説明

固体燃料バーナ及びそれを備えた燃焼装置

【課題】
固体燃料の搬送気体に酸素濃度の低い気体を利用するものであっても、搬送気体や燃料粒子が流れる燃料ノズル出口の流速分布と燃料粒子の濃度分布を平滑化し、燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成すること。
【解決手段】
本発明では、上記課題を解決するために、固体燃料とその搬送気体の混合流体を噴出する燃料ノズルと、該燃料ノズルの外側に配置され酸素含有気体を噴出する少なくとも1つの燃焼用気体噴出ノズルと、前記燃料ノズルの周方向の速度成分を持つ酸素含有気体を噴出させ、該燃料ノズル内に突出させて設けられた少なくとも2つの酸素含有気体追加ノズルとを備え、前記燃料ノズル内の酸素含有気体追加ノズルの下流側で、かつ、該酸素含有気体追加ノズルの周方向間に、前記燃料ノズルを流れる混合流体の流れに対して抵抗体となる障害物を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体燃料を気流搬送して燃焼する固体燃料バーナ及びそれを備えた燃焼装置に係り、特に、水分及び揮発分の多い燃料を粉砕して気流搬送し、浮遊燃焼させるものに好適な固体燃料バーナ及びそれを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材やモミ殼、ヤシ殼等の植物由来のバイオマス、ピートや褐炭、亜炭などの石炭化度の低い石炭などの燃料は、揮発分が多く、また、含有する水分が多いので、空気雰囲気では、貯蔵、粉砕、搬送過程において自然発火しやすく、瀝青炭などと比べて扱いにくいことが知られている。
【0003】
これらの燃料を粉砕して燃焼する場合は、自然発火を防止するために、燃料の搬送気体として、酸素濃度を低下させた燃焼排ガスと酸素含有気体との混合気体が使われることがある。特に燃焼排ガスは、燃料周囲の酸素濃度を低下させ、燃料の酸化反応(燃焼)を抑制し、自然発火を防ぐものである。また、燃焼排ガスは、その保有熱により、燃料中の水分を乾燥させる機能も持っている。
【0004】
しかし、低酸素濃度の搬送気体で搬送された燃料粒子は、固体燃料バーナから噴出する際に燃焼(酸化)反応が、燃料粒子の周囲の酸素濃度が低いことで制限される。このため、空気で搬送した場合と比べて燃焼速度が低く、固体燃料バーナの出口直後から安定に火炎を形成することが、空気で搬送させる場合よりも難しくなる。
【0005】
上述した自然発火を防止しつつ火炎を安定に形成させるものとして、固体燃料バーナの燃料ノズル内に、酸素含有気体を噴出する追加空気ノズルを突出させて設けることが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に記載の固体燃料バーナは、追加空気ノズルの出口を燃料ノズルの周方向に有し、この出口から周方向に酸素含有気体を噴出することで、燃料ノズルの外周側隔壁近く(以下、燃料ノズル外周部という)に酸素濃度の高い部分を形成するものである。この特許文献1に記載の固体燃料バーナによれば、燃料ノズル外周部では、燃料粒子は周囲の酸素濃度が高まるため、燃焼(酸化)反応が早まり、燃料ノズル出口近傍から火炎を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−140480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の固体燃料バーナでは、酸素含有気体を噴出する追加空気ノズル(以下、追加ノズルという)は、燃料ノズル内に突出して設けられているため、追加ノズルの設置部分においては、燃料ノズル流路の断面積が縮小し、その縮小部分(以下、縮流部という)では、燃料ノズルを流れる混合気体の流速が上昇する。このため、燃料ノズル内で一旦流速が上昇するので、追加ノズルより下流の部分には、周方向に速度分布の差が生じる。即ち、追加ノズルの下流は、流路断面積と流量から求めた平均流速に比べて流速が低く、追加ノズルに挟まれた流路(縮流部)の下流は、平均流速よりも高くなる。
【0009】
更に、混合気体で搬送される燃料粒子は、混合気体より慣性力が高い。縮流部にて燃料粒子の流速が上がると、その下流においては、燃料粒子の流速の低下が混合気体より遅れる。このため、燃料ノズルの出口では、燃料粒子の噴出速度は混合気体よりも高い。また、縮流部に燃料粒子が集まり、追加ノズルの下流は、燃料粒子の濃度が低くなる。
【0010】
その結果、燃料ノズルの出口においては、燃料粒子や混合流体の流速と、燃料粒子の濃度が周方向に不均一となる。流速の高い部分は、燃料ノズルの出口外周の循環流に滞留する高温ガスとの接触時間が短くなり、燃料粒子の反応が進むまえに循環流との接触が終わるため、火炎が燃料ノズルから離れて形成し易くなる。即ち、固体燃料バーナの燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成することが難しくなる。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、固体燃料の搬送気体に酸素濃度の低い気体を利用するものであっても、搬送気体や燃料粒子が流れる燃料ノズル出口の流速分布と燃料粒子の濃度分布を平滑化し、燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成することのできる固体燃料バーナ及びそれを備えた燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の固体燃料バーナは、上記目的を達成するために、固体燃料とその搬送気体の混合流体を噴出する燃料ノズルと、該燃料ノズルの外側に配置され酸素含有気体を噴出する少なくとも1つの燃焼用気体噴出ノズルと、前記燃料ノズルの周方向の速度成分を持つ酸素含有気体を噴出させ、該燃料ノズル内に突出させて設けられた少なくとも2つの酸素含有気体追加ノズルとを備え、前記酸素含有気体追加ノズルの少なくとも1つには、前記燃料ノズルの周方向にノズル出口を有している固体燃料バーナにおいて、前記燃料ノズル内の前記酸素含有気体追加ノズルの下流側で、かつ、該酸素含有気体追加ノズルの周方向間に、前記燃料ノズルを流れる混合流体の流れに対して抵抗体となる障害物を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の燃焼装置は、上記目的を達成するために、上記構成の固体燃料バーナを複数本備えた火炉と、燃料ホッパと、給炭機と、該給炭機の下流側の燃焼排ガス配管内で燃焼装置の上部から抜き出した燃焼排ガスと混合した燃料を導入する粉砕機と、該粉砕機で粉砕された燃料を前記固体燃料バーナに供給する燃料配管と、前記固体燃料バーナに空気を供給するブロアとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固体燃料の搬送気体に酸素濃度の低い気体を利用するものであっても、搬送気体や燃料粒子が流れる燃料ノズル出口の流速分布と燃料粒子の濃度分布を平滑化し、燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による固体燃料バーナの実施例1の構造であり、固体燃料バーナの火炎を保炎器の下流側の循環流近くから形成させた状態を示す断面図である。
【図2】実施例1の固体燃料バーナを火炉側から見た概略構造を示す図である。
【図3】実施例1の固体燃料バーナの酸素含有気体ノズルと障害物の構造と燃料ノズル内での燃料噴流すなわち燃料およびその搬送気体の流れとを説明する模式図である。
【図4】本発明による固体燃料バーナの実施例1の変形例を説明する模式図である。
【図5】本発明による固体燃料バーナの実施例1の別の変形例を説明する模式図である。
【図6】本発明による固体燃料バーナの実施例2の構造であり、固体燃料バーナの火炎を保炎器の下流側の循環流近くから形成させた状態を示す断面図である。
【図7】本発明による固体燃料バーナの実施例3の構造であり、固体燃料バーナの火炎を保炎器の下流側の循環流近くから形成させた状態を示す断面図である。
【図8】実施例3の固体燃料バーナを火炉側から見た概略構造を示す図である。
【図9】本発明による固体燃料バーナを用いた燃焼装置の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の固体燃料バーナについて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1及び図2は、本発明の固体燃料バーナの実施例1を示すものである。該図に示す如く、固体燃料バーナは、中心部にオイルガン5を備え、その外側に燃料粒子とその搬送気体(以下、混合流体という)11が流れる燃料ノズル1を備えている。燃料ノズル1の外周側隔壁4の外側には、燃焼用気体12及び13を火炉10内に噴出する燃焼用気体噴出ノズルである2次ノズル2及び3次ノズル3を有し、3次ノズル3の外周は、火炉10側に伝熱管7を有する火炉壁6に接続されている。
【0018】
また、2次ノズル2及び3次ノズル3には、その上流側に、流量を調整するダンパ8、9及び燃料ノズル1の流れに対し周方向の速度成分を誘起する旋回器14が備えられている。また、2次ノズル2及び3次ノズル3は、その上流側がウインドボックス15に接続されている。上述したオイルガン5は、固体燃料バーナの起動時等に、火炉10内の温度を高め、燃料粒子への着火を促進させるのに使用される。
【0019】
燃料ノズル1の外周側隔壁4の先端部、即ち火炉10の出口側は、燃料ノズル1から噴出する混合流体の流れ11と2次ノズル2から噴出する燃焼用気体の流れ12の間となり、圧力が低下する。この部分は、低い圧力となることで、混合流体の流れ11や燃焼用気体の流れ12とは逆方向の流れが誘起される。この逆方向の流れを循環流16と呼ぶ。
【0020】
循環流16内には、下流から燃料の燃焼で生じた高温ガスが流れ込み、滞留する。この高温ガスと混合流体の流れ11中の燃料粒子とが、固体燃料バーナの出口で混合し、更に火炉10内からの輻射熱により、燃料粒子の温度が上昇して着火する。
【0021】
2次ノズル2と3次ノズル3は、隔壁17で隔てられ、隔壁17の先端部分は、燃料ノズル1を流れる混合流体の流れ11に対して、3次ノズル3の出口から噴出する燃焼用気体の流れ13が角度を持つように噴出させるガイド18が形成されている。
【0022】
このように、燃焼用気体を噴出するノズル(例えば、2次ノズル2や3次ノズル3)出口に、燃焼用気体の噴出方向をバーナ中心軸から離れる方向に誘導するガイド18を設けると、循環流16を形成するのに役立つ。
【0023】
本実施例の固体燃料バーナでは、燃料搬送気体に空気よりも酸素濃度を低下させた気体を用いることが多い。このような搬送気体としては、例えば、燃焼排ガスと空気との混合気体が挙げられる。酸素濃度を空気より低くすることで、燃料周囲の酸素濃度を低下させ、燃料の酸化反応(燃焼)を抑制し、燃料ノズル1や燃料ノズル1に接続する上流側の配管、或いは粉砕機内部での自然発火を防ぐことができる。また、高温の燃焼排ガスを利用することで、その保有熱により、燃料中の水分を乾燥させることも可能である。
【0024】
このような低酸素濃度での燃料搬送が適した燃料としては、木材やモミ殼、ヤシ殼等の植物由来のバイオマス、ピートや褐炭、亜炭などの石炭化度の低い石炭などが挙げられる。
【0025】
このように、低酸素濃度の燃料搬送気体で搬送された燃料粒子の着火を促進するため、燃料ノズル1内に酸素含有気体を噴出する追加ノズル20を、燃料ノズル1内に突出させて設置されている。この追加ノズル20は、滑らかに燃料ノズル1内の流路断面積が縮小、拡大形成されるように、段階的に縮小、拡大変化する形状である。酸素含有気体の噴出孔21は、追加ノズル20の側面(燃料ノズル1の周方向)に、その一部が設けられている。
【0026】
図1に示す本実施例の固体燃料バーナでは、追加ノズル20は、流量調整用のダンパ22を介してウインドボックス15に接続されており、酸素含有気体として燃焼用気体を噴出孔21から噴出させる。尚、図1の構成にとらわれず、別途、固体燃料バーナの外側から酸素含有気体を導入することも可能である。
【0027】
追加ノズル20から燃料ノズル1を流れる混合流体の流れ11に対して、周方向に酸素含有気体を噴出させることで、燃料ノズル1の外周側隔壁4近く(以下、燃料ノズル外周部という)に、酸素濃度の高い部分を形成する。このため、燃料ノズル外周部では、燃料粒子は周囲の酸素濃度が高まるため、燃焼(酸化)反応が早まり、燃料ノズル1の出口近傍から火炎24を形成することができる。
【0028】
そして、実施例1では、燃料ノズル1内の追加ノズル20の下流側で、かつ、追加ノズル20の周方向間に、燃料ノズル1を流れる混合流体の流れに対して抵抗体となる障害物30を設けている。以下、この障害物30について、図1乃至図3を用いて説明する。尚、図3では、燃料ノズル1の外周側隔壁4を省いて記載している。
【0029】
該図に示す如く、障害物30は、燃料ノズル1の外周側隔壁4の近くに設置されている追加ノズル20の下流側で、追加ノズル20の周方向間に設置され、図3に示すように、周方向に隣接する追加ノズル20により、燃料ノズル1の流路断面積が狭まった縮流部31の下流側に位置している。
【0030】
燃料ノズル1の流路断面積が狭まった縮流部31にて、燃料ノズル1を流れる混合流体の流れ11の流速は加速される。縮流部31の下流側では、滑らかに流路断面積が増加し、追加ノズル20の噴出孔21から噴出する酸素含有気体の流れ23が、混合流体の流れ11と混合する。縮流部31で加速された混合流体の流れ11は、流路断面積が拡がることでその流速が低下していくが、縮流部31からの距離が短いと流速分布は周方向に不均一となる。即ち、縮流部31の下流は流速が高く、追加ノズル20の下流は流速が低い。特に、混合流体の流れ11中の固体燃料粒子は、ガス成分より比重が重く、慣性力が強いため、その流速の不均一は大きい。また、縮流部31の下流は、固体燃料粒子の濃度(以下、燃料濃度という)が高く、追加ノズル20の下流は、固体燃料粒子の濃度が低くなりやすい。
【0031】
燃料濃度分布や流速分布が不均一となると、燃料濃度の低い部分は燃料粒子間の火炎伝播が遅れる。また、流速の高い部分は、燃料ノズル出口外周の循環流に滞留する高温ガスとの接触時間が短くなる。このため、燃料粒子の反応が進み難く、火炎24が燃料ノズル1から離れて形成し易くなる。即ち、固体燃料バーナの燃料ノズル出口の直後から安定に火炎24を形成することが難しくなる。
【0032】
一方、障害物30を燃料ノズル1の流路断面積が狭まった縮流部31の下流側に設けると、障害物30により流動抵抗が増えるため、混合流体の流れ11は周方向に拡がりやすくなる。このため、燃料ノズル1の出口外周部分は、燃料濃度分布や流速分布の周方向の不均一が小さくなる。即ち、燃料濃度の低い部分や流速の高い部分が少なくなるため、燃料粒子の反応が進み、火炎24が燃料ノズル1の直後から安定に形成することができる。
【0033】
このような実施例1の構成とすることにより、混合流体の流れ11は、追加ノズル20により形成された燃料ノズル1の縮流部31を通過後、その一部が障害物30により周方向に分散するため、燃料粒子や混合流体が周方向に分散するので、燃料ノズル出口において、周方向の流速差や燃料粒子の濃度差が小さくなり、平滑化される。このため、流速の高い部分が少なくなり、燃料ノズル出口外周の循環流に滞留する高温ガスとの接触時間が長くなり循環流との接触時間が長いので、燃料粒子の反応が進み、火炎24が燃料ノズル1に近い位置で形成される。即ち、固体燃料バーナの燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成し、安定燃焼し易くなる。
【0034】
従って、固体燃料の搬送気体に酸素濃度の低い気体を利用するものであっても、搬送気体や燃料粒子が流れる燃料ノズル出口の流速分布と燃料粒子の濃度分布を平滑化し、燃料ノズル出口の直後から安定に火炎を形成することができる。
【0035】
尚、障害物30の形状は、図3に示すような円柱型の他、図4に示すように、下流側から段階的に拡大して途中から段階的に縮小することで、滑らかに流路断面積が変わるひし形の形状、又は図5に示すように、上流側が円柱型で下流側に行くに従い段階的に縮小することで、下流側が滑らかに流路断面積が変わる形状としても良い。
【0036】
図4又は図5のように、下流側が滑らかに流路断面積が変わることで、障害物30の下流に混合流体の流れ11の流速の低い部分が出来にくくなる。このため、燃料ノズル1の出口での流速分布が均一になる。また、燃料ノズル1内の流速の低い部分に、燃料粒子が堆積し難くなる。
【0037】
更に、図3や図5のように上流側が円柱形状とすることで、燃料粒子が衝突した際、周方向に分散し易くなる。また、図4のように上流側が平面となると、燃料粒子の流れに対して衝突角度が一定の範囲となるため、摩耗を抑制し易くなる。尚、障害物30の上流側は燃料粒子が衝突するので、セラミックのような耐摩耗材を用いることが望ましい。また、障害物30の下流側は火炉10内からのふく射熱を受け易いので、ステンレス等の耐熱金属から成る耐熱材を用いることが望ましい。
【実施例2】
【0038】
図6は、本発明の固体燃料バーナの実施例2を示すものである。図6に示す実施例2と図1に示す実施例1との相違点は、以下の3点であり、他の構成は、実施例1と略同一である。
【0039】
1)燃料ノズル1の内部に、追加ノズル20の上流側で燃料ノズル1の流路断面積を外側から縮小し拡大する形状のベンチュリ40と、燃料ノズル1の流路断面積を内側から縮小し拡大する濃縮器41を有すること。
【0040】
2)燃料ノズル1の外周側隔壁4の下流側先端に、燃料ノズル1から噴出する混合流体の流れ11と2次ノズル2から噴出する燃焼用気体の流れ12に対し障害となる保炎器19を有すること。
【0041】
3)燃料ノズル1の内部で追加ノズル20が位置する部分に、燃料ノズル1の流路を内周側と外周側にそれぞれ分割する分配器42を設け、この分配器で分割された前記燃料ノズルの流路に前記追加ノズルと前記障害物が位置すること。
【0042】
相違点1は、燃料ノズル1の内周側隔壁4の近くに、燃料粒子を濃縮する構成についてである。
【0043】
ベンチュリ40は、燃料ノズル1の流路断面積を外周側から滑らかに縮小し拡大する形状を持ち、濃縮器41は、燃料ノズル1の流路断面積を内側から滑らかに縮小し拡大する形状を持っている。混合流体の流れ11内の燃料粒子は、搬送ガスよりも慣性力が高い。このため、流路断面積が拡大する部分において、搬送ガスが速やかに拡がるのに対し、燃料粒子はそのまま留まる傾向を示す。
【0044】
燃料粒子は、ベンチュリ40の下流側で中央部分、更に濃縮器41の下流側では、燃料ノズル1の外周側の外周側隔壁4の近傍に留まり、燃料粒子が外周側に濃縮されるため、燃料ノズル1の出口部分において、燃料ノズル1の出口の循環流16近くの燃料粒子の濃度が高まる。高い濃度の燃料粒子では火炎伝播が進み、固体燃料バーナの燃料ノズル1の出口の直後から安定に火炎24を形成し易くなる。
【0045】
相違点2は、燃料ノズル1の外周側隔壁4の下流に形成される循環流16を拡大する構成についてである。
【0046】
燃料ノズル1の外周側隔壁4の先端部に、側を流れる混合流体の流れ11や燃焼用気体の流れ12の向きを変える保炎器19を用いると、外周側隔壁4の下流部は、側を流れる2つの流れ、即ち、混合流体の流れ11と燃焼用気体の流れ12が離れるため、圧力が低下する。このため循環流16の領域が拡大する。循環流16内は、高温のガスが滞留する。燃料粒子の反応が進み高温となった下流側のガスが、循環流16を流れて固体燃料バーナの近くに戻るので、循環流16内を滞留するガスの温度が上昇する。この高温のガスが燃料ノズル1から噴出する燃料粒子と混合するので、燃焼反応が早まるため、燃料粒子の火炎伝播が進み、固体燃料バーナの燃料ノズル1の出口の直後から安定に火炎24を形成し易くなる。
【0047】
相違点3は、本発明の対象とする障害物30に密接に係る部分の構成である。
【0048】
分配器42により燃料ノズル1の流路は、内周側の流路43と外周側の流路44に分割される。このうち、外周側の流路44は、その下流側が循環流16に近い。特に、分配器42は、図6に示すようにバーナ軸である燃料ノズル1内のオイルガン5に対して垂直方向から見たとき(図6のY-Y’方向)に、追加空気ノズル20の出口である噴出孔21と、障害物30が重なる位置に設けることが望ましい。このとき追加ノズル20の噴出孔21と障害物30は、外周側の流路44に位置している。
【0049】
外周側の流路44は、追加ノズル20から噴出する酸素含有気体により混合流体の酸素濃度が高くなる。このとき、分配器42により流路が区分されているため、分配器42が無い場合よりも酸素含有気体の拡散が少なく、酸素濃度が上昇する。更に障害物30により、混合流体の流れ11に乱れが生じた場合も、酸素や燃料粒子は内周側に拡散しないため、酸素濃度と燃料濃度を高く維持できる。
【0050】
このような実施例2のように構成することによっても、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、実施例2によれば、酸素濃度と燃料濃度が高いまま燃料ノズル出口まで混合流体の外周部の流れが形成されるため、循環流16と混合する際に、高い酸素濃度と燃料濃度により燃料粒子の火炎伝播が進み、固体燃料バーナの燃料ノズル出口の直後から安定に火炎24を形成し易くなる。
【実施例3】
【0051】
図7及び図8は、本発明の固体燃料バーナの実施例3を示し、歯付き(toothed)保炎器を採用した例である。
【0052】
該図に示す如く、実施例3では、燃料ノズル1の出口である外周側隔壁4の下流端に、燃料ノズル1から噴出する固体燃料とその搬送気体との流れ及び追加ノズル20から噴出する混合気体の流れ11を妨げる板形状のエッジ50が突出した歯付き(toothed)保炎器19を設けている。
【0053】
これにより、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、実施例3によれば、燃料ノズル1の出口下流側において、混合流体が拡散し、その外周部に存在する循環流16と混合流体が混合するが、このとき、エッジ50に保炎器19が設置されているので、循環流16を流れる高温のガスと混合流体が混合し、燃料粒子の周囲の温度が高くなるため、燃料粒子の火炎伝播が進み、固体燃料バーナの燃料ノズル出口の直後から安定に火炎24を形成し易くなる。
【0054】
尚、安定に火炎24を形成するため、エッジ50は、流れに対して垂直な平面を有する流路断面積を急に変化させる形状が望ましい。断面積を急に変化させることで、下流側に圧力の低い低流速部分や循環流を形成し易くなる。
【0055】
一方、燃料ノズル1内に設けた障害物30は、その下流側にも外周側隔壁4を設けることで、混合流体の流れ11は、燃料ノズル1の径方向に拡散出来ない。このため、主に周方向に拡散し、燃料ノズル1の出口外周部分は、燃料濃度分布や流速分布の周方向の不均一が小さくなるため、障害物30は、燃料ノズル1内に設けることが望ましい。また、障害物30の下流側は、滑らかに流路断面積を変化させる形状が望ましい。流路を滑らかに変化させることで、圧力の低い低流速部分や循環流が形成し難くなる。このため、燃料粒子が燃料ノズル1内に堆積し難くなるため、障害物30の下流側は、滑らかに流路断面積を変化させる形状が望ましい。流路を滑らかに変化させることで、圧力の低い低流速部分や循環流が形成し難くなる。
【実施例4】
【0056】
図9は、本発明の固体燃料バーナを用いた燃焼装置を示すものである
該図に示す実施例4では、燃焼装置(火炉)51の上下方向に二段、実施例1乃至3のいずれかで説明した固体燃料バーナ52を設置してある。燃料は、燃料ホッパ53から給炭機54を通して粉砕機55に供給され、粉砕機55で粉砕された後、燃料配管57を通じて固体燃料バーナ52に供給される。このとき、火炉51の上部の排出口60から抜き出した燃焼排ガスの一部を、給炭機54の下流側の燃焼排ガス配管56内で燃料と混合して粉砕機55に導入している。
【0057】
燃料を高温の燃焼ガスと混合すると、燃料中に含まれる水分が蒸発する。また、酸素濃度が低下するので、粉砕機55で粉砕の際に高温となっても、自然着火や爆発を抑制できる。褐炭の場合、搬送気体の酸素濃度は、6〜15%程度のことが多い。固体燃料バーナ52と、その下流側に設けたアフタエアポート59には、ブロア58から空気が供給されている。
【0058】
本実施例では、固体燃料バーナ52から燃料の完全燃焼に必要な空気量よりも少ない空気を投入し、アフタエアポート59から残りの空気を供給する二段燃焼方式を用いる。
【0059】
尚、本発明の固体燃料バーナを用いた燃焼装置は、アフタエアポート59を設けずに、固体燃料バーナ52から必要な空気をすべて投入する単段燃焼方式にも適用できる。また、固体燃料バーナ52の設置位置は、図9のように前後壁に設置するほか、片側の壁、またはコーナ部に設けることも可能である。
【0060】
更に、図9では、粉砕機55と固体燃料バーナ52の間に一時的な燃料貯蔵部を持たない場合を示すが、粉砕後の燃料貯蔵部を持たすことも可能である。更に、燃料ホッパ53を複数有し、状況に合せて、使用する燃料ホッパ53を切り替えることも可能である。
【0061】
固体燃料バーナ52として、実施例1乃至3に記載の固体燃料バーナ52を用いることで、燃料搬送ガスの酸素濃度が低い場合でも、燃料ノズル1の出口外周部分は燃料濃度分布や流速分布の周方向の不均一が小さくなる。即ち、燃料濃度の低い部分や流速の高い部分が少なくなるため、燃料粒子の反応が進み、火炎24が燃料ノズル1の直後から安定に形成することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料ノズル、2…2次ノズル、3…3次ノズル、4、17…外周側隔壁、5…オイルガン、6…火炉壁、7…伝熱管、8、9、22…ダンパ、10、51…火炉、11…混合流体の流れ、12、13…燃焼用気体の流れ、14…旋回器、15…ウインドボックス、16…循環流、18…ガイド、19…保炎器、20…追加ノズル、21…噴出孔、23…酸素含有気体の流れ、24…火炎、30…障害物、31…縮流部、40…ベンチュリ、41…濃縮器、42…分配器、43、44…流路、50…エッジ、52…固体燃料バーナ、53…燃料ホッパ、54…給炭機、55…粉砕機、56…燃料排ガス配管、57…燃料配管、58…ブロア、59…アフタエアポート、60…排出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料とその搬送気体の混合流体を噴出する燃料ノズルと、該燃料ノズルの外側に配置され酸素含有気体を噴出する少なくとも1つの燃焼用気体噴出ノズルと、前記燃料ノズルの周方向の速度成分を持つ酸素含有気体を噴出させ、該燃料ノズル内に突出させて設けられた少なくとも2つの酸素含有気体追加ノズルとを備え、前記酸素含有気体追加ノズルの少なくとも1つには、前記燃料ノズルの周方向にノズル出口を有している固体燃料バーナにおいて、
前記燃料ノズル内の前記酸素含有気体追加ノズルの下流側で、かつ、該酸素含有気体追加ノズルの周方向間に、前記燃料ノズルを流れる混合流体の流れに対して抵抗体となる障害物を設けたことを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記障害物は、少なくとも2つの前記酸素含有気体追加ノズルにより前記燃料ノズルの流路断面積が狭まる部分の下流側に設けられていることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記燃料ノズル内の前記酸素含有気体追加ノズルが少なくとも位置する部分に、該燃料ノズルの流路を内周側と外周側に分割する分配器を配置し、該分配器で分割された前記燃料ノズルの流路に前記酸素含有気体追加ノズルと前記障害物が位置することを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項4】
請求項3に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記分配器は、前記燃料ノズル内の中心部に位置するオイルガンに対して垂直方向から見たときに、前記酸素含有気体追加ノズルのノズル出口と前記障害物と重なる位置に設けられていることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の固体燃焼バーナにおいて、
前記酸素含有気体追加ノズルの上流側の前記燃料ノズル内に、該燃料ノズルの流路断面積を外周側から滑らかに縮小し拡大する形状のベンチュリと、前記燃料ノズルの流路断面積を内側から滑らかに縮小し拡大する形状の濃縮器とが設置されていることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の固体燃料バーナにおいて、
前記燃料ノズルの出口である外周側隔壁の先端に、少なくとも前記酸素含有気体追加ノズルから噴出する酸素含有気体の流れを妨げる保炎器が設置されていることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項7】
請求項6に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記保炎器は、前記燃料ノズルの出口にエッジが突出した歯付き保炎器であることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の固体燃料バーナにおいて、
前記障害物は、断面が円柱形、或いは下流側が滑らかに流路断面積が変わるひし形、又は上流側が円柱形で、下流側が滑らかに流路断面積が変わる形状であることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項9】
請求項8に記載の固体燃料バーナにおいて、
前記障害物は、その上流側が耐摩耗材、下流側が耐熱材で形成されていることを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の固体燃料バーナを複数本備えた火炉と、燃料ホッパと、給炭機と、該給炭機の下流側の燃焼排ガス配管内で燃焼装置の上部から抜き出した燃焼排ガスと混合した燃料を導入する粉砕機と、該粉砕機で粉砕された燃料を前記固体燃料バーナに供給する燃料配管と、前記固体燃料バーナに空気を供給するブロアとを備えていることを特徴とする燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255600(P2012−255600A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128888(P2011−128888)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】