説明

印刷機

【課題】マスクを効果的にクリーニングすることが可能な印刷機を提供する。
【解決手段】この印刷機100は、マスク120を保持するとともに、平面的に見てマスク120を傾斜させることが可能なマスクテーブル5と、マスク120の下面に沿ってマスク120に対してY2方向に移動することによりマスク120をクリーニングするクリーニング部4と、平面的に見てマスク120をY方向に対して傾斜させた状態で、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY2方向に移動させる制御を行う演算処理部101とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に関し、特に、マスクをクリーニングするクリーニング部を備えた印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクをクリーニングするクリーニング部を備えた印刷機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、固定的に設置されたマスクの下面に当接しながら所定の方向に移動することによってマスクをクリーニングすることが可能な清掃装置(クリーニング部)を備えた印刷機が開示されている。この印刷機では、平面的に見て、矩形形状のマスクをそのマスクの側辺が清掃装置の移動方向に対して平行になるように配置させた状態でクリーニングしていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2718492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、矩形形状のマスクをそのマスクの側辺が清掃装置(クリーニング部)の移動方向に対して平行になるように配置させた状態でクリーニングしていると考えられるので、マスクの開口パターンによっては効果的にクリーニングすることができないという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、マスクを効果的にクリーニングすることが可能な印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における印刷機は、マスクを保持するとともに、平面的に見てマスクを傾斜させることが可能なマスク保持部と、マスクの下面に沿ってマスクに対して所定の方向に相対移動することによりマスクをクリーニングするクリーニング部と、平面的に見てマスクを所定の方向に対して傾斜させた状態で、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させる制御を行う制御部とを備えている。
【0008】
この発明の一の局面による印刷機では、上記のように、平面的に見てマスクをクリーニング部が相対移動する所定の方向に対して傾斜させた状態で、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させる制御を行う制御部を設けることによって、マスクを所定の方向に対して傾斜させない状態(たとえば、矩形形状のマスクにおいて側辺が所定の方向に対して平行に配置された状態)では効果的にクリーニングすることができない場合に、マスクを所定の方向に対して傾斜させてクリーニング部の移動方向に対するマスクの開口部の配置状態を変えることができるので、マスクを効果的にクリーニングすることができる。
【0009】
上記一の局面による印刷機において、好ましくは、制御部は、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させながら、平面的に見てマスクの所定の方向に対する傾斜角度を変える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、クリーニング部を相対移動させながら、クリーニング部の移動方向に対するマスクの開口部の配置状態を変えることができるので、マスクの開口部の配置状態が一定の場合に比べて、クリーニング性を向上させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させながら、平面的に見てマスクの所定の方向に対する傾斜角度を変えるようにマスクを揺動させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、クリーニング部およびマスクを所定の方向に加えて揺動方向にも相対移動させることができるので、クリーニング性をより向上させることができる。
【0011】
上記マスクを揺動させる構成において、好ましくは、制御部は、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させながら、マスクの揺動速度を変える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、マスクの揺動速度を小さく(遅く)することにより、マスクを手で拭き取るようにしてクリーニングすることができるとともに、マスクの揺動速度を大きく(速く)することにより、マスクの開口部に付着した除去対象物(半田など)を掻き出すようにしてクリーニングすることができる。
【0012】
上記マスクを揺動させる構成において、好ましくは、制御部は、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させながら、マスクの揺動における傾斜角度の最大角度を変える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、クリーニング部が相対移動する所定の方向に対してマスクの傾斜角度を大きくしたり小さくしたりしながらマスクをクリーニングすることができるので、マスクの開口パターンに応じて効果的にクリーニングすることができる。
【0013】
上記一の局面による印刷機において、好ましくは、制御部は、クリーニング部をマスクの下面に沿って所定の方向に相対移動させながら、平面的に見てマスクを所定の方向に対して傾斜させた状態でマスクを所定の方向および所定の方向とは反対方向に反復移動させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、所定の方向に対して傾斜させたマスクを所定の方向(マスクが相対移動する方向)に反復移動させながら効果的にクリーニングすることができる。
【0014】
上記一の局面による印刷機において、好ましくは、クリーニング部は、マスクの下面に沿って所定の方向に相対移動することによりマスクをクリーニングした後、マスクの下面に沿って所定の方向とは反対方向に相対移動することによりマスクをさらにクリーニングするように構成されており、制御部は、クリーニング部が所定の方向に相対移動する際と所定の方向とは反対方向に相対移動する際とで、マスクの所定の方向に対する傾斜角度およびマスクの傾斜動作態様の少なくとも一方を変える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、クリーニング部が所定の方向および所定の方向とは反対方向に相対移動する際に、それぞれに適したマスクの傾斜角度や傾斜動作態様に設定することにより効果的にクリーニングすることができる。
【0015】
上記一の局面による印刷機において、好ましくは、クリーニング部によりマスクをクリーニングする際のマスクの所定の方向に対する傾斜角度およびマスクの傾斜動作態様の少なくとも一方を、ユーザにより設定可能に構成されている。このように構成すれば、ユーザにより設定されるマスクに適した傾斜角度や傾斜動作態様でクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による印刷機の全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による印刷機のクリーニング部を示した斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による印刷機のマスクテーブルを示した斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による印刷機のマスクテーブルの構成を説明するための概略平面図である。
【図5】本発明の一実施形態による印刷機のマスクテーブルによりマスクを回動させた状態を示した概略平面図である。
【図6】本発明の一実施形態による印刷機の全体構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による印刷機100の構成について説明する。
【0019】
本実施形態による印刷機100は、基板110に対して半田の印刷を行う機能を有している。印刷機100は、図1に示すように、基板支持テーブル1と、基板支持テーブル1の上方(Z1方向)に配置された印刷機構部2とを備えている。
【0020】
基板支持テーブル1は、ベース部材10と、本体部11と、一対のコンベア12とを含んでいる。本体部11は、ベース部材10に不図示の駆動装置によりX方向に移動可能に支持され、ベース部材10の下面に固定されたスライダ13が、基台3上に設けられたY方向に延びるレール部31に沿ってY方向に移動可能とされることで、ベース部材10とともに本体部11がY方向に移動可能に構成されている。コンベア12は、本体部11がY方向に移動するのに伴って本体部11と共にY方向に移動されるように構成されている。また、コンベア12は、Y方向に直交する水平方向(X方向)に基板110を搬送する機能を有している。
【0021】
印刷機構部2は、基板支持テーブル1とは独立してY方向に移動可能に構成されている。また、印刷機構部2は、基板110上に配置されたマスク120の上面に半田ペーストを供給する機能を有している。また、印刷機構部2は、Y方向に往復移動することによって、マスク120上に供給した半田ペーストをスキージ21によりマスク120の上面に広げるように構成されている。これにより、マスク120の開口領域120a(図4および図5参照)に形成された図示しない開口部を介して半田ペーストが基板110の上面に印刷される。
【0022】
基板支持テーブル1の前側(Y1方向側)部分には、図1に示すように、マスク120をクリーニングするためのクリーニング部4が取り付けられている。クリーニング部4は、基板110に半田ペーストを印刷する際にマスク120に付着した半田ペーストを除去するために設けられている。また、クリーニング部4は、基板支持テーブル1がY方向に移動するのに伴って基板支持テーブル1と共にY方向に移動されるように構成されている。また、クリーニング部4は、図2に示すように、X方向に延びるベース部41と、ベース部41のX方向の両端部に設けられた一対の側壁部42と、クリーニング部4の上部に設けられたX方向に延びるクリーニングヘッド部43と、未使用のクリーニングシート130が巻回されるシート供給部44と、使用済みのクリーニングシート130が巻回されるシート回収部45と、吸引ユニット46(図6参照)とにより主として構成されている。
【0023】
クリーニングヘッド部43は、昇降用駆動源431(図6参照)により上下方向(Z方向)に昇降可能に構成されている。クリーニングヘッド部43は、マスク120をクリーニングする際に、上方に移動されることによってクリーニングシート130を介してマスク120の下面に当接するように構成されている。シート供給部44は、一対の側壁部42により両端部が支持されたX方向に延びる軸部441を有し、軸部441には、未使用のクリーニングシート130が巻回されている。シート回収部45は、一対の側壁部42により両端部が支持されたX方向に延びる軸部451を有し、軸部451により使用済みのクリーニングシート130を巻き取るように構成されている。また、シート回収部45は、巻取用駆動部452(図6参照)により軸部451が回動されることによってクリーニングシート130を巻き取るように構成されている。吸引ユニット46は、クリーニングヘッド部43に設けられた不図示の複数の吸引孔、およびマスク120に当接するようにされたクリーニングシート130を介して空気を吸引し、マスク120の下面に付着した半田ペーストをクリーニングシート130に吸引付着させる機能を有している。クリーニングシート130は、可撓性および通気性を有する布材により構成されている。なお、紙材や皮革など、布材以外の材料により構成されたクリーニングシートを用いてもよい。
【0024】
また、クリーニング部4は、クリーニングヘッド部43によりクリーニングシート130をマスク120の下面に押し当てた状態でY方向に移動することによってマスク120をクリーニングするように構成されている。すなわち、クリーニング部4は、Y方向に移動することによりマスク120に付着した半田ペーストをクリーニングシート130で拭き取るように構成されている。クリーニング部4は、マスク120をクリーニングする際に、クリーニングシート130がクリーニングヘッド部43上を通過するようにシート供給部44に巻回されたクリーニングシート130をシート回収部45に巻き取るように構成されている。これにより、順次供給される未使用のクリーニングシート130を用いてマスク120をクリーニングすることが可能である。また、クリーニング部4は、マスク120をクリーニングする際に、吸引ユニット46(図6参照)により半田ペーストを下方に向かって吸引しながらクリーニングシート130で拭き取るとともに、クリーニングシート130の通気路となる繊維の隙間部分で拭き取った半田ペーストを保持するように構成されている。
【0025】
また、クリーニング部4は、マスク120の下面に沿ってマスク120に対して後方(Y2方向)に移動しながらマスク120をクリーニングした後マスク120の下面に沿ってマスク120に対して前方(Y1方向)に移動しながらマスク120をさらにクリーニングするように構成されている。すなわち、クリーニング部4は、マスク120を前方側(Y1方向側)から後方側(Y2方向側)に向かってクリーニングした後、連続してあるいは次のクリーニングの機会時に、マスク120を後方側(Y2方向側)から前方側(Y1方向側)に向かってさらにクリーニングするように構成されている。
【0026】
また、印刷機100は、基板支持テーブル1と印刷機構部2との間でマスク120を支持するマスクテーブル5をさらに備えている。次に、図3〜図5を参照して、マスクテーブル5の構成について説明する。なお、マスクテーブル5は、本発明の「マスク保持部」の一例である。
【0027】
マスクテーブル5は、図3に示すように、本体部51と、本体部51に支持されたマスク保持部52とを有している。本体部51は、平面的に見て略U字形状を有している。具体的には、本体部51は、Y方向に延びる一対のY軸プレート部511と、一対のY軸プレート部511のY2方向側の端部を連結するX軸プレート部512とを有している。また、本体部51は、スライダ513を介してY方向に延びる一対のレール53に支持されており、一対のレール53に沿ってY方向に移動可能に構成されている。また、本体部51は、平面的に見て回動可能(すなわち、Z軸周りに回動可能)に構成されている。
【0028】
詳細には、本体部51は、図4に示すように、X方向の両端部のそれぞれにおいて3つのスライダ513により支持されている。本体部51のX1方向側のY軸プレート部511は、Y方向の両端部のそれぞれが連結部材514を介して対応するスライダ513に連結されている。連結部材514は、対応するスライダ513およびY軸プレート部511の両方に回動可能に取り付けられている。また、本体部51のX1方向側のY軸プレート部511は、Y方向の中央部が連結部材515を介して対応するスライダ513に連結されている。連結部材515は、対応するスライダ513に固定的に取り付けられているとともに、Y軸プレート部511に回動可能に取り付けられている。また、連結部材515が取り付けられた中央のスライダ513には、ナット部材513aが固定的に取り付けられている。ナット部材513aは、サーボモータからなるY軸駆動部54により回動されるボールネジ軸54aに螺合して取り付けられている。
【0029】
X2方向側のY軸プレート部511は、Y方向の両端部および中央部のそれぞれが連結部材516を介して対応するスライダ513に連結されている。連結部材516は、対応するスライダ513およびY軸プレート部511の両方に回動可能に取り付けられている。また、X2方向側の中央のスライダ513には、ナット部材513bが固定的に取り付けられている。ナット部材513bは、サーボモータからなるY軸駆動部55により回動されるボールネジ軸55aに螺合して取り付けられている。
【0030】
上記のような構成により、本体部51は、Y軸駆動部54および55が互いに同量駆動される場合には、X1方向側およびX2方向側の両方がY方向に同量移動されることによりY方向に直線移動される。また、Y軸駆動部54および55が互いに異なる量だけ駆動される場合には、本体部51のX1方向側およびX2方向側で互いにY方向への移動量が異なる。この場合、本体部51は、図5に示すように、X1方向側の中央の連結部材515のY軸プレート部511との連結部分を回動中心として回動される。すなわち、本実施形態では、Y軸駆動部54および55の駆動量を制御することによって、本体部51をY方向に直線移動させたり平面的に見て回動させたりすることが可能である。これにより、後述するように、マスク保持部52に保持されたマスク120をY方向に直線移動させたり平面的に見てクリーニング部4の移動方向(Y方向)に対して傾斜させたりすることが可能である。なお、Y軸駆動部54および55によるX1方向側のスライダ513とX2方向側のスライダ513の移動量を同じとするも移動方向を逆とする場合には、本体部51をY方向に停止させたまま、Z軸周りに回動させることができる。
【0031】
マスク保持部52は、図3に示すように、枠状に形成されており、平面的に見て略矩形形状の開口部521を有している。マスク保持部52は、本体部51の移動に伴って本体部51と共に移動するように構成されている。具体的には、マスク保持部52は、本体部51がY方向に直線移動するのに伴って本体部51と共にY方向に直線移動するように構成されている。また、マスク保持部52は、本体部51が平面的に見て回動するのに伴って本体部51と共に回動するように構成されている。これにより、図4および図5に示すように、マスク保持部52(図3参照)に保持されたマスク120をY方向に直線移動させたり平面的に見て回動させたりすることが可能である。また、マスク保持部52は、本体部51に対して上下方向(Z方向)に昇降可能に構成されている。次に、マスク保持部52を上下方向に昇降させる機構について説明する。
【0032】
図3に示すように、本体部51の一対のY軸プレート部511には、それぞれ、Y軸プレート部511を貫通する一対のボールネジ軸56が設けられている。ボールネジ軸56の下端部には、プーリ一体型ナット561が取り付けられている。プーリ一体型ナット561には、駆動ベルト562が巻回されており、サーボモータからなるZ軸駆動部57により駆動ベルト562を介して回動されるように構成されている。また、プーリ一体型ナット561は、マスク保持部52に回動可能でかつZ方向に固定的に取り付けられている。また、一対のボールネジ軸56の上端部には、Y方向に延びる連結部材58が取り付けられている。このような構成により、マスク保持部52は、Z軸駆動部57によりプーリ一体型ナット561が回動されることによって本体部51に対して上下方向(Z方向)に移動される。この際、マスク保持部52は、Z方向に延びる一対のガイド軸59に案内されてZ方向に移動される。
【0033】
次に、図6を参照して、本実施形態による印刷機100の内部の構成について説明する。
【0034】
印刷機100には、図6に示すように、印刷機100全体の制御を司る演算処理部101と、表示ユニット102と、記憶部103と、基板搬送制御部104と、マスクテーブル制御部105と、クリーナ制御部106とが設けられている。なお、演算処理部101は、本発明の「制御部」の一例である。
【0035】
演算処理部101は、CPUにより主として構成されており、記憶部103に記憶された印刷プログラムに基づいて印刷処理を実行するように構成されている。また、演算処理部101は、記憶部103に記憶されたクリーニングプログラムに基づいてクリーニング部4によるクリーニング処理を実行するように構成されている。表示ユニット102は、各種の情報をユーザに表示する機能を有している。また、ユーザは、表示ユニット102を介して印刷処理およびクリーニング処理に関する設定を行うことが可能である。基板搬送制御部104は、演算処理部101からの指示に基づいて基板支持テーブル1のコンベア12(図1参照)の搬送動作、クランプ装置14(図1参照)による基板110のクランプおよびリリース動作、ベース部材10のY方向移動動作、および本体部11のX方向移動動作を制御するように構成されている。マスクテーブル制御部105は、演算処理部101からの指示に基づいてマスクテーブル5の動作を制御するように構成されている。具体的には、マスクテーブル制御部105は、演算処理部101からの指示に基づいて、2つのY軸駆動部54、55およびZ軸駆動部57を制御するように構成されている。クリーナ制御部106は、演算処理部101からの指示に基づいてクリーニング部4の動作を制御するように構成されている。具体的には、クリーナ制御部106は、演算処理部101からの指示に基づいて、昇降用駆動部431、吸引ユニット46および巻取用駆動部452を制御するように構成されている。
【0036】
撮像制御部107は、印刷開始前に基板カメラ61が基板110上面のフィデューシャルマークを、マスクカメラ62がマスク120下面のフィデューシャルマークを撮像するように制御し、さらに、基板110への印刷が所定枚数終了した時点で、マスクカメラ62がマスク120の開口領域120a下面を撮像するよう制御する。演算処理部101は印刷開始前に、基板カメラ61およびマスクカメラ62のそれぞれのフィデューシャルマークの画像から基板110とマスク120との位置ずれ量を判断し、この位置ずれが解消するように、基板支持テーブル1の本体部11のX方向移動、マスクテーブル5の本体部51のY方向およびR方向の各位置制御をし、その後マスク保持部52をZ方向に移動して基板110にマスク120を重ね合わせるように制御する。さらに、演算処理部101は、基板110への印刷が所定枚数終了した時、あるいはマスクカメラ62によるマスク120下面の撮像結果により汚れていると判断した時に、クリーニング処理を行うよう制御する。
【0037】
次に、図4および図5を参照して、本実施形態の印刷機100によるクリーニング処理について詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の印刷機100では、クリーニングするマスク120に応じて複数の異なるクリーニング態様でクリーニング処理を行うことが可能である。具体的には、演算処理部101は、図4に示すように、マスクテーブル5により保持されたマスク120をY方向に沿って配置させた状態(Y方向に対して傾斜させない状態)で、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動してクリーニングさせる制御を行うことが可能である。また、演算処理部101は、図5に示すように、マスクテーブル5により保持されたマスク120をZ軸周りに回動させることによりY方向に対して所定の傾斜角度α(たとえば、α=2度)で傾斜させた状態で、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動してクリーニングさせる制御を行うことが可能である。すなわち、マスク120の開口領域120aをY方向に対して傾斜させた状態でマスク120をクリーニングすることが可能である。また、本実施形態では、ユーザは、表示ユニット102を介して傾斜角度αを0度〜5度の範囲内で任意に設定可能である。
【0039】
なお、印刷前の基板110とマスク120との位置合わせのため、マスク120側をZ軸周りに回動することにより、クリーニング部4の移動方向であるY方向に対してマスク120が傾斜する場合があるが、この角度は小さい。本実施形態の印刷機100では、この位置合わせとは別に、クリーニングのためにマスク120をY方向に対して傾斜している。この傾斜角度αは、位置合わせのための傾斜角度βよりは大きい。
【0040】
また、演算処理部101は、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、平面的に見てマスク120のY方向に対する傾斜角度αを変えることも可能である。たとえば、演算処理部101は、クリーニング中において、クリーニング部4がY方向の所定の位置に到達した時点でマスク120の傾斜角度αを変更する制御を行うことが可能である。本実施形態の印刷機100では、ユーザにより、傾斜角度αを変更するタイミングおよび変更前後の傾斜角度αを任意に設定可能である。
【0041】
また、演算処理部101は、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、マスク120の傾斜角度αを変えるようにマスク120を揺動させることも可能である。すなわち、演算処理部101は、平面的に見てマスク120を揺動させながらクリーニングする制御を行うことが可能である。この場合、演算処理部101は、クリーニング中において、クリーニング部4がY方向の所定の位置に到達した時点でマスク120の揺動量(揺動中の最大傾斜角αに相当。揺動は傾斜角度αが−αと+αの間で変化を繰り返す形で実施される)を変更する制御を行うことも可能である。また、演算処理部101は、クリーニング中において、クリーニング部4がY方向の所定の位置に到達した時点でマスク120の揺動速度を変更する制御を行うことも可能である。また、ユーザは、揺動量および揺動速度を変更するタイミングおよび変更前後の揺動量および揺動速度を任意に設定可能である。揺動量を大きくし、かつ、揺動速度を小さく(遅く)すると、クリーニング部4に対してマスク120がゆっくり大きく動き、マスク120を手拭きのようにクリーニングすることが可能である。一方、揺動量を小さくし、かつ、揺動速度を大きく(速く)すると、クリーニング部4に対してマスク120がすばやく小刻みに動いて振動する。これにより、マスク20を振動させた状態でクリーニングすることが可能である。
【0042】
また、演算処理部101は、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、マスク120をY1方向およびY2方向に反復移動させることが可能である。この際、演算処理部101は、マスク120をY方向に対して所定の傾斜角度α傾斜させた状態でマスク120をY1およびY2方向に反復移動させることも可能である。たとえば、マスク120のY1方向移動によるクリーニング時は、傾斜角度αを+αとし、マスク120のY2方向移動によるクリーニング時は、傾斜角度αを−αとすることも可能である。また、本実施形態では、ユーザにより、マスク120のY1方向およびY2方向への反復移動量および反復移動速度を任意に設定可能である。これにより、マスク120をY方向に大きくゆっくりと反復移動させたり、マスク120をY方向に振動するように小刻みに反復移動させたりすることが可能である。また、演算処理部101は、クリーニング部4がY2方向に移動する際とY1方向に移動する際とで、クリーニング態様を切り替える制御を行うことも可能である。上記のように、本実施形態では、ユーザにより、クリーニング態様を任意に設定可能であるとともに、演算処理部101により、ユーザにより設定されたクリーニング態様でクリーニング処理が実行される。
【0043】
本実施形態では、上記のように、平面的に見てマスク120をY方向に対して傾斜させた状態で、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させる制御を行う演算処理部101を設けることによって、マスク120をY方向に対して傾斜させない状態では効果的にクリーニングすることができない場合に、マスク120をY方向に対して傾斜させてクリーニング部4の移動方向に対するマスク120の開口部の配置状態を変えることができるので、マスク120を効果的にクリーニングすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、平面的に見てマスク120のY方向に対する傾斜角度αを変える制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、クリーニング部4を移動させながら、クリーニング部4の移動方向に対するマスク120の開口部の配置状態を変えることができるので、マスク120の開口部の配置状態が一定の場合に比べて、クリーニング性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、平面的に見てマスク120のY方向に対する傾斜角度αを変えるようにマスク120を揺動させる制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、クリーニング部4およびマスク120をY2方向に加えて揺動方向にも移動させることができるので、クリーニング性をより向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、マスク120の揺動速度を変える制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、マスク120の揺動速度を小さく(遅く)することにより、マスク120を手で拭き取るようにしてクリーニングすることができるとともに、マスク120の揺動速度を大きく(速く)することにより、マスク120の開口部に付着した半田ペーストを掻き出すようにしてクリーニングすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、マスク120の揺動量を変える制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、クリーニング部4が移動するY方向に対してマスク120の傾斜角度αを大きくしたり小さくしたりしながらマスク120をクリーニングすることができるので、マスク120の開口パターンに応じて効果的にクリーニングすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、クリーニング部4をマスク120の下面に沿ってY方向に移動させながら、平面的に見てマスク120をY方向に対して傾斜させた状態でマスク120をY方向に反復移動させる制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、Y方向に対して傾斜させたマスク120をY方向に反復移動させながら効果的にクリーニングすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、クリーニング部4がY方向移動の内、Y2方向に移動する際とY1方向に移動する際とで、マスク120のY方向に対する傾斜角度αやマスク120の傾斜動作態様(揺動量や揺動速度など)を変える制御を行うように演算処理部101を構成する。このように構成すれば、クリーニング部4がY2方向およびY1方向に移動する際に、それぞれに適したマスク120の傾斜角度αや傾斜動作態様に設定することにより効果的にクリーニングすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、クリーニング部4によりマスク120をクリーニングする際のマスク120のY方向に対する傾斜角度αやマスク120の傾斜動作態様(揺動量や揺動速度など)をユーザにより設定可能にする。このように構成すれば、ユーザにより設定されるマスクに適した傾斜角度や傾斜動作態様(クリーニング態様)でクリーニングすることができる。
【0051】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
たとえば、上記実施形態では、クリーニング部をマスクに対して相対移動させる構成の一例として、クリーニング部をY方向に移動させることによりマスクをクリーニングする構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クリーニング部をY方向に移動させない状態でマスク保持部をY方向に移動させることによって、クリーニング部をマスクに対して相対移動させてクリーニングする構成であってもよいし、クリーニング部およびマスク保持部の両方をY方向に移動させることによって、クリーニング部をマスクに対して相対移動させてクリーニングする構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、本発明のマスク保持部としてのマスクテーブルにより、マスクを回動させることによってマスクをY方向に対して傾斜させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マスク保持部によりマスクを所定の方向に傾斜させることが可能であれば、回動以外の動作でマスクを傾斜させる構成であってもよい。
【0054】
なお、上記実施形態の印刷機100とは異なり、基板支持テーブル1側に位置合わせのためのR軸方向駆動装置を配置する印刷機においては、位置合わせを行ってもクリーニング部4の移動方向であるY方向に対してマスク120が傾斜することはない。
【符号の説明】
【0055】
4 クリーニング部
5 マスクテーブル(マスク保持部)
100 印刷機
101 演算処理部(制御部)
120 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを保持するとともに、平面的に見て前記マスクを傾斜させることが可能なマスク保持部と、
前記マスクの下面に沿って前記マスクに対して所定の方向に相対移動することにより前記マスクをクリーニングするクリーニング部と、
平面的に見て前記マスクを前記所定の方向に対して傾斜させた状態で、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させる制御を行う制御部とを備える、印刷機。
【請求項2】
前記制御部は、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させながら、平面的に見て前記マスクの前記所定の方向に対する傾斜角度を変える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記制御部は、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させながら、平面的に見て前記マスクの前記所定の方向に対する傾斜角度を変えるように前記マスクを揺動させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記制御部は、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させながら、前記マスクの揺動速度を変える制御を行うように構成されている、請求項3に記載の印刷機。
【請求項5】
前記制御部は、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させながら、前記マスクの揺動における前記傾斜角度の最大角度を変える制御を行うように構成されている、請求項3または4に記載の印刷機。
【請求項6】
前記制御部は、前記クリーニング部を前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動させながら、平面的に見て前記マスクを前記所定の方向に対して傾斜させた状態で前記マスクを前記所定の方向および前記所定の方向とは反対方向に反復移動させる制御を行うように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項7】
前記クリーニング部は、前記マスクの下面に沿って前記所定の方向に相対移動することにより前記マスクをクリーニングした後、前記マスクの下面に沿って前記所定の方向とは反対方向に相対移動することにより前記マスクをさらにクリーニングするように構成されており、
前記制御部は、前記クリーニング部が前記所定の方向に相対移動する際と前記所定の方向とは反対方向に相対移動する際とで、前記マスクの前記所定の方向に対する傾斜角度および前記マスクの傾斜動作態様の少なくとも一方を変える制御を行うように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項8】
前記クリーニング部により前記マスクをクリーニングする際の前記マスクの前記所定の方向に対する傾斜角度および前記マスクの傾斜動作態様の少なくとも一方を、ユーザにより設定可能に構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245765(P2012−245765A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121710(P2011−121710)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】