説明

固体撮像素子及びその製造方法

【課題】低い電圧でリング状ゲート電極下に蓄積された電荷を基板に排出し得、かつ、一括シャッタも実現し得る固体撮像素子を高精度に製造する。
【解決手段】nウェル33中のソース近傍p型領域83内にp+領域89を形成した後、リング状ゲート電極35をマスクとしたイオン注入法を適用して、p+領域89中の浅い基板表面にひ素を注入して、表面n+層90を形成する。続いて、リング状ゲート電極35の開口部の内壁にLDDサイドスペーサ91を形成する。そして、リング状ゲート電極35をマスクとしたイオン注入法を適用して、LDDサイドスペーサ91を通して表面n+層90及びp+型領域89内にひ素を高濃度で注入し、n+型のソース領域36を形成する。ソース領域36の形成に伴いリング状のp+型領域84が残る。ゲート電極35とLDDサイドスペーサ91のセルフアラインでn+型のソース領域36とp+型領域84を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体撮像素子及びその製造方法に係り、特に画素にリング状のゲート電極を持つ増幅素子を備えた固体撮像素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子は、大別するとCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)とCMOS(Complementary MOS)イメージセンサの2種類に分けられる。このうち、CCDはフォトダイオードで光電変換して得られた電荷をCCDにより画素外に転送し、その後電圧信号に変換、増幅し、チップ外に出力する。
【0003】
一方、CMOSイメージセンサは、フォトダイオードで光電変換して得られた電荷を画素内で電圧信号、あるいは電流信号などの電気信号に変換し、その電気信号を画素内に備えた増幅用トランジスタで増幅してから画素外へ出力する。CMOSイメージセンサの多くは、画素内に3個以上のトランジスタを備えていることが多い。その結果、CMOSイメージセンサは、これらのトランジスタに多くの面積をとられることから、CCDに比べて微細化に不利であるといわれている。
【0004】
一方、画素内にトランジスタを1、2個だけ持つタイプのイメージセンサの開発も、従来行われてきた。このタイプのイメージセンサのトランジスタは、リング状のゲート電極を持つことが特徴である。この各画素内のリング状のゲート電極を持つトランジスタのリングの中心部の拡散は、通常トランジスタのソースとして機能するが、ゲート電極によりその他の拡散から分離されるため、構成をシンプルにすることが可能である。このリング状のゲート電極を持つトランジスタは増幅用MOS型電界効果トランジスタ(FET)であり、このタイプのイメージセンサは、各画素内に増幅用MOSFETを持つという意味で、CMOSイメージセンサの一種といえる。
【0005】
その最も典型例はCMD(Charge Modulation Device:電荷変調素子)と呼ばれる固体撮像素子である(例えば、特許文献1参照)。図37はCMDと呼ばれる固体撮像素子の一例の構造断面図を示す。この従来の固体撮像素子は、p-基板1上にチャネル領域を構成するn-型エピタキシャル層2を成長し、このエピタキシャル層2中にn型不純物を添加してなる平面が円形のn+型ソース拡散層3及びこのソース拡散層3を完全に囲むようにn+型ドレイン拡散層4を同心円状に形成し、これらにAlからなるソース電極5、ドレイン電極6を接合した構造である。
【0006】
また、エピタキシャル層2の表面にソース拡散層3及びドレイン拡散層4に亘ってイオン注入法等によりp型のゲート領域7を形成し、更に、ソース拡散層3とドレイン拡散層4との間のエピタキシャル層2の表面にソース拡散層3を完全に囲むようにゲート絶縁膜8を介して透明導電材料のゲート電極9を設けて平面がリング状の絶縁ゲートを形成する。
【0007】
上記の構造のCMDは、ゲート電極9に電圧をかけ空乏層を作り受光部とする、いわゆるフォトゲート型の受光素子で、1個のトランジスタが受光素子と増幅素子を兼ねるというシンプルな構成である。ゲート電極9の直下に溜まった電荷が、基板効果によりトランジスタのしきい値電圧を変化させ、ソースの出力電位が変化し、それが信号となる。信号を読み出した後、ソース電極5とゲート電極9に高電圧をかけると、ホールは基板に排出される。
【0008】
しかしながら、上記のフォトゲート型の受光素子はCCDなどでよく使われる埋め込みフォトダイオードなどに比べ、ゲート電極9を光が透過する際に光が吸収されるので、感度が低い。また、pウェルであるゲート領域7がゲート絶縁膜8の界面に直接接しているが、ゲート絶縁膜界面では雑音が発生し易いという問題がある。また、この構造では発生した電荷がゲート電極9全体に一様に分布するため、電荷を電圧に変換する効率が低い、という問題もある。
【0009】
それを改善するため、ウェル領域を共有する受光ダイオードと絶縁ゲート型電界効果トランジスタとを備え、かつ、トランジスタのチャネル領域の下のウェル領域内のソース拡散領域の近くに高濃度埋込層(キャリアポケット)を備えた構造の固体撮像素子が従来提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図38は上記特許文献2記載の固体撮像素子の一例の構造断面図を示す。同図において、p+基板11の表面にnウェル12を形成し、nウェル12中に埋め込みpウェル13を形成し、その埋め込みpウェル13上にリング状ゲート電極14を形成し、更にpウェル13の表面にn+型のドレイン拡散層15をゲート電極14の外周部を取り囲むように形成すると共に、リング状ゲート電極14の中心部にn+型のソース拡散層16を形成し、リング状MOSFETとする。
【0011】
そのリング状MOSFETのドレイン拡散層15の下部にある埋め込みpウェル13を埋め込みフォトダイオードとする。そのうえでMOSFETの埋め込みpウェル13内で、かつ、ソース拡散層16の近傍に、p型不純物濃度を高めた高濃度埋込層であるp+領域(キャリアポケット)17を形成する。このようにすると、埋め込みpウェル13内ではこのキャリアポケット17が最もポテンシャルが低くなるため、入射光によりドレイン拡散層15の下部の埋め込みフォトダイオードで発生したホールは、埋め込みpウェル13内を移動して、キャリアポケット17に集中する。その結果、ソース近傍の電位が上昇し、MOSFETのしきい値が下がるので、そのしきい値変化が信号となる。キャリアポケット17に集まったホールは、信号が読み出された後、ソース電極配線18とゲート電極配線19に高電圧をかけることにより、基板側に排出される。
【0012】
このように、この従来の固体撮像素子では、入射光により発生した電荷が雑音の発生し易い基板表面を通らず、すべて埋め込みpウェル13という基板内を移動するので、雑音が低いという特徴がある。また、発生した電荷がソース拡散層16の近傍に集中するので、電荷−電圧の変換効率が高くなるという特徴がある。
【0013】
さて、上記の特許文献1及び特許文献2記載の固体撮像素子は、撮像方式で分類すると、ローリング・シャッタと呼ばれる撮像方式である。ローリング・シャッタとは、水平方向の複数の画素からなる行毎に、あるいは画素毎に撮像時間がずれている方式で、このような撮像方式では動いている物体の撮影時や、カメラの方向を動かした時に、撮影している画像が歪むという問題がある。このため、一括シャッタと呼ばれる、全画素で時間情報が揃った撮像方式が望ましい。CCDの場合、全画素で一斉にフォトダイオードの電荷をCCD転送路に転送するので、一括シャッタが達成されている。
【0014】
リング状ゲート電極を使った固体撮像素子で、一括シャッタを実現した固体撮像素子も従来開示されている(例えば、特許文献3参照)。図39はこの特許文献3記載の従来の固体撮像素子の一例の構造断面図を示す。同図において、p型の基板21上にn型の半導体領域(nウェル)22が形成され、半導体領域22の単位画素を構成する一部上にp型半導体領域23が形成され、そのp型半導体領域23の上に高濃度のn型半導体領域24が形成され、これらn+半導体領域24、p型半導体領域23及びn型半導体領域(nウェル)22にて受光部(いわゆるフォトダイオードセンサ)が形成される。p型半導体領域23は、光電変換によって発生した信号電荷が蓄積される領域に相当する。
【0015】
また、n型半導体領域22の単位画素を構成する部分にp型半導体領域25が形成され、このp型半導体領域25の表面にゲート絶縁膜26を介して、平面がリング状のゲート電極27aが形成されると共に、リング状のゲート電極27aの内側及び外側に対応するp型半導体領域25にn型のソース領域28及びドレイン領域29が形成される。これにより、ゲート電極27aの直下のp型半導体領域25を信号電荷蓄積部とする読み出し用のMOSトランジスタが形成される。更に、受光部と読み出し用のMOSトランジスタの間のn型半導体領域24上に、ゲート絶縁膜26を介して転送ゲート電極27bが形成される。また、ソース領域28上にはゲート絶縁膜26を介してソース電極30が形成される。
【0016】
この従来の固体撮像素子では、受光部である埋め込みフォトダイオードとリング状ゲート電極27aの間に転送ゲート電極27bを1つ追加し、受光部で光電変換してp型半導体領域23に蓄積された信号電荷を、転送ゲート電極27bによりリング状ゲート電極27a下のp型半導体領域25に全画素一斉に電荷転送を行い、一括シャッタを実現するものである。この従来の固体撮像素子は、ゲート電極27aの下に埋め込みでないp型半導体領域25を全面に持っているという点で、従来のCMDと同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭60−206063号公報
【特許文献2】特開平11−195778号公報
【特許文献3】特開平10−41493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかるに、従来のリング状ゲート電極を有する固体撮像素子には以下の課題がある。特許文献2記載の図38に示した従来の固体撮像素子では、埋め込みのpウェル13内にさらにp+領域を設けキャリアポケット17とするため、必然的にp+領域は濃度がかなり高くなってしまう。この結果、キャリアポケット17の電荷をリセットする時にかける電圧が、例えば、7V〜8Vという高電圧が必要になる。このように高い電圧をかけなければならないので、消費電力が大きくなり、昇圧回路を備えなければならないという問題がある。
【0019】
このリセット電圧を下げるためには、キャリアポケット17のp+濃度を下げればよいが、埋め込みpウェル13の濃度よりも下げることは原理的にできず、またpウェル13の濃度よりも十分濃度が高くないと電荷集中の効果が少なくなるので、その濃度設定の範囲には限界がある。
【0020】
一方、一括シャッタ実現のためには、特許文献3記載の図39に示した固体撮像素子のように、転送用のゲート電極を1つ設けるのがよいが、リング状ゲート電極27aを持つトランジスタの構造が、従来のCMDと同じで、p型半導体領域25がリング状ゲート電極27aの下全面にあり、電荷のソースへの集中が行われていないので、電荷から電圧への変換率が低いという問題がある。
【0021】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、低い電圧でリング状ゲート電極下に蓄積された電荷を基板に排出し得、かつ、一括シャッタも実現し得る固体撮像素子及びその固体撮像素子を高精度に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
本発明の他の目的は、リング状ゲート電極下のゲート絶縁膜界面で発生するノイズを抑制し得る固体撮像素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するため、本発明の固体撮像素子は、入射光を電荷に変換して蓄積するフォトダイオードと、フォトダイオードに蓄積された電荷を転送する転送ゲートトランジスタと、転送ゲートトランジスタにより転送された電荷による電位変化をしきい値の変化として信号を出力する信号出力用トランジスタと、を含む単位画素が規則的に複数配列されており、
フォトダイオードは、第1導電型の基板上に設けられた第2導電型のウェルに形成され、入射光を電荷に変換して蓄積する第1導電型の光電変換領域を備え、信号出力用トランジスタは、ウェル上に絶縁膜を介して形成されたリング状ゲート電極と、ウェルの、リング状ゲート電極の中央開口部に対応する領域に形成された第2導電型のソース領域と、ソース領域の周囲にリング状ゲート電極の外周に達しないようにウェルに接触して形成され、光電変換領域から転送された電荷を蓄積する第1導電型のソース近傍領域と、を備え、転送ゲートトランジスタは、リング状ゲート電極と光電変換領域との間のウェル上に絶縁膜を介して形成され、光電変換領域に蓄積された電荷をソース近傍領域に転送するための転送ゲート電極を備え、信号出力用トランジスタは、ウェルの表面の、リング状ゲート電極と転送ゲート電極に対応する領域とは異なる領域の少なくとも一部に設けられ、ウェルよりも高濃度の不純物濃度を有する第2導電型のドレイン領域を、さらに備え、ソース近傍領域内のソース領域の近傍位置に、ソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の高濃度領域が形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、上記の目的を達成するため、本発明の固体撮像素子の製造方法は、第1導電型の基板上に、リング状ゲート電極を有する信号出力用トランジスタとフォトダイオードとを含む単位画素が規則的に複数配列された固体撮像素子の製造方法において、基板の表面に設けられた第2導電型のウェルの所定位置に第1導電型のソース近傍領域を形成する第1のステップと、ウェル上に、リング状ゲート電極を、その中心開口部がソース近傍領域の上方に位置するように、絶縁膜を介して形成する第2のステップと、リング状ゲート電極をマスクとして、ソース近傍領域内に第2導電型の不純物を注入し、ソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の第1の高濃度領域を形成する第3のステップと、リング状ゲート電極をマスクとして、第1の高濃度領域内に第2導電型の不純物を注入して、第1の高濃度領域の表面に第2導電型の表面層を形成する第4のステップと、第4のステップに続いて、リング状ゲート電極の中央開口部の内壁にサイドスペーサを形成する第5のステップと、リング状ゲート電極及びサイドスペーサをマスクとして、表面層及び第1の高濃度領域に第2導電型の不純物を注入して、ソース近傍領域内に、第2導電型のソース領域を形成すると共にソース領域を取り囲むようにソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の第2の高濃度領域を形成する第6のステップとを含むことを特徴とする。この発明では、リング状ゲート電極によるセルファラインで信号出力用トランジスタの第2導電型のソース領域をソース近傍領域内に設けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、一括シャッタを実現できると同時に、第1導電型の領域自体がソース近傍しかなく、この第1導電型のソース近傍領域の濃度を低くすることができるため、低い電圧でリング状ゲート電極下のソース近傍領域に蓄積された電荷を基板に排出できる。
【0026】
また、本発明によれば、リング状ゲート電極によるセルフアラインで光信号出力用トランジスタの第2の導電型のソース領域をソース近傍領域内に設けることができるため、マスクを用いてソース近傍領域とソース領域を形成するよりも、画素毎の特性ばらつきを大幅に少なくした高精度の固体撮像素子を製造することができる。また、本発明によれば、リング状ゲート電極下のゲート絶縁膜界面で発生するノイズを抑制し得る固体撮像素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の固体撮像素子の第1の実施の形態の上面図とX−X’線に沿う縦断面図である。
【図2】本発明の固体撮像素子の一実施の形態の画素構造と撮像素子全体の構造を示す図である。
【図3】本発明の固体撮像素子の駆動方法の一実施の形態のタイミングチャートである。
【図4】図2の実施の形態の動作説明用ポテンシャル概念図(その1)である。
【図5】図2の実施の形態の動作説明用ポテンシャル概念図(その2)である。
【図6】図2の実施の形態中の画素の一例の等価回路図である。
【図7】本発明においてソース近傍p型領域を単一濃度で設計した例である。
【図8】図7のポテンシャルプロファイル計算例を示す図である。
【図9】図8のZA−ZA’線に沿うポテンシャル断面図である。
【図10】本発明における電荷排出時のポテンシャルの一例を示す図である。
【図11】図10のZB−ZB’線に沿うポテンシャル断面図である。
【図12】本発明におけるリング状ゲート電極下の空乏層の様子の一例を示す概念図である。
【図13】本発明の固体撮像素子の第2の実施の形態の構造断面図である。
【図14】本発明の固体撮像素子の第3の実施の形態の構造断面図である。
【図15】本発明の固体撮像素子の第4の実施の形態の構造断面図である。
【図16】本発明の固体撮像素子の第5の実施の形態の構造断面図である。
【図17】本発明の固体撮像素子の一実施の形態の製造方法の各工程の素子断面図(その1)である。
【図18】本発明の固体撮像素子の一実施の形態の製造方法の各工程の素子断面図(その2)である。
【図19】本発明の固体撮像素子の第6の実施の形態の構造断面図である。
【図20】本発明の固体撮像素子の第7の実施の形態の構造断面図である。
【図21】本発明の固体撮像素子の第8の実施の形態の構造断面図である。
【図22】本発明の固体撮像素子の第5の実施の形態と第7の実施の形態を組み合わせた第9の実施の形態の構造断面図である。
【図23】本発明の固体撮像素子の第5の実施の形態と第8の実施の形態を組み合わせた第10の実施の形態の構造断面図である。
【図24】本発明の固体撮像素子の駆動方法の他の実施の形態のタイミングチャートである。
【図25】ソース電極配線をフローティングにした時のリング状ゲートMOSFETのリセット電位とソース電位との関係の一例を示す図である。
【図26】本発明の固体撮像素子の駆動方法の他の実施の形態の動作説明用タイミングチャートである。
【図27】本発明の固体撮像素子の第11の実施の形態の上面図とZC−ZC’線に沿う縦断面図である。
【図28】図27の実施の形態の画素構造と撮像素子全体の構造を示す図である。
【図29】図28の実施の形態の動作説明用タイミングチャートである。
【図30】本発明の固体撮像素子の第12の実施の形態の上面図とZD−ZD’線に沿う縦断面図である。
【図31】図30(B)のZE−ZE’線に沿う断面における基板深さ方向とポテンシャルの関係を示す図である。
【図32】図30の実施の形態の画素構造と撮像素子全体の構造を示す図である。
【図33】図32の実施の形態の動作説明用タイミングチャートである。
【図34】本発明の固体撮像素子の第13の実施の形態の上面図とZF−ZF’線に沿う縦断面図である。
【図35】本発明の固体撮像素子の第14の実施の形態の動作説明用タイミングチャートである。
【図36】本発明の固体撮像素子の第15の実施の形態の動作説明用タイミングチャートである。
【図37】従来の固体撮像素子の一例の構造断面図である。
【図38】従来の固体撮像素子の他の例の構造断面図である。
【図39】従来の固体撮像素子の更に他の例の構造断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1(A)は本発明になる固体撮像素子の第1の実施の形態の上面図、同図(B)は同図(A)のX−X’線に沿う縦断面図を示す。図1(A)、(B)に示すように、本実施の形態の固体撮像素子は、p+型基板31上にp-型エピタキシャル層32を成長し、このエピタキシャル層32の表面にnウェル33がある。nウェル33上にはゲート酸化膜34を挟んで第1のゲート電極である平面形状がリング状のゲート電極35が形成されている。
【0029】
リング状ゲート電極35の中心部に対応したnウェル33の表面にはn+型のソース領域36が形成されており、そのソース領域36に隣接してソース近傍p型領域37が形成され、更にソース領域36とソース近傍p型領域37の外側の離間した位置にはn+型のドレイン領域38が形成されている。更に、ドレイン領域38の下のnウェル33中には埋め込みのp-型領域39がある。この埋め込みのp-型領域39とドレイン領域38は、図1(A)に示す埋め込みフォトダイオード40を構成している。
【0030】
埋め込みフォトダイオード40とリング状ゲート電極35との間には、第2のゲート電極である転送ゲート電極41がある。ドレイン領域38、リング状ゲート電極35、ソース領域36、転送ゲート電極41には、それぞれメタル配線42、43、44、45が接続されている。また、上記の各構成の上方には、図1(B)に示すように遮光膜46が形成されており、その遮光膜46の埋め込みフォトダイオード40に対応した位置には開口部47が穿設されている。この遮光膜46は金属、あるいは有機膜等で形成される。光は、開口部47を通して埋め込みフォトダイオード40に達して光電変換される。
【0031】
本実施の形態と図22及び図23に示した従来の固体撮像素子との構造上の大きな違いは、従来の固体撮像素子がリング状ゲート電極の下全面にp型領域13、25が存在していたのに対して、本実施の形態ではソース領域36の近傍にのみp型領域37があり、リング状ゲート電極35下の他の領域はn型(nウェル)33になっていることである。
【0032】
このような構造における、デザイン上の優位性は次のように説明できる。図22に示した従来の固体撮像素子では、電荷をソース近傍に集中させるために、pウェル13中にさらに濃いp+領域のキャリアポケット17を作っていた。これに対し、本実施の形態では最初からp型領域自体が37で示すようにソース領域36の近傍しか存在しないために、このソース近傍p型領域37の濃度を低くすることができる。この結果、ソース近傍p型領域37に蓄積されているホール(電荷)を基板に排出するためのリセット電圧を低くすることができる。なお、図23に示した従来の固体撮像素子では最初からソース近傍へ電荷を集中させるという発想はない。
【0033】
次に、本発明の一実施の形態の画素構造と撮像素子全体の構造について、電気回路で表現した図2と共に説明する。同図において、まず、画素はm行n列に画素敷き詰め領域51に配置されている。図2ではこれらm行n列の画素のうち、s行t列の一画素52を代表として等価回路で表現している。この画素52は、リング状ゲートMOSFET53と、フォトダイオード54と、転送ゲートMOSFET55とからなり、リング状ゲートMOSFET53のドレインがフォトダイオード54のn側端子とドレイン電極配線56(図1の42に相当)に接続され、転送ゲートMOSFET55のソースがフォトダイオード54のp側端子に接続され、ドレインがリング状ゲートMOSFET53のバックゲートに接続されている。
【0034】
なお、上記のリング状ゲートMOSFET53は、図1(B)ではリング状ゲート電極35直下のソース近傍p型領域37をゲート領域とし、n+型のソース領域36及びn+型のドレイン領域38を有するnチャネルMOSFETである。また、上記の転送ゲートMOSFET55は、図1(B)では転送ゲート電極41直下のnウェル33をゲート領域、フォトダイオード40の埋め込みのp-型領域39をソース領域、ソース近傍p型領域37をドレインとするpチャネルMOSFETである。リング状ゲートMOSFET53は、転送ゲートMOSFET55により転送されてソース近傍p型領域37に蓄積された電荷による電位変化を、しきい値の変化として信号を出力する信号出力用トランジスタを構成している。
【0035】
図2において、m行n列の各画素から1フレーム分の信号を読み出すために、まず読み出しを始める合図を出すフレームスタート信号を発生させる回路57がある。このフレームスタート信号は撮像素子の外から与えられてもよい。このフレームスタート信号は垂直シフトレジスタ58に供給される。垂直シフトレジスタ58は、m行n列の各画素のうちの何行目の画素を読み出すかの信号を出力する。
【0036】
各行の画素はリング状ゲート電極、転送ゲート電極、ドレイン電極の電位を制御する制御回路に接続されており、これらの制御回路は垂直レジスタ58の出力信号が供給される。例えば、s行目の各画素のリング状ゲート電極は、リング状ゲート電極配線59を介してリング状ゲート電位制御回路60に接続され、各画素の転送ゲート電極は、転送ゲート電極配線61を介して転送ゲート電位制御回路62に接続され、各画素のドレイン電極は、ドレイン電極配線56を介してドレイン電位制御回路63に接続されている。上記の各制御回路60、62、63には垂直シフトレジスタ58の出力信号が供給される。
【0037】
なお、リング状ゲート電極は、行毎に制御するので横方向に配線するが、転送ゲート電極は全画素で一斉に制御するので、配線方向は問わず、縦方向でもよい。ここでは横方向に配線するものとして表現する。ドレイン電位制御回路63は、全画素一斉に制御するが、行毎に制御する可能性もあるので、フレームスタート信号と垂直レジスタ58の両方と接続して表現している。
【0038】
画素52のリング状ゲートMOSFET53のソース電極は、ソース電極配線64(図1の44に相当)を介して2分岐され、一方はスイッチSW1を介してソース電極電位を制御するソース電位制御回路65に接続され、他方はスイッチSW2を介して信号読み出し回路66に接続されている。信号を読み出すときにはスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンにし、ソース電位を制御する時にはスイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフにする。信号は縦方向に出すので、ソース電極の配線方向は縦にする。
【0039】
信号読み出し回路66は次のように構成されている。画素52の出力はリング状ゲートMOSFET53のソースから行われ、出力線64には負荷、例えば電流源67が繋がっている。従って、ソースフォロア回路となっている。電流源67にはキャパシタC1とキャパシタC2の各一端がスイッチsc1とスイッチsc2を介して繋がっている。他端が接地されているキャパシタC1、C2の各一端は、また差動アンプ68の反転入力端子と非反転入力端子に繋がっており、両キャパシタC1及びC2の電位差を差動アンプ68から出力するようになっている。
【0040】
この信号読み出し回路66はCDS回路と呼ばれ、図2に描かれた方式以外にも種々の回路が提案されており、この回路に限るわけではない。信号読み出し回路66から出力された信号は、出力スイッチswtを介して出力される。同じ列にある出力スイッチswtは、水平シフトレジスタ69から出力される信号によりスイッチング制御される。
【0041】
次に、図2に示す実施の形態の固体撮像素子の駆動方法について、図3のタイミングチャートと、それぞれの素子のポテンシャル状態を示す図4及び図5と共に説明する。なお、図4(A)は図1(B)と同一の本実施の形態の1画素の構造断面図を示し、同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
まず、図3(1)に示す期間では、埋め込みのフォトダイオード(図1(A)の40、図2の54等)に光が入り、光電変換効果により電子・ホール対が発生し、フォトダイオードの埋め込みp-型領域39に図4(B)に示すようにホール71が蓄積される。このとき転送ゲート電極41の電位はドレイン電位Vddと同じになっており、転送ゲートMOSFET55はオフ状態である。これらの蓄積は、前フレームの読み出し操作が行われている時に同時に行われている。
【0043】
続く図3(2)に示す期間では、前フレームの読み出しが終了すると、同図(A)に示すように新しいフレームスタート信号が発信されて、次のフレームの読み出しが始まる。最初に行うのは全画素一斉にフォトダイオード(図1(A)の40、図2の54等)からリング状ゲート電極(図1、図4(A)の35)の下のソース近傍p型領域(図1、図4(A)の37)にホールを転送することである。そのため、図3(B)に示すように転送ゲート電位制御回路62から出力される転送ゲート制御信号により、転送ゲート電極(図1、図4(A)の41)の電位がLow2となり、転送ゲートMOSFET55がオン状態になる。
【0044】
この電位Low2はリング状ゲート電位制御回路60から出力される図3(C)に示すリング状ゲートMOSFET53のリング状ゲート電極35に印加される制御信号の電位Low1よりも高い電位とし、図4(C)に示すように転送ゲート電極41とリング状ゲート電極35の下でポテンシャルの勾配を設ける。なお、リング状ゲート電位Low1は0Vでもよいが、0Vよりも高い別の値でもよい。
【0045】
一方、ソース電位制御回路65からスイッチSW1を介してソース電極配線64からリング状ゲートMOSFET53のソースに供給されるソース電位をはじめとする、全画素のソース電位は図3(D)に示すように電位S1(S1>Low1)にして、リング状ゲートMOSFET53がオフになり電流が流れないようにする。この結果、全画素のフォトダイオードに蓄積された電荷(ホール71)が、対応する画素のリング状ゲート電極の下に一斉に転送される。
【0046】
図1(B)及び図4(A)に示すリング状ゲート電極35の下の領域で、ソース近傍p型領域37が最もポテンシャルが低いので、フォトダイオードに蓄積されていたホール71は図4(C)に72で示すようにソース近傍p型領域37に達し、そこに蓄積される。ホール72が蓄積された結果、ソース近傍p型領域37の電位が上昇する。
【0047】
続いて、図3(3)に示す期間では、同図(B)に示すように転送ゲート電極がVddになり、転送ゲートMOSFET55がオフになる。これにより、再び埋め込みフォトダイオード(図1(A)の40、図2の54等)では光電変換効果により電子・ホール対が発生し、フォトダイオードの埋め込みp-型領域39に図4(D)に示すようにホール73が蓄積され始める。この蓄積動作は次の電荷転送時まで続けられる。
【0048】
一方、読み出し操作は行単位で順番に行われるので、自分の行の順番が来るまで、リング状ゲート電極の電位は図3(C)に示すようにLowの状態で、図4(D)に示すようにソース近傍p型領域37にホール72を蓄積したまま待機する。なお、0(GND)≦Low≦Low1である。
【0049】
続く図3(4)〜(6)に示す期間では、画素の信号読み出しが行われる。s行目t列目の画素52について代表してこの信号読み出し動作について説明するに、まず、ソース近傍p型領域37にホール72を蓄積した状態で、図3(E)に示す垂直シフトレジスタ58の出力信号が、同図(H)に示すようにローレベルである期間(4)において、リング状ゲート電位制御回路60から出力される制御信号によりリング状ゲート電極35の電位を図3(K)に示すように、LowからVg1に上げる。
【0050】
ここで、上記の電位Vg1は、前述した各電位Low、Low1、Vddとの間に
Low≦Low1≦Vg1≦Vdd (ただし、Low<Vdd)
なる不等式が成立する電位である。また、上記の期間(4)ではスイッチSW1が図3(I)に示すようにオフ、スイッチSW2が同図(J)に示すようにオン、スイッチsc1が同図(M)に示すようにオン、スイッチsc2が同図(N)に示すようにオフとされる。この結果、MOSFET53のソースに接続されたソースフォロア回路が働き、MOSFET53のソース電位は、図3(L)に示すように期間(4)ではS2(=Vg1−Vth1)となる。ここで、Vth1とはホールがある状態でのMOSFET53のしきい値電圧である。
【0051】
このソース電位S2がオンとされているスイッチsc1を通してキャパシタC1に記憶される。図5(A)はこの期間(4)におけるポテンシャルの状態を示す。この期間(4)では光電変換効果によりフォトダイオードの埋め込みp-型領域39に蓄積されるホールが図5(A)に74で示すように期間(3)よりも増加している。
【0052】
続く図3(5)に示す期間では、リング状ゲート電位制御回路60から出力される制御信号によりリング状ゲート電極35の電位を図3(K)に示すようにHigh1に上げると同時に、同図(I)、(J)に示すようにスイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフとすると共に、ソース電位制御回路65から出力されるソース電位を同図(L)に示すようにHighsに上げる。ここで、High1、Highs>Low1である。
【0053】
上記の電位High1及びHighsの値は同じであっても異なっていてもよいが、設計の簡単のためにはHigh1、Highs≦Vddが望ましい。また、MOSFET53がオンして電流が流れないような電位設定にすることが望ましい。この結果、図5(B)に75で示すように、ソース近傍p型領域37のポテンシャルが上昇し、nウェル33のバリアを越えてホールがエピタキシャル層32に排出される。なお、図5(B)はHigh1=Highs=Vddとして図示している。また、この期間(5)でも光電変換効果によりフォトダイオードの埋め込みp-型領域39に蓄積されるホールが図5(B)に76で示すように期間(4)よりも増加している。
【0054】
続く図3(6)に示す期間では、再び前記期間(4)と同じ信号読み出し状態にする。ただし、期間(4)とは異なり、図3(M)、(N)に示すように、スイッチsc1はオフ、スイッチsc2はオンとする。リング状ゲート電極は図3(K)に示すように期間(4)と同じVg1とする。しかし、この期間(6)では直前の期間(5)でホールが基板に排出されていて図5(C)に示すように、ソース近傍p型領域37にはホールが存在しないので、MOSFET53のソース電位は、図3(L)に示すように期間(6)ではS0(=Vg1−Vth0)となる。ここでVth0とはホールがない状態でのしきい値電圧である。
【0055】
このソース電位S0はオンとされたスイッチsc2を介してキャパシタC2に記憶される。差動アンプ68はキャパシタC1とC2の電位差を出力する。すなわち、差動アンプ68は(Vth0−Vth1)を出力する。この出力値(Vth0−Vth1)は、ホール電荷によるしきい値変化分である。その後、水平シフトレジスタ69から出力される図3(F)に示すパルスのうち、同図(O)に示すt列目の出力パルスに基づき、図2の出力スイッチswtがオンとされ、このswtのオン期間に図3(P)にハッチングにより模式的に示すように、差動アンプ68からのホール電荷によるしきい値変化分が画素52の出力信号Voutとして出力される。
【0056】
続いて、図3に(7)で示す期間では、再びリング状ゲート電極35の電位を図3()、図5(D)に78でそれぞれ示すようにLowにし、ソース近傍p型領域37にはホールがない状態で、全ての行の信号処理が終了するまで待機する。この期間(7)でも引き続きフォトダイオードに図5(D)に79で示すように光電変換効果によるホールの蓄積が進行する。その後、前記期間(1)に戻って、ホールの転送から繰り返す。これにより、各画素から図3(G)に示す出力信号が読み出される。
【0057】
なお、図4(C)に示す転送時のポテンシャルの概念図と図2に示した画素52の回路図とを比較して分かるように、図2の画素52の回路構成は簡略化して示してある。画素52の回路は、厳密には図6に示すように、転送ゲートMOSFET55のソースとリング状ゲートMOSFET53のバックゲートとの間に、リング状ゲート電極配線59と転送ゲート電極配線61の各電位に連動したスイッチ70が設けられる構成である。このスイッチ70は、リング状ゲート電極配線59の電位Low1と、転送ゲート電極配線61の電位Low2との間に、Low1≦Low2の関係があるときはオン状態になり、Low1>Low2の関係があるときにはオフ状態になる。
【0058】
このスイッチ70を設けることにより、図4(C)に示したリング状ゲート電極35(電位Low1)の下の基板電位が、転送ゲート電極41(電位Low2)の下の基板電位よりも高くなっていて、リング状ゲート電極35(電位Low1)の下の基板電位がバリアとして働き、ホールがソース近傍p型領域37に達することができないという現象を回路的に表現できる。しかしながら、転送時は上記のLow1≦Low2の条件は、電位制御回路60、62等により常に満たされているので、図2ではこのスイッチ70を省略して図示している。
【0059】
次に、本発明と従来例との違いをはっきり表す設計例について説明する。図22に示した従来の固体撮像素子では、埋め込みpウェル13の中にp+領域(キャリアポケット17)を作っていたために、pウェル13内で濃度差が必ず存在している。これに対し、本実施の形態の場合、ソース近傍p型領域37を単一の濃度として設計することもできる。
例えば、このソース近傍p型領域37を5E16cm-3と一定にすることもできる。
【0060】
設計例を図7に示す。図7は計算の簡単のため、図1のうち、転送ゲート電極を含まないY−Y’線に沿う断面を想定している。図7中、図1(B)と同一構成部分には同一符号を付してある。図7において、リング状ゲート電極35は幅が1μmで直径0.3μmの開口部を中心に有する。また、ソース近傍p型領域37は幅が0.9μmで濃度が5E16cm-3であり、nウェル33の表面から0.02μmから0.25μmの範囲の深さに形成されている。ソース領域36とドレイン領域37は、それぞれ濃度が1E20cm-3であり、nウェル33の表面から深さ0.1μmまでの範囲に形成されている。
【0061】
図8は、この構造の固体撮像素子の図7に一点鎖線Iで示す範囲内について、ソース領域36の電位1V、リング状ゲート電極35の電位0V、ドレイン領域38の電位3Vでシミュレーションした時のポテンシャル図を示す。図8に示すように、ソース近傍p型領域37内にポテンシャルの低い部分ができることがわかる。図9は図8のZA−ZA’断面を示す。図9によりポテンシャルの縦方向の形状が分かる。ホールは最もポテンシャルの低いところに集まるので、図8及び図9からこの電圧状態でリング状ゲート電極35の下にホールが転送されてきた場合、確実にポテンシャルの底にホールが集まり、蓄積されることが理解できる。
【0062】
次に、リング状ゲート電極35とソース領域36の電位をドレイン領域38の電位と同じ3Vにしてシミュレーションして得たポテンシャル図を図10に示す。また、図10のZB−ZB’断面のポテンシャル図を図11に示す。図10及び図11から分かるように、ポテンシャルの底は消滅し、リング状ゲート電極35の下からP+基板31まで窪みのない滑らかなスロープを形成している。従って、ポテンシャルの底に蓄積されたホールは、3Vという極めて低い電圧で、確実にp+基板31に排出されることが確認できる。これはソース近傍p型領域37の濃度を下げることができるからである。
【0063】
図7〜図11で図22に示した従来の固体撮像素子では不可能な、このような単一濃度のソース近傍p型領域37の設計が可能であることを示せた。なお、この例は、ソース近傍p型領域37が単一濃度でなければならないと主張しているものではない。ソース近傍p型領域37内で濃度分布を持たせてもよい。
【0064】
次に、リング状ゲート電極下におけるp型領域以外のnウェルの意味について説明する。本発明は、ソース近傍p型領域に蓄積されたホールにより、ソース近傍p型領域のポテンシャルが変化し、これをしきい値電圧の変化として読み出すことを原理としている。従って、ソース近傍p型領域とソース電極、リング状ゲート電極との容量を大きくして、その他の電極、ドレイン電極、転送ゲート電極との容量を小さくした方が、その効果が大きい。
【0065】
まず、ソース近傍p型領域37と転送ゲート電極41との間の容量であるが、両者間の距離は元々離れているので、容量は小さい。一方、nウェル33はドレイン領域38と接続しているので、nウェル33の電位はVddとなる。nウェル33は直接ソース近傍p型領域37に接しているので、何もしなければ、ソース近傍p型領域37とドレイン領域38との間の容量は大きくなる。
【0066】
そこで、リング状ゲート電極35の下のnウェル領域は濃度の低いn-型としておき、容易に空乏層が広がるようにしておく。この様子は例えば図8でも分かるが、改めて概念図を図12に示す。図12において、リング状ゲート電極35をnウェル33の電源電圧以下にすると、リング状ゲート電極35の下のn-領域(nウェル33)は容易に空乏化する。従って、信号読み出し時に、例えば電源電圧Vddを3.3V、読み出し時のリング状ゲート電極35の電位Vg1を1.5Vなどとすると、図12に空乏層端81として示すように、確実にn-領域(nウェル33)は空乏化する。このように、ソース近傍p型領域37とドレイン領域38との間に空乏層が広がると、両者の容量は非常に小さくなる。
【0067】
従って、ソース近傍p型領域37に蓄えられたホールの影響は、ソース領域36やリング状ゲート電極35に対する影響が支配的になり、より信号出力が大きくなることになるという効果がある。図12に示すソース近傍p型領域37とドレイン領域38の間の距離d1、d2をどの程度に設定するかは、両者の容量をどの程度に設定するかで決める。なお、図1の構造の細かな構造の違いにより、特徴の異なる素子を作ることが可能である。
【0068】
次に、本発明の固体撮像素子の第2の実施の形態について説明する。図13は本発明になる固体撮像素子の第2の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図1(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図13に示す第2の実施の形態は、ソース近傍p型領域37内の更にソース領域36に近い領域に、平面形状がリング状のp+型領域82を形成したことを特徴とする。このようにすることにより、第1の実施の形態よりも電荷がp+型領域82に集中するので、更に感度を上げることができる。
【0069】
次に、本発明の固体撮像素子の第3の実施の形態について説明する。図14は本発明になる固体撮像素子の第3の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図1(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図14に示す第3の実施の形態は、ソース近傍p型領域83がゲート酸化膜34に直接接している部分があることが特徴である。本実施の形態では、埋め込み構造にしなくてもよいので、構造が簡単になり、作り易くなるというメリットがある。
【0070】
一方、デメリットとしては、ゲート酸化膜34からの暗電流による雑音の影響を受け易いということがある。このデメリットはゲート酸化膜34に接している面積に比例するので、接している面積を十分小さくすることにより、デメリットを小さくし、メリットの方が大きくなるようにできる。
【0071】
次に、本発明の固体撮像素子の第4の実施の形態について説明する。図15は本発明になる固体撮像素子の第4の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図1(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図15に示す第4の実施の形態は、第2の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせた形状をしており、ソース近傍p+型領域83内に平面形状がリング状のp+型領域82が設けられている。この第4の実施の形態では、p+型領域82が埋め込み構造になっているが、周辺のソース近傍p型領域83の一部はゲート酸化膜34に接している。これはやや構造が複雑になってしまうが、第2の実施の形態と第3の実施の形態の長所を取り入れた構造である。
【0072】
次に、本発明の固体撮像素子の第5の実施の形態について説明する。図16は本発明になる固体撮像素子の第5の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図15と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図16に示す第5の実施の形態は、第4の実施の形態を作り易くしたもので、第4の実施の形態との大きな違いは、ソース近傍p型領域83内のp+型領域84がリング状ゲート電極35の下になく、内側にあることである。
【0073】
このようにすると、後述するように、p+型領域84をリング状ゲート電極35によるセルフアラインで作ることができ、マスクを使ってp+型領域84を作るよりも格段に面積ばらつきが少なくなり、画素毎の特性ばらつきを小さくできる。
【0074】
次に、本発明になる固体撮像素子の一実施の形態の製造方法について図17及び図18の各工程の素子断面図と共に説明する。この製造方法は、図16に示した第5の実施の形態の固体撮像素子の製造方法である。なお、説明の簡単のため、ソース近傍のみの作り方を示し、既にnウェル33が形成されているものとする。
【0075】
まず、図17(A)に示すように、nウェル33の表面全面に酸化膜87を形成し、更にフォトプロセスによりnウェル33内のソース近傍p型領域83を作る部分を除いたレジスト88を酸化膜87上に形成した後、レジスト88をマスクとしたイオン注入法を適用して酸化膜87を通してnウェル33中にp型不純物であるボロンを、例えば、加速エネルギー50〜150keV、ドーズ量5E11〜5E12cm-2の条件で注入してソース近傍p型領域83を作る。
【0076】
続いて、図17(A)の基板表面酸化膜87をレジスト88と共に除去して図17(B)に示すように、新たにゲート酸化膜34を例えば、7〜18nmの厚さに形成し、その上にリング状ゲート電極35を例えば、0.2〜0.5μmの厚さに既知の方法で形成する。続いて、図17(C)に示すように、リング状ゲート電極35をマスクとしたイオン注入法を適用して、nウェル33中の図17(A)よりも浅いところにボロンを、例えば、加速エネルギー10〜50keV、ドーズ量1E12〜2E13cm-2の条件で注入して、p+領域89を形成する。
【0077】
次に、図18(A)に示すように、同じくリング状ゲート電極35をマスクとしたイオン注入法を適用して、p+領域89中の浅い基板表面にn型不純物であるひ素を、例えば、加速エネルギー10〜50keV、ドーズ量1E12〜2E13cm-2の条件で注入して、表面n+層90を形成する。続いて、図18(B)に示すように、リング状ゲート電極35の開口部の内壁に、例えば、0.1〜0.4μmの幅のLDDサイドスペーサ91を公知の方法により形成する。
【0078】
そして、最後に図18(C)に示すように、リング状ゲート電極35をマスクとしたイオン注入法を適用して、LDDサイドスペーサ91を通して表面n+層90及びp+型領域89内にn型不純物であるひ素を高濃度で例えば、加速エネルギー20〜100keV、ドーズ量5E14〜5E15cm-2の条件で注入し、n+型のソース領域36を形成する。このソース領域36の形成に伴いリング状のp+型領域84が残る。以上のように、ゲート電極35とLDDサイドスペーサ91のセルフアラインでn+型のソース領域36とp+型領域84を形成できるので、非常に高精度の製造が可能となる。
【0079】
次に、本発明の固体撮像素子の第6の実施の形態について説明する。図19は、本発明になる固体撮像素子の第6の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図1(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図19に示す第6の実施の形態は、第1の実施の形態に比べて、転送ゲート電極41の下のnウェル33の表面の、ソース領域36、ドレイン領域38よりも浅い位置にp型不純物を導入して、p-型しきい値調整層94を形成した点に特徴がある。本実施の形態と後述する第7の実施の形態とは、特許請求の範囲の請求項2に対応した実施の形態である。
【0080】
本実施の形態によれば、転送ゲートMOSFETをオンとするしきい値電圧を可変にすることができ、転送ゲートMOSFETをオンとする電圧設定の自由度を広げることができる。また、このように、nウェル33の表面にp-型しきい値調整層94を作ると、これはいわゆる埋め込みチャネルになり、電荷は基板表面ではなく、基板表面から少し離れた基板の内部を通ることになり、これは基板表面を通るよりもドリフト雑音が少なく都合がよい。
【0081】
次に、本発明の固体撮像素子の第7の実施の形態について説明する。図20は、本発明になる固体撮像素子の第7の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図14と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図20に示す第7の実施の形態は、第6の実施の形態と同じ理由で、転送ゲート電極41の下だけでなく、リング状ゲート電極35の下にもnウェル33の表面の、ソース領域36、ドレイン領域38よりも浅い位置にp型不純物を導入して、p-型しきい値調整層95を形成した点に特徴がある。このp-型しきい値調整層95は、埋め込みチャネルを形成し、ソース近傍p型領域83に達するまでのドリフト雑音を減らすものである。
【0082】
ところで、図18に示すような構造では、リング状ゲート電極35のうち、転送ゲート電極41側とそうでないところで、不純物の配置の形状が異なるので、ポテンシャルの底近辺のポテンシャル形状が、転送ゲート電極41側とそうでないところで異なってしまう可能性があり、問題である。
【0083】
次に、本発明の固体撮像素子の第8の実施の形態について説明する。図21は、本発明になる固体撮像素子の第8の実施の形態の構造断面図を示す。同図中、図20と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図21に示す第8の実施の形態は、リング状ゲート電極35の全ての領域でソース領域36、ドレイン領域38よりも浅い位置にp型不純物を導入して、p-型しきい値調整層96を形成してバランスをよくしたものである。
【0084】
このようにすると、一見、図38及び図39に示した従来の固体撮像素子と同じようにリング状ゲート電極下の全面がp型になってしまうので似ているが、これらと本実施の形態との違いは、そのp型の深さがソース、ドレインよりも浅くなっていることで、これにより従来例との区別がつく。
【0085】
なお、第6、第7、第8の実施の形態は、そのソース近傍p型領域37、83の構造は、図19、図20、図21に示したものに限らず、第2乃至第5の実施の形態のどれでもよい。例えば、図16に示した第5の実施の形態と第7の実施の形態の固体撮像素子を組み合わせた第9の実施の形態の固体撮像素子の構造断面図を図22に示し、第5の実施の形態と第8の実施の形態の固体撮像素子を組み合わせた第10の実施の形態の固体撮像素子の構造断面図を図23に示す。
【0086】
ところで、上記の実施の形態において、ソース近傍p型領域37のリセット方法は、図3等と共に説明したように、リング状ゲート電極35、ソース電極配線44をリセットできる電位に設定することで行っている。ところが、この方法では、列毎にソース電位をリセット電位Highsに設定するためのソース電位制御回路が必要になり、回路構成が若干複雑になると共に、制御回路の面積も若干大きくなるという問題がある。
【0087】
そこで、以下説明する他の実施の形態では、リセット方法を見直すことにより、回路構成を簡略化すると共にチップ面積を削減する。図24は、本発明になる固体撮像素子の駆動方法の他の実施の形態のタイミングチャートを示す。同図中、図3と同一部分には同一符号を付してある。この実施の形態の固体撮像素子の構成は図2と同様であるが、その駆動方法が図3と異なる。すなわち、図24と図3との違いは、期間(5)のホールの基板への排出、つまりリセット時のリセット動作にある。
【0088】
まず、図2に示したt列目のスイッチSW1が図24(I)にローレベルで模式的に示すように期間(4)〜(6)の間継続してオフ状態とされる。また、t列目のスイッチSW2が図24(J)にローレベルで模式的に示すように期間(5)でオフ状態とされる。従って、期間(5)では図2のt列目のソース電極配線64は、ソース電位制御回路65とも信号読み出し回路66とも接続されておらず、全くのフローティング状態となっている。
【0089】
この状態の期間(5)において、リング状ゲート電極配線59の電位を図24(K)に示すようにHigh1とすると、リング状ゲートMOSFET53がオン状態になり、そのドレイン電極からソース電極へ電流が流れ込み、ソース電位が上昇し、最終的には、図24(L)に示すようにHighs’となる。このソース電位Highs’は、上記のリング状ゲート電極配線59の電位High1により異なる。すなわち、リング状ゲートMOSFET53のしきい値電圧をVthとすると、
High1≦Vdd+Vth のとき、Highs’=High1−Vth
High1>Vdd+Vth のとき、Highs’=Vdd
となる。
【0090】
従って、リング状ゲートMOSFET53のゲート電極に印加されるリセット電位High1と、リング状ゲートMOSFET53のソース電位との関係は、ソース電極配線64をフローティング状態としたときには図25で示され、ソース電位Highs’はドレイン電位Vdd以上にすることはできない。従って、ソース電位Highs’がVdd以下でソース近傍p型領域37のホールをリセットできるように設計しておく必要がある。本発明の固体撮像素子では、ソース近傍p型領域37のリセット電位High1を、図38に示した従来の固体撮像素子に比べて下げることができるので、そのような設計を行うことは可能である。
【0091】
なお、図25ではしきい値電圧Vthは変化しない定数として表現しているが、実際にはソース近傍p型領域37にホールがある場合のしきい値はVth1であり、リセットした後では、ホールが無い場合のしきい値Vth0になる。Vth1<Vth0なので、設計上のしきい値電圧はVth0として行えばよい。
【0092】
図1に示した固体撮像素子では、図2のソース電位制御回路65からリング状ゲートMOSFET53のリセット時のソース電位Highsと、待機時の電位S1の2種類をリング状ゲートMOSFET53のソース電極配線64に供給する必要がある。
【0093】
これに対し、本実施の形態では、リング状ゲートMOSFET53のソース電極電位をフローティング状態としてからリング状ゲートMOSFET53のゲート電極電位をHigh1としてオン状態(リセット状態)とすることにより、リング状ゲートMOSFET53のソース電位がHighs’となるため、ソース電位Highs’はソース電位制御回路65から出力する必要が無くなり、ソース電位制御回路65は待機時の電位S1のみをソース電極配線64に供給するだけでよく、ソース電位制御回路65の構成がそれだけ簡単になる。また、ソース電位制御回路65内の駆動トランジスタはかなりのチップ面積を必要とするが、ソース電位制御回路65内の駆動トランジスタの削減によりチップ面積の削減ができる。
【0094】
ところで、固体撮像素子の露光時間は可変にできる方がよい。そこで、次に、以上説明した本発明の各実施の形態の固体撮像素子を静止画の撮影に用いる場合の、露光時間の可変方法について、図26のタイミングチャートと共に説明する。このタイミングチャートは図3に示したタイミングチャートと同様に、図2に示した回路の画素敷き詰め領域51のm行n列の画素のうち、s行t列の一画素52を読み出すものとして図示してある。
【0095】
例えば、デジタル・スチル・カメラのシャッタが押されると、図26(A)に示すようにワンショットパルスのスタート信号が発生し、撮影と読み出しが行われる。まず、図26(1)に示す期間では、フォトダイオード(図2の54等)に余分な電荷があるかもしれないので、フォトダイオード(図2の54等)の電荷を捨てる作業を行う。
【0096】
そのため、まず、全画素の転送ゲート電極の電位を図26(B)に示すようにLow2にして転送ゲートMOSFET(図2の55)をオンとし、全画素のリング状ゲート電極の電位を図26(C)に示すようにLow1にする。これにより、図4(B)に示したと同様に、全画素のフォトダイオードの電荷がソース近傍p型領域(図1(B)の37)に転送され、全画素のフォトダイオードの電荷が空になる。
【0097】
続く図26(2)に示す期間では、図26(B)に示すように全画素の転送ゲート電極の電位がハイレベルのVddにされ、全画素の転送ゲートMOSFET(図2の55等)がオフとされ、フォトダイオード(図2の54等)は露光を開始し、光電変換によりホールがフォトダイオードに蓄積される。露光時間は可変であり、指定された時間だけ行う。
【0098】
上記の転送ゲート電極の電位がVddにされてフォトダイオード(図2の54等)が露光している間、リング状ゲート電極の電位は図26(3)及び同図(C)に示すように、一旦High1にされ、全画素のリング状ゲートMOSFET(図2の53等)のソース電極の電位は図26(D)に示すようにHighsになり、リング状ゲートMOSFET(図2の53等)のソース近傍p型領域に転送された、無駄な電荷を基板に排出する。これは、図5(B)に示した動作と同様である(ただし、この場合は全画素同時)。
【0099】
排出が終わると、全画素のリング状ゲート電極の電位は図26(C)に示すようにLowにされ、全画素のソース電極の電位は同図(D)に示すようにS1に戻り、待機状態となる。
【0100】
指定された露光時間が経過して図26(4)で示す期間になると、(1)の期間と同様に全画素の転送ゲート電極の電位が図26(B)に示すようにLow2にされると共に、リング状ゲート電極の電位がLow1にされ、これにより、各画素のフォトダイオードの電荷が対応するリング状ゲートMOSFETのソース近傍p型領域に転送される。続いて、図26(5)〜(9)で示す期間で画素信号の読み出しが行われる。なお、この画素信号の読み出し操作は、図3と同じなのでその説明を省略する。なお、図26(E)、(F)、(G)は図2の垂直シフトレジスタ58、水平シフトレジスタ69、出力信号Voutであり、また、図26(H)〜(P)は図3(H)〜(P)と同様の信号を示す。
【0101】
上記の動作により、例えば、1万分の1秒という短い露光時間(ショート・シャツタ)から、2秒とか、5秒とか露光時間が長い場合(ロング・シャツタ)にも、静止画を撮影する場合には対応できる。これが静止画における露光時間の可変方法である。
【0102】
一方、動画の場合には、1秒間に30枚とか、60枚とかの画像枚数が決まっているので、最大の露光時間は、その撮影枚数によって決まる。例えば、1秒間に30枚の画像で動画を構成するのなら、最大の露光時間を30分の1秒よりも長くすることはできない。
従って、ロング・シャッタは実現できない。しかしながら、30分の1秒以下のショート・シャッタが必要になる場合がある。例えば、走っている車など、速度の速い物体を撮影する場合に、短い露光時間で撮影すると画像がぶれないので、ショート・シャッタは有効である。
【0103】
ところが、図3のタイミングチャートを見て分かるように、動画撮影の場合は、画素信号の読み出し操作とフォトダイオードの電荷蓄積時間が重なっているために、読み出し操作が終わるまでは、静止画の場合のように、フォトダイオードの電荷をソース近傍p型領域に排出できないので、露光時間を短くできない。従って、ショート・シャッタを実現するには、何らかの方法で、画素からの読み出し操作中に電荷を捨てる新たな仕組みが必要になる。
【0104】
図27(A)は上記の新たな仕組みを備えた本発明になる固体撮像素子の第11の実施の形態の上面図、同図(B)は同図(A)のZC−ZC’線に沿う縦断面図を示す。同図中、図1(A)、(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図1に示した第1の実施の形態との違いは以下の通りである。
【0105】
図27(A)、(B)において、フォトダイオード40の近傍で、nウェル33の表面からp型基板31の表面までの間にp+型領域101を形成する。そして、フォトダイオード40のp-領域(すなわち、埋め込みp-型領域39)とフォトダイオード40近傍のp+型領域101の間に、ゲート酸化膜34を挟んでゲート電極102を形成する。これにより、埋め込みp-型領域39をソース領域、p+型領域101をドレイン領域とし、ゲート電極102を備えたp型MOSFETであるフォトダイオード・リセットMOSFET(後述する図28の104に相当)が形成される。ゲート電極102には図27(B)に示すように、ゲート電極配線103が接続されている。
【0106】
次に、図27に示す実施の形態の画素構造と撮像素子全体の構造について、電気回路で表現した図28と共に説明する。同図中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図28に示す装置全体の構成は、図2の装置全体の構成図と比較して、画素の構造が図27と共に説明したフォトダイオード・リセットMOSFET104が増え、それを制御するフォトダイオード・リセット・トランジスタ・ゲート電極制御回路(以下、ゲート電極制御回路と略す)105があり、ゲート電極配線106(図27(B)のゲート電極配線103に相当)が縦方向に走っている点が追加されている。ゲート電極配線106の方向は全ての画素に共通に作用するので、横方向でも縦方向でもよいが、ここでは縦方向で表現している。
【0107】
次に、この装置全体の動作について、図29のタイミングチャートを併せ参照して説明する。同図中、図3と同一信号波形には同一符号を付し、その説明を省略する。まず、図29(1)に示す期間では、ゲート電極制御回路105の出力信号は図29(B)に示すようにハイレベルであり、その出力信号がゲート電極配線106を介してゲート電極に印加されるフォトダイオード・リセットMOSFET104がオフであり、このときは、フォトダイオード54で電荷を蓄積している状態である。
【0108】
その後、図29(A)に示すフレームスタート信号が出力されると、図2及び図3で説明したと同様の動作が行われる。ここで、ゲート電極制御回路105からフォトダイオードの電荷蓄積が行われている期間の任意のタイミングで図29(B)に示すように、ローレベルのワンショットパルスであるリセットパルスを出力すると、そのリセットパルスは、図28のゲート電極配線106を介してフォトダイオード・リセットMOSFET104のゲートに印加され、これをオンとする。
【0109】
フォトダイオード・リセットMOSFET104がオンになると、フォトダイオード54(図27(A)では40)の埋め込みp-型領域39の電荷は、オンであるフォトダイオード・リセットMOSFET104のドレイン(図27(A)のp+型領域101)を通して基板31に排出される。
【0110】
その後、フォトダイオード・リセットMOSFET104がゲート電極制御回路105からの信号によりオフとされると、フォトダイオード54(図27(A)では40)の電荷の蓄積が再開され、次に転送ゲートがLow2になるまでの、図29にフォトダイオード電荷蓄積−2で示す時間がショート・シャッタの露光時間になる。なお、その他の動作は、図3と同じなので、説明を省略する。
【0111】
この第11の実施の形態の固体撮像素子の駆動方法では、ゲート電極制御回路105から出力されるリセットパルスの時間を設定することにより、任意のショート・シャッタの露光時間を設定できるという利点があるが、新たにフォトダイオード・リセットMOSFET104を作り、配線を行う分だけ面積が必要という問題がある。このままではチップ面積の増大、あるいは開口率の減少という問題が発生する。従って、他の手段があれば更に良い。
【0112】
フォトダイオードにある電荷をリセットする方法として、CCDで通常行われている、基板に負の電圧をかけてフォトダイオードの電荷を基板に引き抜くという方法がある(電荷がホールの場合。電荷が電子の場合は、逆に正の電圧をかける)。この方法であれば、新たな配線は必要ないので、チップ面積の増大、あるいは開口率減少という問題を回避することができる。
【0113】
しかしながら、本発明の場合、この方法は使えない。なぜなら、基板にマイナスの電圧をかけると、フォトダイオードの電荷と同時に、リング状ゲートの下のソース近傍p型領域37に蓄積されている電荷も引き抜かれてしまうからである。従って、この方法は使えない。
【0114】
そこで、本発明では、リング状ゲートMOSFETのドレインに正の高電圧をかけてフォトダイオード・リセットを行う。このときリング状ゲート電極の電位をローレベルにしておく。そうすれば、ソース近傍p型領域のホールはリセットされることはない。その理由は、図11に示したようにリング状ゲートMOSFETでは、ソース近傍p型領域37とソース電極、リング状ゲート電極35との問での容量は大きいが、ドレイン電極との間では小さいので、ソース近傍p型領域はドレイン電圧の影響を弱くしか受けないからである。
【0115】
図30(A)は上記のリング状ゲートMOSFETのドレインに正の高電圧をかけてフォトダイオード・リセットを行う本発明になる固体撮像素子の第12の実施の形態の上面図、同図(B)は同図(A)のZD−ZD’線に沿う縦断面図を示す。同図中、図1(A)、(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図30(B)において、リング状ゲートMOSFETのn+型ドレイン領域38のドレイン電圧を上げた時に、基板31にホールを逃がすために、nウェル底の不純物濃度を調整するよう、n+型ドレイン領域38と共にフォトダイオード40を構成する埋め込みp-領域108の底から、基板31方向に向かって、n-型領域109とp+型領域110とがnウェル33内に形成されている。
【0116】
図31(A)、(B)は図30(B)のZE−ZE’線に沿う断面における基板深さ方向とポテンシャルの関係を示す。n+型ドレイン領域38のドレイン電圧がVddのときの上記の埋め込みp-領域108、n-型領域109及びp+型領域110における電位は図31(A)に示すようになり、フォトダイオード40で光電変換されて得られたホールは113で示すように、埋め込みp-領域108に蓄積される。
【0117】
ここで、n+型ドレイン領域38のドレイン電圧をVddよりも高いVrstとすると、図31(B)に示すように、フォトダイオード40のポテンシャル形状は基板31に向かって緩やかに下がる形状になり、上記のホール113はn-型領域109及びp+型領域110を介して基板31に排出される(フォトダイオード40がリセットされる)。
【0118】
ところが、上記のようにn+型ドレイン領域38に高電圧Vrstをかけてフォトダイオード40をリセットする場合、次のようなことが問題になる。第一の問題は、画素から信号読み出し時にドレイン電圧が変わると、リング状ゲートMOSFETのドレイン電流値が変わり、信号が変動してしまうことである。
【0119】
第二の問題は、リング状ゲートMOSFETのドレイン電圧を変えると、そのリング状ゲートMOSFETのドレインに繋がっているnウェル33の電位も上昇するが、転送ゲート電極41の電圧がnウェル電位に対してマイナスになり、転送ゲートMOSFETがオンして、フォトダイオード40の電荷がソース近傍p型領域37に転送され、ソース近傍p型領域37で保持している情報が変わってしまう可能性があることである。
【0120】
第三の問題は、リング状ゲー卜電極35とnウェル33との電位差が大きくなり、ゲート酸化膜34の膜厚によっては、ゲート酸化膜耐圧信頼性の問題が起こる可能性があることである。
【0121】
そこで、上記の3つの問題を本実施の形態では、以下のようにして解決する。第一の問題に対しては、フォトダイオード40のリセットは、画素信号の読み出し中には行わないことで解決する。あるラインの読み出しが終わったところで、一旦読み出し操作を中断し、フォトダイオード40のリセットを行い、それが終了後に読み出し操作を再開する。これにより、ドレイン電圧の信号への影響を避けることができる。
【0122】
第二の問題に対しては、リング状ゲートMOSFETのドレイン電圧を上げる前に、転送ゲート電極41の電位を予め上げておくことで解決する。これにより、転送ゲートMOSFETがオンするのを避けることができる。
【0123】
第三の問題に対しては、空乏化などの現象を使って、ゲート酸化膜に電界が集中しないようにデバイス構造を工夫することで解決する。
【0124】
次に、上記の解決手段を備えた図30の構造の固体撮像素子を搭載した装置全体の構成を図32に示す。同図中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。画素はm行n列に画素敷き詰め領域51に配置されている。図32ではこれらm行n列の画素のうち、u行v列の一画素115を代表として等価回路で表現している。この画素115は、リング状ゲートMOSFET116と、フォトダイオード117と、転送ゲートMOSFET118とからなり、リング状ゲートMOSFET116のドレインがフォトダイオード117のn側端子とドレイン電極配線126(図30の42に相当)に接続され、転送ゲートMOSFET118のソースがフォトダイオード117のp側端子に接続され、ドレインがリング状ゲートMOSFET116のバックゲートに接続されている。
【0125】
なお、上記のリング状ゲートMOSFET116は、図30(B)ではリング状ゲート電極35直下のソース近傍p型領域37をゲート領域とし、n+型のソース領域36及びn+型のドレイン領域38を有するnチャネルMOSFETである。また、上記の転送ゲートMOSFET118は、図30(B)では転送ゲート電極41直下のnウェル33をゲート領域、フォトダイオード40の埋め込みのp-型領域108をソース領域、ソース近傍p型領域37をドレイン領域とするpチャネルMOSFETである。また、図32のフォトダイオード117は図30(B)ではフォトダイオード40に相当する。
【0126】
また、垂直シフトレジスタ119は、フォトダイオード・リセット制御回路120とフレームスタート信号発生回路57の各出力信号を入力として受ける。また、リング状ゲート電位制御回路121はリング状ゲート電極配線124(図30(B)の43に相当)にリング状ゲート電位を出力し、転送ゲート電位制御回路122は、転送ゲート電極配線125(図30(B)の45に相当)に転送ゲート電位を出力し、ドレイン電位制御回路123は、ドレイン電極配線126(図30(B)の42に相当)にドレイン電位を出力する。更に、ソース電位制御回路65はソース電極配線127(図30(B)の44に相当)に接続されている。
【0127】
なお、図32ではu行v列の一画素115を代表として示しているのに対し、図2ではs行t列の画素52を示しているが、これらは同様であるので、この画素115が接続される信号読み出し回路66などは図2と同一の符号を付してある。
【0128】
次に、この実施の形態の動作について図33のタイミングチャートと共に説明する。図32において、まず、この固体撮像素子を搭載しているデジタル・スチル・カメラやムービーなどから、ショート・シャッタの指令が出ると、専用のフォトダイオード・リセット制御回路120が電荷をソース近傍p型領域37に転送するタイミングから逆算し、どのラインの読み出しの後に、フォトダイオード117の電荷のリセットを行うか決定する。
このフォトダイオード・リセット制御回路120は、撮像素子内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。ここでは、撮像素子内部に演算を行う専用のフォトダイオード・リセット制御回路120があるものとする。
【0129】
フォトダイオード・リセット制御回路120は、演算結果によって決まる、あるライン(図33の例ではu行目)の読み出しが終了すると、垂直シフトレジスタ119の動作を一時的に止め、図33(F)に示すように、次のライン(図33の例ではu+1行目)の読み出しが行われないようにする。
【0130】
次に、ソース電位制御回路65から出力されるソース電位が図33(E)に示すようにVsrstとされ、また、リング状ゲート電位制御回路121から出力されるリング状ゲート電極の電位が図33(D)に示すようにVgrstとされる。このVsrst、Vgrstは、ソース近傍p型領域37のホールをリセットせず、また余分な電流値が流れないような値であればよい。つまり、Vsrst<Highs、Vgrst<High1とする。通常はVsrst=S1、Vgrst=Lowにすればよい。これは全画素について一括して行われる。
【0131】
次に、フォトダイオード・リセット制御回路120は、転送ゲート電位制御回路122を制御して、転送ゲート電極配線125に電位Vtghを出力させる。VtghはVtgh>Vddであり、ドレイン電圧をVrstにしたときに、転送ゲートMOSFET118がオンしないような電圧である。通常は、図33(C)に示すように、Vtgh=Vrstにすればよい。
【0132】
このように、予め転送ゲート電極45の電位をVtgh=Vrstに上げておくため、続いて図33(4)に示す期間において、フォトダイオード・リセット制御回路120は、ドレイン電位制御回路123を制御して、ドレイン電極配線126へのドレイン電圧を図33(B)に示すようにVrstに上げた時に、転送ゲートMOSFET118がオンすることはなく、よって、ドレイン電圧を上げた時に転送ゲートMOSFET118がオンして、ホールがソース近傍p型領域37に転送されないようにできる。
【0133】
一方、図33(4)に示す期間においては、上記のドレイン電極配線126へのドレイン電圧Vrstの出力により、図30(B)のn+型ドレイン領域38のドレイン電圧Vddよりも高くなるので、図31(B)に示したように、フォトダイオードのポテンシャル形状は基板31に向かって緩やかに下がる形状になり、埋め込みp-型領域108のホール113はn-型領域109及びp+型領域110を介して基板31に排出される(フォトダイオード40がリセットされる)。
【0134】
その後、フォトダイオード・リセット制御回路120は、ドレイン電位制御回路123及び転送ゲート電位制御回路122を順次に制御して、図33(B)、(C)に示すように、リング状ゲートMOSFET116のドレイン電極の電位、転送ゲートMOSFET118の転送ゲート電極の電位の順番で電位をVddに戻す。その後、図33(F)〜(H)に示すように中断していた画素信号読み出しをu+1行目から続行する。これが動画の場合は、毎フレーム毎に行う。なお、図33(I)〜(Q)は図3(H)〜(P)と同様の信号であり、その説明は省略する。
【0135】
なお、上記により動画撮影の場合に、ショート・シャッタが実現できるが、上記に加えて前記第三の問題に対する解決策として、図34に示すように、ゲート酸化膜に電界が集中しないようにデバイス構造を工夫することがより好ましい。図34(A)は本発明の第13の実施の形態の上面図、同図(B)は同図(A)のZF−ZF’線に沿う縦断面図を示す。図34(A)、(B)中、図30(A)、(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0136】
図34(A)、(B)に示すように、リング状ゲート電極35の周囲のnウェル33内に、n+型非注入領域114を設け、リング状ゲート電極35の外周端とn+型ドレイン領域38のゲート側端部との間の距離をXdだけ離す。これにより、リング状ゲー卜電極35とnウェル33との電位差が大きくなることに起因して、ゲート酸化膜34の膜厚の耐圧以上に電界がゲート酸化膜34に加わることを防止することができる。なお、図34の実施の形態の構造は、電界のゲート酸化膜34への集中が問題になったときに適用するもので、問題にならないときには、図30に示した第12の実施の形態の構造でよい。
【0137】
なお、リング状ゲート電極35の外周端とn+型ドレイン領域38のゲート側端部との間の距離をXdだけ離す方法は、図1、図12〜図15、図20〜図22、図27の全ての構造に適用可能である。
【0138】
次に、本発明の固体撮像素子におけるピンニングの実現方法について説明する。ピンニングというのはゲート電極の電位をしきい値電圧以上に設定し、シリコン基板表面のゲート酸化膜界面に反転層を形成することをいう。雑音となる暗電流はゲート酸化膜界面に多く発生するが、このようにすると、ゲート酸化膜界面の反転層キャリアのシールド効果により、ゲート酸化膜界面で発生する電荷がシリコン基板へ行くことを抑制でき、雑音を抑制できる。また、反転層キャリアがゲート酸化膜界面の界面準位を埋めるために、反転層のない空乏化した状態にしても、ある一定の時間はゲート酸化膜界面から雑音となる電荷が発生することを抑制できる。
【0139】
リング状ゲート電極を持つ固体撮像素子で、ピンニングを行う方法の従来例としては、特開平10−74928号公報記載の方法がある。この従来方法では、1ライン読み出す毎に、あるいは数ライン読み出す毎にゲート電極下に反転層を形成し、ピンニング状態とし、雑音を抑制する。
【0140】
本発明の前記各実施の形態の固体撮像素子においても、リング状ゲート電極のゲート酸化膜界面で暗電流が発生すると、直ちにポテンシャルの最も低い場所であるソース近傍p型領域37にキャリアであるホールが達し、それは雑音となる。その雑音が許容値以上であれば、ピンニングを行うことは本発明においても重要である。
【0141】
ピンニングを行うためには、ゲート電極下が反転状態になる電圧条件を与えてやる必要がある。しかしながら、反転状態が発生した状態で、ソース・ドレイン間に電圧差があると、電流が流れるためにソース・ドレイン電位差を0にする必要がある。
【0142】
それを実現する一つの手段はドレイン電圧をソース電圧まで下げる方法である。1ライン読み出し操作が終わる毎に、ドレイン電圧をソース電圧まで下げ、ゲート電極をしきい値電圧以上にする。この方法は毎水平ラインの読み出し毎にできるので、確実に暗電流を抑制することができるが、毎ライン毎にドレイン電圧を全画素で上下させると、消費電力が多くなってしまう。
【0143】
そのため、1水平ライン毎ではなく、2水平ライン毎、5水平ライン毎、10水平ライン毎などの決められた水平読み出しライン毎に、ピンニングを行うことが可能である。この間隔はゲート酸化膜界面で発生するホールの発生頻度、つまり、製造プロセス依存性が大きいので、一概に何ラインおきと決めることはできないが、実験等により確認することが可能である。
【0144】
この方法を実現したのが図35の本発明の第14の実施の形態のタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、2ライン毎にピンニングを行うものとして描いてあるが、代表的にu−1行目の読み出しが終了し、u行目の読み出しが始まるまでの時間と、u+1行目の読み出しが終了しu+2行目の読み出しが始まるまでの時間に行う2回のピンニング(4)、(5)のみが描いてある。つまり図示はされていないが、2行おきに同様のピンニング動作が行われている。なお、図35(F)〜(Q)は、例えば図2(E)〜(P)の波形と同様であり、その説明を省略する。
【0145】
図35のタイミングチャートは本発明のどの実施の形態の構造にも適用可能である。いま、図35(A)に示すフレームスタート信号入力後、1フレームの読み出しを開始し、そのうちのu−1行目の読み出し操作が終了すると、読み出し操作を一時中断し、同図(B)の(4)で示す期間、全画素のリング状ゲートMOSFETのドレイン電極電位を、同図(E)に示すリング状ゲートMOSFETのソース電極電位と同様のS1にまで下げ、かつ、全画素のリング状ゲート電極電位を、同図(D)に示すように、しきい値電圧以上の電位Vth+まで上げる。
【0146】
これにより、全画素においてリング状ゲート電極(例えば、図1の35)下のゲート酸化膜(例えば、図1の34)の界面が反転状態になり、その反転層に電子がソース領域(例えば、図1のn+型ソース領域36)から、あるいはドレイン領域(例えば、図1のn+型ドレイン領域38)から注入される。
【0147】
図35(B)に(4)で示す一定時間その状態を続けた後(ピンニング)、再び全画素のリング状ゲートMOSFETのドレイン電極電位を同図(B)に示すようにVddに戻し、また全画素のリング状ゲート電極を同図(D)に示すようにLowまで戻す。その後、u行、u+1行の読み出し操作を行い、再び同図(5)で示す期間上記のピンニング動作を行う。このような動作を2行読み出し毎に行う。
【0148】
しかし、この方法は1フレームを読み出す間に何度もリング状ゲートMOSFETのドレイン電圧を上げ下げしなければならず、消費電力の点から問題が多い。そこで、逆にリング状ゲートMOSFETのソース電極電位をドレイン電極電位まで上げて、リング状ゲートMOSFETのゲート電極電位をソース、ドレイン電極電位よりしきい値電圧以上上げることで反転層を形成し、ピンニングを行うという方法も考えられる。しかし、この方法は本発明の固体撮像素子の場合、全ての画素の読み出しが終わるまでは使えない。なぜならば、この電圧設定では画素のソース近傍p型領域がリセットされてしまう。
【0149】
そこで、本発明の第15の実施の形態では1Hライン毎にピンニングを行うのではなく、全てのラインを読み終わった後、すなわち1フレームの情報を読み出した後で、ピンニングを行うことにする。この方法では1フレームに1回しかピンニングできないので、雑音抑制効果としては、数ライン毎にピンニングを行うよりも効果が小さいが、一定の効果は得られる。
【0150】
図36はこの実施の形態のタイミングチャートを示す。なお、図36(A)、(F)〜(Q)は、図35(A)、(F)〜(Q)の波形と同様であり、その説明を省略する。また、この実施の形態の固体撮像素子の構造は前記の実施の形態のいずれにも適用できる。
第15の実施の形態では、1フレームの全てのラインの読み出しが終了するまでは、第1の実施の形態等と同じであるが、全てのラインの読み出しが終了した後、図36(E)に示すように全画素でリング状ゲートMOSFETのソース電極の電位をVddに上げ、同図(D)に示すようにリング状ゲート電極の電位をVdd+にする。
【0151】
ここで、Vdd+>Vdd+Vthである。Vthはリング状ゲートMOSFETのしきい値電圧である。Vdd+はしきい値電圧以上なので、全画素においてリング状ゲート電極(例えば、図1の35)下のゲート酸化膜(例えば、図1の34)の界面が反転状態になり、その反転層に電子がソース領域(例えば、図1のn+型ソース領域36)から、あるいはドレイン領域(例えば、図1のn+型ドレイン領域38)から注入され、ピンニングが完了する。
【0152】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば半導体の導電型であるp型、n型を各実施の形態のそれとは逆に作り、電荷として電子を用い、ポテンシャルの方向を逆にとれば、各実施の形態と全く同じ効果が得られることは勿論である。
【符号の説明】
【0153】
31 p+型基板
32 p-型エピタキシャル層
33 nウェル
34 ゲート酸化膜
35 リング状ゲート電極
36 n+型ソース領域
37、83 ソース近傍p型領域
38 n+型ドレイン領域
39、108 埋め込みp-型領域
40、54、117 フォトダイオード
41 転送ゲート電極
42、56、126 ドレイン電極配線
43、59、124 リング状ゲート電極配線
44、64、127 ソース電極配線(出力線)
45、61、125 転送ゲート電極配線
46 遮光膜
47 開口部
51 画素敷き詰め領域
52、115 画素
53、116 リング状ゲートMOSFET
55、118 転送ゲートMOSFET
57 フレームスタート信号発生回路
58、119 垂直シフトレジスタ
60、121 リング状ゲート電位制御回路
62、122 転送ゲート電位制御回路
63、123 ドレイン電位制御回路
65 ソース電位制御回路
66 信号読み出し回路
67 電流源(負荷)
68 差動アンプ
69 水平シフトレジスタ
82、84、89、101、110 p+型領域
90 表面n+
91 LDDサイドスペーサ
94、95、96 p-型しきい値調整層
102 ゲート電極
103 ゲート電極配線
104 フォトダイオード・リセットMOSFET
105 フォトダイオード・リセット・トランジスタ・ゲート電極制御回路
109 n-型領域
114 n+型非注入領域
120 フォトダイオード・リセット制御回路
SW1、SW2、sc1、sc2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を電荷に変換して蓄積するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに蓄積された電荷を転送する転送ゲートトランジスタと、
前記転送ゲートトランジスタにより転送された電荷による電位変化をしきい値の変化として信号を出力する信号出力用トランジスタと、
を含む単位画素が規則的に複数配列されており、
前記フォトダイオードは、
第1導電型の基板上に設けられた第2導電型のウェルに形成され、前記入射光を電荷に変換して蓄積する第1導電型の光電変換領域を備え、
前記信号出力用トランジスタは、
前記ウェル上に絶縁膜を介して形成されたリング状ゲート電極と、
前記ウェルの、前記リング状ゲート電極の中央開口部に対応する領域に形成された第2導電型のソース領域と、
前記ソース領域の周囲に前記リング状ゲート電極の外周に達しないように前記ウェルに接触して形成され、前記光電変換領域から転送された電荷を蓄積する第1導電型のソース近傍領域と、
を備え、
前記転送ゲートトランジスタは、前記リング状ゲート電極と前記光電変換領域との間の前記ウェル上に前記絶縁膜を介して形成され、前記光電変換領域に蓄積された電荷を前記ソース近傍領域に転送するための転送ゲート電極を備え、
前記信号出力用トランジスタは、前記ウェルの表面の、前記リング状ゲート電極と前記転送ゲート電極に対応する領域とは異なる領域の少なくとも一部に設けられ、前記ウェルよりも高濃度の不純物濃度を有する第2導電型のドレイン領域を、さらに備え、
前記ソース近傍領域内の前記ソース領域の近傍位置に、前記ソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の高濃度領域が形成されていることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
第1導電型の基板上に、リング状ゲート電極を有する信号出力用トランジスタとフォトダイオードとを含む単位画素が規則的に複数配列された固体撮像素子の製造方法において、
前記基板の表面に設けられた第2導電型のウェルの所定位置に第1導電型のソース近傍領域を形成する第1のステップと、
前記ウェル上に、前記リング状ゲート電極を、その中心開口部が前記ソース近傍領域の上方に位置するように、絶縁膜を介して形成する第2のステップと、
前記リング状ゲート電極をマスクとして、前記ソース近傍領域内に第2導電型の不純物を注入し、前記ソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の第1の高濃度領域を形成する第3のステップと、
前記リング状ゲート電極をマスクとして、前記第1の高濃度領域内に第2導電型の不純物を注入して、前記第1の高濃度領域の表面に第2導電型の表面層を形成する第4のステップと、
前記第4のステップに続いて、前記リング状ゲート電極の中央開口部の内壁にサイドスペーサを形成する第5のステップと、
前記リング状ゲート電極及び前記サイドスペーサをマスクとして、前記表面層及び前記第1の高濃度領域に第2導電型の不純物を注入して、前記ソース近傍領域内に、第2導電型のソース領域を形成すると共に、前記ソース領域を取り囲むように前記ソース近傍領域よりも高濃度の不純物濃度を有する第1導電型の第2の高濃度領域を形成する第6のステップと
を含むことを特徴とする固体撮像素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−249831(P2011−249831A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160534(P2011−160534)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2005−11132(P2005−11132)の分割
【原出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】