説明

吊り金具の取付構造及びその取付方法

【課題】吊り金具をデッキプレートの屋根側から同プレートに設けた設置孔へ挿入して取り付ける効果的な吊り金具の取付構造及び取付方法を提供する。
【解決手段】デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両端から側面部を備える凸峰部が形成され、対峙する両側面部には対称となる少なくとも一対の顎部が設けられ、吊り金具は、雄ねじ又は下方に開口部を有しその内周面に雌ねじが形成された吊り部と、吊り部の頂部に連結された延びる水平拡張部と、同水平拡張部両端から下方に延び少なくとも一対の段部を有する抱持部とでなり、上記吊り金具の吊り部がデッキプレートに設けられた設置孔へ上方位置から挿入され、抱持部の一対の段部が凸峰部の一対の顎部を抱持して取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける取付構造及び取付方法の技術分野に属し、更に云うと、吊り金具をデッキプレートの上方位置(屋根側)から同プレートに設けた設置孔へ挿入して取り付ける構成とした吊り金具の取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式屋根及び湿式屋根を構成するデッキプレートには、天井部材を吊り下げ支持する吊り金具が取り付けられている。例えば、デッキプレートの上方位置(屋根側)から吊り金具を取り付ける取付構造及び取付方法が数多く実用に供されており、下記の特許文献1、2に開示されている。
前記特許文献1には、図15A、Bに示すように、吊り金具15は、先端にフック部、基端に雄ねじが形成された係止部150aを有する吊り部150と、同吊り部150を貫通する押さえ板151、収縮可能なアコーディオン状の筒体を有する締結部152とで構成されている。上記吊り金具15は、デッキプレート153に設けられた設置孔へ、その吊り部150を先端から挿入したのち、同吊り部150を上方へ引っ張り上げると前記アコーディオン状の締結部152は伸張する。その状態で引っ張りをやめると吊り部150の係止部150aがアコーディオン状の締結部152の各上面を押圧して吊り金具15をデッキプレート153へ取り付けて固定するので、ボルト結合や工具による面倒な作業が無くとも容易に取付作業が行える点が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、図16、図17に示すように、吊り金具16は、ねじ孔160aが形成された筒体160と、その上部に形成された笠状ヘッド161で成るインナ部材162と、デッキプレート163の設置孔163a縁近傍に載る顎状ストッパー164と、スリット165aにより拡股可能な係止レグ165とを備えるアウタ部材166とで構成されている。図17Aに示すように、前記アウタ部材166にインナー部材162を装着し、上記設置孔163aへアウタ部材166の係止レグ165を顎状ストッパ164に当たるまで挿入して嵌着し、図17Bに示すように、インナ部材162の笠状ヘッド161を叩くと、インナ部材162の筒体160が設置孔163aを貫通しアウタ部材166の係止レグ165が拡股されてデッキプレート163を挟み込むことで、吊り金具16をデッキプレート163へ取り付ける(図17C)ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−27383号公報
【特許文献2】特開2006−26916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1、2に開示された先行技術には、幾つかの問題点がある。
先ず、特許文献1記載の吊り金具15は、図15に示す通り吊り金具15を構成する吊り部150の基端がデッキプレート153の上面側へ突出している。しかも、図示例では、デッキプレート153の凸部(山部)に吊り金具15が取り付けられている。したがって、特に乾式屋根においては、デッキプレート153の上面に断熱材や防水シートなどの屋根部材が設置されるが、その際に、ボルトが邪魔で設置することが困難になるし、ボルトを切るのは非常に面倒である。
更に、吊り金具15は、ボルト接合せず単に締結部152の収縮により固定する構成である。つまり、上下方向の拘束力のみ期待した構成である。したがって、乾式屋根の場合にはコンクリート打設が無いため、水平方向の揺れや振動に対する拘束力が弱いため大きな揺れが生じた際には不安定になる。
【0006】
また、特許文献2に開示された吊り金具の取付構造は、吊り金具16をその笠状ヘッド161を叩き込んでデッキプレート163へ取り付けるため、デッキプレート163の上面へ吊り金具16の部材が突出する虞がない点は認められる。しかし、この吊り金具16の固定は、単に叩き込みによりデッキプレート163を挟む構成であるため固定力に乏しい。したがって、吊り金具16の取付後、同吊り金具16の筒体160内へ天井部材の吊りボルトをねじ込む際に、共回りが生じてしまう。この共回りを防止するためには、吊り金具16をビス止めなどにより固定する面倒な作業が必要となっていた。
以上、特許文献1、2の問題点を挙げたが、要するに乾式屋根におけるデッキプレートと吊り金具の効果的な取付構造及び取付方法は開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、乾式屋根を構成するデッキプレートへ吊り金具を効果的に取付る構造及び取付方法を提供することであり、特に吊り金具が屋根部材の設置作業に支障をきたすことが無く、吊り金具をデッキプレートへ簡易な方法で確実に取り付けられて、共回りを防止できる吊り金具の取付構造及び取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る吊り金具の取付構造は、
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付構造であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部が形成され、両側面部には対称形状となる顎部が設けられていること、
前記吊り金具は、前記天井部材を連結するネジ部を有する吊り部と、同吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延びる水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部とで成ること、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部に設けられた設置孔へ吊り部が上方位置から挿入されてデッキプレートの下方へ突き出され、前記抱持部が凸峰部の両側面の顎部を抱持して取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した吊り金具の取付構造において、
吊り金具は、水平拡張部が凸峰部の長さ方向に対してたすき掛けの如く片傾斜となる配置位置で、抱持部と凸峰部の顎部とを嵌め合わせる構成とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した吊り金具の取付構造において、
吊り金具の水平拡張部には、弾性力を発揮する弾性手段が設けられており、同弾性手段の弾性力により凸峰部の顎部を抱持することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1又は3に記載した吊り金具の取付構造において、
水平拡張部は、平面視がX字形状に配置されたアーム材と、同アーム材を回動可能に連結する支持材とで成り、
前記アーム材は、取り付けられたバネ材の弾性力により少なくとも片側の対峙するアーム材同士の距離が可変可能であり、
前記バネ材の弾性力により、抱持部が凸峰部の顎部を抱持していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載した発明に係る吊り金具の取付方法は、
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付方法であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部を形成し、両側面部に対称形状となる顎部を設けており、
前記吊り金具は、前記天井部材を連結するネジ部を有する吊り部と、同吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延びた水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲した抱持部とで成り、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部に設けた設置孔へ吊り部を上方位置から挿入し、水平拡張部を吊り部を中心に凸峰部の長さ方向に対してたすき掛けの如く片傾斜となる配置位置に水平回動させて、抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載した発明に係る吊り金具の取付方法は、
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付方法であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部を形成し、両側面部に対称形状とする顎部が設けており、
前記吊り金具は、雄ねじ又は下方に前記天井部材を連結する開口部を有しその内周面に雌ねじ形成した吊り部と、吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延び、その平面視がX字形状に配置されたアーム材と、同アーム材を回動可能に連結する支持材とで成る水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部とで成り、
前記吊り金具は、少なくとも片側の対峙するアーム材同士の距離を可変させるバネ材を備えており、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部の中央位置に設けた設置孔へ吊り部を上方位置から挿入し、前記対峙するアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により縮めて、前記抱持部を凸峰部の顎部へ配置し、再びアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により戻して吊り金具の抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜6に記載した吊り金具の取付構造及び取付方法は、以下の効果を奏する。
本発明の乾式屋根を構成するデッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部が形成され、両側面部に対称形状とする顎部を設けた構成とされている。また、吊り金具は、前記天井部材を連結するネジ部を有する吊り部と、同吊り部の頂部と連結され、同吊り部と直交する方向へ延びる水平拡張部と、同水平拡張部両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部とで構成されている。
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部の設置孔へ吊り部が上方位置から挿入されてデッキプレートの下方へ突き出され、前記抱持部が凸峰部の顎部を抱持して、吊り金具をデッキプレートへ取付ける構造である。
この取付構造は、デッキプレートの上面へ部材が突出することが一切無い構造である。つまり、吊り部の頂部には、水平拡張部が設けられているため、天井部材が吊り金具の上方へ突出することがなくフラットな上面を実現できる。したがって、デッキプレートの上面に断熱材や防水シートから成る屋根材を設置する際に吊り金具が支障を及ぼすことがなく乾式屋根において有効な取付構造及び取付方法である。また、吊り金具は、その抱持部がデッキプレートの凸峰部の顎部へきっちり嵌り合って固定する構成であるため、面倒なボルト接合やたたき込み作業をせず非常に簡易な方法で取り付けることが可能である。
【0015】
また、請求項2及び5によれば、吊り金具は、その水平拡張部が凸峰部の長さ方向に対してたすき掛けの如く片傾斜の配置位置に水平回動されて、凸峰部の顎部に取り付けられる構成である。つまり、水平拡張部の全長は凸峰部の幅よりも長い。したがって、吊り金具は、その吊り部をデッキプレートの凸峰部の設置孔へ上方位置から挿入し、前記水平拡張部を吊り部を中心に水平回動させて、抱持部と凸峰部の顎部とを嵌め合わせてデッキプレートへ取り付けることができる。つまり、吊り金具は、吊り部を水平拡張部の最大長さを得られる角度で挿入し、前記抱持部と顎部の嵌め合わせ位置で吊りボルトの螺着方向へ水平回動するのみで両者をきっちりと取付られるので非常に簡単である。のみならず、両者がきっちり嵌め合わさるので、天井部材を吊り部へ螺着する際、共回することを確実に防止できる。
【0016】
更に、請求項4及び6によれば、吊り金具の水平拡張部は、平面視がX字形状に配置されたアーム材と、同アーム材を回動可能に連結する支持材とで成り、少なくとも片側の対峙するアーム材同士の距離を一定の範囲内で可変可能に取り付けられたバネ材の弾性力により抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせる構造である。
したがって、上記吊り金具の吊り部をデッキプレートの凸峰部の設置孔へ上方位置から挿入し、前記対峙するアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により縮めて、前記抱持部を凸峰部の顎部へ配置し、再びアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により戻して吊り金具の抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせている。つまり、バネの反発力を効果的に利用して取付作業が簡易にならしめるのみならず、その反発力により天井部材を螺着する際に共回りを防止できるし、浮き上がりを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る吊り金具の取付構造を示す側面図である。
【図2】Aは吊り金具の平面図である。BはAの正面図である。
【図3】吊り金具をデッキプレートへ取り付ける概要を示す平面図である。
【図4】A−Cは、吊り金具をデッキプレートへ取り付ける概要を示す側面図である。
【図5】本発明に係る吊り金具の取付構造及び取付方法を実施し乾式屋根を完成させた状態の一例を示した側面図である。
【図6】本発明の実施例2の取付構造を示す側面図である。
【図7】Aは、図6の実施例の吊り金具の平面図である。BはAの正面図である。CはAの側面図である。
【図8】実施例2における吊り金具をデッキプレートへ取り付ける概要を示す平面図である。
【図9】本発明の実施例3の取付構造を示す側面図である。
【図10】実施例3における吊り金具をデッキプレートへ取り付ける概要を示す平面図である。
【図11】本発明の実施例4の取付構造を示す側面図である。
【図12】Aは図11の図6の実施例の吊り金具の平面図である。BはAの正面図である。CはAの側面図である。
【図13】実施例4における吊り金具をデッキプレートへ取り付けた状態を示す平面図である。
【図14】A〜Cは、図12に示した吊り金具をデッキプレートへ取り付ける概要を示す側面図である。
【図15】A、Bは従来の吊り金具とデッキプレートの取付構造を示す参考図である。
【図16】従来の吊り金具を示す参考図である。
【図17】A〜Cは図16の吊り金具をデッキプレートへ取り付ける要領を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、天井部材3を吊り下げる吊り金具1を、乾式屋根を構成するデッキプレート2に設置孔21bを開けて取り付ける、デッキプレート2と吊り金具1の取付構造及び取付方法である。
前記デッキプレート2には、頂部に水平面部21を有し同水平面部21の両側に側面部22を備える凸峰部20が形成され、両側面部22間に対称形状とする顎部22aが設けられている。
前記吊り金具1は、前記天井部材3を連結するネジ部10bを有する吊り部10と、前記吊り部10の頂部と連結され、同吊り部10と直交する方向に延びる水平拡張部11と、同水平拡張部11の両端から下向きに前記顎部22aを抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部12とでなる。
上記吊り金具1は、デッキプレート2の凸峰部20の設置孔21bへ吊り部10を上方位置から挿入し、吊り部10を中心に前記水平拡張部11を水平回動させて、抱持部12を凸峰部20の顎部22aへ嵌め合わせてデッキプレート2へ取り付けている。
【実施例1】
【0019】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明は、図1、5に示すように、デッキプレート2の上面にコンクリートを打設しない所謂乾式屋根に好適に実施できるものであり、更に、天井部材3を吊り下げる吊り金具1を乾式屋根を構成するデッキプレート2の屋根側から取り付ける効果的な取付構造及び取付方法である。
【0020】
先ず、上記吊り金具1が取り付けられるデッキプレート2について説明する。
前記デッキプレート2は、所謂波形鋼板であり上向き開口溝と下向き開口溝20が交互に形成されるものである。本実施例では、特に前記吊り金具1が下向き開口溝20へ取り付けられるため、下向き開口溝を凸峰部20として説明し上向き開口溝については特に説明しない。
前記凸峰部20は、その頂部に水平面部21を有し、同水平面部21の両側に側面部22を備えている。この水平面部21はその略中央位置に下向きに突出する窪み部21aがV字形状に備えられており、同窪み部21aの各所に後述の吊り金具1の吊り部10を挿入する設置孔21bが設けられている。また、両側面部22、22間に対称となる高さ位置と形状で水平方向へ突出する態様に一対の顎部22a、22aが設けられている。この顎部22aは、一対である必要はなく複数対設けていても良い。
前記設置孔21bは、水平面部20に窪み部21aがある場合には、図示例のように中央位置ではなく、片側に偏心させた平らな位置に設けることが望ましい。
【0021】
次に、本発明の吊り金具1について説明する。
前記吊り金具1は、図1、図2に示すように、下方に前記吊りボルト6を挿入する開口部10aを有し、その内周面にネジ部10bである雌ねじが形成された鞘形状の吊り部10と、前記吊り部10の頂部と連結され、天井部材3の吊り下げ方向に対して直交方向に延びる水平拡張部11と、同水平拡張部11の両端から下方に延び、その先端が上記顎部22aを抱持可能に内方へ屈曲して段部12aが設けられた抱持部12とで構成されている。
前記吊り部10は、天井部材3の吊りボルト6の連結と鞘内への収納が可能な縦断面がコ字形状に形成されている。したがって、吊りボルト6を開口部10aから挿入してねじ込んでも吊り部10内に収まり同ボルト6が上方へ突出することが無い。
また、吊り部10は、鞘形状の限りではなく、棒形状としその外周面にネジ部10bとして雄ねじを形成したものも同様に実施できる。
【0022】
前記水平拡張部11は、図2A、Bが示すように、吊り部10の頂部中心から竹蜻蛉の羽根の如く水平方向に延びており、取付時に凸峰部の長さ方向に対して襷掛けの如く片傾斜の配置となる形状に形成されている(図3下側参照)。つまり、吊り部10の中心を通る放線Q上にくるように角度が付けられている。因みに、この水平拡張部11の前記角度と全長は、上記デッキプレート2の水平面部21に載置した際に、同水平面部21の幅より長くなるように設計されている。
また、前記両抱持部12、12は、前記凸峰部20を構成する両側面部22、22の傾斜に合わせてハの字に傾斜されており、その段部12aも上記側面部22の顎部22aを抱持可能な高さと形状とされている。この段部12aの対数は、前述の顎部22aの対数と併せて状況に応じて増減される。前記抱持部12は図示例では顎部22aを抱持可能に、先端が内方へ屈曲した段部12aを有している湾曲形状でも同様に実施できるし、極論すると、抱持部12は顎部を22aを抱持できる形状であれば、段部12aが無くても実施することができる。
【0023】
上記構成の吊り金具1とデッキプレート2は、デッキプレート2の凸峰部20の設置孔21bへ吊り金具1の吊り部10を屋根側から挿入し、凸峰部20の下方へ突出させ、同吊り金具1の水平拡張部11を吊り部10を中心に水平回動させて、抱持部12、12の一対の段部12a、12aを凸峰部20の一対の顎部22a、22aへ嵌め合わせて取り付ける構造とされている。
しかる後に、図5に示すように、断熱材4と防水シート5などの屋根部材を設置すると共に、前記吊り金具1の吊り部10の開口部10aへ天井部材3の吊りボルト6を挿入して乾式屋根を構築する。
したがって、本発明の取付構造は、吊り金具1を取付後の屋根側面が図示のとおり天井部材3の吊りボルト6の突出や吊り金具1の突出が一切無いフラットな上面であるため、断熱材4や防水シート5の設置作業を効率良く行うことができるし、吊り金具1を単に水平回動させて上記抱持部12を顎部22aへ嵌め合せられるので取付けが非常に簡単である。
【0024】
次に、吊り金具1をデッキプレート2へ取り付ける取付方法を、図3、図4から詳しく説明する。
先ず、図4Aに示すように、吊り金具1を、その吊り部10をデッキプレート1の屋根側から凸峰部20の設置孔21bへ挿入する。具体的には、吊り金具1の水平拡張部11が、図3の上側に示すように、凸峰部20の幅方向に対して略水平となるように挿入し、その下面を凸峰部20の水平面部21の上面に載置する。即ち、水平拡張部11の全長は上記したように凸峰部20の水平面部21の幅より長いため、凸峰部20の幅方向に対して水平な角度にすれば容易に挿入し載置できる。また、このとき同時に吊り金具1の抱持部12の段部12aと凸峰部20の顎部22aとの位置合わせが行われる。これは、上記したように吊り金具1の段部aの高さ位置が顎部22aの高さ位置と一致するように成形されているからである。
そして、この状態で図3の下方側及び図4Bに示すように、前記水平拡張部11を吊り部10を中心に右方向に水平回動させて、抱持部12の段部12a、12aと凸峰部20の顎部22a、22aとをきっちり嵌め合わせる(図4C参照)。この後、屋根材(断熱材4、防水シート5)が設置され、吊り金具1の吊り部10へ吊りボルト6がねじ込まれ天井部材3が組み立てられる。
要するに、吊り金具1はその最大長さを得られる角度で挿入し、上記段部12aと顎部22aの嵌め合わせ位置で右方向へ水平回動するのみで両者をきっちりと取付られるので非常に簡単である。
【実施例2】
【0025】
本発明は上記した実施例の限りではなく、図6〜図8に示す実施例2においても同様の技術的思想に基づいて実施できる。したがって、以下、実施例1との相違点を中心に説明する。
デッキプレート2は実施例1と同じである。実施例2に使用する吊り金具7は、端的に言うと、水平拡張部71に、弾性力を発揮する弾性手段が設けられている点にある。即ち、水平拡張部71は、平面視がX字形状に配置された弾性力を発揮する4つのアーム材で形成されている。具体的には、図7A〜Cに示すように、吊り部70の頂部に吊り下げ方向と直交する方向に延び、且つ4つのアーム材71b…と、同アーム材71bを支持する2枚のプレート71a、71aとで構成されている。
このプレート71aは、コア部が略円形状で対角線上に2つのアーム材71b、71bを支持する延長部71c、71cが2つ設けられている。上記構成のプレート71aを2枚互い違いに重ね合わせてピン接合されており、中心位置で回動可能に連結され、合計4つのアーム材71bが平面視がX形状の配置となるように接合されて構成されている。前記X形状に配置する4つのアーム材71bの角度及び全長は、図8の下側の示すように、デッキプレート2の凸峰部20へ取り付けた際に、遊びのないぴったりの長さとなるように設計されている。因みに、図示例の限りではなくプレートを使用しない4つのアーム材のみで実施することも当然できるし、ハサミのように2本のアーム材を略中央位置で回動可能にピン接合して実施することも可能である。
更に、前記2枚のプレート材71a、71aの対峙する延長部71c間に弾性力を発揮するバネ材71dが設けられている。図7では右側の対峙する延長部71cの間に設けられているが、左右に設けても良い。前記バネ材71dは、延長部71cの距離を保持すると共に、同延長部71cの距離を縮める際に弾性力が働き、直ぐにX字形状に位置に戻ることに寄与する。
【0026】
上記構成の吊り金具7は、その吊り部70をデッキプレート2の凸峰部20の設置孔21bへ屋根側(上方位置)から挿入し、前記2枚のプレート材71a、71aの延長部71c、71cから延びる2つのアーム材71b、71b同士の距離をバネ材71dの弾性力により縮めて、その抱持部72の段部72aを凸峰部20の顎部22aへ配置し、再び2つのアーム材71b、71b同士の距離をバネ材71dの弾性力により戻してデッキプレート2へ取り付けるという非常に簡単な取付構造を実現している。
【0027】
この吊り金具7の取付手順は、図8の上側に示すように、上記吊り金具7の吊り部70を前記デッキプレート2の設置孔21bへ屋根側から挿入すると共に、例えば右側の2つのアーム材71b、71bを内方に寄るように力を加えると、上記2枚のプレート4aがピン接合部で回動すると共に、前記2枚のプレート材71a、71aの対峙する延長部71c、71c間に配置されたバネ材71dが縮み、同延長部71c、71c間の距離が縮まり右側のアーム材71b、71bが略平行になる。この時右側のアーム材71b、71bは凸峰部20の幅方向に対して最長長さを得られる。そして、吊り材7の抱持部72の段部72aを凸峰部20の顎部22aと位置を合わせた状態で、アーム材71b、71bに加えてた力を弱めると、バネ材71dの弾性力により2枚のプレート材4a、4aが回動して対峙する延長部間の距離が初期位置(X形状)に戻り、吊り材7の抱持部72の一対の段部72aと凸峰部20の一対の顎部22aとしっかり嵌め合わさるのである。前記水平拡張部71の有効幅は、凸峰部20の幅とぴったり同じであり、バネ材71dの持つ反発力を期待できるため、天井部材3の吊りボルト6を螺着する際の共回りや浮き上がりを確実に防止することができる。因みにこの後、屋根材(断熱材4、防水シート5)が設置され、吊り金具7の吊り部70へ吊りボルト6がねじ込まれることは上述したとおりである。
【実施例3】
【0028】
実施例2に示した吊り金具7は、例えば図9、10に示したデッキプレートにおいても同様の技術的思想に基づいて実施できる。
つまり、小幅、低高な凸峰部20’を有するデッキプレート2’であっても実施できる。
実施例2に示した吊り金具7’と実施例2の吊り金具7との違いは、単に水平拡張部71’を構成するアーム材71b’が短いのみである。したがって、その取付構造及び取付方法は実施例2と全く同じである。
要するに、実施例2、実施例3に示した吊り金具7、7’は、アーム材71bの長さを変更するのみで、デッキプレート2の大小様々な凸峰部に順応でき汎用性が高いという利点がある。
【実施例4】
【0029】
上記実施例2、3において、吊り金具7、7’の水平拡張部71、71’に、弾性力を発揮する弾性手段を設け、その弾性力により凸峰部20の顎部22aを抱持可能にすることを説明してきたが、この限りではなく図11〜図14に示す弾性手段によっても同様に実施できる。
実施例4に使用される吊り金具8は、要するに水平拡張部81に設ける弾性手段としてクランプ構造を採用している。
図12A、Bに示すように、水平拡張部81は、吊り部80の頂部から吊り下げ方向に対して直交する方向に延びるプレート81aと、同プレート81aの左右端から水平方向に伸びる水平押さえアーム81b、81bと、同プレート81aと接続され回動可能な回動手段81dを有するクランプ部81cとで構成されている。
前記左側の水平押さえアーム81bは、前記クランプ部81cの回動手段81d近傍に連結されており、右側の水平押さえアーム81bは、プレート81aの右側端部に設けられたアーム支持部81eへ回動可能に支持されている。上記左右の水平押さえアーム81bの両端には、一対の段部82a、82aを有する抱持部82、82が繋がっている点は上記した吊り金具1、7、7’と同じである。したがって、上記クランプ部81cを上方へ上げて水平押さえアーム81bの固定状態を解除すれば、左右の水平押さえアーム81bは自由に回動できて、凸峰部20の顎部22aへの位置合わせが容易にできる。さらに、吊り金具8の位置合わせを行った後クランプ部81cを下ろすと、その弾性力により吊り金具8をしっかりとデッキプレート2の凸峰部20へ取り付けられる構造である。
【0030】
上記構成の吊り金具8の取付方法としては、図14Aに示すように、先ず水平拡張部81のクランプ部81cを上方へ上げて水平押さえアーム81bの固定状態を解除した状態で、凸峰部20の屋根側から吊り部80を設置孔21bへ挿入する。この際、回動可能な右側の水平押さえアーム81bは、下方へ延びる抱持部82の段部82aと凸峰部20の右側の顎部22aとの嵌め合わせを行う。そして、図14Bに示すように、左側の水平押さえアーム81bは、下方へ延びる抱持部82の段部82aを凸峰部20の左側の顎部22aへ引っかけて用意する。この状態で、図14Bから図14Cに示すように、上方へ上げていたクランプ部81cを下ろして、左右の水平押さえアーム81b、81bを密実に固定し、吊り金具8をデッキプレート2へ取り付ける。この後、屋根材(断熱材4、防水シート5)が設置され、吊り金具8の吊り部80へ吊りボルト6がねじ込まれることは上述したとおりである。
【0031】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0032】
1、7、7’8 吊り金具
10、70、70’80 吊り部
11、71、71’81 水平拡張部
12、72、72’82 抱持部
12a、72a、72a’82a 段部
2 デッキプレート
20 凸峰部
21 水平面部
21a 窪み部
21b 設置孔
22 側面部
22a 顎部
3 天井部材
4 断熱材
5 防水シート
6 吊りボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付構造であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部が形成され、両側面部には対称形状となる顎部が設けられていること、
前記吊り金具は、前記天井部材を連結するネジ部を有する吊り部と、同吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延びる水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部とで成ること、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部に設けられた設置孔へ吊り部が上方位置から挿入されてデッキプレートの下方へ突き出され、前記抱持部が凸峰部の両側面の顎部を抱持して取り付けられていることを特徴とする、吊り金具の取付構造。
【請求項2】
吊り金具は、水平拡張部が凸峰部の長さ方向に対してたすき掛けの如く片傾斜となる配置位置で、抱持部と凸峰部の顎部とを嵌め合わせる構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した吊り金具の取付構造。
【請求項3】
吊り金具の水平拡張部には、弾性力を発揮する弾性手段が設けられており、同弾性手段の弾性力により凸峰部の顎部を抱持することを特徴とする、請求項1に記載した吊り金具の取付構造。
【請求項4】
水平拡張部は、平面視がX字形状に配置されたアーム材と、同アーム材を回動可能に連結する支持材とで成り、
前記アーム材は、取り付けられたバネ材の弾性力により少なくとも片側の対峙するアーム材同士の距離が可変可能であり、
前記バネ材の弾性力により、抱持部が凸峰部の顎部を抱持していることを特徴とする、請求項1又は3に記載した吊り金具の取付構造。
【請求項5】
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付方法であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部を形成し、両側面部に対称形状となる顎部を設けており、
前記吊り金具は、前記天井部材を連結するネジ部を有する吊り部と、同吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延びた水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲した抱持部とで成り、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部に設けた設置孔へ吊り部を上方位置から挿入し、水平拡張部を吊り部を中心に凸峰部の長さ方向に対してたすき掛けの如く片傾斜となる配置位置に水平回動させて、抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせていることを特徴とする、吊り金具の取付方法。
【請求項6】
天井部材を吊り下げ支持する吊り金具を、乾式屋根を構成するデッキプレートに設置孔を開けて取り付ける、吊り金具の取付方法であって、
前記デッキプレートは、頂部に水平面部を有し同水平面部の両側に側面部を備える凸峰部を形成し、両側面部に対称形状とする顎部が設けており、
前記吊り金具は、雄ねじ又は下方に前記天井部材を連結する開口部を有しその内周面に雌ねじ形成した吊り部と、吊り部の頂部と連結され同吊り部と直交する方向へ延び、その平面視がX字形状に配置されたアーム材と、同アーム材を回動可能に連結する支持材とで成る水平拡張部と、同水平拡張部の両端から下向きに前記顎部を抱持する形状に屈曲又は湾曲された抱持部とで成り、
前記吊り金具は、少なくとも片側の対峙するアーム材同士の距離を可変させるバネ材を備えており、
上記吊り金具は、前記デッキプレートの凸峰部の水平面部の中央位置に設けた設置孔へ吊り部を上方位置から挿入し、前記対峙するアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により縮めて、前記抱持部を凸峰部の顎部へ配置し、再びアーム材同士の距離をバネ材の弾性力により戻して吊り金具の抱持部を凸峰部の顎部へ嵌め合わせることを特徴とする、吊り金具の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−47418(P2013−47418A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185869(P2011−185869)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)