説明

印刷装置及び印刷マスクの管理方法

【課題】 印刷マスクの帯電による印刷対象物上の部品の静電破壊を確実に防止できる印刷装置及び印刷マスクの管理方法を提供する。
【解決手段】 複数の開口部が形成され表面に導電性被膜203が設けられた印刷マスク2を印刷に使用し、その印刷に使用された印刷マスク2を洗浄する。その印刷マスク2の洗浄後、印刷マスク2を次の印刷に使用する前に、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗を測定する。そして、この測定結果と予め設定した判定基準値とを比較し、その比較結果に基づいて印刷マスク2を印刷に使用可能な否かを判定し、判定結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の開口部が形成され表面に導電性被膜が設けられた印刷マスクを用いる印刷装置及び印刷マスクの管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーム半田、インク、接着剤、ペースト状の樹脂などの印刷物質をプリント基板などの印刷対象物上に印刷する印刷装置に用いる印刷マスクとして、スクリーンマスクとメタルマスクが知られているが、本出願人は、これら従来のマスクの欠点を解消した印刷マスクを提案した(特許文献1、特許文献2参照)。この印刷マスクは、従来のメタルマスクと同様にして使用されるものであるが、素材がメタルよりも柔らかなプラスチックであるため、印刷対象物の表面の凹凸にしなやかに追随して密着性に優れ、印刷物質のにじみの発生が少ないという利点がある。また、製造方法もエキシマレーザーによるアブレーション加工であり、非常に微細できれいな凹部や貫通孔の加工ができ、印刷物質の抜け性も向上する。さらに、ファインピッチ部品に合わせて印刷マスクの材料であるプラスチック材の表面を部分的に段掘りして薄くし、この薄肉とした段掘り部に微小開口部を形成したいわゆるハーフエッチングマスクも容易に作製することができる。このため、従来のメタルマスク以上の高品位、高精細なペースト印刷が可能となった。
【0003】
しかしながら、一方において、印刷マスクの素材が絶縁体で、しかも金属よりも柔らかいプラスチック材であるため、印刷時の摩擦によって静電気が発生しやすい。印刷マスクが帯電すると、次のような問題が発生する。例えば印刷マスクを両面リフロー半田付けに使用した場合、印刷マスクに発生した静電気は、印刷による摩擦帯電が繰り返される度に蓄積されて高電位になっていき、やがて帯電した静電気の電位が或る電圧以上に達すると、両面リフローによって既に一方の面に実装されているROM、RAM、CMOS製品、CCDなどの電子部品に印刷マスクの帯電電荷が流れ込み、部品内部の微小回路を静電破壊させるおそれがある。また、この静電破壊は、帯電してしまった印刷マスクを印刷対象物からはがすときの放電現象(剥離放電)によっても発生する場合もある。上記静電破壊された部品は、外観検査やインサーキット検査ではその不具合の発生の有無を判断することができないため、実装のほぼ最終工程である機能検査で発見されることになり、多大なロスを発生する。さらに、ROM,RAMなどのメモリ回路内部の静電破壊は、通常の機能検査では発見されないものもあり、不良品の外部流出という事態も起こり得る。
【0004】
そこで、本出願人は、プラスチック材からなる印刷マスクの表面に導電性被膜(導電層)を形成することにより、静電気の帯電を防止することができる印刷マスクを提案した(特許文献3参照)。また、本出願人は、上記導電性被膜(導電層)として、導電性樹脂の被膜(例えばポリウレタン樹脂にカーボン粉を分散したもの)を形成した印刷マスクを提案した(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−16924号公報
【特許文献2】特開平7−81027号公報
【特許文献3】特開平8−252988号公報
【特許文献4】特開平11−321145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記導電性被膜が形成された印刷マスクは、所定回数の印刷に使用された後、印刷マスク表面に付着している汚れを除去するために洗浄される。そして、洗浄された印刷マスクは印刷に再使用される。ところが、本発明者らが上記導電性被膜が形成された印刷マスクを洗浄して印刷に繰り返し使用したところ、上記印刷マスクの帯電による印刷対象物上の部品の静電破壊が発生してしまう場合があることがわかった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、印刷マスクの帯電による印刷対象物上の部品の静電破壊を確実に防止できる印刷装置及び印刷マスクの管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の開口部が形成され表面に導電性被膜が設けられた印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、上記印刷に使用された上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定する抵抗測定手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の印刷装置において、上記印刷に使用された上記印刷マスクを洗浄する洗浄手段を備え、該洗浄手段で該印刷マスクを洗浄した後、該印刷マスクを次の印刷に使用する前に、上記抵抗測定手段による該印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定を行なうことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の印刷装置において、上記抵抗測定手段の測定結果を出力する測定結果出力手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、上記抵抗測定手段の測定結果と予め設定した判定基準値とを比較し、その比較結果に基づいて上記印刷マスクを印刷に使用可能な否かを判定する使用可否判定手段と、該判定手段の判定結果を出力する判定結果出力手段と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、上記抵抗測定手段の過去の測定結果を含む履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段と、該履歴情報記憶手段に記憶されている該履歴情報に基づいて、上記印刷マスクの寿命を予測する寿命予測手段と、該寿命予測手段による該印刷マスクの寿命の予測結果を出力する寿命予測結果出力手段と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの印刷装置において、上記印刷マスクの基材は絶縁性樹脂シートであり、上記導電性被膜は、カーボンを含有する導電性樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、複数の開口部が形成され表面に導電性被膜が設けられた印刷マスクの管理方法であって、印刷に使用された印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の印刷マスクの管理方法であって、上記印刷に使用された上記印刷マスクを洗浄し、該印刷マスクの洗浄後、該印刷マスクを次の印刷に使用する前に、該印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の印刷マスクの管理方法において、上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定結果を出力することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9のいずれかの印刷マスクの管理方法において、上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定結果と予め設定した判定基準値とを比較し、その比較結果に基づいて該印刷マスクを印刷に使用可能な否かを判定し、使用不可と判定した印刷マスクをその後の印刷に使用しないことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項7乃至9のいずれかの印刷マスクの管理方法において、上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の過去の測定結果を含む履歴情報に基づいて、該印刷マスクの寿命を予測し、その印刷マスクの寿命の予測結果を出力することを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項7乃至11のいずれかの印刷マスクの管理方法において、上記印刷マスクの基材は絶縁性樹脂シートであり、上記導電性被膜は、カーボンを含有する導電性樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の印刷装置及び請求項7の印刷マスクの管理方法では、印刷に使用された印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することにより、その測定結果に基づいて、印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗が次の印刷に使用できる程度の電気抵抗であるか否かを判定し、導電性被膜の電気抵抗が上昇してしまった印刷マスクを次の印刷に使用しないように印刷マスクを管理することができる。
【0010】
請求項2の印刷装置及び請求項8の印刷マスクの管理方法では、印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗が上昇する可能性が高い印刷マスクの洗浄後に、上記抵抗測定手段による印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定を行なうことにより、洗浄によって導電性被膜の電気抵抗が上昇した印刷マスクの使用を確実に回避できる。
【0011】
請求項3の印刷装置及び請求項9の印刷マスクの管理方法では、上記導電性被膜の電気抵抗の測定結果を出力することにより、印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の数値を、印刷装置の利用者に知らせ、印刷マスクを次の印刷に使用するか否かを容易に判断できるようにする。
【0012】
請求項4の印刷装置及び請求項10の印刷マスクの管理方法では、印刷マスクを印刷に使用できるか否かを判定するための導電性被膜の電気抵抗に対する判定基準値を、予め設定しておく。この判定基準値と、導電性被膜の電気抵抗の測定結果とを比較し、その比較結果に基づいて印刷マスクを印刷に使用可能な否かを判定する。この判定結果により、導電性被膜の電気抵抗が上昇した印刷マスクの使用を確実に回避できる。特に、上記判定結果を出力する場合は、印刷マスクを次の印刷に使用するか否かの判断作業が不要になる。
【0013】
請求項5の印刷装置及び請求項11の印刷マスクの管理方法では、上記導電性被膜の電気抵抗の過去の測定結果を含む履歴情報に基づいて、印刷マスクの寿命を予測し、その予測結果を出力することにより、印刷マスクの交換時期を予告し、印刷マスクの交換準備を促すことができる。
【0014】
また、絶縁性樹脂シート上にカーボンを含有する導電性樹脂からなる導電性被膜を形成した印刷マスクは、洗浄を繰り返すと、導電性被膜中のカーボン(グラファイト)の層間に存在する導電性に寄与する荷電イオンが抜け出たり導電性被膜が損傷を受けたりすることにより、導電性被膜の電気抵抗が上昇する可能性が高くなる。
そこで、請求項6の印刷装置及び請求項12の印刷マスクの管理方法では、印刷マスクの絶縁性樹脂シート上に形成されたカーボン(グラファイト)を含有する導電性樹脂からなる導電性被膜について、電気抵抗を測定することにより、洗浄によってカーボン含有の導電性被膜の電気抵抗が上昇した印刷マスクの使用を確実に回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷に使用された印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することにより、その測定結果に基づいて、その電気抵抗が次の印刷に使用できる程度の電気抵抗であるか否かを判定し、導電性被膜の電気抵抗が上昇してしまった印刷マスクを次の印刷に使用しないように印刷マスクを管理することができるので、印刷マスクの帯電による印刷対象物上の部品の静電破壊を確実に防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る印刷装置を用いる印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図である。また、図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態の基板製造方法で製造する電子回路基板1の断面構造の一例を示す説明図及び平面図である。
基板1は、図2(a)に示すように第1の電子部品としての表面実装用の樹脂外装部品(以下、「樹脂外装チップ」という。)1bと、第2の電子部品としての表面実装用のベアチップ部品(以下、単に「ベアチップ」という。)1cとが実装された電子回路基板である。樹脂外装チップ1bは、樹脂で封止された半導体IC、抵抗、コンデンサー等の部品であり、ベアチップ1cは、樹脂で封止する前の裸の半導体ICチップである。基板1とベアチップ1cとの間には、ベアチップ1cが基板1上に安定して固定されるように樹脂55が充填されている。一方、基板1と樹脂外装チップ1bとの間には樹脂が充填されていない。
【0017】
また、上記基板1は、図2(b)に示すように所定の機能を有する同じ形状及び回路の仕様を有する個別基板1aを多数(例えば数10個〜数100個)並べて一括形成された基板である。この基板1は、上記樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装され所定の機能検査が行われた後、各個別基板1aに分離される。これらの分離された個別基板1aの一つ一つが所定の機能を有する回路モジュール部品として用いられる。
【0018】
図1に示す基板製造方法においては、まず、樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装される前の基板1に、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を印刷する半田印刷工程(P1)を実行される。この半田印刷工程の後、同一の1台の部品装着装置により、上記樹脂外装チップ1bを基板1の所定位置に装着する第1のマウント工程(P2)と、上記ベアチップ1cを基板1の所定箇所に装着する第2のマウント工程(P3)とが実行される。なお、第1のマウント工程と第2のマウント工程の順序は逆でもよい。
次に、上記樹脂外装チップ1b及びベアチップ1cのマウント工程の後、リフロー工程(P4)を実行する。このように2つのマウント工程(P2,P3)を実行した後に、リフロー工程を実行することにより、基板1上の電子部品に対する加熱回数を低減することができる。
次に、上記リフロー工程の後、基板1とベアチップ1cとの隙間に、その隙間を埋める充填剤としての樹脂55を充填する、アンダーフィル処理工程(P5)を実行する。
以上により、アンダーフィル処理を施さない外装チップ1bとアンダーフィル処理を施すベアチップ1cとを、同一の基板1上に混在実装することができる。
【0019】
以上、本実施形態の基板製造方法によれば、基板1上に実装した電子部品に対する加熱回数を低減することができるので、これら電子部品に与えるヒートショック回数を低減することができる。また、従来では個別に実施されていた樹脂外装部品1bのリフロー工程とベアチップ1cのリフロー工程とを同時に実施するので、処理工程数を低減して作業性を向上させることができる。
【0020】
上記基板製造方法を実現することができる基板製造システムは、例えば、基板1の所定の電極上にクリーム半田3を印刷する印刷装置と、基板1の所定位置に部品を位置決めして装着する部品装着装置としてのマウント装置と、ベアチップ1c及び樹脂外装チップ1bが装着された基板1を加熱するリフロー装置と、ベアチップ1cと基板1との隙間に樹脂55を充填するアンダーフィル装置とを用いて構成することができる。
【0021】
図3は、上記印刷方法(半田印刷工程)に用いることができる印刷装置の一例を示す概略構成図である。この印刷装置は、シート状のプラスチック材からなる孔版マスクである印刷マスク2を用いて、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を基板1に印刷するものである。印刷マスク2は、所定の印刷パターンに応じて形成された厚さ方向に貫通した複数の開口部201を備え、所定のテンションでマスク取付部材としての四角形のマスク取付枠20に、紗膜を使用せずに直接貼り合わせられている。このマスク取付枠20に取り付けられた印刷マスク2は、マスク支持手段としてのマスク枠保持部材40で支持されている。
【0022】
上記基板1は、電極が形成されている電極形成面(被印刷面)が上面になるようにステージ5上に保持されている。このステージ5の下面には、基板1の電極形成面(被印刷面)に垂直な上下方向に沿ってステージ5を直線状に進退移動させる駆動手段としての基板駆動ユニット7が設けられている。この基板駆動ユニット7は、正逆回転可能なステッピングモータ700と、ボールネジ及びモータ700で回転駆動される図示しないナット等からなるステージ上下動機構701とを用いて構成されている。このステッピングモータ700を回転制御することにより、上記ステージ5を上下方向に駆動し、基板1を、印刷マスク2に接触する所定の印刷位置まで上昇させたり、印刷マスク2から離間させるように下降させたりすることができる。
【0023】
また、上記印刷位置に移動したステージ5の上方には、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を充填する充填手段が設けられている。この充填手段は、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を刷り込むための充填部材であるスキージ部材8と、スキージ部材8を駆動するスキージ駆動ユニット6とを用いて構成されている。上記スキージ部材8は、ウレタンゴム等の所定の硬度を有する弾性体からなるスキージ本体80と、スキージ本体80の上端部を保持する保持部材としてのスキージホルダー81とを有する。また、スキージ駆動ユニット6は、印刷時にスキージ部材8を印刷マスク2の表面に沿って図中矢印A方向に移動させるスキージ移動機構600と、スキージ部材8を印刷マスク2に離接させるように上下動させるとともにスキージ部材8の先端部の印刷マスク2に対する当接力(印圧)を調整する印圧調整機構610とを備えている。上記スキージ移動機構600には、例えばモータで回転駆動されるベルトやボールネジを用いて構成することができる。
【0024】
上記基板1上に印刷されるクリーム半田3は、印刷対象物である基板1や半田付けされる電子部品の種類に応じて、所定の半田や添加物を含有するものが用いられる。例えば、上記微細パターンの印刷マスク2を用いて印刷するときに用いるクリーム半田としては、例えば半田の平均粒径が10μm以下であり、フラックス成分の含有率が11質量%程度のものが好ましい。
【0025】
上記印刷用マスク2には、各種電子部品が実装される電極にそれぞれ対応する複数の開口部201が設けられている。この開口部201は、印刷マスクの厚さ方向に貫通した貫通孔であり、その印刷面方向における形状及び寸法は、印刷対象の電極の寸法や形状等に応じて設定される。例えば微小印刷パターンの印刷を行なう場合、開口部201の寸法及び形状は、一辺が100〜200μm程度の四角形や、同様な寸法の直径を有する円形である。また、印刷マスク2の基材の絶縁性樹脂シートであるベースシートとしては、例えば、厚さが数10〜数100μm(より好適な具体例としては約150μm)であり電気抵抗値が1×1014〜1×1018Ω程度である、2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)又はポリイミド等のプラスチックシートを用いる。このベースシートとしては、例えば東レ株式会社製の「ルミラー(登録商標)」を使用することができる。また、印刷マスク2のベースシート202に対してレーザ照射、放電加工、プレス加工などを行なうことにより開口部201が形成される。
【0026】
また、印刷マスク2のベースシート202の印刷対象物に接する側の表面には、ベースシートよりも電気抵抗が小さい導電性被膜(導電性コーティング層)203が形成されている(図4参照)。この導電性被膜203としては、例えば、厚さが1〜10μm(より好適な具体例としては5〜8μm)であり電気抵抗値が1×10Ω以下(より好適な具体例としては1×10Ω〜1×10Ω)である、カーボン(グラファイト)又は金属微粒子などの導電性粒子を含有させた導電性樹脂からなる被膜が挙げられる。なお、導電性被膜203の電気抵抗値は、その導電性被膜が厚いほど小さくなる。また、導電性被膜203に含有させるカーボン(グラファイト)としては、球状の形状(但し、必ずしも真円ではない)を有し、粒径が数10nm(例えば、50〜60nm。より好適な具体例としては57nm。)のものを用いることができる。
【0027】
また、上記導電性被膜203のバインダーの樹脂としては、例えばアクリルウレタン樹脂やポリエステルウレタン樹脂を用いることができる。アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート(硬化剤)とシリカ(すべり剤)とを用いて形成された樹脂である。ポリエステルウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールとイソシアネート(硬化剤)とシリカ(すべり剤)とを用いて形成された樹脂である。これらの樹脂は、アクリルポリオールやポリエステルポリオールなどの分子中に複数の水酸基をもった化合物であり、その水酸基はイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成している。また、上記導電性被膜203のバインダーの樹脂としては、ポリオレフィンに対して密着性のよい樹脂や、強親水性スルフォベタイン基を含有し一般に分散することが難しい金属超微粒子を分散させることができる樹脂を用いてもよい。
【0028】
上記印刷マスク2の表面に導電性被膜203を形成しておくと、印刷マスク2を用いて印刷する場合に、スキージングや印刷マスクの剥離時の静電気による印刷対象物(基板)上のデバイスの破損を防止することができる。なお、印刷マスク2の導電性被膜203は、ベースシート202の印刷対象物に接する側の表面(図3,4中の下方を向いている面)だけでなく、その反対側のスキージが接する面(図3,4中の情報を向いている面)に形成してもよい。
【0029】
また、図3に示すように、スキージ駆動ユニット6及び基板駆動ユニット7は、CPU、RAM、ROMなどを備えるコンピュータ装置で構成された制御手段としての主制御部100によって制御される。主制御部100は、入力装置101からオペレータが入力した処理指示に基づいて、ハードディスクなどで構成された記憶装置102からプログラムや各種制御用データを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより所定の印刷工程を行なうようにスキージ駆動ユニット6及び基板駆動ユニット7等を制御する。
【0030】
図5は印刷装置で用いる印刷マスク2の管理方法の一例を示すフロチャートである。上記構成の印刷装置において印刷マスク2を用いた印刷工程(S1)を実行した後、その印刷マスク2を洗浄するタイミングか否かを判断する(S2)。この判断は、例えば、前回の洗浄からの印刷マスク2の使用回数(印刷回数)の積算値を用いて行なうことができる。洗浄の頻度は例えば基板のロット規模に依存して設定される。例えば1枚の基板の印刷後に洗浄を実行したり、500枚程度の基板の印刷後に洗浄を実行したりする。ここで、洗浄するタイミングである判断した場合は、印刷マスク2の洗浄工程を実行する(S3)。この印刷マスク2の洗浄は、例えば印刷マスク2を印刷装置から取り外して後述の洗浄装置を用いて行なう。
【0031】
次に、上記印刷マスク2の洗浄の後、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗を測定する(S4)。この電気抵抗の測定値は表示装置に表示するようにしてもよい。
【0032】
次に、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定値と、予め設定した判定基準値とが比較され、その比較結果に基づいて印刷マスク2を次の印刷に使用可能な否かが判定され(S5)、判定結果が表示装置に表示される(S6,S7)。ここで、導電性被膜203の電気抵抗の測定値が判定基準値以下の場合(S5でYes)は、その印刷マスク2は使用可と判定され、その使用可の判定結果が表示された(S6)後、判定対象の印刷マスク2は次の印刷に備えられる。一方、導電性被膜203の電気抵抗の測定値が判定基準値よりも大きい場合(S5でNo)は、その印刷マスク2は使用不可と判定され、その使用不可の判定結果が表示された(S7)後、判定対象の印刷マスク2は次の印刷に使用されないように処理される。なお、上記判定基準としては、例えば後述の電気抵抗の測定装置で測定した場合、10〜10Ωの範囲内の抵抗値、より具体的には1×10Ωを設定することができる。
【0033】
図6は印刷マスク2の洗浄装置の一例を示す概略構成図である。図6の洗浄装置は、主として共晶半田を印刷する印刷マスクの洗浄に用いられる。この洗浄装置は、洗浄液で洗浄するための洗浄槽810と、リンス液ですすぐためのリンス槽820とを備え、洗浄対象の印刷マスクがセットされる図示しないバスケットを、印刷マスク2を出し入れするホームポジション800と、洗浄槽810中の洗浄位置と、リンス槽820中のリンス位置との間を移動可能に構成されている。洗浄槽810には、印刷マスク2の裏面(図中の右側の面)に洗浄液をシャワー状にして吹き付けるシャワーノズル811,812と、印刷マスク2のおもて面(図中の左の面)に洗浄液をシャワー状にして吹き付けるシャワーノズル813,814とが設けられている。また、上記洗浄槽810で用いる洗浄液としては、グリコール系の洗浄液、例えば高級アルコールと水の混合物である高級アルコール水溶液(例えば、荒川化学工業株式会社製の「パインアルファ ST−350H」,溶剤の主成分:ジエチレングリコール,モノアルキルエーテル)を使用することができる。
【0034】
図6の洗浄装置を用いた洗浄工程は、例えば次の(1)〜(10)の手順で行なわれる。
(1)洗浄装置の扉を開けて洗浄槽830にあるバスケットに印刷マスク2を入れる。
(2)印刷マスク2を入れたバスケットを、洗浄槽810中の洗浄位置に移動させる。
(3)洗浄槽810において、シャワーノズル811〜814を用いた両面シャワー方式にて洗浄を開始する。
(4)洗浄後にエアーブローにて液切りを行なう。
(5)液きり後に、印刷マスク2を入れたバスケットを、リンス820中のリンス位置に移動させる。
(6)リンス槽820において、シャワーノズル821〜824を用いた両面シャワー方式にてリンスを開始する。
(7)リンス後にエアーブローにて液切りを行なう。
(8)液切り後に、熱風にて印刷マスク2の乾燥を行なう。
(9)乾燥後に印刷マスク2の冷却を行なう。
(10)冷却後に、印刷マスク2を入れたバスケットをホームポジション800に戻し洗浄を終了する。
【0035】
上記図6の洗浄装置を用いたときの洗浄条件の具体例は次のとおりである。
・洗浄時間:5分,洗浄温度:30°C±2°C
・リンス時間:5分,リンス時間30°C±2°C
・乾燥時間:8分
・冷却時間:29秒
【0036】
図7は、印刷マスク2の洗浄装置の他の例を示す概略構成図である。図7の洗浄装置は、主として鉛フリー半田を印刷する印刷マスクの洗浄に用いられる。この洗浄装置は、洗浄液で洗浄するための洗浄槽830を備え、洗浄槽830中の洗浄位置に洗浄対象の印刷マスクがセットされる。洗浄槽830には、印刷マスク2の裏面(図中の右側の面)に洗浄液をシャワー状にして吹き付けるシャワーノズル831と、印刷マスク2の裏面に周期的に超音波振動を与える超音波振動板832と、印刷マスク2のおもて面に洗浄液をシャワー状にして吹き付けるシャワーノズル833とが設けられている。また、洗浄槽810で用いる洗浄液としては、アルコール系の洗浄液、例えば再生IPA(イソプロピルアルコール)を使用することができる。この再生IPAは、廃液IPAを蒸留することにより、水分量が0.5%以下になるまで水分を分離・除去した精製IPAである。
【0037】
図7の洗浄装置を用いた洗浄工程は、例えば次の(1)〜(6)の手順で行なわれる。
(1)洗浄装置の扉を開けて洗浄槽830にあるバスケットに印刷マスク2を入れる。
(2)洗浄槽830において、印刷マスク2のおもて面からシャワーノズル833を用いたシャワー方式にて洗浄を開始する。
(3)印刷マスク2の裏面からは、上方からシャワーノズル831を用いたシャワー方式にて洗浄を行いながら、超音波振動板832を一定周期であてることにより、裏面の洗浄を行なう。
(4)洗浄後にエアーブローにて液切りを行なう。
(5)液切り後に、熱風にて印刷マスク2の乾燥を行なう。
(6)乾燥後に印刷マスク2の冷却を行ない、洗浄を終了する。
【0038】
上記図7の洗浄装置を用いたときの洗浄条件の具体例は次のとおりである。
・洗浄時間:3分,洗浄温度:常温
・乾燥時間:6分,乾燥温度:常温
【0039】
図8は、上記洗浄後の印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗を測定するときの印刷装置の様子を示す概略構成図である。印刷マスク2の導電性被膜203を測定するときには、抵抗測定ユニット(抵抗測定手段)9を印刷マスク2に近づけ、抵抗測定ユニット9の所定間隔(例えば20mm)だけ離して設けた1組のプローブ端子901を、印刷マスク2の導電性被膜203に接触させる。プローブ端子901は、抵抗測定ユニット9を近づけるときに導電性被膜203に損傷を与えないように、所定の当接力以下で導電性被膜203に当接するようにユニット本体900に設けられている。具体的には、図示しないスプリング等の付勢手段によってプローブ端子901を印刷マスク2側に付勢するように構成されている。抵抗測定ユニット9は、前記コンピュータ装置で構成された制御手段としての主制御部100によって制御され、抵抗測定ユニット9の出力信号は、図示しないAD変換部によってデジタルデータに変換された後、主制御部100に入力される。主制御部100は、入力装置101からオペレータが入力した処理指示に基づいて、ハードディスクなどで構成された記憶装置102からプログラムや判定基準値などのデータを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定やその測定結果に基づく印刷マスク2の使用可否の判定などの処理を行なう。導電性被膜203の電気抵抗の測定結果や印刷マスク2の使用可否の判定結果は、表示装置103に表示することができる。
【0040】
図9は、抵抗測定ユニット9における導電性被膜203の電気抵抗の測定回路の一例を示す回路図である。この例では、切り換えスイッチSWを実線の位置にした状態で、電源Eから所定の静電容量を有するコンデンサCを充電する。その後、切り換えスイッチSWを破線の位置に切り換え、コンデンサCに充電された電荷をプローブ901を介して導電性被膜203の所定距離(例えば20mm)における抵抗Rに放電させる。この放電時の電流の時間変化を電流計で測定し、その放電電流の時定数(放電時間)τから、上記抵抗Rの値を導電性被膜203の電気抵抗として算出する。具体的には、上記放電電流の時定数(放電時間)τは放電開始時の電流値が1/eに減衰するまでの時間として測定することできる。そして、時定数(放電時間)τはコンデンサの静電容量Cと抵抗の抵抗値Rとの積CRで表されるので、導電性被膜203の電気抵抗RはR=τ/Cで算出することができる。ここで、例えばC=200pFであり、τ=2μsである場合は、導電性被膜203の電気抵抗Rは1×10Ωになる。なお、抵抗測定ユニット9の出力信号は、上記放電時の電流の時間変化に対応する信号でもいいし、上記算出後の電気抵抗Rの値に対応する信号でもよい。
【0041】
なお、上記印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定には、次の(1)乃至(3)の測定器を用いてもよい。
(1)アジレント・テクノロジー株式会社製の「34401A デジタル・マルチメータ」,測定範囲:〜1×10Ω,アース抵抗の測定にも使用。
(2)住友スリーエム株式会社製の「フロアリングテスター702」,測定範囲:〜2×10Ω。
(3)東亜ディーケーケー株式会社製の「超絶縁計 SM8220」,測定範囲:〜2×1016Ω。
【0042】
図10は、上記フロアリングテスターを用いて印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗を測定している様子を示す説明図である。このフロアリングテスター910を用いた電気抵抗の測定は、印刷マスク2の予め設定した所定使用回数ごとに、例えば次の(1)〜(6)の手順で行なわれる。
(1)ドラム920に巻かれたアース線921の一端を、印刷装置が設置されている部屋のコンセントのGNDに接続するとともに、アース線921の他端に取り付けられているプラグを、フロアリングテスター910の本体のE端子(3Pコネクタ)に向きを合わせて差し込む。このアース線921の電気抵抗は、1.5〜2.0Ωであった。
(2)一端をGNDに接続した別のアース線930の他端を、印刷マスク2の裏面(図10における上面)に形成されている導電性被膜203の端部に接続する。この接続は、例えば、アース線930の他端に取り付けられているクリップで、導電性被膜203が形成されている印刷マスク2の端部を挟むことで行なうことができる。このアース線930の電気抵抗は、0.3Ωであった。
(3)フロアリングテスター910の本体の裏側に、円柱状の金属電極(φ63.5mm)を装着する。この金属電極の装着は、スリットを合わせて金属電極を垂直に差し込み、右回転方向に回転させることにより行なう。金属電極が装着されたフロアリングテスター910全体の重さは2.27kgであった。
(4)フロアリングテスター910の本体における測定レンジの切替スイッチを、「500V」に設定する。
(5)フロアリングテスター910の本体に装着した金属電極を、印刷マスク2の中央に置き、パワースイッチを押す。これにより、フロアリングテスター910の電源インジケータランプ(赤)が点灯し、測定電圧が印加されたことを表示する。
(6)フロアリングテスター910の液晶表示部に、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定値が表示される。
【0043】
また、上記印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定のほか、印刷直後の印刷マスク2の裏面(基板側の面)に帯電した電荷量を測定してもよい。この印刷マスク2の裏面の帯電電荷量は、例えば次のように測定することができる。
(1)静電気測定器のアースを接続するとともに電源をONし、静電気測定器をセットする。
(2)静電気測定器のゼロ点合せを行なう。具体的には、静電気測定器の測定プローブ(測定棒)の先端をアースに接触させた状態で測定電圧の値をゼロに調整する。
(3)印刷装置にて、印刷直後の印刷マスク2の裏面(基板側の面)の中央の測定点及びその中央測定点から対角線方向に一定距離離れた4測定点の合計5測定点(図11の測定点M1〜M5)それぞれに、静電気測定器の測定プローブ(測定棒)の先端を接近させ、そのときの電圧を測定する。ここで、測定プローブの先端は、対象対称面との距離を一定(例えば、3〜5mm)にした状態で垂直に接近させる。
【0044】
表1及び表2はそれぞれ、前述の図6の洗浄装置及び図7の洗浄装置で印刷マスク2を洗浄したときの導電性被膜203の電気抵抗の測定結果の履歴を示す実験結果である。図6の洗浄装置における洗浄液としては、前述のグリコール系の洗浄液(荒川化学工業株式会社製の「パインアルファ ST−350H」)を使用した。図7の洗浄装置における洗浄液としては、前述のアルコール系の再生IPAを使用した。測定ポイントは、図12に示す5箇所である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
図13は、上記表1及び表2における5箇所の電気抵抗の測定値の平均値と洗浄回数との関係を示すグラフである。図13からわかるように、前述の図6の洗浄装置及びグリコール系の洗浄液(パインアルファ)を用いた場合は、洗浄回数の増加に伴って印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗が次第に大きくなり、洗浄回数が11回になると10Ωまで上昇した。これに対し、前述の図7の洗浄装置及びアルコール系の洗浄液(再生IPA)を用いた場合は、洗浄回数の増加しても印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗にほとんど変化がなく、洗浄回数が11回になっても10Ωのオーダーの電気抵抗であった。
【0048】
前述の図6の洗浄装置及びグリコール系の洗浄液(パインアルファ)を用いた場合に洗浄回数の増加に伴って印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗が次第に大きくなる現象については、次のようなメカニズムが考えられる。本実施形態の導電性被膜203に用いた黒鉛(グラファイト)には層間化合物として硝酸イオンが入っている。この硝酸イオンは黒鉛(グラファイト)からなる導電性被膜203の電気伝導に寄与している。そして、上記洗浄液(パインアルファ)に含まれる各種化合物の量をイオンクロマトグラフィ法によって分析したところ、当該洗浄液による洗浄を繰り返すと、黒鉛(グラファイト)には層間化合物である硝酸イオンが、当該洗浄液のケミカルアタックによって溶出することがわかった。この硝酸イオンは印刷マスク2に付着する半田やフラックスに存在しない化合物である。また、上記洗浄を繰り返していったときの導電性被膜203の微視的な構造をXPS(X線光電子分光法:X-ray Photoelectron Spectroscopy)で分析したところ、上記洗浄液(パインアルファ)による洗浄を繰り返すと、導電性を示す黒鉛(グラファイト)が非導通性を示す炭化水素に次第に変化していくことがわかった。これらの現象により、導電性被膜203の電気抵抗が洗浄を繰り返すとともに次第に高まったものと考えられる。
【0049】
図14は、他の実施形態に係る印刷マスク2の管理方法の一例を示すフロチャートである。この例では、前述の図5の場合とは異なり、導電性被膜203の電気抵抗の測定値が判定基準値以下であって印刷マスク2が使用可と判定された場合(S5でYes)、主制御部100において、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定結果の履歴情報に基づいて、その印刷マスク2に対する予測寿命(例えば、使用可能な残りの印刷回数)が算出される(S6)。そして、その算出した予測寿命が、次の印刷に使用可能である旨の使用可の判定結果とともに表示装置103に表示される(S7)。上記印刷マスク2の予測寿命の算出は、例えば導電性被膜203の電気抵抗の測定値と印刷マスク2の印刷回数との関係を示すグラフの曲線から、導電性被膜203の電気抵抗が判定基準値を超える印刷マスク2の印刷回数を外挿して算出し、その印刷回数を印刷マスク2の予測寿命とする。
【0050】
以上、本実施形態によれば、印刷に使用された印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗を測定することにより、その測定結果に基づいて、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗が次の印刷に使用できる程度の電気抵抗であるか否かを判定し、導電性被膜203の電気抵抗が上昇してしまった印刷マスク2を次の印刷に使用しないように印刷マスク2を管理することができる。
また、本実施形態によれば、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗が上昇する可能性が高い印刷マスク2の洗浄後に、印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定を行なうことにより、洗浄によって導電性被膜の電気抵抗が上昇した印刷マスクの使用を確実に回避できる。
また、本実施形態によれば、印刷マスク2の導電性被膜203の電気抵抗の測定結果を表示装置103に出力することにより、導電性被膜203の電気抵抗の数値を、印刷装置の利用者に知らせ、印刷マスク2を次の印刷に使用するか否かを容易に判断できるようになる。
また、本実施形態によれば、予め設定しておいた判定基準値と、導電性被膜203の電気抵抗の測定結果とを比較し、その比較結果に基づいて印刷マスク2を印刷に使用可能な否かを判定する。この判定結果により、導電性被膜203の電気抵抗が上昇した印刷マスク2の使用を確実に回避できる。上記判定結果を表示装置103に出力する場合は、印刷マスク2を次の印刷に使用するか否かの判断作業が不要になる。
また、本実施形態によれば、上記導電性被膜203の電気抵抗の過去の測定結果を含む履歴情報に基づいて、印刷マスク2の寿命を予測し、その予測結果を表示装置103に表示することにより、印刷マスク2の交換時期を予告し、印刷マスク2の交換準備を促すことができる。
また、本実施形態によれば、印刷マスク2の絶縁性樹脂シート202上に形成されたカーボン(グラファイト)を含有する導電性樹脂からなる導電性被膜203について、電気抵抗を測定することにより、洗浄によってカーボン含有の導電性被膜203の電気抵抗が上昇した印刷マスク2の使用を確実に回避できる。
【0051】
なお、上記実施形態では、印刷対象物が基板1である場合について説明したが、本発明は、印刷対象物として基板以外の半導体ウェーハなどの電子部品の表面に印刷する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置を用いる印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ本実施形態の基板製造方法で製造する電子回路基板1の断面構造の一例を示す説明図及び平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図4】印刷マスクの断面図。
【図5】印刷マスクの管理方法の一例を示すフロチャート。
【図6】印刷マスクの洗浄装置の一例を示す概略構成図。
【図7】印刷マスクの洗浄装置の他の例を示す概略構成図。
【図8】洗浄後の印刷マスクの導電性被膜を測定するときの印刷装置の様子を示す概略構成図。
【図9】抵抗測定ユニットにおける導電性被膜の電気抵抗の測定回路の一例を示す回路図。
【図10】フロアリングテスターを用いて印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定している様子を示す説明図。
【図11】印刷マスクの導電性被膜の帯電電荷の測定を行なう印刷マスク上の測定点の説明図。
【図12】フロアリングテスターを用いた導電性被膜の電気抵抗の測定を行なう印刷マスク上の測定点の説明図。
【図13】印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定値の平均値と印刷マスクの洗浄回数との関係を示すグラフ。
【図14】印刷マスクの管理方法の他の例を示すフロチャート。
【符号の説明】
【0053】
1 基板
2 印刷マスク
3 クリーム半田
6 スキージ駆動ユニット
7 基板駆動ユニット
8 スキージ部材
9 抵抗測定ユニット
20 マスク取付枠
80 スキージ本体
81 スキージホルダー
100 主制御部
201 開口部
202 ベースシート
203 導電性被膜
600 スキージ移動機構
610 印圧調整機構
900 ユニット本体
901 プローブ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部が形成され表面に導電性被膜が設けられた印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、
上記印刷に使用された上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定する抵抗測定手段を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1の印刷装置において、
上記印刷に使用された上記印刷マスクを洗浄する洗浄手段を備え、
該洗浄手段で該印刷マスクを洗浄した後、該印刷マスクを次の印刷に使用する前に、上記抵抗測定手段による該印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定を行なうことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2の印刷装置において、
上記抵抗測定手段の測定結果を出力する測定結果出力手段を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、
上記抵抗測定手段の測定結果と予め設定した判定基準値とを比較し、その比較結果に基づいて上記印刷マスクを印刷に使用可能な否かを判定する使用可否判定手段と、
該判定手段の判定結果を出力する判定結果出力手段と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、
上記抵抗測定手段の過去の測定結果を含む履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段と、
該履歴情報記憶手段に記憶されている該履歴情報に基づいて、上記印刷マスクの寿命を予測する寿命予測手段と、
該寿命予測手段による該印刷マスクの寿命の予測結果を出力する寿命予測結果出力手段と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの印刷装置において、
上記印刷マスクの基材は絶縁性樹脂シートであり、上記導電性被膜は、カーボンを含有する導電性樹脂で形成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
複数の開口部が形成され表面に導電性被膜が設けられた印刷マスクの管理方法であって、
印刷に使用された印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することを特徴とする印刷マスクの管理方法。
【請求項8】
請求項7の印刷マスクの管理方法であって、
上記印刷に使用された上記印刷マスクを洗浄し、該印刷マスクの洗浄後、該印刷マスクを次の印刷に使用する前に、該印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗を測定することを特徴とする印刷マスクの管理方法。
【請求項9】
請求項7又は8の印刷マスクの管理方法において、
上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定結果を出力することを特徴とする印刷マスクの管理方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかの印刷マスクの管理方法において、
上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の測定結果と予め設定した判定基準値とを比較し、その比較結果に基づいて該印刷マスクを印刷に使用可能な否かを判定し、使用不可と判定した印刷マスクをその後の印刷に使用しないことを特徴とする印刷マスクの管理方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれかの印刷マスクの管理方法において、
上記印刷マスクの導電性被膜の電気抵抗の過去の測定結果を含む履歴情報に基づいて、該印刷マスクの寿命を予測し、その印刷マスクの寿命の予測結果を出力することを特徴とする印刷マスクの管理方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかの印刷マスクの管理方法において、
上記印刷マスクの基材は絶縁性樹脂シートであり、上記導電性被膜は、カーボンを含有する導電性樹脂で形成されていることを特徴とする印刷マスクの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−45838(P2009−45838A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214311(P2007−214311)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】