説明

半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板及びその製造方法

【課題】高い熱伝導特性と高い強度特性を有する、半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板と、それを有利に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】焼結助剤が添加されていない原料組成物を焼成して得られた、ZrO2 :2〜15重量%、Y2 3 :0.01〜1重量%及びAl2 3 :残部からなる焼結基板であって、Al2 3 の平均結晶粒子径が2μmよりも大きく、7μm以下であると共に、Al2 3 粒界長さが粒界総長さの60%以上となるように構成して、熱伝導率が30W/m・K以上であり且つ曲げ強度が500MPa以上である特性を付与した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板及びその製造方法に係り、特に、パワートランジスタモジュール等の半導体装置において、半導体チップがハンダ付け等によって搭載せしめられる、優れた特性を有するアルミナジルコニア焼結基板、及びそれを有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータやコンバータ等のパワートランジスタモジュールの如き半導体装置においては、半導体チップが搭載される絶縁基板として、アルミナ(Al2 3 )基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、及び窒化ケイ素(Si3 4 )基板の3種のセラミック基板が実用化されて、用いられてきている。また、そのようなセラミック基板は、放熱基板としての機能も有しており、そのために、かかる基板の少なくとも一方の面には、箔状の薄いCu板やAl板の如き金属板が接合されることとなるが、加熱時の熱膨張差によって、セラミック基板には大きな負荷がかかることとなる。特に、近年における半導体装置の半導体チップに対する高電圧及び高電流の通電によって、それに耐え得る基板であることが必要とされ、そのために、高い強度と高い熱伝導性を有するものであることが要請されている。
【0003】
しかしながら、上記実用化されている3種のセラミック基板のうち、AlN基板やSi3 4 基板は、材料コストが高いという問題に加えて、金属板の接合工程において特別な管理が必要となる等の問題が内在している。一方、Al2 3 基板は、材料コストが安価なために、汎用品として広く用いられてきているが、強度及び熱伝導性において今一つ充分ではなく、高電圧や高電流が負荷される半導体装置におけるセラミック基板として用いるには、不充分なものであった。
【0004】
一方、特開2000−344569号公報には、ジルコニアを含有せしめた高強度アルミナ質焼結体とその製造方法が明らかにされ、そこでは、アルミナ粉末の表面にZr−Al系水酸化物を被着させた準原料粉体を作製した後、これを仮焼きして、表面に正方晶及び/又は立方晶からなるジルコニアが被着された原料粉体を得て、次いで、この原料粉体を所定形状に成形した後、焼成することにより、ジルコニアの平均結晶粒子径が0.1〜1.0μm、アルミナの平均結晶粒子径が0.5〜2.0μmであり、且つ焼結体表面粗さ(Ra)が0.2μm以下である高強度アルミナ質焼結体が得られることが明らかにされている。そして、そこでは、700MPaを超える曲げ強度を有するアルミナ質焼結体も開示されてはいるが、その熱伝導特性については、そこで得られるアルミナ質焼結体が、ベアリングボール、プランジャロッド等の摺動部材や粉砕部材、切削・研磨工具等の用途を対象としたものであるために、何等明らかにされておらず、また、その熱伝導特性を高めるための具体的技術手段についても、何等明らかにされてはいない。
【0005】
また、特開平8−195450号公報には、半導体装置用基板として、アルミナを主成分として、これに、ジルコニアと、イットリア等の添加剤を一定量加えることによって得られる高温焼成体からなる基板が明らかにされ、それは、アルミナ単体のセラミック基板と比べて、曲げ強度が高く、また熱伝導率も一層向上した特性を有するものであって、具体的には、熱伝導率:40W/m・K及び曲げ強度:400MPaなる特性を有していることが、開示されている。
【0006】
しかしながら、熱伝導率の高い基板であっても、その曲げ強度が400MPa程度のものでは、汎用品である96%Al2 3 基板と同等の強度に過ぎないものであって、コスト的にも、メリットのないものである。また、高強度基板において高い熱伝導率を得るためには、Al2 3 結晶粒子を粒成長させて、熱伝導の障壁となる粒界ガラス層を低減させる必要があるのであるが、その際に惹起され易いAl2 3 結晶粒子の異常粒成長は、強度低下の致命的な要因となるところから、より高い熱伝導率とより高い曲げ強度を同時に備えたAl2 3 系基板は未だ実現されておらず、そのために、そのような両特性を同時に備えた基板の実現が課題となっているのである。そして、その目標とする具体的な特性値としては、熱伝導率が30W/m・K以上、且つ曲げ強度が500MPa以上とされている。
【0007】
なお、上記した特開平8−195450号公報においては、Al2 3 を主成分とした基板において、熱伝導率が30W/m・K以上の特性を実現したものも示されているが、曲げ強度は400MPa程度と低いものである。しかしながら、半導体装置向けの放熱基板として使用されるセラミック基板にあっては、それに接合される金属板との間において、熱膨張差により大きな負荷がかかる状況下、特に高出力向けの放熱基板では、接合される金属板が更に厚くなるところから、基板の曲げ強度が500MPa未満では、加熱時の負荷に耐え切れず、基板自体が破壊されてしまう問題を内在しているのである。
【0008】
また、Al2 3 を主成分とした基板の熱伝導率は、それに接合される金属板の材質であるCuの熱伝導率に比べて1/10以下であり、半導体部品全体の熱抵抗の約50%を占めることとなるところから、これが律速となっているのである。そのため、セラミック基板の熱伝導率を改善することは、半導体部品の放熱性の改善にとって最も有効な解決策となるものである。しかし、金属板との接合に耐え得る、500MPa以上の曲げ強度を有するAl2 3 系基板の熱伝導率は低く、30W/m・K未満となっているが、かかる500MPa以上の曲げ強度特性を維持したまま、Al2 3 系基板の熱伝導率を改善して、30W/m・K以上とすることが出来れば、AlN基板やSi3 4 基板を使用した場合と同等の特性が得られることとなるのである。そのような高い熱伝導率と高い曲げ強度を同時に備えた、Al2 3 を主成分とした基板であれば、それに接合せしめられる金属板を厚くすることによって、半導体部品としての放熱性を更に向上させることが可能となるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−344569号公報
【特許文献2】特開平8−195450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、熱伝導率が30W/m・K以上の高い熱伝導特性と曲げ強度が500MPa以上の高い強度特性とを併せ有する、半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板を提供することにあり、また、そのような優れた特性を有する半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板を有利に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0012】
(1) Al2 3 粉末とZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物、又はAl2 3 粉末とZrO2 −Y2 3 粉末との混合物からなり、焼結助剤が添加されていない原料組成物を、焼成することによって得られた、ZrO2 :2〜15重量%、Y2 3 :0.01〜1重量%及びAl2 3 :残部からなる焼結体にて構成され、Al2 3 の平均結晶粒子径が2μmよりも大きく、7μm以下であると共に、Al2 3 粒子同士が直接に接触している粒界長さが粒界総長さの60%以上であって、熱伝導率が30W/m・K以上であり且つ曲げ強度が500MPa以上である特性を有していることを特徴とする半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(2) 前記Al2 3 の平均結晶粒子径が、2.5〜4.5μmである前記態様(1)に記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(3) 前記焼結体中のZrO2 の80モル%以上が、正方晶である前記態様(1)又は前記態様(2)に記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(4) 前記焼結体中のZrO2 の平均結晶粒子径が、0.5〜2μmである前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(5) 前記焼結体が、3.70g/cm3 以上の焼結密度を有している前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(6) 前記焼結体の表面粗さ(Ra)が、0.3μm以下である前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(7) 基板厚みが、0.1〜1mmの範囲内である前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(8) 基板の少なくとも一方の面に、銅板又はアルミニウム板が接合せしめられている前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(9) 前記ZrO2 −Y2 3 粉末が、Y2 3 をZrO2 に固溶させて得られる部分安定化ジルコニアの粉末である前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
(10) 前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板を製造する方法にして、Al2 3 粉末とZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物、又はAl2 3 粉末とZrO2 −Y2 3 粉末との混合物からなり、焼結助剤が添加されていない原料組成物の焼成に際し、1200℃から、1600℃乃至1700℃の間の最高到達温度までの温度領域の昇温速度を、500℃〜1200℃の温度領域の昇温速度よりも小さくしたことを特徴とする半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
要するに、本発明は、Al2 3 とZrO2 とY2 3 との所定割合の焼結体からなるアルミナジルコニア基板において、Al2 3 粒子(結晶)とZrO2 粒子(結晶)の適切な分散状態を確保しつつ、異常粒成長を抑制させる適切な焼結条件の下において焼成せしめて得られる、該基板を構成する焼結体中のZrO2 粒子がAl2 3 粒子の粒界三重点に位置するような微構造、即ち、Al2 3 粒子同士の接触面積が大きい状態を実現することにより、高熱伝導率且つ高強度の両特性を、同時に、安価なAl2 3 基板に付与せしめ得たのである。
【0014】
そして、そのような本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板にあっては、その高熱伝導特性及び高強度特性により、半導体チップが搭載される基板の薄型化が可能となるところから、半導体装置の小型化、放熱性の向上、そして電流容量の増大化を有利に図ることが出来ることとなり、以て、半導体装置における高電圧・高電流化の要請にも、有利に対応することが出来ることとなったのである。
【0015】
また、かかる本発明に従う高熱伝導率且つ高強度特性のアルミナジルコニア基板を用いることにより、大きなパワーによって高温が発生するパワートランジスタモジュールの如き半導体装置、特に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;IGBT)モジュール等に幅広く利用することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従って得られたアルミナジルコニア焼結基板の一例における基板組織の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例において得られたアルミナジルコニア焼結基板の熱伝導率及び曲げ強度と部分安定化ジルコニアの添加量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここにおいて、本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板(焼結体)は、Al2 3 、ZrO2 及びY2 3 のみから構成されてなるものであり、従来から周知のアルミナジルコニア基板のように、焼結助剤として添加されるSiO2 、MgO、CaO等の焼結助剤を、実質的に含有してはいない。ここで、実質的に含有していないとは、焼結基板の製造工程において、原料から必然的に混入することとなる不可避的な不純物が微量含まれるようになっても、本発明の本質は損なわれないということである。また、そのような焼結基板において、Y2 3 はZrO2 の中に固溶して、部分安定化ジルコニアとして存在しており、その部分安定化ジルコニアの多くは、結晶粒子として、Al2 3 の粒界三重点に存在しているのである。従って、焼結後のアルミナジルコニア基板の粒界には、熱抵抗となる焼結助剤相が存在することはなく、Al2 3 結晶粒子同士が直接に接触している形態となっているのである。
【0018】
そして、そのような本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板にあっては、主成分として、Al2 3 が用いられていると共に、その強度を高めるために、ZrO2 が2〜15重量%の割合において含有せしめられている。このZrO2 の含有量が2重量%未満となると、焼結時におけるAl2 3 結晶相の異常粒成長を抑制することが出来ず、充分な基板強度を得ることが困難となるのであり、一方、15重量%を超えるようになると、焼結基板の熱伝導率の低下が惹起されるようになることに加えて、Al2 3 結晶中に多量のZrO2 が分散するようになるために、アルミナ質結晶体そのものの特性を劣化させてしまう問題を惹起する。
【0019】
また、かかるZrO2 と共に含有せしめられるY2 3 は、ZrO2 の部分安定化剤として機能し、アルミナジルコニア焼結基板の高強度化に寄与すると共に、そのような基板を与える焼結体の焼結性の向上を図り得る成分であって、その含有量は、0.01〜1重量%の範囲内とされる。なお、このY2 3 の含有量が0.01重量%未満となると、ZrO2 の部分安定化を充分に行ない難くなるために、基板の強度の低下を惹起するおそれがあり、また焼結性の悪化を招く等の問題を惹起する。一方、Y2 3 の含有量が1重量%を超えるようになると、ZrO2 が完全安定化されて、基板強度の低下を惹起するおそれを生じると共に、Al2 3 の異常粒成長も促進されるようになり、これによっても、基板の強度が低下せしめられる問題が惹起されることとなる。
【0020】
そして、本発明にあっては、上述の如き割合のZrO2 及びY2 3 と、残部のAl2 3 とを焼結せしめるに際して、通常の焼結助剤が不存在の状態下において、Al2 3 結晶粒子の粒成長を制御することにより、熱抵抗となる焼結助剤相や気孔の生成を効果的に抑制せしめて、高い強度を実現せしめ得たのである。ここで、焼結助剤がなくても高い強度が得られるのは、粒界に存在する低強度の焼結助剤相の減少や焼結助剤の不存在によるAl2 3 粒子の異常粒成長の抑制によって、粒内破壊から粒界破壊へと変化するためである。これに対して、焼結助剤を添加すると、Al2 3 の結晶粒子径が大きくなると共に、結晶粒子の形状が不揃いになり、高い強度が得られなくなるのであり、更には、焼結助剤相や気孔の生成によって、熱伝導率を低下させる原因ともなることとなる。また、従来から周知のアルミナジルコニア基板に添加される焼結助剤は、熱伝導率が非常に小さいものであるために、Al2 3 粒界に介在すると、アルミナジルコニア基板の熱伝導率を大きく低下せしめる原因となるのである。
【0021】
従って、本発明において、アルミナジルコニア焼結基板を与える焼結体におけるAl2 3 の結晶粒子は、その均質分散によって、基板の高強度化及び高熱伝導化に寄与するものであるところから、その平均結晶粒子径は2μmよりも大きく、7μm以下となるように制御され、特に、2.5〜4.5μmの範囲内となるように調整されることとなる。なお、かかるAl2 3 の平均結晶粒子径が2μm以下となると、焼結体の緻密化が不充分となって、強度の低下や熱伝導率の低下を惹起するようになるのであり、一方7μmよりも大きな粒子径となると、結晶粒子径のバラツキが大きくなって、均質性が維持出来ず、そのために強度の低下を招く等の問題を招くこととなる。
【0022】
また、かくの如き本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板にあっては、それを与える焼結体の結晶組織の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す図1から明らかなように、粒界としては、Al2 3 結晶粒子とZrO2 結晶粒子とが接触しているZrO2 粒界1と、Al2 3 結晶粒子同士が直接接触しているAl2 3 粒界2と、Al2 3 結晶粒子と粒界に存在する気孔とが接触している第1気孔粒界3と、ZrO2 結晶粒子と粒界に存在する気孔とが接触している第2気孔粒界4とが、それぞれ存在することとなる。このため、それら四つの粒界の合計長さ(粒界総長さ)に対するAl2 3 粒界2の長さの比となるAl2 3 粒界2の相対長さは、ZrO2 の含有量と焼結密度に依存することとなるのである。即ち、ZrO2 の含有量が多ければ、Al2 3 粒界2の相対長さは減少するようになるのであり、また、ZrO2 の多くが粒界三重点に存在したり、或いは、焼結体内部の気孔が少なければ、Al2 3 粒界2の相対長さは増加することとなる。
【0023】
本発明にあっては、かかるAl2 3 粒界2の長さ、換言すればAl2 3 結晶粒子同士が直接に接触している粒界長さが、粒界総長さに対して60%以上であるように調整することによって、ZrO2 結晶粒子の均質分散による基板の高強度化と高熱伝導化を図るようにしたものである。これに対して、かかるAl2 3 粒界2の長さが、粒界総長さの60%よりも少ない割合となると、ZrO2 粒界1の長さや第1気孔粒界3の長さ、第2気孔粒界4の長さが大きくなるために、目的とする曲げ強度や熱伝導率を実現することが困難となるのである。
【0024】
なお、上記したZrO2 粒界1、Al2 3 粒界2、第1気孔粒界3及び第2気孔粒界4の、それぞれの粒界長さは、焼結基板(焼結体)表面を鏡面研磨した後、1500℃でのサーマルエッチング処理によって粒界を露出せしめ、次いで、その露出表面上の任意の3点をそれぞれ走査型電子顕微鏡にて5000倍の倍率にて撮影して得られる、20μm×25μm領域の二次電子像の三つを、画像解析ソフトウェアWinROOFにて実測することにより、求めることが出来る。そして、粒界総長さに対するAl2 3 粒界2の長さの割合であるAl2 3 粒界比は、それら実測して得られた粒界長さから算出されるのである。即ち、Al2 3 粒界比は、前記した20μm×25μmの領域にそれぞれ存在する、Al2 3 粒界2の合計長さとZrO2 粒界1の合計長さと第1気孔粒界3の合計長さと第2気孔粒界4の合計長さとの総和に対する、Al2 3 粒界2の合計長さの相対値であり、上記の3点測定にて求められた三つの結果における最小値をもって、当該基板のAl2 3 粒界比とされることとなる。
【0025】
そして、かくの如く、Al2 3 を主成分とし、ZrO2 とY2 3 を所定割合で含有する焼結体からなるアルミナジルコニア焼結基板において、Al2 3 の平均結晶粒子径を2μmよりも大きく、7μm以下であるように調整し、更にAl2 3 の結晶粒子同士が直接に接触している粒界長さが、粒界総長さの60%以上となるように構成することによって、熱伝導率が30W/m・K以上であり、且つ曲げ強度が500MPa以上である特性を、有利に実現せしめ得たのである。即ち、基板に対して、30W/m・K以上の熱伝導率を付与することにより、基板の放熱特性が向上され、以てそれを組み込んでなるモジュールの放熱性が向上せしめられ得ることとなるのであり、また基板の曲げ強度が500MPa以上となることにより、基板の薄型化が可能となり、更に金属板の接合時における応力にも耐え得る等の強度を備えることとなって、モジュールの信頼性の向上に大きく寄与し得ることとなるのである。なお、熱伝導率が30W/m・K未満では、高負荷のかかるパワーモジュールとして使用することが出来なくなるのであり、また曲げ強度が500MPa未満では、金属板の接合時に基板が破壊されてしまう等の問題を生じるようになるのである。
【0026】
なお、上述せるような、本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板(焼結体)にあっては、ZrO2 の結晶形態に関して、ZrO2 の80モル%以上が、正方晶であることが望まししい。正方晶ZrO2 は、外部応力により単斜晶ZrO2 に相転移して、破壊エネルギーを吸収することによって、基板破壊を有利に抑制することが出来るのである。なお、正方晶ZrO2 が80モル%未満の場合にあっては、外部応力を有利に吸収することが困難となり、高い強度を得ることが出来なくなるおそれがある。
【0027】
また、焼結体中のZrO2 の平均結晶粒子径は、その均質分散による基板の高強度化を図る上において、0.5〜2μmの範囲内のものとすることが望ましい。かかるZrO2 の平均結晶粒子径が0.5μm未満となるようにするには、原料粉末をより微細化することが必要となり、そのために、シート成形性が悪化する問題があり、また2μmを超えるようになると、焼結体中におけるZrO2 の均質性を維持することが困難となり、焼結体そのものの特性を劣化させ易く、高い強度を得ることが困難となるおそれがある。
【0028】
さらに、かかるアルミナジルコニア焼結基板を構成する焼結体は、適切に焼結せしめられて、緻密化されていることが望ましく、一般に、3.70g/cm3 以上の焼結密度を有しているように構成される。この焼結密度が低くなり過ぎると、焼結体の緻密化が不充分となって、焼結体内に多くの気孔が存在することとなるところから、熱伝導率の低下や強度の低下の問題を惹起し易くなる。なお、焼結密度をより高めるべく、緻密化を進めると、Al2 3 結晶粒子の異常粒成長を惹起するようになるところから、焼結密度の上限は、一般に、4.15g/cm3 程度とすることが望ましい。
【0029】
加えて、上述の如きアルミナジルコニア基板(焼結体)の表面粗さ(Ra)にあっても、外部応力の集中による破壊を有利に回避する上において、0.3μm以下であることが望ましい。Al2 3 粒子の異常粒成長が惹起されると、この表面粗さ(Ra)が0.3μmよりも大きくなり、強度の低下を招くおそれがある。
【0030】
そして、かくの如きアルミナジルコニア焼結基板は、その薄板化による熱抵抗の軽減を図り、モジュールの放熱性を向上させるために、一般に、0.1〜1.0mmの範囲内の基板厚みとされることが、望ましいのである。なお、この基板厚みが0.1mmよりも薄くなると、外部応力に耐えられず、割れ易くなって、信頼性の低下を招くおそれがあり、また1.0mmよりも厚くなると、熱抵抗が増大して、放熱性が低下するおそれを生じるようになる。
【0031】
ところで、かくの如き本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板の製造に際しては、先ず、Al2 3 粉末とZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物、又はAl2 3 粉末とZrO2 −Y2 3 粉末との混合物からなり、焼結助剤が添加されていない原料組成物が調製されることとなる。ここで、ZrO2 −Y2 3 粉末は、予めZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物を焼成して得られた焼成物を粉砕して、粉末化したものであって、一般にZrO2 にY2 3 を固溶させて、かかるY2 3 にて部分安定化されたZrO2 の粉末が有利に用いられることとなる。また、そのような粉末の混合物には、分散剤としての界面活性剤と分散媒体としての有機溶媒の適当量が配合せしめられて、セラミック成分(粉末)全体としての平均粒子径が0.5μm〜2μm程度になるように、粉砕混合されることとなる。更にその後、バインダや可塑剤、更に有機溶媒が添加されて、攪拌混合されることにより、シート成形用のスラリーが調製されるのである。
【0032】
次いで、かかる得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法等の、公知のシート成形手法に従って、グリーンシートが形成されることとなる。そして、このグリーンシートをプレス加工により所定の形状に型抜きすることによって、板状のグリーン成形品(基板前駆体)とされる。
【0033】
その後、かくして得られたグリーン成形品を用い、それを焼成することによって、目的とするアルミナジルコニア焼結基板が形成されることとなるのであるが、この焼成操作によって、Al2 3 の平均結晶粒子径や、Al2 3 粒子同士が直接に接触している粒界長さが決定されることとなるところから、本発明にあっては、次のような焼成操作が有利に採用されることとなるのである。
【0034】
すなわち、上記のグリーン成形品を常法に従って加熱して、500℃程度の温度までゆっくりと昇温することによって、グリーン成形品中の溶媒やバインダ、可塑剤を除去せしめた後、1200℃の温度まで200〜250℃/時間程度の昇温速度にて加熱せしめ、そして1200℃から、1600℃乃至1700℃の間の最高到達温度までの温度領域の昇温速度を、その前段の500℃〜1200℃の温度領域の昇温速度よりも小さくして、ゆっくりと昇温せしめ、好ましくは150℃/時間以下、より好ましくは120℃/時間以下、特に好ましくは80〜100℃/時間の昇温速度で、グリーン成形品の焼結を進行せしめるようにすることにより、本発明にて規定されるAl2 3 の平均結晶粒子径や、Al2 3 粒子同士が直接に接触している粒界長さを、有利に実現することが出来るのである。そして、その最高到達温度にて、所定時間、一般に1〜3時間程度の間保持することにより、グリーン成形品から得られる焼結基板の緻密化が促進され、また本発明にて規定されるAl2 3 粒界が、より良好な状態で実現されることとなる。なお、そのような最高到達温度にて所定時間保持した後の降温操作は、従来と同様に、基板が変形しなくなる温度帯までゆっくり降温し、更にその後、基板が破壊しないように常温までゆっくり降温せしめられることとなる。
【0035】
なお、かかるグリーン成形品の焼成操作における最高到達温度としては、上述の如く、1600℃乃至1700℃の範囲内とされることとなるが、好ましくは、1620〜1680℃程度の範囲内とされることとなる。かかる最高到達温度が1600℃よりも低くなると、焼結性が不充分となるために、基板の緻密化が充分でなく、高い強度を得ることが困難となる。一般に、焼結密度が3.70g/cm3 以上となるように、焼成が行なわれることとなるのである。また、焼成操作における最高到達温度が1700℃よりも高くなると、Al2 3 の粒成長が促進され、基板(焼結体)の表面が粗くなってしまう問題が惹起される。この基板表面の粗さは、外部応力を集中させて基板破壊源となる恐れがあるところから、基板の焼結密度は高くても、高い強度が得られるとは限らないのである。従って、基板の表面粗さ(Ra)は、0.3μm以下となるようにすることが望ましいのである。
【0036】
そして、かくの如き焼成操作によって得られる、本発明に従うアルミナジルコニア焼結基板は、一般に、0.1〜1.0mmの板厚のものとして形成されることとなるが、そのような基板には、その少なくとも一方の面に対して、常法に従って、箔状の薄い銅板又はアルミニウム板が接合せしめられて、半導体装置用の基板として用いられることとなる。このような銅板又はアルミニウム板の貼付けによって、熱伝導性乃至は放熱性の向上が有利に図られ得るのである。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
先ず、セラミック原料粉末として、平均粒子径(D50、以下同じ)が1.7μmであるAl2 3 粉末と、ZrO2 に5重量%のY2 3 を固溶せしめて得られた、平均粒子径が0.5μmのZrO2 −Y2 3 粉末を、それぞれ準備した。また、焼結助剤として、マグネサイトとカオリンとガラスとを混合粉砕して得られた、全体の平均粒子径が2.4μmである混合粉末を準備した。そして、それら3種の粉末のうち2種又は3種を、下記表1に示される割合にて用いることにより、実施例1〜4の原料粉末及び参考例1〜7の原料粉末を構成した。
【0039】
【表1】

【0040】
次いで、かかる表1に示される、2種又は3種の原料粉末の組み合わせと共に、その組み合わせの100重量部に対して、分散剤としての界面活性剤の0.5重量部、溶媒としてのキシレンとイソプロピルアルコールとの混合液の20重量部を、ボールミル内に投入して、全体の平均粒子径が1.18〜1.52μmとなるように粉砕混合せしめた後、更に、バインダとしてのポリビニルブチラールの5重量部と、可塑剤としてのアジピン酸ジオクチルの3重量部と、溶媒としてのキシレンとイソプロピルアルコールとの混合液の20重量部とを、更に投入して、約12時間粉砕混合を続けて、全体の平均粒子径が1.18〜1.40μmとなる各種のスラリーを調製した。
【0041】
その後、それぞれのスラリーから、ドクターブレード法により常法に従ってグリーンシートを形成した後、得られた各種のグリーンシートから、プレス加工により所定の形状に型抜きすることにより、それぞれ所定形状のグリーン成形品を作製した。
【0042】
そして、その得られた各種のグリーン成形品に対して、それぞれ、焼成操作を施すことにより、対応する実施例や参考例に係るアルミナジルコニア焼結基板を得た。なお、実施例1〜4において作製したグリーン成形品に対する焼成操作は、500℃までの温度にゆっくりと加熱昇温して、バインダや可塑剤を溶媒と共に完全に除去せしめた後、1200℃の温度まで、200〜250℃/時間程度の昇温速度にて昇温して、加熱せしめた後、更に1650℃の温度まで、約100℃/時間の昇温速度にて加熱昇温せしめることにより、ゆっくりと焼成を施し、更に、最高到達温度である1650℃において、2時間保持することにより、得られる焼結基板(焼結体)の緻密化の促進を行なった後、得られた基板が変形したり、破壊されたりしないように、ゆっくりと降温する手法に従って、目的とする実施例1〜4に係る焼結基板をそれぞれ得た。また、参考例1〜3に係るグリーン成形品の焼成操作は、前記した実施例1〜4に係るグリーン成形品に対する焼成操作と同様にして行ない、更に、参考例4〜7に係るグリーン成形品に対しては、それぞれ、1200℃から約100℃/時間の昇温速度にて加熱されて、焼結せしめられる際に、その最高到達温度を1550℃とすること以外は、前記実施例1〜4の場合と同様な焼成条件を採用した。
【0043】
かくして得られた、各種のアルミナジルコニア焼結基板について、それらの焼結密度、熱伝導率、曲げ強度、Al2 3 平均結晶粒子径、及びAl2 3 粒界比をそれぞれ測定して、それらの結果を、下記表2に併せ示した。また、図2には、実施例1〜4及び参考例1〜3に係る各基板の熱伝導率及び曲げ強度と、各基板中の部分安定化ジルコニア含有量との関係をプロットして、示した。
【0044】
なお、それぞれの特性の測定に際して、焼結密度は、JIS R 1634:1998(ファインセラミックスの焼結体密度の測定方法)に基づいて測定し、また熱伝導率は、JIS R 1611:2010(ファインセラミックスのフラッシュ法による熱伝導率の測定方法)に基づいて測定し、更に、曲げ強度は、JIS R 1601:2008(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)に基づいて測定した。加えて、各基板(焼結体)の平均結晶粒子径は、それぞれ、焼結体を鏡面研磨して、サーマルエッチングを行なった後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ない、得られたSEM写真より、インターセプト法によって算出した。なお、Al2 3 粒界比については、前記した方法に従って測定したものである。
【0045】
【表2】

【0046】
かかる表2の結果や、図2に示されるところから明らかな如く、焼結助剤を添加することなく、Al2 3 にZrO2 とY2 3 との固溶体である部分安定化ジルコニアを所定割合で含有せしめてなるアルミナジルコニア焼結基板において、実施例1〜4の如く、Al2 3 の平均結晶粒子径が2μmよりも大きく、7μm以下であると共に、Al2 3 の粒界比が60%以上となるように構成することによって、高い熱伝導率と高い曲げ強度を併せ有するアルミナジルコニア基板を得ることが出来るのである。
【0047】
また、図2から明らかな如く、ZrO2 の含有量の減少に伴い、熱伝導率は高い値を示すが、曲げ強度は低い基板となっている。なお、参考例1に係る基板の熱伝導率が低い原因は、焼結助剤の含有量が多いために、熱抵抗となる焼結助剤相が結晶組織内に存在するためであると考えられる。また、参考例2及び3の曲げ強度が低い原因は、焼結助剤の含有によって、Al2 3 の結晶粒子径が増大し、ZrO2 粒界長さと気孔粒界長さの比率が相対的に増加したことによって、Al2 3 粒界比が60%未満となったためであると考えられる。
【0048】
さらに、参考例4〜7に係るアルミナジルコニア焼結基板にあっては、焼結助剤が含有せしめられるものではないものの、焼成工程において焼結が充分に行なわれていないために、Al2 3 の平均結晶粒子径が2μm以下の小さなものとなり、またAl2 3 粒界比も60%よりも低くなっているのであり、このため、熱伝導率の低い基板となっていることが認められる。
【符号の説明】
【0049】
1 ZrO2 粒界 2 Al2 3 粒界
3 第1気孔粒界 4 第2気孔粒界


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al2 3 粉末とZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物、又はAl2 3 粉末とZrO2 −Y2 3 粉末との混合物からなり、焼結助剤が添加されていない原料組成物を、焼成することによって得られた、ZrO2 :2〜15重量%、Y2 3 :0.01〜1重量%及びAl2 3 :残部からなる焼結体にて構成され、
Al2 3 の平均結晶粒子径が2μmよりも大きく、7μm以下であると共に、Al2 3 粒子同士が直接に接触している粒界長さが粒界総長さの60%以上であって、熱伝導率が30W/m・K以上であり且つ曲げ強度が500MPa以上である特性を有していることを特徴とする半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項2】
前記Al2 3 の平均結晶粒子径が、2.5〜4.5μmである請求項1に記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項3】
前記焼結体中のZrO2 の80モル%以上が、正方晶である請求項1又は請求項2に記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項4】
前記焼結体中のZrO2 の平均結晶粒子径が、0.5〜2μmである請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項5】
前記焼結体が、3.70g/cm3 以上の焼結密度を有している請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項6】
前記焼結体の表面粗さ(Ra)が、0.3μm以下である請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項7】
基板厚みが、0.1〜1mmの範囲内である請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項8】
基板の少なくとも一方の面に、銅板又はアルミニウム板が接合せしめられている請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項9】
前記ZrO2 −Y2 3 粉末が、Y2 3 をZrO2 に固溶させて得られる部分安定化ジルコニアの粉末である請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか一つに記載の半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板を製造する方法にして、
Al2 3 粉末とZrO2 粉末とY2 3 粉末との混合物、又はAl2 3 粉末とZrO2 −Y2 3 粉末との混合物からなり、焼結助剤が添加されていない原料組成物の焼成に際し、1200℃から、1600℃乃至1700℃の間の最高到達温度までの温度領域の昇温速度を、500℃〜1200℃の温度領域の昇温速度よりも小さくしたことを特徴とする半導体装置用アルミナジルコニア焼結基板の製造方法。


【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−32265(P2013−32265A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125563(P2012−125563)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(591149089)株式会社MARUWA (35)
【Fターム(参考)】