説明

吊り扉支持構造

【課題】 ガイドレールに吊り掛けて左右方向にスライド開閉させ得るようにした吊り扉支持構造において、吊り扉側にローラを単にガイドレールに乗せ掛けただけのものでは、該ローラがガイドレールから外れるおそれがある。
【解決手段】 建物の出入口3の上部に横設したガイドレール2には、上面側に上レール21と下面側に下レール22とを設け、吊り扉1には、上レール21の上部に乗せる上ローラ11と下レール22に下方から衝合する下ローラ12とを取付けているとともに、ガイドレール2を上ローラ11と下ローラ12で上下から挟持した状態で吊り扉1をスライドさせるようにしていることにより、比較的簡単な構成で吊り扉1を確実に且つ安定状態で支持できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、左右方向にスライド開閉する吊り扉の支持構造に関し、特にガイドレールに沿って転動する吊り扉のローラが外れるのを防止し得るようにした吊り扉支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
倉庫等の建物の出入口には、左右方向にスライド開閉する吊り扉を設けたものがある。この種の吊り扉支持構造の一般例として、図5に示すものがあるが、この図5の吊り扉支持構造では、出入口3上の壁面4にガイドレール2を水平方向に向けて固定し、吊り扉1の上部に取付けたローラ11をレール部21上に乗せ掛けて、吊り扉1をレール部21に沿ってスライド開閉させ得るようにしている。
【0003】
ところで、図5のようにローラ11を単にレール部21上に乗せ掛けただけの吊り扉支持構造では、該ローラ11がレール部21から外れて吊り扉1が脱落する危険がある。
【0004】
又、吊り扉に取付けたローラがレール部から脱落するのを防止し得るようにした公知例として、例えば特許文献1(特開平7−238735号公報)に示されるものがあるが、この特許文献1の吊り扉支持構造は、概略図6に示したものである。
【0005】
この図6の吊り扉支持構造は、壁面4に沿ってガイドレール2を水平方向に向けて固定し、吊り扉1の上部に取付けたローラ11をガイドレール2のレール部21上に乗せ掛けるとともに、ローラ走行部の上部にローラ11がレール部21から脱落するのを防止するための別部材からなる脱落防止板8を設けている。この脱落防止板8は、その先端部8aがローラ11上に所定小幅だけ被さるように設置されている。又、この脱落防止板8は、固定金具9及びビスを使用してガイドレール2に固定している。
【0006】
【特許文献1】特開平7−238735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図6に示す公知の吊り扉支持構造では、レール部21上を走行するローラ11上に脱落防止板8を取付けているが、次のような問題があった。
【0008】
(1) 脱落防止板8は、ローラ11の上面に対して若干隙間ではあるが離間しているので、通常時には該ローラ11を保持する機能がなく、吊り扉1がガタついたり前後に揺動したりする。
【0009】
(2) 脱落防止板8の先端部8aがローラ11上に被されているが、その被されている幅は小幅であるので、吊り扉1が大きく傾動するとローラ11が鎖線図示(符号11′)するように脱落防止板8から外れるおそれがある。
【0010】
(3) 脱落防止板8が別部材であり、且つ固定金具9を用いて固定されているので、構造が複雑である。
【0011】
そこで、本願発明は、上記した各従来例の吊り扉支持構造の問題点に鑑み、比較的簡単な構成でローラの脱落を確実に防止でき、且つ吊り扉がガタついたり前後に揺動したりするのを防止できるようにした吊り扉支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、建物の出入口の上部に横設したガイドレールに支持されて左右方向にスライド開閉する吊り扉の支持構造を対象にしている。
【0013】
そして、本願の吊り扉支持構造は、次のように構成されている。
【0014】
先ず、ガイドレールには、その上面側に上レールと下面側に下レールとをそれぞれ設けている。即ち、上レールと下レールとは、1本のガイドレールの上下に形成している。
【0015】
又、吊り扉には、上レールの上部に乗せ掛ける上ローラと下レールに下方から衝合する下ローラとを取付けている。上ローラと下ローラは、それぞれ複数個づつ(通常は2個ずつ)設けられている。
【0016】
そして、この吊り扉支持構造では、ガイドレールを上ローラと下ローラで上下から挟持した状態で吊り扉をガイドレールに沿ってスライドさせるようにしている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の吊り扉支持構造では、次のような効果がある。
【0018】
先ず、ガイドレールを上ローラと下ローラで上下から挟持しているので、ガイドレールを上下各ローラで確実に保持できる。従って、吊り扉がガタついたり前後に揺動しにくくなり、且つ各ローラがガイドレールから外れる(吊り扉が脱落する)おそれがなくなるという効果がある。
【0019】
又、1本のガイドレールに、上ローラ乗せ掛け用の上レールと下ローラ衝合用の下レールとをそれぞれ形成しているので、1本のガイドレールを上下各ローラのガイドとして共用でき、上下両ローラを用いたものであってもレール側の部品点数を少なくできる(1本のガイドレールでよいので構成が簡単になる)という効果がある。
【実施例】
【0020】
図1〜図4を参照して、本願実施例の吊り扉支持構造を説明すると、この実施例の吊り扉支持構造は、例えば冷蔵倉庫のような気密保持が必要な建物の出入口を開閉するのに適したものである。尚、本願の吊り扉支持構造は、気密保持の必要がない通常の出入口開閉用にも使用できる。
【0021】
この実施例の吊り扉支持構造は、建物の出入口3の上部の壁面4に所定長さの1本のガイドレール2を横設するとともに、該ガイドレール2に吊り扉1を吊持させた状態で該吊り扉1を左右にスライド開閉させ得るように構成されている。尚、図1〜図3は、閉扉状態を示し、図4は開扉状態を示している。
【0022】
ガイドレール2は、レール取付台20を介して横向き水平姿勢で壁面(室内側の壁面)4に固定されている。そして、このガイドレール2には、図3に拡大図示するように、上面側に上レール21と下面側に下レール22とを形成している。尚、この実施例では、該ガイドレール2は、図3に示すように、その下面側(下レール22側)が壁面4側に近ずくような傾斜状態で設置されている。
【0023】
吊り扉1には、その左右各端部の上部にそれぞれローラ取付板10,10が立設されており、該各ローラ取付板10,10の側面にそれぞれ上ローラ11と下ローラ12を1個ずつ取付けている。従って、吊り扉1の上部各端位置には、上ローラ11と下ローラ12を1組とする組ローラがそれぞれ設けられている。尚、この実施例では、上ローラ11,11が大径(例えば直径が60mm)で下ローラ12,12が小径(例えば直径が25mm)のものを使用している。
【0024】
そして、この吊り扉1は、ガイドレール2に対して、各上ローラ11,11を上レール21上に乗せ掛ける一方、各下ローラ12,12を下レール22の下面に衝合させた状態で支持させている。従って、吊り扉1は、各組の上ローラ11と下ローラ12とでそれぞれガイドレール2を上下から挟持した状態で支持されている。尚、上下の各ローラ11,12は、中央部外周に凹溝を形成したものを使用し、該各凹溝内にそれぞれ上レール21及び下レール22を嵌合させているので、上下各ローラ11,12が上レール21及び下レール22に対して前後方向に位置ずれすることがない。
【0025】
そして、この吊り扉支持構造では、上下各ローラ11,12(2組ある)がガイドレール2を上下から挟持しているので、上ローラ11,11がガイドレール2(上レール21)から外れることがなく、さらに吊り扉1が上下及び前後にガタつくことがない。又、吊り扉1は、図1に示す閉扉位置と図4に示す開扉位置との間で左右にスライドさせ得るようになっているが、該吊り扉1の開閉時には、上下各ローラ11,12(2組ある)がガイドレール2を上下から挟持した状態で移動するので、吊り扉1を安定した姿勢でスライドさせることができる。又、ガイドレール2は、1本で上ローラ11と下ローラ12の各ガイドに共用しているので、上下のローラ11,12を使用したものであっても、レール部材の部品点数を少なくできる。
【0026】
この実施例の吊り扉支持構造では、図1〜図3に示す閉扉状態において吊り扉1で出入口3を密閉し得るようになっている。具体的には、次のように構成されている。
【0027】
先ず、出入口3の開口縁部(上辺部と左右各側辺部)の室内側壁面には、図2及び図3に示すように、それぞれシール材5,5,5を取付けている。この出入口開口縁部の各シール材5は、コ形に連続しており、且つ吊り扉1の外周枠体に対応する形状に配置されている。又、吊り扉1の底面には、閉扉時(図1)に地面Gに接地するシール材13が取付けられている。
【0028】
他方、ガイドレール2は、符号2A,2B部分で、それぞれ閉扉側に向けて僅かに下降傾斜(図1及び図4参照)しているとともに壁面4側に近接する方向に向けて僅かに傾斜している。
【0029】
そして、図4に示す開扉状態では、吊り扉1がガイドレール2の高位置側に位置していて、吊り扉下端部のシール材13が地面Gから僅かに離間しており、且つ吊り扉1がガイドレール2の壁面離間側(図2の右側部分)に位置していて、図示していないが壁面4から僅かに離間している。他方、図1及び図2に示す閉扉状態では、吊り扉1がガイドレール2の低位置側に位置していて、吊り扉下端部のシール材13が地面Gに接地する(図1)とともに、吊り扉1がガイドレール2の壁面近接側に位置していて、吊り扉1の外周枠体が壁面4の各シール材5(上辺部と左右各側辺部の三方にある)に接触するようになる。従って、閉扉状態では、出入口3の開口縁部を吊り扉1で気密的に閉止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願実施例の吊り扉支持構造の閉扉状態の正面図である。
【図2】図1の吊り扉支持構造の平面図である。
【図3】図1のIII−III拡大断面図である。
【図4】図1の吊り扉支持構造の開扉状態の正面図である。
【図5】従来の一般的な吊り扉支持構造の一部断面図である。
【図6】公知(特許文献1)の吊り扉支持構造の一部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1は吊り扉、2はガイドレール、3は出入口、4は壁面、11は上ローラ、12は下ローラ、21は上レール、22は下レールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出入口(3)の上部に横設したガイドレール(2)に支持されて左右方向にスライド開閉する吊り扉の支持構造であって、
前記ガイドレール(2)には、上面側に上レール(21)と下面側に下レール(22)とを設け、
吊り扉(1)には、前記上レール(21)の上部に乗せ掛ける上ローラ(11,11)と前記下レール(22)に下方から衝合する下ローラ(12,12)とを取付けているとともに、
前記ガイドレール(2)を前記上ローラ(11,11)と前記下ローラ(12,12)で上下から挟持した状態で吊り扉(1)をスライドさせるようにしている、
ことを特徴とする吊り扉支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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