説明

吸湿剤及びその製造方法、吸湿剤を用いた装置

【課題】水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】吸湿剤は、吸湿性無機多孔質材料と、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムあるいはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールと、を備えている。ポリスチレンスルホン酸ナトリウム又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのいずれか一方が、吸湿性無機多孔質材料の表面に付着されている。湿性無機多孔質材料は、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルであり、リンゴ酸架橋ポリビニルアルコールにおいて、リンゴ酸と前記ポリビニルアルコールとの質量比は1:10〜1:4である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿剤及びその製造方法に関する。本発明はさらに吸湿剤を利用してせいぞうされた各種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のエネルギー不足と環境汚染が日増しに深刻になる情況で、デシカント空調システムは、汚染がなく、低品質エネルギーを利用できる等の独特の利点を有しているため、国内外で競って開発されている空気処理システムになっている。デシカント空調システムとは吸湿剤を利用して空気中の水分を吸脱着するプロセスであって、その要は吸湿剤である。このため、デシカント空調システムに用いられる高効率の吸湿剤を開発することは、デシカント空調システムの商品化プロセスを加速させ、従来のシステム競争力を高めるためのキーポイントである。
【0003】
現在、デシカント空調システムに用いられる吸湿剤として、主に、塩化リチウム、シリカゲル、アルミナ、モレキュラーシーブなどがある。デシカント空調システムが除加湿する過程で、吸湿剤は、比表面積が大きく、十分な機械的強度があり、粒子サイズが均等であるという特徴を有する必要があるだけではなく、もっと重要なのは、水に対し強い選択吸着力があり、吸湿剤が空気中の水蒸気だけを吸着してその他の気体を吸着しない必要がある。従来の吸湿剤はいずれも選択性能或いは吸湿性能が低い等の問題がある。塩化リチウムは、吸湿量は多いが、高腐蝕性、潮解容易性、再生温度が高いという問題が存在する。シリカゲル系列及びアルミナ系列は選択性能が低く、除加湿過程で共吸着という問題が発生し、水分を吸着すると同時に、室内の他の臭い成分も吸着し、吸湿剤再生過程で臭い成分を室内に放出し、室内空気の質を大きく下げ、人体の健康を害する等の問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る吸湿剤は、吸湿性無機多孔質材料と、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールと、を備える。また、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのいずれか一方が、吸湿性無機多孔質材料の表面に付着されている。
【0006】
本発明者らは、吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのいずれか一方が付着されている吸湿剤が、水分の吸着性が高く、かつ、臭い成分の吸着性及び脱着性が低いことを見いだした。すなわち、本発明に係る吸湿剤は、吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の第2観点に係る吸湿剤は、第1観点に係る吸湿剤において、吸湿性無機多孔質材料は、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルである。本発明に係る吸湿剤は、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルの表面に、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の第3観点に係る吸湿剤の製造方法は、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程では、ポリスチレンスルホン酸塩を含有する溶液に、吸湿性無機多孔質材料を添加して混合液を作成し、作成した混合液を所定時間撹拌する。第2工程では、所定時間撹拌した混合液から吸湿性無機多孔質材料を分離して、吸湿性無機多孔質材料を乾燥する。この製造方法によって、吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩が付着した吸湿剤を得ることができる。
【0009】
本発明の第4観点に係る吸湿剤の製造方法は、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程では、ポリビニルアルコールを含有する溶液に、リンゴ酸と吸湿性無機多孔質材料とを添加して混合液を作成し、作成した混合液を所定時間撹拌する。第2工程では、所定時間撹拌した混合液から吸湿性無機多孔質材料を分離して、吸湿性無機多孔質材料を乾燥する。この製造方法によって、吸湿性無機多孔質材料の表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿剤を得ることができる。
【0010】
本発明の第5観点に係る調湿装置は、冷媒回路と、供給装置と、を備えている。冷媒回路は、第1観点から第4観点のいずれかの吸湿剤が担持された第1吸着熱交換器及び第2吸着熱交換器を有する。供給装置は、第1吸着熱交換器及び第2吸着熱交換器を通過した空気を、建物内へ供給する。また、冷媒回路の冷媒循環方向が切り換えられることによって、第1吸着熱交換器及び第2吸着熱交換器で吸湿剤の吸着動作と再生動作とが交互に行われる。
【0011】
本発明の第5観点に係る調湿装置では、第1吸着熱交換器及び第2吸着熱交換器には、水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤が担持されている。このため、この調湿装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【0012】
本発明の第6観点に係る加湿装置は、加熱部と、調湿素子と、送風部と、を備える。加熱部は、建物外から取り込まれた空気を加熱する。調湿素子は、第1観点から第4観点のいずれかの吸湿剤を有する。また、調湿素子は、外気から水分を吸湿する。さらに、調湿素子は、加熱部で加熱された空気が調湿素子を通る際に、外気から吸湿した水分を加熱空気中に放湿する。送風部は、調湿素子を経た空気を、建物内へと送る。
【0013】
本発明の第6観点に係る加湿装置では、調湿素子が、水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤を有している。このため、この加湿装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【0014】
本発明の第7観点に係る換気装置は、供給ファンと、排気ファンと、全熱交換器と、を備える。供給ファンは、建物外の空気を建物内に送る。排気ファンは、建物内の空気を建物外に送る。全熱交換器は、第1観点から第4観点のいずれかの吸湿剤が担持されており、供給ファンから送られる空気と排気ファンによって送られる空気との間で全熱交換を行う。
【0015】
本発明の第7観点に係る換気装置では、全熱交換器には、水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤が担持されている。このため、この換気装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る吸湿剤では、吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着されている。
【0017】
本発明の第2観点に係る吸湿剤では、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルの表面に、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着されている。
【0018】
上記二種類の吸湿剤は吸湿量が大きく、吸湿の選択性が高い特徴を有している。即ち、水分に対する吸着能力は強いが、アセトアルデヒド及びトルエンに対する吸着能力は低い。その理由は、無機多孔質材料の表面に付着しているポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールは強い親水性の塩基、例えばスルホン酸基、水酸基を有しており、これらの親水性塩基は水との結合力が強く、アセトアルデヒド及びトルエンに対する吸着能力は低い。従って、水分は優先的に吸湿剤に吸着され、吸湿の選択性を実現することができる。
【0019】
本発明の第3観点、第4観点に係る吸湿剤の製造方法は、簡単な攪拌、濾過、乾燥により、ポリスチレンスルホン酸塩またはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿性無機多孔質材料を得ることができ、使用する溶剤はいずれも水或いはアルコールである。従って、本発明に係る吸湿剤の製造方法は、製造工程が簡単で、環境フレンドリーであり、低コストなどの利点を有している。
【0020】
本発明の第5観点に係る調湿装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【0021】
本発明の第6観点に係る加湿装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【0022】
本発明の第7観点に係る換気装置では、水分の脱着時に、臭い成分が脱着されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)B型シリカゲルの細孔を示す概略図、(b)B型シリカゲルの細孔壁表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着された状態を示す概略図。
【図2】吸着性能試験に使用した装置の概略図。
【図3】本発明の実施形態に係る吸湿剤であって、B型シリカゲルの粒子表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着される様子を示す図。
【図4】調湿装置の備える概略冷媒回路図であって、(a)除湿運転の第1動作が行われている状態を示す図、(b)除湿運転の第2動作が行われている状態を示す図。
【図5】調湿装置の備える概略冷媒回路図であって、(a)加湿運転の第1動作が行われている状態を示す図、(b)加湿運転の第2動作が行われている状態を示す図。
【図6】加湿装置の備える加湿ロータ及び加熱装置の概略図であって、(a)加湿ロータに建物外の空気の水分が吸着されると同時に建物外の空気が加湿されて建物内に供給されている場合の空気の流れを示す図、(b)建物内の空気が建物外に排気される場合の空気の流れを示す図。
【図7】換気装置の備える全熱交換器の概略図であって、(a)全熱交換器を介して低湿の空気が建物内に供給される場合の空気の流れを示す図、(b)全熱交換器を介して高湿の空気が建物内に供給される場合の空気の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)吸湿剤の構成
本発明の吸湿剤は、吸湿性無機多孔質材料の表面に、ポリスチレンスルホン酸塩あるいはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着されている。
【0025】
吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩あるいはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを付着した本発明の吸湿剤は、吸湿性無機多孔質材料単体と比較して、水分の吸着性が高く、臭い成分の吸着性及び脱着性が低い性質を有することとなる。これにより、吸着した水分を脱着する際に、脱着される臭い成分を少なくすることができる。
【0026】
ここで、吸湿性無機多孔質材料としては、シリカゲルを用いることができる。なお、吸湿性無機多孔質材料としては、平均細孔径が5nm以上のシリカゲル(以下、B型シリカゲル或いはC型シリカゲルという)を用いることが好適である。また、以下では、B型シリカゲルよりも平均細孔径が小さいシリカゲル(具体的には、平均細孔径が5nm未満のシリカゲル)をA型シリカゲルという。
【0027】
(2)吸湿剤の製造方法
吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩を有する吸湿剤は、第1工程と、第2工程とを経て製造される。
【0028】
第1工程では、ポリスチレンスルホン酸塩水溶液に、吸湿性無機多孔質材料を添加して混合液を作成する。そして、作成した混合液を、所定時間撹拌する。
【0029】
第2工程では、所定時間撹拌した後の混合液から吸湿性無機多孔質材料を分離し、洗浄及び乾燥する。
【0030】
これにより、吸湿性無機多孔質材料の表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む層が積層された吸湿剤を得ることができる。
【0031】
また、吸湿性無機多孔質材料の表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを有する吸湿剤は、第1工程と、第2工程とを経て製造される。
【0032】
第1工程では、ポリビニルアルコール水溶液に、リンゴ酸と吸湿性無機多孔質材料とを添加して混合液を作成する。そして、作成した混合液を、所定時間撹拌する。
【0033】
第2工程では、所定時間撹拌した後の混合液から吸湿性無機多孔質材料を分離し、洗浄及び乾燥する。
【0034】
これにより、吸湿性無機多孔質材料の表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを含む層が積層された吸湿剤を得ることができる。
【0035】
本発明の吸湿剤の製造方法によれば、吸湿性無機多孔質材料の表面に、ポリスチレンスルホン酸塩を含む層、あるいは、リンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを含む層を積層することができるため、水吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着能力及び脱着能力の低い吸湿剤を製造することができる。
【0036】
以下、具体的な実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
吸湿性無機多孔質材料としてB型シリカゲルを用い、ポリスチレンスルホン酸塩としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いることで、B型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着した吸湿剤(以下、B−PSという)を製造した。なお、ここでいうB型シリカゲルの表面には、B型シリカゲルの粒子表面と、細孔壁表面と、が含まれる。
【0038】
B−PSの製造方法:
まず、活性化したB型シリカゲルを生成した。
【0039】
10gのB型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア550)に、100mlの水酸化ナトリウム水溶液(0.5mol/L)を添加してB型シリカゲル含有混合液を作成し、B型シリカゲル含有混合液を、室温で、30分間撹拌した。次に、B型シリカゲル含有混合液からB型シリカゲルを濾過して複数回(例えば、3回)洗浄した。そして、濾過及び洗浄して得られたB型シリカゲルに、100mlの塩酸水溶液(2mol/L)を添加してB型シリカゲル含有懸濁液を作成し、B型シリカゲル含有懸濁液を、室温で、1時間撹拌した。その後、B型シリカゲル含有懸濁液からB型シリカゲルを濾過して洗浄し、110℃で乾燥することで、活性化したB型シリカゲルを生成した。
【0040】
次に、活性化したB型シリカゲルを100mLの重量濃度が5wt%に調整されたポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社のポリスチレンスルホン酸ナトリウムPS−50)に添加して活性化B型シリカゲル含有混合液を作成し、活性化B型シリカゲル含有混合液を、室温で、12時間撹拌した(第1工程)。そして、活性化B型シリカゲル含有混合液からB型シリカゲルを濾過して洗浄し、110〜140℃で乾燥することで、高い水選択性を有するB−PS(吸湿剤)を得た(第2工程)。図1に示すように、強い親水性塩基をたくさん含む水酸基(−OH)がポリスチレンスルホン酸ナトリウム(−SO3Na)に転換されている。原材料のシリカゲルに比べて、B−PS表面の−SO3Naと水との結合力は更に強くなり、水分が吸湿剤の表面に優先的に吸着される。
【0041】
得られたB−PSの吸着性能試験の結果を表1に示す。なお、表1では、各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン、アンモニア等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、吸湿剤の用量は0.05gで、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0042】
ここで、本発明の吸着性能試験に使用した装置10を図2に示す。図2に示すように、 装置10は、水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン又はアンモニアのいずれか1つを含むテストガス11と、キャリアガス(窒素)12とを撹拌する容器14と、主に吸湿剤によって構成されているカラム16と検出部(図示せず)とを有するガスクロマトグラフ質量分析装置15と、を備えている。また、容器14とガスクロマトグラフ質量分析装置15とは、配管17によって接続されており、容器14内で撹拌されたテストガス11を含む溶液は、配管17を介してガスクロマトグラフ質量分析装置15に至る。そして、ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部が、カラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。なお、この装置10では、テストガス11とキャリアガス12とは、緩衝液で満たされた容器13内を通過した後、容器14に至る。
【0043】
また、比較例として、A型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア750)、B型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア550)、B−PAAS、B−PVA、B−PEG6000、B−OA、B−MA又はB−SMAを吸湿剤として採用し、吸着性能試験を行った。なお、比較例として挙げたA型シリカゲル及びB型シリカゲルは、ポリスチレンスルホン酸塩が表面に付着されていないシリカゲルである。また、B−PAASは、B型シリカゲルの表面にポリアクリル酸ナトリウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、ポリアクリル酸ナトリウムを採用することで得られる吸湿剤である。B−PVAは、B型シリカゲルの表面にポリビニルアルコールが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、ポリビニルアルコールを採用することで得られる吸湿剤である。B−PEG6000は、B型シリカゲルの表面にポリエチレングリコールが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、ポリエチレングリコールを採用することで得られる吸湿剤である。B−OAは、B型シリカゲルの表面にシュウ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、シュウ酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。B−MAは、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、リンゴ酸塩を採用することで得られる吸湿剤である。B−SMAは、B型シリカゲルの表面にスチレン−マレイン酸アンモニウム共重合体が付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、スチレン及びマレイン酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。
【0044】
【表1】

【0045】
この結果、B型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムを含む層を有する吸湿剤であるB−PSは、表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む層を有していないA型又はB型シリカゲルや他の吸湿剤(B−PAAS、B−PVA、B−PEG6000、B−OA、B−MA又はB−SMA)と比較して、最も水吸着能力が高く、かつ、臭い成分であるアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が低いことが確認された。その内、B−PSのアセトアルデヒドに対する吸着力はB型シリカゲル(比較例では吸湿量が最大)の1/10であり、吸湿量はB−PVA(比較例ではアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が最低)の1.46倍である。
【実施例2】
【0046】
吸湿性無機多孔質材料としてB型シリカゲルを用い、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿剤(以下、B−PVA−MAという)を製造した。なお、ここでいうB型シリカゲルの表面とは、B型シリカゲルの粒子表面と細孔壁表面のことである。
【0047】
B−PVA−MAの製造方法:まず、3gのポリビニルアルコール(キシダ化学株式会社製のポリビニルアルコール2000(重合度約2000))を97mlの蒸留水に添加して、70℃で1時間撹拌することで、ポリビニルアルコールが完全に溶解したポリビニルアルコール水溶液を作成した。次に、作成したポリビニルアルコール水溶液に、3gのリンゴ酸(キシダ化学株式会社製のDL−リンゴ酸)と、3gのB型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア550)とを添加して混合液を作成し、3時間撹拌した(第1工程)。その後、撹拌した混合液からB型シリカゲルを濾過し、140℃で3時間乾燥させることで、高い水選択性を有するB−PVA−MA(吸湿剤)を得た(第2工程)。図3に示すように、シリカゲル表面にはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのネットが形成され、形成されたネットには大量の水酸基が付着されている。原材料のシリカゲルに比べて、大量の水酸基を含むB−PVA−MAは水との結合力は更に強くなり、水分が吸湿剤の表面に優先的に吸着される。
【0048】
なお、B−PVA−MAの製造工程において、B型シリカゲルは、ポリビニルアルコール水溶液に添加する前に、上述の実施例1と同様の方法で活性化させている。
【0049】
得られたB−PVA−MAの吸着性能試験の結果を表2に示す。吸着性能試験では、実施例1と同様の装置10を使用して行った。なお、表2では、各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、アセトアルデヒド及びトルエンについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0050】
また、比較例として、B−PVA、P−PHEMA又はP−MPEG1500を吸湿剤として採用し、図2の実験装置を用いて吸着性能試験を行った。ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部がカラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。吸湿剤の使用量はすべて0.05gであり、その他の実験条件は実施例1の測定条件と同じである。なお、B−PVAは、実施例1で比較例として挙げたB−PVAと同様の吸湿剤である。P−PHEMAは、B型シリカゲルの表面にヒドロキシエチルメタクリレートが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリビニルアルコール代えてヒドロキシエチルメタクリレートを採用し、かつ、リンゴ酸を添加しないことで得られる吸湿剤である。P−MPEG1500は、B型シリカゲルの表面にメトキシポリエチレングリコールが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリビニルアルコール代えてメトキシポリエチレングリコールを採用し、かつ、リンゴ酸を添加しないことで得られる吸湿剤である。
【0051】
【表2】

【0052】
この結果、他の吸湿剤(B−PVA、B−PHEMA又はP−MPEG1500)と比較して、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを含む層を有する吸湿剤であるB−PVA−MAは、水吸着能力はB−PVAとほぼ同じ、B−PHEMAより若干低いが、臭い成分であるアセトアルデヒド及びトルエンの吸着能力が他の吸湿剤より遙かに低いことが確認された。例えば、B−PVA−MAのアセトアルデヒドに対する吸着力はB−PHEMAのわずか0.18倍であり、トルエンに対する吸着力はB−PHEMAのわずか0.2倍である。
【実施例3】
【0053】
吸湿性無機多孔質材料としてC型シリカゲルを用い、ポリスチレンスルホン酸塩としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いることで、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着した吸湿剤(以下、C−PSという)を製造した。なお、ここでいうC型シリカゲルの表面には、C型シリカゲルの粒子表面と、細孔壁表面と、が含まれる。C−PSの製造方法は以下の通りである。
【0054】
10gのC型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製)を、200mLの重量濃度が5wt%に調整されたポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社のポリスチレンスルホン酸ナトリウムPS−50)に添加してC型シリカゲル含有混合液を作成し、C型シリカゲル含有混合液を、室温で、6時間撹拌した(第1工程)。そして、C型シリカゲル含有混合液からC型シリカゲルを濾過して洗浄し、冷凍乾燥することで、高い水選択性を有するC−PS(吸湿剤)を得た(第2工程)。
【0055】
表3では、各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン、アンモニア等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、吸湿剤の用量は0.05gで、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0056】
比較例として、C型シリカゲル、B−MA又はB−SMAを吸湿剤として採用し、図2の実験装置を用いて吸着性能試験を行った。ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部がカラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。吸湿剤の使用量はすべて0.05gであり、その他の実験条件は実施例1の測定条件と同じである。なお、C型シリカゲルは表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着していない吸湿剤である。B−MAは、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、リンゴ酸塩を採用することで得られる吸湿剤である。B−SMAは、B型シリカゲルの表面にスチレン−マレイン酸アンモニウム共重合体が付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、スチレン及びマレイン酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。
【0057】
【表3】

【0058】
この結果、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む吸湿剤C−PSと、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む層を有していないC型シリカゲルや他の吸湿剤(B−MA又はB−SMA)と比較して、C−PSの方が最も水吸着能力が高く、かつ、臭い成分であるアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が低いことが確認された。その内、C−PSのアセトアルデヒドに対する吸着力はC型シリカゲル(比較例では吸湿量が最大)の0.105倍であり、吸湿量はB−MA(比較例ではアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が最低)の1.77倍である。
【実施例4】
【0059】
吸湿性無機多孔質材料としてC型シリカゲルを用い、C型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿剤(以下、C−PVA−MAという)を製造した。なお、ここでいうC型シリカゲルの表面とは、C型シリカゲルの粒子表面と細孔壁表面のことである。
【0060】
C−PVA−MAの製造方法:まず、3gのポリビニルアルコール(キシダ化学株式会社製のポリビニルアルコール2000(重合度約2000))を50mlの蒸留水に添加して、70℃で1時間撹拌することで、ポリビニルアルコールが完全に溶解したポリビニルアルコール水溶液を作成した。次に、作成したポリビニルアルコール水溶液に、3gのリンゴ酸(キシダ化学株式会社製のDL−リンゴ酸)と、3gのC型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア550)とを添加して混合液を作成し、12時間撹拌した(第1工程)。その後、撹拌した混合液からC型シリカゲルを濾過し、140℃で6時間乾燥させることで、高い水選択性を有するC−PVA−MA(吸湿剤)を得た(第2工程)。
【0061】
得られたC−PVA−MAの吸着性能試験の結果を表4に示す。吸着性能試験では、実施例1と同じ装置10を使用した。また、表4は各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、アセトアルデヒド及びトルエンについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0062】
また、比較例として、比較例として、C型シリカゲル、B−MA又はB−SMAを吸湿剤として採用し、図2の実験装置を用いて吸着性能試験を行った。ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部がカラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。吸湿剤の使用量はすべて0.05gであり、その他の実験条件は実施例1の測定条件と同じである。なお、C型シリカゲルは表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着していない吸湿剤である。B−MAは、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、リンゴ酸塩を採用することで得られる吸湿剤である。B−SMAは、B型シリカゲルの表面にスチレン−マレイン酸アンモニウム共重合体が付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、スチレン及びマレイン酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。
【0063】
【表4】

【0064】
この結果、C型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿剤を含む吸湿剤C−PVA−MAと、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む層を有していないC型シリカゲルや他の吸湿剤(B−MA又はB−SMA)と比較して、C−PVA−MAの方が最も水吸着能力が高く、かつ、臭い成分であるアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が低いことが確認された。その内、C−PVA−MAのアセトアルデヒドに対する吸着力はC型シリカゲル(比較例では吸湿量が最大)の0.045倍であり、吸湿量はB−MA(比較例ではアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が最低)の1.35倍である。
【実施例5】
【0065】
吸湿性無機多孔質材料としてB型シリカゲルを用い、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールが付着した吸湿剤(以下、B−PVA−MAという)を製造した。なお、ここでいうB型シリカゲルの表面とは、B型シリカゲルの粒子表面と細孔壁表面のことである。
【0066】
B−PVA−MAの製造方法:まず、5gのポリビニルアルコール(キシダ化学株式会社製のポリビニルアルコール2000(重合度約2000))を160mlの蒸留水に添加して、70℃で1時間撹拌することで、ポリビニルアルコールが完全に溶解したポリビニルアルコール水溶液を作成した。次に、作成したポリビニルアルコール水溶液に、1gのリンゴ酸(キシダ化学株式会社製のDL−リンゴ酸)と、10gのB型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製のサイリシア550)とを添加して混合液を作成し、24時間撹拌した(第1工程)。
【0067】
その後、撹拌した混合液からB型シリカゲルを濾過し、140℃で6時間乾燥させることで、高い水選択性を有するB−PVA−MA(吸湿剤)を得た(第2工程)。
【0068】
得られたB−PVA−MAの吸着性能試験の結果を表5に示す。吸着性能試験では、実施例1と同様の装置10を使用して行った。なお、表5では、各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、アセトアルデヒド及びトルエンについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0069】
また、比較例として、B−MA又はB−SMAを吸湿剤として採用し、図2の実験装置を用いて吸着性能試験を行った。ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部がカラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。吸湿剤の使用量はすべて0.05gであり、その他の実験条件は実施例1の測定条件と同じである。B型シリカゲルは表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着していない吸湿剤である。B−MAは、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、リンゴ酸塩を採用することで得られる吸湿剤である。B−SMAは、B型シリカゲルの表面にスチレン−マレイン酸アンモニウム共重合体が付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、スチレン及びマレイン酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。
【0070】
【表5】

【0071】
この結果、他の吸湿剤、例えばB型シリカゲルや他の吸湿剤(B−MA又はB−SMA)と比較して、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを含む層を有する吸湿剤であるB−PVA−MAは、水吸着能力はB−PVAとほぼ同じ、B−PHEMAより若干低いが、臭い成分であるアセトアルデヒド及びトルエンの吸着能力が他の吸湿剤より遙かに低いことが確認された。例えば、B−PVA−MAのアセトアルデヒドに対する吸着力はB型シリカゲル(比較例では吸湿量が最大)の0.12倍であり、吸湿量はB−MA(比較例ではアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が最低)の1.6倍である。
【実施例6】
【0072】
吸湿性無機多孔質材料としてC型シリカゲルを用い、ポリスチレンスルホン酸塩としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いることで、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着した吸湿剤(以下、C−PSという)を製造した。なお、ここでいうC型シリカゲルの表面には、C型シリカゲルの粒子表面と、細孔壁表面と、が含まれる。C−PSの製造方法は以下の通りである。
【0073】
10gのC型シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製)を、40mLの重量濃度が5wt%に調整されたポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社のポリスチレンスルホン酸ナトリウムPS−50)に添加してC型シリカゲル含有混合液を作成し、C型シリカゲル含有混合液を、室温で、6時間撹拌した(第1工程)。そして、C型シリカゲル含有混合液からC型シリカゲルを真空濾過して洗浄し、100℃で真空乾燥することで、高い水選択性を有するC−PS(吸湿剤)を得た(第2工程)。C−PSの製造工程において、C型シリカゲルをポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液に添加する前に、実施例1と同じ方法で活性化処理を行った。
【0074】
得られたB−PVA−MAの吸着性能試験の結果を表6に示す。各吸湿剤1g当たりのそれぞれの物質(水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン、アンモニア等)の飽和吸着量(g)を示している。また、吸着性能試験は、水蒸気については、湿度90%(RH90%)の条件下で行い、吸湿剤の用量は0.05gで、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアについては、湿度0%(RH0%)の条件下で行った。
【0075】
比較例として、C型シリカゲル、B−MA又はB−SMAを吸湿剤として採用し、図2の実験装置を用いて吸着性能試験を行った。ガスクロマトグラフ質量分析装置15の検出部がカラム16を通過する前及びカラム16を通過した後の溶液に含まれるテストガス11の濃度を測定する。その後、カラム16を通過する前後におけるテストガス11の濃度変化に基づいて、カラム16における水蒸気、アセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着量を算出した。吸湿剤の使用量はすべて0.05gであり、その他の実験条件は実施例1の測定条件と同じである。なお、C型シリカゲルは表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが付着していない吸湿剤である。B−MAは、B型シリカゲルの表面にリンゴ酸アンモニウムが付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、リンゴ酸塩を採用することで得られる吸湿剤である。B−SMAは、B型シリカゲルの表面にスチレン−マレイン酸アンモニウム共重合体が付着されている吸湿剤であって、上記製造工程において、ポリスチレンスルホン酸塩に代えて、スチレン及びマレイン酸アンモニウムを採用することで得られる吸湿剤である。
【0076】
【表6】

【0077】
この結果、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む吸湿剤C−PSと、C型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸塩を含む層を有していないC型シリカゲルや他の吸湿剤(B−MA又はB−SMA)と比較して、C−PSの方が最も水吸着能力が高く、かつ、臭い成分であるアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が低いことが確認された。その内、C−PSのアセトアルデヒドに対する吸着力はC型シリカゲル(比較例では吸湿量が最大)の0.13倍であり、吸湿量はB−MA(比較例ではアセトアルデヒド、トルエン及びアンモニアの吸着能力が最低)の1.9倍である。
【0078】
(3)本発明の吸湿剤を適用可能な機器
本発明の吸湿剤は、加湿空気を建物内に供給する機器に適用可能である。また、機器には、例えば、吸湿剤が担持された第1及び第2熱交換器(第1吸着熱交換器及び第2吸着熱交換器に相当)24,25を備える調湿装置、主に吸湿剤によって構成される加湿ロータ(調湿素子に相当)31を備える加湿装置、及び、吸湿剤が担持された全熱交換器40を備える換気装置が含まれる。
【0079】
(3−1)調湿装置
図4及び図5は、調湿装置の備える冷媒回路20の概略図を示している。調湿装置は、熱交換器の表面に吸湿剤を担持したデシカント式の調湿装置であって、建物内の空間に供給する外気(以下にいう屋外空気OAに相当)に対して除湿又は加湿を行う。
【0080】
また、調湿装置は、圧縮機21、四路切換弁22、膨張弁23、第1熱交換器24及び第2熱交換器25を備えている。なお、本実施形態における調湿装置では、圧縮機21、四路切換弁22、第1熱交換器24、膨張弁23及び第2熱交換器25が冷媒配管を介して接続されて冷媒回路20が形成されている。
【0081】
圧縮機21は、インバータ制御により運転容量を変更することが可能な容積式圧縮機である。四路切換弁22は、冷媒回路20内を流れる冷媒の流路を切り換えるための弁である。四路切換弁22は、圧縮機21の吐出側と第1熱交換器24とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と第2熱交換器25とを接続したり、圧縮機21の吐出側と第2熱交換器25とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と第1熱交換器24を接続したりする切り換えを行うことが可能である。
【0082】
第1熱交換器24及び第2熱交換器25は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型の熱交換器であって、多数のフィンと、フィンを貫通する伝熱管とを備えている。各フィン及び伝熱管の外表面には、第1熱交換器24及び第2熱交換器25を通過する空気に含まれる水分が吸着される吸湿剤がディップ成形(浸漬成形)等によって担持されている。なお、本実施形態では、吸湿剤として、上記のB−PS又はB−PVA−MAが採用されている。第1熱交換器24及び第2熱交換器25は、その外側に空気を通過させながら冷媒の蒸発器として機能することで、その表面に担持された吸湿剤に空気中の水分を吸着させることができる。また、第1熱交換器24及び第2熱交換器25は、その外側に空気を通過させながら冷媒の凝縮器として機能することで、その表面に担持された吸湿剤に吸着された水分を脱離させることができる。
【0083】
膨張弁23は、第1熱交換器24と第2熱交換器25との間に接続された電動膨張弁であり、凝縮器として機能する第1熱交換器24及び第2熱交換器25の一方から蒸発器として機能する第1熱交換器24及び第2熱交換器25の他方に送られる冷媒を減圧することができる。
【0084】
また、調湿装置は、図示しないが、建物外の空気(以下、屋外空気OAという)を調湿装置内に吸入するための外気吸入口と、調湿装置内から建物外に空気を排出するための排気口と、建物内の空気(以下、屋内空気RAという)を調湿装置内に吸入するための内気吸入口と、調湿装置内から建物内に吹き出される空気(以下、供給空気SAという)を供給するための給気口と、排気口に連通するように調湿装置内に配置された排気ファンと、給気口に連通するように調湿装置内に配置されており第1熱交換器24及び第2熱交換器25を通過した空気を建物内へ供給する給気ファン(供給装置に相当)と、空気流路を切り換えるためのダンパ等からなる切換機構と、を備えている。これにより、第1熱交換器24及び第2熱交換器25は、屋外空気OAを外気吸入口から調湿装置内に吸入して第1熱交換器24又は第2熱交換器25を通過させた後に、給気口から建物内に供給空気SAとして供給したり、屋内空気RAを内気吸入口から調湿装置内に吸入して第1熱交換器24及び第2熱交換器25を通過させた後に排気口から建物外に排気空気EAとして排出したりすることができる。
【0085】
また、調湿装置において、除湿運転が行われている場合、第1熱交換器24が凝縮器となって第2熱交換器25が蒸発器となる第1動作と、第2熱交換器25が凝縮器となって第1熱交換器24が蒸発器となる第2動作とが交互に繰り返される。
【0086】
具体的には、除湿運転時の第1動作では、第1熱交換器24についての再生動作と、第2熱交換器25についての吸着動作とが並行して行われる。第1動作では、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を介して第1熱交換器24に流入し、第1熱交換器24を通過する間に凝縮する。そして、凝縮された冷媒は、膨張弁23で減圧されて、その後、第2熱交換器25を通過する間に蒸発し、四路切換弁22を介して圧縮機21に再び吸入される。
【0087】
また、除湿運転時の第1動作中において、第1熱交換器24では、冷媒の凝縮により加熱された吸湿剤から水分が脱離し、この脱離した水分が内気吸入口から吸入された屋内空気RAに付与される(図4(a)参照)。第1熱交換器24から脱離した水分は、屋内空気RAに同伴して排気口を通じて排気空気EAとして建物外へ排出される。また、第2熱交換器25では、屋外空気OA中の水分が吸湿剤に吸着されて屋外空気OAが除湿され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱されて冷媒が蒸発する。そして、第2熱交換器25で除湿された屋外空気OAは、給気口を通って供給空気SAとして建物内へ供給される。
【0088】
除湿運転時の第2動作では、第1熱交換器24についての吸着動作と、第2熱交換器25についての再生動作とが並行して行われる。第2動作では、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を介して第2熱交換器25に流入し、第2熱交換器25を通過する間に凝縮する。そして、凝縮された冷媒は、膨張弁23で減圧されて、その後、第1熱交換器24を通過する間に蒸発し、四路切換弁22を介して圧縮機21に再び吸入される。
【0089】
除湿運転時の第2動作中において、第2熱交換器25では、冷媒の凝縮により加熱された吸湿剤から水分が脱離し、この脱離した水分が内気吸入口から吸入された屋内空気RAに付与される。第2熱交換器25から脱離した水分は、屋内空気RAに同伴して排気口を通じて排気空気EAとして建物外へ排出される(図4(b)参照)。また、第1熱交換器24では、屋外空気OA中の水分が吸湿剤に吸着されて屋外空気OAが除湿され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱されて冷媒が蒸発する。そして、第1熱交換器24で除湿された屋外空気OAは、給気口を通って供給空気SAとして建物内へ供給される。
【0090】
また、加湿運転中には、第1熱交換器24が凝縮器となって第2熱交換器25が蒸発器となる第1動作と、第2熱交換器25が凝縮器となって第1熱交換器24が蒸発器となる第2動作とが交互に繰り返される。以下、第1動作及び第2動作中における冷媒回路20内の冷媒の流れは、上述の除湿運転と同様であるため、説明を省略し、第1動作及び第2動作中における空気の流れについてのみ説明する。
【0091】
加湿運転時の第1動作中において、第1熱交換器24では、冷媒の凝縮により加熱された吸湿剤から水分が脱離し、この脱離した水分が外気吸入口から吸入された屋外空気OAに付与される(図5(a)参照)。第1熱交換器24から脱離した水分は、屋外空気OAに同伴して給気口を通じて供給空気SAとして建物内に供給される。また、第2熱交換器25では、屋内空気RA中の水分が吸湿剤に吸着されて屋内空気RAが除湿され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱されて冷媒が蒸発する。そして、第2熱交換器25で除湿された屋内空気RAは、排気口を通って排気空気EAとして建物外へ排出される。
【0092】
第2動作中において、第2熱交換器25では、冷媒の凝縮により加熱された吸湿剤から水分が脱離し、この脱離した水分が外気吸気口から吸入された屋外空気OAに付与される(図5(b)参照)。第2熱交換器25から脱離した水分は、屋外空気OAに同伴して給気口を通じて供給空気SAとして建物内に供給される。また、第1熱交換器24では、屋内空気RA中の水分が吸湿剤に吸着されて屋内空気RAが除湿され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱されて冷媒が蒸発する。そして、第1熱交換器24で除湿された屋内空気RAは、排気口を通って排気空気EAとして建物外へ排出される。
【0093】
この調湿装置では、第1熱交換器24及び第2熱交換器25の表面にB−PS又はB−PVA−MAが担持されているため、例えば、第1熱交換器24及び第2熱交換器25の表面に、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを表面に有していないA型又はB型シリカゲルが担持されている場合と比較して、吸湿剤に、多くの水分を吸着させることができ、かつ、臭い成分の吸着を抑えることができる。これにより、この調湿装置では、吸湿剤に吸着された水分を脱着させる際に脱着される臭い成分を少なくすることができるため、加湿運転時の臭い戻りを低減することができる。
【0094】
(3−2)加湿装置
図6は、加湿装置の備える加湿ロータ31及び加熱装置(加熱部に相当)32の概略図を示している。なお、図6中の一点鎖線は、加湿ロータ31の回転軸を示している。加湿装置は、建物内の空気である屋内空気RAを排気空気EAとして建物外へと排気したり(図6(b)参照)、建物外から取り込まれた空気である屋外空気OAを供給空気SAとして建物内へと供給したりすることができる(図6(a)参照)。また、加湿装置は、加湿した屋外空気OAを、供給空気SAとして建物内へと供給することができる(図6(a)参照)。
【0095】
加湿装置は、ケーシング(図示せず)と、吸排気ファン(図示せず:送風部に相当)と、加湿ロータ31と、加熱装置32と、吸着用送風装置(図示せず)と、を備えている。吸排気ファン、加湿ロータ31、加熱装置32、及び吸着用送風装置は、ケーシング内に収納されている。
【0096】
吸排気ファンは、加湿ロータ31近傍に配置されており、屋外空気OAを供給空気SAとして建物内に供給したり、屋内空気RAを排気空気EAとして建物外に排気したりする空気流れを生成するラジカルファン組立体である。具体的には、吸排気ファンは、ケーシング外から加湿ロータ31を経て建物内へと到る空気の流れを生成することで屋外空気OAを供給空気SAとして建物内に供給したり、建物内からケーシング内へと到る空気の流れを生成することで屋内空気RAを排気空気EAとして建物外へと排出したりすることができる。なお、吸排気ファンは、ダンパ(図示せず)が切り換わることによって、これらの動作を切り換える。また、吸排気ファンは、建物外から取り入れた屋外空気OAを建物内へと送る場合には、加湿ロータ31のうちの加熱装置32と対向する部分を通過した空気を、供給空気SAとして建物内へと送り出す。
【0097】
加湿ロータ31は、概ね円盤形状の外形を有しており、回転可能に設けられている。さらに、加湿ロータ31の主たる部分は、吸湿剤から構成されている。なお、本実施形態では、吸湿剤として、上記のB−PS又はB−PVA−MAが採用されている。
【0098】
加熱装置32は、加湿ロータ31近傍に位置しており、加湿ロータ31に対向して配置されている。また、加熱装置32は、加湿ロータ31へ送られる屋外空気OAを加熱することにより、加湿ロータ31を加熱することができる。
【0099】
吸着用送風装置は、加湿ロータ31のうちの加熱装置32と対向しない部分を通過する空気の流れを生成する。すなわち、吸着用送風装置は、ケーシング外から吸い込まれ、加湿ロータ31のうちの加熱装置32と対向しない部分を通過し、ケーシング外へ排出される空気(屋外空気OA)の流れを生成する(図6(a)参照)。
【0100】
このような構成によって、吸着用送風装置によってケーシング内に取り入れられた屋外空気OAが、加湿ロータ31を介して、ケーシング外に排出される。このとき、建物外から取り入れられた屋外空気OAが、加湿ロータ31の一部(例えば、左側略半分の部分)を通過する際に、加湿ロータ31によって空気中に含まれている水分が吸着される。そして、加熱装置32によって加湿ロータ31が加熱されることで、吸排気ファンによって生成される空気流中に加湿ロータ31に吸着されていた水分が離脱して加湿空気が生成される。
【0101】
この加湿装置では、加熱装置32によって加湿ロータ31が加熱されている場合には屋外空気OAが加湿され、加湿された屋外空気OAが供給空気SAとして建物内へと供給されることになる。また、加湿ロータ31が、主に、B−PS又はB−PVA−MAから構成されているため、例えば、加湿ロータが、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを表面に有していないA型又はB型シリカゲルから構成されている場合と比較して、吸湿剤に、多くの水分を吸着させることができ、かつ、臭い成分の吸着を抑えることができる。これにより、この加湿装置では、吸湿剤に吸着された水分を脱着させる際に脱着される臭い成分を少なくすることができるため、加湿運転時の臭い戻りを低減することができる。
【0102】
(3−3)換気装置
図7は、換気装置の備える全熱交換器40の概略図を示している。換気装置は、その内部において、建物内から排出される屋内空気RAと建物外から導入される屋外空気OAとの間で熱交換を行わせて、建物外から建物内へ導入される空気の温度を現在の屋内空気RAの温度に近づけることができる。また、換気装置では、例えば、日本の夏の屋外空気のように屋外空気OAの湿度が高い場合、図7(a)に示すように、建物外から導入される屋外空気OAが全熱交換器40を通過することで、除湿された空気を供給空気SAとして建物内に供給することができる。さらに、例えば、日本の冬の屋外空気のように屋外空気OAの湿度が低い場合、図7(b)に示すように、建物外から導入される屋外空気OAが全熱交換器40を通過することで、加湿された空気を供給空気SAとして建物内に供給することができる。
【0103】
また、換気装置は、ケーシング(図示せず)と、全熱交換器40と、排気ファン(図示せず)と、給気ファン(図示せず)とを備えている。ケーシングの内部空間は、給気通路と排気通路とに仕切られている。給気通路は、建物外の屋外空気OAを換気装置内に導くための外気吸い込みダクト及び外気吸い込みダクトを介して換気装置を通過した屋外空気OAを供給空気SAとして建物内に供給するための給気ダクトに連通している。排気通路は、建物内の屋内空気RAを換気装置に導くための内気吸い込みダクト及び内気吸い込みダクトを介して換気装置を通過した屋内空気RAを排気空気EAとして建物外に排出するための排気ダクトに連通している。また、給気通路には、給気ファンが配置されている。排気通路には、排気ファンが配置されている。
【0104】
ケーシングの内部空間には、給気通路と排気通路とに跨って、全熱交換器40が設けられている。全熱交換器40では、効率的に熱交換を行うために、熱(顕熱)及び水分(潜熱)の交換が同時に行われる。全熱交換器40は、平板状の平板部材と波板状の波板部材とが交互に積層されることによって構成されている。また、波板部材の方向を一段おきに交差させることにより、平板部材を隔てた、屋外空気OAを流すための給気流路と、屋内空気RAを流すための排気流路とが形成される。なお、給気流路は給気通路に連通しており、排気流路は排気通路に連通している。また、全熱交換器40は、基材としての紙の表面に、吸湿剤を含む層を積層して構成されている。なお、本実施形態では、吸湿剤として、上記のB−PS又はB−PVA−MAが採用されている。この全熱交換器40では、平板部材を介して、給気流路を流れる屋外空気OAと排気流路を流れる屋内空気RAのうちの一方から他方へと熱及び水分が移動することで、湿り空気同士の間でエンタルピが交換されるようになっている。
【0105】
このような構成によって、この換気装置では、冷房や暖房の効果を損なわずに換気を行うことができるため、空調負荷の増大を抑制し、効率よく建物内の空気調和を行うことができる。また、全熱交換器40の表面には、B−PS又はB−PVA−MAが担持されているため、例えば、全熱交換器40の表面に、ポリスチレンスルホン酸塩又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを表面に有していないA型又はB型シリカゲルが担持されている場合と比較して、吸湿剤に、多くの水分を吸着させることができ、かつ、臭い成分の吸着を抑えることができる。これにより、この換気装置では、吸湿剤に吸着された水分を脱着させる際に脱着される臭い成分を少なくすることができるため、加湿された空気が供給空気SAとして建物内に供給される際(図7(b)参照)の臭い戻りを低減することができる。
【0106】
(4)特徴
従来、加湿空気を建物内に供給する機器には、吸湿剤として、A型シリカゲルやB型シリカゲルが採用されている。しかし、A型シリカゲルは、高湿度における水分の吸着率が小さく、B型シリカゲルは低湿度における水分の吸着率が小さいという問題がある。このため、A型シリカゲルやB型シリカゲルを吸湿剤として使用するには、これらの吸湿剤を湿度環境に応じて使い分けなければならなかった。
【0107】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルであるB型シリカゲルの表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウム又はリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールを付着した吸湿剤が、水分の吸着性が高く、かつ、臭い成分の吸着性及び脱着性が低いことを見いだした。これら吸湿剤のいずれかを、加湿空気を建物内に供給する機器における水分の吸着及び脱着に利用することで、供給空気SAを十分に加湿することができ、かつ、臭い戻りを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明では、水分の吸着能力が高く、かつ、臭い成分の吸着及び脱着し難い吸湿剤を提供することができる。また、本発明に係る吸湿剤は、加湿空気を建物内に供給する機器への適用が有効である。
【符号の説明】
【0109】
20 冷媒回路
24 第1熱交換器(第1吸着熱交換器)
25 第2熱交換器(第2吸着熱交換器)
31 加湿ロータ(調湿素子)
32 加熱装置(加熱部)
40 全熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性無機多孔質材料と、
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムあるいはリンゴ酸架橋ポリビニルアルコールと、
を備え、
前記ポリスチレンスルホン酸ナトリウム又は前記リンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのいずれか一方が、前記吸湿性無機多孔質材料の表面に付着されており、
前記吸湿性無機多孔質材料は、平均細孔径が5nm以上のシリカゲルであり、
前記リンゴ酸架橋ポリビニルアルコールにおいて、前記リンゴ酸と前記ポリビニルアルコールとの質量比は1:10〜1:4である、
吸湿剤。
【請求項2】
前記ポリスチレンスルホン酸ナトリウム及び前記リンゴ酸架橋ポリビニルアルコールのいずれか一つと、前記吸湿性無機多孔質材料との質量比は1:1〜1:8である、
請求項1に記載の吸湿剤。
【請求項3】
ポリスチレンスルホン酸塩を含有する溶液に吸湿性多孔質材料を添加して混合液を作成し、その内前記吸湿性無機多孔質材料と前記ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとの用量比は1:20〜1:4 g/mLであり、前記混合液を6〜24時間撹拌する第1工程と、
前記混合液から前記吸湿性多孔質材料を分離して、前記吸湿性多孔質材料を乾燥する第2工程と、
を備える吸湿剤の製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコールを含有する溶液にリンゴ酸と吸湿性多孔質材料とを添加して混合液を作成し、その内前記吸湿性無機多孔質材料と前記ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとの用量比は1:20〜1:4 g/mLであり、前記混合液を6〜24時間撹拌する第1工程と、
前記混合液から前記吸湿性多孔質材料を分離して、前記吸湿性多孔質材料を乾燥する第2工程と、
を備える吸湿剤の製造方法。
【請求項5】
前記混合液から前記吸湿性多孔質材料を分離する方法は、常圧での濾過または真空吸い込み濾過方法である、
請求項4に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項6】
前記(吸湿性多孔質材料を乾燥する)乾燥方法は、常圧での乾燥または真空乾燥或いは冷凍乾燥方法である、
請求項4に記載の吸湿剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2の吸湿剤が担持された第1吸着熱交換器(24)及び第2吸着熱交換器(25)を有する冷媒回路(20)と、
前記第1吸着熱交換器及び前記第2吸着熱交換器を通過した空気を、建物内へ供給する供給装置と、
を備え、
前記冷媒回路の冷媒循環方向が切り換えられることによって、前記第1吸着熱交換器及び前記第2吸着熱交換器で前記吸湿剤の吸着動作と再生動作とが交互に行われる、
調湿装置。
【請求項8】
建物外から取り込まれた空気を加熱する加熱部(32)と、
請求項1または2の吸湿剤を有する調湿素子であって、外気から水分を吸湿し、前記加熱部で加熱された空気が該調湿素子を通る際に、吸湿した水分を前記加熱空気中に放湿する調湿素子(31)と、
前記調湿素子を経た空気を建物内へと送る送風部と、
を備える加湿装置。
【請求項9】
建物外の空気を建物内に送る供給ファンと、
建物内の空気を建物外に送る排気ファンと、
請求項1または2の吸湿剤が担持されており、前記供給ファンから送られる空気と前記排気ファンによって送られる空気との間で全熱交換を行う全熱交換器(40)と、
を備える換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135759(P2012−135759A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285116(P2011−285116)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(512000569)華南理工大学 (1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】