説明

受動素子の消費仕事量を安定化させる方法

【課題】 受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させる方法を開示する。
【解決手段】 受動素子を含む電子製品がAC入力電圧源に接続されている間に、一定の入力/出力仕事量と前記入力電圧源の電圧曲線に応じて対応減少電流が計算される。従って、前記電子製品が、異なる等級を有したり不安定である電圧源の下で駆動されていても、計算減少電流は前記入力仕事量又は前記出力仕事量を安定化させるように供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させるために、時変電圧レベルを有するAC電源に適用される方法に関し、特に、受動素子に供給される入力電流を調整することにより受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受動素子を含む電子製品が家庭用AC電源に接続されている間、電子製品の動作はAC電源の不安定な電圧レベルに容易に影響を受ける。電子製品が発光ダイオードを受動素子として含んでいるときに、発光ダイオードは、AC電源の電圧レベルが発光ダイオードのオン電圧よりも高いという条件下で動作するにすぎないので、発光ダイオードの安定性はAC電源の安定性に大きく依存する。
【0003】
図1及び図2を参照されたい。図1は、家庭用AC電源を利用する従来の電子製品に用いられる発光ダイオードの入力電圧/入力電流/入力電力をそれぞれ示す曲線図を例示している。図2は、図1で示される入力電圧が変化する間の図1の対応線図を例示している。
【0004】
図1において例示された入力電圧曲線ac1及び入力電流曲線に観察されるように、入力電圧曲線ac1で例示される入力電圧が発光ダイオードのVLED_ONのオン電圧よりも高いときのみ、発光ダイオードの入力電流がゼロから一定電流値I_LEDに上昇する。入力電圧曲線ac1の電圧レベルがオン電圧VLED_ONよりも高い時の持続期間内に、即ち、図1に示される時点t1とt2の間の持続期間に、図1の斜線領域で示されるように、入力電圧を供給する入力電源の消費仕事量(又は消費電力)は、入力電力曲線PC1と時点t1とt2の間の時間差により囲まれた領域と等しい。ここで、入力電力曲線PC1は、AC電圧ac1と一定電流値I_LEDで示されたラインにより決定される。発光ダイオード出力電力Pはオン電圧VLED_ONと一定電流I_LEDの積に等しいことに注意されたい。図2は、AC電圧源のような、発光ダイオードの不安定な入力電圧の上昇のために、入力電圧曲線がac1からac2に変化する状態を例示している。このとき、持続期間は、入力電圧曲線ac2により示される入力電圧がオン電圧VLED_ONより高いときに、(t1−△t)から(t2+△t)まで延ばされる。ここで、△tは、(t2−t1)との比較において無視できる持続期間を示す。時間差(t2−t1)と電力曲線PC1で囲まれる領域、そして時間差(t2+△t)−(t1−△t)と電力曲線PC2で囲まれる領域から観察されるように、入力電圧源によりなされる入力仕事量は増加し、それは電力曲線PC1とPC2の包囲領域間の差の包囲領域により示されてもよいし、又はI_LED*2△tに等しい時間毎の電流上昇により示されてもよい。なお、電力曲線PC1とPC2の包囲領域間の差の包囲領域は、不安定な入力電圧に起因して増加した仕事、即ち、図2に示された上向きの矢印が移動している領域を示している。もし、入力電圧曲線ac1とac2間の差が大きくなってくると、入力電圧からの増加した仕事が発光ダイオードの輝度をより不安定なものにしてしまう。
【発明の概要】
【0005】
クレームされた発明は、受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させる方法を開示する。かかる方法は、入力仕事量(又は入力電力)を実質的に一定にするように、入力電圧の電圧レベルが所定電圧よりも低い電圧から前記所定電圧よりも高い電圧に変化する間に、AC電源により供給される入力電流を調整するステップを有する。前記入力電圧、前記入力電流及び前記入力仕事量(又は前記入力電力)は、AC電源により受動素子に入力される。
【0006】
本発明のこれら及び他の目的は、以下の種々の図表及び図面において示された好ましい実施形態の詳細説明を読むことにより、当業者によって間違いなく明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来の家庭用AC電源を利用した電子製品による発光ダイオードの入力電圧/入力電流/入力電力を各々示す曲線図を示している。
【図2】図1で示された入力電圧が変化する間の図1の対応図を示している。
【図3】本発明の好ましい実施形態による入力電圧源からの受動素子の入力消費電力を安定化させるための入力電流の大きさの調整の概略図を示している。
【図4】受動素子を含む電子製品が試験されている間に、図3に示された入力電流の調整を実行した後の臨界電圧の固定値に対応する計算された入力電流曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、入力電圧に応じて入力電流を調整することにより、入力電圧源からの受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させる方法を開示する。開示された方法を用いて、AC電源のような、不安定な入力電圧によりもたらされる、受動素子として働く発光ダイオードの不安定な輝度がこれにより解消される。
【0009】
本発明において、少なくとも2つの実施形態が開示される。第1実施形態においては、入力電圧からの入力消費仕事量(又は入力消費電力)の大きさが安定に保たれているという条件下で、入力電圧源からの時変入力電圧に応じて入力電圧源からの入力電流の大きさが連続的に調整される。本発明の第2実施形態においては、受動素子の出力消費仕事量(又は出力消費電力)が安定に保たれているという条件下で、入力電圧源からの時変入力電圧に応じて、入力電圧源からの入力からの入力電流の大きさが連続的に調整される。入力電流の大きさの調整は、前記入力電流の大きさの減少を示し得ることに注意されたい。入力電流の調整値は、受動素子を含む電子製品の試験手続きで定められ、調整計算の詳細は後述する。
【0010】
図3を参照されたい。図3は、本発明の好ましい実施形態による入力電圧源からの受動素子の入力消費仕事量(又は入力消費電力)を安定化させるための入力電流の大きさの調整の概略図を例示している。図3においては、オン電圧VLED_ON電圧よりも高い一定臨界電圧V_FOLDが設定されており、臨界電圧V_FOLDの設定方法は後述する。第1、第2実施形態間の主な相違は、入力電圧が臨界電圧V_FOLDより高い間の入力電流の調整量にあり、従って、以下の説明では本発明の第1、第2実施形態の両方に言及する。図3はまた、参考用に図1に示された入力電圧曲線ac1を例示している。本発明によれば、図3から観察されるように、入力電圧曲線が実質的にac1からac2に変化している間であって、入力電圧曲線ac2の電圧レベルが臨界電圧V_FOLDよりも高いときに、入力電流の大きさは、入力/出力消費仕事量(又は入力/出力電力)を安定化するように減少される。
【0011】
時点t1、t2間において、入力電圧ac1から生じた消費仕事量(又は消費電力)は、元々は電力曲線ac1と時点t1から時点t2への変化量に囲まれた領域により示される。しかしながら、実際の入力電圧曲線は不安定な入力電圧のためにac1からac2に変化する。つまり、入力電圧曲線ac1から入力電圧曲線ac2への変化により増加した領域を補償するために、時点t1’から時点t2’の入力電流、即ち、入力電圧曲線ac2の電圧レベルが臨界電圧V_FOLDよりも高い持続期間の入力電流が低減され、そして結果として、実際の電力曲線が図2に示された電力曲線PC2から図3に示された電力曲線PC3に変化する。電力曲線PC3は、時点(t1−△t)とt1’との間、及び時点t2’と(t2+△t)との間においては、電力曲線PC2と同一である。言い換えれば、入力電圧源によりなされる本来の仕事量、それは本来的には時点t1、t2間の入力電圧曲線ac1を取得するのだが、その本来の仕事量が
【数1】

に等しいと仮定し、入力電圧源によりなされた後の仕事量、それは入力電圧曲線ac1の代わりに時点(t1−△t)、(t2+△t)間の入力電圧曲線ac2を得るのだが、その仕事量が
【数2】

に等しいと仮定されたい。よって、本発明の第1実施形態において、入力電圧源による入力仕事量を連続的に一定にするためには、条件は以下に従わなければならない。
【数3】

時点(t1−△t)、t1”間と、時点t2”、(t2+△t)間とで増加した仕事量(又は電力)の面において、その仕事量(又は電力)は上向きの矢で満たされた領域で示されており、入力電流の大きさを減少させることにより導かれる時点t1”、t2”間で減少した仕事量(又は電力)の面において、時点t1”及びt2”は電力曲線PC1とPC3との間の交差点を示しており、時点t1”は時点t1’よりも遅く、時点t2”は時点t2’よりも早く、方程式(2)は以下のように与えられる。
【数4】

方程式(2)の左側は、実質的な入力電圧曲線がac1からac2に変化する間に、入力電圧源による増加仕事量(又は増加電力)を示しており、方程式(2)の右側は、減少した入力電流により導かれた減少仕事量(減少電力)を示している。方程式(2)が成立する間は、時点(t1−△t)と(t2+△t)間の入力電圧源により行われる入力仕事量(入力電力)は、一定の総計入力仕事量(又は総計入力電力)に達するように、時点t1、t2間の図1において示される電力曲線PC1により導入される入力仕事量(又は入力電力)に等しい。一定の総計入力仕事量(又は総計入力電力)に到達するために、時点t1’、t2’間の減少した入力電流の大きさは方程式(1)又は方程式(2)に従い計算されなければならない。電力曲線PC1は入力電圧曲線ac1と一定電流I_LEDに応じて決定され、電力曲線PC3は入力電圧曲線ac2とその調整された(又は減少した)入力電流に応じて決定されるので、時点(t1−△t)と(t2+△t)の間の入力電圧曲線ac1、ac2の入力値が既知である限り、減少した入力電流の大きさは既知の電流I_LEDと方程式(1)及び(2)の両方を用いて、図3に示された時点t1’、t2’間の任意の時点で計算され得る。受動素子を含む電子製品を試験している間は、もはや両方の入力電圧曲線ac1とac2の既知の値は異なる正弦波の電圧源に設定されてもよい。
【0012】
図3に示された臨界電圧V_FOLDの設定もまた、電子製品のリセット手続き中に行われる。例えば、電子製品の製造者は、臨界電圧V_FOLDの異なる一定値に対応して、減少した入力電流の異なる大きさを決定することができる。図4を参照されたい。図4は、受動素子を含む電子製品が試験されている間に、図3に示された入力電流の調整を行った後の臨界電圧V_FOLDの固定値に対応する計算入力電流曲線を概略的に例示している。図4に示されるように、臨界電圧V_FOLDの固定値を設定した後であって、入力電圧が設定臨界電圧V_FOLDよりも高くなる前では、入力電流の大きさはI_LEDに保たれる。しかしながら、入力電圧が設定臨界電圧V_FOLDよりも高くなった後は、入力電流の大きさは下降し始め、入力電流の減少量は、一定入力電圧からの一定入力仕事量(又は一定入力電力)、又は受動素子からの一定出力仕事量(又は一定出力電力)に従って、即ち、方程式(1)又は(2)に従って計算される。それ故、電子製品を試験している間、又は含まれた受動素子を試験している間でさえ、入力電流の異なる値に対応する異なる入力電流曲線を決定するように、臨界電圧V_FOLDの異なる値が設定され得る。ユーザが試験された電子製品を使用している間に、その電子製品は入力電圧を検出する。入力電圧が設定臨界電圧V_FOLDよりも高く検出されたときには、図4に示された入力電流曲線は、電子製品で消費される入力/出力仕事量(又は入力/出力電力)を安定化させるように、入力電流の大きさの調整に利用される。入力電圧源からの入力仕事量(又は入力電力)を安定化する本発明の第1実施形態において、含まれている受動素子が発光ダイオードである間は(ときには)、臨界電圧V_FOLDは異なる入力電流を決定するために直接利用されてもよい。受動素子、即ち、発光ダイオードから生じた出力仕事量(又は出力電力)を安定化させる本発明の第2実施形態において、発光ダイオードのオン電圧は一定であるので、臨界電圧V_FOLDの値は発光ダイオードのオン電圧と等しくそのまま設定されてよい。それ故、時点t1とt2の間の電力曲線PC1に囲まれた領域は、発光ダイオードにより生じた出力仕事量(又は出力電力)をそのまま示し、入力電流曲線は、発光ダイオードからの出力仕事量(又は出力電力)は一定で安定しているという条件下で、設定臨界電圧V_FOLD、即ち、発光ダイオードのオン電圧に応じて定められる。従って、目的が入力電圧源からの入力仕事量(又は入力電力)の安定化であれ、発光ダイオードからの出力仕事量(又は出力電力)の安定化であれ、発光ダイオードの輝度はなお安定に保たれる。
【0013】
発光ダイオードに加えて、本発明で示された受動素子はまた、抵抗のような異なる仕様を有する受動素子であってもよい。従って、本発明の開示された方法を発光ダイオード以外の受動素子に活用することは、なお本発明の実施形態を構成する。
【0014】
本発明は、受動素子の消費仕事量(又は消費電力)を安定化させる方法を開示している。かかる開示された方法は、一定の入力/出力仕事量(又は入力/出力電力)及び入力電圧曲線に従い、入力電流の減少量を計算する。それ故、受動素子を含む電子製品は、AC電圧源のような、異なる仕様又は規格を有するか、不安定である入力電圧源に対処するために、異なる減少入力電流を用いることができる。従って、たとえ電子製品が不安定な電圧源に接続されているとしても、入力/出力仕事量消費(又は入力/出力消費電力)を安定化させる目的は達成され得る。
【0015】
当業者は、本発明の教示を保ちつつ、多くの変更と置換がなされ得ることは容易に気付くであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動素子の消費仕事量を安定化させる方法であって、
入力電圧の電圧レベルが所定電圧よりも低い電圧から前記所定電圧よりも高い電圧に変化している間に、入力仕事量を実質的に一定にするように、AC電源により供給された前記入力仕事量と前記AC電源からの入力電圧の電圧レベルに応じて、前記AC電源により供給された入力電流を調整するステップを有し、
前記入力電圧、前記入力電流及び前記入力仕事量は、前記AC電源により受動素子に入力される方法。
【請求項2】
前記入力電流を調整するステップは、前記入力仕事量及び前記入力電圧の前記電圧レベルに応じて、前記入力電流の減少量を計算するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受動素子は、抵抗又は発光ダイオードである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
受動素子の消費仕事量を安定化させる方法であって、
入力電圧の電圧レベルが所定電圧よりも低い電圧から前記所定電圧よりも高い電圧に変化している間に、出力仕事量を実質的に一定にするように、受動素子により出力された前記出力仕事量と前記AC電源からの入力電圧の電圧レベルに応じて、前記AC電源により供給された入力電流を調整するステップを有し、
前記入力電圧及び前記入力電流は、前記AC電源により前記受動素子に入力される方法。
【請求項5】
前記入力電流を調整するステップは、前記出力仕事量及び前記入力電圧の前記電圧レベルに応じて、前記入力電流の減少量を計算するステップを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記受動素子は、抵抗又は発光ダイオードである請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−64190(P2012−64190A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272346(P2010−272346)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(507037817)沛亨半導體股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】