説明

可撓性内視鏡滅菌用トレイ

【課題】可撓管を小さな曲率半径で曲げなくてもすむように挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とを交差させた構成をとりながら、挿入部可撓管を接続可撓管と接触させることなく確実に滅菌消毒することができる可撓性内視鏡滅菌用トレイを提供すること。
【解決手段】挿入部可撓管1が緩く嵌め込まれる挿入部可撓管案内溝11と接続可撓管4が緩く嵌め込まれる接続可撓管案内溝14とが各々表面部分10から窪んだ状態に形成されていて、挿入部可撓管案内溝11と接続可撓管案内溝14との交差部である可撓管案内溝交差部Aにおいて、一方の案内溝11がその案内溝11に嵌め込まれる可撓管1の直径より大きな深度差で他方の案内溝14より深く形成されて、可撓管案内溝交差部Aにおいて挿入部可撓管1と接続可撓管4とが直接接触しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性内視鏡を滅菌装置に格納する際に載置するための可撓性内視鏡滅菌用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性内視鏡滅菌用トレイは一般に、挿入部可撓管が嵌め込まれる挿入部可撓管案内溝と、光源装置に接続されるコネクタが先端に取り付けられた接続可撓管が嵌め込まれる接続可撓管案内溝等が各々表面部分から窪んだ状態に形成されている。
【0003】
そして、挿入部可撓管と接続可撓管が直接接触すると、内視鏡検査の際に人体内に挿入される挿入部可撓管の滅菌消毒が不完全になる可能性があるので、挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とが交差しないように構成されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−17824
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、滅菌装置内に格納するために大きさに一定の制限がある可撓性内視鏡滅菌用トレイにおいて、上述のように挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とが交差しないように構成するためには、挿入部可撓管案内溝のカーブ部分の曲率半径を小さく形成する必要が生じる。
【0005】
そのため、挿入部可撓管が小さな曲率半径で無理に曲げられた状態で高圧蒸気等を用いた滅菌装置内の高温高圧の環境下に繰り返し置かれることになり、それが挿入部可撓管の早期破損の原因になる場合がある。
【0006】
そのため、挿入部可撓管の径が太い機種等に用いられるトレイの場合には挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とが交差するように構成せざるを得ないが、そのようにすると、人体内に挿入される挿入部可撓管の滅菌が交差部において不完全になってしまう恐れが生じる。
【0007】
そこで本発明は、可撓管を小さな曲率半径で曲げなくてもすむように挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とを交差させた構成をとりながら、挿入部可撓管を接続可撓管と接触させることなく確実に滅菌消毒することができる可撓性内視鏡滅菌用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の可撓性内視鏡滅菌用トレイは、挿入部可撓管の基端に操作部が連結されて、光源装置に接続されるコネクタが先端に取り付けられた接続可撓管が操作部から延出した構成の可撓性内視鏡を、滅菌装置に格納する際に載置するための可撓性内視鏡滅菌用トレイにおいて、挿入部可撓管が緩く嵌め込まれる挿入部可撓管案内溝と接続可撓管が緩く嵌め込まれる接続可撓管案内溝とが各々表面部分から窪んだ状態に形成されていて、挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝との交差部である可撓管案内溝交差部において、一方の案内溝がその案内溝に嵌め込まれる可撓管の直径より大きな深度差で他方の案内溝より深く形成されて、可撓管案内溝交差部において挿入部可撓管と接続可撓管とが直接接触しないように構成されているものである。
【0009】
なお、可撓管案内溝交差部において、挿入部可撓管案内溝が挿入部可撓管の直径より大きな深度差で接続可撓管案内溝より深く形成されていてもよく、可撓性内視鏡滅菌用トレイに可撓性内視鏡が載置されて挿入部可撓管案内溝内に挿入部可撓管が嵌め込まれた状態では、挿入部可撓管が可撓性内視鏡の他の部分に一切接触しない状態になるようにするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝との交差部において、一方の案内溝がその案内溝に嵌め込まれる可撓管の直径より大きな深度差で他方の案内溝より深く形成されて、可撓管案内溝交差部において挿入部可撓管と接続可撓管とが直接接触しないように構成されているので、可撓管を小さな曲率半径で曲げなくてもすむように挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝とを交差させた構成をとりながら、挿入部可撓管を接続可撓管等と接触させることなく確実に滅菌消毒することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
挿入部可撓管の基端に操作部が連結されて、光源装置に接続されるコネクタが先端に取り付けられた接続可撓管が操作部から延出した構成の可撓性内視鏡を、滅菌装置に格納する際に載置するための可撓性内視鏡滅菌用トレイにおいて、挿入部可撓管が緩く嵌め込まれる挿入部可撓管案内溝と接続可撓管が緩く嵌め込まれる接続可撓管案内溝とが各々表面部分から窪んだ状態に形成されていて、挿入部可撓管案内溝と接続可撓管案内溝との交差部である可撓管案内溝交差部において、一方の案内溝がその案内溝に嵌め込まれる可撓管の直径より大きな深度差で他方の案内溝より深く形成されて、可撓管案内溝交差部において挿入部可撓管と接続可撓管とが直接接触しないように構成されている。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は、使用後に蒸気滅菌するために本発明の可撓性内視鏡滅菌用トレイに載せられる可撓性内視鏡の一例を示しており、体内に挿入される挿入部可撓管1の基端に操作部2が連結され、図示されていない光源装置(件ビデオプロセッサ)に接続されるコネクタ部3が先端に取り付けられた接続可撓管4が操作部2から延出している。
【0013】
図4は可撓性内視鏡滅菌用トレイの一実施例の平面図、図5はその斜視図であり、可撓性内視鏡滅菌用トレイは、病院の内視鏡室内等に設置される蒸気滅菌装置内に格納できる大きさの長方形状に形成されている。
【0014】
そのような可撓性内視鏡滅菌用トレイの外辺に近い部分には挿入部可撓管1を緩く嵌め込むための挿入部可撓管案内溝11が形成され、接続可撓管4を緩く嵌め込むための接続可撓管案内溝14が挿入部可撓管案内溝11の内側に並ぶ形で形成されている。
【0015】
操作部2を緩く嵌め込むための操作部嵌め込み溝12とコネクタ部3を緩く嵌め込むためのためのコネクタ部嵌め込み溝13は、各々挿入部可撓管案内溝11と重なり合わないように挿入部可撓管案内溝11の内側のスペースに形成され、接続可撓管案内溝14とは共に一部で重なり合っている。
【0016】
図4におけるVI−VI断面を図示する図6に示されるように、可撓性内視鏡滅菌用トレイには中程の深さの位置に平面部10(表面部分)が形成されていて、挿入部可撓管案内溝11は底部近くの深い位置に形成されている。また、図6に図示されていない操作部嵌め込み溝12、コネクタ部嵌め込み溝13及び接続可撓管案内溝14等も、平面部10から適宜潜った深さに形成されている。
【0017】
なお、VI−VI断面の位置には挿入部可撓管案内溝11が並列に二列に分かれて形成されており、可撓性内視鏡の機種の相違等に応じて挿入部可撓管案内溝11を選択してその一方に挿入部可撓管1を通すことができる。
【0018】
15は水抜き孔であり、挿入部可撓管案内溝11以外の各部にも多数形成されている。16は、蒸気滅菌装置内に設けられている受け等に係合させるための鍔であり、外縁部の全周にわたって形成されている。
【0019】
また、挿入部可撓管1を小さな曲率半径でカーブさせる必要がないように挿入部可撓管案内溝11を形成してあることにより、挿入部可撓管案内溝11と接続可撓管案内溝14とが挿入部可撓管案内溝11の操作部嵌め込み溝12に近い部分で交差している。
【0020】
Aがその挿入部可撓管案内溝11と接続可撓管案内溝14との交差部である可撓管案内溝交差部であり、図4におけるII−II断面を図示する図2に示されるように、可撓管案内溝交差部Aにおいては、挿入部可撓管案内溝11が挿入部可撓管1の直径より大きな深度差で接続可撓管案内溝14より深く形成されている。
【0021】
図7は、上述のように構成された可撓性内視鏡滅菌用トレイに可撓性内視鏡が載置された状態の平面図、図8はその状態に置かれた可撓性内視鏡だけを抜き出して示しており、先ず操作部2が操作部嵌め込み溝12に嵌め込まれて、挿入部可撓管1が挿入部可撓管案内溝11に嵌め込まれ、次いで接続可撓管4が接続可撓管案内溝14に嵌め込まれて最後にコネクタ部3がコネクタ部嵌め込み溝13に嵌め込まれる。
【0022】
このとき、可撓管案内溝交差部Aにおいて挿入部可撓管1と接続可撓管4とが交差することになるが、挿入部可撓管案内溝11が挿入部可撓管1の直径より大きな深度差で接続可撓管案内溝14より深く形成されていることにより、図1に示されるように、可撓管案内溝交差部Aにおいて挿入部可撓管1と接続可撓管4との間に隙間が形成され、挿入部可撓管1と接続可撓管4とが直接接触する状態にはならない。
【0023】
なお、挿入部可撓管1、接続可撓管4その他可撓性内視鏡の各部2,3に満遍なく滅菌蒸気が接触するようにするため、挿入部可撓管案内溝11、接続可撓管案内溝14その他の溝12,13の底面に小さな突起を飛び飛びに形成する等の工夫をして、挿入部可撓管1、接続可撓管4その他可撓性内視鏡の各部2,3が挿入部可撓管案内溝11、接続可撓管案内溝14その他の溝12,13内で僅かに浮いた状態にするとよいが、その場合でも、可撓管案内溝交差部Aにおいて挿入部可撓管1と接続可撓管4が接触しないよう、挿入部可撓管案内溝11と接続可撓管案内溝14との間に挿入部可撓管1の直径より大きな深度差を形成しておく。
【0024】
図7及び図8に戻って、両図に示されるBの位置において、平面的にはコネクタ部3の先端が挿入部可撓管1と交差しているかのようであるが、コネクタ部3の先端はトレイの平面部10上に載った状態になっていて、挿入部可撓管案内溝11の底部に位置する挿入部可撓管1との間には深さ方向に大きな隙間がある。
【0025】
また、接続可撓管4は人体内に挿入される部分ではないので挿入部可撓管1ほど完全な滅菌を必要とするものではなく、C、D及びEの各部において接続可撓管4がコネクタ部3及び操作部2と交差しているが、ここでも接続可撓管4はコネクタ部3と操作部2に対して深さ方向に隙間をあけて配置されている。
【0026】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、可撓管案内溝交差部Aにおいて接続可撓管案内溝14を挿入部可撓管案内溝11より深く形成して、接続可撓管4の直径より大きな深度差を設けても差し支えない。また、本発明のトレイが高温高圧の蒸気以外の例えばエチレンオキサイドガスその他の手段で滅菌されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイに可撓性内視鏡が載せられた状態における可撓管案内溝交差部の断面図である。
【図2】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイの可撓管案内溝交差部の断面図(図4におけるII−II断面図)である。
【図3】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイに載せられる可撓性内視鏡の一例の外観図である。
【図4】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイの平面図である。
【図5】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイの斜視図である。
【図6】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイの図4におけるVI−VI断面図である。
【図7】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイに可撓性内視鏡が載せられた状態の平面図である。
【図8】本発明の実施例の可撓性内視鏡滅菌用トレイに載せられた状態の可撓性内視鏡だけを抜き出して示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 挿入部可撓管
4 接続可撓管
10 平面部(表面部分)
11 挿入部可撓管案内溝
14 接続可撓管案内溝
A 可撓管案内溝交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部可撓管の基端に操作部が連結されて、光源装置に接続されるコネクタが先端に取り付けられた接続可撓管が上記操作部から延出した構成の可撓性内視鏡を、滅菌装置に格納する際に載置するための可撓性内視鏡滅菌用トレイにおいて、
上記挿入部可撓管が緩く嵌め込まれる挿入部可撓管案内溝と上記接続可撓管が緩く嵌め込まれる接続可撓管案内溝とが各々表面部分から窪んだ状態に形成されていて、上記挿入部可撓管案内溝と上記接続可撓管案内溝との交差部である可撓管案内溝交差部において、一方の案内溝がその案内溝に嵌め込まれる可撓管の直径より大きな深度差で他方の案内溝より深く形成されて、上記可撓管案内溝交差部において上記挿入部可撓管と上記接続可撓管とが直接接触しないように構成されていることを特徴とする可撓性内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項2】
上記可撓管案内溝交差部において、上記挿入部可撓管案内溝が上記挿入部可撓管の直径より大きな深度差で上記接続可撓管案内溝より深く形成されている請求項1記載の可撓性内視鏡滅菌用トレイ。
【請求項3】
上記可撓性内視鏡滅菌用トレイに上記可撓性内視鏡が載置されて上記挿入部可撓管案内溝内に上記挿入部可撓管が嵌め込まれた状態では、上記挿入部可撓管が上記可撓性内視鏡の他の部分に一切接触しない状態になる請求項1又は2記載の可撓性内視鏡滅菌用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255055(P2006−255055A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74537(P2005−74537)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】