説明

吊り下げ式作業床装置

【課題】 構造物の上部から垂下した索条を介して吊り下げられるゴンドラなどの作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えるなどの作業床の姿勢を簡単に調整することができる吊り下げ式作業床装置を提供すること。
【解決手段】 作業床である作業用ケージ2を2本の索条であるワイヤロープ1、1で吊り下げ、この作業床2内に回転軸11aを鉛直方向に配置した回転体11を搭載し、回転体11によるジャイロ効果により壁面側に荷重が加わること等による傾きを抑えるようにする。
これにより、吊り下げ式の作業床に設けた回転体の回転による反作用トルクを伝達させることで、回転体の回転軸に直交する方向のジャイロ効果を利用して作業床の姿勢を制御することができ、作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えることなどができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吊り下げ式作業床装置に関し、建築物などの構造物の上部から垂下したワイヤロープなどの索条を介してゴンドラなどの作業床で作業を行う場合に、作業床の姿勢をジャイロ効果で調整可能にしたもので、傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビル、船舶、発電所、タンク、煙突、そして橋梁などの構造物の壁面の構築や補修などの高所作業を安全かつ能率的に行うためワイヤロープなどの索条で吊り下げた作業者が搭乗するゴンドラや自動窓拭き装置などを搭載する作業床などの吊り下げ式作業床装置を用いることも多く、一定高さに設置したり、昇降機構で上下に昇降可能としたり、さらに必要に応じて上下の昇降だけでなく左右の横行も可能とすることを組み合わせて移動させることで広範囲の作業を行うようにしている。
【0003】
このような吊り下げ式の作業床装置には、仮設式や常設式として種々の形式のものが実用化されており、その1つは、構造物の上部である屋上などから昇降用ワイヤなどの索条を吊り下げ、作業床としての作業用ケージに搭載した昇降機構であるエンドレスワインダによって昇降用ワイヤに沿って作業用ケージを昇降可能とし、作業用ケージを任意の位置に昇降させて作業するようにしたり、例えば特許文献1などに開示されているように、左右の横行を組み合わせる場合には、構造物の上部である屋上などに横行レールを仮設し、この横行レールに沿って走行する2台のトロリーから昇降用ワイヤなどの索条を吊り下げるようにし、作業用ケージの昇降と、横行レールに沿ってトロリーを走行させることを組み合わせて作業するようにしたものがある。
【0004】
また、昇降だけを行う簡素化した吊り下げ式作業床装置として、特許文献2に開示されているように、構造物の上部である屋上などから昇降用ワイヤなどの1本の索条を吊り下げ、作業床としてのチェア式の作業用ケージに搭載した昇降機構であるエンドレスワインダによって昇降用ワイヤに沿ってチェア式の作業用ケージを昇降させてチェア(作業用ケージ)を任意の位置に昇降させて作業するものがある。
【0005】
さらに、常設式として多く採用されている形式に、例えば特許文献3に示すように、建築物の屋上部に走行可能な台車を設けておき、この台車に搭載した昇降機構を介してワイヤロープ等の索条を構造物の外側に突き出すアームの先端から吊り下げて作業床としての作業用ケージを連結し、この作業用ケージを台車内の昇降機構によるワイヤロープの巻き取り・繰り出しによって昇降させることと、台車の走行とを組み合わせて作業するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平2−30851号公報
【特許文献2】実開昭47−27229号公報
【特許文献2】特開2000−320133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの作業床装置の何れも作業床としての作業用ケージが屋上や屋上のトロリー、あるいは台車から吊り下げられた索条としてのワイヤロープを介して吊り下げられており、作業床の姿勢が変化するという問題がある。
【0007】
例えば図1中に示すように、索条として2本のワイヤロープ1、1で吊り下げた作業用ケージ2では、同図(b)中に示すように、作業のため構造物の外壁側に作業者が移動すると、壁面側に傾くことになり、作業がやり難くなるという問題があり、バランスウエイトやワイヤロープ1、1の吊り位置を移動させることなどで対応しなければならないという問題がある。
【0008】
また、チェア式の作業用ケージを用いる場合には、図2中に示すように、索条として1本のワイヤロープ1だけを用いてチェア式作業ケージ3を吊り下げるためワイヤロープを中心に作業用ケージ3自体が回転してしまうという問題があり、通常、足を壁面に着けながら昇降することで回転を防止するようにしているが、壁面がない部分では回転を防止することができないという問題がある。
【0009】
さらに、例えば図3中に示すように、台車のアーム4、4を介して索条としての2本のワイヤロープ1、1を吊り下げた作業用ケージ2では、作業時は、壁面との距離を一定に保ち、しかも作業用ケージ2が壁面と平行になるようにする必要があるが、建物の隅部では、作業用ケージ2が壁面に対して相対的に斜めになるという問題があり、壁面と平行にするために台車に旋回機構を設けたり、アーム4,4に旋回機構5を設けなければならないという問題がある。
【0010】
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、構造物の上部から垂下した索条を介して吊り下げられるゴンドラなどの作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えるなどの作業床の姿勢を簡単に調整することができる吊り下げ式作業床装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の吊り下げ式作業床装置は、構造物の上部から吊り下げられて作業に用いる吊り下げ式の作業床に、回転体の回転による反作用トルクを伝達可能に設置し、前記回転体の回転軸に直交する方向の前記作業床の姿勢を制御可能に構成したことを特徴とするものである。
【0012】
この吊り下げ式作業床装置によれば、構造物の上部から吊り下げられて作業に用いる吊り下げ式の作業床に設けた回転体の回転による反作用トルクを伝達させることで、回転体の回転軸に直交する方向のジャイロ効果を利用して作業床の姿勢を制御することができ、作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えることなどができるようになる。
【0013】
また、この発明の請求項2記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1記載の構成に加え、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を鉛直方向に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の傾きを抑制可能に構成したことを特徴とするものである。
【0014】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を鉛直方向に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の傾きを抑制可能に構成してあり、回転体によるジャイロ効果により壁面側に荷重が加わること等による傾きを抑えることができるようになる。
【0015】
さらに、この発明の請求項3記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1または2記載の構成に加え、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置して当該作業床に回転軸を傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の吊り下げ姿勢に対して鉛直軸回りの旋回を調整可能に構成したことを特徴とするものである。
【0016】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置して当該作業床に回転軸を傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の吊り下げ姿勢に対して鉛直軸回りの旋回を調整可能に構成してあり、回転体によるジャイロ効果で作業床を鉛直軸回りに旋回させることで、通常の旋回範囲を超えて向きを変えたり、旋回機構を用いることなく作業床を静止状態から向きを変えた姿勢にできるようにしたり、さらに壁面側に荷重が加わること等による傾きを抑えることができるようにしている。
【0017】
さらに、この発明の請求項4記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記2本の索条を、旋回アームの先端部を介して吊り下げて構成したことを特徴とするものである。
【0018】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記2本の索条を、旋回アームの先端部を介して吊り下げて構成してあり、旋回アームを介して吊り下げられる作業床においても回転体によるジャイロ効果で、荷重が加わることに等よる傾きを抑えるようにしたり、作業床を鉛直軸回りに旋回させて旋回アームの通常の旋回範囲を超えて向きを変えた姿勢にできるようにしている。
【0019】
また、この発明の請求項5記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1記載の構成に加え、前記作業床を、1本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置するとともに、傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の前記索条回りの方向を調整可能に構成したことを特徴とするものである。
【0020】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、1本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置するとともに、傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の前記索条回りの方向を調整可能に構成してあり、1本の索条で吊り下げるチェア式の作業床等を回転体のジャイロ効果で回転を抑制したり、作業床の向きを調整できるようにしている。
【0021】
さらに、この発明の請求項6記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記作業床を、当該作業床あるいは前記構造物に設置した巻き取り繰り出し装置で昇降可能に構成したことを特徴とするものである。
【0022】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、当該作業床あるいは前記構造物に設置した巻き取り繰り出し装置で昇降可能に構成してあり、一定高さに設置される作業床だけでなく、昇降される作業床のいずれでも回転体によるジャイロ効果を利用して、作業床の姿勢を制御することができ、作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えることなどができるようにしている。
【0023】
また、この発明の請求項7記載の吊り下げ式作業床装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記作業床を、有人作業用のゴンドラあるいは作業機搭載用架台で構成したことを特徴とするものである。
【0024】
この吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、有人作業用のゴンドラあるいは作業機搭載用架台で構成してあり、有人作業用のものや無人の作業機用の架台のずれでも荷重の移動や作業に伴う反力による姿勢の変化を抑制したり、向きを変えることができるようにしている。
【発明の効果】
【0025】
この発明の請求項1記載の吊り下げ式作業床装置によれば、構造物の上部から吊り下げられて作業に用いる吊り下げ式の作業床に設けた回転体の回転による反作用トルクを伝達可能に設置したので、回転体の回転軸に直交する方向のジャイロ効果を利用して作業床の姿勢を制御することができ、作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えることなどができる。
【0026】
また、この発明の請求項2記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を鉛直方向に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の傾きを抑制可能に構成したので、回転体によるジャイロ効果により壁面側に荷重が加わること等による傾きを抑えることができる。
【0027】
さらに、この発明の請求項3記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置して当該作業床に回転軸を傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の吊り下げ姿勢に対して鉛直軸回りの旋回を調整可能に構成したので、回転体によるジャイロ効果で作業床を鉛直軸回りに旋回させることで、通常の旋回範囲を超えて向きを変えたり、旋回機構を用いることなく作業床を静止状態から向きを変えた姿勢にすることができ、さらに壁面側に荷重が加わること等による傾きを抑えることができる。
【0028】
さらに、この発明の請求項4記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記2本の索条を、旋回アームの先端部を介して吊り下げて構成したので、旋回アームを介して吊り下げられる作業床においても回転体によるジャイロ効果で、荷重が加わることによる傾きを抑えることができ、作業床を鉛直軸回りに旋回させて旋回アームの通常の旋回範囲を超えて向きを変えることができる。
【0029】
また、この発明の請求項5記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、1本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置するとともに、傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の前記索条回りの方向を調整可能に構成したので、1本の索条で吊り下げるチェア式等の作業床を回転体のジャイロ効果で回転を抑制したり、作業床の向きを調整することができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項6記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、当該作業床あるいは前記構造物に設置した巻き取り繰り出し装置で昇降可能に構成したので、一定高さに設置される作業床だけでなく、昇降される作業床のいずれでも回転体によるジャイロ効果を利用して、作業床の姿勢を制御することができ、作業床の傾きや回転を抑えたり、逆に積極的に回転させて向きを変えることなどができる。
【0031】
また、この発明の請求項7記載の吊り下げ式作業床装置によれば、前記作業床を、有人作業用のゴンドラあるいは作業機搭載用架台で構成したので、有人作業用や無人の作業機搭載用のずれの作業床でも荷重の移動や作業に伴う反力による姿勢の変化を抑制したり、通常の範囲を越えて向きを変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の吊り下げ式作業床装置の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1はこの発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および原理説明図である。
この吊り下げ式作業床装置10では、2本の索条である昇降用ワイヤで吊り下げられる作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージの傾きを抑制しようとするものであり、作業床であるゴンドラ装置の作業用ケージとしては、すでに図4および図6で説明した屋上などに仮設される横行レールを走行するトロリーあるいは屋上などから直接吊り下げられる2本の昇降用ワイヤに作業用ケージ内のエンドレスワインダなどの昇降機構を用いて昇降するゴンドラ装置の作業用ケージや屋上などの台車内のドラム式などの昇降機構で巻き取り・繰り出しされる2本の昇降用ワイヤをアームを介して垂下させて昇降させるゴンドラ装置の作業用ケージ、あるいは昇降機構のない所定高さに設置する作業用ケージのいずれにも適用できるものである。
【0033】
この吊り下げ式作業床装置10では、2本の索条としてワイヤロープ1、1に作業床としての作業用ケージ2が吊り下げられており、この作業用ケージ2内に高速回転する回転体11を備えるジャイロ機構12が設置され、回転体11の高速回転による反作用トルクを作業用ケージ2に伝達可能とするように設置してある。
【0034】
すなわち、この吊り下げ式作業床装置10では、ジャイロ機構12の回転体11を高速回転させることによるジャイロ効果により作業用ケージ2の傾きを抑制するため、回転体11の回転軸11aが鉛直方向となるよう例えば、吊り下げ状態の作業用ケージ2の左右2ヶ所に回転体11を備えるジャイロ機構12が搭載され、回転軸11aが作業用ケージ2の床面と垂直に配置してあり、回転軸11aは作業用ケージ2が吊り下げられていることでその回転軸11aを傾けることができるようになっている。
【0035】
この高速回転する回転体11としては、例えばモータの回転子を利用して構成することができ、固定子を介して作業用ケージ2に反作用トルクを伝達するようにすれば良い。
【0036】
このように構成した吊り下げ式作業床装置10では、2本の索条であるワイヤロープ1、1の吊り点を結ぶ線上付近に荷重がかかっても作業用ケージ2は略水平状態を維持できるが、作業用ケージ2内から壁面に対する作業のため壁面側へ荷重が移動すると、図1(b)に示すように、作業用ケージ2が前側に傾くことになる。
そこで、作業用ケージ2に搭載したジャイロ機構12の回転体11を高速回転させる。
【0037】
すると、作業用ケージ2の床面に対して垂直に回転軸11aを設置してある回転体11の回転による反作用トルクが吊り下げ状態の作業用ケージ2に作用し、この反作用トルクが回転体11の回転軸11aに対して直交する方向に作用するので、作業用ケージ2の傾きを戻すように作用する。
これにより、作業用ケージ2の傾きを抑制することができる。
【0038】
したがって、バランスウエイトを搭載したり、ワイヤロープ1、1の吊り点を移動させて傾きを小さくするようにする必要がなく、回転体11を高速回転するだけで傾きを抑制して作業用ケージ2の姿勢を制御することができる。
なお、作業用ケージの傾きの抑制量の制御は、回転体の大きさ、回転速度等を適宜設定することで定められる。
【0039】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図2により説明する。
図2はこの発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのチェア式ゴンドラ装置のチェア式作業ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および原理説明図である。
【0040】
この吊り下げ式作業床装置20では、1本の索条としてのワイヤロープ1で吊り下げられる作業床としてのチェア式作業ケージ3のワイヤロープ1を中心とする回転(自転)の防止およびワイヤロープ1を中心とするチェア式作業ケージ3の向きの調整を行うことができるようにするものであり、高速回転する回転体のジャイロ効果による反作用トルクを利用する。
【0041】
この吊り下げ式作業床装置20では、1本の索条としてワイヤロープ1に作業床としてのチェア式作業ケージ3が吊り下げられており、このチェア式作業ケージ3内に高速回転する回転体21を備えるジャイロ機構22が回転体21の高速回転による反作用トルクをチェア式作業ケージ3に伝達できるように設置され、水平方向に配置した回転体21の回転軸21aを左右に傾けることができるように傾動機構を介してチェア式作業ケージ3に搭載してある。
【0042】
この高速回転する回転体21としては、例えばモータの回転子を利用して構成することができ、固定子を傾動機構を介してチェア式作業ケージ3に反作用トルクを伝達できるようにすれば良く、例えば傾動機構を円弧状のガイドとこれに沿って移動する2つのスライダとで構成し、回転軸21aをスライダで支持するようにする。
【0043】
このように構成した吊り下げ式作業床装置20では、1本の索条であるワイヤロープ1を中心にチェア式作業ケージ3が自転しようとするが、図2(b)に示すように、チェア式作業ケージ3が右側に向きを変えようとする場合には、搭載したジャイロ機構22の回転体21を高速回転させた状態で、回転軸21aを左側に傾ける。
【0044】
すると、チェア式作業ケージ3に対して水平に回転軸21aを設置した回転体21の回転軸21aが左側に傾くことで、回転による反作用トルクが1本のワイヤロープ1で吊り下げ状態のチェア式作業ケージ3に作用し、この反作用トルクが回転体21の回転軸21aに対して直交する方向に作用するので、チェア式作業ケージ3のワイヤロープ1を中心として右側への回転を戻すように作用し、チェア式作業ケージ3の向きを変えることができる。
【0045】
また、逆に、チェア式作業ケージ3が左側に向きを変えようとする場合には、搭載したジャイロ機構22の回転体21を高速回転させた状態で、回転軸21aを右側に傾ける。
【0046】
すると、同様にして、チェア式作業ケージ3に対して水平に回転軸21aを設置した回転体21の回転軸21aが右側に傾くことで、回転による反作用トルクが1本のワイヤロープ1で吊り下げ状態のチェア式作業ケージ3に作用し、この反作用トルクが回転体21の回転軸21aに対して直交する方向に作用するので、チェア式作業ケージ3のワイヤロープ1を中心として左側への回転を戻すように作用し、チェア式作業ケージ3の向きを変えることができる。
【0047】
これにより、チェア式作業ケージ3の自転を抑制することができるとともに、チェア式作業ケージ3の向きを調整する方向制御に利用することができる。
【0048】
したがって、壁面に足をつきながら自転を防止するようにする必要もなく、ジャイロ機構22の回転体21の回転軸21aを傾けることで調整することができ、特に壁面がない部分での姿勢を安定させることができる。
なお、チェア式作業ケージの自転防止の抑制量や方向調整の制御は、回転体の大きさ、回転速度等を適宜設定することで定められる。
【0049】
次に、この発明のさらに他の一実施の形態について、図3により説明する。
図3はこの発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および平面状態の原理説明図である。
【0050】
この吊り下げ式作業床装置30では、2本の索条である昇降用ワイヤで吊り下げられる作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージの旋回位置を自然な吊り下げ位置を越えて変えることができるようにしようとするものであり、作業床であるゴンドラ装置の作業用ケージとしては、すでに図4および図6で説明した屋上などに仮設される横行レールを走行するトロリーあるいは屋上などから直接吊り下げられる2本の昇降用ワイヤに作業用ケージ内のエンドレスワインダなどの昇降機構を用いて昇降するゴンドラ装置の作業用ケージや屋上などの台車内のドラム式などの昇降機構で巻き取り・繰り出しされる2本の昇降用ワイヤをアームを介して垂下させて昇降させるゴンドラ装置の作業用ケージ、あるいは昇降機構のない所定高さに設置する作業用ケージのいずれにも適用できるものである。
【0051】
この吊り下げ式作業床装置30では、2本の索条としてのワイヤロープ1が固定式や台車搭載式、あるいはこれらに旋回機構を介して取り付けられたアーム4、4の先端から垂下され、このワイヤロープ1、1に作業床としての作業用ケージ2が吊り下げられており、この作業用ケージ2の例えば中央部に高速回転する回転体31を備えるジャイロ機構32が設置され、回転体31の高速回転による反作用トルクを作業用ケージ2に伝達可能として、壁面と平行な自然位置を越えて斜めに位置させることができるようにする。
【0052】
すなわち、この吊り下げ式作業床装置30では、ジャイロ機構32の回転体31を高速回転させることによるジャイロ効果により作業用ケージ2を鉛直軸回りに旋回させるため、回転体31の回転軸31aが水平方向に配置した回転体31の回転軸31aを左右に傾けることができるように傾動機構を介して作業用ケージ2に搭載してある。
【0053】
この高速回転する回転体31としては、例えばモータの回転子を利用して構成することができ、固定子を傾動機構を介して作業用ケージ2に反作用トルクを伝達できるようにすれば良く、例えば傾動機構を円弧状のガイドとこれに沿って移動する2つのスライダとで構成し、回転軸31aをスライダで支持するようにする。
【0054】
このように構成した吊り下げ式作業床装置30では、2本の索条であるワイヤロープ1、1で吊り下げられた作業用ケージ2を壁面に平行な自然状態から鉛直軸回りに旋回させて壁面に対して斜めにしようとする場合には、図3(b)に平面状態を示すように、作業用ケージ2を鉛直軸を中心に右に向きを変えようとする場合には、搭載したジャイロ機構32の回転体31を高速回転させた状態で、回転軸31aを右側に傾ける。
【0055】
すると、作業用ケージ2に対して水平に設置した回転軸31aが右側に傾くことで、回転体31の反作用トルクが回転体31の回転軸31aに対して直交する方向に作用するので、回転による反作用トルクが作業用ケージ2の鉛直軸に対して右に向けるように作用し、作業用ケージ2が2本のワイヤロープ1、1による吊り下げ状態に対して右に旋回させてバランスする状態に保持され、壁面に対して斜めの状態となる。
【0056】
また、逆に、作業用ケージ2を鉛直軸を中心に左に向きを変えようとする場合には、搭載したジャイロ機構32の回転体31を高速回転させた状態で、回転軸31aを左側に傾ける。
【0057】
すると、作業用ケージ2に対して水平に設置した回転軸31aが左側に傾くことで、回転体31の反作用トルクが回転体31の回転軸31aに対して直交する方向に作用し、作業用ケージ2が鉛直軸に対して左を向くように作用し、作業用ケージ2が2本のワイヤロープ1、1による吊り下げ状態に対して左に旋回してバランスする状態に保持され、壁面に対して斜めの状態となる。
【0058】
これにより、作業用ケージ2を吊り下げ状態や旋回固定状態のアーム4、4による吊り下げ状態の作業用ケージ2の向きを自然状態を超えて旋回した状態に向きを調整することができる。
【0059】
したがって、固定吊り元から吊り下げた作業用ケージを鉛直軸回りに多少旋回させて壁面に対して斜めにすることができ、旋回機構を介して吊り下げた作業用ケージでは、旋回範囲を越えて多少旋回させて壁面に対して斜めにすることができる。
【0060】
なお、作業用ケージの自然な吊り下げ状態を超える旋回量や方向調整の制御は、回転体の大きさ、回転速度等を適宜設定することで定められる。
また、上記各実施の形態では、作業者が搭乗する有人式の作業床の場合を例に説明したが、自動作業機を搭載する作業機搭載用架台などに適用することができ、傾きの抑制や姿勢の調整、旋回範囲を超えた旋回などを行うようにしても良い。
【0061】
さらに、上記各実施の形態では、傾きの抑制、姿勢の調整および旋回範囲を超えた旋回などを行う場合についてそれぞれを単独で設置する場合を例に説明したが、これらを組み合わせて作業床の姿勢を調整制御するようにしても良く、一層安定した姿勢を確保し、広範囲の作業ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および原理説明図である。
【図2】この発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのチェア式ゴンドラ装置のチェア式作業ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および原理説明図である。
【図3】この発明の吊り下げ式作業床装置を作業床としてのゴンドラ装置の作業用ケージに適用した一実施の形態にかかる概略構成図および原理説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ワイヤロープ(昇降用ワイヤ、索条)
2 作業用ケージ(作業床)
3 チェア式作業ケージ(作業床)
4 アーム
5 旋回機構
10、20,30 吊り下げ式作業床装置
11、21,31 回転体
11a、21a、31a 回転軸
12,22,32 ジャイロ機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上部から吊り下げられて作業に用いる吊り下げ式の作業床に、回転体の回転による反作用トルクを伝達可能に設置し、前記回転体の回転軸に直交する方向の前記作業床の姿勢を制御可能に構成したことを特徴とする吊り下げ式作業床装置。
【請求項2】
前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を鉛直方向に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の傾きを抑制可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の吊り下げ式作業床装置。
【請求項3】
前記作業床を、2本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置して当該作業床に回転軸を傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の吊り下げ姿勢に対して鉛直軸回りの旋回を調整可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の吊り下げ式作業床装置。
【請求項4】
前記2本の索条を、旋回アームの先端部を介して吊り下げて構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吊り下げ式作業床装置。
【請求項5】
前記作業床を、1本の索条で吊り下げて構成し、前記回転体の回転軸を水平方向に配置するとともに、傾動可能に配置する一方、前記姿勢の制御として当該回転体の回転により前記作業床の前記索条回りの方向を調整可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の吊り下げ式作業床装置。
【請求項6】
前記作業床を、当該作業床あるいは前記構造物に設置した巻き取り繰り出し装置で昇降可能に構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吊り下げ式作業床装置。
【請求項7】
前記作業床を、有人作業用のゴンドラあるいは作業機搭載用架台で構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吊り下げ式作業床装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−257766(P2006−257766A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77546(P2005−77546)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000229689)日本ビソー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】