぐことができる。
【0078】
なお、樹脂膜13の弾性率が2GPaより小さいと、突き上げピンによる突上げを行ってもダイボンディングフィルム付き半導体チップ15がダイシングテープ5の表面に追従する形で変形してしまい、ダイシングテープ表面に対して十分な剥離角度が得られない。このため、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15をダイシングテープ5から剥離しにくくなり、速やかなピックアップができなくなる。また、無理に突き上げ量を増やすと、半導体チップの割れや欠けが発生しやすくなる。
【0079】
[ダイボンディング工程]
ダイボンディング工程では、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を配線基板10上にダイボンディングして実装する。ピックアップ工程においてピックアップされたダイボンディングフィルム付き半導体チップ15は、図18に示すように、ダイボンディング工程において、ダイボンドフィルム4を介して配線基板10上に実装される。
【0080】
[積層パッケージを製造する工程]
積層パッケージを製造する工程では、ダイボンダーを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を必要な段数積層する。なお、積層された後、ワイヤボンディング可能な機械強度を得るため、及びダイボンドフィルムの発泡を防ぐために必要に応じて加熱工程を入れる。一般的に、配線基板10の片面には、2〜8段の半導体チップが積層される。その後、図19に示すように、各チップのボンディングパッド17と配線基板10の電極16がワイヤ11で電気的に接続される。その後、配線基板10をモールド工程に搬送し、積層したチップ15全体をモールド樹脂12で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0081】
[半導体装置及び電子部品]
本実施形態の半導体装置の製造方法により、半導体装置及び電子部品を得ることができる。このような半導体装置としては、SSD及びHybrid HDD等が挙げられる。また、電子部品としては、携帯電話(スマートフォン)、デジタルメディアプレーヤー及びSDカード等に使われるフラッシュメモリ等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を詳細に述べるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0083】
[合成例]
(合成例1:炭素原子数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(乾性油)変性フェノール樹脂A1の合成)
フェノール100質量部、亜麻仁油43質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、植物油変性フェノール誘導体を得た。次いで、植物油変性フェノール誘導体130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌した。次いで、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した後、反応液に無水コハク酸29g及びトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温(25℃)まで冷却し、反応生成物である炭素原子数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂A1を得た(酸価:120mgKOH/g)。この変性フェノール樹脂A1について、GPC法(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法)により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ25000であった。
【0084】
(合成例2:アクリル樹脂B1の合成)
攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに、トルエン75g、イソプロパノール(IPA)75gを秤取し、別途に秤取したアクリル酸ブチル(BA)85g、ラウリルアクリレート(DDA)24g、アクリル酸(AA)14g、及び1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イルメタクリレート(商品名:FA−711MM、日立化成工業株式会社製)7.9gの重合性単量体、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを加えた。室温にて約270rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を停止し、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を14時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂B1を得た。この際の重合率は98%であった。また、このアクリル樹脂B1について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ36000であった。
【0085】
(合成例3:ポリイミド前駆体P1の合成)
攪拌機及び温度計を備えた200mlの四口フラスコに、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)9.30g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)7.81g、ピリジン4.75g、ヒドロキノン0.01g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)70mlを入れ60℃で撹拌すると、2時間で透明な溶液になった。この溶液を室温でその後7時間撹拌した後、フラスコを氷で冷却し、塩化チオニル8.57g(0.072モル)を10分で滴下した。その後室温で1時間撹拌し、酸クロライドを含む溶液を得た。一方、別の200mlの四口フラスコに、2,2−ジメチルベンジジン(DMAP)6.37g(0.03モル)、ピリジン5.06g(0.064モル)、ヒドロキノン0.01g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)50mLを入れフラスコを氷で冷却し撹拌しながら(10℃以下を保って)、上記酸クロライドを含む溶液を1時間かけてゆっくりと滴下した。その後室温で1時間撹拌し、1リットルの水へ投入して、析出したポリマを濾取して水で2度洗い、真空乾燥してポリイミド前駆体(ポリアミド酸エステル)P1を得た。このポリイミド前駆体P1について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ20000であった。また、得られたポリイミド前駆体P1の溶液を乾燥させたものを、KBr法により、赤外吸収スペクトル(日本電子(株)製、JIR−100型)を測定したところ、いずれも、1600cm−1付近にアミド基のC=Oに起因する吸収と、3300cm−1付近にN−Hに起因する吸収が確認された。
【0086】
(合成例4:ポリベンゾオキサゾール前駆体P2の合成)
攪拌機及び温度計を備えた500mlのフラスコに、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル23.9gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた500mlのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30gとm−アミノフェノール2.18gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン9.48gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)P2を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体P2について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ17600であり、分散度は1.6であった。
【0087】
(合成例5:ポリイミド前駆体P3の合成)
撹拌機、温度計及び窒素導入管を備えた100mlのフラスコに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.9g及びN−メチル−2−ピロリドン60gを加え、窒素流通下、室温で撹拌溶解した後、この溶液にオキシジフタル酸無水物16.5gを添加し、5時間撹拌し粘稠なポリイミド前駆体(ポリアミド酸)P3の溶液を得た。ポリイミド前駆体P3について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ40000であった。
【0088】
(合成例6:ポリベンゾオキサゾール前駆体P4の合成)
攪拌機及び温度計を備えた200mlのフラスコに、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド5.64gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)P4を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体P4について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ31600であり、分散度は2.0であった。
【0089】
[樹脂組成物の調製]
(樹脂組成物I)
合成例1で合成した変性フェノール樹脂A1と、クレゾールノボラック樹脂A2(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m−クレゾール/p−クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=13000、旭有機材工業(株)製、商品名「EP4020G」)を質量比でA1:A2=80:20となるように用いた(これをA成分という)。A成分100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を10質量部、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル(株)製、商品名「ニカラックMW−30HM」)10質量部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタンの1−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、商品名「TPPA528」)10質量部、トリメチルスルホニウムメチルスルフェート(フルオロケム社製)を1質量部、乳酸エチルを160質量部の割合で配合した。これを樹脂組成物Iとした。
【0090】
(樹脂組成物II)
合成例3で合成したポリイミド前駆体P1 100質量部に対して、(4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン1質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)20質量部、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア6質量部、下記一般式(XI)で表される化合物を6質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)140質量部の割合で配合した。これを樹脂組成物IIとした。
【化9】
【0091】
(樹脂組成物III)
合成例4で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体P2 100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を11質量部、下記一般式(XII)で表される化合物15質量部、γ−ブチロラクトン160質量部を配合した。また溶解性を調整するためにDPINヨードニウム塩を適宜添加し、未露光部の溶解速度が各サンプルとも20nm/s程度でほぼ一定となるようにした。これを樹脂組成物IIIとした。
【化10】
【0092】
(樹脂組成物IV)
合成例5で合成したポリイミド前駆体P3の溶液を樹脂組成物IVとした。
【0093】
(樹脂組成物V)
合成例6で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体P4 100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を11質量部、下記一般式で表される化合物10質量部、NMP150質量部を配合した。また溶解性を調整するために下記一般式(XIII)で表されるヨードニウム塩を適宜添加し、未露光部の溶解速度が各サンプルとも20nm/s程度でほぼ一定となるようにした。これを樹脂組成物Vとした。
【化11】
【0094】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
[樹脂膜形成工程]
東京エレクトロン(株)製CLEAN TRACK ACT12を用いて、上記の方法で得られた樹脂組成物I〜Vを、ウエハの一方の表面(集積回路を形成している面)に回転塗布した。その後、120℃で3分プリベークを行い、樹脂組成物膜を形成した。ウエハとしては、半導体ウエハ(厚み:775μm)の表面に、CVD法で成膜したSiO膜1μm、その上に、PVD法で成膜したAl膜(Siを1wt%含有)1μm、さらにその上にCVD法で成膜したSiN膜0.5μmを積層したものを用いた。
【0095】
その後、光洋サーモシステムズ社製イナートガスオーブンINH−9CD−Sを用いて、窒素雰囲気下、樹脂組成物の種類に応じて、表1に示すように180〜350℃で加熱して樹脂組成物膜を硬化(加熱硬化)させ、膜厚7〜25μmの樹脂膜を得た。各実施例及び各比較例における、樹脂膜の膜厚は表1に示した。
【0096】
[バックグラインド工程]
まず、(株)タカトリ製ATM3000EFを用いて、バックグラインドテープをウエハの一方の表面(集積回路を形成している面)に貼り付けた。バックグラインドテープは日立化成工業(株)製MS−2003を用いた。次に、(株)DISCO製 DGP8761 Fully Automatic Grinder/Polisherを用いてバックグラインドを行い、(株)DISCO製DP−08を用いてウエハの厚さ(ウエハ総厚)が30μmとなるように仕上げた。また、(株)DISCO製 DFM2800 Fully Automatic Multifunction Wafer Mounterを用いて、ウエハとダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとを120℃で貼り付けた。なお、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとしては、日立化成工業(株)製 FH−9011(フィルム厚み:40μm)を用いた。
【0097】
[ダイシング工程]
次いで、ウエハのダイシングを行い、10mm×10mmサイズの、ダイボンディングフィルム付きチップを複数得た。ダイシングは(株)DISCO製 DFD6361 Fully Automatic Dicing Sawを用いてフルオートで行った。ブレードは(株)DISCO製 ZH05 SD4800−N1−70、回転数は35000rpm、切り込み量は粘着テープの厚みに対し25μmとし、送り速度は30mm/sで行った。
【0098】
[弾性率及び伸び率の測定]
樹脂膜の弾性率及び伸び率は、次のようにして測定した。すなわち、樹脂膜付きのウエハを、4.9%フッ酸水溶液に浸漬し、ウエハから樹脂膜を剥離した。この樹脂膜を水洗、乾燥し、弾性率及び伸び率の測定を行なうためのサンプルを得た。弾性率(引張弾性率)及び伸び率(破断伸び)は、(株)島津製作所製オートグラフAGS−H 100Nの引張試験により求めた。サンプルの大きさは10mm×60mm、チャック間距離20mm、引張速度5mm/min、測定温度25℃で測定を行なった。なお、硬化膜の厚さはそれぞれ表1のとおりであった。測定結果を表1に示す。
【0099】
[熱膨張率の測定]
樹脂膜の熱膨張率(CTE)は、セイコー社製TMA/SS6000の熱機械測定装置を用いて、測定した。具体的には、硬化膜を2mm×3cmに切り取り、セイコー社製TMA/SS6000の熱機械測定装置を用いて、10g/分の加重をかけながら30〜420℃まで(昇温速度5℃/分)加熱した。その際の100〜200℃間の硬化膜の伸び率の傾きを測定してCTEとした。測定結果を表1に示す。
【0100】
[ガラス転移温度の測定]
樹脂膜のガラス転移温度(Tg)は、セイコーインスツル株式会社製TMA/SS6000を用い、昇温速度5℃/分にて熱膨張係数の変曲点より求めた。測定結果を表1に示す。
【0101】
[ピックアップ工程:ピックアップ性の評価]
ダイシング工程により分割された個々のチップのピックアップ性を評価した。上記方法で作製したチップを、(株)ルネサス東日本セミコンダクタ社製フレキシブルダイボンダーDB−730を使用してピックアップし、ピックアップ性の評価を行った。使用したピックアップ用コレットはマイクロメカニクス製RUBBER TIP 13−087E−33(サイズ:10×10mm)、突上げピンはマイクロメカニクス製EJECTOR NEEDLE SEN2−83−05(直径:0.7mm、先端形状:直径350μmの半円)を用いた。突上げピンの配置はピン中心間隔4.2mmで9本配置した。ピックアップ時のピンの突上げ速度は、10mm/sとした。ピックアップ時の突き上げ高さは、0.35mmから0.45mmまで、0.025mmずつ高さを変えた。
【0102】
評価にあたっては、まず突き上げ高さ0.35mmにおいて10回ピックアップを行い、すべて成功した場合ピックアップが可能であったとし、ピックアップミス、チップ割れ等の不具合が1チップでも発生した場合をピックアップ不可とした。ピックアップが不可であった場合は、突上げ高さを0.025mm上げて再度ピックアップをし、10回のピックアップが全て成功するか、又は突上げ高さが0.45mmになるまでこの操作を繰り返した。
【0103】
ピックアップが可能な突き上げ高さの最小値が0.4mmより小さい場合をA評価、0.4〜0.45mmの場合をB評価、0.45mmより大きい突き上げ高さが必要だった場合をC評価とした。すなわち、低い突き上げ高さでピックアップが可能なものほど、ピックアップを速やかに行なうことができ、ピックアップ性が良好であると評価した。評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1〜6のように、25℃での弾性率が2〜10GPa、膜厚が3〜10μmの樹脂膜を備えるチップを用いた場合、チップを破損すること無く、速やかにピックアップを行なうことができた。一方、比較例1のように、弾性率が2GPaより小さい場合、突上げ時にチップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまい、良好なピックアップができなかった。また、樹脂膜の膜厚が3μmより小さい比較例2の場合も、同様に良好なピックアップができなかった。
【符号の説明】
【0106】
1…半導体ウエハ(ウエハ)、2…バックグラインドテープ(保護層)、3…グラインダ、4…ダイボンディングフィルム、5…ダイシングテープ、6…粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)、7…ダイシングブレード、8…コレット、9…突き上げピン、10…配線基板、11…ワイヤ、12…モールド樹脂、13…樹脂膜、14…半導体チップ(従来の半導体チップ)、15…半導体チップ(樹脂膜を有する半導体チップ)、16…電極、17…ボンディングパッド、18…ウェハリング。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル情報機器の小型軽量化、高機能、及び高性能化を実現するために、半導体装置の高密度実装技術の開発が進んでいる。この高密度実装技術の分野において、配線基板上に複数の半導体チップを三次元的に実装する積層パッケージ(スタックドパッケージともいう)が実用化されている。このような積層パッケージを組み立てる際には、薄く加工された半導体チップ(以下、単に「チップ」という)が使用される。
【0003】
図1〜9は、このような薄いチップを配線基板に実装するための、従来の方法を示す模式図である。まず、図1及び図2に示すように、所望の集積回路を形成した半導体ウエハ1(以下、単に「ウエハ」という)の表面上に、集積回路を保護するための保護層2(バックグラインドテープ)を形成する。そして、図3に示すように、ウエハ1を裏返し、集積回路を形成した面が下になるようにした状態で、ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない面)をグラインダ3を用いた研磨及びエッチング行う。これにより、ウエハ1の厚さを薄くする(図4)。続いて、図5aに示すように、このウエハ1の周囲にウェハリング18を配置し、ウエハ1の上側に、粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)6を貼り付ける。そして、図5bに示すように、ウエハ1を再び裏返し、集積回路を形成した面が上側にくるようにし、バックグラインドテープ2を剥離する。次いで、図6に示すように、ダイシングブレード7等を用いてダイシングを行い、ウエハ1を複数個のチップに分割する。その後、図7及び図8に示すように、粘着シート6の裏面に突き上げピン9等を押し当てることで、チップ14を1個ずつダイシングテープ5から剥がし、剥がしたダイボンディングフィルム付きのチップをコレット8でピックアップする。そして、このチップを配線基板10上に搬送し、ダイボンディングする(図9)。
【0004】
ところが、このように薄いチップを使用する積層パッケージの組み立て工程において、ダイシングによって分割されたチップをダイシングテープから剥離、ピックアップする際に、チップに割れや欠けが生じ易い問題があった。具体的には、薄型化して剛性が低下したチップを、従来のコレット8でピックアップしようとする場合、図10に示すように、突き上げピン9を押し当てても、チップがダイボンディングフィルム4及びダイシングテープ5の表面に追従する形で変形してしまい、ダイシングテープ5の表面に対して十分な剥離角度が得られない為、剥離ができなくなる問題が発生していた。一方、突き上げピンの突き上げ高さを高くしたり、コレットの吸引を強くしたりする等して無理に剥離を試みると、チップの割れや欠けが発生してしまう傾向があった。このような問題を解決するために、薄いチップであっても、チップの破損に至るような強い吸引を用いずにチップを吸着してピックアップすることのできる、底部が平坦ではないコレットおよびそれを用いたピックアップ方法が提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−243834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示すような、底部が平坦ではないコレットを用いてピックアップを行なった場合、チップを配線基板上にダイボンディングする際に、チップの端部が十分に配線基板上に接着できない場合があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップをピックアップする場合であっても、割れ、欠け等の破損を生じることなく、従来のコレットを用いてチップを速やかにピックアップすることができる、半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、以下のような特徴を有する本発明を完成した。
(1)半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含む半導体装置の製造方法において、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
(2)樹脂膜は、25℃における伸び率が5〜100%である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(3)樹脂膜は、樹脂組成物を硬化して得られる膜である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(4)樹脂膜は、樹脂組成物を120〜280℃で加熱硬化して得られる膜である、上記記載の半導体装置の製造方法。
(5)樹脂組成物は、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミド、ポリベンゾオキサゾール及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記記載の半導体装置の製造方法。
(6)ダイボンディングフィルムは、厚さが5〜30μmである、上記記載の半導体装置の製造方法。
(7)ダイシングは、ブレードを用いて行なうものである、上記記載の半導体装置の製造方法。
(8)半導体チップをピックアップする工程は、4〜20本の突き上げピンを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップを突き上げる工程を含む、上記記載の半導体装置の製造方法。
(9)上記記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。
(10)上記記載の半導体装置の製造方法により得られる電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップをピックアップする場合であっても、割れ、欠け等の破損を生じることなく、従来のコレットを用いてチップを速やかにピックアップすることができる。また、本発明によれば、従来の粘着シートを用いた場合も、チップを破損することなく速やかにピックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、集積回路が形成された半導体ウエハの斜視図である。
【図2】図2は、半導体ウエハの側面図である。
【図3】図3は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体ウエハの研削工程を示す側面図である。
【図4】図4は、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハの研削工程により薄くなった半導体ウエハの側面図である。
【図5】図5aは、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハにダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを貼り付ける工程を示す側面図である。また、図5bは、従来の半導体装置の製造方法において、半導体ウエハのバックグラインドテープを剥離した状態を示す側面図である。
【図6】図6は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体ウエハのダイシング工程を示す側面図である。
【図7】図7は、従来の半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離する方法を示す側面図である。
【図8】図8は、従来の半導体装置の製造方法において、ダイシングテープから剥離されたダイボンディングフィルム付き半導体チップを、ピックアップする方法を示す側面図である。
【図9】図9は、従来の半導体装置の製造方法における、半導体チップのダイボンディング工程を示す側面図である。
【図10】図10は、従来の半導体装置の製造方法において、半導体チップをダイシングテープから剥離することができない状態を示す側面図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハに樹脂膜を形成した状態を示す側面図である。
【図12】図12は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハの裏面を研削するバックグラインド工程を示す側面図である。
【図13】図13は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、バックグラインと工程により厚みが薄くなった状態の半導体ウエハを示す側面図である。
【図14】図14aは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハにダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが貼り付けられた状態を示す側面図である。また、図14bは、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハからバックグラインドテープが剥離された状態を示す側面図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、半導体ウエハのダイシング工程を示す側面図。
【図16】図16は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離する方法を示す側面図である。
【図17】図17は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップがダイシングテープから剥離された状態を示す側面図である。
【図18】図18は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ダイボンディングフィルム付き半導体チップが配線基板にダイボンディングされた状態を示す側面図である。
【図19】図19は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、積層されたダイボンディングフィルム付き半導体チップが配線基板にワイヤボンディングされ、封止樹脂により封止された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0012】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程(樹脂膜形成工程)と、半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルム及びダイシングテープを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程(ダイシング工程)と、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程(ピックアップ工程)と、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程(ダイボンディング工程)と、積層パッケージを製造する工程と、を含む半導体装置の製造方法であり、半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法である。以下、本実施形態にかかる樹脂膜について説明をし、つづいて各工程について説明をする。
【0013】
[樹脂膜]
半導体ウエハの表面に形成される樹脂膜は、25℃における弾性率が、2〜10GPaであるが、2.5〜8GPaであることが好ましく、3〜5GPaであることがより好ましい。25℃における弾性率が2GPaより小さいと、樹脂膜の剛性が十分に得られないため、コレットによるピックアップ時に半導体チップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまう。これにより、粘着シートの表面に対して十分な剥離角度が得られず、ダイボンディングフィルム付き半導体チップをダイシングテープから剥離できなくなる傾向がある。また、25℃における弾性率が10GPaを超えると、樹脂膜が脆くなり、樹脂膜が半導体ウエハから剥離してしまったり、樹脂膜が割れてしまったりすることがある。また、樹脂膜に起因してチップの反りが大きくなり過ぎることにより、コレットによるピックアップが困難になる傾向がある。
【0014】
ここで、本明細書において、弾性率とは引張弾性率であり、例えば、(株)島津製作所製オートグラフAGS−100NHを用いて、引張試験をすることにより求めることができる。
【0015】
樹脂膜の膜厚は、3〜20μmであるが、4〜15μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。樹脂膜の膜厚が3μmより小さいと、樹脂膜の剛性が十分に得られないため、コレットによるピックアップ時に半導体チップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまう。これにより、粘着シートの表面に対して十分な剥離角度が得られず、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを粘着シートから剥離ができなくなる傾向がある。また、膜厚が20μmを超えると、半導体ウエハの反りが大きくなるため、樹脂膜が半導体ウエハから剥離してしまったり、半導体ウエハ輸送時に半導体ウエハ自体が落下してしまったりするという問題が生じる傾向がある。これは、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張率(CTE)の違いによるものだと考えられる。
【0016】
ここで、樹脂膜の膜厚は、分光エリプソメータ RE− 3100(日立ハイテク製)又は触針式表面形状測定器 Dektak V320 Si(Veeco製)等で測定することができる。
【0017】
また、この樹脂膜の伸び率は、5〜100%であることが好ましく、5〜90%であることがより好ましく、8〜80%であることがさらに好ましい。伸び率が5%より小さい場合、ピックアップ時の突き上げによる半導体チップの変形に伴い、半導体チップ及び樹脂膜に割れが生じやすくなる。また、100%を超えると、ピックアップ時に半導体チップが粘着シートの変形に追従しやすくなり、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを粘着シートから剥離しにくくなる可能性がある。
【0018】
ここで、本明細書において、伸び率とは破断伸びであり、例えば、(株)島津製作所製オートグラフAGS−100NHを用いて、引張試験をすることにより求めることができる。
【0019】
このような樹脂膜は、樹脂組成物を好ましくは120〜280℃、より好ましくは160〜250℃、さらに好ましくは160〜225℃で加熱硬化して得られるものである。加熱硬化温度が280℃より高い樹脂であると、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張係数(CTE)の違いにより、半導体ウエハの反りが発生し、ウエハの割れを引き起こす可能性がある。また、加熱硬化温度が120℃より低い樹脂であると、樹脂の硬化が十分に進行しないため、樹脂に十分な剛性を与えることができずに、後述するピックアップ工程において半導体チップをピックアップしようとする場合、突き上げピンを押し当てても、粘着テープから半導体チップを剥離することができなくなる傾向がある。
【0020】
なお、上記事情に鑑み、本実施形態において使用される半導体ウエハの熱膨張係数(CTE)が3〜10ppm/℃であることから、樹脂膜の熱膨張係数は3〜65ppm/℃であることが好ましく、3〜55ppm/℃であることがより好ましく、3〜40ppm/℃であることがさらに好ましい。なお、熱膨張係数は、例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定することができる。
【0021】
また、ダイボンディング工程において加熱した際に、樹脂膜に十分な機械特性を与えるという観点から、樹脂膜のガラス転移温度(Tg)は100〜400℃であることが好ましく、150〜350℃であることがより好ましく、180〜300℃であることがさらに好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定することができる。
【0022】
このような樹脂組成物としては、硬化後の樹脂膜の弾性率が2〜10GPaであれば特に制限されないが、耐熱性及び機械特性の観点から、ポリイミド、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)、ポリベンゾオキサゾール、ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。通常、これらの樹脂は、感光剤、架橋剤、酸発生剤及び溶剤等を加えた樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0023】
これらの樹脂のうち、機械特性の観点から、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)、ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)、及びフェノール樹脂を用いることが好ましく、低温で硬化でき、良好な弾性率を与える観点から、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
ポリアミド酸は例えば、下記一般式(I)で表されるものを用いることができる。
【化1】
(式中、Xは二価の有機基、単結合、−O−又は−SO2−を示し、Yは四価の有機基を示す。Rは水素原子又は1価の有機基を示す。)
【0025】
ポリアミド酸は、一般的に、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン類との反応を行うことにより合成できる。
【0026】
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(4,4’−オキシジフタル酸)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物及び2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二酸無水物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
ジアミン類としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。具体的には、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、2,2−ジメチルベンジジン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メチレン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、4,4−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,1,3,3,−テトラメチル1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン及びポリ(プロピレングリコール)ジアミン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、一般式(I)においてRが1価の有機基である場合、Rは下記一般式で表される有機基であれば、高感度の感光性を付与できるため好ましい。
【化2】
(但し、R10、R11及びR12は、水素原子、アルキル基、フェニル基、ビニル基及びプロペニル基からなる群よりそれぞれ独立に選択された基であり、R13は2価の有機基を示す。なお、アルキル基としては炭素原子数1〜4のものが好ましい。また、R13で示される2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等の炭素原子数1〜4のアルキレン基が好ましい。)
【0029】
また、ポリアミド酸を合成する際の有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0030】
ポリヒドロキシアミドは例えば、下記一般式(II)で表されるものを用いることができる。なお、耐熱性、耐薬品性及び機械特性に優れ、アルカリ水溶液への溶解性が優れているという観点から、ポリヒドロキシアミドを含有する樹脂組成物を用いることが好ましい。
【化3】
(式中、Uは二価の有機基、単結合、−O−又は−SO2−を示し、Vは二価の有機基を示す。)
【0031】
なお、一般式(II)で表される構造単位において、同一のベンゼン環上に結合しているヒドロキシ基とアミド基は、加熱工程における脱水閉環により、耐熱性、機械特性及び電気特性に優れるオキサゾール環に変換される。
【0032】
ポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸類とヒドロキシ基を有するジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸類をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0033】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸類とハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン及びベンゼン等が使用できる。
【0034】
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体のモル数に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。また、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0035】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用いることができる。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0036】
ジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ジカルボン酸類としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
ポリアミド酸及びポリヒドロキシアミドの分子量は、重量平均分子量で3000〜200000が好ましく、5000〜100000がより好ましく、10000〜50000がさらに好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0039】
低温(例えば、225℃以下)で硬化ができるという観点からは、フェノール樹脂を含有する樹脂組成物を用いることが好ましく、ノボラック型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物を用いることがより好ましい。
【0040】
フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂を特にノボラック型フェノール樹脂という。ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂及びフェノール−ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。
【0041】
フェノール樹脂を得るために用いられるフェノール誘導体としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール及び3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール及び2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール及びアリルフェノール等のアルケニルフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール及びピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン;ビスフェノールA及びビスフェノールF等のビスフェノール;α−又はβ−ナフトール等のナフトール誘導体;p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール及びp−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体;p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニルブタン酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸及びジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール誘導体;等が挙げられる。なお、ビスヒドロキシメチル−p−クレゾール等のフェノール誘導体のメチロール化物を、フェノール誘導体として用いてもよい。
【0042】
さらに、フェノール樹脂は、上述のフェノール又はフェノール誘導体をm−キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と縮重合して得られる生成物であってもよい。この場合、縮重合に用いられるフェノール誘導体に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
【0043】
上述のフェノール誘導体及びフェノール化合物以外の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2−ホルミルプロピオン酸及び2−ホルミルプロピオン酸メチル等から選ばれる。なお、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体、並びにアセトン、ピルビン酸、レプリン酸、4−アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のケトン類を反応に用いても良い。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
フェノール樹脂の重量平均分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性や、感光特性(感度、及び解像度)と機械特性(破断伸び、弾性率及び残留応力)とのバランスを考慮すると、500〜150000であることが好ましく、500〜100000であることがより好ましく、1000〜50000であることが特に好ましい。
【0046】
本実施形態で用いる樹脂組成物は、上述のポリヒドロキシアミド、フェノール樹脂等の樹脂とともに、感光剤を含有することが好ましい。ここでいう感光剤とは、樹脂組成物を基板上に塗布し、形成した感光性樹脂膜に光を照射した場合に、光に反応して、照射部と未照射部の現像液に対する溶解性に差異を付与する機能を有するものである。感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
【0047】
このような感光剤としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物中の感光剤の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差及び感度を良好にする点から、樹脂100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、8〜80質量部がより好ましい。
【0049】
樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン及びメチルアミルケトン等が挙げられ、通常、樹脂組成物中の他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。この中でも各成分の溶解性と樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
【0050】
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に樹脂組成物中の溶剤の含有量が、樹脂100質量部に対して20〜90質量部となるように調整されることが好ましい。
【0051】
樹脂組成物は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、樹脂組成物を塗布する工程、またはその後必要により露光及び現像後に加熱処理する工程において、アルカリ可溶性樹脂と反応(架橋反応)したり、又は架橋剤自身が重合したりする。これにより、樹脂組成物を比較的低い温度(例えば、225℃以下)で硬化した場合も、良好な機械特性、薬品耐性及びフラックス耐性を付与させることができる。硬化後の樹脂膜が良好な機械特性を有することにより、半導体チップに十分な剛性を与えることができ、半導体チップを破損すること無くピックアップすることができる。
【0052】
架橋剤としては、下記一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)で示される化合物が挙げられる。
【化4】
(式中、Xは単結合、−O−、−SO2−又は1〜4価の有機基を示し、R11は水素原子又は一価の有機基を示し、R12は一価の有機基を示す。nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【0053】
【化5】
(式中、Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、水素原子の一部がヒドロキシル基で置換された炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に一価の有機基を示し、R15及びR16は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示す。r及びtは各々独立に1〜3の整数であり、s及びuは各々独立に0〜3の整数である)
【0054】
【化6】
(式中、R17及びR18は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R18は互いが結合することで環構造となっていてもよい。)
【0055】
【化7】
(式中、R17は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R17は互いが結合することで環構造となっていてもよい。)
【0056】
【化8】
(式中、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は各々独立に水素原子、メチロール基又はアルコキシメチル基を示す。)
【0057】
尚、一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)において、一価の有機基としては、炭素原子数1〜10の、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基及びヒドロキシアルコキシ基、並びにそれらの水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが好ましいものとして挙げられる。この中でも一般式(IX)で表される化合物を用いると、樹脂組成物を200℃以下の低温で硬化した場合に、優れた耐薬品性を有する硬化膜が得られるため、好ましい。
【0058】
樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、現像時間、未露光部残膜率の許容幅及び硬化膜物性の点から、樹脂100質量部に対して1〜50質量部が好ましい。また、樹脂組成物を250℃以下で硬化した場合の、硬化膜の良好な薬品耐性及びフラックス耐性を発現させる観点から、架橋剤の含有量は、樹脂100質量部に対して15〜50質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0059】
樹脂組成物は、さらに必要に応じてシランカップリング剤、溶解促進剤、溶解阻害剤、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。
【0060】
[樹脂膜形成工程]
樹脂膜形成工程では、上述の樹脂組成物を用いて、図11に示すように半導体ウエハ1の一方の面(集積回路が形成されている面)に樹脂膜13を形成する。この工程は、乾燥工程、必要に応じパターン形成工程、バックグラインド工程及び加熱工程を備えている。
【0061】
乾燥工程では、単結晶シリコンからなる半導体ウエハ1の表面に公知の製造方法に従って集積回路を形成し、その後、樹脂組成物をスピンナー等を用いて回転塗布し、樹脂組成物膜を形成する。次に必要に応じてホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。この際の加熱温度は80〜150℃であることが好ましい。この加熱による乾燥工程をプリベークという。
【0062】
続いて、必要に応じて、樹脂組成物膜にパターンを形成する。パターン形成工程は、露光工程と現像工程を備える。露光工程では、まず、樹脂組成物膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射することにより露光を行う。露光装置としては、例えば、高圧水銀灯又は低圧水銀灯を有する露光装置、365nm(i線)の単色光での照射が可能なI線ステッパー、平衡露光機、投影露光機及びスキャナー露光機等を用いることができる。
【0063】
露光工程後、現像工程を行なう。現像工程は、露光工程後の樹脂組成物膜を現像液で処理することにより、パターン形成された樹脂組成物膜を得る工程である。一般的に、ポジ型の樹脂組成物を用いた場合には、露光部を現像液で除去し、ネガ型の樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
【0064】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられ、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。これらの水溶液の濃度は、0.1〜10質量%とされることが好ましい。なお、現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で含有することができる。
【0065】
次いで、加熱工程を行なう。(場合によりパターンが形成された)樹脂組成物膜を加熱処理することにより、樹脂がポリアミド酸である場合は脱水閉環しイミド環を与え、樹脂がポリヒドロキシアミドである場合は脱水閉環しオキサゾール環を与える。また、同時に樹脂の官能基同士、又は、樹脂と架橋剤間に架橋構造等を形成され、樹脂組成物膜が硬化した樹脂膜を得ることができる。
【0066】
加熱工程における加熱温度は、120〜280℃であることが好ましく、160〜250℃であることがより好ましく、160〜225℃であることがさらに好ましい。280℃より高い温度であると、半導体ウエハと樹脂膜との熱膨張係数(CTE)の違いにより、半導体ウエハの反りが発生し、ウエハの割れを引き起こす可能性がある。また、120℃より低い温度であると、樹脂の硬化が十分に進行しないため、樹脂に十分な剛性を与えることができずに、後述するピックアップ工程において半導体チップをピックアップしようとする場合、突き上げピンを押し当てても、粘着テープから半導体チップを剥離することができなくなる傾向がある。
【0067】
加熱工程に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉及びマイクロ波硬化炉等が挙げられる。また、加熱雰囲気としては、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので好ましい。
【0068】
また、加熱装置として、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置又は周波数可変マイクロ波硬化装置を用いた場合は、半導体ウエハやデバイスの温度を、例えば、220℃以下に保ったままで、樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
【0069】
なお、マイクロ波を用いて硬化を行う場合、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができるため、好ましい。
【0070】
樹脂組成物中の樹脂を脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。このようにして、図11のように半導体ウエハ1の表面に樹脂膜13が形成される。
【0071】
[バックグラインド工程]
バックグラインド工程では、半導体ウエハ1の厚さを薄くする。まず、図12に示すように、半導体ウエハ1の一方の面に形成した樹脂膜13の上に、集積回路を保護するための保護層(バックグラインドテープ)2を形成する。そして、この保護層2を形成した面が下側になるように、半導体ウエハ1を裏返し、チャックテーブルと呼ばれる台に半導体ウエハ1を固定する。この状態で、半導体ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない他方の面)をグラインダ3で研削する。続いて、この研削によって生じた裏面のダメージ層を、ウエットエッチング、ドライポリッシング又はプラズマエッチング等の方法によって除去することにより、半導体ウエハ1の厚さを100μm以下、例えば、15〜75μm程度まで薄くする。ウエットエッチング、ドライポリッシング又はプラズマエッチング等の処理方法は、半導体ウエハ1の厚さ方向に進行する処理速度が、グラインダ3による研削の速度に比べて遅い反面、半導体ウエハ1内部に与えるダメージが、グラインダ3による研削に比較して小さいだけでなく、グラインダ3による研削で発生した半導体ウエハ1内部のダメージ層を除去することができ、半導体ウエハ1及び同ウエハから切り出される半導体チップが割れにくくなるという効果がある。このようにして図13に示すような厚さが薄くなった半導体ウエハ1を得る。
【0072】
[ダイシング工程]
ダイシング工程では、半導体ウエハ1の他方の面に、ダイボンディングフィルム4及びダイシングテープ5を備える粘着シート6を貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する。まず、図14aに示すように、半導体ウエハ1の周囲を囲うようにウェハリング(リングフレーム)18と呼ばれるリング形状の部材を配置し、半導体ウエハ1の裏面(集積回路が形成されていない他方の面)に粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)6を貼付ける。ウェハリング18は粘着シート6を固定するために用いられる。なお、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとは、ダイシングテープ5とダイボンドフィルム4とが一体型になったフィルムである。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとしては、例えば、ハイアタッチFH−9011(日立化成工業(株)製)などを用いることができる。
【0073】
なお、粘着シート6中のダイボンディングフィルム4は、厚さが5〜30μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。厚さが5μm未満であると、基板及びチップ表面における段差埋め込み性が悪くなるため、ボイドが発生するなど信頼性が悪化するとなる傾向があり、厚さが30μmを超えると、ダイシング性及びピックアップ性が悪化するとなる傾向がある。
【0074】
ついで、図14bのように、半導体ウエハ1を再び裏返し、半導体ウエハ1の集積回路が形成された面が上側にくるようにし、バックグラインドテープ2を取り除く。次に、図15に示すように、半導体ウエハ1を、スクライブラインによって区画されたチップごとに分割する。ダイシングは、ブレードを用いて行うことが好ましいが(ブレードダイシング)、レーザーフルカットダイシング又はレーザーステルスダイシング等を用いて行なうこともできる。なお、前述のバックグラインド工程は、スクライブラインに200μm程度の深さに切込みを入れた後に行うこともできる(先ダイシング)。
【0075】
[ピックアップ工程]
ピックアップ工程では、コレットを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする。すなわち、図16及び17に示すように、ダイシングテープ5上から、分割された複数個のダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を個々にピックアップする。このダイボンディングフィルム付き半導体チップ15のピックアップには、コレット8と称する専用治具(半導体チップに直接接触する吸着用ヘッド部)を有するダイボンダー又はダイピッカーと称する装置(以下、総称してダイボンダーとする)を使用する。半導体チップはコレット8に吸着されたままダイシングテープ5から剥離されることで、ダイボンディングフィルム4付きの状態でピックアップがなされ(ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15)、次いで図18に示される配線基板10ヘダイボンディングする後工程へと移送される。なお、ピックアップ工程では、ダイシングテープ5からダイボンディングフィルム付き半導体チップ15が剥離しやすいように、ダイシングテープ5の下方から突き上げピン9によりダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を突上げる。このようにして、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15に対するダイシングテープ5表面の剥離角度が大きくなるようにすることが一般的に行われる。この際、4〜20本の突き上げピンを用いて半導体チップを突き上げることが好ましい。
【0076】
突き上げピン9の突き上げ高さ(ストローク)は、例えば、0.1〜0.7mm程度であるが、チップのサイズに応じて調整することが好ましい。例えば、チップのサイズが大きい場合は、チップとダイシングテープとの接触面積が大きく、チップとダイシングテープ間の粘着力が大きいため、突き上げ量を大きくする必要がある。一方、チップのサイズが小さい場合は、チップとダイシングテープとの接触面積が小さく、チップとダイシングテープ間の粘着力が小さいため、突き上げ量が小さくても、チップは容易に剥離する。なお、ダイシングテープに用いられる粘着材は、製造元や品種によって粘着力に差がある。したがって、チップのサイズが同じ場合でも、粘着力の大きい粘着剤を使用している場合には、突き上げ量を増やす必要がある。
【0077】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、半導体チップに特定組成を有する樹脂膜13が形成されていることで、厚さが15〜75μmの薄い半導体チップを用いた場合も、速やかにピックアップを行なうことができ、チップ15の破損を防ぐことができる。
【0078】
なお、樹脂膜13の弾性率が2GPaより小さいと、突き上げピンによる突上げを行ってもダイボンディングフィルム付き半導体チップ15がダイシングテープ5の表面に追従する形で変形してしまい、ダイシングテープ表面に対して十分な剥離角度が得られない。このため、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15をダイシングテープ5から剥離しにくくなり、速やかなピックアップができなくなる。また、無理に突き上げ量を増やすと、半導体チップの割れや欠けが発生しやすくなる。
【0079】
[ダイボンディング工程]
ダイボンディング工程では、ダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を配線基板10上にダイボンディングして実装する。ピックアップ工程においてピックアップされたダイボンディングフィルム付き半導体チップ15は、図18に示すように、ダイボンディング工程において、ダイボンドフィルム4を介して配線基板10上に実装される。
【0080】
[積層パッケージを製造する工程]
積層パッケージを製造する工程では、ダイボンダーを用いてダイボンディングフィルム付き半導体チップ15を必要な段数積層する。なお、積層された後、ワイヤボンディング可能な機械強度を得るため、及びダイボンドフィルムの発泡を防ぐために必要に応じて加熱工程を入れる。一般的に、配線基板10の片面には、2〜8段の半導体チップが積層される。その後、図19に示すように、各チップのボンディングパッド17と配線基板10の電極16がワイヤ11で電気的に接続される。その後、配線基板10をモールド工程に搬送し、積層したチップ15全体をモールド樹脂12で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0081】
[半導体装置及び電子部品]
本実施形態の半導体装置の製造方法により、半導体装置及び電子部品を得ることができる。このような半導体装置としては、SSD及びHybrid HDD等が挙げられる。また、電子部品としては、携帯電話(スマートフォン)、デジタルメディアプレーヤー及びSDカード等に使われるフラッシュメモリ等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を詳細に述べるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0083】
[合成例]
(合成例1:炭素原子数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(乾性油)変性フェノール樹脂A1の合成)
フェノール100質量部、亜麻仁油43質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、植物油変性フェノール誘導体を得た。次いで、植物油変性フェノール誘導体130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌した。次いで、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した後、反応液に無水コハク酸29g及びトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温(25℃)まで冷却し、反応生成物である炭素原子数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂A1を得た(酸価:120mgKOH/g)。この変性フェノール樹脂A1について、GPC法(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法)により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ25000であった。
【0084】
(合成例2:アクリル樹脂B1の合成)
攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに、トルエン75g、イソプロパノール(IPA)75gを秤取し、別途に秤取したアクリル酸ブチル(BA)85g、ラウリルアクリレート(DDA)24g、アクリル酸(AA)14g、及び1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イルメタクリレート(商品名:FA−711MM、日立化成工業株式会社製)7.9gの重合性単量体、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを加えた。室温にて約270rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を停止し、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を14時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂B1を得た。この際の重合率は98%であった。また、このアクリル樹脂B1について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ36000であった。
【0085】
(合成例3:ポリイミド前駆体P1の合成)
攪拌機及び温度計を備えた200mlの四口フラスコに、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)9.30g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)7.81g、ピリジン4.75g、ヒドロキノン0.01g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)70mlを入れ60℃で撹拌すると、2時間で透明な溶液になった。この溶液を室温でその後7時間撹拌した後、フラスコを氷で冷却し、塩化チオニル8.57g(0.072モル)を10分で滴下した。その後室温で1時間撹拌し、酸クロライドを含む溶液を得た。一方、別の200mlの四口フラスコに、2,2−ジメチルベンジジン(DMAP)6.37g(0.03モル)、ピリジン5.06g(0.064モル)、ヒドロキノン0.01g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)50mLを入れフラスコを氷で冷却し撹拌しながら(10℃以下を保って)、上記酸クロライドを含む溶液を1時間かけてゆっくりと滴下した。その後室温で1時間撹拌し、1リットルの水へ投入して、析出したポリマを濾取して水で2度洗い、真空乾燥してポリイミド前駆体(ポリアミド酸エステル)P1を得た。このポリイミド前駆体P1について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ20000であった。また、得られたポリイミド前駆体P1の溶液を乾燥させたものを、KBr法により、赤外吸収スペクトル(日本電子(株)製、JIR−100型)を測定したところ、いずれも、1600cm−1付近にアミド基のC=Oに起因する吸収と、3300cm−1付近にN−Hに起因する吸収が確認された。
【0086】
(合成例4:ポリベンゾオキサゾール前駆体P2の合成)
攪拌機及び温度計を備えた500mlのフラスコに、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル23.9gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた500mlのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30gとm−アミノフェノール2.18gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン9.48gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)P2を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体P2について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ17600であり、分散度は1.6であった。
【0087】
(合成例5:ポリイミド前駆体P3の合成)
撹拌機、温度計及び窒素導入管を備えた100mlのフラスコに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.9g及びN−メチル−2−ピロリドン60gを加え、窒素流通下、室温で撹拌溶解した後、この溶液にオキシジフタル酸無水物16.5gを添加し、5時間撹拌し粘稠なポリイミド前駆体(ポリアミド酸)P3の溶液を得た。ポリイミド前駆体P3について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ40000であった。
【0088】
(合成例6:ポリベンゾオキサゾール前駆体P4の合成)
攪拌機及び温度計を備えた200mlのフラスコに、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド5.64gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)P4を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体P4について、GPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めたところ31600であり、分散度は2.0であった。
【0089】
[樹脂組成物の調製]
(樹脂組成物I)
合成例1で合成した変性フェノール樹脂A1と、クレゾールノボラック樹脂A2(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m−クレゾール/p−クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=13000、旭有機材工業(株)製、商品名「EP4020G」)を質量比でA1:A2=80:20となるように用いた(これをA成分という)。A成分100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を10質量部、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル(株)製、商品名「ニカラックMW−30HM」)10質量部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタンの1−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、商品名「TPPA528」)10質量部、トリメチルスルホニウムメチルスルフェート(フルオロケム社製)を1質量部、乳酸エチルを160質量部の割合で配合した。これを樹脂組成物Iとした。
【0090】
(樹脂組成物II)
合成例3で合成したポリイミド前駆体P1 100質量部に対して、(4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン1質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)20質量部、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア6質量部、下記一般式(XI)で表される化合物を6質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)140質量部の割合で配合した。これを樹脂組成物IIとした。
【化9】
【0091】
(樹脂組成物III)
合成例4で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体P2 100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を11質量部、下記一般式(XII)で表される化合物15質量部、γ−ブチロラクトン160質量部を配合した。また溶解性を調整するためにDPINヨードニウム塩を適宜添加し、未露光部の溶解速度が各サンプルとも20nm/s程度でほぼ一定となるようにした。これを樹脂組成物IIIとした。
【化10】
【0092】
(樹脂組成物IV)
合成例5で合成したポリイミド前駆体P3の溶液を樹脂組成物IVとした。
【0093】
(樹脂組成物V)
合成例6で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体P4 100質量部に対して、合成例2で合成したアクリル樹脂B1を11質量部、下記一般式で表される化合物10質量部、NMP150質量部を配合した。また溶解性を調整するために下記一般式(XIII)で表されるヨードニウム塩を適宜添加し、未露光部の溶解速度が各サンプルとも20nm/s程度でほぼ一定となるようにした。これを樹脂組成物Vとした。
【化11】
【0094】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
[樹脂膜形成工程]
東京エレクトロン(株)製CLEAN TRACK ACT12を用いて、上記の方法で得られた樹脂組成物I〜Vを、ウエハの一方の表面(集積回路を形成している面)に回転塗布した。その後、120℃で3分プリベークを行い、樹脂組成物膜を形成した。ウエハとしては、半導体ウエハ(厚み:775μm)の表面に、CVD法で成膜したSiO膜1μm、その上に、PVD法で成膜したAl膜(Siを1wt%含有)1μm、さらにその上にCVD法で成膜したSiN膜0.5μmを積層したものを用いた。
【0095】
その後、光洋サーモシステムズ社製イナートガスオーブンINH−9CD−Sを用いて、窒素雰囲気下、樹脂組成物の種類に応じて、表1に示すように180〜350℃で加熱して樹脂組成物膜を硬化(加熱硬化)させ、膜厚7〜25μmの樹脂膜を得た。各実施例及び各比較例における、樹脂膜の膜厚は表1に示した。
【0096】
[バックグラインド工程]
まず、(株)タカトリ製ATM3000EFを用いて、バックグラインドテープをウエハの一方の表面(集積回路を形成している面)に貼り付けた。バックグラインドテープは日立化成工業(株)製MS−2003を用いた。次に、(株)DISCO製 DGP8761 Fully Automatic Grinder/Polisherを用いてバックグラインドを行い、(株)DISCO製DP−08を用いてウエハの厚さ(ウエハ総厚)が30μmとなるように仕上げた。また、(株)DISCO製 DFM2800 Fully Automatic Multifunction Wafer Mounterを用いて、ウエハとダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとを120℃で貼り付けた。なお、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとしては、日立化成工業(株)製 FH−9011(フィルム厚み:40μm)を用いた。
【0097】
[ダイシング工程]
次いで、ウエハのダイシングを行い、10mm×10mmサイズの、ダイボンディングフィルム付きチップを複数得た。ダイシングは(株)DISCO製 DFD6361 Fully Automatic Dicing Sawを用いてフルオートで行った。ブレードは(株)DISCO製 ZH05 SD4800−N1−70、回転数は35000rpm、切り込み量は粘着テープの厚みに対し25μmとし、送り速度は30mm/sで行った。
【0098】
[弾性率及び伸び率の測定]
樹脂膜の弾性率及び伸び率は、次のようにして測定した。すなわち、樹脂膜付きのウエハを、4.9%フッ酸水溶液に浸漬し、ウエハから樹脂膜を剥離した。この樹脂膜を水洗、乾燥し、弾性率及び伸び率の測定を行なうためのサンプルを得た。弾性率(引張弾性率)及び伸び率(破断伸び)は、(株)島津製作所製オートグラフAGS−H 100Nの引張試験により求めた。サンプルの大きさは10mm×60mm、チャック間距離20mm、引張速度5mm/min、測定温度25℃で測定を行なった。なお、硬化膜の厚さはそれぞれ表1のとおりであった。測定結果を表1に示す。
【0099】
[熱膨張率の測定]
樹脂膜の熱膨張率(CTE)は、セイコー社製TMA/SS6000の熱機械測定装置を用いて、測定した。具体的には、硬化膜を2mm×3cmに切り取り、セイコー社製TMA/SS6000の熱機械測定装置を用いて、10g/分の加重をかけながら30〜420℃まで(昇温速度5℃/分)加熱した。その際の100〜200℃間の硬化膜の伸び率の傾きを測定してCTEとした。測定結果を表1に示す。
【0100】
[ガラス転移温度の測定]
樹脂膜のガラス転移温度(Tg)は、セイコーインスツル株式会社製TMA/SS6000を用い、昇温速度5℃/分にて熱膨張係数の変曲点より求めた。測定結果を表1に示す。
【0101】
[ピックアップ工程:ピックアップ性の評価]
ダイシング工程により分割された個々のチップのピックアップ性を評価した。上記方法で作製したチップを、(株)ルネサス東日本セミコンダクタ社製フレキシブルダイボンダーDB−730を使用してピックアップし、ピックアップ性の評価を行った。使用したピックアップ用コレットはマイクロメカニクス製RUBBER TIP 13−087E−33(サイズ:10×10mm)、突上げピンはマイクロメカニクス製EJECTOR NEEDLE SEN2−83−05(直径:0.7mm、先端形状:直径350μmの半円)を用いた。突上げピンの配置はピン中心間隔4.2mmで9本配置した。ピックアップ時のピンの突上げ速度は、10mm/sとした。ピックアップ時の突き上げ高さは、0.35mmから0.45mmまで、0.025mmずつ高さを変えた。
【0102】
評価にあたっては、まず突き上げ高さ0.35mmにおいて10回ピックアップを行い、すべて成功した場合ピックアップが可能であったとし、ピックアップミス、チップ割れ等の不具合が1チップでも発生した場合をピックアップ不可とした。ピックアップが不可であった場合は、突上げ高さを0.025mm上げて再度ピックアップをし、10回のピックアップが全て成功するか、又は突上げ高さが0.45mmになるまでこの操作を繰り返した。
【0103】
ピックアップが可能な突き上げ高さの最小値が0.4mmより小さい場合をA評価、0.4〜0.45mmの場合をB評価、0.45mmより大きい突き上げ高さが必要だった場合をC評価とした。すなわち、低い突き上げ高さでピックアップが可能なものほど、ピックアップを速やかに行なうことができ、ピックアップ性が良好であると評価した。評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1〜6のように、25℃での弾性率が2〜10GPa、膜厚が3〜10μmの樹脂膜を備えるチップを用いた場合、チップを破損すること無く、速やかにピックアップを行なうことができた。一方、比較例1のように、弾性率が2GPaより小さい場合、突上げ時にチップが粘着シートの表面に追従する形で変形してしまい、良好なピックアップができなかった。また、樹脂膜の膜厚が3μmより小さい比較例2の場合も、同様に良好なピックアップができなかった。
【符号の説明】
【0106】
1…半導体ウエハ(ウエハ)、2…バックグラインドテープ(保護層)、3…グラインダ、4…ダイボンディングフィルム、5…ダイシングテープ、6…粘着シート(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)、7…ダイシングブレード、8…コレット、9…突き上げピン、10…配線基板、11…ワイヤ、12…モールド樹脂、13…樹脂膜、14…半導体チップ(従来の半導体チップ)、15…半導体チップ(樹脂膜を有する半導体チップ)、16…電極、17…ボンディングパッド、18…ウェハリング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、
該半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、
コレットを用いて前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、
前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含む半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、
前記樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂膜は、25℃における伸び率が5〜100%である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂膜は、樹脂組成物を硬化して得られる膜である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂膜は、樹脂組成物を120〜280℃で加熱硬化して得られる膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミド、ポリベンゾオキサゾール及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ダイボンディングフィルムは、厚さが5〜30μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ダイシングは、ブレードを用いて行なうものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体チップをピックアップする工程は、4〜20本の突き上げピンを用いて前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップを突き上げる工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法により得られる電子部品。
【請求項1】
半導体ウエハの一方の面に樹脂膜を形成する工程と、
該半導体ウエハの他方の面に、ダイボンディングフィルムを備える粘着シートを貼り合せてダイシングを行ない、ダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製する工程と、
コレットを用いて前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップをピックアップする工程と、
前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップを配線基板上にダイボンディングする工程と、を含む半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウエハは、厚みが15〜75μmであり、
前記樹脂膜は、25℃における弾性率が2〜10GPaであり、膜厚が3〜20μmである、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂膜は、25℃における伸び率が5〜100%である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂膜は、樹脂組成物を硬化して得られる膜である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂膜は、樹脂組成物を120〜280℃で加熱硬化して得られる膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミド、ポリベンゾオキサゾール及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ダイボンディングフィルムは、厚さが5〜30μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ダイシングは、ブレードを用いて行なうものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体チップをピックアップする工程は、4〜20本の突き上げピンを用いて前記ダイボンディングフィルム付き半導体チップを突き上げる工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法により得られる電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−105834(P2013−105834A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247512(P2011−247512)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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