説明

半硬化物、硬化物およびそれらの製造方法、光学部品、硬化樹脂組成物

【課題】半硬化物の変形性をコントロールすることにより、成形時のバリの発生が抑制され、成形後の良品率が高く、リフロー工程に用いられる程度に耐熱性が高い硬化物の製造方法の提供。
【解決手段】2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程と、前記半硬化物を金型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程と、を含む硬化物の製造方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半硬化物、硬化物およびそれらの製造方法、光学部品、硬化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学特性や機械的強度等が優れているという観点で、光学部品(光学素子とも言い、主にはレンズ)として一般に無機ガラス材料が用いられているが、光学素子が使用される機器の小型化が進むにつれ、光学素子の小型化も必要になり、無機ガラス材料では加工性の問題から、曲率(R)の大きなものや複雑な形状のものを作製することが困難になってきている。
【0003】
このことから加工のしやすいプラスチック材料が検討され、使用されるようになってきている。加工のしやすいプラスチック材料としては、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等の透明性が良好な熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0004】
一方、回路基板上にIC(Integrated Circuits)チップその他の電子部品を実装する場合において、回路基板の所定位置に予め金属ペースト(例えば半田ペースト)を塗布(ポッティング)しておき、その位置に電子部品を載置した状態で当該回路基板をリフロー処理(加熱処理)に供し、当該回路基板に電子部品を実装する技術により、低コストで高密度に電子モジュールを製造する技術が開発されている。
【0005】
近年では、回路基板に対し電子部品のほかに光学素子を更に載置した状態で、光学素子と一体化された光学モジュールとして、上記のような半田リフロー処理をおこなうことにより、撮像装置の生産システムにおいて更なる生産効率の向上が望まれている。
【0006】
当然ながら、上述のリフロー処理を取り入れた生産システムにより製造させる光学モジュールにおいても、高コストなガラス製の光学素子よりも、低コストで製造可能なプラスチック製の光学素子を用いることが望まれている。
【0007】
但し、従来の光学素子用樹脂材料として用いられてきた熱可塑性樹脂は比較的低い温度で軟化、溶融するため加工性は良好であるが、成形された光学素子は、熱により変形しやすいという欠点をもつ。光学素子を組み込んだ電子部品を半田リフロー工程によって基板に実装するような場合は光学素子自体も例えば270℃程度の加熱条件に曝されることになるが、耐熱性の低い熱可塑性樹脂からなる光学素子では形状劣化を起こし、問題となる。そこで、プラスチックを用いた光学部材にリフロー工程に耐えられる耐熱性を付与し、他の電子素子と同時に基板上に配置し、製造コストを低減することが求められていた。
【0008】
これに対し、リフロー工程で製造される撮像素子に用いられる光学素子用のプラスチック材料として、光硬化性樹脂を用いる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。一般に光硬化性樹脂は、硬化前は液状であるか又は流動性を示すものであり、熱可塑性樹脂と同様に加工性は良好であり、硬化後は熱可塑性樹脂のような流動性を示さないので、熱による変形も小さい。しかしながら、光硬化性樹脂は硬化前の粘度が低く、成形の際に金型の合わせ目(パーティングライン)から樹脂が漏れてしまい、漏れた樹脂が硬化した不要部も同時に形成してしまうという問題があった。このような漏れた樹脂は、例えば、いわゆるバリと一般的に呼ばれるような薄膜のほか、その他棒状や球状や角状の突起部などを形成するが、本明細書中ではこれらを総称して「バリ」という。
【0009】
成形時にバリの形成を抑制するために金型クリアランス漏れを抑制させる方法として、特許文献1ではUV照射により硬化性組成物を半硬化させ、半硬化物(グミ状)を作製後、金型を用いて加圧し、熱硬化させる製造方法を提案している。具体的には、同文献の実施例では、硬化性樹脂として2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートを用いて、一般的な増粘剤であるポリアクリル酸ソーダ(またはスルホン酸系共重合体)、光重合開始剤、熱重合開始剤を添加した硬化樹脂組成物に対して、光照射して増粘させた後、熱を加えて硬化させることで、成形時のバリを抑制した例が開示されている。
【0010】
特許文献2には、脂環族炭化水素骨格とラジカル重合性基を有する化合物を含む組成物を光重合することにより、微細形状を精度よく賦形した硬化物を得る技術が開示されている。この文献には、2つ以上のラジカル重合性基を有する化合物を配合してもよいことや、光重合と熱重合を組み合わせてもよいことが記載されている。ただし、これらを選択した具体例としては、ジメチロールトリシクロ[5.2.1.02,5]デカンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、光重合開始剤および熱重合開始剤を含む組成物を用いて、光重合および熱重合をこの順で行った例しか記載されていない(実施例6参照)。
【0011】
特許文献3には、不飽和結合含有ポリオルガノシルセルキオキサン、脂環ジアクリレートおよびビニル系モノマーを含有するシリコーン系樹脂組成物を硬化させる技術が開示されている。この文献によると、当該シリコーン系樹脂組成物を用いることにより、透明性、耐熱性、耐水性、機械的耐性に優れた成形品が得られることが記載されている。ただし、実施例としては、篭型シリル化ポリフェニルシルセスキオキサン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレートおよび光重合開始剤を含むシリコーン樹脂組成物を光硬化させた例しか記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−126011号公報
【特許文献2】特開2003−286316号公報
【特許文献3】特開2004−123936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、このような耐熱性を高めた(メタ)アクリレート系硬化樹脂を製造する方法として、特許文献1に記載の方法を検討した。ここで、同文献[0074]段落には、UV照射後の粘度が「適度」とは600〜3000cP(6×102mPa・s〜3×103mPa・s)であり、「高い、ゲル化」とは粘度が10000cP以上(1×104mPa・s以上)であることを意味するとの記載がある。また、同文献の実施例[表1]〜[表4]によれば、UV照射後の粘度が「高い、ゲル化」の場合は成形性評価が成形不可となっており、樹脂組成物がゲル化してしまい金型へ充填できず、成形が不可能となったことが開示されている。一方、UV照射後の粘度が「適度」であれば成形時のバリの発生を抑制できることが開示されている。しかしながら、本発明者らが、UV照射後の粘度が「適度」の条件で検討したところ、半硬化物の変形性制御が困難であり、依然として成形時のバリの発生を抑制する観点から不満は残るものであり、また、成形後にクラックやシワが発生する割合も高く(すなわち、良品率が低く)、転写性良好なレンズを得ることが出来なかった。
【0014】
また本発明者らは、特許文献2および特許文献3に記載の方法も検討した。その結果、特許文献2に記載の方法は、表面に微細構造を形成する場合には賦形可能であるが、カメラレンズのように比較的大きな成形体を得たい場合には賦形できないことが判明した。また、特許文献3に記載の方法は、一段階で硬化するものであるため硬化途中で形状を付与することは不可能であり、また成形品の屈折率が低いためレンズ等に用いることはできないことが判明した。
本発明は上記問題を解決することを目的とするものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、半硬化物の変形性をコントロールすることにより、成形時のバリの発生が抑制され、成形後の良品率が高く、リフロー工程に用いられる程度に耐熱性が高い硬化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のビニル系多官能モノマーを配合し、UV照射後に得られる半硬化物の複素粘度を特定の範囲に制御すると、驚くべきことにゲル化した状態であるにも関わらず半硬化状態制御性に優れ、かつその後に熱重合工程を経ることで耐熱性に優れる硬化樹脂を得られることを見出した。いかなる理論に拘泥するものでもないが、本発明は、ビニル系多官能モノマーの重合中の連鎖異動によって、3次元構造をコントロールすることで、半硬化物の変形性と、リフロー工程に用いられる程度に光学部品に必要な耐熱性を付与することができ、上記課題を解決することができる。すなわち、本発明者らは以下の構成によって上記課題が達成されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
[1] 2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程と、前記半硬化物を金型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程と、を含む硬化物の製造方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
[2] 前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(1)で表される[1]に記載の硬化物の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む官能基を表し、R2は単結合または(n+1)価の飽和連結基を表し、nは1〜8の整数を表す。)
[3] 前記一般式(1)のR1が(メタ)アクリロイルオキシ基またはビニル基である[2]に記載の硬化物の製造方法。
[4] 前記一般式(1)のR2が、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる群より選択される1以上の原子から構成される連結基である[2]または[3]に記載の硬化物の製造方法。
[5] 前記一般式(1)のnが1〜4の整数である[2]〜[4]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[6] 前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(2)で表される[1]に記載の硬化物の製造方法。
【化2】

(一般式(2)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は単結合または炭素数1〜10の飽和炭化水素連結基を表す)
[7] 前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマーであるか、あるいは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーの混合物である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[8] 前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有している(メタ)アクリレートモノマーを含む[1]〜[7]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[9] 前記硬化樹脂組成物が、前記硬化性樹脂組成物に対して、前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーを0.5〜35重量%含有する[1]〜[8]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[10] 前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーからなり、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーと前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとの総量に対し、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーを30〜90重量%含有する[1]〜[9]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[11] さらに非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を含む[1]〜[10]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
[12] 前記硬化性樹脂組成物の総量に対し、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を5〜50質量%含有する[11]に記載の硬化物の製造方法。
[13] [1]〜[12]のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物。
[14] 前記硬化物が、波長589nmにおける屈折率が1.45以上であり、アッベ数が45以上であり、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上である[13]に記載の硬化物。
[15] [13]または[14]に記載の硬化物を用いた光学部品。
[16] 2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
[17] 前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(2)で表される[16]に記載の硬化樹脂組成物。
【化3】

(一般式(2)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は単結合または炭素数1〜10の飽和炭化水素連結基を表す)
[18] 2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・.sの半硬化物を製造する方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
[19] [18]に記載の半硬化物の製造方法によって製造された半硬化物。
[20] 2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび光ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108 mPa・sの半硬化物を形成する方法(但し、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半硬化物の変形性をコントロールすることにより、成形時のバリの発生が抑制され、成形後の良品率が高く、リフロー工程に用いられる程度に耐熱性が高い硬化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明の半硬化物ならびに硬化物およびこれらの製造方法やそれに用いる材料などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。なお、本発明の硬化物の製造方法は、本発明の半硬化物の製造方法を含むため、両者に共通する製造方法の好ましい態様については本発明の半硬化物の製造方法欄に記載する。
【0019】
[半硬化物の製造方法]
本発明の半硬化物の製造方法は、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー(以下において「ビニル系多官能モノマー」とも言う)、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程を含む(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)ことを特徴とする。
ここで、本明細書中、「半硬化物」とは、硬化樹脂組成物を重合したものであり、完全に固体となっておらず、ある程度流動性を有する状態の物を意味する。例えば、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの状態の硬化樹脂組成物の光重合体は、半硬化物である。特に本発明を限定するものではないが、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度の上限値として1.0×109mPa・sの物までを半硬化物と考えられる。一方、「硬化物」とは、硬化樹脂組成物を重合したものであり、完全に固体となっている状態の物を意味する。
以下、本発明の半硬化物の製造方法に用いられる各材料と、光照射の方法(光重合工程とも言う)について順に説明する。
【0020】
<ビニル系多官能モノマー>
本発明の製造方法で用いる硬化樹脂組成物は、ビニル系多官能モノマーを含む。
このようなビニル系多官能モノマーを含む硬化樹脂組成物を用いることで、本発明では、光重合後の半硬化物の粘度を特定の範囲に制御し、かつ、その半硬化物を後述する本発明の硬化物の製造方法において熱重合したときに得られる硬化物の耐熱性および良品率を改善できる。
【0021】
本発明の製造方法で用いる硬化樹脂組成物に含まれるビニル系多官能モノマーは、1分子中にラジカル重合性基を2〜12個有していることが好ましく、2〜8個有していることがより好ましく、2〜4個有していることがさらに好ましく、2個有するものであることが最も好ましい。また、ビニル系多官能モノマーに含まれるラジカル重合性基のうちの少なくとも1つは、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基のいずれかであることが必須であるが、なかでも非共役ビニル基を含んでいるものであることが好ましい。ビニル系多官能モノマーに含まれる2つ以上のラジカル重合性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、異なっている場合であり、その場合の組み合わせとしては、非共役ビニル基と(メタ)アクリロイルオキシ基の組み合わせが好ましい。異なるラジカル重合性基を採用することにより、硬化物の熱着色を効果的に抑制することが可能である。
【0022】
本発明で用いるビニル系多官能モノマーは、下記一般式(1)で表されるモノマーであることが好ましい。
【化4】

(一般式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む官能基を表し、R2は単結合または(n+1)価の飽和連結基を表し、nは1〜8の整数を表す。)
前記R1が表すラジカル重合性基に特に制限はなく、例えば、以下の置換基を用いることができる。(メタ)アクリル基、非共役(メタ)アリル基、非共役ビニル基、非共役イソプロペニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基。
その中でも前記R1は、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基、非共役イソプロペニル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましく、非共役ビニル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0023】
前記nは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。nが2以上であるとき、2つ以上のR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、2つ以上のR1のうちの少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基である場合である。
【0024】
前記R2が表す(n+1)価の飽和連結基は特に制限はなく、例えば、炭素原子、水素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1原子以上で構成される飽和連結基を用いることができる。飽和連結基は、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる群より選択される少なくとも1原子以上で構成される飽和連結基であることがより好ましい。また、炭素原子および水素原子からなる飽和連結基であることがさらに好ましい。
前記R2が表す(n+1)価の飽和連結基の例として、アルキレン構造、アルキレンオキシ構造、アルキレンチオ構造または飽和環状構造を含む飽和連結基を挙げることができる。例えば、2価の飽和連結基としては、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基、ポリアルキレンオキシアルキレン基などを挙げることができ、これらの飽和連結基の連結鎖を構成する原子数は1〜25であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。また、飽和連結基が飽和環状構造を含む場合、当該飽和環状構造はスピロ環状構造、カルド環状構造、融合環状構造のいずれであってもよいが、スピロ環状構造を好ましい例として挙げることができる。
【0025】
本発明で用いるビニル系多官能モノマーは、下記一般式(2)で表されるモノマーであることがより好ましい。
【化5】

(一般式(2)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は単結合または炭素数1〜10の飽和炭化水素連結基を表す)
【0026】
前記R12が表す飽和炭化水素連結基の炭素数は、0〜22であることが好ましく、0〜16であることがより好ましく、1〜9であることがさらに好ましい。また、前記R12が表す飽和炭化水素連結基は、環状構造を含んでいてもよいが、好ましいのは鎖状の飽和炭化水素連結基である。
【0027】
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
一般式(1)および一般式(2)にて置換基として採用しうるものとして、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、アルキルチオール基などを例示することができる。なかでも好ましいのは、アルキル基である。
【0028】
以下において、本発明に好ましく用いられるビニル系多官能モノマーの具体例を列挙するが、本発明で用いることができるビニル系多官能モノマーは以下の化合物に限定されるものではない。
【0029】
ビニル系多官能モノマー
【化6】

【0030】
(分子量)
前記ビニル系多官能モノマーの分子量は、100〜500であることが好ましく、120〜350であることがより好ましく、150〜300であることが特に好ましい。
【0031】
(入手方法)
これらの前記ビニル系多官能モノマーの入手方法については特に制限は無く、商業的に入手してもよく、合成により製造してもよい。
商業的に入手する場合は、例えば、NKエコノマーAL、NKエコノマーML、NKエコノマーML4G、NKエコノマーML8G、NKエコノマーML12G(新中村化学社工業株式会社製)などを好ましく用いることができる。
合成により製造する場合は、前記ビニル系多官能モノマーの製造方法としては特に制限はなく、公知の方法で合成することができる。例えば、前記ビニル系多官能モノマーの中でも本発明に好ましく用いることができる化合物(C−1)を合成する場合は、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 2003, vol. 76, #7 P.1441−1446に記載の方法などで、合成することができる。
【0032】
本発明の半硬化物の製造方法では、前記硬化樹脂組成物が、後述する(メタ)アクリレートモノマーに対して前記ビニル系多官能モノマーを0.5〜35質量%含有することが好ましく、5〜35質量%含有することがより好ましく、10〜33質量%含有することが特に好ましい。
また、本発明の半硬化物の製造方法では、前記硬化樹脂組成物が、前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記ビニル系多官能モノマーを0.5〜30質量%含有することが好ましく、5〜25質量%含有することがより好ましく、10〜20質量%含有することが特に好ましい。
【0033】
<(メタ)アクリレートモノマー>
本発明の半硬化物の製造方法は、(メタ)アクリレートモノマーを含む。なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。
【0034】
本発明の半硬化物の製造方法は、前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。すなわち、前記(メタ)アクリレートモノマーは下記一般式(3)または(4)で表されることが好ましい。
【化7】

(一般式(3)中、L1は単結合または2価の連結基を表し、B1は1価の脂環基を表す。)
前記L1は、単結合または2価のアルキレン基であることが好ましく、単結合またはメチレン基であることがより好ましく、単結合であることが特に好ましい。
前記B1は炭素数5〜15の1価の脂環基であることが好ましく、炭素数6〜15の1価の脂環基であることがより好ましく、炭素数8〜12の1価の脂環基であることが特に好ましい。前記B1は2以上の環が縮合した縮合環であることが好ましく、2または3の環が縮合した縮合環であることがより好ましい。また、前記B1は脂環構造中に二重結合を有していないことが好ましい。
【0035】
【化8】

(一般式(4)中、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、B2は2価の脂環基を表す。)
前記L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価のアルキレン基であることが好ましく、単結合またはメチレン基であることがより好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
前記B2は炭素数5〜15の2価の脂環基であることが好ましく、炭素数6〜15の2価の脂環基であることがより好ましく、炭素数8〜12の2価の脂環基であることが特に好ましい。前記B1は2以上の環が縮合した縮合環であることが好ましく、2または3の環が縮合した縮合環であることがより好ましい。また、前記B2は脂環構造中に二重結合を有していないことが好ましい。
【0036】
本発明の半硬化物の製造方法に用いられる前記(メタ)アクリレートモノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーに分けることができる。ここで、多官能(メタ)アクリレートモノマーとは官能基が複数である(メタ)アクリレートモノマーのことを言い、単官能(メタ)アクリレートモノマーとは官能基が1つである(メタ)アクリレートモノマーのことを言う。なお、本明細書中において、"(メタ)アクリレートモノマーの官能基"とは、重合反応に関与するエチレン性不飽和結合のことを言う。
【0037】
(多官能(メタ)アクリレートモノマー)
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば以下の物を用いることができる。
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート。
その中でも、本発明では脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましく、縮合環の脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー、たとえばトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートが特に好ましい。
【0038】
(単官能(メタ)アクリレートモノマー)
本発明に用いられる単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば以下の物を用いることができる。
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートやメチルアダマンチルメタクリレートやエチルアダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル(メタ)アクリレート類、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのノルボルニル(メタ)アクリレート類、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルアクリレートなどのトリシクロデカン(メタ)アクリレート類、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート。
その中でも、本発明では多重結合を有さない脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましく、縮合環の脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、たとえば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イル(メタ)アクリレートがより好ましく、1−アダマンチルメタクリレートが特に好ましい。
【0039】
本発明の半硬化物の製造方法は、前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマー、あるいは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーの混合物であることが好ましい。
その中でも、前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーの混合物であることが、後述する熱重合後の硬化物の耐熱性を改善する観点から、より好ましい。
さらに、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーと前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとの総量に対し、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーを30〜90質量%含有することが好ましく、35〜80質量%含有することがより好ましく、40〜70質量%含有することが特に好ましい。
【0040】
以下において、本発明に好ましく用いられる前記(メタ)アクリレートモノマーの具体例を列挙するが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0041】
【化9】

【0042】
単官能(メタ)アクリルモノマー
【化10】

【0043】
(分子量)
本発明に好ましく用いられる前記(メタ)アクリレートモノマーの分子量は100〜500であることが好ましく、150〜450であることがより好ましく、200〜400であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の半硬化物の製造方法では、前記硬化樹脂組成物が、前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記(メタ)アクリレートモノマーを50〜95質量%含有することが好ましく、55〜90質量%含有することがより好ましく、60〜90質量%含有することが特に好ましい。
【0045】
(入手方法)
これらの前記(メタ)アクリレートモノマーの入手方法については特に制限は無く、商業的に入手してもよく、合成により製造してもよい。
商業的に入手する場合は、例えば、NKエステルDCP、NKエステルA−DCP(新中村化学社工業株式会社製)などを好ましく用いることができる。
合成により製造する場合は、前記(メタ)アクリレートモノマーの製造方法としては特に制限はなく、公知の方法で合成することができる。例えば、前記(メタ)アクリレートモノマーの中でも本発明に好ましく用いることができる化合物(Aa−1)を合成する場合は、US6365771 B1(2002、日産化学工業株式会社)に記載の方法などで、合成することができる。
【0046】
<光ラジカル重合開始剤>
本発明の半硬化物の製造方法は、前記硬化樹脂組成物が、光ラジカル重合開始剤を含む。前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0047】
前記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルベンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレート。
【0048】
その中でも、本発明では、前記光ラジカル重合開始剤としてBASF社製、イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を好ましく用いることができる。
【0049】
前記光ラジカル重合開始剤の前記硬化樹脂組成物中における添加量は、特に制限はないが、前記硬化樹脂組成物の総量(好ましくは、前記(メタ)アクリレートモノマー、ビニル系多官能モノマーおよび後述する非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の合計)に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2.5質量%であることがより好ましく、1〜1.8質量%であることが特に好ましい。
【0050】
<熱ラジカル重合開始剤>
本発明の半硬化物の製造方法は、前記硬化樹脂組成物が、熱ラジカル重合開始剤を含む。このような熱ラジカル重合開始剤をあらかじめ硬化樹脂組成物に添加しておくことで、本発明の半硬化物は、その後熱重合により耐熱性が高い本発明の硬化物を成形性よく、容易かつ生産性よく製造することができる。
【0051】
前記熱ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン。
【0052】
その中でも、本発明では、前記熱ラジカル重合開始剤として日本油脂株式会社製、パーブチルO(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)およびパークミルH(クメンヒドロペルオキシド)を好ましく用いることができる。
【0053】
前記熱ラジカル重合開始剤の前記硬化樹脂組成物における添加量は、特に制限はないが、前記硬化樹脂組成物の総量(好ましくは、前記(メタ)アクリレートモノマー、ビニル系多官能モノマーおよび後述する非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の合計)に対して、0.01〜5.00質量%であることが好ましく、0.01〜4.00質量%であることがより好ましく、0.05〜0.2質量%であることが特に好ましい。
【0054】
<非共役ビニル基を側鎖に有する重合体>
本発明の半硬化物の製造方法は、さらに非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を含むことが、硬化樹脂組成物を光照射前から熱成型用金型に直接設置した場合に、金型クリアランスへの漏れを抑制できるように光照射前の硬化樹脂組成物の粘度を高く調整する観点からは、好ましい。
【0055】
以下において、本発明に好ましく用いられる前記非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の具体例を列挙するが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0056】
非共役ビニル基を側鎖に有する重合体
【化11】

【0057】
(分子量)
本発明の非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の分子量は、1000〜10000000であることが好ましく、5000〜300000であることがより好ましく、10000〜200000であることが特に好ましい。
【0058】
(Tg)
本発明の非共役ビニル基を側鎖に有する重合体のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、30〜400℃であることが好ましく、50〜350℃であることがより好ましく、60〜300℃であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の半硬化物の製造方法は、前記硬化樹脂組成物の総量(好ましくは、前記(メタ)アクリレートモノマー、前記ビニル系多官能モノマー、前記光ラジカル重合開始剤、前記熱ラジカル重合開始剤および前記非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の総量)に対し、前記非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を5〜50質量%含有することが好ましく、5〜45質量%含有することがより好ましく、15〜40質量%含有することが特に好ましい。前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の含有量が50質量%以下であることが光照射前の前記硬化樹脂組成物の初期粘度を抑制してディスペンス等を容易にする観点から好ましい。
【0060】
<その他の添加剤>
本発明の半硬化物の製造方法では、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、前記硬化樹脂組成物が、本発明の条件を満たさない樹脂、モノマー、分散剤、可塑剤、熱安定剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
<光照射工程>
本発明の半硬化物の製造方法は、前記硬化樹脂組成物に対して、光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程を含む。
本発明の半硬化物の製造方法では、硬化樹脂組成物を光照射前から後述する本発明の硬化物の製造方法で熱重合するときに用いる熱成形用金型に直接設置してもよく、硬化樹脂組成物を光照射時は熱成形用金型とは別の型に入れて半硬化物を製造した後で後述の本発明の硬化物の製造方法において得られた光照射後の半硬化物を熱成形用金型に移動させてもよい。
【0062】
ここで、熱成形用金型は、一般に2つの金型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができるようになっており、熱性形用金型に低粘度の組成物を注入すると、金型クリアランスへの漏れの原因となる。本発明の半硬化物の製造方法で用いる前記硬化樹脂組成物は一般に熱性形用金型に直接注入するには粘度が低い。そのため、本発明の半硬化物の製造方法の一つの好ましい態様では、上述のように非共役ビニル基を側鎖に有する重合体をさらに添加して前記硬化樹脂組成物の粘度を調整して、一つの熱性形用金型内で光照射と後述する熱重合を行って、硬化物を得ることも製造性の観点からは好ましい。
【0063】
一方、本発明の半硬化物の製造方法の別の一つの好ましい態様では、硬化樹脂組成物を光照射時は熱成形用金型とは別の型に入れて半硬化物を製造した後で後述の本発明の硬化物の製造方法において得られた光照射後の半硬化物を熱成形用金型に移動させることが、材料コストを低下させる観点からは好ましい。
ここで、熱成形用金型とは別の型を用いる場合、いわゆるプリフォーム用の型を用いることが好ましい。前記プリフォーム用の型は、金属製であってもよいし、ガラス製、樹脂製であってもよい。量産過程で繰り返し使用することを考慮すれば、前記プリフォーム用の型は、金属製またはガラス製であることが好ましい。また、本発明の半硬化物をレンズとして用いる場合は、プリフォーム用の型の少なくとも一方の面には、熱成形用金型と同じ/または近い形状を有していることが好ましく、両面に熱成形用金型形状に同じ/または近い形状を有していることがより好ましい。
【0064】
(光照射の条件)
本発明の半硬化物の製造方法における光照射の好ましい条件について、以下説明する。
前記光照射は、光照射後の半硬化物の25℃、周波数10Hzにおける複素粘度は、105〜108mPa・sとなるように行うことが好ましく、105〜107.5mPa・sとなるように行うことがより好ましく、105.5〜107.0mPa・sとなるように行うことが特に好ましい。
【0065】
前記光照射に用いられる光は、紫外線、可視光線であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。例えばメタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、LED光源ランプ などが好適に使用される。
前記光照射時の雰囲気は、空気中または不活性ガス置換あることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0066】
[半硬化物]
本発明の半硬化物は、本発明の半硬化物の製造方法によって製造されたことを特徴とする。このような半硬化物は、後述する本発明の硬化物の製造方法に好ましく用いることができる。
【0067】
本発明の半硬化物は、(メタ)アクリレートモノマーおよびビニル系多官能モノマーを含む組成物を重合してなり、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108 mPa・sであり、熱ラジカル重合開始剤を含む(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーにはビニル系多官能モノマーに該当するものは含まれない)ことが好ましい。ここで、本発明の半硬化物の複素粘度の好ましい範囲は、上述の本発明の半硬化物の製造方法における半硬化物の複素粘度の好ましい範囲と同様である。
【0068】
本発明の半硬化物は、光照射工程後において、光ラジカル重合開始剤が全て消費されていて全く含まれていなくてもよく、光ラジカル重合開始剤が残留していてもよい。本発明では、その中でも、光ラジカル重合開始剤が全く含まれていないことが好ましい。
【0069】
(Tg)
本発明の半硬化物のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、−150〜0℃であることが好ましく、−50〜0℃であることがより好ましく、−20〜0℃であることが特に好ましい。
【0070】
[半硬化物を形成する方法]
また、本発明は、半硬化物を形成する方法にも関する。
本発明の半硬化物を形成する方法は、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル系多官能モノマーおよび光ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108 mPa・sの半硬化物を形成する方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーにはビニル系多官能モノマーに該当するものは含まれない)である。
このような構成により、本発明では、複素粘度が適度である半硬化物を形成することができる。
【0071】
[硬化物の製造方法]
本発明の硬化物の製造方法は、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程(すなわち、本発明の半硬化物の製造方法により半硬化物を得る工程)と、前記半硬化物を金型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程と、を含むものである。
【0072】
<熱重合工程>
本発明の硬化物の製造方法は、前記半硬化物を金型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程を含む。
本発明の硬化物の製造方法で用いられる金型のことを、熱成形用金型とも言う。前記熱成形用金型は、一般に2つの金型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができる構成となっていることが好ましい。このような熱成形用金型としては、例えば、特開2009−126011号公報などに記載のものを用いることができる。
【0073】
(金型への導入)
本発明の硬化物の製造方法では、まず前記本発明の半硬化物の製造方法で製造された半硬化物を金型に入れる。まず、半硬化物を金型に入れるという工程について説明する。
光照射後の半硬化物は、上述の本発明の半硬化物の製造方法で説明したとおり、熱成形用金型に直接設置されて光照射されているか、または、熱成形用金型とは別の型に入れて光照射されている。前記光照射後の半硬化物が熱成形用金型に直接設置されて光照射された場合は、特に熱成形用金型に入れる動作自体は必要なく、説明上金型に入れると記載してあるに過ぎない。
一方、光照射後の半硬化物が熱成形用金型とは別の型に入れて光照射された場合は、熱成形用金型に移動させる工程を意味する。光照射後の半硬化物を熱成形用金型に移動させる方法としては、例えば、シリンジ、バキュームパッドと真空発生器を有するエアピンセットなどを用いることができる。本発明の半硬化物は、複素粘度が特定の範囲であるため、このようにシリンジなどを用いて容易に熱成形用金型に移動させることができる。
【0074】
(加圧変形・加熱)
本発明の硬化物の製造方法では、金型に入れた半硬化物を、加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る。
ここで、加圧変形と加熱は同時に行ってもよく、加圧変形した後で加熱を行ってもよく、加熱した後で加圧変形を行ってもよいが、その中でも加圧変形と加熱を同時に行うことが好ましい。また、加圧変形と加熱を同時に行った上で、加圧が安定してからさらに高温に加熱することも好ましい。
【0075】
前記加圧変形における圧力は、1kg/cm2〜100kg/cm2であることが好ましく、3kg/cm2〜50kg/cm2であることがより好ましく、3kg/cm2〜30kg/cm2であることが特に好ましい。
前記加熱温度は、加圧変形と同時に行う加熱は80〜300℃であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましく、150〜280℃であることが特に好ましい。
一方、加圧が安定してからさらに高温に加熱場合は、80〜300℃であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましく、150〜280℃であることが特に好ましい。
前記熱重合の時間は、30〜1000秒であることが好ましく、30〜500秒であることがより好ましく、60〜300秒であることが特に好ましい。
前記熱重合時の雰囲気は、空気中または不活性ガス置換あることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0076】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化物の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
以下、本発明の硬化物の好ましい特性について説明する。
【0077】
(270℃貯蔵弾性率)
本発明の硬化物は、270℃貯蔵弾性率が高い性能であり、耐熱性が高いことを特徴とする。このように270℃貯蔵弾性率が高い性能であることで、本発明の硬化物は、一般の電子素子と一緒に基板上に設置してリフロー工程で固定することができ、光学部品付き電気製品の製造コストを大幅に下げることができる。
本発明の硬化物は、270℃貯蔵弾性率が0.1×102MPa〜30×102MPaであることが好ましく、1.0×102MPa〜30×102MPaであることがより好ましく、1.5×102MPa〜30×102MPaであることが特に好ましい。なお、本発明における270℃貯蔵弾性率は、Rheogel−E4000(株式会社ユービーエム製、動的粘弾性測定装置)を用いて、引張りモード、周波数10Hz、歪み10μm(一定)の条件で測定した値を用いる。
【0078】
(屈折率)
本発明の硬化物は、光学部品用途の中でもレンズなどに用いる観点から、屈折率が高いことが好ましい。本発明の硬化物は、波長589nmにおける屈折率nDが1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、1.51以上とあることが特に好ましい。
【0079】
(アッベ数)
本発明の硬化物は、光学部品用途の中でもレンズなどに用いるときに色収差を低減する観点から、アッベ数が大きいことが好ましい。本発明の硬化物は、波長589nmにおけるアッベ数が45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、55以上とあることが特に好ましい。
本明細書中、アッベ数νDは、波長589nm、486nm、656nmにおけるそれぞれの屈折率nD、nF、nCを測定することで、下記式(A)により算出される。
【数1】

【0080】
(吸水率)
本発明の硬化物は、大気下中の水分を吸湿することによる、光学特性(屈折率、アッベ数、および光線透過率)変化、および寸法変化の抑制の観点から吸水率が小さいことが好ましい。本発明の硬化物は、吸水率が、0.001〜1.5%であることが好ましく、0.001〜1.2%であることがより好ましく、0.001〜1.0%であることが特に好ましい。なお、本発明における吸水率は、製造直後の重量(Wi)と、85℃相対湿度85%に設定した環境試験機中に一週間保持した後の熱硬化物の重量(Wf)を測定し、下記の式で求めた値である。
【数2】

【0081】
(熱着色)
本発明の硬化物は、光学部品用途に用いる観点から、熱着色が−15%〜0%であることが好ましく、−10%〜0%であることがより好ましく、−5%〜0%であることが特に好ましい。なお、本発明における熱着色は、硬化物の透過率(Tbefore:単位%)を分光光度計で測定した後、N2雰囲気下の炉で室温から270℃まで2℃/minで昇温した後、270℃で30分間保持した。50℃まで冷却した後、サンプルを炉から取り出し、分光光度計で透過率(Tafter:単位%)測定を行ったときの、炉での加熱処理前後のサンプルの405nmにおける透過率の差を下記の式より算出した値である。
熱着色(%) = Tbefore − Tafter
【0082】
(光線透過率)
本発明の硬化物は、光学部品用途に用いる観点から、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上が特に好ましい。なお、本発明における厚さ1mm換算の光線透過率は、厚さ1.0mmの基板を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定した値である。
【0083】
(Tg)
本発明の硬化物のTgは、150〜400℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましく、240〜300℃であることが特に好ましい。
【0084】
(サイズ)
本発明の硬化物は、最大厚みが0.1〜10mmであることが好ましい。最大厚みは、より好ましくは0.1〜5mmであり、特に好ましくは0.15〜3mmである。本発明の硬化物は、最大直径が1〜100mmであることが好ましい。最大直径は、より好ましくは2〜50mmであり、特に好ましくは2.5〜10mmである。このようなサイズの硬化物は、高屈折率の光学部品用途として特に有用である。このような厚い成形体は、溶液キャスト法で製造しようとしても溶剤が抜けにくいため一般に容易ではなく、熱重合のみで製造しようとしても成形が容易ではない。しかしながら、本発明の半硬化物の製造方法および硬化物の製造方法を用いれば、成形が容易でバリも生じにくいため良品率が高く、非球面などの複雑な形状も容易に実現することができる硬化物を得ることができる。このように、本発明によれば、高い耐熱性を有する硬化物を、容易に製造することができる。
【0085】
[光学部品]
本発明の硬化物は、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れた成形体であることが好ましく、本発明の光学部品は、本発明の硬化物を用いたことを特徴とする。本発明の光学部品の種類は、特に制限されない。特に、硬化樹脂組成物の優れた光学特性を利用した光学部品、特に光を透過する光学部品(いわゆるパッシブ光学部品)として好適に利用することができる。かかる光学部品を備えた光学機能装置としては、例えば、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
【0086】
また、光学機能装置に用いられる前記パッシブ光学部品としては、例えば、レンズ、プリズム、プリズムシート、パネル(板状成形体)、フィルム、光導波路(フィルム状やファイバー状等)、光ディスク、LEDの封止剤等が例示される。かかるパッシブ光学部品には、必要に応じて任意の被覆層、例えば摩擦や摩耗による塗布面の機械的損傷を防止する保護層、無機粒子や基材等の劣化原因となる望ましくない波長の光線を吸収する光線吸収層、水分や酸素ガス等の反応性低分子の透過を抑制あるいは防止する透過遮蔽層、防眩層、反射防止層、低屈折率層等や、任意の付加機能層を設けて多層構造としてもよい。かかる任意の被覆層の具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電膜やガスバリア膜、有機物コーティング層からなるガスバリア膜やハードコート等が挙げられ、そのコーティング法としては真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。
【0087】
本発明の硬化物を用いた光学部品は、特にレンズ基材に好適である。本発明の半硬化物の製造方法および硬化物の製造方法を用いて製造されたレンズ基材は、好ましくは、高アッベ数であって、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、硬化樹脂組成物を構成するモノマーの種類を適宜調節することにより、レンズ基材の屈折率を任意に調節することが可能である。
なお、本明細書中において「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、レンズ基材に付加される部材であり、本明細書中でいうレンズ基材そのものとは区別される。
【0088】
前記レンズ基材をレンズとして利用するに際しては、前記レンズ基材そのものを単独でレンズとして用いてもよいし、前記のように膜や枠などを付加してレンズとして用いてもよい。前記レンズ基材を用いたレンズの種類や形状は、特に制限されない。前記レンズ基材は、例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ、マイクロレンズアレイ等)に使用される。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0090】
[実施例1]
<ビニル系多官能モノマーの入手>
ビニル系多官能モノマーC−1、C−2、C−3、C−8、C−9を以下の方法で入手した。
C−1) NKエコノマーML 新中村化学工業株式会社、
C−2) NKエコノマーAL 新中村化学工業株式会社、
C−3) メタクリル酸アリル 東京化成工業株式会社、
C−8) TRIAM−501 和光純薬株式会社、
C−9) テトラアリルオキシエタン 東京化成工業。
【0091】
<硬化樹脂組成物の調製>
前記多官能(メタ)アクリルモノマーAa−1(新中村化学工業株式会社製)を57.3質量部、前記単官能(メタ)アクリルモノマーAb−1を24.4質量部、前記ビニル系多官能モノマーC−1を17.2質量部、下記光ラジカル重合開始剤F−1(BASF社製、イルガキュア184)を0.1質量部、下記熱ラジカル重合開始剤F−3(日本油脂株式会社製、パーブチルO)を1質量部、下記熱ラジカル重合開始剤F−4(日本油脂株式会社製、パークミルH)を0.5質量部添加して、実施例1の硬化樹脂組成物を調製した。
【0092】
用いた重合開始剤の構造を以下に示す。なお、下記光ラジカル重合開始剤F−2はBASF社製、イルガキュア907である。
【0093】
熱ラジカル重合開始剤
【化12】

【0094】
光ラジカル重合開始剤
【化13】

【0095】
<光重合および/または熱重合後の評価>
(UV照射後の25℃、10Hzにおける粘度)
直径20mm、厚み1mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。
ついで、HAAKE社製レオストレスRS600を用いて、25℃、10Hzにおける動的な複素粘度の値を測定し、半硬化物の粘度とした。
【0096】
(金型樹脂クリアランス漏れ評価(i))
上型(天井部型)、胴型、および下型(底部型)からなる直径4.0mmmのレンズ作成用の熱成形用金型の天井部を取り外し、硬化樹脂組成物10mgを注入した。注入した硬化樹脂組成物を、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、熱成形用金型上に粘度調整した半硬化物を作製した。ついで、天井部型で半硬化物を挟み込み、作製した半硬化物ごとそのまま熱成形用金型上を80℃に加熱後、半硬化物に30kgf/cm2の圧力を印加したまま200℃まで昇温した後、室温まで冷却した。
この硬化樹脂組成物を熱成形用金型に注入してから室温に冷却するまでの工程において、熱成形用金型クリアランス(胴型と上下型の間に形成される隙間)へ樹脂が漏れた重量を測定し、以下の基準で評価した。
○:樹脂漏れ量が、0.1mg未満であった。
△:樹脂漏れ量が、0.1mg以上0.2mg未満であった。
×:樹脂漏れ量が、0.2mg以上であり、実用上問題がある。
得られた結果を下記表に記載した。
【0097】
(金型樹脂クリアランス漏れ評価(ii))
直径4mm、高さ1.5mmの円柱形状の透明のプリフォーム型に注入された硬化樹脂組成物10mgに、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、粘度調整した半硬化物を作製した。ついで、プリフォーム型の形状となった半硬化物を、プリフォーム型からエアピンセットを用いて金型樹脂クリアランス漏れ評価(i)で用いた熱成形用金型に移した。80℃に加熱後、半硬化物に30kgf/cm2の圧力を印加したまま200℃まで昇温した後、室温まで冷却した。
この半硬化物を熱成形用金型に移してから室温に冷却するまでの工程において、熱成形用金型クリアランスへ樹脂が漏れて発生したバリの長さを測定し、以下の基準で評価した。
○:樹脂漏れ量が、0.1mg未満であった。
△:樹脂漏れ量が、0.1mg以上0.2mg未満であった。
×:樹脂漏れ量が、0.2mg以上であり、実用上問題がある。
得られた結果を下記表に記載した。
(レンズ成形性評価)
金型樹脂クリアランス漏れ評価(ii)と同様の工程を10回繰り返し、作製した各レンズの外観を、キーエンス社製デジタルマイクロスクープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。
レンズのフランジ部表面に、微細な凹凸(シワ)、またはレンズにクラックが発生しているものを不良品、発生していないものを良品とした。10個のレンズを評価し、そのうちの良品の割合を良品率とし、以下の基準で評価した。
◎:良品率が90%以上であった。
○:良品率が80%以上であった。
△:良品率が30%以上であった。
×:良品率が30%未満であった。
【0098】
(屈折率・アッベ数)
幅8mm、長さ2.5cm、厚み1mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。
ついで、得られた半硬化物を型ごとホットプレートに移動させ、ホットプレートを用いて200℃、5分間加熱し、熱硬化物を得た。得られた熱硬化物の589nmにおける屈折率、およびアッベ数を、アッベ計(株式会社アタゴ社製)を用いて測定し、得られた硬化物の屈折率、アッベ数とした。
得られた結果を下記表に記載した。
【0099】
(吸水率)
直径10mm、厚み1mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。
ついで、半硬化物を、ホットプレートを用いて200℃、5分間加熱し、熱硬化物を得たのち、重量(Wi)を測定した。その後、85℃相対湿度85%に設定した環境試験機中に一週間保持した後の熱硬化物の重量(Wf)を測定した。得られた硬化物の吸水率を下記の式より算出し、得られた結果を下記表に記載した。
【数3】

【0100】
(熱着色)
直径10mm、厚み1mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を下記表に記載の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。
ついで、半硬化物を、ホットプレートを用いて200℃、5分間加熱し、熱硬化物を得た。この硬化物の透過率(Tbefore:単位%)を分光光度計(島津製、UV−1650PC)で測定した後、N2雰囲気下の炉で室温から270℃まで2℃/minで昇温した後、270℃で30分間保持した。50℃まで冷却した後、サンプルを炉から取り出し、分光光度計で透過率(Tafter:単位%)の測定を行った(T%−after)。炉での加熱処理前後のサンプルの405nmにおける透過率の差を下記の式より算出し、熱着色として表した。
熱着色(%) = Tbefore − Tafter
【0101】
(270℃貯蔵弾性率)
直径20mm、厚み0.2mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm2の紫外線を所定の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。
ついで、半硬化物を、ホットプレートを用いて200℃、5分間加熱し、熱硬化物を得た。得られた熱硬化物を、幅5mm、長さ15mm、厚み0.2mmの短冊状に切り取り、ついで、Rheogel−E4000(株式会社ユービーエム製、動的粘弾性測定装置)を用いて、引張りモード、周波数10Hz、歪み10μm(一定)の条件で、270℃における貯蔵弾性率を測定し、270℃貯蔵弾性率とした。
得られた結果を下記表に記載した。
【0102】
[実施例2〜22、比較例1〜6]
用いた材料を下記表1および表2に記載したとおりに変更して硬化樹脂組成物を調製し、各実施例および比較例の半硬化物および硬化物を製造し、各評価を行った。得られた結果をそれぞれ下記表1または表2に記載した。なお、多官能(メタ)アクリルモノマーAa−2は新中村化学工業株式会社製、製品名 DCP、Aa−10はダイセル・サイテック株式会社製、製品名 PETIA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)であり、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体B−1、B−2およびB−6はそれぞれ以下の方法で重合を行ったものである。
【0103】
<非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の入手>
実施例12〜22で用いた非共役ビニル基を側鎖に有する重合体B−1、B−2、およびB−6を以下の方法で合成して入手した。
【0104】
(B−1の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル500.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)0.6gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で6時間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体B−1を得た(収率60%、数平均分子量24,000、重量平均分子量58,000)。
【0105】
(B−2の合成)
ガス導入コックを付けた1L三口フラスコに、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2000)50.0g、および脱水トルエン490.0gを仕込み、十分に窒素置換を行った後、液温を−70℃に調整し、ついで三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体1.0gと脱水トルエン9.0gからなる溶液を約1時間かけて滴下し、反応を行った。滴下終了後、さらに1時間反応させた。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。60℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を除去することにより重合体B−2を得た(収率50%、数平均分子量3,100、重量平均分子量18,100)。
【0106】
(B−6の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した500mL三口フラスコに、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)15.0g、2−ノルボルネン 15.0g、トルエン 170gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)0.9gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下90℃で4時間加熱した後、100℃で1時間加熱した。その後、メタノール1.5Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。40℃で2時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体B−6を得た(収率30%、数平均分子量20,000、重量平均分子量70,000)。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表1〜3より、本発明の製造方法で得られた半硬化物は、複素粘度が本発明の製造方法で規定する範囲内にコントロールされており、この半硬化物を用いてその後熱重合工程を行って得られた本発明の硬化物は、成形時のバリの発生が抑制され、成形後の良品率が高く、270℃での耐熱性が高いことがわかった。
一方、比較例1より、半硬化物の複素粘度が本発明で規定する下限値を下回る場合、その後熱重合工程を行ったときに成形時のバリの発生が多く、成形後の良品率が低いことがわかった。比較例2より、半硬化物の複素粘度が本発明で規定する上限値を超える場合、その後熱重合工程を行ったときに成形後の良品率が低いことがわかった。比較例3〜6より、ビニル系多官能モノマーを添加せずに半硬化物の複素粘度を本発明の製造方法で規定する範囲から外れるように制御した場合も、その後熱重合工程を行ったときに成形後の良品率が低いことがわかった。特にビニル基含有多官能モノマーを添加しなかった場合、少々の時間変化で、一気に本発明の製造方法で規定する必要粘度の下限以下から上限以上にジャンプし、制御が難しい(安定して最適粘度にあわせることが難しく、成形後外観の良品率が低い)ことがわかった。
また、実施例19および20より、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体が、本発明で規定する好ましい範囲の下限値を下回る場合、金型樹脂クリアランス漏れ(i)が不十分
であり、一方で、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体が、本発明で規定する好ましい範囲の上限値を上回る場合、初期粘度が高くなりすぎ、成形前のディスペンスが困難となってしまうことがわかった。さらに、実施例12〜18とその他の実施例とを比べると、共役ビニル基を側鎖に有する重合体を添加した本発明の硬化樹脂組成物を用いると、直接硬化樹脂組成物を熱成形用金型に注入したときの金型クリアランスへの樹脂の漏れも抑制できることがわかった。実施例21および22より、(メタ)アクリルモノマーに対するビニル基含有多官能モノマーの含有量が本発明で規定する最適範囲を超える42質量%の場合は、270℃貯蔵弾性率(耐熱性)が△評価となりことがわかり、(メタ)アクリルモノマーに対するビニル基含有多官能モノマーの含有量が本発明で規定する最適範囲を下回る6.4質量%の場合はレンズ成形性評価が△評価となることがわかった。ビニル基含有多官能モノマーが一般式(2)と異なる実施例15、16は、成形性は良好であるものの、レンズ特性が多少劣ることがわかった。
【0111】
(光線透過率)
270℃貯蔵弾性率の評価と同様にして製造した各実施例の硬化物について、本明細書中に記載の方法で光線透過率を測定した。その結果、いずれの硬化物も光線透過率が95%以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sの半硬化物を得る工程と、
前記半硬化物を金型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程と、を含む硬化物の製造方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
【請求項2】
前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(1)で表される請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む官能基を表し、R2は単結合または(n+1)価の飽和連結基を表し、nは1〜8の整数を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)のR1が(メタ)アクリロイルオキシ基またはビニル基である請求項2に記載の硬化物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)のR2が、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる群より選択される1以上の原子から構成される連結基である請求項2または3に記載の硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)のnが1〜4の整数である請求項2〜4のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項6】
前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(2)で表される請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【化2】

(一般式(2)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は単結合または炭素数1〜10の飽和炭化水素連結基を表す)
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマーであるか、あるいは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーの混合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有している(メタ)アクリレートモノマーを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項9】
前記硬化樹脂組成物が、前記硬化樹脂組成物に対して、前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーを0.5〜35重量%含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーからなり、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーと前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとの総量に対し、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーを30〜90重量%含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項11】
さらに非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項12】
前記硬化樹脂組成物の総量に対し、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体を5〜50質量%含有する請求項11に記載の硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物。
【請求項14】
前記硬化物が、波長589nmにおける屈折率が1.45以上であり、アッベ数が45以上であり、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上である請求項13に記載の硬化物。
【請求項15】
請求項13または14に記載の硬化物を用いた光学部品。
【請求項16】
2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニル基を側鎖に有する重合体、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
【請求項17】
前記2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーが下記一般式(2)で表される請求項16に記載の硬化樹脂組成物。
【化3】

(一般式(2)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は単結合または炭素数1〜10の飽和炭化水素連結基を表す)
【請求項18】
2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・.sの半硬化物を製造する方法(ただし、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。
【請求項19】
請求項18に記載の半硬化物の製造方法によって製造された半硬化物。
【請求項20】
2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび光ラジカル重合開始剤を含有する硬化樹脂組成物に対して光照射して、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108 mPa・sの半硬化物を形成する方法(但し、前記(メタ)アクリレートモノマーには、2つ以上のラジカル重合性基を有し、非共役ビニル基、非共役(メタ)アリル基もしくは非共役イソプロペニル基を含むモノマーに該当するものは含まれない)。

【公開番号】特開2012−97199(P2012−97199A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246230(P2010−246230)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】