説明

周波数変換装置及び周波数変換方法

【課題】本発明は、ローカル信号に起因する雑音を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明の周波数変換装置は、入力信号をN分配する信号分配器21と、周波数変換後の中間周波数fIFと入力信号RFの略中心周波数fRFの差fLOのM倍の周波数を有するローカル信号LOを発生するローカル信号発生器22と、ローカル信号LOをN分配するローカル信号分配器11と、分配後の各ローカル信号をM分周するN個の分周器12−1〜12−Nと、信号分配器21からの各入力信号を、それぞれN個の分周器12−1〜12−Nからの各ローカル信号L−1〜L−Nと混合し、混合により得られた中間周波信号IF−1〜IF−Nを出力するN個の周波数変換器23−1〜23−Nと、N個の周波数変換器23−1〜23−Nからの中間周波信号IF−1〜IF−Nを合成する信号合成器25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変換装置及び周波数変換方法に関し、特にローカル信号に起因する雑音を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変換を行なうため、入力信号を複数に分配して周波数変換する周波数変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の周波数変換装置は、入力されたアナログ信号を複数に分配し、分配後の信号をそれぞれ異なるローカル信号で周波数変換する。そして、周波数変換後の信号を合成して入力されたアナログ信号のデータを再構築する。これにより、特許文献1の周波数変換装置は、高周波の広帯域の入力信号を実時間で低周波数に周波数変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−246956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周波数変換の際には、ローカル信号に起因する雑音が生じることがある。しかし、特許文献1では、この雑音については考慮されていないため、再構築するデータにローカル信号に起因する雑音が混じることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ローカル信号に起因する雑音を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の周波数変換装置及び周波数変換方法は、複数に分配して各信号を独立に分周したローカル信号を用いることを特徴とする。
【0007】
具体的には、本願発明の周波数変換装置は、入力信号をN(ただし、Nは正の整数。)分配する信号分配器(21)と、周波数変換後の中間周波数と前記入力信号の略中心周波数の差のM倍(ただし、Mは正の整数。)の周波数を有するローカル信号を発生するローカル信号発生器(22)と、前記ローカル信号発生器からのローカル信号をN分配するローカル信号分配器(11)と、前記ローカル信号分配器からの各ローカル信号を、独立にM分周するN個の分周器(12−1〜12−N)と、前記信号分配器からの各入力信号を、それぞれ前記N個の分周器からの各ローカル信号と混合し、混合により得られた中間周波信号を出力するN個の周波数変換器(23−1〜23−N)と、前記N個の周波数変換器からの中間周波信号を合成する信号合成器(25)と、を備える。
【0008】
ローカル信号発生器及び周波数変換器を備えるため、入力信号の周波数変換を行なうことができる。ローカル信号分配器からの各ローカル信号をN個の分周器でそれぞれ独立に分周するため、相関のないノイズをもつ複数の同相ローカル信号を生成することができる。また、分周の効果により、ローカル信号の位相雑音を1/Mに低減することができる。これにより、周波数変換器に入力される各ローカル信号の雑音は、相関性のない熱雑音と、1/Mに低減された位相雑音になる。したがって、本願発明の周波数変換装置は、信号合成器において合成した出力信号においてローカル信号に起因する雑音を低減することができる。
【0009】
また、信号分配器、N個の周波数変換器及び信号合成器を備えるため、各周波数変換器に入力される信号レベルを低減することができ、各周波数変換器から出力される入力レベルに起因する歪み成分も低減させることが可能となる。したがって、本願発明の周波数変換装置は、信号合成器の合成時の信号のSN比を改善することができる。
【0010】
具体的には、本願発明の周波数変換方法は、入力信号をN(ただし、Nは正の整数。)分配するとともに、周波数変換後の中間周波数と前記入力信号の略中心周波数の差のM倍(ただし、Mは正の整数。)の周波数を有するローカル信号を発生してN分配した後に独立にM分周し、前記N分配後の各入力信号と前記M分周後の各ローカル信号をそれぞれ混合してN個の中間周波信号を生成し、前記N個の中間周波信号を合成する。
【0011】
入力信号とM分周後の各ローカル信号をそれぞれ混合してN個の中間周波信号を生成し、N個の中間周波信号を合成するため、入力信号の周波数変換を行なうことができる。ローカル信号をM分周するため、ローカル信号の位相雑音を1/Mに低減することができる。また、ローカル信号をN分配した後に独立にM分周するため、相関のないノイズをもつ複数の同相ローカル信号を生成することができる。これにより、各ローカル信号の雑音は、相関性のない熱雑音と、1/Mに低減された位相雑音になる。したがって、本願発明の周波数変換方法は、信号合成器において合成した出力信号においてローカル信号に起因する雑音を低減することができる。
【0012】
また、入力信号をN分配し、N個の中間周波信号を合成するため、各周波数変換器への入力レベルを低減することができ、各周波数変換器から出力される入力レベルに起因する歪み成分も低減させることが可能となる。したがって、本願発明の周波数変換方法は、信号合成器の合成時の信号のSN比を改善することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ローカル信号に起因する雑音を低減する周波数変換装置及び周波数変換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る周波数変換装置の一例を示す。
【図2】入力信号RFの一例を示す。
【図3】周波数変換器に発生する3次歪みの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0016】
図1に、本実施形態に係る周波数変換装置の一例を示す。周波数変換装置101は、信号分配器21と、N(ただし、Nは正の整数。)個の周波数変換器23−1〜23−Nと、ADC(Analog to Digital Converter)24−1〜24−Nと、信号合成器25と、ローカル信号発生器22と、ローカル信号分配器11と、分周器12−1〜12−Nと、増幅器13−1〜13−Nと、を備える。
【0017】
周波数変換装置101は、本実施形態に係る周波数変換方法を実行する。本実施形態に係る周波数変換方法は、信号分配器21が入力信号RFをN(ただし、Nは正の整数。)分配するとともに、ローカル信号発生器22が周波数fLOのM倍(ただし、Mは正の整数。)のローカル信号LOを発生して、ローカル信号分配器11がN分配した後に、分周器12−1〜12−Nが独立にM分周し、周波数変換器23−1〜23−NがN分配後の各入力信号B−1〜B−NとM分周後の各ローカル信号L−1〜L−Nをそれぞれ混合してN個の中間周波信号IF−1〜IF−Nを生成し、信号合成器25がN個の中間周波信号IF−1〜IF−Nを合成する。以下、詳細について説明する。
【0018】
図1に示す信号分配器21は、入力信号RFをN分配し、入力信号B−1〜B−Nを周波数変換器23−1〜23−Nに出力する。周波数変換器23−1〜23−Nは、信号分配器21からの各入力信号B−1〜B−Nを、それぞれ周波数fLOのローカル信号L−1〜L−Nと混合し、混合により得られた中間周波信号IF−1〜IF−Nを出力する。ADC24−1〜24−Nは、周波数変換器23−1〜23−Nからの各中間周波信号IF−1〜IF−Nをデジタル信号D−1〜D−Nに変換する。これにより、入力信号B−1〜B−Nは、それぞれ、デジタル信号D−1〜D−Nに変換される。
【0019】
例えば、周波数変換器23−1は、入力信号B−1をローカル信号L−1と混合し、混合により得られた中間周波信号IF−1を出力する。ADC24−1は、周波数変換器23−1からの各中間周波信号IF−1をデジタル信号D−1に変換する。これにより、入力信号B−1は、デジタル信号D−1に変換される。入力信号B−2〜B−Nについても同様である。
【0020】
図2に、入力信号RFの一例を示す。信号分配器21が入力信号RFをN分配するため、入力信号B−1〜B−Nの信号レベルは入力信号RFの1/Nとなる。周波数fLoは、周波数変換後の中間周波数fIFと入力信号RFの略中心周波数fRFの差(fIF−fRF)で定められる。周波数変換器23−1〜23−Nが周波数fLOのローカル信号L−1〜L−Nと混合されるため、入力信号B−1〜B−Nの周波数帯域は周波数fLOだけシフトした中間周波信号IF−1〜IF−Nに変換することができる。ADC24−1〜24−Nが各中間周波信号IF−1〜IF−Nをデジタル信号D−1〜D−Nに変換するため、各中間周波信号IF−1〜IF−Nは、周波数ごとにサンプリングされたデジタル信号D−1〜D−Nに変換することができる。
【0021】
ここで、入力信号RFの信号レベルが低すぎると、入力信号RFとノイズを分離できない。しかし、入力信号RFの信号レベルを高くすると、周波数変換器23−1〜23−Nに発生する3次歪みが大きくなる。
【0022】
図3に、周波数変換器に発生する3次歪みの一例を示す。周波数変換器に発生する3次歪みは、入力された信号レベルに応じて異なる。入力された信号レベルが高いほど、周波数変換器に発生する3次歪みが大きくなる。
【0023】
そこで、周波数変換装置101は、信号分配器21を用いて入力信号RFをN分配して、入力信号B−1〜B−Nの各周波数における信号レベルを入力信号RFの1/Nに低下させている。これにより、周波数変換装置101は、周波数変換器23−1〜23−Nに発生する3次歪みを低減することができる。Nの値は、例えば2又は4である。
【0024】
図1に示す信号合成器25は、ADC24−1〜24−Nからのデジタル信号D−1〜D−Nを合成する。例えば、中間周波信号IF−1〜IF−Nの同一周波数同士が合成されるように、デジタル信号D−1からデジタル信号D−Nまでの全てを合成する。このとき、デジタル信号D−1〜D−Nの位相を合わせる。これにより、図2に示す入力信号RFを中間周波数に変換した信号を構築することができる。
【0025】
図1に示すローカル信号発生器22は、周波数fLoのM倍の周波数を有するローカル信号LOを発生する。ローカル信号分配器11は、ローカル信号発生器22からのローカル信号LOをN分配する。分周器12−1〜12−Nは、ローカル信号分配器11からの各ローカル信号LOを、独立にM分周する。増幅器13−1〜13−Nは、分周器12−1〜12−Nからの各ローカル信号を増幅する。これにより、増幅器13−1〜13−Nは、周波数fLoの周波数成分を有するローカル信号L−1〜L−Nを周波数変換器23−1〜23−Nに出力する。
【0026】
例えば、ローカル信号発生器22が、周波数fLoのM倍の周波数を有するローカル信号LOを発生する。分周器12−1は、ローカル信号分配器11からの各ローカル信号LOのうちの1つをM分周する。増幅器13−1は、分周器12−1からのローカル信号L−1を増幅する。これにより、増幅器13−1から周波数fLOのローカル信号L−1が周波数変換器23−1に出力される。ローカル信号L−2〜L−Nについても同様である。
【0027】
ここで、入力信号RF側のノイズがゼロであり、ローカル信号LOのノイズをNとすると、周波数変換器23−1〜23−Nから出力されるノイズはN−ILとなる。ここで、ILは、ローカルIF(Intermediate Frequency)アイソレーションで通常20dB〜30dBである。この場合、出力すなわちIF側のノイズを低くするためには、ローカル信号LOのノイズを低くおさえることが必要となるが、ローカル信号発生器22の性能や仕様によって制限される。
【0028】
本実施形態では、ローカル信号LOが独立にM分周されているため、ローカル信号発生器22の性能や仕様によって発生するノイズの影響を排除することができる。また、分周の効果により、ローカル信号LOの位相雑音を1/Mに低減することができる。これにより、周波数変換器23−1〜23−Nに入力される各ローカル信号L−1〜L−Nの雑音は、相関性のない熱雑音と、1/Mに低減された位相雑音になる。したがって、信号合成器25において合成した出力信号においてローカル信号LOに起因する雑音を低減することができる。
【0029】
Mの値は、例えば2又は4であり、分周する数によって定められる。Mの値は4以上であることが好ましい。また、分周器12−1〜12−Nは、ローカル信号LOが分周できれば本発明の作用・効果を奏するため、アナログ又はデジタルのいずれであってもよい。デジタルであれば、カウンタを用いて分周器12−1〜12−Nを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は周波数変換装置に適用できるため、情報通信産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
11:ローカル信号分配器
12−1、12−2、12−N:分周器
13−1、13−2、13−N:増幅器
21:信号分配器
22:ローカル信号発生器
23−1、23−2、23−N:周波数変換器
24−1、24−2、24−N:ADC
25:信号合成器
101:周波数変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をN(ただし、Nは正の整数。)分配する信号分配器(21)と、
周波数変換後の中間周波数と前記入力信号の略中心周波数の差のM倍(ただし、Mは正の整数。)の周波数を有するローカル信号を発生するローカル信号発生器(22)と、
前記ローカル信号発生器からのローカル信号をN分配するローカル信号分配器(11)と、
前記ローカル信号分配器からの各ローカル信号を、独立にM分周するN個の分周器(12−1〜12−N)と、
前記信号分配器からの各入力信号を、それぞれ前記N個の分周器からの各ローカル信号と混合し、混合により得られた中間周波信号を出力するN個の周波数変換器(23−1〜23−N)と、
前記N個の周波数変換器からの中間周波信号を合成する信号合成器(25)と、
を備える周波数変換装置。
【請求項2】
入力信号をN(ただし、Nは正の整数。)分配するとともに、周波数変換後の中間周波数と前記入力信号の略中心周波数の差のM倍(ただし、Mは正の整数。)の周波数を有するローカル信号を発生してN分配した後に独立にM分周し、前記N分配後の各入力信号と前記M分周後の各ローカル信号をそれぞれ混合してN個の中間周波信号を生成し、前記N個の中間周波信号を合成する周波数変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−193282(P2011−193282A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58354(P2010−58354)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】