説明

印鑑付筆記具

【目的】
片手操作でも容易に蓋を開閉可能とする。
【構成】
ボールペン等筆記体の後端にそれぞれ摺動コマを取付け、ガイド筒のガイド溝に対して摺動コマを摺動自在に遊嵌し、摺動コマを摺動する円筒カムを後軸に固定して設け、その後端部に印鑑を装着すると共に、ガイド筒に固定した先軸と中軸に対して後軸を回動したときに筆記体の先端部が軸先から選択的に出没可能となり、後軸の周面部に軸方向の摺動溝を設け、スライドキヤツプの内面に摺動溝に嵌装するリブを設けて、後軸の全長に対して短寸となされたスライドキヤツプを後軸に対して回動が一体で軸方向には摺動自在に被嵌し、スライドキヤツプの後端部に、後軸に対するスライドキヤツプの前方への摺動により印鑑の印字体カバーの周縁角部に内面を当接して押圧されることによりスライドキヤツプの後端口が開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印鑑を取付け且つ筆記体のユニツト等の複数の被繰出体を搭載した印鑑付複式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実用新案登録番号 第2510984号
【特許文献2】実用新案登録番号 第2525535号
【0003】
従来、インクを吸蔵できるスポンジゴム等の無数の連続気孔を有する多孔性印材により形成された印字体を用いて、使用のたびに朱肉等に付着させる必要のない印鑑を軸の後端に装着した印鑑付筆記具が公知である。また、印鑑の印字面が露出したままだと印字面に傷が付いたり、ゴミが付着したり、インクが乾いてしまう等の弊害があるので、それを防止するために印字面を被覆する必要があるが、その被覆手段を底付きキヤツプとした場合、着脱が面倒である。底付きキヤツプを紛失しやすい。底付きキヤツプの着脱の際に印鑑部に触れて手を汚しやすい。等の問題があることから、キャップ後端開口部に開閉自在な蓋を設け、蓋部に指を触れること無く、未使用時に蓋で印字面を被覆し、捺印時に印字面が開放されるように操作できる印鑑付筆記具が開発されて公知となっている。また更に、シャープペンシルやボールペン等の複数の筆記体を搭載して、選択してそれぞれの筆記先端部を軸先から出没可能とした複式筆記具が公知である。
【0004】
特許文献1には、複数の軸方向のガイド溝1を設けたガイド筒2の先端部を先軸3の後端部に接合し、ガイド筒2の各ガイド溝1にシヤープペンシルのユニツト4等の各種の被繰出体の後端にそれぞれ取付けたカム従動コマ5を軸方向に摺動自在に遊嵌し、ガイド筒2の外周部に上記のカム従動コマ5と接触して軸方向に変位させることのできるカム斜面6を内面部に設けると共に後端部に印鑑7を装着した後軸8を円周方向に所要角度回動自在に被装し、後軸8の外周部にキヤツプ9を円周方向の回動が一体的で軸方向には摺動自在に被装し、キヤツプ9の後端部にキヤツプ9の軸方向前方への摺動により印鑑7における印字体カバー10の周縁角部にその内面を当接して押圧されることによりキヤツプ後端口11を開口すると共にキヤツプ9の軸方向後方への摺動により印字体カバー10から離れてキヤツプ9との間に設けたバネ12の作用によりキヤツプ後端口11を閉口する蓋13を回動自在に取付け、後軸8に対しキヤツプ9を軸方向に摺動させて上記の蓋13が開き且つ閉じる位置においてそれぞれキヤツプ9を後軸8に固定するロツク装置14をキヤツプ9と後軸8との間に設けたことを特徴とする印鑑付複式筆記具が示されている。
また特許文献2には、軸の後端にインクを含浸可能な無数の連続気孔を有する多孔性印材よりなる印字体5を使用した印鑑4をその印字面が露出する状態に取付け、軸の後端外周部に頂端を開口したキャップ9を軸方向に摺動自在に嵌着し、キャップ9の頂端開口部11にキャップ9を軸に対し後退させた状態でその開口部11をばね13の作用によって自動的に閉塞して前記印鑑4の印字面を隠蔽すると共にキャップ9を軸に対し前進させたときにその内面側端部が印鑑4におけるカバー6の後端周縁部の一部により押圧されて擺動することによりキャップ9の頂端開口部11を開放して同部から印鑑4を後方へ突出させる蓋体12を装着し、前端にキャップ9の長孔19からキャップ内部に没入可能な係合突起17を設けると共に後端にクリップ14の窓孔15からクリップ14の外側へコイルばね20により付勢されて貫出する押釦18を設けたレバー16をクリップ14の内側へ配してその略中央部を回動自在に軸着し、また、キャップ内部の軸の側面部における前後2箇所にそれぞれキャップ9が前方へ摺動してキャップ9の頂端開口部11から印鑑4が突出した状態ときと、キャップ9が後方へ摺動してキャップ9の頂端開口部11が蓋体12により閉塞されたときにそれぞれ上記の係合突起17が嵌入して係止する係合溝21′、21を設けたことを特徴とする印鑑付複式筆記具が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、印鑑付複式筆記具の従来技術に対して、以下の項目を解決課題とする。
(1)片手操作でも容易に蓋を開閉可能とする。
(2)芯を繰り出すためのノック作動を必要とするシャープペンシル筆記体を含む複式筆記具とノック作動を必要としないボールペン等筆記体のみの複式筆記具との仕様の切り替えを容易に可能とする。
(3)組立てを容易化し、安価に提供可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するために以下の構成を有する。
請求項1に記載の発明に係る複式筆記具は、ガイド筒の前端を先軸の後端に接合したときに、先軸の後端に前端が当接してガイド筒に固定されるように中軸がガイド筒に止着され、複数の軸方向のガイド溝を設けたガイド筒の各ガイド溝に、ボールペン等筆記体の後端にそれぞれ摺動コマを取付け、ガイド溝の前方と摺動コマとの間にリターンスプリングを敷設すると共に摺動コマをガイド筒の後方に附勢して、ガイド溝に対して摺動コマを軸方向に摺動自在に遊嵌し、ガイド筒の周面部に前記摺動コマと接触して摺動コマを軸方向に摺動可能とする軸方向に変位するカム斜面を有した円筒カムを後軸内面に一体に固定して設け、その後端部に印鑑を装着すると共に前記ガイド筒に対して円周方向に所要角度回動自在で後方に抜止め固定されて、中軸に対して後軸を回動したときに筆記体の先端部が軸先から選択的に出没可能となり、また、後軸の周面部に軸方向の摺動溝を設け、スライドキヤツプの内面に前記摺動溝に嵌装するリブを設けて、後軸の全長に対して全長が短寸となされたスライドキヤツプを後軸に円周方向の回動が一体的で軸方向には摺動自在に被嵌し、スライドキヤツプの後端部に、後軸に対するスライドキヤツプの軸方向前方への摺動により印鑑における印字体カバーの周縁角部に内面を当接して押圧されることによりスライドキヤツプの後端口を開口すると共にスライドキヤツプの軸方向後方への摺動により印字体カバーから離れてスライドキヤツプとの間に設けた捻りバネの作用によりスライドキヤツプの後端口を閉口する蓋を回動自在に取付け、後軸に対してスライドキヤツプを軸方向に摺動させて前記蓋が開き且つ閉じる位置においてそれぞれスライドキヤツプを後軸に固定するロツク装置をスライドキヤツプと後軸との間に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る複式筆記具は、請求項1に記載の複式筆記具に於いて、ガイド溝の内、少なくとも一箇所にシヤープペンシル筆記体が配設されると共に、シヤープペンシル筆記体の先端部が軸先から突出した状態において、中軸の後端と後軸の前端との間に芯を繰り出すために円筒カムが軸推移する必要なノックストローク分の隙間が確保されてなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、後軸の周面部に軸方向の摺動溝を設け、スライドキヤツプの内面に摺動溝に嵌装するリブを設けて、さらにスライドキャップの全長を後軸の全長に対して短寸となしたことによって、片手操作でも容易に蓋が開閉可能となる。
また、ガイド筒の前端を先軸の後端に接合したときに、ガイド筒に止着された中軸の前端に先軸の後端が当接して中軸がガイド筒に固定されることによって、全長の異なる中軸を差し替えて芯を繰り出すためのノック作動を必要とするシャープペンシル筆記体を含む複式筆記具とノック作動を必要としないボールペン等筆記体のみの複式筆記具との仕様の切り替えが容易に可能となる。
また、部材の形状や部材間の係合形状の改善によって組立てが容易化し、安価に提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の実施例について詳説する。
まずガイド筒4は図8乃至図11に示されている。図に示すようにガイド筒4は、前方に筒部4a、中間に軸部4b、後端に軸部4bの外径より適宜小径とした軸部4cが一体に形成され、軸部4bの周側面の2箇所に軸方向のガイド溝4m、4nが設けられ、筒部4aの前端側周面に螺子部4dが形成され、その螺子部4dが後述する先軸3の後端内周面に形成された螺子部と螺合により着脱可能に接合可能となされている。
また、筒部4aの螺子部4dの適宜後方に円周状の段部4eが形成され、その段部4eのやや後方に所要箇所で小リブ状の係止突部4fが形成されて、さらに前記段部4eから後方の周面所要箇所で軸方向適宜長さの縦溝4gが形成されている。
また、筒部4aと軸部4bの臨界部周面に全周に至らない範囲の周状の凹部4hが形成され、さらに軸部4bと軸部4cの臨界において、ガイド溝4m、4nに対する一方側周壁後端に段部4lと、他方側周壁後端に段部4kが形成され、段部4lの位置に対して段部4kの位置は適宜前方に設けられ、ガイド溝4m、4nの段部4lが位置する側の壁面が後述する円筒カム5の鍔部側面が当接する当接部4p、4rとなされている。
また、軸部4cの周面には貫通した軸方向略矩形状の窓部4iが設けられ、その窓部4iを挟んだ両側の周面に前端側に段部を有する傘状の係止段部4jが形成されている。
また、前記凹部4hに図12に示されるように一箇所開口した円周状のガイドリング21が弾性変形を利用して嵌装される。尚、凹部4hはガイドリング21をぴったり収容する形状となされており、ガイドリングの内面がガイド溝4m、4nの開放側を覆う状態となる。上記構成に関わる作用は後述する。
【0010】
円筒カム5は図13乃至図15に示されている。図に示すように円筒カム5は、前方に筒部5aと後方に段部5iを介してやや小径となした筒部5eで形成され、筒部5aの前面側には変位するカム斜面5bが円周方向の所要範囲に設けられ、カム斜面5bの最前端位置には摺動コマ14のカム状凸部の後端と係合する切欠5cが設けられている。
また、カム斜面5bの後方で筒部5aの内周面に内径方向に突出した鍔部5hが形成され、鍔部5hの後端に周状の段部5jが形成されると共に、筒部5aの周面所要箇所に軸方向略矩形状の窓部5dが穿設され、その窓部5dの後端位置で内周部に周状の段部5kが形成され、さらに、仕切り部を経て筒部5eの周面所要箇所に軸方向略矩形状の窓部5fが穿設されて、更にまた、筒部5eの周面の所要箇所に後述する印鑑17を着脱可能に止着するための係合突部5gが設けられている。
【0011】
上述したガイド筒4のガイド溝4m、4nに、ボールペン等筆記体16、16がその後端にそれぞれ摺動コマ14、14を取付けて配設され、ガイド溝の前端と摺動コマの前端側との間にリターンスプリング15、15を敷設すると共に、摺動コマ14、14をガイド筒4の後方に附勢して、ガイド溝4m、4nに対して摺動コマ14、14を軸方向に摺動自在に遊嵌し、ガイド筒4の周面部に摺動コマ14、14のカム状凸部とカム斜面5bを接触させた状態に円筒カム5を装着して、ガイド筒4の係止段部4jに円筒カム5の段部5jを相互間の弾性変形を利用して係合させ、ガイド筒4に対して円筒カム5が後方に抜止め固定されると共に、円筒カムの鍔部5hの側面がガイド筒4の当接部4p、4rに当接する角度範囲で円周方向に回動自在となされて、ガイド筒4に対して円筒カム5を回動したときにボールペン等筆記体16、16の先端部が軸先から交互に出没可能となる。 また、上述したようにガイド筒4にガイドリング21を止着したことによって、ボールペン等筆記体16が外側にややこじられても筆記体やリターンスプリング15がガイド溝から外れる等の問題が無く、安定した組立て作業を行うことができる。
【0012】
後軸1は図3乃至図7に示されている。図に示すように後軸1は、上面が平坦となった略断面円形状の筒体で、円周状の周面と平坦端部とを接続しやや肉厚となった部位の両側面に軸方向に沿った摺動溝1aが形成され、また、平坦となった後方部に略矩形状に窪んだ凹部A1bと、そこから所定距離離れた箇所に同様に略矩形状に窪んだ凹部B1cが形成されている。また摺動溝1aは、後軸1の前後端近傍で両端部が閉塞した状態に設けられ、後端部1f後方の所定位置に後端側に段部と前方側に斜面を有したストッパー1eが形成されている。また、内面部の後端側寄りの所要箇所に軸方向略矩形状で内径側に突出した係止突部1dが形成されている。
【0013】
スライドキャップ6は図17乃至図20に示されている。
図に示すようにスライドキャップ6は、内孔の上面が平坦となった略断面円形状の筒体で、その平坦部の外面は平坦面沿って下駄状のクリップ取付け台6bが一体に形成され、下駄状部位の両側面には2箇所で軸支部6jと6kが設けられ、それぞれの軸支部の中心に孔6cと6dが貫通して設けられて、さらに、両側面にクリップ22の取付け基部の内側面に設けられた折曲げ部を係合させて固着可能とする係止溝6hが形成されている。また、下駄状のクリップ取付け台6bの中央には仕切板状の座6eが設けられており、さらに、その座6eの中央部に略円周状の窪みが形成されるように囲い部6fが形成されている。また、内孔の内周面に軸方向に沿って、内径側に略水平に突出したリブ6gが形成されている。
また、蓋7が取付けられる開口部側には、蓋の側面に形成されたはめ込み形状7cと要所で軽度に係合するはめ込み形状6iが形成されて、蓋7の組立て作業が安定して行えるように配慮されている。
【0014】
スライドキャップ6の後端開口部から後軸1の前端が挿入され、スライドキャップの筒体6aの内面に形成されたリブ6gが後軸1のストパー1eを弾性的に乗り越えて摺動溝1aに嵌入し、リブ6gの前後端が後軸の摺動溝1aのストッパー1eと後端部1fに当接する間隔でスライドする。
【0015】
また、蓋7は図21及び図22に示されている。また、係止レバー11は図23に示されている。
蓋7の軸支部7bの凹所7dに捻りバネ8の捲線部を納め、捻りバネ8の一端の軸部を蓋側に係止し、他端の軸部をスライドキャップ6の座6eに係止させた状態で、蓋7の軸支部7bをスライドキャップの軸支部6jに据え、蓋7をスライドキャップの後端開口部に嵌め込んで、スライドキャップの孔6cと蓋の孔7aを貫通してピン9が取付けられ、また、スライドキャップの座6eの中央に形成された略円周状の窪みにコイル状のスプリング13の一端が設置され、他端が釦11aの内面に形成された凹部に係止されると共に、係止レバー11の軸支部11bがスライドキャップの軸支部6kに据え、スライドキャップの孔6dと係止レバー11の孔11eを貫通してピン12が取付けられ、クリップ22がスライドキャップのクリップ取付け台6bの外周部に取付けられ、係止レバーの釦11aがクリップ基部の上面に穿設された孔部から突出して設けられている。
ロック装置10は、係止レバーの釦11aをスプリング13の附勢力に抗して押圧したときに、係止レバーのアーム11cの前端に設けられた凸状の係止部11dが後軸1に設けられた2箇所の凹部A1bと凹部B1cの何れかとの係止状態を解除し、釦11aを押圧しないときに、凸状の係止部11dが凹部A1bと凹部B1cの何れかと係止状態となる装置である。
【0016】
段落11で説明した状態から、ガイド筒4に組み付けられた円筒カム5は、後軸1の内孔部に挿入され、後軸の係止突部1dは円筒カム5の略矩形状の窓部5dに弾性的に容易に無理なく係合し、且つ強固に係合される。即ち、図7に示されるように係止突部1dの係合開始部に斜面などのアプローチが配慮されている。
【0017】
図16は中軸2を示している。図に示すように中軸2は、内周面に周状に突出した凸部2aが形成され、さらに、その後方に所要箇所で軸方向のリブ2bが形成されている。
中軸2は、ガイド筒4の筒部4aの前端から被装され、リブ2bがガイド筒の縦溝4gに嵌挿すると共に凸部2aがガイド筒の係止突部4fを弾性変形により乗り越えて段部4eと係止突部4fとの間に係止されて止着される。また、中軸2の後端が後軸1の前端に当接した状態となされている。(実施形態ではボールペン等筆記体16のみが搭載されているので、シャープペンシルのようにノックさせる作用が不要であり、通常は中軸2の後端が後軸1の前端に当接した状態とすることが仕様上望ましい。)
先軸3は、図1に示すように口先部3a後方の周面にゴム等の弾性体よりなるグリップ20が装着され、後端内周面に形成された螺子部3bにガイド筒の螺子部4dが螺合され、先軸3及びグリップ20の後端が前記中軸2の前端に当接した状態で接合される。
この状態で中軸2は、ガイド筒4に対して軸方向に強固に固定される。
また、グリップ20は、先軸3の周面とグリップの内周面との間に係合部を設けて回転方向、軸方向にずれないように設けたり、また、グリップを先軸の周面に装着しないで二重成形等の手段で一体に設けることも可能である。
【0018】
また、円筒カム5後端の筒部5eの周面に印鑑17の取付け台18に設けられた筒部内周面が着脱可能に係合され、固定される。
印鑑17は、インクを吸蔵できるスポンジゴム等の無数の連続気孔を有する多孔性印材により形成された印字体19と、印字体19の側部周面を被覆すると共に後端の開口部から印字面19aを突出させる印字体カバー20と、その印字体カバー20を固定する取付け台18によって構成されている。
【0019】
以上によって、図1及び図2に示される本発明の印鑑付複式筆記具が組立てられる。
尚、実施形態の印鑑付複式筆記具は、基本的には道具を使うことなく容易に手で組立てられる特徴があり、生産都合に合わせて部分的に機械組立てと併用して合理的に組立てることが可能であり、組立て手順は上述した手順に限らず変更することが可能である。
【0020】
(作用)
図1及び図2は蓋7がスライドキャップの後端口を閉じた印鑑の未使用状態を示しており、蓋7はスライドキヤツプ6との間に取付けられた捻りバネ8によつてスライドキャップ6の後端口を塞ぐ方向に付勢されている。この状態から係止レバー11の釦11aを押圧し、係止レバー11の係止部11dと後軸1の凹部A1bとの係止状態を解除してスライドキヤツプ6を後軸1に対して前方へ摺動させると、蓋7の取付部に近い内面に印字体カバー20の周縁角部が当接して押圧することにより蓋7が拡開し、スライドキヤツプ6の後端口が開口して印鑑17の印字面19aが露出し、釦11aの押圧を解除するとスプリング13の附勢力によって係止部11dが後軸1の凹部B1cと係止状態となり捺印を可能とする。
この状態から再び釦11aを押圧し、スライドキヤツプ6を後軸1に対して後方へ摺動させると、前記捻りバネ8によつて蓋7がスライドキヤツプ後端口を塞いで印鑑17の印字面19aを隠蔽する。そして、釦11aの押圧を解除すると係止部11dが後軸1の凹部A1bと係止状態となり蓋7が閉じた状態にロックされる。
スライドキヤツプ6は、後軸1の全長に対して全長が短寸となされたことにより、片手操作でも容易に蓋が開閉可能である。しかも、実施形態において、前端がクリップ側と反対の側で傾斜状に後退しているので一層操作性がよい。
またスライドキャップ6は、内孔の上面が平坦となった略断面円形状の筒体で、且つ、後軸1も上面が平坦となった略断面円形状の同形の筒体なので、スライドキャップ6を後軸1に被装すれば回転方向で一体化することはできるが、ガタツキ防止やスムーズな摺動は期待できない。スライドキャップの筒体6aの内面に形成されたリブ6gが後軸1のストパー1eを弾性的に乗り越えて摺動溝1aに嵌入し、リブ6gの前後端が後軸の摺動溝1aのストッパー1eと後端部1fに当接する間隔でスライドするように設けたことによって、ガタツキ防止やスムーズな摺動が期待できると共に、後軸1に対するスライドキャップ6の容易な取付けと前後退位置の位置決めが容易である。
【0021】
また、実施形態において、係止レバー11の係止部11dの後部端面が鉤状に設けられ、一方、後軸1の凹部B1cの後部端面が同様な鉤状に設けられているが、これは、スライドキヤツプ6の後端口を開口して捺印するときに、スライドキャップ6の側面を指で掴んで行うが、印字面19aを書類等に強く押しつけたときに、スライドキャップの係止部11dと後軸の凹部B1cと係止が外れる可能性があり、不用意に外れないように相互が鉤状に迎合するように設けられたものである。また、スプリング13の附勢力を強くして係止状態を強固とする手段もあるが、スプリングのヘタリなどの問題がある。また、強く押しつけると印字面が潰れるので通常の捺印では問題が無く、必ず必要な構成ではない。 尚、捺印する際にスライドキャップ6の側面を指で掴まず、その後方の後軸1、極端には中軸2や先軸3を掴んで行えば前記係止が不用意に外れる問題は無い。しかしながら、正確な位置に捺印しずらい問題がある。
また、実施形態において、係止レバー11の係止部11dの前端面が垂直に設けられ、一方、後軸1の凹部A1bの前端面が垂直に設けられているが、携帯時に異常な外力が掛かって不用意に蓋7が開かないように相互間が鉤状に迎合するように設けられるが望ましいとも言える。
【0022】
また、グリップ20あるいは中軸2に対して後軸1あるいはスライドキャップ6を回動させると、ガイド筒4に対して円筒カム5が回動し、ガイド溝に遊嵌された摺動コマ14のカム状凸部が円筒カム5のカム斜面5bに接触して前後動し、先軸3の先端孔から選択的にボールペン等筆記体16の先端部が出没する。
【0023】
(他の実施形態)
また、ガイド溝の内、少なくとも一箇所にシヤープペンシル筆記体を配設し、中軸2の後端と後軸1の前端との間に芯を繰り出すために必要なノックストローク分の隙間を確保して、シヤープペンシル筆記体の先端部を先軸3の前端孔から突出させると共に、先端部後方に設けた段部を先軸前端の内段部に係合させ、シヤープペンシル筆記体の後方に芯を内蔵する芯パイプを設け、さらに、芯パイプの後端に摺動コマ14を取付けて、中軸2に対する後軸1の軸推移によってシヤープペンシル筆記体の後端に接続する摺動コマ14のカム状凸部の後端を円筒カム5の前端で軸推移させて芯を繰り出す。(尚、芯を把持したり、芯を繰り出したりするシャープペンシル筆記体の構造及び作用については、複式筆記具に搭載する筆記体として良く知られているので図面や詳細な説明は省略する。)
また、上述した実施形態では、2種の筆記体が搭載されているが、3種の筆記体を搭載することも可能である。
また、中軸の後端と後軸の前端において、何れか一方に軸方向に変位する凹部と、他方に軸方向に変位する凸部を設け、筆記体の先端部が突出する位置において、前記凹部と凸部が対面するようにガイド筒に対して中軸を取付けることによって、中軸に対して後軸の軸推移が可能となり、また、凹部と凸部の対面を外すことによって中軸に対して後軸の軸推移を不可とすることが可能であり、その場合、中軸は一種類でガイド筒に対する円周方向の取付け位置を変えることで、芯を繰り出すためのノック作動を必要とするシャープペンシル筆記体を含む複式筆記具とノック作動を必要としないボールペン筆記体のみの複式筆記具との仕様の切り替えが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である印鑑付複式筆記具の全体を詳細に示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態である印鑑付複式筆記具の全体を示す外観図である。
【図3】後軸の正面図である。
【図4】後軸の断面図である。
【図5】後軸の上面図である。
【図6】図3のA−A断面図である。
【図7】図4のB−B断面図である。
【図8】一部断面したガイド筒の上面図である。
【図9】ガイド筒のC−C断面図である。
【図10】ガイド筒の正面図である。
【図11】図8のD−D断面図である。
【図12】ガイドリングを示すである。
【図13】円筒カムの正面図である。
【図14】円筒カムの上面図である。
【図15】円筒カムの断面図である。
【図16】中軸の半断面図である。
【図17】スライドキャップの正面図である。
【図18】スライドキャップの上面図である。
【図19】図18のFーF断面図である。
【図20】スライドキャップの側面図である。
【図21】蓋の側面図である。
【図22】蓋の正面図である。
【図23】係止レバーーの側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 後軸
1a 摺動溝
1b 凹部A
1c 凹部B
1d 係止突部
1e ストッパー
1f 後端部
2 中軸
2a 凸部
2b リブ
3 先軸
3a 口先部
4 ガイド筒
4a 筒部
4b 軸部
4c 軸部
4d 螺子部
4e 段部
4f 係止突部
4g 縦溝
4h 凹部
4i 窓部
4j 係止段部
4k 段部
4l 段部
4m ガイド溝
4n ガイド溝
4p 当接部
4r 当接部
5 円筒カム
5a 筒部
5b カム斜面
5c 切欠
5d 窓部
5e 筒部
5f 窓部
5g 係合突部
5h 鍔部
5i 段部
5j 段部
5k 段部
6 スライドキャップ
6a 筒体
6b クリップ取付け台
6c 孔
6d 孔
6e 座
6f 囲い部
6g リブ
6h 係止溝
6i はめ込み形状
6j 軸支部
6k 軸支部
7 蓋
7a 孔
7b 軸支部
7c はめ込み形状
7d 凹所
8 捻りバネ
9 ピン
10 ロック装置
11 係止レバー
11a 釦
11b 軸支部
11c アーム
11d 係止部
11e 孔
12 ピン
13 スプリング
14 摺動コマ
15 リターンスプリング
16 ボールペン等筆記体
17 印鑑
18 取付け台
19 印字体
19a 印字面
20 印字体カバー
21 ガイドリング





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド筒の前端を先軸の後端に接合したときに、先軸の後端に前端が当接してガイド筒に固定されるように中軸がガイド筒に止着され、複数の軸方向のガイド溝を設けたガイド筒の各ガイド溝に、ボールペン等筆記体の後端にそれぞれ摺動コマを取付け、ガイド溝の前方と摺動コマとの間にリターンスプリングを敷設すると共に摺動コマをガイド筒の後方に附勢して、ガイド溝に対して摺動コマを軸方向に摺動自在に遊嵌し、ガイド筒の周面部に前記摺動コマと接触して摺動コマを軸方向に摺動可能とする軸方向に変位するカム斜面を有した円筒カムを後軸内面に一体に固定して設け、その後端部に印鑑を装着すると共に前記ガイド筒に対して円周方向に所要角度回動自在で後方に抜止め固定されて、中軸に対して後軸を回動したときに筆記体の先端部が軸先から選択的に出没可能となり、
また、後軸の周面部に軸方向の摺動溝を設け、スライドキヤツプの内面に前記摺動溝に嵌装するリブを設けて、後軸の全長に対して全長が短寸となされたスライドキヤツプを後軸に円周方向の回動が一体的で軸方向には摺動自在に被嵌し、スライドキヤツプの後端部に、後軸に対するスライドキヤツプの軸方向前方への摺動により印鑑における印字体カバーの周縁角部に内面を当接して押圧されることによりスライドキヤツプの後端口を開口すると共にスライドキヤツプの軸方向後方への摺動により印字体カバーから離れてスライドキヤツプとの間に設けた捻りバネの作用によりスライドキヤツプの後端口を閉口する蓋を回動自在に取付け、後軸に対してスライドキヤツプを軸方向に摺動させて前記蓋が開き且つ閉じる位置においてそれぞれスライドキヤツプを後軸に固定するロツク装置をスライドキヤツプと後軸との間に設けたことを特徴とする印鑑付複式筆記具。
【請求項2】
ガイド溝の内、少なくとも一箇所にシヤープペンシル筆記体が配設されると共に、シヤープペンシル筆記体の先端部が軸先から突出した状態において、中軸の後端と後軸の前端との間に芯を繰り出すために円筒カムが軸推移する必要なノックストローク分の隙間が確保されてなる請求項1に記載の印鑑付複式筆記具。




















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−56149(P2006−56149A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240929(P2004−240929)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】