説明

印字装置

【課題】 本発明は、点字をマスターしていない視覚障害者でも、印字された内容を理解することができる印字装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 可視印字制御部10は、印字データ受信部9から入力された印字データに基づいて第1印字部7を駆動することで、シール3の表面に印字データを可視的に印字させ、さらに、点字印字制御部14は、第2印字部8を駆動して変換した点字データをシール3の設定した点字禁止領域以外の領域に印字させ、最後に、リーダライタ15は、文字データ抽出部13から入力された文字データをシール3のRFIDに記録させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字データを点字として印字する印字装置に関し、特にアンテナとICチップ等から構成されたRFIDが内蔵されたRFIDシールに文字データを点字として印字する印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者にとって点字は極めて重要な伝達手段であり、各種案内が点字として印字され、公共施設や人の集まる駅等の施設に掲示されている。視覚障害者に伝達する各種案内は、視覚健常者にも必要な情報であるため、視覚障害者と健常者とのいずれもが案内を認識できるように、文字データを印字媒体に印字する文字用ヘッドと、文字データに対応する点字データを印字媒体に印字する点字用ヘッドとを備え、視覚健常者が解読可能な文字データのみならず視覚障害者にも解読可能な点字データを同一印字媒体に印字する印字装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来技術では、視覚障害者のいずれもが点字をマスターしているとは限らず、点字をマスターしていない視覚障害者は、点字が印字されていることを認識しても、印字された内容を理解することができないという問題点があった。
【特許文献1】特開平10−187623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、点字をマスターしていない視覚障害者でも、印字された点字の内容を理解することができる印字装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、文字データを点字として印字する印字装置であって、RFIDが内蔵されたRFIDシールに点字を印字する点字印字手段と、該点字印字手段を駆動して前記文字データを前記RFIDシールに点字として印字させる点字印字制御手段と、前記文字データを前記RFIDに記録させる文字データ記録手段とを具備することを特徴とする印字装置に存する。
また請求項2記載の発明の要旨は、前記点字印字手段は、点字を印字する箇所に対して、選択的に熱エネルギーを印加もしくは選択的に打刻することで点字を形成させ、前記点字印字制御手段は、前記RFIDのICチップの周辺領域を点字禁止領域とし、当該点字禁止領域以外の領域に点字を印字させることを特徴とする請求項1記載の印字装置に存する。
また請求項3記載の発明の要旨は、文字データ記録手段は、前記点字印字手段によって前記文字データが前記RFIDシールに点字として印字された後に、前記文字データを前記RFIDに記録させることを特徴とする請求項1又は2記載の印字装置に存する。
また請求項4記載の発明の要旨は、RFIDが内蔵されたRFIDシールであって、文字データが点字として印字されていると共に、前記RFIDに点字として印字された前記文字データが記録されていることを特徴とするRFIDシールに存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の印字装置は、RFIDを内蔵したRFIDシールを用い、文字データを点字として印字すると共に、点字として印字した文字データをRFIDに記憶させるように構成することにより、RFIDに記憶させた文字データを読み取って音声出力させることで、点字をマスターしていない視覚障害者でも、印字された点字の内容を理解することができるという効果を奏する。
【0007】
さらに、本発明の印字装置は、RFIDのICチップの周辺領域を点字禁止領域とし、点字禁止領域以外の領域に点字を印字する共に、点字を印字する箇所に対して、選択的に熱エネルギーを印加するように構成することにより、RFID(ICチップ)に印字動作に伴って熱や衝撃が作用することを防ぎ、印字動作に起因するRFID(ICチップ)の損傷を防止することができるという効果を奏する。
【0008】
さらに、本発明の印字装置は、RFID(ICチップ)への文字データの記録を、文字データを点字として印字した後に行うように構成することにより、印字動作に起因してRFID(ICチップ)に損傷が生じたか否かを検証することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る印字装置の実施の形態の構成を示す概略構成図であり、図2は、図1に示すシールの構成を示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)に示すA−A’断面図である。図3は、図1に示す点字印字部で設定される点字禁止領域を説明するシールの平面図である。
【0011】
本実施の形態の印字装置1は、ホストコンピュータ2から受信された印字データに基づいて、貼付面に粘着材が塗布されたシール3に印字を行う印字装置であり、図1を参照すると、シール3が帯状台紙4に間隔をおいて仮着されているロール状のシール連続体5が装着される供給リール6と、シール3の表面の可視的に印字を行う第1印字部7と、シール3に点字を印字する第2印字部8と、ホストコンピュータ2からの印字データを受信する印字データ受信部9と、第1印字部7を駆動して印字データ受信部9によって受信された印字データをシール3の表面に可視的に印字させる可視印字制御部10と、シール3の種別、すなわちシール連続体5の種類の入力を受け付けるシール種別入力部11と、シール3の種別に応じた点字禁止情報が記憶されている点字禁止情報記憶部12と、印字データ受信部9によって受信された印字データから文字データを抽出する文字データ抽出部13と、第2印字部8を駆動して文字データ抽出部13によって抽出された文字データを点字としてシール3に印字せる点字印字制御部14と、文字データ抽出部13によって抽出された文字データをシール3に記憶させるリーダライタ15とからなる。
【0012】
シール3は、図2(a)を参照すると、アンテナ16とICチップ17等から構成されたRFID(Radio Frequency Identification)が内蔵されているRFIDシールであり、積層構成となっている。シール3の積層構成は、図2(b)に示すように、基体31の表面には、熱エネルギーが印加されることにより発泡する発泡層32と、表面に可視的に印字が施される表層33とが順次積層されていると共に、基体31の裏面に、粘着材層34が積層されている。アンテナ16およびICチップ17からなるRFIDは、粘着材層34に、非導電性部材から成る保護コーティング35を介して埋設されている。なお、RFIDとは、アンテナ16とICチップ17とを有し、電波を用いて無線(非接触)で情報通信が可能なタグであり、非接触ICタグ、無線ICタグ、非接触IC等の他の呼称で表される場合もあるが、本発明では、代表してRFIDと表現する。
【0013】
第1印字部7は、シール3の表面に非接触で印字を行う印字手段であり、インクの微細な粒子を紙に吹き付けることにより印字を行うインクジェット方式が用いられている。
【0014】
第2印字部8は、シール3の発泡層32に熱エネルギーを印加して発泡させることによって、点字を印字する印字手段であり、サーマルヘッドを使用した感熱方式が用いられ、点字を印字する箇所(発泡層32を発泡させる箇所)に選択的に熱エネルギーが印加される。
【0015】
印字データ受信部9は、ホストコンピュータ2から印字データを受信する印字データ受信手段であり、受信した印字データを可視印字制御部10および文字データ抽出部13にそれぞれ出力する。なお、ホストコンピュータ2から印字データは、第1印字部7によってシール3の表面に可視的に印字を行うための情報であり、文字データ以外に印字レイアウト情報、文字色情報、文字飾り情報等が含まれている。
【0016】
可視印字制御部10は、印字データ受信部9から入力された印字データに基づいて第1印字部7を駆動することで、シール3の表面に印字データを可視的に印字させる。
【0017】
シール種別入力部11は、シール3の種別、すなわちシール連続体5の種類の入力を受け付けるテンキー等の入力手段であり、入力されたシール3の種別は、点字印字制御部14に出力される。
【0018】
点字禁止情報記憶部12は、シール3の種別毎に点字の印字を禁止する領域(以下、点字禁止領域18と称す)を示す点字禁止情報が記憶されている記憶手段であり、点字禁止領域18は、図3に示すように、シール3に内蔵されているICチップ17の周辺領域が予め設定されている。
【0019】
文字データ抽出部13は、印字データ受信部9から入力された印字データから文字データを抽出し、抽出した文字データを点字印字制御部14およびリーダライタ15に出力する。
【0020】
点字印字制御部14は、文字データ抽出部13から入力された文字データを点字データに変換すると共に、シール種別入力部11から入力されたシール3の種別に基づいて点字禁止情報記憶部12に記憶されている点字禁止情報を検索することで点字禁止領域18を設定し、第2印字部8を駆動して変換した点字データをシール3の設定した点字禁止領域18以外の領域に印字させる。
【0021】
リーダライタ15は、アンテナ16とICチップ17とからなるRFIDに一定の周波数の呼び出し電波を送信して、RFIDに記憶されている情報を非接触で読み出す機能と、RFIDに情報を非接触で書き込む機能とを有し、呼び出し信号を電波に載せて送信することにより、文字データ抽出部13によって抽出された文字データをシール3のRFIDに記録させる。
【0022】
次に、本実施の形態の動作について図4を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明に係る印字装置の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【0023】
まず、シール種別入力部11は、シール3の種別、すなわちシール連続体5の種類の入力を受け付け(ステップA1)、入力されたシール3の種別を点字印字制御部14に出力する。シール3の種別が入力された点字印字制御部14は、点字禁止情報記憶部12に記憶されている点字禁止情報を検索することで入力されたシール3の種別に対応する点字禁止領域18を設定する(ステップA2)。なお、点字禁止領域18の設定は、領域を数値等で直接入力して設定するようにしても良い。
【0024】
印字データ受信部9は、ホストコンピュータ2からの印字データの受信を待機しており(ステップA3)、ホストコンピュータ2から印字データが受信されると、受信した印字データを可視印字制御部10および文字データ抽出部13にそれぞれ出力する。
【0025】
文字データ抽出部13は、印字データ受信部9から入力された印字データから文字データを抽出し、抽出した文字データを点字印字制御部14およびリーダライタ15に出力し(ステップA4)、点字印字制御部14は、文字データ抽出部13から入力された文字データを点字データに変換する(ステップA5)。
【0026】
次に、可視印字制御部10は、印字データ受信部9から入力された印字データに基づいて第1印字部7を駆動することで、シール3の表面に印字データを可視的に印字させ(ステップA6)、さらに、点字印字制御部14は、第2印字部8を駆動して変換した点字データをシール3の設定した点字禁止領域18以外の領域に印字させ(ステップA7)、最後に、リーダライタ15は、文字データ抽出部13から入力された文字データをシール3のRFIDに記録させる(ステップA8)。
【0027】
これにより、シール3には、シール3の表面への可視的な印字と、点字の印字と、RFIDへの印字された点字と同一の文字データの記録とが行われ、視覚健常者と視覚障害者とのいずれもがシール3の印字内容を認識することが可能になる。また、点字をマスターしていない視覚障害者は、RFIDと通信を行い、RFIDに記録された文字データを受信する機能と、音声データを音声出力する機能とを有する機器を使用することにより、RFIDに記録された文字データを音声として聴取することができ、シール3に印字された点字の内容を認識することできる。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第2印字部8によって文字データを点字として印字すると共に、点字として印字した文字データをリーダライタ15によってRFIDに記憶させるように構成することにより、RFIDに記憶させた文字データを読み取って音声出力させることで、点字をマスターしていない視覚障害者でも、印字された点字の内容を理解することができるという効果を奏する。
【0029】
さらに、本実施の形態によれば、第2印字部8は、点字を印字する箇所に対して、選択的に熱エネルギーを印加することで点字を形成させ、点字印字制御部14は、前記RFIDのICチップ17の周辺領域を点字禁止領域18とし、当該点字禁止領域18以外の領域に点字を印字させるように構成することにより、RFID(ICチップ17)に印字動作に伴って熱や衝撃が作用することを防ぎ、印字動作に起因するRFID(ICチップ17)の損傷を防止することができるという効果を奏する。
【0030】
さらに、本実施の形態によれば、リーダライタ15によるRFID(ICチップ17)への文字データの記録を、第2印字部8よって文字データを点字として印字した後に行うように構成することにより、印字動作に起因してRFID(ICチップ17)に損傷が生じたか否かを検証することができるという効果を奏する。
【0031】
なお、本実施の形態では、第2印字部8としてシール3の発泡層32に熱エネルギーを印加することで点字を印字するサーマルヘットを使用した感熱方式を用いるように構成したが、シール3を打刻することで点字を印字するインパクト方式を用いても良い。インパクト方式を用いた場合でも、点字禁止領域18以外の領域に点字を印字することで印字動作を起因としたRFID(ICチップ17)の損傷を防止することができる。
【0032】
さらに、本実施の形態では、シール3の表面への可視的な印字と、点字の印字と、RFIDへの印字された点字と同一の文字データの記録とが行われるように構成したが、シール3の表面への可視的な印字を行うことなく、点字の印字と、RFIDへの印字された点字と同一の文字データの記録とを行うようにしても良い。
【0033】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る印字装置の実施の形態の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すシールの構成を示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)に示すA−A’断面図である。
【図3】図1に示す点字印字部で設定される点字禁止領域を説明するシールの平面図である。
【図4】本発明に係る印字装置の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 印字装置
2 ホストコンピュータ
3 シール
4 帯状台紙
5 シール連続体
6 供給リール
7 第1印字部
8 第2印字部(点字印字手段)
9 印字データ受信部
10 可視印字制御部
11 シール種別入力部
12 点字禁止情報記憶部
13 文字データ抽出部
14 点字印字制御部(点字印字制御手段)
15 リーダライタ(文字データ記録手段)
16 アンテナ
17 ICチップ
18 点字禁止領域
31 基体
32 発泡層
33 表層
34 粘着材層
35 保護コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字データを点字として印字する印字装置であって、
RFIDが内蔵されたRFIDシールに点字を印字する点字印字手段と、
該点字印字手段を駆動して前記文字データを前記RFIDシールに点字として印字させる点字印字制御手段と、
前記文字データを前記RFIDに記録させる文字データ記録手段とを具備することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記点字印字手段は、点字を印字する箇所に対して、選択的に熱エネルギーを印加もしくは選択的に打刻することで点字を形成させ、
前記点字印字制御手段は、前記RFIDのICチップの周辺領域を点字禁止領域とし、当該点字禁止領域以外の領域に点字を印字させることを特徴とする請求項1記載の印字装置。
【請求項3】
文字データ記録手段は、前記点字印字手段によって前記文字データが前記RFIDシールに点字として印字された後に、前記文字データを前記RFIDに記録させることを特徴とする請求項1又は2記載の印字装置。
【請求項4】
RFIDが内蔵されたRFIDシールであって、
文字データが点字として印字されていると共に、
前記RFIDに点字として印字された前記文字データが記録されていることを特徴とするRFIDシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−123406(P2006−123406A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316078(P2004−316078)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】