説明

合せガラス及び透光性防音パネル

【課題】耐熱性及び耐風圧性に優れ、破損時におけるガラス片を縮小して周囲への被害を低減可能な透光性に優れた合せガラス及び安全性に優れた透光性防音パネルを提供する。
【解決手段】道路の外側に配置される第1の化学強化ガラス1aと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラス1bとを、中間膜1cを介して貼り合せて構成され、第1の化学強化ガラス1aの厚みが1.5〜4mmであり、第2の化学強化ガラス1bの厚みが1.5mm以上であり、中間膜1cの厚みが6.0mm以下である合せガラス。この合せガラスの周辺を金属枠2で囲って透光性防音パネル10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに関し、更に詳しくは、化学強化ガラスで構成される合せガラスを使用した透光性防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路の路側に防音パネルを配置して、交通騒音などを低減することが行われている。防音パネルに求められる特性として、遮音性を有することは勿論、運転者の圧迫感を減らすことや、近隣住民への日照確保のために、透光性が求められている。このような透光性を有する防音パネルとして、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂板が従来より用いられている。しかしながら、透明樹脂板の場合、紫外線劣化による黄変、静電気発生による自動車排気ガス中の煤や埃の付着、あるいは表面硬度不足による傷つき等の理由による透視性、あるいは透明性の低下する問題があった。また、清掃作業を行っても透視性、透明性を回復させるのが難しい問題があった。また、表面に凹凸があり、且つ剛性が低いためにたわみやすく、透視映像、反射映像がゆがむ問題があった。また、車両火災による類焼や熔融によって民地側に落下する問題などを有していた。
【0003】
また、近年では、合せガラスを防音パネルに用いる試みが検討されている。
【0004】
特許文献1には、板厚3mmの2枚のフロートガラスと、これらフロートガラス間に介在させた0.75mmの中間膜により接着した合せガラスからなる防音パネルが開示されている。
【0005】
また、特許文献2,3には、金属製の繊材を埋設した板ガラスを用いた合せガラスを、道路用透光性パネルに用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7−15854号公報
【特許文献2】特開2007−169957号公報
【特許文献3】特開2010−236221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
透光性防音パネルの素材にガラスを用いた場合、硬くて脆いというガラスの特性を考慮して、破損時に飛散するガラス片を小さくし、できるだけ周囲に飛散しないようにして、近隣住宅等に対する安全性を高める必要がある。
【0008】
しかしながら、フロートガラスからなる合せガラスの場合、車両衝突や投石などにより衝撃が加わって破損すると、大きなガラス片が飛散し易く、周囲へ被害をもたらすおそれがあった。また、強度的に問題があり、実用に適した耐風圧性、耐衝撃性、耐燃焼性等の特性を得るためには、使用するガラス板の厚さを厚くする必要があった。このため、防音パネル全体の重量が嵩み、施工性が劣る問題があった。
【0009】
一方、金属製の繊材を埋設した網入り板ガラスを用いた合せガラスの場合、埋設された金属製の繊材によって、破損後のガラス破片の落下が防止されるという利点がある。
【0010】
しかしながら、網入り板ガラスはフロートガラスよりも強度が低いために、フロートガラス同様の問題を有しており、重量が嵩み、施工性が劣るものであった。また、ガラス周端部の防錆処理が衰えると、雨水などの影響によりガラス端部に露出した繊材の切断面に錆が発生し、その錆がガラス内部まで進行して内部に埋設された繊材が膨張し、ガラスにひびや割れが生じることがあった。更にまた、埋設された繊材によって透光性が損なわれる。
【0011】
よって、本発明の目的は、耐熱性及び耐風圧性に優れ、破損時におけるガラス片を縮小できる合せガラス及び安全性に優れた透光性防音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の合せガラスは、道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる合せガラスであって、前記合せガラスは、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され、前記第1の化学強化ガラスの厚みが1.5〜4mmであり、前記第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり、前記中間膜の厚みが6.0mm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の合せガラスは、前記化学強化ガラスの表面圧縮応力が350MPa以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の合せガラスは、前記中間膜の厚みが1.5〜3.1mmであることが好ましい。
【0015】
本発明の合せガラスは、前記中間膜が、ビニル系ポリマー、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる一種以上で構成されていることが好ましく、ビニル系ポリマー及び/又はエチレン-ビニル系モノマー共重合体で構成されていることがより好ましい。
【0016】
また、本発明の透光性防音パネルは、道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルであって、上記合せガラスと、該合せガラスの周辺を囲む金属枠とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の合せガラスは、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され、第1の化学強化ガラスの厚みが1.5〜4mmであり、第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり、中間膜の厚みが6.0mm以下であるので、道路の内側から衝撃が加わって道路の内側に配置される第2のガラス板が破損しても、その破片は、中間膜や、第1の化学ガラス板によって、道路の外側への飛散が抑制される。また、化学強化ガラスの特性として、破損時に飛散するガラス破片が小片となるので、仮にガラス片が周囲に飛散したとしても、飛散するガラス片をより小さくできる。
【0018】
また、この合せガラスは、両面が化学強化ガラスで構成されているので、強度があり、合せガラス全体の厚みが薄くても充分な耐風圧性が得られ、軽量化が可能である。更には、化学強化ガラスは、高温に曝されても、化学強化ガラスの表面圧縮応力が、熱膨張を抑制するように作用するので、熱割れが生じ難く、燃焼時におけるガラスの脱落や落下を防止でき、安全性に優れる。
【0019】
そして、本発明の防音パネルは、上記合せガラスの周辺を金属枠で囲ってなるものであるので、合せガラスをしっかりと保持して路側に配設することができる。また、道路の内側から衝撃が加わって合せガラスが割れても、中間膜によって道路の外側へのガラス片の飛散を抑制でき、仮にガラス片が飛散したとしても、そのガラス片をより小さくできるので、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の透光性防音パネルの概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の透光性防音パネルの取付け構造体の概略図である。
【図4】同透光性防音パネルの取付け構造体の平面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図4のC−C断面図である。
【図7】衝突性試験で使用した金属球の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の合せガラスは、道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる合せガラスであって、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成されている。
【0022】
まず、化学強化ガラスについて説明する。化学強化ガラスは、イオン交換法等の方法により、ガラス表面の小さなイオン半径のアルカリ金属原子が、大きなイオン半径のアルカリ金属原子に置き換えられる(例えば、ガラス表面のリチウム原子及び/又はナトリウム原子が、カリウム原子に置き換えられる)ことにより、ガラス表面層に大きな圧縮応力が付与されたものであって、フロートガラス等の非強化ガラス板、あるいは風冷法により強化されたガラス板(風冷強化ガラス)と比較して強度が高められ、容易に割れないものとなっている。また、本発明者らは、化学強化ガラスによって、破損時におけるガラス片を小さくできることを見出した。この理由としては、ガラスは破壊する際に、ガラスに与えられた破壊のエネルギーが表面形成(破断面形成)のエネルギーに変換して、多くの表面(破断面)を形成するように作用する。化学強化ガラスの表面圧縮応力を大きくすると、ガラスの破壊のエネルギーが増すので、それに応じて、表面形成のエネルギーも大きくなり、その分、表面積を大きくするために、ガラス破片がさらに小さくなると推測される。
【0023】
本発明の合せガラスに用いる化学強化ガラスは、表面圧縮応力が350MPa以上であることが好ましく、370〜450MPaが特に好ましい。化学強化ガラスの表面圧縮応力が350MPa未満であると、強度的に劣り、十分な耐風圧性を得ようとした場合、ガラス厚を厚くする必要があり重量が嵩む。更には、破損時に飛散するガラス片が大きくなり易い。化学強化ガラスの表面圧縮応力が450MPaを超えると、表面の圧縮応力層と、内部の引張応力層とのバランスが劣り、わずかな歪で破壊し易くなることがある。なお、本発明において、表面圧縮応力は、表面応力測定器にて測定した値である。
【0024】
化学強化ガラスは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、汎用的なソーダライムシリケートガラスなどのフロートガラス板を、熔融したカリウム塩に浸漬する。それによって、ガラス組成中のリチウムイオン、あるいは、ナトリウムイオンが、イオン半径の大きなカリウムイオンに置換される。これにより、カリウムイオンによって増加する体積分だけ圧縮応力が生じ、表面圧縮応力が向上する。
【0025】
カリウム塩としては、たとえば硝酸カリウム、硫酸カリウム、重硫酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0026】
溶融温度は、カリウム塩の種類により異なる。例えば、硝酸カリウムの場合、好ましくは350〜500℃であり、より好ましくは370〜480℃であり、特に好ましくは450〜480℃である。350℃未満であると、化学強化処理を行う時間が長くなり、生産性に劣る。一方、熔融温度を上げると、化学強化処理時間は短縮されるが、500℃を超えても、化学強化処理時間は大幅に短縮されず、使用するカリウム塩の種類によっては、有害なガスを発生し作業環境を損なう場合がある。
【0027】
浸漬時間は、フロートガラス板の厚み、得られる化学強化ガラスの表面圧縮応力により異なるので特に限定はしない。例えば、厚さ3〜6mmのフロートガラス板を用いて、表面圧縮応力370〜450MPaの化学強化ガラスを得る場合、450〜500℃の溶融した硝酸カリウム中に、1〜5時間、好ましくは2〜4時間浸漬すればよい。
【0028】
本発明の合せガラスにおいて、第1の化学強化ガラスは、厚みが1.5〜4mmであることが必要であり、2〜4mmがより好ましい。厚みが1.5mm未満であると、防音性や耐風圧性が劣る傾向にある。4mmを超えると、破損時に飛散するガラス片が大きくなり、安全性が損なわれる傾向にある。
【0029】
本発明の合せガラスにおいて、第2の化学強化ガラスは、厚みが1.5mm以上であることが必要であり、2〜8mmがより好ましい。厚みが1.5mm未満であると、防音性や耐風圧性が劣る傾向にある。10mmを超えても、材料コストが嵩み経済的でないとともに、重量が重くなるので透光性防音パネルの施工性が低下する傾向である。
【0030】
本発明の合せガラスにおいて、中間膜は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等で構成されており、ビニル系ポリマー、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上で構成されていることが好ましい。なかでも、経済性および、製造工程での加工性に優れているという理由から、ビニル系ポリマー及び/又はエチレン−ビニル系モノマー共重合体がより好ましい。
【0031】
本発明の合せガラスにおいて、中間膜の厚みは、6mm以下であることが必要であり、1.5〜6.0mmが好ましく、1.5〜3.1mmがより好ましい。中間膜の厚みが6mmを超えると、合せガラスとしての強度は向上するものの、衝撃時における合せガラスのたわみが小さく、衝撃エネルギーが分散され難くいので、加撃点に大きな力が加わり易い。このため、大きなガラス片が遠方まで飛散して、周囲の安全性を損なうおそれがある。中間膜の厚みを6mm以下にすることで、仮にガラス片が飛散したとしても、加撃点から亀裂を発生させながらガラスが大きくたわむので、加撃点からガラスに亀裂が入って合せガラスに加わった衝撃エネルギーを分散でき、ガラス片が遠くまで飛散し難くなり、更には、飛散するガラス片のサイズが小さくなる。特に中間膜の厚みを1.5〜3.1mmとすることで、ガラス片の飛散距離がより短くなり、かつ、飛散するガラス片のサイズがより小さくなる。
【0032】
本発明の合せガラスは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0033】
すなわち、1枚目の化学強化ガラスの上に、シート状の中間膜材料を置き、その上に2枚目の化学強化ガラスを重ね合せ、ロールプレス法などにより加熱下で予備圧着させた後、1〜12気圧、120〜160℃のオートクレーブ中で本圧着を行い、2枚の化学強化ガラスを中間膜材料で接着させる方法や、2枚の化学強化ガラスの間に間隙を設け、その間隙に中間膜材料として、液状の紫外線硬化性組成物を注入し、紫外線を照射して中間膜材料を硬化させて中間膜を形成し、2枚の化学強化ガラスを接着させる方法などがある。
【0034】
本発明の合せガラスの厚み(第1の化学強化ガラスの厚みと、中間膜の厚みと、第2の化学強化ガラスの厚みとの合計)は、4.5〜20mmが好ましく、5.5〜15.1mmがより好ましい。4.5mm未満であると、所望とする防音性に満たなかったり、強度が不足するために、例えば、防音壁の支柱間隔が2m以上ある場合に適用する幅方向長さ2m以上の、大きな寸法の透光性防音パネルには適さないことがある。一方、15.1mmを超えると、コストアップになり、重量(質量)が嵩み、施工性に欠ける場合がある。
【0035】
なお、本発明における合せガラスの単位面積当たりの重量とは、中間膜の重量は含めずに、第一の化学強化ガラスと第二の化学強化ガラスとを合せた合計重量であり、好ましくは30kg/m未満である。
【0036】
本発明の合せガラスの寸法は、特に制限はないが、耐風圧性を考慮して、厚み及び寸法を決めることが好ましい。例えば、高さ1.0m、幅2.0m程度の場合には、厚みを5.0〜16.0mmにすることが好ましい。また、高さ2.0m、幅2.0m程度の場合には、厚みを6.5〜19.0mmに設定することが好ましい。寸法に応じて、厚みを適宜決定することがより好ましい。
【0037】
次に、本発明の透光性防音パネルの一実施形態について、図1,2を用いて説明する。
【0038】
図1、2に示すように、本発明の透光性防音パネル10は、合せガラス1の周辺を金属枠2で保持して構成されている。
【0039】
図2を併せて参照すると、合せガラス1は、第1の化学強化ガラス1aと第2の化学強化ガラス1bとを、中間膜1cを介して貼り合せて構成されている。
【0040】
また、金属枠2は、内周の片側に偏倚して突出する突出部2aを有し、断面略L字状をなしている。また、突出部2aの反対側には、所定の間隔をおいて矩形状の押縁部材3が配置され、タッピングネジ4にて金属枠2に固定されるようになっている。突出部2aと押縁部材3の間には、合せガラス1の周縁を受け入れる溝部5が形成されている。
【0041】
したがって、押縁部材3を装着しない状態で、金属枠2の突出部2aの反対側から、金属枠2の内周に合せガラス1の周縁を挿入し、その外側から押縁部材3を挿入してタッピングネジ4により、押縁部材3を金属枠2に固定する。そして、合せガラス1の周縁と、金属枠2及び押縁部材3との隙間に、シール材6を充填することにより、合せガラス1を金属枠2に固定することができる。
【0042】
この透光性防音パネル10は、第1の化学強化ガラス1aが道路の外側に配置され、第2の化学強化ガラス1bが道路の内側に配置されるように、路側に沿って配置されて使用される。適用対象となる道路としては、特に限定は無く、高速道路、一般道路、遊歩道などの人道等が挙げられる。
【0043】
次に、図3〜6を用いて、本発明の透光性防音パネルの取り付け構造体の一実施形態について説明する。
【0044】
図3,4に示すように、道路30の側部に沿って一定の間隔を隔てて複数本の支柱20が立設される。各支柱20は、それらの上端部が道路30側に緩やかに湾曲している。
【0045】
図5,6を併せて参照すると、各支柱20は、長手方向に対して垂直な断面がH字状をなし、幅方向両側に突出する一対のフランジ部21a、21bを有している。そして、各フランジ部21a、21bの間に、金属枠2に保持された合せガラス1の金属枠2部分が挿入される保持溝が形成されている。
【0046】
透光性防音パネル10は、各支柱20の間の上端側から、金属枠2の両側を上記フランジ部21a、21bの間に挿入して設置される。そして、金属枠2は、道路30の外側のフランジ部21aから板ばねなどの付勢具22で付勢されて、道路30側のフランジ部21bに当接して固定されている。更に、各支柱20の間に、透光性防音パネル10を上下方向に複数段に積み重ねることにより、道路30の側部を高く覆う防音壁が構成されるようになっている。
【0047】
本発明の透光性防音パネルは、第1の化学強化ガラスと、第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せた合せガラスで構成されるので、透明で耐候性に優れ、走行側から透光性防音パネルを通して窓外を透視でき、走行中における窓外の景観が確保される。また、強度が高く耐風圧性に優れるので、合せガラス全体の厚みをより薄くでき、軽量化が可能である。また、耐熱性に優れ、局所的に加熱されたとしても、ひび割れ等がし難いので、道路の内側にて、事故衝突等により火災が発生したても、道路や線路の外側への火災の広がりを抑えることができる。そして、車の走行に伴う積荷の落下などによって、道路の内側から衝撃が加わって、道路の内側に配置される第2のガラス板が破損しても、その破片は、中間膜や、第1の化学強化ガラスによって、道路の外側への飛散を抑制され、仮にガラス片が飛散したとしても、化学強化ガラスの特性により、そのガラス片をより小さくできるので、周囲への被害を抑えることができ、極めて安全性に優れる。
【実施例】
【0048】
[試験例1]
(製造例1−1)
第1の化学強化ガラス(モジュール寸法:幅2000mm、高さ1000mm、厚3.0mm 表面圧縮応力:400MPa)の上に中間膜(ポリビニルブチラール樹脂(PVB))を載せ、その上にさらに第2の化学強化ガラス(モジュール寸法:幅2000mm、高さ1000mm、厚3.0mm 表面圧縮応力:400MPa)を乗せ、予備圧着、本圧着をして、厚さ3.0mmの中間膜を有する合せガラスを製造した。この合せガラスの単位面積当たりの重量は15kg/mであった。得られた合せガラスを、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0049】
(製造例1−2)
製造例1−1において、化学強化ガラスの代わりに、ソーダライムシリケート系フロートガラス(モジュール寸法:幅2000mm、高さ1000mm、厚5.0mm)を使用した以外は、製造例1−1と同様にして合せガラスを製造した。この合せガラスの単位面積当たりの重量は25kg/mで、中間層の厚みは3mmであった。そして、得られた合せガラスを、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0050】
製造例1−1、1−2の透光性防音パネルについて、以下に示す方法により耐風圧性、防音性、耐熱性を評価した。結果を表1に記す。
【0051】
・耐風圧荷重:各ガラス規格値より算出し、ガラス板を水平に置き、その上に風圧相当の荷重を載せ、ガラス板の破損の有無を確認した。
【0052】
・防音性評価:遮音試験にて、各周波数での音響透過損失を測定を行い、400Hz及び1000Hzでの音響透過損失をdB(デシベル)で評価した。評価基準は400Hzで25dB以上及び1000Hzで30dB以上であるものを○とし、それ以外のものを×とした。
【0053】
・耐熱性評価:口元の口径が直径100mmのプロパンガスタイプのバーナーを、合せガラスとバーナー口元を40cm離した距離で設置する。1分間バーナーの炎を照射し、着火しない場合は30秒単位で燃焼時間を増やし、合計2分間の照射を行う。合せガラスが燃焼しないか、着火しても20分未満で自消して道路の外側に落下しないものを○とし、それ以外のものを×とした。
【0054】
【表1】

【0055】
上記結果より、化学強化ガラスからなる合せガラスを使用した製造例1−1は、ガラス板の厚みが薄くても、耐風圧性、防音性、耐熱性に優れるものであった。
【0056】
これに対し、フロートガラス板からなる合せガラスを使用した製造例1−2は、ガラス板の厚みがあり、重量の嵩むものであった。更には、耐熱性の劣るものであった。
【0057】
[試験例2]
(製造例2−1)
第1の化学強化ガラス(モジュール寸法:幅2000mm、高さ1000mm、厚3.0mm 表面圧縮応力:392MPa)の上に中間膜(ポリビニルブチラール樹脂(PVB))を載せ、その上にさらに第2の化学強化ガラス(モジュール寸法:幅2000mm、高さ1000mm、厚3.0mm 表面圧縮応力:392MPa)を乗せ、予備圧着、本圧着をして、厚さ1.52mmの中間膜を有する合せガラスを製造した。この合せガラスの単位面積当たりの重量は15kg/mであった。得られた合せガラスを、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0058】
(製造例2−2)
製造例2−1と同様にして、厚さ2.29mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0059】
(製造例2−3)
製造例2−1と同様にして、厚さ3.05mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0060】
(製造例2−4)
製造例2−1と同様にして、厚さ3.81mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0061】
(製造例2−5)
製造例2−1と同様にして、厚さ5.33mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0062】
(製造例2−6)
製造例2−1と同様にして、厚さ6.86mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0063】
(製造例2−7)
製造例2−2において、第1の化学強化ガラス及び第2の化学強化ガラスとして、厚3.0mm、表面圧縮応力343MPaの化学強化ガラスを使用した以外は、製造例2−2と同様にして、厚さ2.29mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0064】
(製造例2−8)
製造例2−1において、第1の化学強化ガラスの厚みを4.0mmとした以外は、製造例2−1と同様にして、厚さ1.52mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0065】
(製造例2−9)
製造例2−1において、第1の化学強化ガラスの厚みを5.0mmとした以外は、製造例2−1と同様にして、厚さ1.52mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0066】
(製造例2−10)
製造例2−1において、中間膜として、ポリビニルブチラール樹脂の代わりにアイオノプラスト樹脂(SG)を使用した以外は、製造例2−1と同様にして、厚さ1.52mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0067】
(製造例2−11)
製造例2−10と同様にして、厚さ2.41mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0068】
(製造例2−12)
製造例2−10と同様にして、厚さ3.05mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。
【0069】
各透光性防音パネルについて、以下に示す方法により衝突試験を行い、飛散した破片の最大重量、飛散した破片の最大飛散距離、飛散防止率を評価した。結果を表2,3に記す。
【0070】
・衝突性試験:路面高さ1mの位置に透光性防音パネルの下端が位置するように透光性防音パネルを配置し、第2の化学強化ガラス側であって、透光性防音パネルの中心位置に、図7に示す300kgの鉄球(突起付き)を、加撃位置より鉛直方向95cmの高さから振り子式に加撃し、飛散した破片の最大重量(最も重い破片の重量)及び飛散した破片の最大飛散距離(最も遠くまで飛散した破片の飛散距離)を測定した。また、下記式1により飛散防止率を求めた。
{合せガラス重量(破損後)/合せガラス重量(破損前)}×100・・・(式1)
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
表2,3の製造例2−1〜2−6、2−10〜2−11に示すように、中間膜の厚みが厚くなることに伴い、破片の最大重量が重くなり、破片の最大飛散距離が長くなる傾向にあったが、中間膜の厚みを6mm以下にすることで、破片の最大重量が小さくなり、破片の最大飛散距離が短くなった。なかでも、製造例2−1〜2−3、2−10〜2−11に示すように、中間膜の厚みを1.5〜3.1mmとすることで、破片の最大重量が1g以下、破片の最大飛散距離が5m以下となり、高速自動車国道で定める安全基準を合格するものであった。
【0074】
また、製造例2−8、2−9との対比により、第1の化学強化ガラスの厚みを薄くすることで、破片の最大重量を小さくできることが分かる。なかでも、第一の化学強化ガラスの厚みを4.0mm以下にすることで、破片の最大重量が1g以下となり、高速自動車国道で定める安全基準を合格するものであった。
【0075】
また、製造例2−4と、2−7との対比より、化学強化ガラスの表面圧縮応力を大きくすることで、破片の最大重量をより軽くできた。
【符号の説明】
【0076】
1a:第1の化学強化ガラス
1b:第2の化学強化ガラス
1c:中間膜
2:金属枠
2a:突出部
3:押縁部材
4:タッピングネジ
5:溝部
6:シール材
10:透光性防音パネル
20:支柱
21、21a,21b:フランジ部
22:付勢具
30:道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる合せガラスであって、
前記合せガラスは、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され、
前記第1の化学強化ガラスの厚みが1.5〜4mmであり、
前記第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり、
前記中間膜の厚みが6.0mm以下であることを特徴とする合せガラス。
【請求項2】
前記化学強化ガラスの表面圧縮応力が350MPa以上である、請求項1に記載の合せガラス。
【請求項3】
前記中間膜の厚みが1.5〜3.1mmである、請求項1又は2に記載の合せガラス。
【請求項4】
前記中間膜が、ビニル系ポリマー、エチレン-ビニル系モノマー共重合体、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる一種以上で構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合せガラス。
【請求項5】
前記中間膜が、ビニル系ポリマー及び/又はエチレン-ビニル系モノマー共重合体で構成されている、請求項4に記載の合せガラス。
【請求項6】
道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルであって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の合せガラスと、該合せガラスの周辺を囲む金属枠とを備えることを特徴とする透光性防音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23912(P2013−23912A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159851(P2011−159851)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(599093524)旭ビルウォール株式会社 (19)
【Fターム(参考)】