説明

印刷システム、プリンタ、および、常駐プログラム

【課題】ネットワークプリンタにおいて、効率よく省電力を達成する技術を提供する。
【解決手段】本出願の印刷システム10では、情報処理装置200は、自装置(情報処理装置200)の動作状況を示す動作状況情報を取得し、取得した動作状況をプリンタ100に送信する動作状況取得手段、を備え、プリンタ100は、情報処理装置200から前記動作状況情報を受信すると、受信した当該動作状況情報に基づいて、省電力モードへの移行時間を決定する移行時間決定手段、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、プリンタ、および、常駐プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ(例えば、特許文献1)では、一定時間印刷がされないと、電力の消費を軽減させるためのモード(以下では、「省電力モード」とよぶ)に移行させるようにしている。
【特許文献1】特開2004−268356号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ネットワークプリンタにおける省電力モードへの移行タイミングに関し、プリンタホストとして機能する情報処理装置(PC)の状況については全く配慮されていない。これでは、適切なタイミングで省電力モードに移行させているとは言えず、効率よく省電力できない。
【0004】
本発明は、ネットワークプリンタにおいて、効率よく省電力を達成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本願発明は、プリンタと、情報処理装置と、がネットワークを介して接続されている印刷システムであって、前記情報処理装置は、当該情報処理装置の動作状況を示す動作状況情報を取得し、取得した当該動作状況情報を前記プリンタに送信する動作状況送信手段、を備え、前記プリンタは、前記情報処理装置から前記動作状況情報を受信すると、受信した当該動作状況情報に基づいて、省電力モードへの移行時間を決定する移行時間決定手段、を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0007】
図1は、本発明の一実施形態が適用された印刷システム10の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0008】
図示するように、印刷システム10は、印刷機能を有するプリンタ100と、プリンタ100のホストコンピュータである情報処理装置(PC)200と、を備えている。印刷システム10は、複数の情報処理装置200を備えている。ただし、1台の情報処理装置200だけを備えていてもよい。
【0009】
プリンタ100と情報処理装置200は、ネットワーク50を介して接続されている。ネットワーク50には、例えば、LAN、WAN、インターネットなどが含まれる。
【0010】
情報処理装置200は、不図示の、各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、データおよびプログラム等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、情報処理装置200を制御するための各種データ、各種プログラム等があらかじめ不揮発的に記憶されているハードディスク(ROM)と、ユーザからの指示を受け付けるキーボードやマウス等からなる入力装置と、各種メッセージ等を表示するディスプレイ等の表示装置と、プリンタ100とデータの送受信を行うインタフェースと、を備えた一般的なコンピュータで実現される。ただし、情報処理装置200の構成はこれに限定されるものではない。
【0011】
上記のような構成からなる各情報処理装置200は、動作状況取得部210を有している。
【0012】
動作状況取得部210は、情報処理装置200にインストールされた常駐プログラムに従って機能し、自装置(情報処理装置200)の動作状況を示す情報(以下では、「動作状況情報」とよぶ)を取得する。具体的には、動作状況取得部210は、プリンタ100からの要求に応じて、自装置の動作状況情報を取得し、取得した動作状況情報をプリンタ100に送信する。ここで、例えば、動作状況取得部210は、動作状況情報として、自装置において動作中のプロセス(インスタンス)名と、ユーザによって操作中の入力装置(「マウス」、「キーボード」など)名と、をプリンタ100に送信する。
【0013】
プリンタ100は、図示するように、プリンタ100全体を制御するコントローラ110と、ユーザからの指示を受け付ける操作パネル120と、印刷用紙を給紙して印刷を実行する印刷エンジン130と、を備えている。また、プリンタ100は、不図示の、情報処理装置200とデータの送受信を行うインタフェースと、各種メッセージ等を表示する液晶パネル等からなる表示装置と、などを備えている。
【0014】
コントローラ110は、不図示の、各種プログラムを実行するCPUと、データおよびプログラム等を一時的に記憶するRAMと、プリンタ100を制御するための各種データ、各種プログラム等があらかじめ不揮発的に記憶されているROMと、などを備えている。
【0015】
操作パネル120は、液晶ディスプレイなどの表示部を備え、表示部への電力供給を制御することによって、発光素子(バックライト、フロントライトなどを含む)の点灯、消灯(或いは、明度の低い点灯)を制御する。
【0016】
印刷エンジン130は、トナーを印刷用紙に定着させることなどに使用するヒータを備え、ヒータなどの電力消費が多い部分への電力供給を制御する。
【0017】
ただし、プリンタ100及びコントローラ110の構成はこれに限定されるものではない。例えば、コントローラ110は、RAM、ROM以外にも、ハードディスクなどの記憶装置を備えていてもよい。また、プリンタ100は、少なくとも印刷機能を有し、FAX機能やスキャナ機能などを有する複合機であってもよい。
【0018】
上記のような構成からなるコントローラ110は、各情報処理装置200の動作状況について管理する機能を有する。
【0019】
具体的には、コントローラ110は、各情報処理装置200に対して、定期的(所定の時間間隔、時間帯などに応じて可変の時間間隔、など)に動作状況情報を要求し、当該要求に応じて各情報処理装置200から送信されたそれぞれの動作状況情報を受信する。
【0020】
また、コントローラ110は、受信した動作状況情報を数値化する。例えば、コントローラ110は、各情報処理装置200から受信したプロセス名と、入力装置名と、に予め定められているスコア(数値)を特定し、特定した全てのスコアの合計値を情報処理装置200ごとに算出する。そして、コントローラ110は、算出した情報処理装置200ごとの合計値の総計値を算出する。ここで、コントローラ110は、算出した総計値を、ネットワーク50に接続されている(常駐プログラムがインストールされている)全ての情報処理装置200の動作状況を示す値(以下では「動作状況レベル」とよぶ)としてメモリ(例えば、RAMなど)に記憶する。
【0021】
ここで、動作状況レベルは高いほど、プリンタ100に印刷の指示がされる確率が高いことを示し、動作状況レベルが低いほど、印刷の指示がされる確率は低いことを示す。
【0022】
コントローラ110が、プロセス名と、入力装置名と、に予め定められているスコアを特定する方法としては、例えば、プロセス名および入力装置名と、スコアと、を対応付けたスコアテーブル300を参照して特定する方法がある。この場合には、スコアテーブル300は、予め記憶装置(ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなど)に格納されている。
【0023】
図2は、スコアテーブル300の概略データ構造の一例を示す図である。図示するように、スコアテーブル300は、情報処理装置200における動作ごとのレコード330からなる。各レコード330は、予めスコアテーブル300に格納されている。各レコード330には、動作310と、スコア320と、が対応付けて格納されている。
【0024】
動作310は、情報処理装置200の動作状況情報として受信するプロセス名と、入力装置名と、を識別するデータからなる。
【0025】
スコア320は、動作310ごとに割り当てた数値からなる。例えば、スコア320は、プリンタ100で印刷を実行する確率が高い動作(プロセス名、入力装置名)310ほど、高い値が割り当てられている。
【0026】
図1に戻り、コントローラ110は、動作状況情報を数値化した動作状況レベルに基づいて、最後に印刷を実行してから所定の省電力モードにプリンタ100を移行させるまでの移行時間(以下では、単に「移行時間」とよぶ)を決定する。ここで、省電力モードとは、通常の状態(以下では、「通常モード」とよぶ)と比較して、プリンタ100における消費電力を抑えて動作するモードのことである。
【0027】
省電力モードには、例えば、省電力量の異なる複数のモードがあり、省電力量が大きいほど、プリンタ100で印刷可能な状態に復帰させるまでの時間(復帰時間)を要する。本発明のプリンタ100は、これに限定するものではないが、例えば、2段階の省電力モード(第1の省電力モード、第2の電力モード)を有しているものとして以下では説明する。
【0028】
例えば、第1の省電力モードでは、プリンタ100は、操作パネル120に備わる液晶ディスプレイなどへの電力供給を停止(或いは、削減)する。
【0029】
また、第2の省電力モードでは、プリンタ100は、第1の省電力モードでの省電力に加え、印刷エンジン130に備わるヒータなどへの消費電力が多い部分への電力供給を停止する。なお、第2の省電力モードは、第1の省電力モードと比較して、省電力量が大きくなる反面、上述した通常モードへの復帰時間は長くなる。
【0030】
コントローラ110が所定の省電力モードへの移行時間を決定する方法としては、例えば、後述する状態移行条件テーブル400を参照して決定する方法がある。この場合には、状態移行条件テーブル400は、予め記憶装置(ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなど)に格納されている。
【0031】
図3は、状態移行条件テーブル400の概略データ構造の一例を示す図である。図示するように、状態移行条件テーブル400は、プリンタ100の状態ごとのレコード450からなる。各レコード450は、予め状態移行条件テーブル400に格納されている。各レコード450には、状態識別情報410と、移行条件420〜440と、が対応付けて格納されている。ここで、移行条件(420〜440)は、情報処理装置200の動作状況レベルに応じて、「高」、「中」、「低」の3つに区分けしている。
【0032】
ここで、動作状況レベル「高」は、動作状況レベルが第1の閾値K1以上の範囲をいう。また、動作状況レベル「中」は、動作状況レベルが第1の閾値K1未満、第2の閾値K2以上の範囲をいう。また、動作状況レベル「低」は、動作状況レベルが第2の閾値K2未満の範囲をいう。
【0033】
状態識別情報410は、プリンタ100の状態を識別するデータである。例えば、通常モードであることを示す「状態A」、第1の省電力モードであることを示す「状態B」、第2の省電力モードであることを示す「状態C」、といったデータからなる。すなわち、図示する例では、状態移行条件テーブル400において下方の状態識別情報410ほど、省電力量が大きい省電力モードを示す。
【0034】
移行条件(420〜440)は、それぞれ、各状態(A〜C)から他の状態に移行する場合の条件である。例えば、図3の例において、プリンタ100の現状態が「状態A」で、かつ、情報処理装置200の動作状況レベルが「高」の場合、「状態B」に移行する条件は、「プリンタ100での最後の印刷時刻からT1(20分)経過したこと」である。
【0035】
なお、状態移行条件テーブル400では、移行条件(420〜440)を、動作状況レベルに応じて「高」、「中」、「低」の3つに場合分けしているが、本願は、これに限定されない。例えば、「高」、「低」の2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0036】
また、状態移行条件テーブル400において下方のレコード450(省電力量の多い状態)ほど、移行時間T1〜8は長く設定される。
【0037】
以上のような状態移行条件テーブル400を参照することによって、コントローラ110は、動作状況レベルに基づいて、所定の省電力モードへの移行時間を決定することができる。すなわち、コントローラ110は、動作状況レベルに該当する移行条件(420〜440)と、プリンタ100の現状態に該当する「状態A〜C」と、に対応付けられている移行条件を特定し、特定した移行条件に従って状態(B又はC)への移行時間(T1〜8のいずれか)を決定する。例えば、動作状況レベルが第2の閾値K2未満であり、かつ、プリンタ100が通常モードである場合には、コントローラ110は、動作状況レベル「低」の移行条件420と、通常モードに該当する「状態A」と、に対応付けられている「T4で状態Bへ移行」及び「T5で状態Cへ移行」を特定し、状態Bへの移行時間を移行時間T4に決定し、状態Cへの移行時間を移行時間T5に決定する。
【0038】
そして、コントローラ110は、最後にプリンタ100で印刷を実行してからの経過時間が、先だって決定した移行時間(T1〜T8のいずれか)に到達したときに、先だって決定した状態(B又はC)にプリンタ100を移行させる。
【0039】
ただし、コントローラ110は、プリンタ100の状態が「状態C(第2の省電力モード)」であっても、情報処理装置200の動作状況レベルが「高」の状態で継続される場合には、プリンタ100に印刷の実行が指示される確率が高いため、プリンタ100の状態を「状態B(第1の省電力モード)」に戻す。具体的には、コントローラ110は、プリンタ100の現状態が「状態C」であり、かつ、「状態C」に移行してから(最後の印刷時からではない)の経過時間が移行時間T0に到達したときには、「状態B」にプリンタ100を移行させる。
【0040】
次に、上記構成からなる印刷システム10におけるプリンタ100および情報処理装置200の特徴的な動作について説明する。図4は、印刷システム10における省電力モード移行処理の手順を示すフローチャートである。
【0041】
コントローラ110は、プリンタ100に電源が投入されると、省電力モード移行処理を開始する。なお、コントローラ100は、プリンタ100に備わる内部時計から現時刻を取得し、取得した時刻を電源投入時刻としてメモリ(例えば、RAMなど)に記憶する。
【0042】
省電力モード移行処理を開始すると、コントローラ110は、情報処理装置200から印刷の指示が有るか否か判別する(ステップS101)。具体的には、コントローラ110は、ネットワーク50を介して、印刷を指示する印刷コマンドを受信した場合に、印刷の指示が有ると判別する。なお、コントローラ110は、印刷コマンドを受信する場合には、印刷コマンドとともに印刷対象の印刷データも受信する。一方、印刷コマンドを受信していない場合には、印刷の指示は無いと判別する。
【0043】
コントローラ110は、印刷の指示が有ると判別した場合には(ステップS101;Yes)、プリンタ100を「状態A(通常モード)」に移行させる(ステップS108)。すなわち、コントローラ110は、プリンタ100の状態が「状態B(第1の省電力モード)」か「状態C(第2の省電力モード)」であれば、省電力モードを解除して、「状態A(通常モード)」に移行させる。例えば、プリンタ100の状態を、「状態B」から「状態A」に解除する場合には、操作パネル120は、液晶ディスプレイなどへの電力供給を復帰させる。同様に、「状態C」から「状態A」に解除する場合には、操作パネル120は、液晶ディスプレイなどへの電力供給を復帰させ、印刷エンジン130は、ヒータなどへの電力供給を復帰させる。当然、プリンタ100の状態がその時点で「状態A」である場合には、その状態を維持すればよい。
【0044】
続いて、コントローラ110は、印刷を実行する(ステップS109)。具体的には、コントローラ110は、ステップS101で印刷コマンドとともに受信した印刷データを、印刷エンジン130に供給する。印刷エンジン130は、給紙制御などを実施し、コントローラ130から供給された印刷データについて印刷を実行し、排紙制御などを行う。なお、印刷エンジン130に供給する印刷データについては、コントローラ110は、必要であれば任意のタイミングで、印刷エンジン130で解釈可能なように画像変換してよい。
【0045】
印刷処理が完了すると、コントローラ110は、印刷を実行した時刻(印刷完了時刻)を記憶する(ステップS110)。具体的には、コントローラ110は、プリンタ100に備わる内部時計から印刷完了時刻を取得し、メモリ(例えば、RAMなど)に記憶する。
【0046】
続いて、コントローラ110は、印刷の頻度を算出し、記憶する(ステップS111)。具体的には、コントローラ110は、ステップS109での印刷実行の毎に、印刷回数をカウントしておき、所定期間(例えば、1時間前から現時刻までの期間)に印刷を実行した回数を、印刷頻度として算出する。そして、コントローラ110は、算出した印刷頻度を、メモリ(例えば、RAMなど)に記憶する。
【0047】
印刷頻度を記憶すると、コントローラ110は、処理をステップS101に戻す。
【0048】
一方、ステップS101において、コントローラ110は、印刷の指示は無いと判別した場合には(ステップ101;No)、ネットワーク50に接続されている情報処理装置200に対して、動作状況情報を要求する(ステップS102)。具体的には、コントローラ110は、動作状況情報を要求するためのコマンドをネットワーク50に出力する。なお、コントローラ110と各情報処理装置200との間での通信は、動作状況情報を授受するための専用のプロトコルなどに基づく通信であってもよい。
【0049】
動作状況情報を要求された各情報処理装置200では、動作状況取得部210は、当該要求を受け付けると、自装置(情報処理装置200)の動作状況情報として、動作中のプロセス名と、ユーザによって操作中の入力装置名と、を取得し、プリンタ100に送信する。なお、動作状況情報を取得する方法としては、任意の方法でよいが、例えば、既存のコマンドや、既存のコマンドの組み合わせによって動作状況情報を取得することができる。
【0050】
コントローラ110は、要求した動作状況情報が各情報処理装置200から送信されてくるまで待機する。そして、コントローラ110は、動作状況情報を情報処理装置200ごとに受信する(ステップS103)。
【0051】
コントローラ110は、ステップS103で動作状況情報を受信すると、受信した動作状況情報を数値化する(ステップS104)。具体的には、まず、コントローラ110は、情報処理装置200から受信したプロセス名と、入力装置名と、に対応する動作410を、スコアテーブル300から検索する。そして、検索した動作310に対応付けられているスコア320を特定し、特定したスコア320の合計値を算出する。このような合計値の算出を、コントローラ110は、情報処理装置200ごとに行う。そして、各情報処理装置200の合計値を総計し、その総計値を、全情報処理装置200の動作状況を示す値としてメモリに記憶する。
【0052】
続いて、コントローラ110は、最後に印刷を実行した時刻(印刷完了時刻)からの経過時間を算出する(ステップS105)。具体的には、コントローラ110は、プリンタ100に備わる内部時計から現時刻を取得するとともに、ステップS110で記憶した印刷完了時刻をメモリから読み出す。そして、現時刻と印刷完了時刻との差分を求める。なお、プリンタ100に電源が投入されてから一度も印刷を実行していない場合には、電源投入時に記憶した電源投入時刻をメモリから読み出し、当該電源投入時刻と現時刻との差分を求める。
【0053】
次に、コントローラ110は、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしているか否か判別する(ステップS106)。
【0054】
具体的には、まず、コントローラ110は、情報処理装置200の動作状況レベルに基づいて、所定の省電力モードへの移行時間を決定する。例えば、コントローラ110は、ステップS104で数値化した動作状況(動作状況レベル)から、状態移行条件テーブル400の動作状況レベル「高」〜「低」を求める。これとともに、コントローラ110は、プリンタ100の現状態(設定されている状態)について、状態移行条件テーブル400の状態識別情報410のいずれに該当するのかも特定する。そして、コントローラ110は、特定した動作状況レベル「高」〜「低」に対応する移行条件(420〜440)と、特定した現状態「状態A〜C」と、に対応付けられている移行条件を状態移行条件テーブル400から特定し、読み出す。コントローラ110は、読み出した移行条件から移行時間(T1〜T8のいずれか)を抽出し、所定の省電力モードへの移行時間として決定する。
【0055】
次に、コントローラ110は、最後に印刷を実行した時刻からの経過時間が、状態移行条件テーブル400から決定した移行時間(T1〜T8のいずれか)に到達しているか否か判別する。例えば、コントローラ110は、ステップS105で算出した経過時間と、状態移行条件テーブル400から読み出した移行時間(T1〜T8のいずれか)と、を比較して、移行時間(T1〜T8のいずれか)に到達しているか否か判別する。
【0056】
そして、コントローラ110は、最後に印刷を実行した時刻からの経過時間が、状態移行条件テーブル400から決定した移行時間(T1〜T8のいずれか)に到達している場合には、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしていると判別する。一方、最後に印刷を実行した時刻からの経過時間が、状態移行条件テーブル400から決定した移行時間(T1〜T8のいずれか)に到達していない場合には、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしていないと判別する。ただし、最後に印刷を実行した時刻からの経過時間が、状態移行条件テーブル400から決定した移行時間(T1〜T8のいずれか)を大幅に(例えば、30分以上)超えている場合には、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしていないと判別するようにする。
【0057】
コントローラ110は、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしていると判別した場合(ステップS106;Yes)、処理をステップS112に移行し、プリンタ100の状態を移行させる条件を満たしていないと判別した場合には(ステップS106;No)、処理をステップS107に移行する。
【0058】
処理がステップS112に移行すると、コントローラ110は、実際にプリンタ100の状態を移行させる(ステップS112)。具体的には、コントローラ110は、ステップS106で状態移行条件テーブル400から読み出した移行条件から、移行させる「状態B又はC(移行後の状態)」を特定し、特定した「状態B又はC」にプリンタ100を移行させる。例えば、「状態B」にプリンタ100を移行させる場合には、操作パネル120は、液晶ディスプレイなどへの電力供給を停止(或いは、削減)する。また、「状態C」にプリンタ100を移行させる場合には、操作パネル120は、液晶ディスプレイなどへの電力供給を停止し、印刷エンジン130は、ヒータなどへの電力供給を停止する。
【0059】
状態を移行後、コントローラ110は、後々、さらに移行可能な状態が存在するか否か判別する(ステップS113)。具体的には、コントローラ110は、状態移行条件テーブル400を読み出して判別する。例えば、図3に示す状態移行条件テーブル400の例で説明すると、「状態C」から「状態B」に状態が移行した場合には、再度、「状態C」に移行することはないため、コントローラ110は、さらに移行可能な状態は存在しないと判別する。一方、それ以外の場合には、さらに移行可能な状態が存在すると判別する。
【0060】
コントローラ110は、さらに移行可能な状態が存在すると判別した場合には(ステップS113;Yes)、処理をステップS107に移行する。一方、移行可能な状態が存在しないと判別した場合には(ステップS113;No)、ステップS102〜ステップS107における情報処理装置100の動作状況情報を取得する処理を行う必要なないため、処理をステップS114に移行する。
【0061】
処理がステップS114に移行すると、コントローラ110は、ステップS101の処理と同様に、情報処理装置200から印刷の指示が有るか否か判別する(ステップS114)。
【0062】
コントローラ110は、印刷の指示が有るまで待機し(ステップS114;No)、印刷の指示が有った場合に(ステップS114;Yes)、処理をステップS108に移行する。
【0063】
一方、処理がステップS107に移行すると、コントローラ110は、動作状況情報を情報処理装置200に要求(ステップS102の要求)する間隔を一定に保つために、所定の一定時間待機し(ステップS107)、待機後、処理をステップS101に移行する。
【0064】
以上の省電力モード移行処理を印刷システム10で行うことによって、ネットワーク50に接続されている情報処理装置200の動作状況情報に基づいて、省電力モードへ移行させるタイミングを決定することができる。すなわち、ネットワークプリンタ(プリンタ100)において、情報処理装置200からの印刷指示の発生確率に応じて、省電力モードへの移行タイミングを別個に設定でき、効率よく省電力できる。
【0065】
また、省電力量の異なる複数の省電力モードを有する場合には、各省電力モードへの移行タイミングについても別個に設定できるため、さらに効率よく省電力できる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)を、予め定めた値(状態移行条件テーブル400)としてる。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)を、プリンタ100での印刷頻度、及び、ネットワーク50に接続されている情報処理装置200の台数、に応じて可変とするようにしてもよい。
【0068】
具体的には、コントローラ110は、印刷頻度と、情報処理装置200の台数と、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)と、を対応付けた閾値決定テーブル500を参照して、移行時間(T1〜T8)を決定する。
【0069】
図5は、閾値決定テーブル500の概略データ構造の一例を示す図である。図示するように、閾値決定テーブル500は、印刷頻度と情報処理装置200の台数との組み合わせごとのレコード540からなる。各レコード540は、予め閾値決定テーブル500に格納されている。各レコード540には、印刷頻度510と、情報処理装置200の台数520と、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)のそれぞれの閾値530と、が対応付けて格納されている。
【0070】
印刷頻度510は、プリンタ100での印刷頻度を示すデータであり、例えば、直近の1時間で印刷を実行した回数に相当するデータからなる。
【0071】
台数520は、ネットワーク50に接続されている情報処理装置200の台数を示すデータであり、例えば、「10」台、「20」台、といった数字列からなる。
【0072】
閾値530は、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)を示すデータであり、例えば、状態移行条件テーブル400に格納されている移行時間T(T1〜T8)に対応する。
【0073】
コントローラ110は、上記実施形態におけるステップS111で記憶した印刷頻度をメモリから読み出すとともに、ネットワーク50を介して通信可能な情報処理装置200の台数を集計する。そして、メモリから読み出した印刷頻度に対応する印刷頻度510と、集計した台数に対応する台数520と、をともに有するレコード540を閾値決定テーブル500から検索し、検索したレコード540に含まれる全ての閾値530を読み出す。さらに、コントローラ110は、状態移行条件テーブル400に格納されている移行時間(T1〜T8)を、閾値決定テーブル500から読み出した閾値530に置き換える(更新する)。これにより、省電力モードへの移行時間(T1〜T8)を変更できる。なお、このように状態移行条件テーブル400を更新するタイミングは任意のタイミングでよい。
【0074】
また、上記実施形態では、情報処理装置200についての動作状況情報の数値化(ステップS104)において、情報処理装置200ごとに算出した合計値の総計値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてメモリに記憶している。しかし、本発明は、これに限定されない。
【0075】
例えば、コントローラ110は、情報処理装置200ごとに算出した合計値の総計値の代わりに、情報処理装置200ごとに算出した合計値のうちの最高値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてメモリに記憶してもよい。
【0076】
また、コントローラ110は、情報処理装置200ごとに算出した合計値の総計値の代わりに、情報処理装置200ごとに算出した合計値の平均値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてメモリに記憶してもよい。
【0077】
また、コントローラ110は、情報処理装置200ごとにスコアの合計値を算出せずに、上記の総計値、最高値、平均値を算出してもよい。例えば、情報処理装置200から受信したプロセス名と、入力装置名の動作に対応するスコアを総計した総計値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてもよい。また、受信したプロセス名と、入力装置名の動作に対応するスコアのうちの最高値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてもよい。また、受信したプロセス名と、入力装置名の動作に対応するスコアの平均値を、全情報処理装置200の動作状況レベルとしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、プリンタ100において、情報処理装置200についての動作状況情報を数値化している(ステップS104)。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、各情報処理装置200の動作状況取得部210が、自装置の動作状況情報を数値化してもよい。この場合、各情報処理装置200は、図2に示すようなスコアテーブル300を有し、上記実施形態でのコントローラ110が行う処理と同様に、プロセス名や入力装置名の動作に対応するスコアを特定する。そして、動作状況取得部210は、特定したスコアをプリンタ100に送信する。また、各情報処理装置200は、特定したスコアの合計値、最高値、平均値などをプリンタ100に送信してもよい。
【0079】
プリンタ100は、各情報処理装置200から、上記のスコアを受信すると、受信したスコアの総計値、最高値、平均値などを全情報処理装置200の動作状況レベルとしてメモリに記憶する。また、プリンタ100は、各情報処理装置200から、上記のスコアの合計値、最高値、平均値などを受信すると、受信した各値の総計値、最高値、平均値などを全情報処理装置200の動作状況レベルとしてメモリに記憶してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、プリンタ100は、各情報処理装置200に対して、定期的に動作状況情報を要求し、その要求に応じて各情報処理装置200から送信されたそれぞれの動作状況情報を受信するようにしている。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、情報処理装置200は、プリンタ100からの要求がなくても、自発的に自装置の動作状況情報を、プリンタ100に送信するようにしてもよい。この場合、各情報処理装置200の動作状況取得部210は、定期的に、自装置の動作状況情報を取得し、取得した動作状況情報を、プリンタ100に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷システムの概略構成図である。
【図2】スコアテーブルの概略データ構造の一例を示す図である。
【図3】状態移行条件テーブルの概略データ構造の一例を示す図である。
【図4】印刷システムにおける省電力モード移行処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】閾値決定テーブルの概略データ構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
10・・・印刷システム、50・・・ネットワーク、100・・・プリンタ、110・・・コントローラ、120・・・操作パネル、130・・・印刷エンジン、200・・・情報処理装置、210・・・動作状況取得部、300・・・スコアテーブル、310・・・動作、320・・・スコア、400・・・状態移行条件テーブル、500・・・閾値決定テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタと、情報処理装置と、がネットワークを介して接続されている印刷システムであって、
前記情報処理装置は、
当該情報処理装置の動作状況を示す動作状況情報を取得し、取得した当該動作状況情報を前記プリンタに送信する動作状況送信手段、を備え、
前記プリンタは、
前記情報処理装置から前記動作状況情報を受信すると、受信した当該動作状況情報に基づいて、省電力モードへの移行時間を決定する移行時間決定手段、を備える、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
情報処理装置がネットワークを介して接続されているプリンタであって、
前記情報処理装置から、当該情報処理装置の動作状況を示す動作状況情報を受信すると、受信した当該動作状況情報に基づいて、省電力モードへの移行時間を決定する移行時間決定手段、を備える、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリンタであって、
前記情報処置装置に対して、当該情報処理装置の動作状況情報を要求する動作状況要求手段、を備え、
移行時間決定手段は、
前記要求に応じて前記情報処理装置から前記動作状況情報を受信すると、受信した当該動作状況情報に基づいて、省電力モードへの移行時間を決定する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のプリンタであって、
前記移行時間決定手段は、
前記情報処理装置において稼働しているプロセスおよび入力装置の少なくともいずれかを特定するデータが含まれている動作状況情報を、前記ネットワークに接続されている前記情報処理装置ごとに受信すると、
受信した前記データから特定されるプロセスおよび入力装置ごとに予め定められているスコアの合計値を、前記情報処理装置ごとに算出し、
前記情報処理装置ごとに算出した合計値の総計値に応じて省電力モードへの移行時間を決定する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のプリンタであって、
前記移行時間決定手段は、
前記情報処理装置において稼働しているプロセスおよび入力装置の少なくともいずれかを特定するデータが含まれている動作状況情報を、前記ネットワークに接続されている前記情報処理装置ごとに受信すると、
受信した前記データから特定されるプロセスおよび入力装置ごとに予め定められているスコアの合計値を、前記情報処理装置ごとに算出し、
前記情報処理装置ごとに算出した合計値の最大値に応じて省電力モードへの移行時間を決定する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項2又は3に記載のプリンタであって、
前記移行時間決定手段は、
前記情報処理装置において稼働しているプロセスおよび入力装置の少なくともいずれかを特定するデータが含まれている動作状況情報を、前記ネットワークに接続されている前記情報処理装置ごとに受信すると、
受信した前記データから特定されるプロセスおよび入力装置ごとに予め定められているスコアの合計値を、前記情報処理装置ごとに算出し、
前記情報処理装置ごとに算出した合計値の平均値に応じて省電力モードへの移行時間を決定する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項に記載のプリンタであって、
印刷頻度を算出する印刷頻度算出手段と、
前記ネットワークに接続されている情報処理装置の台数を特定する台数特定手段と、
を備え、
前記移行時間決定手段は、
前記印刷頻度算出手段で算出した印刷頻度と、前記台数特定手段で特定した台数と、に応じて、省電力モードへの移行時間を変更する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項に記載のプリンタであって、
前記省電力モードは、省電力量の異なる複数のモードからなり、
前記移行時間決定手段は、
省電力量の多い省電力モードほど長い移行時間に決定する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載のプリンタであって、
最後に印刷した時点からの経過時間を算出する経過時間算出手段と、
前記経過時間算出手段で算出した経過時間が、前記移行時間決定手段が決定した前記移行時間を超えた場合に、省電力モードに移行させるモード移行手段と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
ネットワークを介して接続されるプリンタのプリンタホストとして機能する情報処理装置における常駐プログラムであって、
前記情報処理装置は、制御部を備え、
前記制御部が、
当該情報処理装置の動作状況を示す動作状況情報を取得し、取得した当該動作状況情報を前記プリンタに送信する動作状況送信ステップ、
を実行する常駐プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−131801(P2010−131801A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308255(P2008−308255)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】