取水装置およびそれを用いた雨水貯留システム
【構成】 取水装置12は、たとえば有底円筒状に形成される槽本体18を備え、雨水から混入している異物を分離して、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽14に供給する。槽本体18のたとえば側面には、流入口30が形成され、この流入口30を通して流入管24から槽本体18内に雨水が流入する。また、本体18のたとえば底面には、排出口32が形成され、この排出口32から排出管26を通して雨水から分離した異物が水と共に排出管26から排出される。さらに、槽本体18には、取水管28が設けられる。取水管28の下端部は、流入管24の管底よりも低位の高さ位置で下方向に向けて開口し、その開口が取水口36として機能する。そして、この取水口36を通して、異物を除去した水が取水管28から取り出され、雨水貯留槽14に供給される。
【効果】 異物が除去された水を雨水貯留槽に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【効果】 異物が除去された水を雨水貯留槽に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムに関し、特にたとえば、流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた処理水を取り出して雨水貯留槽に供給する、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化が進んだこと等による環境の変化に伴い、局地的な大雨や台風時の大雨による浸水被害が増加している。この被害を防止するための対策として、雨水貯留槽を地下に埋設し、雨水を一時的に貯留した後、雨水管や河川に放流する、或いはそのまま地中に緩やかに浸透させる対策が実施されている。しかし、雨水貯留槽内に集められる雨水には、落ち葉や土砂などの異物が含まれるので、雨水貯留槽内には、異物が溜まり易い。雨水貯留槽内に異物が溜まると、その機能を適切に維持できない恐れがあるので、定期的な点検および清掃を実施して、雨水貯留槽内に堆積した異物を適宜除去する必要がある。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示される雨水の地下貯留浸透タンク(雨水貯留槽)では、貯留タンクの下に汚泥ピットを設けている。そして、貯留タンク内に流入した夾雑物(異物)を、汚泥ピット内に沈殿させ、吸引ホースを用いて、堆積した沈殿物を吸い取って除去している。しかし、吸引ホースを用いて沈殿物を除去するという作業は、手間がかかる上、吸引ホース等の特別な機器を別途用意しなければならない。さらに、貯留タンクの内部構造は複雑であり、流入する異物も、雨水中を浮遊する密度(比重)の小さい非沈殿異物から、貯留タンク内に留まって移動しない密度の大きい沈殿異物まであるので、貯留タンク内に流入した全ての異物を汚泥ピットに集めることは難しい。このため、特許文献1の技術では、汚泥ピット内の沈殿物の除去とは別に、何らかの手段を用いて貯留タンク内を清掃する必要が生じると思われる。
【0004】
雨水貯留槽内に異物を溜めないための対策として、雨水貯留槽の上流側で雨水を事前に処理し、雨水貯留槽内には、異物を除去した雨水(処理水)を流入させることが考えられる。たとえば、雨水貯留槽内に雨水を流入させる雨水流入管に、沈砂槽を設けることが一般的に行われている。この場合、密度の大きい沈殿異物は、沈砂槽に沈殿させることにより除去し、密度の小さい非沈殿異物は、網状のフィルタを利用して除去する。しかし、この場合でも、沈砂槽に堆積した異物を、吸引ホース等によって定期的に除去しなければならない。また、フィルタは、目詰まりを起こし易いので、定期的な清掃が必要となる。
【0005】
また、雨水貯留槽の上流側に、雨水に混入している異物を分離して、異物を除いた処理水を取り出す分水装置を設け、この分水した処理水を雨水貯留槽に供給することも考えられる。たとえば、特許文献2に開示される渦流式固液分離装置(分水装置)では、雨水などの非処理液が供給路から円筒型水槽(分水槽)に流入し、砂等の沈降性物質(沈殿異物)が沈降分離されるとともに、非沈降性の物質(非沈殿異物)も渦流によって中心に引き寄せられることにより捕捉されて分離される。そして、分離された固形物が水槽下部の引き抜き部から引き抜かれ、当該固形物が除去された処理水が排出路を介して揚水される。
【特許文献1】特開2002−294665号[E02B 5/02]
【特許文献2】特開2006−97378号[E03F 5/22]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1の技術や、雨水貯留槽の上流に沈砂槽を設ける技術では、吸引ホース等を用いて異物を除去する作業などが必要となり、維持管理に手間がかかる。
【0007】
また、特許文献2の渦流式固液分離装置を雨水貯留槽の上流側に設けたとしても、非処理液を供給するための供給路と排出路とがほぼ同じ高さに設けられているため、円筒型水槽内の水位が排出路に至るまで上昇すると、供給路から流入した非処理液に混入している非沈降性の物質(非沈殿異物)が水面に浮かび上がって、処理水とともに排出路から流出してしまう。また、排出路が円筒型水槽の側部に設けられているため、たとえば円筒型水槽内に生じた渦流の遠心力が非沈降性の物質にかかると、その非沈降性の物質が円筒型水槽内の側部側に飛散してしまい、そのまま処理水とともに排出路から流出してしまう。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減できる、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【0010】
この発明のさらに他の目的は、非沈殿異物を適切に除去することができる、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
第1の発明は、流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽に供給する取水装置であって、有底筒状に形成される槽本体、槽本体に設けられる流入口を通して当該槽本体内に雨水を流入させる流入管、流入口よりも低位に設けられる排出口を通して当該槽本体内の異物を排出する排出管、および流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位に設けられる取水口を通して水を取り出す取水管を備える、取水装置である。
【0013】
第1の発明では、取水装置(12)は、たとえば有底円筒状に形成される槽本体(18)を備えており、雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽(14)に供給する。槽本体には、流入口(30)が形成され、この流入口を通して流入管(24)から槽本体内に雨水が流入する。また、槽本体における流入口よりも低位の高さ位置には、排出口(32)が形成され、この排出口(32)から排出管(26)を通して雨水から分離した異物が水と共に排出される。さらに、槽本体には、取水管(28)が設けられる。取水管は、たとえば流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位の高さ位置で開口しており、その開口が取水口(36)として機能する。そして、この取水口を通して、異物を除去した水が取水管から取り出され、雨水貯留槽に供給される。
【0014】
第1の発明によれば、取水装置によって異物が除去された水を取り出し、その水を雨水貯留槽に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【0015】
さらに、取水口が流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位の高さ位置に配置されているため、流入管から槽本体内に流入した雨水に混入している沈殿異物が槽本体の底部に沈殿して排出口に流れ込むとともに、非沈殿異物が水面に浮かび上がっても、取水口に流れ込まない。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に従属し、流入口は、槽本体の側面に設けられ、排出口は、槽本体の底面に設けられ、取水口は、槽本体の内部における流入管の管底よりも低位に設けられる。
【0017】
第2の発明では、槽本体(18)の側面には、流入口(30)が設けられ、この流入口に流入管(24)が取り付けられる。また、槽本体の底面には、排出口(32)が設けられ、この排出口に排出管(26)が取り付けられる。さらに、取水管(28)は、槽本体の内部における流入管の管底よりも低位の高さ位置に取水口(36)をなしている。
【0018】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、流入口の中心軸線を槽本体の径方向に対して所定角度で偏心させ、取水口を槽本体の中心部に配置する。
【0019】
第3の発明では、槽本体(18)は、有底円筒状に形成され、その中心部には、取水管(28)における取水口(36)が配置される。また、流入管(24)は、その流入口(30)の中心軸線が槽本体(18)の径方向に対して所定角度で偏心した状態で槽本体に取り付けられ、実施例では、槽本体に対して接線方向に接続される。
【0020】
第3の発明によれば、槽本体へ偏心流入した雨水が、渦流を形成しながら槽本体の内部を螺旋状に流動し、その渦流によって雨水に混入している異物を分離することができる。さらに、たとえ渦流による遠心力が非沈殿異物にかかっても、その非沈殿異物が取水口に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0021】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に従属し、取水管を槽本体内に延設して、取水口を下方に向けて開口させる。
【0022】
第4の発明では、槽本体(18)の上端が、たとえば天板(34)によって密閉されており、この天板の中央部に取水管(28)が挿通される。取水管は、槽本体の内部まで延設されており、その下端部が取水口(36)として下方向に向けて開口する。
【0023】
第4の発明によれば、水面に浮かび上がった非沈殿異物を、取水口に流れ込ませずに、取水管の周囲で滞留させることができる。したがって、雨水に混入している非沈殿異物をより適切に分離することができる。
【0024】
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明に従属し、槽本体は、排出口に向かって下方に傾斜する傾斜底面を有し、排出口は、傾斜底面の下端部に配置される。
【0025】
第5の発明では、槽本体(18)の底面は、たとえば中心部に向かって下方に傾斜しており、この傾斜底面(22)の下端部に排出口(32)が配置される。このため、槽本体の底部に沈殿した沈殿異物が排出口へスムーズに案内され、その沈殿異物が排出管(26)から適切に排出される。
【0026】
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明の取水装置と取水管から取り出した水を貯留する雨水貯留槽とを備える、雨水貯留システムである。
【0027】
第5の発明では、雨水貯留システム(10)は、取水装置(12)と雨水貯留槽(14)とを含み、取水装置(12)によって雨水に混入している異物が分離され、異物を除いた水が取り出されて雨水貯留槽(14)に供給される。実施例では、取水装置から取り出された水が外槽(20)に受水され、当該外槽から接続管(44)を介して雨水貯留槽に供給されて、雨水貯留槽に貯留される。
【0028】
第6の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果が期待できる。
【0029】
第7の発明は、第6の発明に従属し、流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する渦流式分水装置をさらに備え、この渦流式分水装置を介して取水装置と雨水貯留槽とを接続した。
【0030】
第7の発明では、雨水貯留システム(10)は、取水装置(12)と渦流式分水装置(16)と雨水貯留槽(14)とを備えており、取水装置と雨水貯留槽とが渦流式分水装置を介して接続される。このような雨水貯留システムでは、先ず、取水装置によって雨水に混入している異物が分離され、当該取水装置が取り出した水が分水装置に導流される。次に、分水装置が、流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する。そして、分水装置によってさらに異物が除去された水が雨水貯留槽に供給される。
【0031】
第7の発明によれば、たとえ取水装置で除去することができなかった異物があっても、その異物を分水装置で分離して除去することができる。したがって、雨水貯留システム全体の維持管理性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、異物を除去された水のみが雨水貯留槽に供給されるため、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【0033】
さらに、この発明によれば、水面に浮かび上がった非沈殿異物が取水口に流れ込まないため、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0034】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1を参照して、この発明の一実施例である雨水貯留システム10は、取水装置12と雨水貯留槽14とを含み、取水装置12によって雨水に混入している異物を分離し、異物を除いた水(処理水)を取り出して雨水貯留槽14に供給するものである。
【0036】
ただし、この実施例では、取水装置12と雨水貯留槽14とが渦流式分水装置(以下、単に「分水装置」という。)16を介して接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)が分水装置16に導流され、分水装置16によってさらに異物が除去された処理水(第2処理水)が雨水貯留槽14に供給される。
【0037】
先ず、雨水貯留槽14について簡単に説明する。雨水貯留槽14は、浸水被害の発生の防止を主たる目的として地下に埋設されるものであり、たとえば、プラスチック製の要素部材を組み立て、その周囲を遮水シート或いは透水シートで覆うことにより形成される。このような雨水貯留槽14は、側溝や雨水桝などから雨水を集め、その雨水を一時的に貯留した後、雨水本管などに放流したり、そのまま地中に緩やかに浸透させたりする。これにより、集中豪雨の際などに、河川や雨水本管などに対して雨水の流入が集中することを抑制し、浸水被害の発生を防止する。なお、貯留した雨水は、植物への散水用水や災害時の非常用水などに有効利用することもできる。
【0038】
具体的には、雨水貯留槽14としては、たとえば、本願出願人等によって製造販売されている各種の雨水貯留槽(参照;http://www.kuHotH-ci.co.jp/rHin/ind_H.html <http://www.kubota-ci.co.jp/rain/ind_b.html>)を採用できる。また、先に挙げた特許文献1に開示される雨水貯留槽など、材質(合成樹脂製やコンクリート製など)や形状を問わず、従来公知の様々な雨水貯留槽に取水装置12を接続するようにもできる。
【0039】
なお、雨水貯留槽14は、機能の面から分類して、一時貯留の機能を主として有する「貯留型」と、浸透の機能を主として有する「浸透型」と、一時貯留および浸透の双方の機能を有する「貯留浸透型」との3つのタイプに分類することができるが、この発明でいう雨水貯留槽14とは、これら3つのタイプの全てを含む概念である。
【0040】
図1および図2に示すように、取水装置12は、雨水から異物を分離する槽本体18と、この槽本体18を収容する外槽20とを備えており、雨水貯留槽14の近傍の地中に埋設される。
【0041】
図3に示すように、槽本体18は、塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、中央に向かって下方に傾斜する傾斜底面22を有する円筒状に形成され、その大きさは、雨水貯留槽14の大きさなどによって適宜設定されるが、この実施例では、たとえば、槽本体18の外径は630mmであり、その長さは1000mmである。
【0042】
槽本体18には、雨水を流入する流入管24と、その雨水から分離した異物を水と共に排出する排出管26と、その異物を除去した第1処理水を取り出す取水管28とが取り付けられる。
【0043】
具体的には、槽本体18の側面には、流入口30が形成され、この流入口30を通して、流入管24から道路脇の側溝や雨水桝等から集めた雨水が槽本体18内に流入する。流入管24は、外槽20を貫通して槽本体18まで延び、この槽本体18に対して接線方向に接続される。流入管24の内径は、雨水の想定流入量に応じて適宜設定され、たとえば350mmである。
【0044】
また、傾斜底面22の下端部には、排出口32が形成され、この排出口32から排出管26を通して雨水から分離した異物が水と共に雨水本管や合流式下水道管などに放流される。詳細は後述するが、排出管26は、分水装置16のバルブ48と合流し、外槽20を貫通して雨水本管や合流式下水道管などに接続される。排出管26は、流量制限オリフィスを有しており、その流量は所定の許容放流量に応じて適宜設定される。ここで、「許容放流量」とは、降雨時に流出施設から下流に放流を許容される流量であり、たとえば下流河川や下水道管渠の流下能力により決定される。また、排出管26は、その流量が取水管28から取り出される処理水の量よりも少なくなるようにも調整されており、その内径は、たとえば100mmである。
【0045】
また、槽本体18の上端は、天板34によって密閉されており、この天板34の中央部に取水管28が挿通される。取水管28は、槽本体18の内部まで延設されており、下端部が流入管24の管底よりも低位の高さ位置で下方向に向けて開口し、その開口が取水口36として機能する。そして、取水口36を通して、取水管28から槽本体18内の第1処理水が取り出され、この第1処理水が後述する分水装置16の分水槽46に導流される。取水管28は、外槽20内において、分水槽46に向けて延び、当該分水槽46の側面に接続される。取水管28の内径は、流入管24の内径と排出管26の内径に応じて適宜設定され、たとえば250mmである。取水管28には、槽本体18内において、管壁に複数の通水孔38が形成されており、これによって槽本体18の中心付近に集められた沈殿異物が取水口36に吸い込まれるのが防止される。
【0046】
外槽20は、合成樹脂、コンクリート或いは金属などによって直方体状や円筒状などに形成され、上述したように、槽本体18を収容する。詳細は後述するが、外槽20は、処理水を受水するための部位であり、この実施例では、分水装置16の分水槽46から溢れ出した第2処理水を受水する。外槽20の上部には、点検孔40が形成され、点検孔40は地表に臨ませられる。点検孔40は、通常時は蓋(図示せず)によって閉じられているが、蓋を外すことによって、地表からの外槽20内の点検が可能となり、場合によっては外槽20内への人の出入りを可能にする。
【0047】
また、外槽20の側面上部には、オーバーフロー管42が取り付けられる。オーバーフロー管42は、外槽20の外部で排出管26と合流しており、雨水貯留槽14内の水位が上限水位を越えたときに、外槽20内の処理水をオーバーフローして排出管26に導流する。
【0048】
さらに、外槽20の側面下部には、外槽20と雨水貯留槽14とを接続する接続管44が取り付けられており、この接続管44を介して外槽20内の処理水が雨水貯留槽14に供給される。
【0049】
また、分水装置16としては、本願出願人が先に出願した特願2008−148550号において提案したものを使用することができる。
【0050】
具体的には、分水装置16は、雨水から異物を分離する分水槽46と、分水槽46に設けられるバルブ48とを備えており、外槽20内に収容される(図1および図2参照)。
【0051】
図4に示すように、分水槽46は、塩化ビニルなどの合成樹脂によって有底円筒状に形成され、その大きさは、分水槽46に流入する第1処理水の想定流入量などによって適宜設定される。上述したように、分水槽46の側面には、取水装置12の槽本体18から延びる取水管28が接続される。取水管28は、雨水が流入しない、または雨水の流速が低下するのを防ぐために、取水装置12の天板34の高さ位置から後述する誘導部材62と傾斜仕切板64との間の高さ位置まで立ち下げられて、分水槽46に対して接線方向に接続される。
【0052】
分水槽46は、垂直上方向に向けて開口しており、その上方開口には、天板50が設けられる。天板50は、その中央部に開口を有するドーナツ板状に形成され、その開口縁から下方に延びる円筒状の外筒部52を有する。外筒部52には、ラッパ状に形成される異物収集部54が挿通される。異物収集部54は、外筒部52に挿通される内筒部56と、その内筒部56の下端から円錐状に拡径する円錐部58とを有しており、水面に浮かび上がった非沈殿異物を収集する。異物収集部54の外側面には、係止部60が形成され、この係止部60と天板50とを接合することにより、天板50に異物収集部54が固定的に取り付けられる。
【0053】
また、分水槽46内の上部には、誘導部材62が設けられる。誘導部材62は、分水槽46の内壁面から斜め上方向すなわち異物収集部54の円錐部58に向かう方向に突出する板状体であり、分水槽46の内壁面に沿った略C字状に形成され、第1処理水に混入している非沈殿異物を異物収集部54に誘導する。
【0054】
さらに、分水槽46内の下部には、外縁部から中央部に向かう下り傾斜を有する傾斜仕切板64が設けられる。傾斜仕切板64は、その中央部に形成される開口66と、開口66の周囲に形成される複数の小孔68とを有しており、分水槽46の底部に沈殿した沈殿異物が上方に流動しないようにとどめる。
【0055】
また、分水槽46の底部には、バルブ48が設けられ、このバルブ48を介して分水槽46と排出管26とが接続される。バルブ48は、図5に示すように、バルブ本体70と当該バルブ本体70に挿し込む栓部材72とを備えており、塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。バルブ本体70は、有底円筒状に形成され、その上端開口は地表に臨ませられる。バルブ本体70の上端開口は、通常時は蓋(図示せず)によって閉じられているが、蓋を外すことによって、後述する栓部材72の着脱が可能になり、地表からのバルブ本体70内の点検が可能になる。バルブ本体70の内径は、分水槽46の大きさに応じて適宜設定され、たとえば210mmである。
【0056】
バルブ本体70の底部には、排出管26と接続される管接続部74が形成され、それより少し上方に分水槽46と接続される槽接続部76が形成される。また、バルブ本体70の内部には、漏斗形状を有する栓受部78が形成される。栓部材72は、バルブ本体70内で水の流れを堰き止める際に使用される部材であり、バルブ本体70に対して着脱可能に取り付けられる。栓部材72は、円筒状に形成され、バルブ本体70の栓受部78から地表面近くまで延びる長さを有している。
【0057】
このような雨水貯留システム10では、以下のようにして、雨水から混入している異物が分離されて、異物を除いた処理水が雨水貯留槽14に供給される。
【0058】
先ず、道路脇の側溝や雨水桝などから取水装置12の流入管24へと流れ込んだ雨水が、この流入管24から槽本体18へ接線方向に流入する。すると、図6に示すように、槽本体18へ流入した雨水は、槽本体18内を流下してそのまま排出口32へ流れ込み、排出管26から雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0059】
そして、流入管24から槽本体18への雨水の流入量が排出管26の流下能力を超えると、槽本体18内の水位が徐々に上昇する。すると、図7に示すように、槽本体18へ流入した雨水は、渦流を形成しながら槽本体18の内部を螺旋状に流動し、この結果、渦流によって雨水に混入している異物が分離され、異物が除去された第1処理水が取水管28から取り出される。具体的には、砂礫などの水よりも比重の大きい沈殿異物は、槽本体18の中心付近に集められて槽本体18の底部に沈殿し、そのまま排出管26から常時排出される。また、落ち葉などの水よりも比重の小さい非沈殿異物は、渦流の遠心力によって槽本体18の側面側に飛散し、水面に浮かび上がって槽本体18の上部に滞留する。
【0060】
流入管24から槽本体18への雨水の流入が終了すると、図8に示すように、槽本体18内に残った水(残留水)が沈殿異物や非沈殿異物とともに排出口32へ徐々に流れ込み、排出管26から雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0061】
取水管28から取り出された第1処理水は、分水装置16の分水槽46へ接線方向に流入する。図9に示すように、分水槽46へ流入した第1処理水は、渦流を形成しながら分水槽46の内部を螺旋状に流下し、この結果、渦流によって第1処理水に混入している異物が分離され、異物が除去された第2処理水が外筒部52と内筒部56との隙間から分水槽46の外部に溢れ出す。具体的には、第1処理水に混入している沈殿異物が傾斜仕切板64の開口66を通って分水槽46の底部に沈殿するとともに、当該第1処理水に混入している非沈殿異物が浮かび上がって異物収集部54の内部ないし天板50の下方かつ外筒部52の外側で滞留する。そして、分水槽46の外部に溢れ出した第2処理水が、外槽20に受水されて、当該外槽20から接続管44に流れ込み、雨水貯留槽14に供給される。
【0062】
取水管28から分水槽46への第1処理水の流入が終了すると、当該分水槽46の内部には、分離された異物と分水槽46の外部に溢れ出さなかった水(残留水)とが残る。その後、栓部材72をバルブ本体70から取り外してバルブ48を開くと、分水槽46内の残留水とともに、異物が一気に排出管26に排出されて、雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0063】
このように、この実施例によれば、取水装置12によって異物が除去された処理水のみを取り出して、その処理水を雨水貯留槽16に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽14内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽14の維持管理の負担を軽減することができる。
【0064】
また、この実施例によれば、槽本体18内の処理水を取り出す取水管28の取水口36が、流入口30よりも低位であって、かつ排出口32よりも高位の高さ位置に配置される。ここで、特許文献2の渦流式固液分離装置のように、供給路(流入口)と排出路(取水口)とがほぼ同じ高さに設けられていると、水面に浮かび上がった非沈降性の物質(非沈殿異物)が処理水とともに排出路に流出してしまう。しかしながら、この実施例では、取水口36が流入口30よりも低位であって、かつ排出口32よりも高位の高さ位置に配置されているため、流入管24から槽本体18内に流入した沈殿異物が槽本体18の底部に沈殿して排出口32に流れ込むとともに、非沈殿異物が水面に浮かび上がっても、取水口36に流れ込むことがない。
【0065】
さらに、降雨初期に流入管24へと流れ込む雨水には、砂礫、ゴミ、落ち葉等の異物が多く含まれているが、この取水装置12によれば、それら初期流入異物を含む雨水をそのまま排出口32に流し込み、排出管26から排出することができる。このため、槽本体18内に生じる渦流によって雨水から異物を分離する前段で、大半の異物を除去することができる。
【0066】
さらにまた、この実施例によれば、流入管24が槽本体18に対して接線方向に接続され、取水口36が槽本体18の中央部に配置される。このため、槽本体18へ流入した雨水は、取水口36(取水管28)を支障とせずに、適切な渦流を形成しながら槽本体18の内部を螺旋状に流動し、その渦流によって雨水に混入している異物を分離することができる。ここで、特許文献2の渦流式固液分離装置のように、排出路(取水口)が円筒型水槽の側部に設けられていると、たとえば渦流による遠心力が非沈降性の物質(非沈殿異物)にかかると、その非沈殿異物が円筒型水槽内の側部側に飛散してしまい、そのまま水とともに排出路から流出してしまう。しかしながら、この実施例によれば、取水口36が槽本体18の中央部に配置されているため、たとえ渦流による遠心力が非沈殿異物にかかっても、その非沈殿異物が取水口36に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0067】
さらに、この実施例では、取水管28が槽本体18内に延設されて、その下端部が取水口36として下方向に向けて開口する。このため、水面に浮かび上がった非沈殿異物を、取水口36から取水管28に流れ込ませずに、槽本体18の上部に滞留させることができる。さらに、取水口28が下方向に向けて開口しているので、流入管24から槽本体18への雨水の流入が終了して槽本体18内の水位が下がっても、非沈殿異物が残留水とともに取水口36に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物をより適切に分離することができる。
【0068】
さらに、この実施例では、槽本体18がその中心部に向かって下方に傾斜する傾斜底面22を有しており、この傾斜底面22の下端部に排出口32が配置される。このため、槽本体18の底部に沈殿した沈殿異物が排出口32へスムーズに案内され、その沈殿異物が排出管26から適切に排出される。
【0069】
さらにまた、この実施例では、取水装置12と雨水貯留槽14とが分水装置16を介して接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)が分水装置16に導流され、分水装置16によってさらに異物が除去された処理水(第2処理水)が雨水貯留槽14に供給される。このため、たとえ取水装置12で除去することができなかった異物があっても、その異物を分水装置16で分離して除去することができる。したがって、雨水貯留システム10全体の維持管理性を向上させることができる。
【0070】
図10に示すこの発明の他の一実施例である雨水貯留システム10は、取水装置12と雨水貯留槽14とが分水装置16を介さずに接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)がそのまま雨水貯留槽14に供給される。以下、図1の実施例における雨水貯留システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0071】
図10に示すように、取水装置12は、雨水から異物を分離する槽本体18と、この槽本体18を収容する外槽20とを備えており、雨水貯留槽14の近傍の地中に埋設される。取水管28は、略逆U字状に形成され、その一方側端が槽本体18の内部で取水口36として開口し、その他方側端が槽本体18の外部で開口する。このような雨水貯留システム10では、取水口36から取水管28に取り出された処理水が、外槽20に受水され、当該外槽20から接続管44に流れ込み、雨水貯留槽14に供給される。
【0072】
この実施例によれば、取水装置12を収容する外槽20を小型化することができる。このため、地面を掘削しなければならない範囲が狭まり、たとえ限られたスペースであっても雨水貯留システム10を施工することができる。
【0073】
なお、上述の各実施例ではいずれも、傾斜底面22が槽本体18の中心部に向かって下方に傾斜したが、これに限定される必要はなく、傾斜底面22は、少なくとも排出口32に向かって下方に傾斜していれば、槽本体18の底部に沈殿した沈殿異物を排出口32へ案内することができる。また、図11に示すように、必ずしも槽本体18の底面を傾斜させる必要はなく、槽本体18の底面を平面状に形成してもよい。この場合には、残留水とともに排出口32へ流れ込むことができなかった異物は、次の降雨時に槽本体18に流入した雨水によって排出口32に掃流される。
【0074】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、流入管24が槽本体18に対して接線方向に接続されたが、これに限定される必要はなく、少なくとも流入管24の中心軸線を槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心した状態で接続すれば、雨水は槽本体18に偏心流入し、槽本体18内に渦流が生じる。
【0075】
また、図示は省略するが、必ずしも槽本体18の側面上に流入口30を設ける必要はなく、流入管24を槽本体18内に延設して、その端部を流入口30として槽本体18内で当該槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心させた状態で開口させてもよい。
【0076】
さらに、図12に示すように、必ずしも流入管24の中心軸線を槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心した状態で接続する必要はなく、槽本体18に対して径方向に流入管24を接続してもよい。
【0077】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、取水管28を天板34の中央部に挿通することによって、当該取水管28を槽本体18内に延設し、取水口36を下方向に向けて開口させたが、これに限定される必要はない。図13に示すように、取水管28を槽本体18の側面に挿通することによって、当該取水管28を槽本体18内に延設し、取水口36を下方向に向けて開口させることもできる。
【0078】
また、上述の各実施例ではいずれも、槽本体18は、合成樹脂によって形成されたが、これに限定される必要はなく、レジンコンクリートやプレキャストコンクリートなどによって槽本体18を形成してもよい。また、たとえば、ステンレスなどの金属によって槽本体18を形成してもよい。
【0079】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の一実施例の雨水貯留システムを示す図解図である。
【図2】図1の雨水貯留システムを示す上面図である。
【図3】図1の取水装置を示す図解図である。
【図4】図1の分水装置の分水槽を示す図解図である。
【図5】図1の分水装置のバルブを示す図解図である。
【図6】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図7】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図8】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図9】図1の分水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図10】この発明の別の実施例の雨水貯留システムを示す図解図である。
【図11】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【図12】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【図13】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【符号の説明】
【0081】
10 …雨水貯留システム
12 …取水装置
14 …雨水貯留槽
16 …分水装置
18 …槽本体
20 …傾斜底面
24 …流入管
26 …排出管
28 …取水管
30 …流入口
32 …排出口
36 …取水口
【技術分野】
【0001】
この発明は、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムに関し、特にたとえば、流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた処理水を取り出して雨水貯留槽に供給する、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化が進んだこと等による環境の変化に伴い、局地的な大雨や台風時の大雨による浸水被害が増加している。この被害を防止するための対策として、雨水貯留槽を地下に埋設し、雨水を一時的に貯留した後、雨水管や河川に放流する、或いはそのまま地中に緩やかに浸透させる対策が実施されている。しかし、雨水貯留槽内に集められる雨水には、落ち葉や土砂などの異物が含まれるので、雨水貯留槽内には、異物が溜まり易い。雨水貯留槽内に異物が溜まると、その機能を適切に維持できない恐れがあるので、定期的な点検および清掃を実施して、雨水貯留槽内に堆積した異物を適宜除去する必要がある。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示される雨水の地下貯留浸透タンク(雨水貯留槽)では、貯留タンクの下に汚泥ピットを設けている。そして、貯留タンク内に流入した夾雑物(異物)を、汚泥ピット内に沈殿させ、吸引ホースを用いて、堆積した沈殿物を吸い取って除去している。しかし、吸引ホースを用いて沈殿物を除去するという作業は、手間がかかる上、吸引ホース等の特別な機器を別途用意しなければならない。さらに、貯留タンクの内部構造は複雑であり、流入する異物も、雨水中を浮遊する密度(比重)の小さい非沈殿異物から、貯留タンク内に留まって移動しない密度の大きい沈殿異物まであるので、貯留タンク内に流入した全ての異物を汚泥ピットに集めることは難しい。このため、特許文献1の技術では、汚泥ピット内の沈殿物の除去とは別に、何らかの手段を用いて貯留タンク内を清掃する必要が生じると思われる。
【0004】
雨水貯留槽内に異物を溜めないための対策として、雨水貯留槽の上流側で雨水を事前に処理し、雨水貯留槽内には、異物を除去した雨水(処理水)を流入させることが考えられる。たとえば、雨水貯留槽内に雨水を流入させる雨水流入管に、沈砂槽を設けることが一般的に行われている。この場合、密度の大きい沈殿異物は、沈砂槽に沈殿させることにより除去し、密度の小さい非沈殿異物は、網状のフィルタを利用して除去する。しかし、この場合でも、沈砂槽に堆積した異物を、吸引ホース等によって定期的に除去しなければならない。また、フィルタは、目詰まりを起こし易いので、定期的な清掃が必要となる。
【0005】
また、雨水貯留槽の上流側に、雨水に混入している異物を分離して、異物を除いた処理水を取り出す分水装置を設け、この分水した処理水を雨水貯留槽に供給することも考えられる。たとえば、特許文献2に開示される渦流式固液分離装置(分水装置)では、雨水などの非処理液が供給路から円筒型水槽(分水槽)に流入し、砂等の沈降性物質(沈殿異物)が沈降分離されるとともに、非沈降性の物質(非沈殿異物)も渦流によって中心に引き寄せられることにより捕捉されて分離される。そして、分離された固形物が水槽下部の引き抜き部から引き抜かれ、当該固形物が除去された処理水が排出路を介して揚水される。
【特許文献1】特開2002−294665号[E02B 5/02]
【特許文献2】特開2006−97378号[E03F 5/22]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1の技術や、雨水貯留槽の上流に沈砂槽を設ける技術では、吸引ホース等を用いて異物を除去する作業などが必要となり、維持管理に手間がかかる。
【0007】
また、特許文献2の渦流式固液分離装置を雨水貯留槽の上流側に設けたとしても、非処理液を供給するための供給路と排出路とがほぼ同じ高さに設けられているため、円筒型水槽内の水位が排出路に至るまで上昇すると、供給路から流入した非処理液に混入している非沈降性の物質(非沈殿異物)が水面に浮かび上がって、処理水とともに排出路から流出してしまう。また、排出路が円筒型水槽の側部に設けられているため、たとえば円筒型水槽内に生じた渦流の遠心力が非沈降性の物質にかかると、その非沈降性の物質が円筒型水槽内の側部側に飛散してしまい、そのまま処理水とともに排出路から流出してしまう。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減できる、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【0010】
この発明のさらに他の目的は、非沈殿異物を適切に除去することができる、取水装置およびそれを用いた雨水貯留システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
第1の発明は、流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽に供給する取水装置であって、有底筒状に形成される槽本体、槽本体に設けられる流入口を通して当該槽本体内に雨水を流入させる流入管、流入口よりも低位に設けられる排出口を通して当該槽本体内の異物を排出する排出管、および流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位に設けられる取水口を通して水を取り出す取水管を備える、取水装置である。
【0013】
第1の発明では、取水装置(12)は、たとえば有底円筒状に形成される槽本体(18)を備えており、雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽(14)に供給する。槽本体には、流入口(30)が形成され、この流入口を通して流入管(24)から槽本体内に雨水が流入する。また、槽本体における流入口よりも低位の高さ位置には、排出口(32)が形成され、この排出口(32)から排出管(26)を通して雨水から分離した異物が水と共に排出される。さらに、槽本体には、取水管(28)が設けられる。取水管は、たとえば流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位の高さ位置で開口しており、その開口が取水口(36)として機能する。そして、この取水口を通して、異物を除去した水が取水管から取り出され、雨水貯留槽に供給される。
【0014】
第1の発明によれば、取水装置によって異物が除去された水を取り出し、その水を雨水貯留槽に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【0015】
さらに、取水口が流入口よりも低位であって、かつ排出口よりも高位の高さ位置に配置されているため、流入管から槽本体内に流入した雨水に混入している沈殿異物が槽本体の底部に沈殿して排出口に流れ込むとともに、非沈殿異物が水面に浮かび上がっても、取水口に流れ込まない。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に従属し、流入口は、槽本体の側面に設けられ、排出口は、槽本体の底面に設けられ、取水口は、槽本体の内部における流入管の管底よりも低位に設けられる。
【0017】
第2の発明では、槽本体(18)の側面には、流入口(30)が設けられ、この流入口に流入管(24)が取り付けられる。また、槽本体の底面には、排出口(32)が設けられ、この排出口に排出管(26)が取り付けられる。さらに、取水管(28)は、槽本体の内部における流入管の管底よりも低位の高さ位置に取水口(36)をなしている。
【0018】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、流入口の中心軸線を槽本体の径方向に対して所定角度で偏心させ、取水口を槽本体の中心部に配置する。
【0019】
第3の発明では、槽本体(18)は、有底円筒状に形成され、その中心部には、取水管(28)における取水口(36)が配置される。また、流入管(24)は、その流入口(30)の中心軸線が槽本体(18)の径方向に対して所定角度で偏心した状態で槽本体に取り付けられ、実施例では、槽本体に対して接線方向に接続される。
【0020】
第3の発明によれば、槽本体へ偏心流入した雨水が、渦流を形成しながら槽本体の内部を螺旋状に流動し、その渦流によって雨水に混入している異物を分離することができる。さらに、たとえ渦流による遠心力が非沈殿異物にかかっても、その非沈殿異物が取水口に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0021】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に従属し、取水管を槽本体内に延設して、取水口を下方に向けて開口させる。
【0022】
第4の発明では、槽本体(18)の上端が、たとえば天板(34)によって密閉されており、この天板の中央部に取水管(28)が挿通される。取水管は、槽本体の内部まで延設されており、その下端部が取水口(36)として下方向に向けて開口する。
【0023】
第4の発明によれば、水面に浮かび上がった非沈殿異物を、取水口に流れ込ませずに、取水管の周囲で滞留させることができる。したがって、雨水に混入している非沈殿異物をより適切に分離することができる。
【0024】
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明に従属し、槽本体は、排出口に向かって下方に傾斜する傾斜底面を有し、排出口は、傾斜底面の下端部に配置される。
【0025】
第5の発明では、槽本体(18)の底面は、たとえば中心部に向かって下方に傾斜しており、この傾斜底面(22)の下端部に排出口(32)が配置される。このため、槽本体の底部に沈殿した沈殿異物が排出口へスムーズに案内され、その沈殿異物が排出管(26)から適切に排出される。
【0026】
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明の取水装置と取水管から取り出した水を貯留する雨水貯留槽とを備える、雨水貯留システムである。
【0027】
第5の発明では、雨水貯留システム(10)は、取水装置(12)と雨水貯留槽(14)とを含み、取水装置(12)によって雨水に混入している異物が分離され、異物を除いた水が取り出されて雨水貯留槽(14)に供給される。実施例では、取水装置から取り出された水が外槽(20)に受水され、当該外槽から接続管(44)を介して雨水貯留槽に供給されて、雨水貯留槽に貯留される。
【0028】
第6の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果が期待できる。
【0029】
第7の発明は、第6の発明に従属し、流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する渦流式分水装置をさらに備え、この渦流式分水装置を介して取水装置と雨水貯留槽とを接続した。
【0030】
第7の発明では、雨水貯留システム(10)は、取水装置(12)と渦流式分水装置(16)と雨水貯留槽(14)とを備えており、取水装置と雨水貯留槽とが渦流式分水装置を介して接続される。このような雨水貯留システムでは、先ず、取水装置によって雨水に混入している異物が分離され、当該取水装置が取り出した水が分水装置に導流される。次に、分水装置が、流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する。そして、分水装置によってさらに異物が除去された水が雨水貯留槽に供給される。
【0031】
第7の発明によれば、たとえ取水装置で除去することができなかった異物があっても、その異物を分水装置で分離して除去することができる。したがって、雨水貯留システム全体の維持管理性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、異物を除去された水のみが雨水貯留槽に供給されるため、雨水貯留槽の維持管理の負担を軽減することができる。
【0033】
さらに、この発明によれば、水面に浮かび上がった非沈殿異物が取水口に流れ込まないため、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0034】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1を参照して、この発明の一実施例である雨水貯留システム10は、取水装置12と雨水貯留槽14とを含み、取水装置12によって雨水に混入している異物を分離し、異物を除いた水(処理水)を取り出して雨水貯留槽14に供給するものである。
【0036】
ただし、この実施例では、取水装置12と雨水貯留槽14とが渦流式分水装置(以下、単に「分水装置」という。)16を介して接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)が分水装置16に導流され、分水装置16によってさらに異物が除去された処理水(第2処理水)が雨水貯留槽14に供給される。
【0037】
先ず、雨水貯留槽14について簡単に説明する。雨水貯留槽14は、浸水被害の発生の防止を主たる目的として地下に埋設されるものであり、たとえば、プラスチック製の要素部材を組み立て、その周囲を遮水シート或いは透水シートで覆うことにより形成される。このような雨水貯留槽14は、側溝や雨水桝などから雨水を集め、その雨水を一時的に貯留した後、雨水本管などに放流したり、そのまま地中に緩やかに浸透させたりする。これにより、集中豪雨の際などに、河川や雨水本管などに対して雨水の流入が集中することを抑制し、浸水被害の発生を防止する。なお、貯留した雨水は、植物への散水用水や災害時の非常用水などに有効利用することもできる。
【0038】
具体的には、雨水貯留槽14としては、たとえば、本願出願人等によって製造販売されている各種の雨水貯留槽(参照;http://www.kuHotH-ci.co.jp/rHin/ind_H.html <http://www.kubota-ci.co.jp/rain/ind_b.html>)を採用できる。また、先に挙げた特許文献1に開示される雨水貯留槽など、材質(合成樹脂製やコンクリート製など)や形状を問わず、従来公知の様々な雨水貯留槽に取水装置12を接続するようにもできる。
【0039】
なお、雨水貯留槽14は、機能の面から分類して、一時貯留の機能を主として有する「貯留型」と、浸透の機能を主として有する「浸透型」と、一時貯留および浸透の双方の機能を有する「貯留浸透型」との3つのタイプに分類することができるが、この発明でいう雨水貯留槽14とは、これら3つのタイプの全てを含む概念である。
【0040】
図1および図2に示すように、取水装置12は、雨水から異物を分離する槽本体18と、この槽本体18を収容する外槽20とを備えており、雨水貯留槽14の近傍の地中に埋設される。
【0041】
図3に示すように、槽本体18は、塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、中央に向かって下方に傾斜する傾斜底面22を有する円筒状に形成され、その大きさは、雨水貯留槽14の大きさなどによって適宜設定されるが、この実施例では、たとえば、槽本体18の外径は630mmであり、その長さは1000mmである。
【0042】
槽本体18には、雨水を流入する流入管24と、その雨水から分離した異物を水と共に排出する排出管26と、その異物を除去した第1処理水を取り出す取水管28とが取り付けられる。
【0043】
具体的には、槽本体18の側面には、流入口30が形成され、この流入口30を通して、流入管24から道路脇の側溝や雨水桝等から集めた雨水が槽本体18内に流入する。流入管24は、外槽20を貫通して槽本体18まで延び、この槽本体18に対して接線方向に接続される。流入管24の内径は、雨水の想定流入量に応じて適宜設定され、たとえば350mmである。
【0044】
また、傾斜底面22の下端部には、排出口32が形成され、この排出口32から排出管26を通して雨水から分離した異物が水と共に雨水本管や合流式下水道管などに放流される。詳細は後述するが、排出管26は、分水装置16のバルブ48と合流し、外槽20を貫通して雨水本管や合流式下水道管などに接続される。排出管26は、流量制限オリフィスを有しており、その流量は所定の許容放流量に応じて適宜設定される。ここで、「許容放流量」とは、降雨時に流出施設から下流に放流を許容される流量であり、たとえば下流河川や下水道管渠の流下能力により決定される。また、排出管26は、その流量が取水管28から取り出される処理水の量よりも少なくなるようにも調整されており、その内径は、たとえば100mmである。
【0045】
また、槽本体18の上端は、天板34によって密閉されており、この天板34の中央部に取水管28が挿通される。取水管28は、槽本体18の内部まで延設されており、下端部が流入管24の管底よりも低位の高さ位置で下方向に向けて開口し、その開口が取水口36として機能する。そして、取水口36を通して、取水管28から槽本体18内の第1処理水が取り出され、この第1処理水が後述する分水装置16の分水槽46に導流される。取水管28は、外槽20内において、分水槽46に向けて延び、当該分水槽46の側面に接続される。取水管28の内径は、流入管24の内径と排出管26の内径に応じて適宜設定され、たとえば250mmである。取水管28には、槽本体18内において、管壁に複数の通水孔38が形成されており、これによって槽本体18の中心付近に集められた沈殿異物が取水口36に吸い込まれるのが防止される。
【0046】
外槽20は、合成樹脂、コンクリート或いは金属などによって直方体状や円筒状などに形成され、上述したように、槽本体18を収容する。詳細は後述するが、外槽20は、処理水を受水するための部位であり、この実施例では、分水装置16の分水槽46から溢れ出した第2処理水を受水する。外槽20の上部には、点検孔40が形成され、点検孔40は地表に臨ませられる。点検孔40は、通常時は蓋(図示せず)によって閉じられているが、蓋を外すことによって、地表からの外槽20内の点検が可能となり、場合によっては外槽20内への人の出入りを可能にする。
【0047】
また、外槽20の側面上部には、オーバーフロー管42が取り付けられる。オーバーフロー管42は、外槽20の外部で排出管26と合流しており、雨水貯留槽14内の水位が上限水位を越えたときに、外槽20内の処理水をオーバーフローして排出管26に導流する。
【0048】
さらに、外槽20の側面下部には、外槽20と雨水貯留槽14とを接続する接続管44が取り付けられており、この接続管44を介して外槽20内の処理水が雨水貯留槽14に供給される。
【0049】
また、分水装置16としては、本願出願人が先に出願した特願2008−148550号において提案したものを使用することができる。
【0050】
具体的には、分水装置16は、雨水から異物を分離する分水槽46と、分水槽46に設けられるバルブ48とを備えており、外槽20内に収容される(図1および図2参照)。
【0051】
図4に示すように、分水槽46は、塩化ビニルなどの合成樹脂によって有底円筒状に形成され、その大きさは、分水槽46に流入する第1処理水の想定流入量などによって適宜設定される。上述したように、分水槽46の側面には、取水装置12の槽本体18から延びる取水管28が接続される。取水管28は、雨水が流入しない、または雨水の流速が低下するのを防ぐために、取水装置12の天板34の高さ位置から後述する誘導部材62と傾斜仕切板64との間の高さ位置まで立ち下げられて、分水槽46に対して接線方向に接続される。
【0052】
分水槽46は、垂直上方向に向けて開口しており、その上方開口には、天板50が設けられる。天板50は、その中央部に開口を有するドーナツ板状に形成され、その開口縁から下方に延びる円筒状の外筒部52を有する。外筒部52には、ラッパ状に形成される異物収集部54が挿通される。異物収集部54は、外筒部52に挿通される内筒部56と、その内筒部56の下端から円錐状に拡径する円錐部58とを有しており、水面に浮かび上がった非沈殿異物を収集する。異物収集部54の外側面には、係止部60が形成され、この係止部60と天板50とを接合することにより、天板50に異物収集部54が固定的に取り付けられる。
【0053】
また、分水槽46内の上部には、誘導部材62が設けられる。誘導部材62は、分水槽46の内壁面から斜め上方向すなわち異物収集部54の円錐部58に向かう方向に突出する板状体であり、分水槽46の内壁面に沿った略C字状に形成され、第1処理水に混入している非沈殿異物を異物収集部54に誘導する。
【0054】
さらに、分水槽46内の下部には、外縁部から中央部に向かう下り傾斜を有する傾斜仕切板64が設けられる。傾斜仕切板64は、その中央部に形成される開口66と、開口66の周囲に形成される複数の小孔68とを有しており、分水槽46の底部に沈殿した沈殿異物が上方に流動しないようにとどめる。
【0055】
また、分水槽46の底部には、バルブ48が設けられ、このバルブ48を介して分水槽46と排出管26とが接続される。バルブ48は、図5に示すように、バルブ本体70と当該バルブ本体70に挿し込む栓部材72とを備えており、塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。バルブ本体70は、有底円筒状に形成され、その上端開口は地表に臨ませられる。バルブ本体70の上端開口は、通常時は蓋(図示せず)によって閉じられているが、蓋を外すことによって、後述する栓部材72の着脱が可能になり、地表からのバルブ本体70内の点検が可能になる。バルブ本体70の内径は、分水槽46の大きさに応じて適宜設定され、たとえば210mmである。
【0056】
バルブ本体70の底部には、排出管26と接続される管接続部74が形成され、それより少し上方に分水槽46と接続される槽接続部76が形成される。また、バルブ本体70の内部には、漏斗形状を有する栓受部78が形成される。栓部材72は、バルブ本体70内で水の流れを堰き止める際に使用される部材であり、バルブ本体70に対して着脱可能に取り付けられる。栓部材72は、円筒状に形成され、バルブ本体70の栓受部78から地表面近くまで延びる長さを有している。
【0057】
このような雨水貯留システム10では、以下のようにして、雨水から混入している異物が分離されて、異物を除いた処理水が雨水貯留槽14に供給される。
【0058】
先ず、道路脇の側溝や雨水桝などから取水装置12の流入管24へと流れ込んだ雨水が、この流入管24から槽本体18へ接線方向に流入する。すると、図6に示すように、槽本体18へ流入した雨水は、槽本体18内を流下してそのまま排出口32へ流れ込み、排出管26から雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0059】
そして、流入管24から槽本体18への雨水の流入量が排出管26の流下能力を超えると、槽本体18内の水位が徐々に上昇する。すると、図7に示すように、槽本体18へ流入した雨水は、渦流を形成しながら槽本体18の内部を螺旋状に流動し、この結果、渦流によって雨水に混入している異物が分離され、異物が除去された第1処理水が取水管28から取り出される。具体的には、砂礫などの水よりも比重の大きい沈殿異物は、槽本体18の中心付近に集められて槽本体18の底部に沈殿し、そのまま排出管26から常時排出される。また、落ち葉などの水よりも比重の小さい非沈殿異物は、渦流の遠心力によって槽本体18の側面側に飛散し、水面に浮かび上がって槽本体18の上部に滞留する。
【0060】
流入管24から槽本体18への雨水の流入が終了すると、図8に示すように、槽本体18内に残った水(残留水)が沈殿異物や非沈殿異物とともに排出口32へ徐々に流れ込み、排出管26から雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0061】
取水管28から取り出された第1処理水は、分水装置16の分水槽46へ接線方向に流入する。図9に示すように、分水槽46へ流入した第1処理水は、渦流を形成しながら分水槽46の内部を螺旋状に流下し、この結果、渦流によって第1処理水に混入している異物が分離され、異物が除去された第2処理水が外筒部52と内筒部56との隙間から分水槽46の外部に溢れ出す。具体的には、第1処理水に混入している沈殿異物が傾斜仕切板64の開口66を通って分水槽46の底部に沈殿するとともに、当該第1処理水に混入している非沈殿異物が浮かび上がって異物収集部54の内部ないし天板50の下方かつ外筒部52の外側で滞留する。そして、分水槽46の外部に溢れ出した第2処理水が、外槽20に受水されて、当該外槽20から接続管44に流れ込み、雨水貯留槽14に供給される。
【0062】
取水管28から分水槽46への第1処理水の流入が終了すると、当該分水槽46の内部には、分離された異物と分水槽46の外部に溢れ出さなかった水(残留水)とが残る。その後、栓部材72をバルブ本体70から取り外してバルブ48を開くと、分水槽46内の残留水とともに、異物が一気に排出管26に排出されて、雨水本管や合流式下水道管などに放流される。
【0063】
このように、この実施例によれば、取水装置12によって異物が除去された処理水のみを取り出して、その処理水を雨水貯留槽16に供給することができる。このため、吸引ホース等を用いて雨水貯留槽14内の異物を除去する作業が不要である。したがって、雨水貯留槽14の維持管理の負担を軽減することができる。
【0064】
また、この実施例によれば、槽本体18内の処理水を取り出す取水管28の取水口36が、流入口30よりも低位であって、かつ排出口32よりも高位の高さ位置に配置される。ここで、特許文献2の渦流式固液分離装置のように、供給路(流入口)と排出路(取水口)とがほぼ同じ高さに設けられていると、水面に浮かび上がった非沈降性の物質(非沈殿異物)が処理水とともに排出路に流出してしまう。しかしながら、この実施例では、取水口36が流入口30よりも低位であって、かつ排出口32よりも高位の高さ位置に配置されているため、流入管24から槽本体18内に流入した沈殿異物が槽本体18の底部に沈殿して排出口32に流れ込むとともに、非沈殿異物が水面に浮かび上がっても、取水口36に流れ込むことがない。
【0065】
さらに、降雨初期に流入管24へと流れ込む雨水には、砂礫、ゴミ、落ち葉等の異物が多く含まれているが、この取水装置12によれば、それら初期流入異物を含む雨水をそのまま排出口32に流し込み、排出管26から排出することができる。このため、槽本体18内に生じる渦流によって雨水から異物を分離する前段で、大半の異物を除去することができる。
【0066】
さらにまた、この実施例によれば、流入管24が槽本体18に対して接線方向に接続され、取水口36が槽本体18の中央部に配置される。このため、槽本体18へ流入した雨水は、取水口36(取水管28)を支障とせずに、適切な渦流を形成しながら槽本体18の内部を螺旋状に流動し、その渦流によって雨水に混入している異物を分離することができる。ここで、特許文献2の渦流式固液分離装置のように、排出路(取水口)が円筒型水槽の側部に設けられていると、たとえば渦流による遠心力が非沈降性の物質(非沈殿異物)にかかると、その非沈殿異物が円筒型水槽内の側部側に飛散してしまい、そのまま水とともに排出路から流出してしまう。しかしながら、この実施例によれば、取水口36が槽本体18の中央部に配置されているため、たとえ渦流による遠心力が非沈殿異物にかかっても、その非沈殿異物が取水口36に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物を適切に分離することができる。
【0067】
さらに、この実施例では、取水管28が槽本体18内に延設されて、その下端部が取水口36として下方向に向けて開口する。このため、水面に浮かび上がった非沈殿異物を、取水口36から取水管28に流れ込ませずに、槽本体18の上部に滞留させることができる。さらに、取水口28が下方向に向けて開口しているので、流入管24から槽本体18への雨水の流入が終了して槽本体18内の水位が下がっても、非沈殿異物が残留水とともに取水口36に流れ込むことがない。したがって、雨水に混入している非沈殿異物をより適切に分離することができる。
【0068】
さらに、この実施例では、槽本体18がその中心部に向かって下方に傾斜する傾斜底面22を有しており、この傾斜底面22の下端部に排出口32が配置される。このため、槽本体18の底部に沈殿した沈殿異物が排出口32へスムーズに案内され、その沈殿異物が排出管26から適切に排出される。
【0069】
さらにまた、この実施例では、取水装置12と雨水貯留槽14とが分水装置16を介して接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)が分水装置16に導流され、分水装置16によってさらに異物が除去された処理水(第2処理水)が雨水貯留槽14に供給される。このため、たとえ取水装置12で除去することができなかった異物があっても、その異物を分水装置16で分離して除去することができる。したがって、雨水貯留システム10全体の維持管理性を向上させることができる。
【0070】
図10に示すこの発明の他の一実施例である雨水貯留システム10は、取水装置12と雨水貯留槽14とが分水装置16を介さずに接続されており、取水装置12が取り出した処理水(第1処理水)がそのまま雨水貯留槽14に供給される。以下、図1の実施例における雨水貯留システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0071】
図10に示すように、取水装置12は、雨水から異物を分離する槽本体18と、この槽本体18を収容する外槽20とを備えており、雨水貯留槽14の近傍の地中に埋設される。取水管28は、略逆U字状に形成され、その一方側端が槽本体18の内部で取水口36として開口し、その他方側端が槽本体18の外部で開口する。このような雨水貯留システム10では、取水口36から取水管28に取り出された処理水が、外槽20に受水され、当該外槽20から接続管44に流れ込み、雨水貯留槽14に供給される。
【0072】
この実施例によれば、取水装置12を収容する外槽20を小型化することができる。このため、地面を掘削しなければならない範囲が狭まり、たとえ限られたスペースであっても雨水貯留システム10を施工することができる。
【0073】
なお、上述の各実施例ではいずれも、傾斜底面22が槽本体18の中心部に向かって下方に傾斜したが、これに限定される必要はなく、傾斜底面22は、少なくとも排出口32に向かって下方に傾斜していれば、槽本体18の底部に沈殿した沈殿異物を排出口32へ案内することができる。また、図11に示すように、必ずしも槽本体18の底面を傾斜させる必要はなく、槽本体18の底面を平面状に形成してもよい。この場合には、残留水とともに排出口32へ流れ込むことができなかった異物は、次の降雨時に槽本体18に流入した雨水によって排出口32に掃流される。
【0074】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、流入管24が槽本体18に対して接線方向に接続されたが、これに限定される必要はなく、少なくとも流入管24の中心軸線を槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心した状態で接続すれば、雨水は槽本体18に偏心流入し、槽本体18内に渦流が生じる。
【0075】
また、図示は省略するが、必ずしも槽本体18の側面上に流入口30を設ける必要はなく、流入管24を槽本体18内に延設して、その端部を流入口30として槽本体18内で当該槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心させた状態で開口させてもよい。
【0076】
さらに、図12に示すように、必ずしも流入管24の中心軸線を槽本体18の径方向に対して所定角度で偏心した状態で接続する必要はなく、槽本体18に対して径方向に流入管24を接続してもよい。
【0077】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、取水管28を天板34の中央部に挿通することによって、当該取水管28を槽本体18内に延設し、取水口36を下方向に向けて開口させたが、これに限定される必要はない。図13に示すように、取水管28を槽本体18の側面に挿通することによって、当該取水管28を槽本体18内に延設し、取水口36を下方向に向けて開口させることもできる。
【0078】
また、上述の各実施例ではいずれも、槽本体18は、合成樹脂によって形成されたが、これに限定される必要はなく、レジンコンクリートやプレキャストコンクリートなどによって槽本体18を形成してもよい。また、たとえば、ステンレスなどの金属によって槽本体18を形成してもよい。
【0079】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の一実施例の雨水貯留システムを示す図解図である。
【図2】図1の雨水貯留システムを示す上面図である。
【図3】図1の取水装置を示す図解図である。
【図4】図1の分水装置の分水槽を示す図解図である。
【図5】図1の分水装置のバルブを示す図解図である。
【図6】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図7】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図8】図1の取水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図9】図1の分水装置に雨水が流入した様子を示す図解図である。
【図10】この発明の別の実施例の雨水貯留システムを示す図解図である。
【図11】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【図12】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【図13】取水装置の変形実施例を示す図解図である。
【符号の説明】
【0081】
10 …雨水貯留システム
12 …取水装置
14 …雨水貯留槽
16 …分水装置
18 …槽本体
20 …傾斜底面
24 …流入管
26 …排出管
28 …取水管
30 …流入口
32 …排出口
36 …取水口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽に供給する取水装置であって、
有底筒状に形成される槽本体、
前記槽本体に設けられる流入口を通して当該槽本体内に雨水を流入させる流入管、
前記流入口よりも低位に設けられる排出口を通して当該槽本体内の異物を排出する排出管、および
前記流入口よりも低位であって、かつ前記排出口よりも高位に設けられる取水口を通して水を取り出す取水管を備える、取水装置。
【請求項2】
前記流入口は、前記槽本体の側面に設けられ、
前記排出口は、前記槽本体の底面に設けられ、
前記取水口は、前記槽本体の内部における前記流入管の管底よりも低位に設けられる、請求項1記載の取水装置。
【請求項3】
前記流入口の中心軸線を前記槽本体の径方向に対して所定角度で偏心させ、前記取水口を前記槽本体の中心部に配置した、請求項1または2記載の取水装置。
【請求項4】
前記取水管を前記槽本体内に延設して、前記取水口を下方に向けて開口させた、請求項1ないし3のいずれかに記載の取水装置。
【請求項5】
前記槽本体は、前記排出口に向かって下方に傾斜する傾斜底面を有し、
前記排出口は、前記傾斜底面の下端部に配置される、請求項1ないし4のいずれかに記載の取水装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の取水装置と前記取水管から取り出した水を貯留する雨水貯留槽とを備える、雨水貯留システム。
【請求項7】
流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する渦流式分水装置をさらに備え、この渦流式分水装置を介して前記取水装置と前記雨水貯留槽とを接続した、請求項6記載の雨水貯留システム。
【請求項1】
流入する雨水から混入している異物を分離し、異物を除いた水を取り出して雨水貯留槽に供給する取水装置であって、
有底筒状に形成される槽本体、
前記槽本体に設けられる流入口を通して当該槽本体内に雨水を流入させる流入管、
前記流入口よりも低位に設けられる排出口を通して当該槽本体内の異物を排出する排出管、および
前記流入口よりも低位であって、かつ前記排出口よりも高位に設けられる取水口を通して水を取り出す取水管を備える、取水装置。
【請求項2】
前記流入口は、前記槽本体の側面に設けられ、
前記排出口は、前記槽本体の底面に設けられ、
前記取水口は、前記槽本体の内部における前記流入管の管底よりも低位に設けられる、請求項1記載の取水装置。
【請求項3】
前記流入口の中心軸線を前記槽本体の径方向に対して所定角度で偏心させ、前記取水口を前記槽本体の中心部に配置した、請求項1または2記載の取水装置。
【請求項4】
前記取水管を前記槽本体内に延設して、前記取水口を下方に向けて開口させた、請求項1ないし3のいずれかに記載の取水装置。
【請求項5】
前記槽本体は、前記排出口に向かって下方に傾斜する傾斜底面を有し、
前記排出口は、前記傾斜底面の下端部に配置される、請求項1ないし4のいずれかに記載の取水装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の取水装置と前記取水管から取り出した水を貯留する雨水貯留槽とを備える、雨水貯留システム。
【請求項7】
流入する水に渦流を生じさせることによって異物を分離し、異物を除いた水を分水する渦流式分水装置をさらに備え、この渦流式分水装置を介して前記取水装置と前記雨水貯留槽とを接続した、請求項6記載の雨水貯留システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−43420(P2010−43420A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206553(P2008−206553)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】
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