説明

周波数制御回路及び周波数制御方法、受信機及び受信方法

【課題】混信対策に優れた周波数制御回路を提供する。
【解決手段】周波数制御回路は、局部発振器118と、入力信号と局部発振器からの局部発振信号とを混合するミクサ103と、ミクサ103の出力をフィルタリングする高周波側帯域可変バンドパスフィルタ111と低周波側帯域可変バンドパスフィルタ112と、両バンドパスフィルタ111、112の通過信号の強度との差を求める減算器と、減算器の出力を累算し、累算値を局部発振器の発振周波数の補正量を示す補正信号として局部発振器118に供給する累算回路と、減算器が求めた差の絶対値が基準レベル以下となったときに、両バンドパスフィルタ111、112の通過帯域幅を協調して狭めるフィルタ制御器115と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信周波数を自動的に制御する周波数制御回路及び周波数制御方法、さらに、該周波数制御回路又は周波数制御方法を用いた受信機及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、各変調信号は所定の中心周波数と帯域幅を有するチャンネルに割当てられる。使用者は受信機を調節して、受信機の受信信号を所望のチャンネルに同調させることにより、目的とする変調信号を受信する。
【0003】
受信信号の周波数がチャンネルの中心周波数に一致しなくなることがある。この場合、そのままでは、受信信号を復調できなくなるか、あるいは、復調後の信号が歪んでしまう。このような問題を解決するため、受信周波数を自動的に制御する自動周波数制御回路が提案されている。自動周波数制御回路は、受信対象信号の周波数ずれを補償して、再同調する。
【0004】
自動周波数制御回路を備える受信機の一例が特許文献1に開示されている。
この受信機は、同公報の図1に示されているように、一対の帯域通過フィルタを用い、各帯域通過フィルタを通過した信号の強度を測定し、測定した強度の差を求め、この差に基づいて局部発振信号の周波数を制御し、入力信号の中心周波数を公称中心周波数の位置に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−147529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の受信機では、受信信号の中心周波数を受信チャンネルの中心周波数に一致させることができる。
しかし、受信チャンネル近傍にノイズや他の信号が存在し、その信号が帯域通過フィルタの通過帯域内に位置する場合、即ち、混信が存在する場合には、正しく動作しなくなる。
【0007】
しかも、隣接する信号は、チャンネル毎、受信環境毎に変化するため、従来の構成では対応困難であった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、混信対策に優れた周波数制御回路及び周波数制御方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかる周波数制御回路及び周波数制御方法を用いた受信機及び受信方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の周波数制御回路は、
受信信号を入力する入力手段と、
局部発振信号を出力する局部発振器と、
前記入力手段で入力された信号と前記局部発振器から出力された局部発振信号とを混合するミクサと、
高周波側と低周波側の通過帯域が一部重複する複数のフィルタから構成されたフィルタ手段と、
前記フィルタ手段を構成する複数のフィルタの通過信号の強度に基づいて、前記発振周波数を制御する発振周波数制御手段と、
前記発振周波数制御手段による発振周波数の制御と並行して、前記複数のフィルタそれぞれの通過帯域幅を狭める帯域幅変更手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
例えば、前記複数のフィルタは、高周波側可変帯域バンドパスフィルタと低周波側可変帯域バンドパスフィルタとから構成され、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタとは、通過帯域幅が可変で、互いに同一の帯域幅を有するように制御され、且つ、通過帯域の交差周波数を対称軸に対称な周波数特性を有する。
【0011】
例えば、前記局部発振器の発振周波数を切り換える受信周波数切り換え手段を有し、前記帯域幅変更手段は、前記受信周波数切り換え手段による受信周波数の切り換え後、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度と低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度とがほぼ一致した後に、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過帯域幅を狭める。
【0012】
前記ミクサと前記フィルタとの間に、信号の帯域を制限するバンドパスフィルタを配置し、該バンドパスフィルタの通過帯域の中心周波数と、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスバンドパスフィルタの通過帯域の交差周波数と、は実質的に等しい、ように構成してもよい。
【0013】
前記帯域幅変更手段は、例えば、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度と低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度との差を表す信号を出力する減算手段と、前記減算手段の出力信号を累算し、累算値を局部発振器の発振周波数の補正量を示す補正信号として前記局部発振器に供給する累算手段と、前記減算手段の出力信号が、差の絶対値が基準レベル以下となったときに、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過帯域幅を狭める帯域幅制御手段と、を備える。
【0014】
前記ミクサの出力信号を復調する復調手段と、上記構成の周波数制御回路とを備えることを特徴とする受信機を提供することも可能である。
【0015】
また、この発明の周波数制御方法は、
入力信号と局部発振信号とを混合して混合信号を出力し、
前記混合信号から、第1の周波数帯域の周波数成分を抽出し、
前記混合信号から、前記第1の周波数帯域と一部重複する第2の周波数帯域の信号成分を抽出し、
抽出した第1の周波数帯域の周波数成分の強度と抽出した第2の周波数帯域の周波数成分の強度とに基づいて、前記局部発振信号の周波数を制御し、
前記局部発振信号の周波数の制御と並行して、前記第1の周波数帯域の帯域幅と前記第2の周波数帯域の帯域幅とを、前記第1の周波数帯域と前記第2の周波数帯域とが重複した状態を維持しつつ狭める、
ことを特徴とする。
【0016】
例えば、前記第1の周波数帯域と前記第2の周波数帯域とを、互いに同一の帯域幅を有し、且つ、通過帯域の交差周波数を、帯域幅によらず一定値に維持するように制御することが望ましい。
【0017】
上述の周波数制御方法を実行しつつ、前記混合信号を復調して出力するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、局部発振信号の周波数が制御(調整)されると共に通過帯域幅が狭められるので、受信信号にノイズが含まれている場合でも、ノイズの除去が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す補正量検出器の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)〜(c)は、U−VBPFの通過帯域幅PBUとL−VBPFの通過帯域PBLとを示す図、(d)は受信目的信号を示す図である。
【図4】(a)〜(g)は、受信チャンネル切り換え後の、受信動作を説明するための図である。
【図5】(a)〜(h)は、受信チャンネル切り換え後の、受信動作を説明するための図であり、受信目的信号の近傍にノイズ信号が存在する場合の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る、混信対策に優れた周波数制御回路及び周波数制御方法を備える受信機及び受信方法を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る受信機10は、アンテナ101と、同調回路102と、ミクサ103と、バンドパスフィルタ(BPF)104と、復調器105と、バンドパスフィルタ(BPF)106と、出力アンプ107と、スピーカ108と、高周波側帯域可変バンドパスフィルタ(U−VBPF)111と、低周波側帯域可変バンドパスフィルタ(L−VBPF)112と、高周波側強度検出器113と、低周波側強度検出器114と、フィルタ制御器115と、補正量検出器116と、リミッタ117と、局部発振器118と、チャンネルセレクタ121と、を備える。
【0022】
アンテナ101と同調回路102とは、チャンネルセレクタ121により選択されたチャンネルに対応する周波数frの無線信号に同調して、同調した無線信号を受信・増幅して出力する。
【0023】
ミクサ103は、同調回路102から出力された周波数frの受信信号と局部発振器118から供給された周波数fLの局部発振信号とを混合し、主に、両信号の周波数の和(fr+fL)に相当する周波数を有する信号と周波数の差(fr−fL)に相当する中間周波(IF)を有する中間周波信号を出力する。
【0024】
バンドパスフィルタ(BPF)104は、所定の中心周波数Fcと所定の通過帯域幅とを有する中間周波帯域通過フィルタから構成され、ミクサ103の出力信号のうち、中心周波数がfr−fLの中間周波信号を通過させ、中心周波数がfr+fLの信号を減衰させる。
【0025】
復調器105は、BPF104を通過した中間周波信号に復調処理を施し、オーディオ信号を再生する。
【0026】
バンドパスフィルタ(BPF)106は、再生されたオーディオ信号に含まれる不要信号を除去して出力する。
【0027】
出力アンプ107は、BPF106を通過したオーディオ信号を増幅し、スピーカ108に出力する。
【0028】
スピーカ108は、出力アンプ107の出力したオーディオ信号を空気振動に変換して放音する。
【0029】
高周波側可変帯域バンドパスフィルタ(U−VBPF)111と低周波側可変帯域バンドパスフィルタ(L−VBPF)112とは、フィルタ制御器115の制御に従って、連動して通過帯域幅を変化させるバンドパスフィルタである。
【0030】
より詳細には、U−VBPF111とL−VBPF112とは、図3(a)〜(c)に示すように、通過帯域幅が可変で、互いに同一の帯域幅を有するように制御されたバンドパスフィルタである。
【0031】
具体的に説明すると、図3(a)〜(c)に示すように、U−VBPF111の通過帯域PBUは、L−VBPF112の通過帯域PBLよりも高周波側に位置し、通過帯域PBUとPBLの幅は互いに等しい。
【0032】
U−VBPF111の通過帯域PBUの低周波側の一部と、L−VBPF112の通過帯域PBLの高周波の一部とは、重複している。
【0033】
U−VBPF111の通過帯域PBUの最大幅とL−VBPF112の通過帯域PBLの最大幅とは、図3(a)と(d)に示すように、1つのチャンネルの帯域幅よりも小さく、組み合わされて1つのチャンネルの帯域をカバーするサイズに設定されている。
【0034】
さらに、U−VBPF111の通過帯域PBUとL−VBPF112の通過帯域PBLとは、通過帯域PBUとPBLの交差周波数を対称軸に対称な傾斜(周波数特性)を有する。通過帯域PBUとPBLの交差周波数は、BPF104の通過帯域の中心周波数Fcに等しく設定されることが望ましい。
【0035】
U−VBPF111の通過帯域PBUの最小幅とL−VBPF112の通過帯域PBLの最小幅とは、図3(c)と(d)に示すように、1つのチャンネルの帯域幅よりも小さく、組み合わされて1つのチャンネルの主要信号を十分にカバーするサイズに設定されている。
【0036】
さらに、U−VBPF111とL−VBPF112とは、図3(a)〜(c)に示すように、通過帯域幅を変更可能である。
【0037】
なお、U−VBPF111とL−VBPF112とは、例えば、FIR( Finite Impulse Response : 有限インパルス応答 )フィルタ、IIR( Infinite Impulse Response : 無限インパルス応答 )フィルタ等から構成され、フィルタ制御器115から供給されるフィルタ係数を取りこんで設定することにより、その伝搬特性を変化させる。
【0038】
図1の高周波側強度検出器113は、U−VBPF111を通過した信号の信号強度を検出し、検出した強度を示す信号を補正量検出器116に出力する。
【0039】
低周波側強度検出器114は、L−VBPF112を通過した信号の信号強度を検出し、検出した強度を示す信号を補正量検出器116に出力する。
【0040】
フィルタ制御器115は、チャンネルセレクタ121から供給されるチャンネル切り換え信号CSに応答して、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を最大通過帯域幅に設定し、続いて、補正量検出器116から供給される帯域幅制御開始信号SBに応答して、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域を所定帯域幅まで狭めるようにフィルタ係数を制御する。
【0041】
なお、フィルタ制御器115は、U−VBPF111の通過帯域PBUとL−VBPF112の通過帯域PBLとを、通過帯域PBUとPBLの交差周波数を変化させず、且つ、通過帯域PBUとPBLとが交差周波数を対称軸に対称な傾斜(周波数特性)を有するという関係を維持しつつ、通過帯域PBUとPBLを所定帯域幅まで狭める。U−VBPF111の通過帯域PBU及びL−VBPF112の通過帯域PBLの狭帯域化に伴い、通過帯域PBUの中心周波数は低下し、通過帯域PBLの中心周波数は上昇する。
【0042】
補正量検出器116は、高周波側強度検出器113が検出した信号強度、即ち、U−VBPF111を通過した信号の信号強度と、低周波側強度検出器114が検出した信号強度、即ち、L−VBPF112を通過した信号の信号強度との差に基づいて、局部発振器118の発振周波数の制御量(変更量)ΔfLを示す周波数補正信号をリミッタ117を介して局部発振器118に供給する。
【0043】
また、補正量検出器116は、チャンネルセレクタ121から供給されるチャンネル切り換え信号CSに応答して、高周波側強度検出器113が検出した信号強度、即ち、U−VBPF111を通過した信号の信号強度と、低周波側強度検出器114が検出した信号強度、即ち、L−VBPF112を通過した信号の信号強度との差がほぼ0となったときに、フィルタ制御器115に、帯域幅制御開始信号SBを出力する。
【0044】
補正量検出器116の構成例を図2に示す。
図示するように、補正量検出器116は、減算器161,加算器162,バッファ163を備える。
【0045】
減算器161は、高周波側強度検出器113の出力信号の信号レベルから低周波側強度検出回路114の出力信号の信号レベルの差分を取り、差分に相当する信号レベルを有する信号を出力する。即ち、減算器161は、U−VBPF111を通過した信号の信号強度と、L−VBPF112を通過した信号の信号強度との差を求め、信号強度の差を表す信号レベルを有する信号を出力する。
【0046】
加算器162は、減算器161の出力信号とバッファ163の出力信号とを加算して、局部発振器118の発振周波数の補正量を示す補正信号ΔfLをリミッタ117に出力する。
【0047】
バッファ(遅延回路)163は、加算器162の出力信号を一定期間遅延して、加算器162に被加算数として供給する。
【0048】
加算器162と減算器161とバッファ163とは、協働して、減算器161の出力信号の累算値を求める累算回路を構成する。
【0049】
コントローラ164は、チャンネルセレクタ121から供給されるチャンネル切換信号CSに応答して、減算器161から出力される信号の信号レベルの絶対値が閾値以下のほぼ0レベルとなったときに、即ち、U−VBPF111を通過した信号の信号強度とL−VBPF112を通過した信号の信号強度とがほぼ等しくなったときに、フィルタ制御器115に帯域幅制御開始信号SBを出力する。
【0050】
図1に示すリミッタ117は、補正量検出器116から供給される補正信号が表している補正量ΔfLを±Δmaxの範囲に制限して、局部発振器118に供給する。
【0051】
なお、上記構成において、局部発振器118の周波数を制御するための応答速度は、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める速度よりも速いことが望ましい。換言すると、局部発振器118の発振周波数の制御を完了する前に、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める処理が完了しない程度に、通過帯域幅を狭める速度が相対的に遅いことが望ましい。
【0052】
チャンネルセレクタ121は、ユーザが受信チャンネルを指定した際に、指定されたチャンネルの無線信号を受信するために、同調回路102に同調(受信)対象の周波数frを指定し、局部発振器118に指定されたチャンネルの無線信号を受信するために必要な局部発振信号の周波数fL(=fr−Fc)を通知する。さらに、チャンネルセレクタ121は、フィルタ制御器115と補正量検出器116のコントローラ164にチャンネル切換信号CSを送信する。
【0053】
次に、上記構成の受信機10の動作を説明する。
理解を容易にするため、現在、この受信機10があるチャンネルの無線信号を受信・再生しているとする。
そして、この状態で、ユーザがチャンネルセレクタ121に、中心周波数frのチャンネルの受信を指示したと仮定する。
【0054】
指示に応答して、チャンネルセレクタ121は、同調回路102に受信周波数frを指示し、局部発振器118に発振周波数fL=(fr−Fc)を指示し、フィルタ制御器115とコントローラ164にチャンネル切換信号CSを出力する。
【0055】
これらの指示に応答し、まず、同調回路102は、同調周波数frを切り替え、周波数frの無線信号に同調して、取りこむ。
また、局部発振器118は、発振周波数を(fr−Fc)に変更して、ミクサ103に局部発振信号を出力する。なお、Fcは、BPF104の通過帯域の中心周波数である。
【0056】
ミクサ103は、同調回路102からの中心周波数frの受信信号と局部発振器118から供給される局部発振信号fLとを混合し、中心周波数がFcの中間周波信号と中心周波数が2・fr−Fcの信号を出力する。
【0057】
BPF104は、ミクサ103が出力した信号のうち、中心周波数がFcの中間周波信号を抽出して出力し、中心周波数が2・f1−fcの信号とノイズ成分とを除去する。
【0058】
復調器105は、BPF104の出力する中間周波信号を復調し、ベースバンド信号を再生する。
【0059】
BPF106は、ベースバンド信号に含まれる高調波成分を除去し、オーディオ信号成分を出力する。
【0060】
出力アンプ107は、BPF106から出力されたオーディオ信号成分を、空気信号に変換して、出力する。
【0061】
一方、チャンネル切り換え信号CSに応答して、フィルタ制御器115は、U−VBPF111とL−VBPF112の帯域幅を最大幅に制御する。
【0062】
また、補正量検出器116のコントローラ164は、チャンネル切換信号CSに応答して、タイマを起動し、一定の待機期間を計測する。
【0063】
この待機期間の間に、例えば、同調回路102の同調動作と局部発振器118の発振周波数とが安定し、また、U−VBPF111とL−VBPF112の帯域幅が安定する。
【0064】
また、この待機期間の間も、BPF104の出力する中間周波信号が、U−VBPF111とL−VBPF112に供給される。高周波側強度検出器113は、U−VBPF111を通過した信号の強度を測定し、測定強度を示す強度信号を出力する。同様に、低周波側強度検出器114は、L−VBPF112を通過した信号の強度を測定し、測定強度を示す強度信号を出力する。
【0065】
補正量検出器116内の減算器161は、高周波側強度検出器113の出力信号と低周波側強度検出器114の出力信号の差分を取る。即ち、減算器161は、U−VBPF111を通過した信号の信号強度とL−VBPF112を通過した信号の信号強度との差を求める。
【0066】
加算器162は、減算器161の出力信号とバッファ163の出力信号とを加算して、累算値を信号レベルとする補正信号ΔfLとして出力する。
補正信号ΔfLは、リミッタ117を介して、局部発振器118に供給される。
【0067】
局部発振器118は、リミッタ117を介して供給された補正信号ΔfLに従って、発振周波数fLを修正し、補正信号ΔfLが正の時には、発振周波数fLをΔfLだけ増加し、補正信号ΔfLが負の時には、発振周波数fLをΔfLだけ減少させる。
【0068】
コントローラ164は、タイマが待機期間の計測を終了すると、減算器162の出力信号の絶対値が基準値以下となったか否かを判別する。即ち、コントローラ164は、U−VBPF111を通過した信号の強度とL−VBPF112を通過した信号の強度の差の絶対値が基準値以下(ほぼ0)となったか否かを判別する。
【0069】
減算器162の出力信号の絶対値が基準値以下でほぼ0となった状態では、加算器162は、ほぼ一定レベルの補正信号ΔfLを出力し続ける。このため、局部発振器118は、チャンネルセレクタ121から指示された周波数を補正信号ΔfLで補正した周波数で発振し、局部発振信号をミクサ103に供給する。
【0070】
さらに、コントローラ164は、待機期間の計測後、減算器162の出力信号の絶対値が基準値以下でほぼ0となったことを検出すると、フィルタ制御器115に帯域幅制御開始信号SBを出力する。
【0071】
この帯域幅制御開始信号SBに応答して、フィルタ制御器115は、U−VBPF111の通過帯域PBUとL−VBPF112の通過帯域PBLとを、通過帯域幅の特性が交差周波数を基準に対称であるといいう特性を維持しつつ、通過帯域幅を徐々に小さくする。
この間も、局部発振器118の局部発振周波数fLの制御は継続されている。こうして、チャンネルセレクタ121によるチャンネルの切り換え後、U−VBPF111とL−VBPF112の通過信号の強度に基づいて局部発振器118の発振周波数を制御する動作とU−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める動作とが並行して実行される。
【0072】
U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅が、所定の帯域幅となったところで、通過帯域幅の変更を停止する。
【0073】
以上で、受信チャネルの変更に伴う周波数制御動作を終了する。
【0074】
以上説明した周波数制御動作を、図4(a)に示す信号を受信する場合を例を説明する。
【0075】
この例では、図4(a)に示すように、受信目的信号STが、チャンネルの中心周波数fccから、何らかの原因により、Δfだけ、高周波側にシフトしているとする。
この状態で、チャンネルセレクタ121に、このチャンネルの受信が指示されると、チャンネルセレクタ121は、局部発振器118に、チャンネルの中心周波数fccにより定まる発振周波数fL(=fcc−Fc)を指示する。
【0076】
局部発振器118は、指示に従って、発振周波数fLを制御(調整)する。この段階では、ミクサ103により周波数変換された後の受信信号とU−VBPF111とL−VBPF112の位置関係は、図4(a)と(b)に示す関係となり、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域の交差周波数(=BPF104の通過帯域の中心周波数Fc)が受信チャンネルの中心周波数fccに一致した状態となる。
【0077】
この場合、図4(c)に示すように、受信対象信号のほとんどがU−VBPF111の通過帯域PBUに入ってしまう。
このため、高周波側強度検出器113の出力信号が低周波側強度検出器114の出力信号よりも大きくなり、減算器161の出力信号は正の極性(値)となる。加算器162はこの出力信号の累算値を求めて、正極性の補正信号ΔfLを出力する。
【0078】
加算器162から出力された補正信号ΔfLはリミッタ117を介して局部発振器118に供給される。正の周波数補正信号ΔfLに応答して、局部発振器118は、発振周波数を上昇させる。
これにより、周波数変換後の受信目的信号STの周波数は、図4(c)、(d)、(e)に示すように、徐々に低下する。
【0079】
周波数変換後の受信目的信号STの周波数が、BPF104の通過帯域の中心周波数Fcにほぼ一致する状態になると、図4(e)に示すように、U−VBPF111の通過帯域PBU内に位置する受信目的信号STと、L−VBPF112の通過帯域PBL内に位置する受信目的信号STとの強度がほぼ等しくなる。高周波側強度検出器113の出力信号と低周波側強度検出器114の出力信号とがほぼ等しくなる。このため、減算器161の出力信号もほぼ0レベルとなる。加算器162は、ほぼ一定レベルの信号を出力し続ける状態となる。局部発振器118は、発振周波数をほぼ一定値(fcc−Fc+Δf)とする。
【0080】
コントローラ164は、加算器162の出力の絶対値が閾値以下となったことを判別すると、フィルタ制御器115に帯域幅制御開始信号SBを出力する。
【0081】
帯域幅制御開始信号SBに応答して、フィルタ制御器115は、U−VBPF111とL−VBPF112に供給するフィルタ係数を調整することにより、図4(e)〜(g)に示すように、両VBPF111、112の通過帯域幅を徐々に協調して狭める。
【0082】
この間も局部発振器118の局部発振周波数fLの制御は継続されている。こうして、局部発振器118の発振周波数を制御する動作とU−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める動作とが並行して実行される。
【0083】
U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅が所定値になった段階で、通過帯域幅の制御が終了する。
【0084】
次に、図5(a)〜(g)を参照して、目的信号STの近傍にノイズ信号SNが存在する場合の動作を説明する。
【0085】
まず、図5(a)に示すように、受信目的信号STが、チャンネルの中心周波数fccから、何らかの原因により、Δfだけ、高周波側にシフトしており、その近傍にノイズ信号SNが存在すると仮定する。
【0086】
この状態で、チャンネルセレクタ121に、このチャンネルの受信が指示されると、チャンネルセレクタ121は、局部発振器118に、チャンネルの中心周波数fccにより定まる発振周波数fL(=fcc−Fc)を指示する。
【0087】
局部発振器118は、指示に従って、発振周波数を制御する。この段階では、ミクサ103を通過して周波数変換された後の受信目的信号ST及びノイズ信号SNとU−VBPF111の通過帯域PBU及びL−VBPF112通過帯域PBLの位置関係は、図5(a)と(b)に示す関係となる。この場合、図5(c)に示すように、受信目的信号STとノイズ信号SNとがU−VBPF111の通過帯域PBUとL−VBPF112の通過帯域PBLに入る。
【0088】
この段階では、U−VBPF111の通過帯域PBU内に位置する受信信号と、L−VBPF112の通過帯域PBL内に位置する受信信号との強度がほぼ等しくなり、高周波側強度検出器113の出力信号と低周波側強度検出器114の出力信号とがほぼ等しくなる。このため、減算器161の出力信号もほぼ0レベルとなる。
【0089】
このため、加算器162の出力する周波数補正信号ΔfLはほぼ一定レベルとなる。従って、局部発振器118の発振周波数はほぼ一定値となる。
【0090】
一方、コントローラ164は、待機期間の計測を完了すると、加算器162の出力の絶対値が閾値以下となったことを判別し、フィルタ制御器115に帯域幅制御開始信号SBを出力する。指示に応答して、フィルタ制御器115は、U−VBPF111とL−VBPF112に供給するフィルタ係数を調整することにより、図5(c)〜(g)に示すように、両VBPF111,112の通過帯域幅を徐々に狭める。
【0091】
この間も、局部発振器118の局部発振周波数fLの制御は継続されている。こうして、局部発振器118の発振周波数を制御する動作とU−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を協調的に狭める動作とが並行して実行される。
【0092】
通過帯域幅を狭めることにより、図5(d)に示すように、ノイズ信号SNがL−VBPF112の通過帯域から外れ、その一方で、受信目的信号STはU−VBPF111の通過帯域PBUに位置する。
【0093】
このため、高周波側強度検出器113の出力信号が低周波側強度検出器114の出力信号よりも大きくなり、減算器161の出力信号は正の極性(値)となる。加算器162はこの出力信号の累算値を求めて、正の補正信号ΔfLを出力する。このため、局部発振器118は、発振周波数fLをΔfLだけ上昇させる。これにより、図5(c)〜(g)に示すように、ミクサ103による周波数変換後の受信目的信号STの周波数は徐々に低下する。また、図5(c)〜(g)に示すように、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅は徐々に狭くなる。
【0094】
こうして、図5(g)に示すように、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅が所定値になり、且つ、受信目的信号STの周波数変換後の周波数がU−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域の交差周波数に一致した段階で、一連の制御が終了する。
【0095】
ただし、局部発振器118の発振周波数fLを制御する動作は継続される。
このため、何らかの原因で、受信目的信号STの周波数が図5(h)に示すように変移した(図では、低周波側に変移)場合には、減算器161の出力は負極性となり、加算器162の出力する補正信号ΔfLが負の値になって、発振周波数が低下し、適切な受信状態に復帰することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態によれば、チャンネルの選択後、U−VBPF111とL−VBPF112を通過する信号の量(エネルギー)が同一となるように発振周波数を制御し、その後、発振周波数を制御する動作と並行してU−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める。このため、受信目的信号STの周波数変動に関わらず、安定して目的信号を受信することが可能となり、ノイズを排除することが可能となる。
【0097】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、各種制御をプロセッサにより実施することも可能である。
【0098】
また、この受信機10はアナログ回路で形成することも、ディジタル回路で形成することも可能である。
アナログ回路で形成する場合、例えば、各信号の信号レベル(電圧レベル)により情報量を表す。
【0099】
一方、ディジタル回路で形成する場合には、例えば、i)U−VBPF111〜リミッタ117をCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のディジタル回路で構成し、ii)BPF104の出力をA/D(Analog to Digital)変換してディジタル回路に供給し、iii)ディジタル回路内のリミッタ117の出力をD/A(Digital to Analog)変換した後、局部発振器118に供給するように構成すればよい。
【0100】
上記構成において、局部発振器118の周波数を制御するための応答速度が、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭める速度よりも速いことが望ましいとして説明したが、これに限定されるものではなく、通過帯域幅等に応じて、適宜設定すればよい。
【0101】
局部発振器118の周波数を制御する構成も、図2に示す構成に限定されない。局部発振器118の周波数を制御する構成は、高周波側強度検出器113の検出した信号レベルが、低周波側強度検出器114の検出した信号レベルよりも大きいときに、局部発振器118の発振周波数を上昇させ、高周波側強度検出器113の検出した信号レベルが低周波側強度検出器114の検出した信号レベルよりも小さいときに、局部発振器118の発振周波数を低下させ、高周波側強度検出器113の検出した信号レベルと低周波側強度検出器114の検出した信号レベルとが等しいときに、局部発振器118の発振周波数を維持できる構成ならば、任意である。
また、例えば、チャンネル切り換え信号CSにより、バッファ163をリセットする構成としてもよい。
【0102】
例えば、U−VBPF111の通過帯域PBUとL−VBPF112の通過帯域PBLとを狭める手順も上記の例に限定されない。
【0103】
例えば、上記実施の形態では、チャンネル選択後、局部発振器118の発振周波数を調整して、高周波側強度検出器113の検出した信号レベルと低周波側強度検出器114の検出した信号レベルとがほぼ等しくなった後で、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭めた。この発明はこれに限定されない。例えば、チャンネル選択後、タイマで一定時間を計時し、その後、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を狭めるようにしてもよい。 また、チャンネル選択後、局部発振器118の発振周波数を調整しつつ、U−VBPF111とL−VBPF112の通過帯域幅を徐々に狭めるように構成してもよい。
【0104】
また、U−VBPF111とL−VBPF112との通過帯域幅を制御する構成として、フィルタ係数を調整する例を示した。この発明はこれに限定されず、U−VBPF111とL−VBPF112との通過帯域幅を制御する構成は任意である。U−VBPF111とL−VBPF112との構成に応じて、適宜選択すればよい。
【0105】
上記実施の形態で示した構成や数値は一例であり、この発明はそれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 受信機
101 アンテナ
102 同調回路
103 ミクサ
104 バンドパスフィルタ(BPF)
105 復調器
106 バンドパスフィルタ(BPF)
107 出力アンプ
108 スピーカ
111 高周波側帯域可変バンドパスフィルタ(U−VBPF)
112 低周波側帯域可変バンドパスフィルタ(L−VBPF)
113 高周波側強度検出器
114 低周波側強度検出器
115 フィルタ制御器
116 補正量検出器
117 リミッタ
118 局部発振器
121 チャンネルセレクタ
161 減算器
162 加算器
163 バッファ
164 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を入力する入力手段と、
局部発振信号を出力する局部発振器と、
前記入力手段で入力された信号と前記局部発振器から出力された局部発振信号とを混合するミクサと、
高周波側と低周波側の通過帯域が一部重複する複数のフィルタから構成されたフィルタ手段と、
前記フィルタ手段を構成する複数のフィルタの通過信号の強度に基づいて、前記発振周波数を制御する発振周波数制御手段と、
前記発振周波数制御手段による発振周波数の制御と並行して、前記複数のフィルタそれぞれの通過帯域幅を狭める帯域幅変更手段と、
を備えることを特徴とする周波数制御回路。
【請求項2】
前記複数のフィルタは、高周波側可変帯域バンドパスフィルタと低周波側可変帯域バンドパスフィルタとから構成され、
前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタとは、通過帯域幅が可変で、互いに同一の帯域幅を有するように制御され、且つ、通過帯域の交差周波数を対称軸に対称な周波数特性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数制御回路。
【請求項3】
前記局部発振器の発振周波数を切り換える受信周波数切り換え手段を有し、
前記帯域幅変更手段は、前記受信周波数切り換え手段による受信周波数の切り換え後、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度と低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度とがほぼ一致した後に、
前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過帯域幅を狭める、
ことを特徴とする請求項2に記載の周波数制御回路。
【請求項4】
前記ミクサと前記フィルタとの間に、信号の帯域を制限するバンドパスフィルタを備え、
該バンドパスフィルタの通過帯域の中心周波数と、前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過帯域の交差周波数と、は実質的に等しい、
ことを特徴とする請求項3に記載の周波数制御回路。
【請求項5】
前記帯域幅変更手段は、
前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度と低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過信号の強度との差を表す信号を出力する減算手段と、
前記減算手段の出力信号を累算し、累算値を局部発振器の発振周波数の補正量を示す補正信号として前記局部発振器に供給する累算手段と、
前記減算手段の出力信号が、差の絶対値が基準レベル以下となったときに、
前記高周波側可変帯域バンドパスフィルタと前記低周波側可変帯域バンドパスフィルタの通過帯域幅を狭める帯域幅制御手段と、
を備える、ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の周波数制御回路。
【請求項6】
前記ミクサの出力信号を復調する復調手段と、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の周波数制御回路とを備えることを特徴とする受信機。
【請求項7】
入力信号と局部発振信号とを混合して混合信号を出力し、
前記混合信号から、第1の周波数帯域の周波数成分を抽出し、
前記混合信号から、前記第1の周波数帯域と一部重複する第2の周波数帯域の信号成分を抽出し、
抽出した第1の周波数帯域の周波数成分の強度と抽出した第2の周波数帯域の周波数成分の強度とに基づいて、前記局部発振信号の周波数を制御し、
前記局部発振信号の周波数の制御と並行して、前記第1の周波数帯域の帯域幅と前記第2の周波数帯域の帯域幅とを、前記第1の周波数帯域と前記第2の周波数帯域とが重複した状態を維持しつつ狭める、
ことを特徴とする周波数制御方法。
【請求項8】
前記第1の周波数帯域と前記第2の周波数帯域とを、互いに同一の帯域幅を有し、且つ、通過帯域の交差周波数を、帯域幅によらず一定値に維持するように制御する、
ことを特徴とする請求項7に記載の周波数制御方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の周波数制御方法と、
前記混合信号を復調して出力すること、
を備えることを特徴とする受信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−234152(P2011−234152A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102966(P2010−102966)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】