説明

固形油脂様組成物

【課題】脂肪を含有する食品において、その脂肪の一部または全部の代替えとして用いうる製品の提供。
【解決手段】β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる、固形油脂様組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪を含有する食品において、その脂肪の一部または全部の代替えとして用いうる固形油脂様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は固形油脂と呼ばれることもあり、代表的なものとしては、豚脂などがあげられる。脂肪は、常温で固体という性質から、食品に独特な食感を与え、食品の満足感に大きな影響がある。一方、動脈硬化に代表されるような脂肪高含有食による健康障害の発生が増加していることから、脂肪低含有食の需要が増加し、食品業界を中心に製品の開発が行われている。
【0003】
しかしながら、前記の食感の低下などの理由から、単に脂肪を低減しただけでは満足感が低下してしまい、逆に食事量が増えたり、脂肪低減食自体が避けられたりすることが起こり得る。
【0004】
食感の問題を改善するため、例えば、ペクチンのようなゲル化剤を用いて油とのエマルジョンゲルを作りクリームや食肉に混合して油脂を含んだ食感を再現しようという試みがなされている(特許文献1)。しかしながら、このような油脂代替物は温度などに対して安定である一方、体温では溶け出さず、口溶けの点で脂肪を再現できていない。
【0005】
また、カードランと脂肪とを混合して、低カロリー食品を提供する試みが報告されている(特許文献2)。しかしながら、このようなカードランと脂肪とを混合して得られる低カロリー食品では、脂肪のような口溶けが十分に再現することが困難である。
【0006】
また、油脂と加工デンプンと、粉末状を含む食肉用品質改良剤が報告されている(特許文献3)。しかしながら、このような食肉用品質改良剤では、デンプン特有の風味・食感が残り、さらに舌触りの点でも動物性脂肪を再現できないという問題がある。
【0007】
また、食品材料としての利用を勘案すれば、脂肪代替物は、低カロリーでありかつ脂肪様の食感等を有することに加え、食品の加熱調理や冷凍保存によって容易に崩壊等が起こらないことが求められる。しかしながら、このような要望を満たす代替物は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−3767号公報
【特許文献2】特開平6−189700号公報
【特許文献3】特開2007−6724号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明らは、今般、特定の成分を組み合わせて、脂肪同様の食感を備え、かつ低カロリーの脂肪代替物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本発明は、脂肪同様の食感を備え、かつ同重量の脂肪に比べて低カロリーの固形油脂様組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる、固形油脂様組成物。
(2)前記β−1,3−グルカンがカードランである、(1)に記載の固形油脂様組成物。
(3)前記油脂の融点が40℃未満である、(1)または(2)に記載の固形油脂様組成物。
(4)増粘剤をさらに含んでなる、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の固形油脂様組成物。
(5)脂肪を含有する食品において、脂肪の一部または全部の代替えとして用いられる、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の固形油脂様組成物。
(6)β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる混合液を80℃以上に加熱することを少なくとも含んでなる、固形油脂様組成物の製造方法。
【0012】
本発明の固形油脂様組成物は、脂肪同様の食感および口溶け感を奏することができる。かかる固形油脂様組成物は、減量食の製造や食品に対する官能的価値の付与において有利に利用できる。また、本発明による固形油脂様組成物によれば、優れた加熱耐性および冷凍耐性を奏することができ、さらには、加熱時に高い歩留まり効果を奏することも可能である。かかる固形油脂様組成物は、種々の飲食品の製造において有利に利用できる。
【発明の具体的な説明】
【0013】
本発明の固形油脂様組成物は、上述の通り、β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを構成成分しており、脂肪を含有する食品において、脂肪の一部または全部の代替えとしてとして好適に使用することが可能である。
【0014】
本発明のβ−1,3−グルカンは、β−1,3−グルコシド結合を主体とする加熱凝固性多糖類であり、好ましくは微生物により産生されるものである。
β−1,3−グルカンを産生する微生物としては、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属微生物が挙げられるが、好ましくは、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株(寄託番号10C3K)[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biolog ical Chemistry)Vol.30, p.196(1966)参照]、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK−u(IFO13140)(特公昭48−32673号参照)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO13127)およびその変異株U−19(IFO13126)(特公昭48−32674号参照)である。
【0015】
また、本発明のより好ましい態様によれば、β−1,3−グルカンはカードランである。カードランは、上述のような微生物によって容易に製造することができ、食品添加物としても知られていることから、食品製造上有利に利用できる。
【0016】
また、本発明のβ−1,3−グルカンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは、固形油脂様組成物の0.5〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0017】
また、本発明の油脂は、特に限定されないが、好ましくは、融点が40℃未満である油脂、より好ましくは、5℃以上40℃未満で液体またはペーストである油脂が用いられる。好適な具体例としては、精製油や脱ロウした精製油であるサラダ油が用いられ、好ましくは、脱ロウした精製油であるサラダ油が用いられる。サラダ油の例としては、サフラワーサラダ油、大豆サラダ油、ぶどうサラダ油、ひまわりサラダ油、とうもろこしサラダ油、綿実サラダ油、ごまサラダ油、なたねサラダ油、こめサラダ油、調合サラダ油、等が挙げられる。精製油の例としては、精製サフラワー油、精製ぶどう油、精製大豆油、精製ひまわり油、精製とうもろこし油、精製綿実油、精製ごま油、精製なたね油、精製こめ油、精製落花生油、精製オリーブ油、精製パーム油、精製パーム核油、精製やし油、精製調合油が挙げられる。他の油の例としては、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、食用パームオレイン、食用パームステアリン、魚油、鯨油、肝油、調合油、香味食用油、又は、それらの混合物などが挙げられる。
【0018】
また、本発明の油脂の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、固形油脂様組成物の5〜40重量%であり、より好ましくは5〜30重量%である。
【0019】
本発明のゼラチンは、食品として利用しうる限り特に限定されず、豚、牛、羊、山羊、ウサギ等の家畜類由来であってもよいし、鶏、アヒル、ダチョウなどの家禽類であってもよいし、鹿、サル、クマ、または、鴨、魚介類などの野生生物由来や野生生物の養殖生産由来であってもよい。
【0020】
また、本発明のゼラチンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは、固形油脂様組成物の0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0021】
また、本発明の固形油脂様組成物中のβ−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンの含有量の比率は、特に限定されず、必要とされる食感等を勘案して当業者が適宜決定してよい。
【0022】
本発明の固形油脂様組成物の製造において、油脂と、ゼラチンおよびβ−1,3−グルカンの和との重量比は、好ましくは50:6〜40:30であり、より好ましくは50:10〜30:15である。
【0023】
また、ゼラチンと、β−1,3−グルカンとの重量比は、好ましくは1:5〜2:1であり、より好ましくは1:1〜2:1である。
【0024】
また、本発明の固形油脂様組成物は、後述するように、水性媒体中で、油脂、ゼラチンおよびβ−1,3−グルカンを混合し、加熱することにより製造することができる。したがって、本発明の固形油脂様組成物は、好ましくは水性媒体を含んでなる。かかる水性媒体としては水、食塩水、各種緩衝液や、水酸化ナトリウム水溶液、リン酸三ナトリウム水溶液、リン酸3カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液、または、酢酸水溶液などの酸性水溶液、またはアルコール水溶液等が挙げられるが、好ましくは水または食塩水である。
【0025】
また、本発明の水性媒体の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、固形油脂様組成物の30〜90重量%であり、より好ましくは55〜90重量%である。
【0026】
また、本発明の固形油脂様組成物の製造においては、例えば、増粘剤、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、着色料、でん粉類、甘味料、酸味料、フレーバー類、調味料等、可食性の天然または合成の食品素材を添加してもよく、その種類および含有量は、当業者によって適宜決定される。
【0027】
例えば、増粘剤としては、特に限定されず、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、タマリンド種子多糖類、コンニャク粉、ジェランガム、アルギン酸塩等が挙げられる。
これらの増粘剤は単独で用いることができるが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の固形油脂様組成物は、好ましくは、β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンさらには上記のような食品素材を含む混合液を加熱し、加熱凝固物として得ることができる。
【0029】
β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含む混合液の調製方法は、特に限定されないが、上記成分の均一な分散を勘案すれば、例えば、水性媒体中にβ−1,3−グルカンおよび油脂を分散した分散液を調製し、この分散液に対してゼラチン、および上記食品素材等をさらに添加し、混合する手法を用いることができる。
【0030】
水性媒体中にβ−1,3−グルカンおよび油脂を分散した分散液は、例えば、水性媒体および油脂の混合物にβ−1,3−グルカンを加えてホモジナイザーやカッターミキサーなどの高速撹拌機で高速撹拌する方法(高速撹拌法)、常温の水性媒体および油脂の混合物にβ−1,3−グルカンを分散させ、分散液を50℃程度になるまで加熱し、その後急冷する方法(高粘度化法)、常温の水性媒体および油脂の混合物にβ−1,3−グルカンを分散させ、分散液にアルカリを添加する方法(アルカリ膨潤/溶解法)等が挙げられるが、好ましくは高速撹拌法である。
【0031】
次に、水性媒体中にβ−1,3−グルカンおよび油脂を分散した分散液に対して、ゼラチン、および上記食品素材等を添加し、混合して、β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる混合液をえることができる。
ゼラチンおよび上記食品素材(以下、「ゼラチン等」ともいう)の添加・混合方法は特に限定されず、1種ずつ添加・混合しても、数種ずつ添加しても、すべてをほぼ同時に添加してもよい。
【0032】
本発明の固形油脂様組成物の製造方法においては、ゼラチン等を分散液に添加し、混合液を得た後、所望により混合液を脱気してもよい。混合液の脱気方法は特に限定されず、例えば、容器に充填し、公知脱気装置を用いて脱気してもよい。
【0033】
次に、本発明の固形油脂様組成物の製造方法においては、β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含む混合液を加熱する。加熱方法としては、特に限定されないが、煮沸加熱、蒸気加熱、加圧加熱、減圧加熱等が挙げられ、好ましくは蒸気加熱である。
【0034】
本発明の製造方法における加熱条件は、β−1,3−グルカンが熱不可逆性のゲルを形成する限り特に限定されず、当業者によって適宜決定される。
【0035】
本発明の製造方法における加熱温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは、80〜120℃であり、さらに好ましくは85〜100℃である。
【0036】
また、加熱時間は、好ましくは5分間以上であり、より好ましくは5〜90分間、さらに好ましくは15〜60分間である。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、上記加熱工程後、得られた凝固物をさらに冷却することが好ましい。冷却温度としては、特に限定されないが、ゼラチンの固化する温度を勘案すれば、20℃以下とすることが好ましい。
冷却方法は、特に限定されず、自然冷却等を用いてもよい。
【0038】
本発明の固形油脂様組成物は、そのまま脂肪様製品として用いることができ、植物油脂、動物油脂等の脂肪の全部または一部の代替品として食品に混ぜてもよく、食品にインジェクションしてもよく、食品の表面に塗布してもよく、液体食品やペースト食品に添加してもよい。また、高速カッターなどで微粒子化して、各種調理等に使用してもよい。したがって、本発明の好ましい態様によれば、固形油脂様組成物が添加されてなるか、またはそれを原料とする、食品が提供される。
【0039】
本発明の固形油脂様組成物の使用される対象食品としては、例えば、生鮮食肉、生鮮魚介肉、食肉ハム、ソーセージなどの食肉加工品、水産練り製品、ミートパティ、ハンバーグ、ミンチボールなどの総菜類、マヨネーズ、ドレッシング、ソースなどの調味料、アイスクリーム、ホイップドクリームなどの乳製品、スープ、焼き物、炒め物、煮物、蒸し物、和え物等の調理品、パウンドケーキ、ブラウニーなどの菓子類などの動植油脂類の使用が想定される食品が挙げられる。各飲食品の製造は、本発明の固形油脂様組成物を使用すること以外はそれぞれの飲食品の通常の製造方法に準じて製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
水69重量部に、なたねとコーンとの混合サラダ油(日清オイリオグループ(株)社)25重量部を添加し、カッタミキサーで撹拌しながら、カードラン(キリン協和フーズ(株)、以下同じ)1重量部を添加し、1分間以上撹拌し、カードランとサラダ油を十分に分散させた分散液を調製した。該分散液に、ゼラチン(新田ゼラチン(株))1.0重量部、増粘剤〔プルラン((株)林原)0.2重量部、ローカストビーンガム(キリン協和フーズ(株))0.15重量部、およびキサンタンガム(キリン協和フーズ(株))0.15重量部〕、食物繊維(オルガノフードテック(株):エンドウマメ由来)1.5重量部、食塩1.0重量部、チキンエキス(キリン協和フーズ(株))0.5重量部、香味油(ガーリックオイル)0.5重量部、を添加し、カッターミキサー(パナソニック製)を用いて3分以上撹拌(撹拌速度10500rpm)して十分に混合し、混合液を得た。該混合液を耐熱性包材に充填した後、真空シーラーで脱気し、シーリングした。シーリングした該混合液入りの包材を、設定温度95℃の蒸気加熱装置(スチームコンベクションオーブン (株)マルゼン)に投入し、30分間加熱し、包材入りゲルを得た。加熱後、該包材入りゲルを装置から取り出し、0℃以下の氷水の入った水槽へ投入し、60分以内に品温を10℃以下に冷却して試験品1を得た。
【0042】
実施例2
水83重量部に、なたねとコーンとの混合サラダ油(日清オイリオグループ(株))10重量部を添加し、カッターミキサー(パナソニック製、撹拌速度10500rpm)で撹拌しながら、カードラン2重量部を添加し、1分間以上撹拌し分散液を調製した以外は、実施例1と同様にして、試験品2を得た。
【0043】
実施例3
実施例1および2で得た試験品1および2を、マイナス40℃で急速に冷凍した後、マイナス18℃の冷凍庫に移して保管を行ない、その後1昼夜経過後に解凍し、物性を確認したところ、変化はなかった。
【0044】
実施例4
実施例1および2で得た試験品1および2を、沸騰中の湯浴に投入し10分間保持した後、5℃で冷蔵した。1昼夜後に、物性を確認したところ、変化はなかった。
【0045】
実施例5
実施例1と同様の調製方法を用いて、後述する表1に示す組成で試験品3〜6および比較品1〜3を調製した。次に、試験品3〜6および比較品1〜3について、以下の手法に従って、乳化性、ゼリー凝固性、ゲル化後の耐熱性、冷凍・解凍後の離水の有無およびゲル保持性、ゲルの口溶けに関する評価を行った。
【0046】
乳化性
乳化性は試験品または比較品の製造中の高速撹拌機(カッターミキサー)での作業の結果、乳化の進行状態を確認した。
○:乳化良好
×:乳化不良
【0047】
ゼリー凝固性
ゼリー凝固性は試験品または比較品の製造中の冷却時のゼリー化の状態を確認した。
○:ゼリー化良好
×:水部分のみ、ゼリー化
【0048】
ゲル化後の耐熱性
ゲル化後の耐熱性は、試験品または比較品を80℃まで加熱し、25℃に冷却した後、ゲルを目視で確認した。
○:分離なし
△:加熱により油が分離
×:4〜50℃で溶解状態
【0049】
冷凍・解凍後の離水の有無およびゲル保持性
冷凍・解凍後の離水の有無およびゲル保持性は、試験品または比較品をマイナス40℃で急速に冷凍した後、マイナス18℃の冷凍庫に移して保管を行ない、1昼夜経過後、自然解凍し、試験品または比較品の様子を確認した。
【0050】
離水の有無
○:離水は見られない
△:離水が少しだけ見られる
×:ゲルが壊れ、離水する
【0051】
ゲル保持性
○:ゲル保持良好
△:ゲルが壊れることはないが、乳化していないため離水
×:ゲルが壊れる
【0052】
ゲルの口溶け
ゲルの口溶けは、試験品または比較品を口含んだときの状況を訓練したパネラー4名で官能的に確認した。
○:口溶け良好、脂肪様の口溶け
×:口溶け不良
【0053】
評価結果を表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表2に示すとおり、試験品3〜6は、いずれも口溶けに関して脂肪様の性質を持ち、かつ耐熱性および耐冷凍性に優れた傾向にあった。
【0057】
実施例6
表3に記載した配合で、ハンバーグタイプのミートパティを調製した。
ミートパティの調製では、まず、実施例1および5で得た比較品1および試験品1〜6を、それぞれミートチョッパーに供して、8mmメッシュパス品を得た。該メッシュパス品をそれぞれ、原材料Aとして用い、表3に記載の他の成分と混合して、ミートパティ1〜7を得た。また、原材料Aとして精製ラードを用いたミートパティ8と、原材料Aとして6mmメッシュパス品の豚脂を用いたミートパティ9を調製し、それぞれ動物性油脂を用いたコントロールとして用いた。
【0058】
【表3】

【0059】
得られたミートパティをそれぞれ80gの小判型に成形し、280℃に設定したオーブンを用いて3分間焼成し表面加熱した。次に、75℃に設定したスチームコンベクションオーブン(マルゼン(株))を用いて15分間スチーム加熱し、焼成ミートパティを得た。
【0060】
訓練されたパネラー4名により、焼成ミートパティの食感、口溶け、その他テクスチャーについて官能検査を行った。
また、焼成前のミートパティ重量と、表面加熱またはスチーム加熱後のミートパティの重量を測定し、焼成前のミートパティ重量に対する表面加熱またはスチーム加熱後のミートパティ重量の割合を歩留まり(%)として算出した。 結果を、表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
表4に示すとおり、オーブン焼成時やスチーム加熱において、比較品1を用いたミートパティ1および精製ラードを用いたミートパティ8では、ゲルや油脂の流出が起こり、歩留まり(%)が低下した。一方、試験品1〜6を用いたミートパティでは、豚脂を用いたミートパティ9と同等またはそれ以上の高い歩留まり(%)を示した。
また、試験品1〜6を用いたミートパティーは、口溶けやジューシー感においても豚脂を用いたものと同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる、固形油脂様組成物。
【請求項2】
前記β−1,3−グルカンがカードランである、請求項1に記載の固形油脂様組成物。
【請求項3】
前記油脂の融点が40℃未満である、請求項1または2に記載の固形油脂様組成物。
【請求項4】
増粘剤をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固形油脂様組成物。
【請求項5】
脂肪を含有する食品において、脂肪の一部または全部の代替えとして用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固形油脂様組成物。
【請求項6】
β−1,3−グルカン、油脂およびゼラチンを含んでなる混合液を80℃以上に加熱することを少なくとも含んでなる、固形油脂様組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−147691(P2012−147691A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7021(P2011−7021)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(505144588)キリン協和フーズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】