説明

収穫装置

【課題】マルチシートで覆った畝に栽培される作物を、土落輪側へのマルチシートの巻き付きを防止しながら収穫する収穫装置を提供する。
【解決手段】葉茎部を挟持して引き抜きながら後方に搬送する搬送コンベア部7の中途部下方で、土落輪36によって根部の土を振るい落とす土落部11と、マルチシートSをローラ46で押接し搬送コンベア部7側への巻き付きを防止するシート押え部9とを備えた収穫装置1であって、シート押え部9のローラ46が、シート転圧姿勢から上動して巻き込み防止姿勢になるとき、ローラ46を土落輪36に接当させて上動を規制すると共に、ローラ46を土落輪36と逆向きの下向き回転をさせることにより、マルチシートSの土落輪36側への巻き付きを防止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチシートで被覆された畝からニンニク等の地下茎作物を収穫する収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畝をマルチシートで覆った状態で栽培されるニンニク等の地下茎作物を、搬送コンベアで葉茎部を挟持して抜き取って収穫する収穫装置は、作物を後方搬送する間に根部に付着した土を、土落輪によって振るい落しを行うようにしたものが、既に公知である(例えば特許文献1。)。
上記収穫装置は、農業用のトラクタの後部に装着される装置フレームに、前低後高状に斜設され葉茎部を挟持して引き抜きながら後方に搬送する搬送コンベアと、搬送コンベアの中途部下方に配設されて、根部に付着した土を搬送方向に上向き回転する土落輪によって振るい落とす土落部と、該土落部の下方で作物の引き抜きによって剥がされて持ち上がるマルチシートを遊転自在なローラで押接することにより、搬送コンベア側への巻き付きを防止するシート押え部とを備えた構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−48642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される収穫装置は、例えばニンニクを収穫するとき、その葉茎部を搬送コンベアのベルトで挟んで引き抜いて後方上方に向けて搬送するとき、当該ニンニクの球根部がマルチシートの孔から抜け出ず引っ掛けたまま持ち上がるマルチシートを、ローラが押さえて搬送コンベアへの巻き付きを防止することができる。
然しながら、上記ローラは球根部によって持ち上げられるマルチシートによって搬送コンベア側に上動したとき、ローラの下向き回転が止まってマルチシートとの間にスリップを生じ、装置の進行及び球根部の後方移動によってマルチシートが畝から大きく引き剥がされる等の不具合を生ずる欠点がある。
さらに、例えば土落部を搬送コンベアのより前側に配置して、土落としを搬送初期から行いたい場合に、土落輪はローラに近接するため、持ち上げられたマルチシートが球根部に引っ掛かったまま土落輪に至り易くなるため、土落輪がマルチシートを巻き込む等の不具合を新たに生ずる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は係る課題を解決するために、第1に、マルチシートSで覆った畝Uに栽培される作物を、装置フレーム2に前低後高状に傾斜させて設置され、葉茎部を挟持して引き抜きながら後方に搬送する搬送コンベア部7と、搬送コンベア部7の中途部下方に配設されて、根部に付着した土を上向き回転する土落輪36によって振るい落とす土落部11と、該土落部11の下方で作物の引き抜きによって剥がされ持ち上げられるマルチシートSを、ローラ46で押接し搬送コンベア部7側への巻き付きを防止するシート押え部9とを備えた収穫装置1において、前記シート押え部9のローラ46が、畝U上のマルチシートSに沿って転動するシート転圧姿勢から、引き抜かれた作物によって持ち上げられるマルチシートSを介して上動する巻き込み防止姿勢になるとき、当該ローラ46を土落輪36に接当させて上動を規制すると共に、ローラ46を土落輪36と逆向きの下向き回転をさせることにより、マルチシートSの土落輪36側への巻き付きを防止するように構成したことを特徴としている。
【0006】
第2に、上記巻き込み防止姿勢において、ローラ46を土落輪36に複数突設した突起36bに接当させることにより、ローラ46を強制的に下向き回転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、マルチシートで覆った畝に栽培されるニンニク等の作物を、搬送コンベア部で葉茎部を挟持して抜き取り後方搬送しながら根部に付着した土落しを行う際に、ローラがマルチシートに沿って転動するシート転圧姿勢から、作物によって持ち上げられるマルチシートにより上動する巻き込み防止姿勢になるとき、ローラは土落輪に接当し上動が規制されるので、ローラの上動範囲を十分に設けながら土落輪をローラに接近させることができ、また土落としを搬送初期から行うことができる。このとき、ローラは土落輪とは逆向きの下向き強制回転をさせることにより、搬送される作物の根部からマルチシートを強制的に外すので、マルチシートの土落輪への巻き付きを確実に防止することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、巻き込み防止姿勢において、ローラを土落輪に突設した突起に接当させることにより、マルチシートがローラを上限まで上動したとき、土落輪がローラを下向きに強制回転させるので、根部からマルチシートを強制的に外すことができると共に、ローラの逆回転伝動構造を簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を実施した収穫装置の側面図である。
【図2】本発明を実施した収穫装置の平面図である。
【図3】ローラと土落輪の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1,図2において符号1は本発明を実施した収穫装置である。この収穫装置1は、装置フレーム2の前方部に構成されるマストフレーム3を、図示しないトラクタの後部に備える3点リンクに機構ヒッチ部を介して着脱自在に装着され、トラクタPTO軸から動力をユニバーサルジョイントを介して、入力軸4に入力しミッション5に伝動される。
【0011】
上記収穫装置1は、装置フレーム2のフレーム本体2aの前部側にニンニク等の地下茎作物の根を切断する根切部6を配設しており、該根切部6の上方に収穫作物条に合わせて、作物を引抜き後方上方に向けて搬送する搬送コンベア部7を設け、該搬送コンベア部7の終端下方に作物を受けて収容する収納部8を配設している。
また上記搬送コンベア部7の中途下方には、引抜かれた作物によって剥がれて持ち上がろうとするマルチシートSを押圧するシート押え部9と、搬送中の作物の根部に接当して土落としをする土落部11とを前後方向に配設している。
【0012】
以下収穫装置1の各部の構成について説明する。先ず、根切部6は装置フレーム2の左右で、支持軸12を支点に前後方向に揺動自在に支持される根切アーム13と、該左右の根切アーム13の下端を横方向に接続する根切刃14とからなる。この根切部6は、ミッション5からクランク機構等を介して揺動駆動され、地中で前後運動する根切刃14によって、作物の根を切断すると共に土壌を膨軟にして作物を浮き上がらせて抜き取り易くする。
【0013】
搬送コンベア部7は、前側コンベア部7aと後側コンベア部7bとからなり、左右で対をなして搬送面を対向させる前側の搬送ベルト16と、後側の搬送ベルト16aとにより、作物の葉茎部を挟持して後方搬送する搬送路18,18aを一連に形成し、収穫装置1の収穫幅内に4条分の搬送路18,18aを形成するようにしている。
【0014】
即ち、前側コンベア部7aは、フレーム本体2aの下方に収穫幅の左右外側に位置する外搬送フレーム19と、3体の内搬送フレーム19aとを搬送方向に沿って支持しており、外搬送フレーム19には1本の搬送ベルト16を前後の従動プーリと駆動プーリを介して張設し、内搬送フレーム19aには隣接する2本の搬送ベルト16を前後の従動プーリと駆動プーリを介して張設している。また搬送終端における上記各駆動プーリのプーリ軸には、作物の茎中途部を切断する円盤状のカッタ20を固設している。
【0015】
後側コンベア部7bは、各外搬送フレーム19と内搬送フレーム19aとの終端上方に後続して支持される後側搬送フレーム19cに、後側搬送ベルト16aを前後の駆動プーリと従動プーリを介して張設している。
上記構成される前側コンベア部7aと後側コンベア部7bは、各前側の搬送ベルト16と後側の搬送ベルト16aのそれぞれの駆動プーリを、装置フレーム2の後部にミッション5に接続して配置される伝動部22から回転駆動するようにしている。
【0016】
そして、外搬送フレーム19と内搬送フレーム19aは、それぞれ先端に作物の茎部を掻き分けるデバイダ23を設けており、且つデバイダ23の下部には後方に向けて下向きに湾曲して接地する橇体24を固設している。
また後側搬送フレーム19cは、その後部の下方に配設される葉茎シュウタ26に、カッタ20によって球根部が切り落とされた葉茎部を案内するガイド27を、後方に向けて突設している。
【0017】
上記葉茎シュウタ26は、内搬送フレーム19aの後部にブラケット27を介して取付けており、上記葉茎部を収納部8左右の外側に案内して滑落することができる。
また前記カッタ20の下方には、フレーム本体2aの左右から下方に向けて延設される下部フレーム29に球根シュウタ28を取付けている。この球根シュウタ28は、カッタ20によって切り落とされる球根部を受け、収納部8内にスムーズに流下させて収容させることができる。
【0018】
収納部8は、収納用のコンテナ31を開口部を、球根シュウタ28の下部に臨ませて配置している。このコンテナ31は平面視で方形状をなしており、下部フレーム29側から後方に向けて延設される支持腕32に着脱自在に取付けている。
また左右の下部フレーム29の下部には、圃場面と平行状に接するように橇体33を取付けている。これにより橇体33は、作物が栽培される畝Uを跨いで左右の畝間溝部に接地し、装置重量を支えて滑走しながら作物抜取位置を安定化させる。
【0019】
土落部11は、搬送コンベア部7の中途下方で球根シュウタ28の前方において、土落輪36を有する土落軸37を前後に軸支する土落ケース38を配設している。この土落ケース38は、ミッション5側に接続した伝動ケース39から、伝動軸41を介して回動自在に軸支すると共に、ケース後部に突設した取付片41aを介して下部フレーム29に上下調節自在に取付けている。これにより土落ケース38は、前後の土落輪36を作物の搬送方向に回転駆動すると共に、前側コンベア部7aとの間隔を調節できるようにしている。尚、前後の土落軸37の他端は、他側の下部フレーム29に上下調節自在に取付けられるアームに回動自在に軸支している。
【0020】
図3で示すように土落輪36は、ボス部36aにゴム状弾性材からなる突起36bを多数放射状に突設しており、各搬送路18毎に垂れ下がり姿勢で挟持搬送される根部に接当し、球根部等を回転動又は跳ね上げることにより根部に付着している土を離脱し、各土落輪36の間隔や突起間の隙間から土を下方に振るい落としながら、回転方向に移動させることができる。尚、図示例の土落部11には、前後2段の土落輪36を設けているが、必要により増設することができる。
【0021】
次に、図1,図3を参照しシート押え部9について説明する。このシート押え部9は、前記土落輪36の直径よりやや小径となした中空円筒状のローラ46を、該ローラ46の両端から突出するローラ軸46aを、左右の下部フレーム29に突設した支持軸47aに、上下回動自在に軸支したアーム47の前端に回転自在に軸支している。
これにより、ローラ46は進行方向に直交して畝Uを横断するように水平方向に支持され、且つローラ46を土落部11の最前の土落輪36の略直下に位置させ、上下動自在に支持される。
【0022】
これにより、ローラ46は、畝Uを被覆するマルチシートSに沿って転動する図1に点線で示す(通常時姿勢)と、上方に剥がされるマルチシートSによってローラ46が持ち上げられるとき、当該ローラ46が実線で示すように、土落輪36に接当してそれ以上の上動が規制されると共に、土落輪36との回転接触によって該土落輪36の回転と逆向きに強制回転される、マルチシートSの巻き込み防止姿勢との姿勢変更を自在に行うことができる。
【0023】
また下部フレーム29には、前方に向けてストッパ49を突設しており、これによりローラ46は上下動範囲中でアーム47がストッパ49に接当したとき、シート転圧姿勢の下限位置が規制される。
また下部フレーム29に対する支持軸47の突設位置及びストッパ49の設置位置を変更することにより、マルチシートSの種類や畝Uの状況に適応させて、土落輪36に対するローラ46の設置位置を容易に選択することができる。
【0024】
次に、上記のように構成される収穫装置1によって、ニンニクを収穫する作業について説明する。先ず収穫装置1は、左右の橇体33を畝Uの畝溝に接地させると共に、ローラ46をマルチシートSに載せた押圧状態となし畝Uに沿って進行させる。
このとき畝Uの地中で前後運動する根切刃14は、球根部の下部で根を切断すると共に土壌を膨軟にして作物を浮き上がらせた状態にするので、ニンニクの抜き取りを容易にする。
【0025】
次いで搬送コンベア部7の前側コンベア部7aが、対をなす前側の搬送ベルト16によって、葉茎部を挟持して搬送路18を介して後方上方に持ち上げ搬送し、土落部11において土落輪36による土落としを行なわせたのち、前側コンベア部7aの終端部において、葉茎部の下側をカッタ20により切断し球根部を落下させる。
これにより葉茎部は、後側コンベア部7bの搬送路18aに継送され、該搬送路18aの終端からガイド27を介し、葉茎シュウタ26に落下させて装置外に排出される。
また球根部は、球根シュウタ28によって受けられて流下案内され、収納部8のコンテナ31内にスムーズに収容される。
【0026】
このような収穫作業において、前側コンベア部7aによる搬送初期において、ニンニクは球根部がマルチシートSの孔からスムーズに抜け出さない場合に、搬送に伴い球根部がマルチシートSを大きく剥がして上方に持ち上げると共に、当該マルチシートSを介してローラ46をアーム47を介し支持軸47aを支点に上動させる。
このとき図1,図2に実線で示すようにローラ46は、土落輪36に接当して上動が規制された上下動範囲の上限になると、上向き回転している土落輪36の突起36bとの接触により、該土落輪36の回転とは逆向きに強制的に下向き回転をする。
【0027】
従って、搬送される球根部によって持ち上がったマルチシートSは、ローラ46を越えて搬送方向に移動されようとしても、下向き回転するローラ46がマルチシートSを下方に強制的に引き戻すように作用するため、球根部をシート孔から確実に離脱させることができる。これにより持ち上がったマルチシートSは、元の被覆状態に速やかに復帰することになり、土落輪36によるシート巻き込みを解消すると共に、畝UからマルチシートSを大きく引き剥がす等の不具合を防止することができる。
【0028】
またマルチシートSの巻き付きを防止する土落輪36は、ローラ46に近接させて土落部11を搬送コンベア部7のより前部に配置させることができるので、搬送経路18による搬送初期に土落としを促進して行うことができると共に、ローラ46と土落部11の前後間隔を短縮させて装置の小型化を図ることができる。
【0029】
さらに、巻き込み防止姿勢においてローラ46は、土落輪36に突設した突起36bに接当させるので、マルチシートSがローラ46を上限まで上動したとき、ローラ46は自動的に下向き強制回転させるので、ローラ46の逆回転伝動構造を土落部11の動力を利用して簡潔で廉価な構成にすることができ、また弾力性を有する突起36bは、ローラ46を耐久性を備えスムーズに回転させる等の特徴がある。
尚、ローラ46は、必要により別途設置される伝動ケース又は電動モータ等によって、強制的に下向き回転駆動させる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 収穫装置
2 装置フレーム
7 搬送コンベア部
9 シート押え部
11 土落部
36 土落輪
36b 突起
46 ローラ
S マルチシート
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチシート(S)で覆った畝(U)に栽培される作物を、装置フレーム(2)に前低後高状に傾斜させて設置され、葉茎部を挟持して引き抜きながら後方に搬送する搬送コンベア部(7)と、搬送コンベア部(7)の中途部下方に配設されて、根部に付着した土を上向き回転する土落輪(36)によって振るい落とす土落部(11)と、該土落部(11)の下方で作物の引き抜きによって剥がされ持ち上げられるマルチシート(S)を、ローラ(46)で押接し搬送コンベア部(7)側への巻き付きを防止するシート押え部(9)とを備えた収穫装置(1)において、前記シート押え部(9)のローラ(46)が、畝(U)上のマルチシート(S)に沿って転動するシート転圧姿勢から、引き抜かれた作物によって持ち上げられるマルチシート(S)を介して上動する巻き込み防止姿勢になるとき、当該ローラ(46)を土落輪(36)に接当させて上動を規制すると共に、ローラ(46)を土落輪(36)と逆向きの下向き回転をさせることにより、マルチシート(S)の土落輪(36)側への巻き付きを防止するように構成したことを特徴とする収穫装置。
【請求項2】
上記巻き込み防止姿勢において、ローラ(46)を土落輪(36)に複数突設した突起(36b)に接当させることにより、ローラ(46)を強制的に下向き回転させる請求項1記載の収穫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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