吐水装置
【課題】大型のポンプを用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能な吐水装置を提供すること。
【解決手段】この吐水装置は、水溜部に空気を導入する空気導入口10aを有し、空気導入口10aから導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を通水経路部105に間欠的に供給する気泡供給手段を備え、気泡供給手段は、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流WSsの流れを変化させることによって、空気導入口10aから空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【解決手段】この吐水装置は、水溜部に空気を導入する空気導入口10aを有し、空気導入口10aから導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を通水経路部105に間欠的に供給する気泡供給手段を備え、気泡供給手段は、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流WSsの流れを変化させることによって、空気導入口10aから空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を洗浄するための吐水装置は、洗浄感を高めることが求められている。洗浄感は、吐水装置から吐出された水が人体に当たった場合の刺激感と量感とによって左右される感覚である。刺激感と量感とを吐出される水の性状に当てはめると、刺激感とは水の流速に代表される物理量であり、量感とは人体に当たった水の面積(人体に当たる直前の水の断面積にも相当する)に代表される物理量である。換言すれば、刺激感は水の流速に応じて使用者が感じる水の刺激の強さであって、水の流速が速くなれば刺激感が強くなり、水の流速が遅くなれば刺激感が弱くなるものである。また、量感は人体に当たった水の面積に応じて使用者が感じる水の量の多少であって、水の面積が広くなれば量感が強くなり、水の面積が狭くなれば量感が弱くなるものである。
【0003】
一方で吐水装置には、より節水性能を高めることも求められている。節水性能を高めるには、吐水装置から吐出される水の量を減らすことが必要であるものの、単純に吐出される水の量を減らせば量感が低減されることになり、洗浄感に不満を抱く使用者が増えるおそれがある。
【0004】
そこで、連続的な線状の吐水を間欠的な水塊による吐水に変換することで、低水量でありながら、人体に当たる水の面積を確保し、量感を損ねない技術が提案されている。この技術の一例としては、下記特許文献1に記載のものが提案されている。下記特許文献1に記載の技術では、吐水に噴射速度が速い第一部分と噴射速度が遅い第二部分とを交互に形成し、人体への着水前に第一部分が第二部分に追いつくことで、大きな水塊を形成している。下記特許文献1に記載の技術では、このような速度差を形成するために、吐水装置への給水圧よりも高い圧力を間欠的に加えて、吐水圧を大きく変動させることが利用されている。このように吐水圧を大きく変動させることで、吐水に間欠的な流速変動が起きることから、上述したような間欠的な水塊による吐水が実現される。
【0005】
下記特許文献1に記載の技術は、間欠的な水塊による吐水を確実に実現するためには優れた技術であるけれども、給水圧よりも高い圧力を加えるために比較的大型のポンプが必要となる。このような比較的大型のポンプが必須のものとされれば、吐水装置全体が高価なものとなり、装置の大型化にも繋がるおそれがある。
【0006】
ポンプを用いずに吐水の流速を周期的に変動させる技術としては、下記特許文献2に記載のものが提案されている。下記特許文献2では、吐水に気泡を混入させることで吐水の流速変動を起こさせている。同文献の記載によれば、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより多い部分では、その部分の洗浄水の速度は、より高速になる。一方で、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより少ない部分では、その部分の洗浄水の速度は、より低速になる。これにより、吐水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。
【0007】
ポンプを用いずに吐水の流速を周期的に変動させる技術ではないものの、水に対する気泡の混入量を変化させる技術として、下記特許文献3に記載のものが提案されている。下記特許文献3では、供給する空気量を調整するため、気体混入比制御手段が設けられている。気体混入比制御手段は、気体供給流路と、気体供給流路に設けられた電磁弁である気体流量弁とを有している。この気体流量弁を開くと、その開度に応じた空気が供給され、気泡混入水が生成される。一方、この気体流量弁を閉じると空気の流入が遮断され、気泡混入水は生成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−90151号公報
【特許文献2】特許第4572999号公報
【特許文献3】特開2008−237601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2では、ポンプを使わずに流速を変動させることができるものであるが、空気の混入量の変動はいわば成り行きで発生するものであり、その変動幅は僅かなものである。そのため、気泡供給量を大きく変動させることができず、吐水の流速を大きく変動させることができないものである。
【0010】
一方、上記特許文献3に記載の気泡混入量制御技術を適用し、気体流量弁を細かく開閉させることで空気の混入量を変動させ、流速を大きく変動させた吐水を実現することは可能である。しかしながら、そもそも装置の大型化や高価化を回避するべくポンプレスでの構成を検討しているにも関わらず、電磁弁である気体流量弁を設けることは、結果的に装置全体が高価なものとなり、装置の大型化に繋がるおそれがある。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型のポンプや電磁弁を用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能な吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る吐水装置は、人体に向けて水を吐出する吐水装置であって、水を供給する給水路と、前記給水路から供給された水を下流側に向けて噴流として噴射する噴射口と、前記噴射口の下流側に設けられ、前記噴流を外部に吐出する吐出口が設けられた吐出流路と、前記噴射口と前記吐出流路との間に設けられ、前記噴射口から前記吐出流路に至る噴流が通過する経路である通水経路部及び前記通水経路部に隣接させて溜水を形成するための水溜部を有する水溜室と、前記水溜部に空気を導入する空気導入口を有し、前記空気導入口から導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を前記通水経路部に間欠的に供給する気泡供給手段と、を備える。本発明において気泡供給手段は、前記噴流によって前記水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることによって、前記空気導入口から空気を導入する状態と、前記空気導入口からの空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【0013】
本発明によれば、空気導入口から水溜室内に空気を導入する状態と、空気導入口から空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すので、噴流に対して気泡が多く供給される状態と、噴流に対して気泡が供給されない状態とを作り出すことができる。噴流に対する気泡の供給量に大きな増減を生じさせることができるため、吐水に大きな流速変動を起こすことができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
【0014】
更に、本発明では、噴流によって水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることで空気を周期的に遮断/導入させている。空気導入口からの空気の導入は旋回流によって影響を受けているため、噴流によって自然発生する旋回流の流れを変化させれば、電磁弁等を用いて空気導入口を電気的に開閉させなくとも、空気を周期的に遮断/導入させることができる。このように本発明によれば、旋回流の流れを変化させるという簡単な構成で気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0015】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記空気導入口から導入した空気によって形成された気泡を前記噴流に引き込ませることで前記旋回流の流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって前記空気導入口に前記旋回流を一時的に逆流させるように構成されていることも好ましい。
【0016】
気泡が噴流に引き込まれると、その引き込みに伴って噴流の周囲に存在していた水が押し出され、旋回流の流速が一時的に高まる。この好ましい態様では、このように噴流に気泡が供給されることにより旋回流の流速の一時的な高まりを利用し、空気導入口に旋回流を一時的に逆流させている。従って、旋回流の流速変化を利用したより簡単な構成で、気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0017】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記空気導入口近傍における前記旋回流上流側のガイド壁面を、前記空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが対向するように構成されていることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、空気導入口近傍における旋回流上流側のガイド壁面を、空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成することで、ガイド壁面に沿った旋回流の流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0019】
また本発明に係る吐水装置では、前記ガイド壁面は、前記水溜部における前記吐出流路の近傍と前記空気導入口の近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されていることも好ましい。
【0020】
気泡の噴流への引き込みに伴って流速が高まった旋回流は、吐出流路近傍から空気導入口の近傍に向かって進む。そこでこの好ましい態様では、ガイド壁面を屈曲部を有さない連続面とすることで、旋回流の流速を減じることなく空気導入口近傍へと送り込むことができる。これにより、ガイド壁面に沿った旋回流の流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0021】
また本発明に係る吐水装置では、前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、前記ガイド壁面が構成されていることも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、空気導入方向と旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するようにガイド壁面が構成されているので、流速が十分に高まっていない旋回流の場合は、空気の押し込み力が不足するように構成することができ、流速が十分に高まった旋回流の場合のみに空気を押し込んで逆流させやすくすることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0023】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記噴射口の流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡を生成し、この大気泡を前記通水経路部に供給するように構成されていることも好ましい。
【0024】
噴流より大きな断面積となる大気泡を供給することで、噴流の周囲に存在している空気をより多く押し出すことができ、旋回流の流速をより一層高めることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。更に、噴流が大気泡の中を貫通する状態と、噴流が水の中を貫通する状態とを交互に作り出すことができ、噴流の通水抵抗を大きく変動させることができるので、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、大型のポンプや電磁弁を用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能な吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す吐水装置における吐水初速の変動を示す図である。
【図3】図1に示す吐水装置の吐水状態を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す吐水装置が有する水溜室の概略構成を模式的に示す図である。
【図5】図4のA―A断面を示す図である。
【図6】図4のB―B断面を示す図である。
【図7】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図8】図7のC―C断面を示す図である。
【図9】図7のD領域を拡大して示す図である。
【図10】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図11】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図12】図11のE―E断面を示す図である。
【図13】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
本発明の実施形態である吐水装置について説明する。本発明に係る吐水装置は、人体に向けて水を吐出するものであって、大型のポンプを用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能なものである。従って、本発明に係る吐水装置の応用範囲は多岐に渡るものであって、水塊となった吐水を人体に着水することが可能であって、節水効果と洗浄感向上とを両立できるあらゆるものに応用可能なものである。本実施形態の説明では、人体の局部洗浄を行う装置として本発明の吐水装置を応用した一例を説明する。本発明の趣旨に鑑みれば、本発明に係る吐水装置としてはこれに限られるものではない。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る吐水装置としての局部洗浄装置WAは、大便器CBに載せて使用されるものである。局部洗浄装置WAは、本体部WAaと、便座WAbと、便蓋WAcと、リモコンWAdとを備えている。本体部WAaは、ノズルNZを有しており、ノズルNZを進退自在に保持している。本体部WAaは、便座WAb及び便蓋WAcを回動自在に保持している。
【0030】
使用者は使用時に、便蓋WAcを図1に示すように便蓋WAcを上方に回動させ、便座WAbを露出させる。使用者は便座WAbに着座して用便をした後、リモコンWAdを操作してノズルNZに形成された吐出口NZaから吐水させ、自身の局部を洗浄する。使用者は局部洗浄後、リモコンWAdを操作して吐出口NZaからの吐水を停止する。その後使用者は、リモコンWAdを操作して大便器CBに洗浄水を流す。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、吐水JWの進行方向に沿ったJ軸と、鉛直方向に沿ったV軸とを設定し、このJ軸及びV軸を用いながら局部洗浄装置WAの吐水態様について説明する。
【0032】
本実施形態における吐水初速の変動態様の一例を図2に示す。図2に示すように、吐水初速を周期的に変動させることで、吐水初速が低い状態(図2のFW)から高い状態(図2のAW)に至るまでは、後続の吐水を先行する吐水に追い付かせる追い付き期間を形成している。周期的に発生する追い付き期間の間は、水塊の形成に寄与せず吐水する期間なので、本実施形態では便宜的に無駄水期間と呼称する。
【0033】
図3に、図1に示す局部洗浄装置WAの吐水状態を模式的に示す。本実施形態では、大型のポンプを使用することなく、吐水される水の流速を周期的に変動させて、大きな水塊を吐水対象部位に衝突させるように構成されている。
【0034】
このように吐水される水の流速の変動が起こると、図3の(A)に示すように、吐水JWは、部位Wp1,部位Wp2,部位Wp3,部位Wp4,部位Wp5を含むものとなる。この各部位のそれぞれの流速を、V1,V2,V3,V4,V5とすると、V1(≒V5)<V2(≒V4)<V3となる。
【0035】
よって、吐水直後から図3の(A)〜(C)へと移行するにつれて、部位Wp3は部位Wp2より速度が大きいから、部位Wp3は部位Wp2と合体し、さらに部位Wp1と合体して大きな水塊となる。
【0036】
このように最大流速の部位Wp3がその前の部位Wp2,部位Wp1と順次合体することにより、大きな塊となって、人体局部に着水することになる。この洗浄水は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギ(洗浄強度)が大きい水塊状態となっている。この部位Wp3の流速V3は、最大流速であることから、脈動流で吐水された洗浄水は、合体した水塊の状態が脈動周期ごとに現れるような吐水形態で、吐出口NZaから吐水されていることになる。しかも、脈動周期でこのような現象が起きることから、上記のように最大流速の部位Wp3の合体を経た水塊は繰り返し現れ、ある吐水タイミングでの水塊とその次の吐水タイミングでの部位Wp3の合体を経た水塊とはほぼ同じ速度で吐水されることになる。しかも、このそれぞれの水塊は、最大流速での部位Wp3に遅れて吐水された部位Wp4、部位Wp5で繋がれたような状態となる。
【0037】
本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、大型のポンプを用いずに吐水の流速変化をつけ、上述したような繰り返し周期的に現れる水塊による吐水を行うものである。局部洗浄装置WAは、図1に示したノズルNZの吐出口NZaの上流側に、水溜室10を有している。本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、水溜室10によって気泡を供給することで吐水の流速変化をつけている。この水溜室10の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、水溜室10の概略構成を模式的に示す図である。
【0038】
図4に示すように水溜室10は、空気管路101と、給水管路102(給水路)と、吐出管路103と、を備えている。空気管路101、給水管路102、及び吐出管路103は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。
【0039】
水溜室10は、全体としては略三角柱状の箱形状を成している。水溜室10は、壁10eと、壁10fと、壁10gと、壁10iと、壁10jとを有している。図4には、壁10e,壁10f,壁10gのみが三角形を成すように描かれており、壁10eと壁10fとが直角を成し、壁10gが斜辺となる直角三角形を成すように描かれている。壁10iと壁10jとは互いに対向する位置に配置される壁であって、壁10eと、壁10fと、壁10gとを繋ぐように配置される壁である。
【0040】
空気管路101は、水溜室10に形成された空気導入口10aを介して、水溜室10内部と連通している。空気導入口10aは、壁10fと壁10gとが突き合わされる角部近傍であって、壁10gの上流側端に形成されている。
【0041】
給水管路102は、噴射口10bを介して、水溜室10内部と連通している。噴射口10bは、壁10fと壁10eとが突き合わされる角部近傍であって、壁10fに形成されている。
【0042】
吐出管路103は、水溜室側開口10cを介して、水溜室10内部と連通している。水溜室側開口10cは、壁10gと壁10eとが突き合わされる角部近傍であって、壁10fに形成されている。
【0043】
空気管路101は、空気導入口10aと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101から導入される空気は、空気導入口10aから水溜室10の内部に引き込まれる。水溜室10の内部に引きこまれた空気は、気泡BAを形成している。
【0044】
給水管路102は、噴射口10bと給水源とを繋ぐ管路である。給水管路102は、その管路の途上若しくは噴射口10bにおいて縮径されている。従って、給水管路102から供給される水は、その速度が高められ噴流WSmとして水溜室10内に噴射される。
【0045】
吐出管路103は、水溜室側開口10cとノズルNZ(図1参照)に形成された吐出口NZaとを繋ぐ管路である。本実施形態の場合、噴射口10bと水溜室側開口10cとは対向配置されている。従って、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。吐出管路103に入った水は、J軸に沿って吐出管路103内を進行し、吐出口NZaから外部へと吐出される。
【0046】
上述したように、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。従って、噴射口10bから吐出口NZaに至る噴流WSmが通過する経路である通水経路部105が形成される。本実施形態の場合、通水経路部105は、噴射口10bと水溜室側開口10cとを繋ぐ経路である。
【0047】
水溜室10内の通水経路部105を除いた残余の領域は、水溜部106となっている。水溜部106は、通水経路部105に隣接させて溜水PWを形成するための部分である。本実施形態の場合、水溜部106は、通水経路部105を囲むように形成されている。
【0048】
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、三角形となっている水溜室10の一辺側である壁10eに近接させて配置されている。一方、空気導入口10aは、壁10eとは反対側の頂点に相当する壁10f及び壁10gの突き合わせ部分に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10aとは離隔配置されている。
【0049】
図4のA―A断面を図5に示し、図4のB―B断面を図6に示す。図4に示す状態では、噴流WSmは、溜水PWの中を進行しており、図5に示すように溜水PWからの抵抗を受けながら水溜室側開口10cに向かっている。水溜室側開口10cに至った噴流WSmは、吐出管路103内に入り、図6に示すように吐出管路103の内壁面と接触した状態で進行している。
【0050】
図4に示す状態では、気泡BAは小さい。図4に示す状態から更に時間が進行すると、図7に示すように細長形状に気泡BAが成長する。気泡BAは、噴流WSmにその下端が近づくまで成長している。従って、副水流WSsが旋回可能な領域は、図4に示す状態よりは狭まっている。副水流WSsは、旋回流速が速くなり、且つ噴流WSmの流れを阻害しない方向に旋回している。図7のC―C断面を図8に、図7のD領域を図9にそれぞれ示す。
【0051】
図8に示すように、細長形状の気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁10f,10i,10j,10gの内の3つの壁10f,10i,10jに接触して成長している。従って、副水流WSsに接触する面は、副水流導入口10dに向かう面のみとなっている。
【0052】
図9に示すように、細長形状に成長した気泡BAは、鉛直方向であるV軸方向に浮力が作用する。副水流WSsは、この浮力に抗するように気泡BAに作用している。従って、気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁10f,10i,10j,10gの内の3つの壁10f,10i,10jに接触した状態を保つことができる。
【0053】
細長形状の気泡BAの成長という観点からは、壁10f,10i,10jは、気泡BAを空気導入口10aから通水経路部105に導くガイド面として機能している。副水流WSsは、気泡BAがガイド面である壁10f,10i,10jから離隔しないように、壁10f,10i,10jに向けて気泡BAを押し付ける力を発生させ、細長形状に気泡を成長させる押圧力付与手段として機能している。
【0054】
図7に示す状態から更に時間が進行すると、図10に示すように細長形状の気泡BAが噴流WSmに近づき干渉し始める。気泡BAは、噴流WSmに引っ張られ、通水経路部105に入り込む。従って、気泡BAが入り込んだ分の水が押し退けられることになり、副水流WSsの旋回流速が速くなる。本実施形態においては、旋回流である副水流WSsの流速がある程度速くなると、空気導入口10aから水が逆流し、空気の供給を一時的に遮断するように構成されている。本実施形態の水溜室10が略三角形状を成しているのは、このように一時的に空気導入口10aに水を逆流させ、空気の供給を一時的に遮断するためである。
【0055】
本実施形態の場合、壁10gは少なくともその一部がガイド壁面として機能するように構成されている。本実施形態では、空気導入口10a近傍における旋回流(副水流WSs)上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成している。本明細書において、「壁10gが空気導入方向と略沿うように」とは、空気導入方向と旋回流(副水流WSs)上流側の水流方向とが対向するような配置関係を指しており、空気導入方向に対して水流方向が直交するものや、空気導入方向に対して水流方向が完全に沿うものは含まない概念である。
【0056】
また、ガイド壁面である壁10gは、空気導入方向と旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように構成されている。
【0057】
また、ガイド壁面である壁10gは、水溜部106における吐出管路103(吐出流路)の近傍と空気導入口10aの近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されている。
【0058】
図10に示す状態から更に時間が進行すると、図11に示すように気泡BAが噴流WSmに完全に引き込まれ、気泡BAは通水経路部105の略全域に渡って存在する。旋回流速が高まった副水流WSsは、気泡BAを引きちぎることになる。図11のE―E断面を図12に示す。
【0059】
図12に示すように、噴流WSmは気泡BAを貫通している。このように噴流WSmが気泡BAを貫通することで、噴流WSm周りの抵抗が低下し、噴流WSmは速度を低下させずに吐出口NZaに向かうことができる。もっとも、図12に例示するような、噴流WSmが気泡BAを完全に貫通する状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において溜水PWと接触する状態であっても構わないものである。
【0060】
図11に示す状態では、通水経路部105の水を気泡BAが押し出しており、副水流WSsの流速は依然として速いままである。従って、空気導入口10aからは水が逆流し、空気の供給が遮断された状態が継続している。
【0061】
図11に示す状態から更に時間が進行すると、図13に示すように気泡BAが噴流WSmに引き込まれるように吐出管路103に向かい、気泡BAが吐出管路103に入り込む。気泡BAは、通水経路部105よりも広い流路断面積となるように形成されているので、水溜室側開口10cの外周に引っかかりながら吐出管路103に向かう。このように水溜室側開口10cの外周に引っかかった気泡BAは、噴流WSmによって後方から押し込まれたり、溜水PWからの圧力を受けて押し込まれたりしながら、吐出管路103に入っていくことになる。
【0062】
図13に示す状態では、通水経路部105から気泡BAが排出されるので、通水経路部105に水が入り込み、副水流WSsは通水経路部105に向かう流速は速くなるものの、残余の旋回流部分は流速が遅くなる。従って、空気導入口10aからの水の逆流は抑制され、空気の再供給が開始される。
【0063】
気泡BAが吐出管路103内に入り込むと、吐出管路103の内壁に沿って空気の膜を形成し、噴流WSmはその膜の中を進行する。従って、噴流WSmが吐出管路103の内壁から受ける抵抗が減少し、噴流WSmは減速されずに吐出口NZaに向かう。もっとも、噴流WSmを気泡BAが完全に包むような状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において吐出管路103と接触する状態であっても構わないものである。
【0064】
図13に示す状態から気泡BAが更に吐出管路103の下流側に進行すると、次の気泡BAが空気管路101から取り込まれ、図4の状態に戻る。本実施形態では、図4〜図13を参照しながらした説明による気泡BAの動きが周期的に繰り返される。
【0065】
上述したように本実施形態において気泡供給手段は、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流(副水流WSs)の流れを変化させることによって、空気導入口10aから空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【0066】
本実施形態によれば、空気導入口10aから水溜室内に空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すので、噴流WSmに対して気泡BAが多く供給される状態と、噴流に対して気泡が供給されない状態とを作り出すことができる。噴流WSmに対する気泡BAの供給量に大きな増減を生じさせることができるため、吐水に大きな流速変動を起こすことができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。上述した本実施形態では、気泡BAを大きく形成し、大きく形成した気泡BAを一つずつ供給したけれども、気泡の供給態様はこれに限られるものではなく、分割された気泡を複数同時に供給しても構わないものである。
【0067】
更に、本実施形態では、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流である副水流WSsの流れを変化させることで空気を周期的に遮断/導入させている。空気導入口10aからの空気の導入は副水流WSsによって影響を受けているため、噴流WSmによって自然発生する副水流WSsの流れを変化させれば、電磁弁等を用いて空気導入口を電気的に開閉させなくとも、空気を周期的に遮断/導入させることができる。このように本実施形態によれば、副水流WSsの流れを変化させるという簡単な構成で気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0068】
また本実施形態では、気泡供給手段は、空気導入口10aから導入した空気によって形成された気泡BAを噴流WSmに引き込ませることで副水流WSsの流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって空気導入口10aに副水流WSsを一時的に逆流させやすくするように構成されている。
【0069】
気泡BAが噴流WSmに引き込まれると、その引き込みに伴って噴流WSmの周囲に存在していた水が押し出され、副水流WSsの流速が一時的に高まる。このように噴流WSmに気泡BAが供給されることによる副水流WSsの流速の一時的な高まりを利用し、空気導入口10aに副水流WSsを一時的に逆流させている。従って、副水流WSsの流速変化を利用したより簡単な構成で、気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0070】
また本実施形態では、気泡供給手段は、空気導入口10a近傍における副水流WSs上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが対向するように構成されている。
【0071】
このように、空気導入口10a近傍における副水流WSs上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成することで、ガイド壁面である壁10gに沿った副水流WSsの流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0072】
また本実施形態では、ガイド壁面である壁10gは、水溜部106における吐出管路103の近傍と空気導入口10aの近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されている。
【0073】
気泡BAの噴流WSmへの引き込みに伴って流速が高まった副水流WSsは、吐出管路103近傍から空気導入口10aの近傍に向かって進む。そこで、ガイド壁面である壁10gを屈曲部を有さない連続面とすることで、副水流WSsの流速を減じることなく空気導入口10a近傍へと送り込むことができる。
【0074】
また本実施形態では、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、ガイド壁面である壁10gが構成されている。
【0075】
このように、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するようにガイド壁面である壁10gが構成されているので、流速が十分に高まっていない旋回流の場合は、空気の押し込み力が不足するように構成することができ、流速が十分に高まった旋回流の場合のみに空気を押し込んで逆流することができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0076】
また本実施形態では、気泡供給手段は、噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを生成し、この大気泡BAを通水経路部105に供給するように構成されている。
【0077】
噴流より大きな断面積となる大気泡BAを供給することで、噴流WSmの周囲に存在している空気をより多く押し出すことができ、副水流WSsの流速をより一層高めることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。更に、噴流WSmが大気泡の中を貫通する状態と、噴流WSmが水の中を貫通する状態とを交互に作り出すことができ、噴流WSmの通水抵抗を大きく変動させることができるので、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
【符号の説明】
【0078】
WA:局部洗浄装置(吐水装置)
WAa:本体部
WAb:便座
WAc:便蓋
WAd:リモコン
NZ:ノズル
NAa:吐出口
CB:大便器
JW:吐水
10:水溜室
10a:空気導入口
10b:噴射口
10c:水溜室側開口
101:空気管路
102:給水管路
103:吐出管路
105:通水経路部
106:水溜部
PW:溜水
BA:気泡
WSm:噴流
WSs:副水流
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を洗浄するための吐水装置は、洗浄感を高めることが求められている。洗浄感は、吐水装置から吐出された水が人体に当たった場合の刺激感と量感とによって左右される感覚である。刺激感と量感とを吐出される水の性状に当てはめると、刺激感とは水の流速に代表される物理量であり、量感とは人体に当たった水の面積(人体に当たる直前の水の断面積にも相当する)に代表される物理量である。換言すれば、刺激感は水の流速に応じて使用者が感じる水の刺激の強さであって、水の流速が速くなれば刺激感が強くなり、水の流速が遅くなれば刺激感が弱くなるものである。また、量感は人体に当たった水の面積に応じて使用者が感じる水の量の多少であって、水の面積が広くなれば量感が強くなり、水の面積が狭くなれば量感が弱くなるものである。
【0003】
一方で吐水装置には、より節水性能を高めることも求められている。節水性能を高めるには、吐水装置から吐出される水の量を減らすことが必要であるものの、単純に吐出される水の量を減らせば量感が低減されることになり、洗浄感に不満を抱く使用者が増えるおそれがある。
【0004】
そこで、連続的な線状の吐水を間欠的な水塊による吐水に変換することで、低水量でありながら、人体に当たる水の面積を確保し、量感を損ねない技術が提案されている。この技術の一例としては、下記特許文献1に記載のものが提案されている。下記特許文献1に記載の技術では、吐水に噴射速度が速い第一部分と噴射速度が遅い第二部分とを交互に形成し、人体への着水前に第一部分が第二部分に追いつくことで、大きな水塊を形成している。下記特許文献1に記載の技術では、このような速度差を形成するために、吐水装置への給水圧よりも高い圧力を間欠的に加えて、吐水圧を大きく変動させることが利用されている。このように吐水圧を大きく変動させることで、吐水に間欠的な流速変動が起きることから、上述したような間欠的な水塊による吐水が実現される。
【0005】
下記特許文献1に記載の技術は、間欠的な水塊による吐水を確実に実現するためには優れた技術であるけれども、給水圧よりも高い圧力を加えるために比較的大型のポンプが必要となる。このような比較的大型のポンプが必須のものとされれば、吐水装置全体が高価なものとなり、装置の大型化にも繋がるおそれがある。
【0006】
ポンプを用いずに吐水の流速を周期的に変動させる技術としては、下記特許文献2に記載のものが提案されている。下記特許文献2では、吐水に気泡を混入させることで吐水の流速変動を起こさせている。同文献の記載によれば、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより多い部分では、その部分の洗浄水の速度は、より高速になる。一方で、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより少ない部分では、その部分の洗浄水の速度は、より低速になる。これにより、吐水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。
【0007】
ポンプを用いずに吐水の流速を周期的に変動させる技術ではないものの、水に対する気泡の混入量を変化させる技術として、下記特許文献3に記載のものが提案されている。下記特許文献3では、供給する空気量を調整するため、気体混入比制御手段が設けられている。気体混入比制御手段は、気体供給流路と、気体供給流路に設けられた電磁弁である気体流量弁とを有している。この気体流量弁を開くと、その開度に応じた空気が供給され、気泡混入水が生成される。一方、この気体流量弁を閉じると空気の流入が遮断され、気泡混入水は生成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−90151号公報
【特許文献2】特許第4572999号公報
【特許文献3】特開2008−237601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2では、ポンプを使わずに流速を変動させることができるものであるが、空気の混入量の変動はいわば成り行きで発生するものであり、その変動幅は僅かなものである。そのため、気泡供給量を大きく変動させることができず、吐水の流速を大きく変動させることができないものである。
【0010】
一方、上記特許文献3に記載の気泡混入量制御技術を適用し、気体流量弁を細かく開閉させることで空気の混入量を変動させ、流速を大きく変動させた吐水を実現することは可能である。しかしながら、そもそも装置の大型化や高価化を回避するべくポンプレスでの構成を検討しているにも関わらず、電磁弁である気体流量弁を設けることは、結果的に装置全体が高価なものとなり、装置の大型化に繋がるおそれがある。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型のポンプや電磁弁を用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能な吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る吐水装置は、人体に向けて水を吐出する吐水装置であって、水を供給する給水路と、前記給水路から供給された水を下流側に向けて噴流として噴射する噴射口と、前記噴射口の下流側に設けられ、前記噴流を外部に吐出する吐出口が設けられた吐出流路と、前記噴射口と前記吐出流路との間に設けられ、前記噴射口から前記吐出流路に至る噴流が通過する経路である通水経路部及び前記通水経路部に隣接させて溜水を形成するための水溜部を有する水溜室と、前記水溜部に空気を導入する空気導入口を有し、前記空気導入口から導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を前記通水経路部に間欠的に供給する気泡供給手段と、を備える。本発明において気泡供給手段は、前記噴流によって前記水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることによって、前記空気導入口から空気を導入する状態と、前記空気導入口からの空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【0013】
本発明によれば、空気導入口から水溜室内に空気を導入する状態と、空気導入口から空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すので、噴流に対して気泡が多く供給される状態と、噴流に対して気泡が供給されない状態とを作り出すことができる。噴流に対する気泡の供給量に大きな増減を生じさせることができるため、吐水に大きな流速変動を起こすことができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。
【0014】
更に、本発明では、噴流によって水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることで空気を周期的に遮断/導入させている。空気導入口からの空気の導入は旋回流によって影響を受けているため、噴流によって自然発生する旋回流の流れを変化させれば、電磁弁等を用いて空気導入口を電気的に開閉させなくとも、空気を周期的に遮断/導入させることができる。このように本発明によれば、旋回流の流れを変化させるという簡単な構成で気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0015】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記空気導入口から導入した空気によって形成された気泡を前記噴流に引き込ませることで前記旋回流の流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって前記空気導入口に前記旋回流を一時的に逆流させるように構成されていることも好ましい。
【0016】
気泡が噴流に引き込まれると、その引き込みに伴って噴流の周囲に存在していた水が押し出され、旋回流の流速が一時的に高まる。この好ましい態様では、このように噴流に気泡が供給されることにより旋回流の流速の一時的な高まりを利用し、空気導入口に旋回流を一時的に逆流させている。従って、旋回流の流速変化を利用したより簡単な構成で、気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0017】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記空気導入口近傍における前記旋回流上流側のガイド壁面を、前記空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが対向するように構成されていることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、空気導入口近傍における旋回流上流側のガイド壁面を、空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成することで、ガイド壁面に沿った旋回流の流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0019】
また本発明に係る吐水装置では、前記ガイド壁面は、前記水溜部における前記吐出流路の近傍と前記空気導入口の近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されていることも好ましい。
【0020】
気泡の噴流への引き込みに伴って流速が高まった旋回流は、吐出流路近傍から空気導入口の近傍に向かって進む。そこでこの好ましい態様では、ガイド壁面を屈曲部を有さない連続面とすることで、旋回流の流速を減じることなく空気導入口近傍へと送り込むことができる。これにより、ガイド壁面に沿った旋回流の流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0021】
また本発明に係る吐水装置では、前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、前記ガイド壁面が構成されていることも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、空気導入方向と旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するようにガイド壁面が構成されているので、流速が十分に高まっていない旋回流の場合は、空気の押し込み力が不足するように構成することができ、流速が十分に高まった旋回流の場合のみに空気を押し込んで逆流させやすくすることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0023】
また本発明に係る吐水装置では、前記気泡供給手段は、前記噴射口の流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡を生成し、この大気泡を前記通水経路部に供給するように構成されていることも好ましい。
【0024】
噴流より大きな断面積となる大気泡を供給することで、噴流の周囲に存在している空気をより多く押し出すことができ、旋回流の流速をより一層高めることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。更に、噴流が大気泡の中を貫通する状態と、噴流が水の中を貫通する状態とを交互に作り出すことができ、噴流の通水抵抗を大きく変動させることができるので、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、大型のポンプや電磁弁を用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能な吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る吐水装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す吐水装置における吐水初速の変動を示す図である。
【図3】図1に示す吐水装置の吐水状態を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す吐水装置が有する水溜室の概略構成を模式的に示す図である。
【図5】図4のA―A断面を示す図である。
【図6】図4のB―B断面を示す図である。
【図7】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図8】図7のC―C断面を示す図である。
【図9】図7のD領域を拡大して示す図である。
【図10】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図11】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【図12】図11のE―E断面を示す図である。
【図13】図4に示す水溜室で噴流に気泡を供給する態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
本発明の実施形態である吐水装置について説明する。本発明に係る吐水装置は、人体に向けて水を吐出するものであって、大型のポンプを用いることなく、吐水に充分大きな流速変動を与えることができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することが可能なものである。従って、本発明に係る吐水装置の応用範囲は多岐に渡るものであって、水塊となった吐水を人体に着水することが可能であって、節水効果と洗浄感向上とを両立できるあらゆるものに応用可能なものである。本実施形態の説明では、人体の局部洗浄を行う装置として本発明の吐水装置を応用した一例を説明する。本発明の趣旨に鑑みれば、本発明に係る吐水装置としてはこれに限られるものではない。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る吐水装置としての局部洗浄装置WAは、大便器CBに載せて使用されるものである。局部洗浄装置WAは、本体部WAaと、便座WAbと、便蓋WAcと、リモコンWAdとを備えている。本体部WAaは、ノズルNZを有しており、ノズルNZを進退自在に保持している。本体部WAaは、便座WAb及び便蓋WAcを回動自在に保持している。
【0030】
使用者は使用時に、便蓋WAcを図1に示すように便蓋WAcを上方に回動させ、便座WAbを露出させる。使用者は便座WAbに着座して用便をした後、リモコンWAdを操作してノズルNZに形成された吐出口NZaから吐水させ、自身の局部を洗浄する。使用者は局部洗浄後、リモコンWAdを操作して吐出口NZaからの吐水を停止する。その後使用者は、リモコンWAdを操作して大便器CBに洗浄水を流す。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、吐水JWの進行方向に沿ったJ軸と、鉛直方向に沿ったV軸とを設定し、このJ軸及びV軸を用いながら局部洗浄装置WAの吐水態様について説明する。
【0032】
本実施形態における吐水初速の変動態様の一例を図2に示す。図2に示すように、吐水初速を周期的に変動させることで、吐水初速が低い状態(図2のFW)から高い状態(図2のAW)に至るまでは、後続の吐水を先行する吐水に追い付かせる追い付き期間を形成している。周期的に発生する追い付き期間の間は、水塊の形成に寄与せず吐水する期間なので、本実施形態では便宜的に無駄水期間と呼称する。
【0033】
図3に、図1に示す局部洗浄装置WAの吐水状態を模式的に示す。本実施形態では、大型のポンプを使用することなく、吐水される水の流速を周期的に変動させて、大きな水塊を吐水対象部位に衝突させるように構成されている。
【0034】
このように吐水される水の流速の変動が起こると、図3の(A)に示すように、吐水JWは、部位Wp1,部位Wp2,部位Wp3,部位Wp4,部位Wp5を含むものとなる。この各部位のそれぞれの流速を、V1,V2,V3,V4,V5とすると、V1(≒V5)<V2(≒V4)<V3となる。
【0035】
よって、吐水直後から図3の(A)〜(C)へと移行するにつれて、部位Wp3は部位Wp2より速度が大きいから、部位Wp3は部位Wp2と合体し、さらに部位Wp1と合体して大きな水塊となる。
【0036】
このように最大流速の部位Wp3がその前の部位Wp2,部位Wp1と順次合体することにより、大きな塊となって、人体局部に着水することになる。この洗浄水は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギ(洗浄強度)が大きい水塊状態となっている。この部位Wp3の流速V3は、最大流速であることから、脈動流で吐水された洗浄水は、合体した水塊の状態が脈動周期ごとに現れるような吐水形態で、吐出口NZaから吐水されていることになる。しかも、脈動周期でこのような現象が起きることから、上記のように最大流速の部位Wp3の合体を経た水塊は繰り返し現れ、ある吐水タイミングでの水塊とその次の吐水タイミングでの部位Wp3の合体を経た水塊とはほぼ同じ速度で吐水されることになる。しかも、このそれぞれの水塊は、最大流速での部位Wp3に遅れて吐水された部位Wp4、部位Wp5で繋がれたような状態となる。
【0037】
本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、大型のポンプを用いずに吐水の流速変化をつけ、上述したような繰り返し周期的に現れる水塊による吐水を行うものである。局部洗浄装置WAは、図1に示したノズルNZの吐出口NZaの上流側に、水溜室10を有している。本実施形態に係る局部洗浄装置WAは、水溜室10によって気泡を供給することで吐水の流速変化をつけている。この水溜室10の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、水溜室10の概略構成を模式的に示す図である。
【0038】
図4に示すように水溜室10は、空気管路101と、給水管路102(給水路)と、吐出管路103と、を備えている。空気管路101、給水管路102、及び吐出管路103は、水溜室10の内部に連通するように設けられた管路である。
【0039】
水溜室10は、全体としては略三角柱状の箱形状を成している。水溜室10は、壁10eと、壁10fと、壁10gと、壁10iと、壁10jとを有している。図4には、壁10e,壁10f,壁10gのみが三角形を成すように描かれており、壁10eと壁10fとが直角を成し、壁10gが斜辺となる直角三角形を成すように描かれている。壁10iと壁10jとは互いに対向する位置に配置される壁であって、壁10eと、壁10fと、壁10gとを繋ぐように配置される壁である。
【0040】
空気管路101は、水溜室10に形成された空気導入口10aを介して、水溜室10内部と連通している。空気導入口10aは、壁10fと壁10gとが突き合わされる角部近傍であって、壁10gの上流側端に形成されている。
【0041】
給水管路102は、噴射口10bを介して、水溜室10内部と連通している。噴射口10bは、壁10fと壁10eとが突き合わされる角部近傍であって、壁10fに形成されている。
【0042】
吐出管路103は、水溜室側開口10cを介して、水溜室10内部と連通している。水溜室側開口10cは、壁10gと壁10eとが突き合わされる角部近傍であって、壁10fに形成されている。
【0043】
空気管路101は、空気導入口10aと大気開放された開口とを繋ぐ管路である。空気管路101から導入される空気は、空気導入口10aから水溜室10の内部に引き込まれる。水溜室10の内部に引きこまれた空気は、気泡BAを形成している。
【0044】
給水管路102は、噴射口10bと給水源とを繋ぐ管路である。給水管路102は、その管路の途上若しくは噴射口10bにおいて縮径されている。従って、給水管路102から供給される水は、その速度が高められ噴流WSmとして水溜室10内に噴射される。
【0045】
吐出管路103は、水溜室側開口10cとノズルNZ(図1参照)に形成された吐出口NZaとを繋ぐ管路である。本実施形態の場合、噴射口10bと水溜室側開口10cとは対向配置されている。従って、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。吐出管路103に入った水は、J軸に沿って吐出管路103内を進行し、吐出口NZaから外部へと吐出される。
【0046】
上述したように、噴射口10bから水溜室10内に噴射される噴流WSmは、水溜室10内をJ軸に沿って進行し、水溜室側開口10cから吐出管路103に入る。従って、噴射口10bから吐出口NZaに至る噴流WSmが通過する経路である通水経路部105が形成される。本実施形態の場合、通水経路部105は、噴射口10bと水溜室側開口10cとを繋ぐ経路である。
【0047】
水溜室10内の通水経路部105を除いた残余の領域は、水溜部106となっている。水溜部106は、通水経路部105に隣接させて溜水PWを形成するための部分である。本実施形態の場合、水溜部106は、通水経路部105を囲むように形成されている。
【0048】
本実施形態の場合、噴射口10b及び水溜室側開口10cは、三角形となっている水溜室10の一辺側である壁10eに近接させて配置されている。一方、空気導入口10aは、壁10eとは反対側の頂点に相当する壁10f及び壁10gの突き合わせ部分に近接配置されている。従って、噴射口10b及び水溜室側開口10cと、空気導入口10aとは離隔配置されている。
【0049】
図4のA―A断面を図5に示し、図4のB―B断面を図6に示す。図4に示す状態では、噴流WSmは、溜水PWの中を進行しており、図5に示すように溜水PWからの抵抗を受けながら水溜室側開口10cに向かっている。水溜室側開口10cに至った噴流WSmは、吐出管路103内に入り、図6に示すように吐出管路103の内壁面と接触した状態で進行している。
【0050】
図4に示す状態では、気泡BAは小さい。図4に示す状態から更に時間が進行すると、図7に示すように細長形状に気泡BAが成長する。気泡BAは、噴流WSmにその下端が近づくまで成長している。従って、副水流WSsが旋回可能な領域は、図4に示す状態よりは狭まっている。副水流WSsは、旋回流速が速くなり、且つ噴流WSmの流れを阻害しない方向に旋回している。図7のC―C断面を図8に、図7のD領域を図9にそれぞれ示す。
【0051】
図8に示すように、細長形状の気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁10f,10i,10j,10gの内の3つの壁10f,10i,10jに接触して成長している。従って、副水流WSsに接触する面は、副水流導入口10dに向かう面のみとなっている。
【0052】
図9に示すように、細長形状に成長した気泡BAは、鉛直方向であるV軸方向に浮力が作用する。副水流WSsは、この浮力に抗するように気泡BAに作用している。従って、気泡BAは、水溜室10の空気導入口10aから噴射口10bに向かって伸びる4つの壁10f,10i,10j,10gの内の3つの壁10f,10i,10jに接触した状態を保つことができる。
【0053】
細長形状の気泡BAの成長という観点からは、壁10f,10i,10jは、気泡BAを空気導入口10aから通水経路部105に導くガイド面として機能している。副水流WSsは、気泡BAがガイド面である壁10f,10i,10jから離隔しないように、壁10f,10i,10jに向けて気泡BAを押し付ける力を発生させ、細長形状に気泡を成長させる押圧力付与手段として機能している。
【0054】
図7に示す状態から更に時間が進行すると、図10に示すように細長形状の気泡BAが噴流WSmに近づき干渉し始める。気泡BAは、噴流WSmに引っ張られ、通水経路部105に入り込む。従って、気泡BAが入り込んだ分の水が押し退けられることになり、副水流WSsの旋回流速が速くなる。本実施形態においては、旋回流である副水流WSsの流速がある程度速くなると、空気導入口10aから水が逆流し、空気の供給を一時的に遮断するように構成されている。本実施形態の水溜室10が略三角形状を成しているのは、このように一時的に空気導入口10aに水を逆流させ、空気の供給を一時的に遮断するためである。
【0055】
本実施形態の場合、壁10gは少なくともその一部がガイド壁面として機能するように構成されている。本実施形態では、空気導入口10a近傍における旋回流(副水流WSs)上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成している。本明細書において、「壁10gが空気導入方向と略沿うように」とは、空気導入方向と旋回流(副水流WSs)上流側の水流方向とが対向するような配置関係を指しており、空気導入方向に対して水流方向が直交するものや、空気導入方向に対して水流方向が完全に沿うものは含まない概念である。
【0056】
また、ガイド壁面である壁10gは、空気導入方向と旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように構成されている。
【0057】
また、ガイド壁面である壁10gは、水溜部106における吐出管路103(吐出流路)の近傍と空気導入口10aの近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されている。
【0058】
図10に示す状態から更に時間が進行すると、図11に示すように気泡BAが噴流WSmに完全に引き込まれ、気泡BAは通水経路部105の略全域に渡って存在する。旋回流速が高まった副水流WSsは、気泡BAを引きちぎることになる。図11のE―E断面を図12に示す。
【0059】
図12に示すように、噴流WSmは気泡BAを貫通している。このように噴流WSmが気泡BAを貫通することで、噴流WSm周りの抵抗が低下し、噴流WSmは速度を低下させずに吐出口NZaに向かうことができる。もっとも、図12に例示するような、噴流WSmが気泡BAを完全に貫通する状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において溜水PWと接触する状態であっても構わないものである。
【0060】
図11に示す状態では、通水経路部105の水を気泡BAが押し出しており、副水流WSsの流速は依然として速いままである。従って、空気導入口10aからは水が逆流し、空気の供給が遮断された状態が継続している。
【0061】
図11に示す状態から更に時間が進行すると、図13に示すように気泡BAが噴流WSmに引き込まれるように吐出管路103に向かい、気泡BAが吐出管路103に入り込む。気泡BAは、通水経路部105よりも広い流路断面積となるように形成されているので、水溜室側開口10cの外周に引っかかりながら吐出管路103に向かう。このように水溜室側開口10cの外周に引っかかった気泡BAは、噴流WSmによって後方から押し込まれたり、溜水PWからの圧力を受けて押し込まれたりしながら、吐出管路103に入っていくことになる。
【0062】
図13に示す状態では、通水経路部105から気泡BAが排出されるので、通水経路部105に水が入り込み、副水流WSsは通水経路部105に向かう流速は速くなるものの、残余の旋回流部分は流速が遅くなる。従って、空気導入口10aからの水の逆流は抑制され、空気の再供給が開始される。
【0063】
気泡BAが吐出管路103内に入り込むと、吐出管路103の内壁に沿って空気の膜を形成し、噴流WSmはその膜の中を進行する。従って、噴流WSmが吐出管路103の内壁から受ける抵抗が減少し、噴流WSmは減速されずに吐出口NZaに向かう。もっとも、噴流WSmを気泡BAが完全に包むような状態が必須なものではなく、噴流WSmの周囲の多くの部分を気泡BAによって囲むことができればよく、一部において吐出管路103と接触する状態であっても構わないものである。
【0064】
図13に示す状態から気泡BAが更に吐出管路103の下流側に進行すると、次の気泡BAが空気管路101から取り込まれ、図4の状態に戻る。本実施形態では、図4〜図13を参照しながらした説明による気泡BAの動きが周期的に繰り返される。
【0065】
上述したように本実施形態において気泡供給手段は、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流(副水流WSs)の流れを変化させることによって、空気導入口10aから空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されている。
【0066】
本実施形態によれば、空気導入口10aから水溜室内に空気を導入する状態と、空気導入口10aから空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すので、噴流WSmに対して気泡BAが多く供給される状態と、噴流に対して気泡が供給されない状態とを作り出すことができる。噴流WSmに対する気泡BAの供給量に大きな増減を生じさせることができるため、吐水に大きな流速変動を起こすことができ、吐水から着水までの距離が短い場合であっても充分に大きな水塊を形成することができる。上述した本実施形態では、気泡BAを大きく形成し、大きく形成した気泡BAを一つずつ供給したけれども、気泡の供給態様はこれに限られるものではなく、分割された気泡を複数同時に供給しても構わないものである。
【0067】
更に、本実施形態では、噴流WSmによって水溜部106に形成される旋回流である副水流WSsの流れを変化させることで空気を周期的に遮断/導入させている。空気導入口10aからの空気の導入は副水流WSsによって影響を受けているため、噴流WSmによって自然発生する副水流WSsの流れを変化させれば、電磁弁等を用いて空気導入口を電気的に開閉させなくとも、空気を周期的に遮断/導入させることができる。このように本実施形態によれば、副水流WSsの流れを変化させるという簡単な構成で気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0068】
また本実施形態では、気泡供給手段は、空気導入口10aから導入した空気によって形成された気泡BAを噴流WSmに引き込ませることで副水流WSsの流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって空気導入口10aに副水流WSsを一時的に逆流させやすくするように構成されている。
【0069】
気泡BAが噴流WSmに引き込まれると、その引き込みに伴って噴流WSmの周囲に存在していた水が押し出され、副水流WSsの流速が一時的に高まる。このように噴流WSmに気泡BAが供給されることによる副水流WSsの流速の一時的な高まりを利用し、空気導入口10aに副水流WSsを一時的に逆流させている。従って、副水流WSsの流速変化を利用したより簡単な構成で、気泡の供給量に大きな増減を生じさせることが可能となる。
【0070】
また本実施形態では、気泡供給手段は、空気導入口10a近傍における副水流WSs上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが対向するように構成されている。
【0071】
このように、空気導入口10a近傍における副水流WSs上流側のガイド壁面である壁10gを、空気導入口10aから導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成することで、ガイド壁面である壁10gに沿った副水流WSsの流速が高まった場合に、導入される空気を押し込んで逆流させやすくすることができ、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0072】
また本実施形態では、ガイド壁面である壁10gは、水溜部106における吐出管路103の近傍と空気導入口10aの近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されている。
【0073】
気泡BAの噴流WSmへの引き込みに伴って流速が高まった副水流WSsは、吐出管路103近傍から空気導入口10aの近傍に向かって進む。そこで、ガイド壁面である壁10gを屈曲部を有さない連続面とすることで、副水流WSsの流速を減じることなく空気導入口10a近傍へと送り込むことができる。
【0074】
また本実施形態では、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、ガイド壁面である壁10gが構成されている。
【0075】
このように、空気導入方向と副水流WSs上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するようにガイド壁面である壁10gが構成されているので、流速が十分に高まっていない旋回流の場合は、空気の押し込み力が不足するように構成することができ、流速が十分に高まった旋回流の場合のみに空気を押し込んで逆流することができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。
【0076】
また本実施形態では、気泡供給手段は、噴射口10bの流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡BAを生成し、この大気泡BAを通水経路部105に供給するように構成されている。
【0077】
噴流より大きな断面積となる大気泡BAを供給することで、噴流WSmの周囲に存在している空気をより多く押し出すことができ、副水流WSsの流速をより一層高めることができる。従って、より確実に空気の遮断/導入を行うことができる。更に、噴流WSmが大気泡の中を貫通する状態と、噴流WSmが水の中を貫通する状態とを交互に作り出すことができ、噴流WSmの通水抵抗を大きく変動させることができるので、吐水により大きな流速変動を与えることができる。
【符号の説明】
【0078】
WA:局部洗浄装置(吐水装置)
WAa:本体部
WAb:便座
WAc:便蓋
WAd:リモコン
NZ:ノズル
NAa:吐出口
CB:大便器
JW:吐水
10:水溜室
10a:空気導入口
10b:噴射口
10c:水溜室側開口
101:空気管路
102:給水管路
103:吐出管路
105:通水経路部
106:水溜部
PW:溜水
BA:気泡
WSm:噴流
WSs:副水流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に向けて水を吐出する吐水装置であって、
水を供給する給水路と、
前記給水路から供給された水を下流側に向けて噴流として噴射する噴射口と、
前記噴射口の下流側に設けられ、前記噴流を外部に吐出する吐出口が設けられた吐出流路と、
前記噴射口と前記吐出流路との間に設けられ、前記噴射口から前記吐出流路に至る噴流が通過する経路である通水経路部及び前記通水経路部に隣接させて溜水を形成するための水溜部を有する水溜室と、
前記水溜部に空気を導入する空気導入口を有し、前記空気導入口から導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を前記通水経路部に間欠的に供給する気泡供給手段と、を備え、
前記気泡供給手段は、前記噴流によって前記水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることによって、前記空気導入口から空気を導入する状態と、前記空気導入口からの空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記気泡供給手段は、前記空気導入口から導入した空気によって形成された気泡を前記噴流に引き込ませることで前記旋回流の流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって前記空気導入口に前記旋回流を一時的に逆流させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記気泡供給手段は、前記空気導入口近傍における前記旋回流上流側のガイド壁面を、前記空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、
前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが対向するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記ガイド壁面は、前記水溜部における前記吐出流路の近傍と前記空気導入口の近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、前記ガイド壁面が構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記気泡供給手段は、前記噴射口の流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡を生成し、この大気泡を前記通水経路部に供給するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吐水装置。
【請求項1】
人体に向けて水を吐出する吐水装置であって、
水を供給する給水路と、
前記給水路から供給された水を下流側に向けて噴流として噴射する噴射口と、
前記噴射口の下流側に設けられ、前記噴流を外部に吐出する吐出口が設けられた吐出流路と、
前記噴射口と前記吐出流路との間に設けられ、前記噴射口から前記吐出流路に至る噴流が通過する経路である通水経路部及び前記通水経路部に隣接させて溜水を形成するための水溜部を有する水溜室と、
前記水溜部に空気を導入する空気導入口を有し、前記空気導入口から導入した空気を泡状にした気泡を生成するとともに、この気泡を前記通水経路部に間欠的に供給する気泡供給手段と、を備え、
前記気泡供給手段は、前記噴流によって前記水溜部に形成される旋回流の流れを変化させることによって、前記空気導入口から空気を導入する状態と、前記空気導入口からの空気の導入を停止する状態とを交互に作り出すように構成されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記気泡供給手段は、前記空気導入口から導入した空気によって形成された気泡を前記噴流に引き込ませることで前記旋回流の流速を一時的に高め、その流速の一時的な高まりによって前記空気導入口に前記旋回流を一時的に逆流させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記気泡供給手段は、前記空気導入口近傍における前記旋回流上流側のガイド壁面を、前記空気導入口から導入される空気の上流側における空気導入方向と略沿うように形成した領域を含み、
前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが対向するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記ガイド壁面は、前記水溜部における前記吐出流路の近傍と前記空気導入口の近傍とを繋ぎ、屈曲部を有さない連続面で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記空気導入方向と前記旋回流上流側の水流方向とが斜めにずれて対向するように、前記ガイド壁面が構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記気泡供給手段は、前記噴射口の流路断面積よりも大きな断面積となる大気泡を生成し、この大気泡を前記通水経路部に供給するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吐水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−47451(P2013−47451A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165868(P2012−165868)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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