説明

吸音パネル及び防音壁

【課題】太陽電池を備え、且つ様々な寸法へ容易に形成可能な吸音パネルと、これを設置して形成させる防音壁を提供する。
【解決手段】前側に多数の開孔21aを有する前面板21を配置させ、後側に背面板22を配置させ、この背面板22と前面板21との間に吸音材を内装させてパネル形状の吸音板部を形成させ、前記吸音板部の後方に背面板22より後方向へ突出して太陽電池パネル3を設けると共に、この太陽電池パネル3の両側の側方に背面カバー部62を背面板22より後方向へ突出させて設ける。
あらゆる長さの吸音板部に対してこれより短い寸法の太陽電池パネル3を設け、その側方に前記吸音板部の長さに対応させた背面カバー部62を取り付けることで、太陽電池の寸法変更のための加工などを行うことなく、あらゆる長さの吸音パネル1を容易に形成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車両等の走行に伴う騒音を吸音するために、高速道路や鉄道の沿線等に沿って設置される防音壁として、また橋梁や高架道路橋、堀割、半地下道路等の構造体の桁下、下面部や壁面、天井面等に壁体として取付けられ吸音パネルと、これを設置して形成させる防音壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両などの走行に伴う騒音を遮音、吸音するために用いられる吸音パネルとして、多数の開孔を有する前面板と背面板とにより形成された中空内に吸音材が内装されたものがある。
【0003】
近年、環境問題への対応のために、太陽光による発電機能をこのような道路付帯設備に備える取り組みが進められている。例えば特許文献1には、矩形枠状のフレームと、前記フレームの一方の面に取着され多数のスリットあるいは孔が形成された金属板と、前記金属板の背面に配置された吸音材と、前記フレームの他方の面に受光面を外側に向けて取着された矩形で薄板状の太陽電池パネルと、を備えることを特徴とする太陽電池パネル一体型遮音パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き太陽電池パネル一体型遮音パネルは、定められた寸法に形成される標準品とは異なる特注品を作成するときに、その特別な寸法にあわせた太陽電池パネルの加工や変更などが必要になる場合があるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池を備え、且つ様々な寸法へ容易に形成可能な吸音パネルと、これを設置して形成させる防音壁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る吸音パネルは、前側に多数の開孔を有する前面板が配置され、後側に背面板が配置され、該背面板と前記前面板との間に吸音材が内装されてパネル形状の吸音板部が形成され、
前記吸音板部の後方には前記背面板より後方向へ突出して太陽電池パネルが設けられると共に、
該太陽電池パネルの両側の側方には背面カバー部が前記背面板より後方向へ突出して設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る吸音パネルによれば、前側に多数の開孔を有する前面板を配置させ、後側に背面板を配置させ、この背面板と前記前面板との間に吸音材を内装させて吸音板部を形成させて、前記背面板より後方向へ突出させて太陽電池パネルを設けるので、長さなどの異なるあらゆる吸音板部に容易に太陽電池パネルを取り付けて吸音パネルを形成させることができる。
また、この太陽電池パネルの両側の側方に背面カバー部を前記背面板より後方向へ突出させてそれぞれ設けるので、あらゆる長さの吸音板部に対してこれより短い寸法の太陽電池パネルを設け、その側方に前記吸音板部の長さに対応させた背面カバー部を取り付けることで、太陽電池の寸法変更のための加工などを行うことなく、あらゆる長さの吸音パネルを容易に形成させることができる。
また、前記太陽電池パネルとその側方の前記背面カバー部とを、前記背面板より後方向へ突出させてそれぞれ設けるので、その突出の大きさを調整することで前記太陽電池パネルの後面と前記背面カバー部の後面を面一に配置させることが容易にでき、前記太陽電池パネルと前記背面カバー部とを一体的に視認させてその美観を高めることができる。
【0009】
また、本発明に係る防音壁は、立設された2本の支柱間に前記請求項1に記載の吸音パネルが架設されて設けられる防音壁であって、
前記各支柱の側方には前記吸音板部が挿入可能な支柱凹部がそれぞれ設けられ、
前記吸音板部は前記支柱凹部に両方の端部がそれぞれ挿入されて前記各支柱間に架設されると共に、
前記背面カバー部が前記支柱の後面を覆うようになされていることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る防音壁によれば、立設させた2本の支柱の側方に前記吸音板部を挿入可能な支柱凹部をそれぞれ設け、この支柱凹部に前記吸音板部の両方の端部をそれぞれ挿入させて前記各支柱間に前記吸音パネルを架設させるので、
前記各支柱間の距離に対応した長さの吸音パネルが容易に形成させて前記防音壁を設けることができる
また、前記背面カバー部が前記支柱の後面を覆うので、防音壁の後面側より支柱が視認されずに前記太陽電池パネルと前記背面カバー部のみで構成させることができ、防音壁が一体的に視認されて美観が高められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸音パネルによれば、太陽電池を備えた吸音パネルを様々な寸法へ容易に形成することができる。
また、本発明に係る防音壁によれば、施工場所の状況に対応して高い美観を備えた防音壁を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る吸音パネルの実施の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は背面図である。
【図2】図1のA−A断面の概要を示す図である。
【図3】図1のB−B断面の概要を示す図である。
【図4】図1のC−C断面の概要を示す図である。
【図5】図1の吸音パネルを支柱間に設置させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
最初に図1〜4により、本発明の吸音パネルの全体的な構成について説明する。
尚、図2〜4は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略に描いている。
図面において、1は吸音パネルである。
吸音パネル1は、前側に道路騒音などを吸音する吸音板部2を備えており、この吸音板部2は前面板21、背面板22、側面板23をそれぞれ固定させた横方向へ長い略直方体状に形成されている。
吸音板部2は、図2に示すように、アルミニウム板からなる多数の開孔21aを有する前面板21と、その背後の背面板22とによって形成された中空内に、グラスウールなどで形成された吸音材24が内装され、前面板21の開孔21aより中空内に入射された騒音は吸音材24によって吸音される。
【0014】
図2及び図4に示すように、本実施形態の吸音材24は横方向へ長い厚板形状に形成され、吸音板部2内において上下方向に並設されるように2枚内装されている。
また、前記吸音板部2内において、前記各吸音材24と背面板22との間に、横方向へ長い棒形状の押え部材25が配置されて内装されている。具体的には前記2枚の吸音材24の内、上方に配置された吸音材24の上部後方と、下方に配置された吸音材24の下部後方とに、それぞれ1本づつ、合計2本の押え部材25が配置され、各吸音材24がそれぞれ前面板21付近に配置されて固定されるようになされている。
本実施形態の吸音材24は厚板形状に形成させたグラスウールの表面をガラス繊維製のシートで被覆して形成させているが、これに限るものではなく、グラスウールを樹脂フィルムなど他の部材で被覆してもよく、グラスウール以外の材質のものを用いても良い。
また、本実施形態の押え部材25は発砲ウレタン樹脂を用いて前記吸音材24を固定させているが、これに限るものではなく、他の材質の発泡材を用いて押え部材25を形成させてもよく、また、押え部材25を金属板などから形成させて前記吸音材24を吸音板部2内で固定させてもよい。
【0015】
前面板21は、吸音板部2の上下の端から中央に至るほど吸音板部2の内側へ向かうように若干傾斜して設けられており、前面板21の上下方向中央で折り曲げられて形成されたり、上下二枚の前面板21により形成するなどして設けられている。
【0016】
前記開孔21aは細長いスリット形状に形成してもよく、パンチング孔を穿設させて形成してもよく、その他の形状に形成してもよいが、本実施形態は前面板21の長手方向に細長い切れ込みを形成し、図2に示すようにその上部を外側にひさし状に張り出すように折り曲げてスリット形状に形成させている。このように形成させることで、開孔21aを容易に形成できるとともに、外側に張り出した開孔21aの上部分が屋根のように機能し、開孔21aを通じて雨水等が吸音板部2内へ入り込みにくいものとしている。
【0017】
3は太陽電池パネルである。
本実施形態の太陽電池パネル3は、図1(ニ)に示すように、太陽電池セルを複数並設させた板状の太陽電池モジュールの四辺を、アルミニウム押出形材からなる枠体31で周囲を囲って形成されている。
本実施形態の太陽電池パネル3は、その受光面を吸音パネル1の後方へ向け、吸音パネル1の長手方向中央寄りに1枚取り付けられている。
具体的には、太陽電池パネル3は、吸音板部2の背面板22の後面に固定されて後方へ突出する取付金具51に取り付けられており、前記背面板22と前記太陽電池パネル3との間に取付金具51の突出大きさ分の隙間が形成されるように設けられている。
【0018】
前記の取付金具51は、図2及び図4に示すように、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成された、上下方向に長い断面コの字形状に形成されており、前記背面板22の後面にコの字の一方の端の板部51aを当接させて固定され、前記太陽電池パネル3の枠材31に他方の端の板部51bを当接させて固定させ、前記背面板22の後方へ太陽電池パネル3を取付金具51の中央の板部51cの幅の大きさ分突出させて取り付けている。前記取付金具51は、背面板22に2個左右に取り付けられており、前記太陽電池パネル3は、これらの各取付金具51に架け渡されるように固定されている。
【0019】
また図2に示すように、前記取付金具51は前記背面板22の後面の上端から下端に至るように形成されて固定されており、前記取付金具51の下部には、太陽電池パネル3の下方の隙間を塞ぐように下カバー部61が取り付けられている。下カバー部61を取り付けることで、吸音パネル1の後方から背面板22が視認されにくく、太陽電池パネル3と下かバー部61とが一体的に視認され、美観を向上させる。
下カバー部61は、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成させている。
【0020】
図1及び図4に示すように、前記太陽電池パネル3の両側の側方には、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成された背面カバー部62がそれぞれ吸音板部2の背面板22に取り付けられている。
各背面カバー部62は、長方形の板材の四辺を90度の角度に折り曲げたパネル形状に形成され、前記吸音板部2の背面板22の後面に固定されて後方へ突出する取付金具52に取り付けられており、前記背面板22と前記背面カバー部62との間に取付金具52の突出大きさ分の隙間が形成されるように設けられている。
【0021】
前記の取付金具52は、前記取付金具51と同様に、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成された上下方向に長い断面コの字形状に形成されており、前記背面板22の後面にコの字の一方の端の板部52aを当接させて固定され、前記背面カバー部62に他方の端の板部52bを当接させて固定させ、前記背面板22の後方へ背面カバー部62を取付金具52の中央の板部52cの幅の大きさ分突出させて取り付けている。前記取付金具52は、2個1組で前記太陽電池パネル3の両側の側方に1組づつ合計2組が背面板22に取り付けられており、前記各背面カバー部62は、これらの各取付金具52に架け渡されるように固定されている。
【0022】
図1(イ)に示すように、吸音パネル1の後面側において、前記太陽電池パネル3と前記各背面カバー部62とはその後面が面一となるように、前記各取付金具51と前記各取付金具52とが形成されており、前記吸音パネル1の後面の美観を高めている。
【0023】
吸音パネル1の横方向の両端には、上下方向に沿って中央方向へ窪むパネル凹溝7が形成されている。具体的には、パネル凹溝7は、前記吸音板部2の背面板22と、前記各背面カバー部62と、これらを固定する取付金具52の板部52cとから形成されており、このパネル凹溝7は支柱9への吸音パネル1の取り付けの際に用いられる。
図5は、図1の吸音パネル1を支柱9間に設置させた状態を示す平面図である。
本実施形態の吸音パネル1は、並設された2本の支柱9の間に取り付けられて、防音壁を形成するようになされている。また、吸音パネル1を上下方向に複数段積みさせて前記防音壁を形成させてもよい。
支柱9は、その両側の側方に上下方向へ向かう溝形状の支柱凹部91を備えるように設けられており、具体的には各支柱9は2本のフランジ95とそれらの間に1本のウェブ96を備えた断面H型となされ、2本のフランジ95が前面側と後面側にそれぞれ配置され、前記各フランジ95とこれらの間に形成されたウェブ96とが前記の各支柱凹部91を形成するようにそれぞれ配置されて立設されている。
また、各支柱9は、各々のウェブ96の間の間隔が、前記吸音パネル1の横方向の大きさより若干大きく形成されるように、配置されて立設されている。
【0024】
吸音パネル1は、前方に配置された吸音板部2の両端部分を、前記各支柱9の各支柱凹部91内に収納させて、各支柱9間に支持、固定されている。
また、吸音板部2の背面板22と、支柱9の後方側に配置されたフランジ95の内側面との間には、バネSが取り付けられ、吸音パネル1を支柱9の前方側に配置されたフランジ95の内側面に押し付けるように付勢されて設けられている。
吸音パネル1は、その吸音板部2の両端を支柱凹部91に収納させて係合され、支柱9の前方や後方に転落することなく支持固定されるとともに、バネSの付勢によって風や車の通行による振動などを受けても、支柱9と摩擦などを起こさず、その劣化が抑制されると共に、支柱凹部91からの音漏れを防止している。
【0025】
吸音パネル1を固定させた支柱9は、その後方側のフランジ95が、固定させた吸音パネル1のパネル凹溝7に挿入されるようになされ、このフランジ95の更に後面側が吸音パネル1の背面カバー部62に覆われるようになされる。このため、各支柱9と吸音パネル1とで構成された防音壁は、その後面側から目視したときに各支柱9の後面が視認されないように設けられ、その美観が高められる。
尚、図5は2本の支柱9の間に吸音パネル1を固定させた状態を示しているが、吸音パネル1が取り付けられていない側の側方にも更に支柱9を並設させて、他の吸音パネル1をこれら各支柱9の支柱凹部91に固定させれば、吸音パネル1を2条の支柱凹部91にそれぞれ固定させた支柱9の後面が背面カバー部62に覆われて、美観を高めることができる。
【0026】
本実施形態の各支柱9は、各々のウェブ96の間の間隔が、前記吸音パネル1の横方向の大きさより若干大きく形成されるように、配置されているが、施工場所の状況や施工目的などによって、各支柱9の間隔が変更されて立設させる場合がある。
このような場合においても、本実施形態の吸音パネル1は、各支柱9の間に取り付け可能な大きさに容易に形成させることができる。
具体的には、立設された各支柱9のウェブ96の間隔の大きさに適合する長さに吸音板部2を形成させ、その背面板22に取付金具51を介して標準的な太陽電池パネル3を取り付けると共に、その両側の側方に吸音板部2の長さに適合させて形成させた背面カバー部62を取付金具52を介して取り付ける。このように吸音パネル1を形成させることで、形状変更が困難な太陽電池パネル3を特注形状に形成させることなく標準的なものを利用し、形状変更が比較的容易な吸音板部2と背面カバー部62とを特注形状に形成させて、各支柱9間に取り付け可能な吸音パネル1を形成することができる。
また、本実施形態の吸音パネル1は、吸音板部2の長手方向中央寄りに太陽電池パネル3を1枚配置させて取り付けているが、これに限るものではなく、吸音板部2の形状に応じて、2枚以上の太陽電池パネル3を吸音板部2の長手方向中央寄りに並設させて設けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 吸音パネル
2 吸音板部
21 前面板
21a 開孔
22 背面板
23 側面板
24 吸音材
25 押え部材
3 太陽電池パネル
31 枠体
51 取付金具
52 取付金具
61 下カバー部
62 背面カバー部
7 パネル凹溝
9 支柱
91 支柱凹部
95 フランジ
96 ウェブ
S バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に多数の開孔を有する前面板が配置され、後側に背面板が配置され、該背面板と前記前面板との間に吸音材が内装されてパネル形状の吸音板部が形成され、
前記吸音板部の後方には前記背面板より後方向へ突出して太陽電池パネルが設けられると共に、
該太陽電池パネルの両側の側方には背面カバー部が前記背面板より後方向へ突出して設けられていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
立設された2本の支柱間に前記請求項1に記載の吸音パネルが架設されて設けられる防音壁であって、
前記各支柱の側方には前記吸音板部が挿入可能な支柱凹部がそれぞれ設けられ、
前記吸音板部は前記支柱凹部に両方の端部がそれぞれ挿入されて前記各支柱間に架設されると共に、
前記背面カバー部が前記支柱の後面を覆うようになされていることを特徴とする防音壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46965(P2012−46965A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190263(P2010−190263)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】