説明

回転濾板式濾過機

【課題】 固形成分を連続的に長時間に渡って効率よく除去することができる新規の回転濾板式濾過機を提供する。
【解決手段】 本発明の回転濾板式濾過機10は、回転軸11に、軸方向に所定間隔を空けて濾過室12を形成して固定された一対の濾板13と、一対の濾板13の外側にそれぞれ所定間隔を空けて濾液室14を形成するように回転軸11に固定された一対の円板状のチャンバー板15と、チャンバー板15全体を包囲するように基台16Aに固定されたハウジング16と、濾過室12内に配置され且つ一対の濾板13の濾過面に堆積するケーキ層を掻き取るようにハウジング16に固定されたスクレーパ17と、濾過室12内にスラリーS1を供給するスラリー供給手段18と、濾液室14からチャンバー板15外へ濾液Lを排出する液排出手段19と、スクレーパ17で掻き取ったスラッジS2を排出するスラッジ排出手段20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転濾板式濾過機に関し、更に詳しくは、濾板に堆積するケーキ層を掻き取って連続運転することができる回転濾板式濾過機に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過機にとして、例えば垂直濾板加圧濾過機、水平濾板加圧濾過機などのバッチ式濾過方式と、連続ドラム型加圧濾過機、中空糸膜分離装置、スラリー循環方式の加圧濾過式濾過機等の連続式濾過方式がある。例えば、超高純度水等の被処理液中に含まれる固形成分を効率よく、確実に除去する場合には、後者の連続式濾過方式が多く利用されている。分離膜を用いる連続処理では、被処理液の流通方向と濾過方向が交叉する、いわゆるクロスフローになっている。
【0003】
ここでは、クロスフローを利用するスラリー循環方式の加圧濾過式濾過機を例に挙げ、その原理について図7を参照しながら説明する。この濾過機は、図7に示すように、容器1と容器1内を濾過室1Aと濾液室1Bに区画する分離膜2と、濾過室1Aに接続された循環配管3と、濾液室1Bに形成された排出配管4と、を備えている。スラリーが例えば0.2MPaに加圧されて循環配管3から濾過室1A内に流入し、濾過室1A内で矢印X方向に流れて循環する。スラリーが濾過室1Aを通過する間に分離膜2によって矢印Y方向に濾過され、濾液が濾液室1Bに連続的に溜められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクロスフローによる濾過の場合には、スラリーから固形成分を除去して高純度液を得ることができるが、分離膜表面に堆積する固形成分からなるケーキ層をスラリーの流動によって除去しているため、ケーキ層の除去効率が低く、スラリーの流動だけではケーキ層を効率よく除去することができず、分離膜に目詰まりを起こしやすく、洗浄などのメンテナンス作業の回数が多くなり、結果的に濾過機の稼動効率が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、長時間に渡って固形成分を効率よく連続的に除去することができ、延いては稼動効率を向上させることができる回転濾板式濾過機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の回転濾板式濾過機は、回転軸に、軸方向に所定間隔を空けて固定された一対の円形状の濾板と、上記一対の濾板によって区画されて形成された円形状の濾過室及び濾液室と、上記濾過室及び上記濾液室を包囲するように基台に固定されたハウジングと、上記回転軸が回転する間に上記濾過室内で上記一対の濾板の濾過面に堆積するケーキ層を掻き取るように上記回転軸から上記濾過室の外周縁に延設されたスクレーパと、上記スクレーパを上記ハウジングに固定するように上記スクレーパと一体化させて設けられた固定用部材と、上記濾過室に上記被処理液を供給する供給手段と、上記濾液室から濾液を排出する第1の排出手段と、上記スクレーパで掻き取られた上記固形成分を排出する第2の排出手段と、を備え、上記第1の排出手段は、上記濾液室に連通し上記濾液を排出するように上記回転軸に設けられた流路を有し、上記第2の排出手段は、上記ハウジングを貫通し上記スクレーパに連通する排出路を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の回転濾板式濾過機は、請求項1に記載の発明において、上記一対の濾板が上記回転軸において所定間隔を空けて複数配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の回転濾板式濾過機は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記被処理液を上記濾過室へ循環させる第1の循環手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の回転濾板式濾過機は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記スクレーパで掻き取られた上記固形成分を、上記濾過室へ循環させる第2の循環手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長時間に渡って固形成分を効率よく連続的に除去することができ、延いては稼動効率を向上させることができる回転濾板式濾過機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の回転濾板式濾過機の一実施形態の内部構造を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ図1に示す回転濾板式濾過機を示す図で、(a)は全体の断面図、(b)は(a)の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す回転濾板式濾過機を用いた濾過システムの一例を示す構成図である。
【図4】本発明の回転濾板式濾過機の他の実施形態を示す図1に相当する側面図である。
【図5】本発明の回転濾板式濾過機の更に他の実施形態を示す図1に相当する側面図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ図5に示す回転濾板式濾過機を示図で、(a)は図2の(a)に相当する断面図、(b)は(a)の濾板を拡大して示す断面図である。
【図7】従来のスラリー循環方式の加圧濾過式濾過機の一例を示す概念図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図6に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。
【0013】
第1の実施形態
本発明の回転濾板式濾過機(以下、単に「濾過機」と称す。)10は、図1、図2の(a)に示すように、回転軸11に、軸方向に所定間隔を空けて固定されて濾過室12を形成する一対の濾板13と、一対の濾板13の外側にそれぞれ所定間隔を空けて濾液室14を形成するように回転軸11に固定されて回転する一対の円板状のチャンバー板15と、チャンバー板15全体を包囲し且つ基台16A(図1参照)に固定されたハウジング16と、濾過室12内に配置され且つ一対の濾板13で例えば粒径が1.0μm以下の微粒子等からなる固形成分を含む被処理液(例えば、スラリー)S1を濾過して濾過面に堆積するケーキ層(図示せず)を掻き取るスクレーパ17と、濾過室12内にスラリーS1を供給するスラリー供給手段18と、濾液室14から濾液Lを排出する第1の排出手段(以下、「濾液排出手段」と称す。)19と、スクレーパ17で掻き取ったスラッジS2を排出する第2の排出手段(以下、「スラッジ排出手段」と称す。)20と、を備え、濾過室12内においてスラリーS1を例えば0.2Mpaの圧力で濾過するように構成されている。
【0014】
一対の濾板13と一対のチャンバー板15は、濾過室12及び濾液室14を形成し、濾過室12の両側に濾液室14を形成している。濾過室12は、例えば濾液室14(常圧)より圧力が高く設定され、濾過室12と濾液室14の圧力差によってスラリーS1を加圧濾過する。また、濾液室14を濾過室12より低い圧力に設定し、減圧濾過をすることもできる。
【0015】
回転軸11は、図2の(a)に示すように一対のチャンバー板15及びハウジング16の中心を貫通し、駆動源であるモータの駆動力を得て、ハウジング16内で一対の濾板13及びチャンバー板15、即ち濾過室12及び濾液室14を所定の回転速度(例えば、1rpm)で回転させる。この時、濾過室12には加圧されたスラリーS1が供給され、濾液室14が大気圧になっているため、スラリーS1が加圧濾過されて濾板13に固形成分が付着、堆積され、濾液室14へ濾液Lが流入する。濾板13は、同図に(b)に示すように、スラリーS1を濾過する濾材13Aと、濾材13Aで被覆され且つ多数の流通孔(図示せず)が所定のパターンで形成された金属板、樹脂板、セラミック板等の支持板13Bと、を有し、濾過室12内のスラリーS1が濾材13Aで加圧濾過され、濾液Lが支持板13Bの多数の流通孔を通って濾液室14に達する。濾材13Aとしては、例えば、UF膜、MF膜、セラミックス膜、濾布、濾紙等の公知の濾材が用いられる。
【0016】
図1、図2の(a)に示すように、回転軸11には濾過室12内のスラリーS1が一対の濾板13で濾過された濾液Lが流出する流路が形成されている。この濾液排出手段19は、例えば回転軸11の軸芯に沿って端面から一対の濾板13が配置された位置を越えて形成された第1の流路11Aと、第1の流路11Aから一対の濾板13の中間位置で開口するように回転軸11の径方向に形成された第2の流路11Bと、を有している。第2の流路11Bは、回転軸11の周面に周方向等間隔を空けて複数形成されている。
【0017】
図2の(a)に示すように、回転軸11には第2の流路11Bと濾過室12を連通する流路を形成する環状の流路形成部材21が装着されている。この流路形成部材21は、厚肉の環状面部と、この環状面部両面の外周縁部に左右一対の濾板13を越える位置まで突出して形成された環状突起と、からなっている。環状面部には回転軸11の複数の第2の流路11Bそれぞれの対応させた複数の第1の流路21Aがその内周面から環状突起に達するように放射状に形成されている。環状突起には、複数の第1の流路21Aそれぞれと交叉するように複数の第2の流路21Bが周方向に形成されている。環状突起は、流路形成部材21の径方向の外側ほど幅が狭くなって両側面がテーパ面として形成されている。第2の流路21Bは、環状突起を軸芯方向に貫通し、左右のテーパ面で開口し、濾過室12の中心に向かう濾液Lが流入しやすくなっている。
【0018】
つまり、濾液排出手段19は、上述の回転軸11の第1、第2の流路11A、11Bと流路形成部材21の第1、第2の流路21A、21Bによって形成され、濾液室14から濾液Lを排出するようにしてある。
【0019】
また、図2の(a)に示すように、流路形成部材21の外周面には一対の濾板13間に所定の間隔に作る環状のスペーサ22が例えばネジ止めによって固定され、このスペーサ22は一対の濾板13の内周縁部に位置している。
【0020】
図2の(a)に示すように、チャンバー板15の内面の内周縁部及び外周縁部にはそれぞれ内側環状突起15A及び外側環状突起15Bが形成されている。一対の内側環状突起15Aが流路形成部材21の環状面部を挟持し、それぞれの内側環状突起15Aの外周面が流路形成部材21の環状突起の内周面が密着している。また、一対の外側環状突起15Bの内面にはそれぞれ濾板13を押さえる一対の環状の濾板押さえ部材23が配置され、各濾板押さえ部材23と外周側環状突起15Bがそれぞれボルト締めされて濾板13の外周縁部を挟持している。そして、一対の濾板押さえ部材23の間にはスペーサ22による間隔と同一寸法の間隔が全周に渡って形成されている。
【0021】
また、図2の(a)に示すように、一対のチャンバー板15及び濾材押さえ部材23の外周面それぞれには環状の外枠24、25が配置され、これらの外枠24、25はハウジング16の外周面を形成している。外枠25は、左右の外枠24の間に介在しており、一対の濾板13の外周端に形成される隙間を封鎖して濾過室12を形成している。外枠25の内周面には全周に渡ってシール部材を兼ねる摺動部材(例えば、樹脂リング)26が設けられ、濾過室12及び濾液室14がハウジング16内で樹脂リング26を介して回転自在になっている。そして、外枠24の内側面と外枠25の外側面にはOリング27が介在して濾過室16の気密を保持している。また、外枠24の内周面とチャンバー板15の外周面には樹脂リング28が介在している。
【0022】
図1に示すように、外枠25及び濾材押さえ部材23には貫通孔29が複数箇所に形成され、これらの貫通孔29はいずれも濾過室12で開口している。その一箇所にはスラリー供給手段18としてのスラリー供給用パイプ30が挿入されている。このスラリー供給用パイプ30は、外枠25から濾過室16内に挿入され、封止された先端がスペーサ22の近傍に達している。スラリー供給用パイプ30の側面には長手方向に所定の間隔を空けて複数のノズル(図示せず)が取り付けられ、複数のノズルから濾板13の回転方向に向けてスラリーS1を噴射し、濾過室12をスラリーS1で満たし濾板13においてスラリーS1をクロスフローで濾過するようにしてある。スラリー供給用パイプ30の左側にはスクレーパ17が配置されている。他の貫通孔29は、濾過室12内の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)の装着に利用し、あるいはスラリーS1を循環させる時のスラリーS1の出入口等として使用することができる。利用しない貫通孔29には密栓が施されている。
【0023】
図1に示すように、スクレーパ17は、濾板13のスペーサ22の外周に嵌る環状部から一対の濾板13それぞれの径方向で反時計方向に向けて湾曲するように延設された一対の湾曲平面部を有し、一対の湾曲平面部が互いに平行に配置され、複数個所においてネジ等の連結部材(図示せず)で連結されて平行を保持して一体化している。そして、一対の湾曲平面部材の濾板13の回転を迎える側の側面には図2の(b)に示すようにスクレーパナイフ17Aが形成され、スクレーパナイフ17Aによってチャンバーが回転する間に濾板13の濾過面に摺接して堆積物(ケーキ層)Cを掻き取るようにしてある。また、一対の湾曲平面部の濾板13の回転を送る側の側面にはセパレータ17Bが形成され、セパレータ17Bによってスラリー側とスラッジ側を区画し、スラリーS1がスクレーパ17側へ侵入し難くしている。このセパレータ17Bはスクレーパナイフ17Aとは異なり濾板13との間に細隙を形成する平坦な側面として形成されている。尚、図2の(b)に示す矢印は濾板13の回転方向を示している。
【0024】
図1に示すように、スクレーパ17の時計方向に所定の角度だけ隔てた位置でスクレーパ17の環状部から径方向に延びてスクレーパ17をハウジングに固定するスクレーパ固定用部材17Cが形成されている。以下では、スラリーS1が流入する領域をスラリー領域12Aと称し、スラッジS2を回収する領域をスラッジ領域12Bと称する。
【0025】
上述のスクレーパ17とスクレーパ固定用部材17Cは環状部を介して一体化している。スクレーパ固定用部材17Cは、その外端でハウジング16の外枠25にボルト等の連結部材(図示せず)によって連結、固定されている。従って、濾過室12及び濾液室14が回転する間にスクレーパ17によって濾板13の濾過面のケーキ層を掻き取ることができる。
【0026】
図1、図2に示すように、外枠24、25の外側にはスクレーパ17の下方に位置させたブロック31が固定されている。このブロック31にはスラリー供給用パイプ30が貫通する貫通孔と、スラッジ領域12Bに連通するスラッジ流路31Aが形成されている。スラッジ流路31Aはブロック31を貫通し、濾過室12のスラッジ領域12Bと連通している。また、ブロック31にはスラッジ流路31Aに直交するスラッジ排出路31Bが形成されている。ここでスラッジ流路31A、31Bがスラッジ排出手段20として形成されている。そして、スラッジ流路31Aの一端にはプレッサによって操作されるバルブ32が挿入され、プレッサの圧力によってバルブ32を操作してスラッジ排出路31BからスラッジS2を排出するようにしている。尚、図2の(a)において、33は軸受、34はロータリジョイントであり、これらの軸受33及びロータリジョイント34によって回転軸11を回転自在に軸支している。
【0027】
次に、動作について説明する。ここではスラリーS1が濾過機10を一回だけ通過して濾過されるワンパス処理を例に挙げて説明する。まず、濾過機10が始動すると、ケーシング16内で濾過室12及び濾液室14が回転軸11を介して例えば1rpmの回転速度で回転すると共に、スラリー供給用パイプ30から濾過室12のスラリー領域12Aに例えば0.2Mpaの圧力でスラリーS1を供給する。スラリーS1は、濾過室12内で固形成分が濾板13によって濾過されて濾過面に固形成分が付着してケーキ層を形成すると共に、濾液Lが濾液室14へ流出する。
【0028】
この時、濾過室12及び濾液室14を含むチャンバーがゆっくり回転しているため、濾板13の濾過面に形成されたケーキ層が濾過室12のスラリー領域12Aからスラッジ領域12Bに達する。スラッジ領域12Bでもスラリー領域12Aから侵入したスラリーS1が濾過されて濃縮され、更にスラッジ領域12Bでは下流端に配置されたスクレーパ17のスクレーパナイフ17Aによって濾板13の濾過面からケーキ層を掻き取って高濃度のスラッジS2を回収する。スラッジS2が濾過面から除去されると、濾過面が更新されて濾板13の濾過性能を回復してスラリー領域12Aに達して次のスラリーS1を濾過する。
【0029】
濾液室14の濾液Lは流路形成部材21の第1、第2の流路21A、21B、回転軸11の第1、第2の流路11A、11Bを経由して外部へ排出され、所定の濾液回収装置(図示せず)によって回収される。一方、濾過室12のスラッジ領域12Bで回収されたスラッジS2は、プレッサが操作するバルブ32を介してスラッジ流路31A、31Bから外部へ排出され、所定のスラッジ回収装置(図示せず)によって回収される。
【0030】
以上説明したように本実施形態の濾過機10によれば、回転軸11に、軸方向に所定間隔を空けて濾過室12を形成して固定された一対の円形状の濾板13と、一対の濾板13の外側にそれぞれ所定間隔を空けて濾液室14を形成するように回転軸11に固定された一対の円形状のチャンバー板15と、チャンバー板15全体を包囲するように基台16Aに固定されたハウジング16と、濾過室12内に配置され且つ一対の濾板13の濾過面に堆積するケーキ層を掻き取るように回転軸11から濾過室14の外周縁に延設されたスクレーパ17と、スクレーパ17をハウジング16に固定するようにスクレーパ17と一体化させて設けられたスクレーパ固定用部材17Cと、濾過室12内にスラリーS1を供給するスラリー供給手段18と、濾液室14からチャンバー板15外へ濾液Lを排出する濾液排出手段19と、スクレーパ17で掻き取ったスラッジS2を排出するスラッジ排出手段20と、を備え、濾液排出手段19は、濾液室14に連通し濾液Lを排出するように回転軸11に設けられた第1、第2の流路11A、11Bを有し、スラッジ排出手段20は、ハウジング16の外枠25を貫通しスクレーパ17に連通するスラッジ流路31A、31Bを有するため、ハウジング16内で濾過室12及び濾液室14が回転する間に、濾過室12内に供給されたスラリーS1がスラリー領域12A内で濾板13によって濾過されて濾過面にケーキ層が形成されても、このケーキ層が下流側のスラッジ領域12Bにおいてスクレーパ17によって掻き取られて濾過面が復活し、スラリー領域12Aでの濾板13の濾過性能が長時間に渡って維持することができ、長時間に渡って効率よく連続的に濾過することができ、濾過機10の稼動効率を向上させることができる。
【0031】
第2の実施形態
第1の実施形態ではスラリーS1を一回通過させて濾過する場合について説明したが、本実施形態では固形成分が低濃度で一度の濾過では不十分な場合には、図3に示すようにスラリーS1及びスラッジS2を循環させ、スラリーS1及びスラッジS2を繰り返し濾過してスラッジS2を短時間で所望の濃度まで高めることができる。
【0032】
本実施形態でも第1の実施形態の濾過機10を用いているため、濾過機10の説明は省略し、この濾過機10が組み込まれた濾過システムについて図3に基づいて図1、図2をも参照しながら説明する。
【0033】
この濾過システム100は、図3に示すように、スラリーS1を濾過する濾過機10と、濾過機10に供給さるスラリーS1が貯留されたスラリータンク40と、濾過機10とスラリータンク40の間でスラリーS1を循環させる第1の循環配管50と、濾過機10と第1のポンプ60の間でスラッジS2を循環させる第2の循環配管70と、第2の循環配管70からスラッジS2を回収するスラッジドラム80と、濾過機10から排出される濾液Lを、排出配管91を介して回収する濾液タンク90と、を備え、モータMによって濾板が回転する間に、後述のようにスラリーS1を濾過してスラッジS2を回収すると共に濾液Lを回収するように構成されている。尚、図3において、PTは圧力センサである。
【0034】
而して、第1の循環配管50の往路配管50Aは、図3に示すように、一端がスラリータンク40に接続され、他端が濾過機10のスラリー供給手段18のバルブ18Aを介してスラリー供給用パイプ30(図1参照)に接続されている。第1の循環配管50の復路配管50Bは一端が濾過機10の貫通孔29(図1参照)に接続され、他端がスラリータンク40に接続されている。往路配管50Aのスラリータンク40近傍には第2のポンプ51が設けられ、第2のポンプ51によって濾過機10とスラリータンク40の間でスラリーS1を循環させ、スラリーS1の固形成分の濃度及びスラリーS2の固形成分の濃度を徐々に高めるようにしてある。
【0035】
また、図3に示すように、第2の循環配管70の往路配管70Aは一端が第1のポンプ60に接続され、他端が濾過機10のスラッジ流路(図示せず)に接続されている。復路配管70Bは一端が濾過機10のスラッジ排出路(図1参照)に接続され、他端が第1のポンプ60に接続されている。また、往路配管70Aは、第1のポンプ50近傍で分岐配管70Cが分岐している。往路配管70A及び分岐配管70Cにはそれぞれバルブ71、72が設けられ、適時にバルブ71を閉じると共にバルブ72を開いて所望の濃度に達したスラッジS2をスラッジドラム80に回収するようにしてある。
【0036】
また、図3に示すように、濾過機10のブロック31にはスラッジのスラッジ排出路31Bを開閉するバルブを操作するプレッサ32Aが取り付けられ、プレッサ32Aは圧縮空気源32Bからの圧縮空気によって制御される。また、濾過機10の貫通孔29にはバルブ35Aを介して洗浄水源35が接続され、濾過機10の濾板が目詰まりした場合に洗浄水源35から洗浄水を濾過室12内に供給して濾板の濾過面等を洗浄するようにしてある。また、濾過室12内の圧力を圧力センサPTで検出し、圧力センサPTを介して常に一定の圧力を維持している。尚、32Cは圧縮空気の切換バルブである。
【0037】
次に、動作について説明する。濾過システム100が始動すると、濾過機10の回転軸11を介してチャンバーが所定の速度で回転すると共に、第2のポンプ51が始動してスラリータンク40から濾過機10の濾過室12へ第1の循環配管50を介してスラリーS1を供給する。濾過室12のスラリー領域12AではスラリーS1を濾過し、濾板の濾過面にケーキ層が形成されると共に濾液Lが濾液室14へ流出する。濾板の回転により濾過面のケーキ層がスラッジ領域に達し、ここでスクレーパ17によってケーキ層を掻き取ってスラッジS2を生成する。
【0038】
濾過室12内のスラリーS2は第1のポンプ51を介してスラリータンク40に戻る。スラリータンク40内のスラリーS1は、第1の循環配管50を介してスラリー領域12Aを繰り返し通過する間に濾液分だけ液分が減少してスラリーS1の固形成分の濃度が徐々に高くなる。この間、第1のポンプ60が始動してスラッジ領域12B内のスラッジS2が第2の循環配管70を循環し、スラッジS2がスラッジ領域12Bを繰り返し通過する間に濾液分だけ液分が減少してスラッジS2の固形成分の濃度が徐々に高くなる。この間に濾液Lは、回転軸11の流路から排出配管91を経由して濾液タンク90に回収される。
【0039】
スラッジS2の固形成分が所定の濃度に達すると、濃度センサを介してバルブ71、72を切り換え、バルブ71が閉じ、バルブ72が開いてスラッジ領域12Bからスラッジドラム80へスラッジS2を回収する。この間もスラッジ領域にはスラッジS2が徐々に蓄積される。スラッジS2の回収を終えると、バルブ71、72を切り換え、再び第2の循環配管70を介してのスラッジ領域12B内のスラッジS2を循環させる。
【0040】
スラリーS1の濾過を続けて濾板に目詰まりを起こした場合には、濾過室12からスラリーS1及びスラッジS2を排出した後、チャンバーを回転させながら、洗浄水源35から濾過室12内へ洗浄水を噴射して濾板を洗浄し、濾過性能を回復させる。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、濾過機10に第1、第2の循環配管50、70を付設し、スラリーS1及びスラッジS2を繰り返し濾過するようにしたため、固形成分濃度の低いスラリーS1であっても確実に固形成分を除去することができる。その他、本実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を期することができる。
【0042】
第3の実施形態
本実施形態の濾過機10は、図4に示すように第1の実施形態の濾過機10のスクレーパ17を時計方向に90°回転させた状態で設置して使用する点で第1の実施形態と異なる。従って、濾過機10の構造は同一であるため、図4に示すように第1の実施形態と同一部分または相当部分には同一の符号を付して本実施形態について説明する。
【0043】
本実施形態の濾過機10は、図4に示すように第1の実施形態の濾過機10と比較してスクレーパ17を時計方向へ90°回転させて設置されており、スラリーS1を濾過室12からオーバーフローさせながら濾過するため、第1に実施形態と濾過機10の使用方法が異なる。
【0044】
本実施形態では、図4に示すように濾過機10とスラリータンク40が循環配管50を介して連結され、循環配管50を介してスラリーS1が濾過室12のスラリー領域12Aとスラリータンク40の間で循環し、スラリーS1の固形成分の濃度が徐々に高くなるようにしてある。そして、濾過室12内のスラリーS1の水平面が回転軸11の中心の高さとほぼ同一の高さになり、スラリーS1が回転軸11中心と同じ高さに設定された流出口からスラリータンク40側へ流出するようにしてある。従って、スラリーS1が濾過室12の貫通孔29をスラリーS1の流出口としてオーバーフローするようになっている。
【0045】
濾過室12のスラリーS1の流出口となる貫通孔29より下流側はスラッジ領域12Bになるため、スラッジ領域12Bにおいてスクレーパ17によって回収されたスラッジS2は液分含有量の低い状態になっている。このスラッジS2はスクレーパ17のスクレーパナイフ17Aの湾曲面に沿ってスラッジ流路31Aへ案内され、スラッジ流路31Aから外部へ排出されるようになっている。濾過室12内の圧力はプレッサによるバルブ32を操作することによって調整することができる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、液分含有量の低いスラッジS2を効率よく連続的に回収することができる他、第1の実施形態と同様の作用効果を期することができる。
【0047】
第4の実施形態
第1の実施形態の濾過機10は、一つのチャンバーを有し、チャンバー内に濾過室12と濾過室12が収納されている。チャンバーが一つしかないため、処理能力が低い。これに対して、本実施形態の濾過機10Aは、図5、図6の(a)、(b)に示すように、一対の濾板13によって形成された濾液室14が回転軸11に並列に複数配置され、処理能力を高める構造になっている。本実施形態でも第1の実施形態と同一部分または相当部分には同一符号を付して本発明を説明する。
【0048】
本実施形態の濾過機10Aは、例えば図5、図6の(a)、(b)に示すように、回転軸11と、回転軸11に互いに所定間隔を空けて固定された複数の濾液室14と、隣接する濾液室14の隙間にそれぞれ縦列に並べて配置された2つのスクレーパ17、一つのセパレータ17D及び一つのスラリー供給用パイプ30と、複数の濾液室14を収納し且つ回転軸11を回転自在に軸支するハウジング16と、を備え、スラリータンク40及びスラッジボックス80Aに対して第1、第2の循環配管50、70を介して連結され、第2の実施形態の濾過システム100に準じて構成されている。濾液室14は上述のように一対の円板状の濾板13によって形成されている。ハウジング16は、底面が平坦面として形成され、上部が円弧面として形成されている。ハウジング16の上部円弧面の内周と濾過室14の外周との間に隙間が形成され、スラリーS1が隙間を経由してハウジング16の円弧面の貫通孔29から第1の循環配管50の復路配管50Bへ流出する。ハウジング16内の空間は濾過室12として形成されている。
【0049】
濾過機10Aは、図5に示すように、スラリータンク40と第1の循環配管50を介して接続され、第1の循環配管50を介してスラリータンク40内のスラリーS1を濾過機10Aとの間で循環させ、スラリーS1を繰り返し濾過するようにしている。また、濾過機10Aのハウジング16の底面にはスラッジボックス80Aが連結され、ハウジング16内に溜まるスラッジS2をスラッジボックス80Aへ排出するようにしてある。スラッジボックス80Aは第2の循環配管70を介して濾過機10Aと連結され、スラッジボックス80A内のスラッジS2を濾過機10Aとの間で循環させ、スラッジS2の固形成分を徐々に濃縮することもできる。尚、図5において、51はスラリーS1を循環させる第1のポンプ、71はスラッジS2を循環させる第2のポンプである。
【0050】
濾液室14は、図6の(a)(b)に示すように所定の隙間を介して配置された一対の濾板13と、一対の濾板13を内周縁部及び外周縁部で所定の隙間を保持する第1、第2の環状部材13C、13Dと、を有し、一対の濾板13と第1、第2の環状部材13C、13Dで囲まれた空間が濾液室14として形成されている。濾板13は、第1の実施形態と同様に濾材13Aと、多数の孔が形成された支持板13Bと、を有している。しかし、本実施形態では、ハウジング16内の空間が濾過室12として形成されているため、図6の(b)に示すように濾材13Aが濾液室14の外側面、即ち支持板13Bの外側面を被覆している。以下では、濾材13Aが施された濾板13の外側面を濾過面と称す。
【0051】
第1の環状部材13Cには、内周面から外周面に径方向に貫通する流路13Eが周方向に所定間隔を空けて形成されている。これらの流路13Eは回転軸11の第2の流路11Bに連通するように形成されている。第1の環状部材13Cは流路形成部材21の外周面に固定され、この流路形成部材21には回転軸11の第2の流路11Bと第1の環状部材13Cの流路13Eを繋ぐ流路21Aが形成されている。
【0052】
従って、スラリーS1は、濾液室14の外側の濾過面でケーキ層が形成され、濾過面を通過する濾液Lが一対の濾板13間の濾液室14内へ流入する。ケーキ層は、後述するスクレーパ17によって濾過面から掻き取られる。
【0053】
2つのスクレーパ17、一つのセパレータ17D及びスラリー供給用パイプ30は、図5に示すように、いずれもスラッジボックス80A内にそれぞれ所定間隔を空けて立設され、隣接する濾液室14の隙間に濾液室14に沿って縦列に挿入さている。本実施形態ではスクレーパ17は、濾液室14が回転する間に、互いに対向する両側の濾板13の濾過面それぞれからケーキ層を掻き取るようにしてある。スクレーパ17及びセパレータ17Dは、いずれも第1の実施形態に用いられたものと実質的に同一の機能を備えている。そして、スクレーパナイフ17A及びセパレータ17Dは、図2の(b)と同一の断面形状になっている。このように隣接する濾板13の間に挿入された2つのスクレーパ17及び一つのセパレータ17Dによってスラッジ側とスラリー側を区画しているため、スラッジ側では固形成分濃度の高いスラッジS2を得ることができる。
【0054】
上述のように、濾過機10Aでは、濾液室14が回転軸11に複数並列して配置され、隣接する濾液室14の間に2つのスクレーパ17、一つのセパレータ17D及びスラリー供給用パイプ30が濾液室14に沿って縦列に配置されており、更にこれらの濾液室14をハウジング16によって包囲して濾過室12が形成されている点で第1の実施形態の濾過機10とは異なっている。その他の点では第1の実施形態の濾過機10に準じて構成されている。
【0055】
次に、動作について説明する。濾過機10Aが始動すると、回転軸11を介して濾液室14が所定の速度で回転すると共に、第1のポンプ51が始動してスラリータンク40内のスラリーS1を第1の循環配管50及びスラリー供給用パイプ30を介して濾過室12へ供給する。濾過室12では複数の濾液室14の濾過面でそれぞれスラリーS1を濾過し、濾過面に固形成分が堆積してケーキ層を形成すると共に濾液Lが濾液室14に流出する。濾液室14の回転により濾過面のケーキ層がスクレーパ17に達し、ここで先のスクレーパ17によってケーキ層を掻き取った後、更に後のスクレーパ17によって残余のケーキ層を掻き取る。ケーキ層が掻き取られた濾過面がセパレータ17Dを通過して濾過室12においてスラリーS1の濾過を繰り返す。濾液室14の濾液Lは回転軸11の第1、第2の流路11A、11Bを介して外部の濾液回収装置で回収される。
【0056】
この間、濾過室12内のスラリーS1は第1の循環配管51を介してスラリータンク40との間で循環する。スラリータンク40内のスラリーS1は、循環する間に濾液分だけ液量が減少してスラリーS1の固形成分の濃度が徐々に高くなる。一方、スクレーパ17で掻き取られてスラッジS2が濾過室12からスラッジボックス80A内に導入されて蓄積される。スラッジボックス80A内のスラッジS2は、第2のポンプ71の働きで第2の循環配管70を介して濾過室12へ戻されて、スラッジボックス80Aと濾過室12の間で循環する。この間に濾液L分だけ液分が減少してスラッジS2の固形成分の濃度が徐々に高くなる。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、スラリーS1を複数の濾液室14において濾過するため、上記の各実施形態と比較してスラリーS1の濾過処理量を格段に増やすことができる。その他、第2の実施形態と同様の作用効果を期することができる。
【0058】
尚、本発明は、上記の各実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨に反しない限り、必要に応じて各構成要素を適宜設計変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、微粒子等の固形成分を濾過する濾過機に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 回転濾板式濾過機
11 回転軸
11A、21A 第1の流路(第1の排出手段)
11B、21B 第2の流路(第1の排出手段)
12 濾過室
13 濾板
14 濾液室
16 ハウジング板(ハウジング)
17 スクレーパ
17C スクレーパ固定用部材(固定部材)
18 スラリー供給手段(供給手段)
19 濾液排出手段(第1の排出手段)
20 スラッジ排出手段
21 流路形成部材
31A スラッジ流路(第2の排出手段)
31B スラッジ流路(第2の排出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に、軸方向に所定間隔を空けて固定された一対の円形状の濾板と、上記一対の濾板によって区画されて形成された円形状の濾過室及び濾液室と、上記濾過室及び上記濾液室を包囲するように基台に固定されたハウジングと、上記回転軸が回転する間に上記濾過室内で上記一対の濾板の濾過面に堆積するケーキ層を掻き取るように上記回転軸から上記濾過室の外周縁に延設されたスクレーパと、上記スクレーパを上記ハウジングに固定するように上記スクレーパと一体化させて設けられた固定用部材と、上記濾過室に上記被処理液を供給する供給手段と、上記濾液室から濾液を排出する第1の排出手段と、上記スクレーパで掻き取られた上記固形成分を排出する第2の排出手段と、を備え、上記第1の排出手段は、上記濾液室に連通し上記濾液を排出するように上記回転軸に設けられた流路を有し、上記第2の排出手段は、上記ハウジングを貫通し上記スクレーパに連通する排出路を有することを特徴とする回転濾板式濾過機。
【請求項2】
上記一対の濾板が上記回転軸において所定間隔を空けて複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転濾板式濾過機。
【請求項3】
上記被処理液を上記濾過室へ循環させる第1の循環手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転濾板式濾過機。
【請求項4】
上記スクレーパで掻き取られた上記固形成分を、上記濾過室へ循環させる第2の循環手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転濾板式濾過機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−16037(P2011−16037A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160456(P2009−160456)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000176752)三菱化工機株式会社 (48)
【Fターム(参考)】