説明

吊戸装置

【課題】吊戸体を所望の水平状態に保つことができる吊戸装置を提供する。
【解決手段】吊戸装置1は、左右方向に移動する吊戸体13,14を備える。吊戸体13,14の下部には、回動アーム93,193を上下回動可能に設ける。回動アーム93,193には、下ローラ体96,196を前後方向の水平軸97,197を中心として回転可能に設ける。下ローラ体96,196の上部を下ガイドレール体12の凹溝部に嵌入し、下ローラ体96,196の上端をばね98,198の付勢により凹溝部の水平面に押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸体が傾くことを抑制でき、吊戸体を所望の水平状態に保つことができる吊戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば左右方向に移動する吊戸体と、吊戸体の下部に垂直軸を中心として回転可能に設けられた水平ローラ体と、水平ローラ体が挿入された下向きの凹溝部を有する吊戸案内体とを備えた吊戸装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−213681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の吊戸装置では、水平ローラ体の上面と吊戸案内体の凹溝部との間には間隙が存在するため、例えば吊戸体を勢いよく移動させた際に吊戸体が傾いてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、吊戸体が傾くことを抑制でき、吊戸体を所望の水平状態に保つことができる吊戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の吊戸装置は、左右方向に移動する吊戸体と、この吊戸体の下部に上下動可能に設けられたローラ支持体と、このローラ支持体に前後方向の水平軸を中心として回転可能に設けられたローラ体と、このローラ体が回転可能に嵌入された下向きの凹溝部を有する吊戸案内体と、前記ローラ支持体を上方に向けて付勢して前記ローラ体を前記凹溝部に押し付ける付勢手段とを備えるものである。
【0006】
請求項2記載の吊戸装置は、請求項1記載の吊戸装置において、ローラ支持体は、吊戸体の下部に前後方向の水平軸を中心として上下回動可能に設けられた回動アームであるものである。
【0007】
請求項3記載の吊戸装置は、請求項1または2記載の吊戸装置において、ローラ体は、吊戸体に対して前後位置調節可能となっているものである。
【0008】
請求項4記載の吊戸装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の吊戸装置において、吊戸体の上部に設けられこの吊戸体とともに左右方向に移動する移動体を備え、前記移動体は、位置決め係合受部を有し、前記吊戸体は、前記位置決め係合受部に係合する位置決め係合部を有し、前記吊戸体の吊り込みの際には、ローラ体を吊戸案内体の凹溝部に嵌入した後、前記吊戸体の前記位置決め係合部を前記移動体の前記位置決め係合受部に係合させるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、前後方向の水平軸を中心として回転するローラ体が吊戸案内体の下向きの凹溝部に嵌入され、付勢手段の付勢によりその凹溝部に押し付けられているため、吊戸体が傾くことを抑制でき、吊戸体を所望の水平状態に保つことができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、吊戸体の下部に前後方向の水平軸を中心として上下回動可能に設けられた回動アームにてローラ体を適切に支持できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、ローラ体が吊戸体に対して前後位置調節可能となっているため、ローラ体の前後位置を適切に調節できる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、ローラ体を吊戸案内体の凹溝部に嵌入した後、吊戸体の位置決め係合部を移動体の位置決め係合受部に係合させることにより、吊戸体を移動体に対して容易に位置決めできるため、吊戸体の吊り込み作業の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の吊戸装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1および図2において、1は吊戸装置で、この吊戸装置1は、例えばシステムキッチン等のキャビネット本体2の前面開口部3を開閉する開閉装置である。
【0015】
キャビネット本体2は、天板部4、底板部5、左右の側板部6および背板部を有し、前面に左右方向長手状で略矩形状の前面開口部3が形成されている。
【0016】
吊戸装置1は、キャビネット本体2の天板部4の前端部に取り付けられた左右方向長手状の上ガイドレール体11と、キャビネット本体2の底板部5の前端部に取り付けられた左右方向長手状の下ガイドレール体(吊戸案内体)12と、両ガイドレール体11,12に沿って左右方向に移動してキャビネット本体2の前面開口部3を開閉する略矩形状の複数、例えば2枚のアウトセットタイプの引戸である前側吊戸体13および後側吊戸体14とを備えている。
【0017】
なお、前側吊戸体13は、キャビネット本体2の前面開口部3のうち正面視右側の部分を開閉し、後側吊戸体14は、キャビネット本体2の前面開口部3のうち正面視左側の部分を開閉する。
【0018】
上ガイドレール体11は、図2および図3に示されるように、前方に向って開口する略コ字状で左右方向長手状の後戸用ローラ案内溝部21と、この後戸用ローラ案内溝部21と離間対向し後方に向って開口する略コ字状で左右方向長手状の前戸用ローラ案内溝部22とを有している。また、上ガイドレール体11は、左右方向に延びる筒状の収容部23を有し、収容部23の左側には後側吊戸体14と側板部6との衝撃を緩和する後戸用緩衝手段24が収容され、収容部23の右側には前側吊戸体13と側板部6との衝撃を緩和する前戸用緩衝手段25が収容されている。
【0019】
下ガイドレール体12は、図2および図4に示されるように、前後に互いに平行状でいずれも下方に向って開口する左右方向長手状の下向きの後戸用凹溝部31および前戸用凹溝部32を有している。後戸用凹溝部31は、前戸用凹溝部32より前方の位置でかつやや高い位置に位置する。後戸用凹溝部31および前戸用凹溝部32は、いずれも水平面33と、この水平面33の前後端から下方に向って突出する垂直面34とを有している。
【0020】
後側吊戸体14は、図1ないし図4に示されるように、略矩形板状の戸本体部41を有し、戸本体部41の上端部には左右方向長手状の上枠部42が取り付けられ、戸本体部41の下端部には左右方向長手状の下枠部43が取り付けられている。
【0021】
後側吊戸体14の上枠部42は、左右方向に細長い略矩形状で水平状の上板部分45を有し、上板部分45の後端部下面には左右方向長手状の位置決め係合部である位置決め突条46が下方に向って突出状に設けられている。
【0022】
そして、後側吊戸体14の上枠部42の後面側には、上ガイドレール体11に沿って左右方向に移動する左右方向長手状で断面略L字状の移動体であるL字状プレート51が取付具であるねじ52にて取り付けられている。
【0023】
L字状プレート51は、左右方向長手状で略矩形状の垂直板部53を有し、垂直板部53の上端部から左右方向長手状で略矩形状の水平板部54が前方に向って突出している。水平板部54の上面部後側には、上方に向って開口する上向きの位置決め係合受部である位置決め凹溝55が形成され、位置決め凹溝55と位置決め突条46との係合により後側吊戸体14がL字状プレート51に対して位置決めされている。
【0024】
そして、L字状プレート51の左側には、ウォーム歯車等からなる上下位置調節機構56が取付具であるねじ57にて取り付けられ、上下位置調節機構56にローラ支持体61が取り付けられている。
【0025】
ローラ支持体61は、水平板部62を有し、水平板部62の略中央からねじ軸部63が下方に向って突出し、ねじ軸部63が上下位置調節機構56内に挿入されている。水平板部62の前端部から垂直板部64が上方に向って突出し、垂直板部64の上端部の右端には後戸用緩衝手段24に対して出入りする突出部65が上方に向って突出状に設けられている。
【0026】
そして、ローラ支持体61の垂直板部64には、複数、例えば2つの上ローラ体66が前後方向の水平軸67を中心として回転可能に取り付けられ、上ローラ体66は、後側吊戸体14の左右移動時に水平軸67を中心として回転しながら上ガイドレール体11の後戸用ローラ案内溝部21に沿って左右方向に移動する。また、上ローラ体66は、後側吊戸体14に対して上下位置調節可能となっている。すなわち上下位置調節機構56の操作部60、例えば十字状の溝部(図1参照)を後側吊戸体14の後方から工具等を用いて回動操作することにより、ローラ支持体61を上下位置調節機構56に対して昇降可能で、上ローラ体66の上下位置を後側吊戸体14に対して調節可能である。
【0027】
また、L字状プレート51の右側にはローラ支持体71が取付具であるねじ72にて取り付けられ、ローラ支持体71には1つの上ローラ体76が前後方向の水平軸77を中心として回転可能に取り付けられている。上ローラ体76は、後側吊戸体14の左右移動時に水平軸77を中心として回転しながら上ガイドレール体11の後戸用ローラ案内溝部21に沿って左右方向に移動する。
【0028】
一方、後側吊戸体14の下枠部43は、戸本体部41の後面位置より後方に向って突出する左右方向に細長い略矩形状で水平状の突出板部分81を有し、突出板部分81の左右両側には複数、例えば2つの前後方向に延びる長孔82が後方から切欠状に形成されている。
【0029】
そして、後側吊戸体14の下枠部43の突出板部分81の左右両側における上面側には、アーム支持体83が取付具であるねじ84にて長孔82に沿って前後位置調節可能に取り付けられている。
【0030】
アーム支持体83は、左右方向にやや長手状の直方体形状をなすもので、アーム支持体83の左右両側にはねじ用孔部85が形成され、このねじ用孔部85に長孔82に挿通されたねじ84が螺合されている。また、アーム支持体83には、上面開口86により上方に向って開口しかつ下面開口87により下方に向って開口するアーム収容部88が形成されている。アーム収容部88を介して前後に離間対向する板部89には前後方向の水平軸90が架け渡されている。さらに、アーム支持体83の下面端部には位置決め突部91が下方に向って突出状に設けられ、この位置決め突部91が下枠部43の突出板部分81の端面である係合受面92と係合し、この係合によりアーム支持体83が後側吊戸体14に対して位置決めされている。
【0031】
そして、図5にも示すように、後側吊戸体14の下枠部43つまり後側吊戸体14の下部の左右両側には、アーム支持体83を介してローラ支持体である回動アーム93が前後方向の水平軸90を中心として上下回動可能に設けられている。すなわち回動アーム93の基端部がアーム支持体83の水平軸90に回動可能に取り付けられ、回動アーム93の先端側が上下動する。回動アーム93は、アーム支持体83のアーム収容部88に収容可能な形状のもので、回動アーム93の先端部には、ローラ体である下ローラ体96が前後方向の水平軸97を中心として回転可能に取り付けられ、下ローラ体96の上部が下ガイドレール体12の後戸用凹溝部31に嵌入されている。
【0032】
また、回動アーム93とこの回動アーム93を回動可能に支持するアーム支持体83との間には、回動アーム93を上方に向けて付勢して下ローラ体96の上端部を後戸用凹溝部31の水平面33に押し付ける付勢手段であるコイル状のばね98が配設されている。そして、下ローラ体96は、ばね98の付勢により上端部が後戸用凹溝部31の水平面33に押し付けられた状態かつ前後面部が後戸用凹溝部31の垂直面34に略接した状態で、後側吊戸体14の左右移動時に水平軸97を中心として回転しながら下ガイドレール体12の後戸用凹溝部31に沿って左右方向に移動する。
【0033】
さらに、下ローラ体96は、後側吊戸体14に対して前後位置調節可能となっている。すなわち後側吊戸体14に対するアーム支持体83の取付位置を長孔82に沿って変更することにより、回動アーム93を後側吊戸体14に対して前後移動可能で、下ローラ体96の前後位置を後側吊戸体14に対して調節可能である。
【0034】
前側吊戸体13は、後側吊戸体14と基本的構成が同一のもので、略矩形板状の戸本体部141を有し、戸本体部141の上端部には左右方向長手状の上枠部142が取り付けられ、戸本体部141の下端部には左右方向長手状の下枠部143が取り付けられている。
【0035】
前側吊戸体13の上枠部142は、左右方向に細長い略矩形状で水平状の上板部分145を有し、上板部分145の後端部下面には左右方向長手状の位置決め係合部である位置決め突条146が下方に向って突出状に設けられている。
【0036】
そして、前側吊戸体13の上枠部142の後面側には、上ガイドレール体11に沿って左右方向に移動する左右方向長手状で断面略L字状の移動体であるL字状プレート151が取付具であるねじにて取り付けられている。
【0037】
L字状プレート151は、左右方向長手状で略矩形状の垂直板部153を有し、垂直板部153の上端部から左右方向長手状で略矩形状の水平板部154が前方に向って突出している。水平板部154の上面部後側には、上方に向って開口する上向きの位置決め係合受部である位置決め凹溝155が形成され、位置決め凹溝155と位置決め突条146との係合により前側吊戸体13がL字状プレート151に対して位置決めされている。
【0038】
そして、L字状プレート151の右側には、ウォーム歯車等からなる上下位置調節機構156が取付具であるねじ157にて取り付けられ、上下位置調節機構156にローラ支持体161が取り付けられている。
【0039】
ローラ支持体161は、水平板部162を有し、水平板部162の略中央からねじ軸部163が下方に向って突出し、ねじ軸部163が上下位置調節機構156内に挿入されている。水平板部162の後端部から垂直板部164が上方に向って突出し、垂直板部164の上端部の左端には前戸用緩衝手段25に対して出入りする突出部165が上方に向って突出状に設けられている。
【0040】
そして、ローラ支持体161の垂直板部164には、複数、例えば2つの上ローラ体166が前後方向の水平軸167を中心として回転可能に取り付けられ、上ローラ体166は、前側吊戸体13の左右移動時に水平軸167を中心として回転しながら上ガイドレール体11の前戸用ローラ案内溝部22に沿って左右方向に移動する。また、上ローラ体166は、前側吊戸体13に対して上下位置調節可能となっている。すなわち上下位置調節機構156の操作部160、例えば十字状の溝部(図1参照)を前側吊戸体13の後方から工具等を用いて回動操作することにより、ローラ支持体161を上下位置調節機構156に対して昇降可能で、上ローラ体166の上下位置を前側吊戸体13に対して調節可能である。
【0041】
また、L字状プレート151の左側にはローラ支持体171が取付具であるねじ172にて取り付けられ、ローラ支持体171には1つの上ローラ体176が前後方向の水平軸177を中心として回転可能に取り付けられている。上ローラ体176は、前側吊戸体13の左右移動時に水平軸177を中心として回転しながら上ガイドレール体11の前戸用ローラ案内溝部22に沿って左右方向に移動する。
【0042】
一方、前側吊戸体13の下枠部143は、戸本体部141の後面位置より後方に向って突出する左右方向に細長い略矩形状で水平状の突出板部分181を有し、突出板部分181の左右両側には複数、例えば2つの前後方向に延びる長孔が後方から切欠状に形成されている。
【0043】
そして、前側吊戸体13の下枠部143の突出板部分181の左右両側における上面側には、アーム支持体183が取付具であるねじにて長孔に沿って前後位置調節可能に取り付けられている。
【0044】
アーム支持体183は、左右方向にやや長手状の直方体形状をなすもので、アーム支持体183の左右両側にはねじ用孔部が形成され、このねじ用孔部に長孔に挿通されたねじが螺合されている。また、アーム支持体183には、上面開口186により上方に向って開口しかつ下面開口187により下方に向って開口するアーム収容部188が形成されている。アーム収容部188を介して前後に離間対向する板部189には前後方向の水平軸190が架け渡されている。さらに、アーム支持体183の下面端部には位置決め用突部191が下方に向って突出状に設けられ、この位置決め用突部191が下枠部143の突出板部分181の端面である係合受面192と係合し、この係合によりアーム支持体183が前側吊戸体13に対して位置決めされている。
【0045】
そして、図5にも示すように、前側吊戸体13の下枠部143つまり前側吊戸体13の下部の左右両側には、アーム支持体183を介してローラ支持体である回動アーム193が前後方向の水平軸190を中心として上下回動可能に設けられている。すなわち回動アーム193の基端部がアーム支持体183の水平軸190に回動可能に取り付けられ、回動アーム193の先端側が上下動する。回動アーム193は、アーム支持体183のアーム収容部188に収容可能な形状のもので、回動アーム193の先端部には、ローラ体である下ローラ体196が前後方向の水平軸197を中心として回転可能に取り付けられ、下ローラ体196の上部が下ガイドレール体12の前戸用凹溝部32に嵌入されている。
【0046】
また、回動アーム193とこの回動アーム193を回動可能に支持するアーム支持体183との間には、回動アーム193を上方に向けて付勢して下ローラ体196の上端部を前戸用凹溝部32の水平面33に押し付ける付勢手段であるコイル状のばね198が配設されている。そして、下ローラ体196は、ばね198の付勢により上端部が前戸用凹溝部32の水平面33に押し付けられた状態かつ前後面部が前戸用凹溝部32の垂直面34に略接した状態で、前側吊戸体13の左右移動時に水平軸197を中心として回転しながら下ガイドレール体12の前戸用凹溝部32に沿って左右方向に移動する。
【0047】
さらに、下ローラ体196は、前側吊戸体13に対して前後位置調節可能となっている。すなわち前側吊戸体13に対するアーム支持体183の取付位置を長孔に沿って変更することにより、回動アーム193を前側吊戸体13に対して前後移動可能で、下ローラ体196の前後位置を前側吊戸体13に対して調節可能である。
【0048】
次に、吊戸装置1のキャビネット本体2への取付方法について説明する。
【0049】
予め、上ローラ体76,176を支持したローラ支持体71,171と上下位置調節機構56,156とをL字状プレート51,151に取り付けるとともに、上下位置調節機構56,156に上ローラ体66,166を支持したローラ支持体61,161を取り付けて、上ローラユニット99,199を組み立てておく。
【0050】
まず、上ガイドレール体11をキャビネット本体2の天板部4にねじ等にて取り付けるとともに、下ガイドレール体12をキャビネット本体2の底板部5にねじ等にて取り付ける。
【0051】
次いで、上ガイドレール体11の収容部23に前戸用緩衝手段25および後戸用緩衝手段24を挿入して所定位置に固定するとともに、上ガイドレール体11のローラ案内溝部21,22に上ローラユニット99,199の上ローラ体66,76,166,176を挿入する。
【0052】
その後、後側吊戸体14の下部に取り付けられた回動アーム93にて支持された下ローラ体96を、下ガイドレール体12の後戸用凹溝部31に嵌入する。
【0053】
続いて、下ローラ体96を下ガイドレール体12の後戸用凹溝部31に嵌入した状態のまま、後側吊戸体14を起していき、後側吊戸体14の上部の位置決め突条46を上ローラユニット99のL字状プレート51の位置決め凹溝55に係合させ、後側吊戸体14をそのL字状プレート51に対して位置決めする。その後、後側吊戸体14の後方からねじ52にて後側吊戸体14をL字状プレート51に取り付ける。こうして後側吊戸体14の吊り込み作業が完了し、次いで、同様に前側吊戸体13の吊り込み作業を行う。
【0054】
そして、このようにしてキャビネット本体2に取り付けた吊戸装置1によれば、下ガイドレール体12の下向きの凹溝部31,32に嵌入された下ローラ体96,196が、ばね98,198の付勢によりその上端部が凹溝部31,32の水平面33に押し付けられた状態かつその前後面部が凹溝部31,32の垂直面34に略接した状態で、前後方向の水平軸197を中心として回転しながら下ガイドレール体12の凹溝部31,32に沿って左右方向に移動するため、吊戸体13,14の前後の揺れを防止できるばかりでなく、吊戸体13,14の急激な左右移動時に吊戸体13,14が側端側の上下移動により傾くことを抑制でき、吊戸体13,14を所望の水平状態に保つことができる。
【0055】
また、下ローラ体96,196を下ガイドレール体12の凹溝部31,32に嵌入した後、吊戸体13,14を起していき、吊戸体13,14の上部の位置決め突条46,146をL字状プレート51,151の位置決め凹溝55,155に係合させることにより、吊戸体13,14をL字状プレート51,151に対して容易に位置決めできるため、吊戸体13,14の吊り込み作業の容易化を図ることができる。
【0056】
さらに、上ローラ体66,166が吊戸体13,14に対して上下位置調節可能で、かつ下ローラ体96,196が吊戸体13,14に対して前後位置調節可能であるため、上ローラ体66,166の上下位置の調節および下ローラ体96,196の前後位置の調節を行うことにより、
部品の寸法誤差や組立て誤差等を吸収でき、吊戸体13,14のスムーズな左右移動を得ることができる。
【0057】
また、従来の装置に比べて下ローラ体96,196の部分の上下寸法を小さくでき、キャビネット本体2の前面開口部3を大きくとることができる。
【0058】
なお、例えば図示しないが、上ローラ体66,166に加えて、上ローラ体76,176を吊戸体13,14に対して上下位置調節可能としてもよい。
【0059】
また、下ローラ体96,196をローラ支持体である回動アーム93,193にて支持した構成には限定されず、例えば図示しないが、吊戸体の下部に上下動可能に設けられたローラ支持体である支持軸体にて、ローラ体を前後方向の水平軸(水平軸線)を中心として回転可能に支持した構成等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の吊戸装置の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同上吊戸装置の側面図である。
【図3】同上吊戸装置の上端側の分解斜視図である。
【図4】同上吊戸装置の下端側の分解斜視図である。
【図5】同上吊戸装置の下ローラ体部分の側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 吊戸装置
12 吊戸案内体である下ガイドレール体
13 吊戸体である前側吊戸体
14 吊戸体である後側吊戸体
31 凹溝部である後戸用凹溝部
32 凹溝部である前戸用凹溝部
46,146 位置決め係合部である位置決め突条
51,151 移動体であるL字状プレート
55,155 位置決め係合受部である位置決め凹溝
90,190 水平軸
93,193 ローラ支持体である回動アーム
96,196 ローラ体である下ローラ体
97,197 水平軸
98,198 付勢手段であるばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に移動する吊戸体と、
この吊戸体の下部に上下動可能に設けられたローラ支持体と、
このローラ支持体に前後方向の水平軸を中心として回転可能に設けられたローラ体と、
このローラ体が回転可能に嵌入された下向きの凹溝部を有する吊戸案内体と、
前記ローラ支持体を上方に向けて付勢して前記ローラ体を前記凹溝部に押し付ける付勢手段と
を備えることを特徴とする吊戸装置。
【請求項2】
ローラ支持体は、吊戸体の下部に前後方向の水平軸を中心として上下回動可能に設けられた回動アームである
ことを特徴とする請求項1記載の吊戸装置。
【請求項3】
ローラ体は、吊戸体に対して前後位置調節可能となっている
ことを特徴とする請求項1または2記載の吊戸装置。
【請求項4】
吊戸体の上部に設けられこの吊戸体とともに左右方向に移動する移動体を備え、
前記移動体は、位置決め係合受部を有し、
前記吊戸体は、前記位置決め係合受部に係合する位置決め係合部を有し、
前記吊戸体の吊り込みの際には、ローラ体を吊戸案内体の凹溝部に嵌入した後、前記吊戸体の前記位置決め係合部を前記移動体の前記位置決め係合受部に係合させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の吊戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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