説明

固形物の包装体

【課題】 内容物を容易且つ確実に取り出すことができる固形物の包装体を提供する。
【解決手段】 表面側シート体と裏面側シート体20とを周縁部において熱溶着し、内部に固形物を封入した包装体1であって、裏面側シート体20は、ハーフカットにより脆弱化した脆弱部25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物や食物などの固形物の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品などの包装形態として、SP(ストリップ)包装が従来から広く用いられている。SP包装は、錠剤やカプセル剤などの固形物を2枚の包装シートの間に挟み込んだ後、その周囲を熱溶着する包装であり、一般には包装シートがミシン目によりマトリクス状に区画されて、各区画に所定量ずつ封入される。
【0003】
SP包装による包装体は、2枚の包装シートの縁部を同時に引き裂くことにより開封することができ、内容物を取り出すことができる。このような開封作業を容易にするため、特許文献1には、SP包装体の縁部に切り欠き(切り口)を形成した構成が開示されている。
【0004】
一方、固形物の包装体として、PTP包装がある。特許文献2には、PTP包装の蓋材として、ハーフカット(切り込み)を入れることにより、さらにプレス・スルー性を付与したPTP包装が開示されている。
【特許文献1】特開平6−210802号公報
【特許文献2】特開2003−12031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、SP包装体を引き裂く作業は指先の力をある程度必要とするため、作業者によっては開封作業が困難な場合があるという問題があった。また、引き裂く方向によっては十分な大きさの開封部が得られず、内容物が取り出しにくくなるおそれもあった。また、PTP包装体にハーフカットを設けた例もあるが、SP包装体の蓋材は、PTP包装体に比べ平らでなく、皺がよるので、SP包装体の蓋材にハーフカットを設けることは困難と考えられていた。
【0006】
そこで、本発明は、内容物を容易且つ確実に取り出すことができる固形物の包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、表面側シート体と裏面側シート体とを周縁部において熱溶着し、内部に固形物を封入した包装体であって、前記裏面側シート体は、ハーフカットにより脆弱化した脆弱部を有する固形物の包装体により達成される。
【0008】
この固形物の包装体は、前記表面側シート体を介して内容物を押圧することにより前記脆弱部を破断して、内容物を取り出し可能に構成することができる。
【0009】
また、この固形物の包装体において、前記脆弱部は、複数の破断予定線に沿ったハーフカットにより形成することが好ましい。更に、前記破断予定線は、少なくとも2つが互いに交差することが好ましい。
【0010】
また、前記包装体と、前記包装体の表裏面を挟持可能な表面支持板及び裏面支持板を有する支持体とを備え、前記表面支持板及び裏面支持板は、前記脆弱部に対応する位置に、それぞれ表面側開口及び裏面側開口を有することにより、固形物の支持体付包装体を構成することができる。
【0011】
この固形物の支持体付包装体において、前記表面側開口は、前記裏面側開口よりも開口面積が大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固形物の包装体によれば、内容物を容易且つ確実に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(包装体)
図1は、本発明の一実施形態に係る固形物の包装体を示す表面図であり、図2はその裏面図である。図1及び図2に示すように、包装体1は、表面側シート体10と裏面側シート体20とを熱溶着により貼り合わせて面状に形成したSP(ストリップ)包装体であり、縦横のミシン目Mによってマトリクス状に区画されている。各区画Bは、それぞれ所定量の固形物30が収容されており、隣接する区画B,B間が熱溶着されて、内容物が密封されている。表面側シート体10及び裏面側シート体20は、いずれも内容物を収容するための窪みを実質的に有しておらず、PTP包装(プレススルーパッケージ)などのブリスター包装とは明確に区別される。
【0015】
固形物30の形状は特に限定されないが、押圧による取り出しが可能な程度の大きさや剛性を有することが好ましく、例えば、食品、医薬品等を挙げることができ、医薬品としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、坐剤などを挙げることができる。固形物30は、各区画Bに1個または複数個を収容することができる。
【0016】
図3は、図1に示す包装体のA−A断面図であり、単一の区画Bのみを図示している。表面側シート体10は、SP包装の材料としてアルミニウム箔のような既存のものが使用可能であるが、防湿性(ガスバリア性)を有する公知の各種フィルムを好ましく用いることができ、各種フィルムの場合、視認性及び使用性の観点から透明であることが好ましい。各種フィルムとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロンなどの透明な基材フィルムに、シリカやアルミナなどの薄膜を蒸着した透明蒸着フィルムを好ましく例示することができる。表面側シート体10の材質としては、その他に、複数種の合成樹脂フィルム(例えば、セロハン/ポリエチレン)を共押出などにより積層した複合フィルムや、アルミニウムフィルムをポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムで挟持したアルミ複合フィルムなどを挙げることができる。
【0017】
また、裏面側シート体20は、図4に示すように、外方側から順に、ポリエチレンテレフタレートからなる表面層21と、低密度ポリエチレン(LDPE)からなる接着層22と、軟質のアルミニウム箔からなる防湿層23と、低密度ポリエチレン(LDPE)からなるヒートシール層24とが積層されて構成されている。表面層21、接着層22、防湿層23及びヒートシール層24の上記材料は単なる例示であり、公知のものを適宜使用可能である。また、防湿性を特に有しない場合には、表面層21にヒートシール層24が直接積層されたものを使用することもできる。
【0018】
表面層21には、厚み方向の中央付近まで到達する切り込みが多数形成されており、裏面側シート体20は、このようなハーフカットHにより図面を貫通する方向に破断予定線26が形成され、これら破断予定線26の集合により、脆弱化された脆弱部25を有している。本実施形態においては、図2に示すように、裏面側シート体20の中央部に脆弱部25が形成されており、この脆弱部25のハーフカットは、図面の左右方向に延びる互いに平行な複数の破断予定線26に沿って断続的に形成されている。脆弱部25は、裏面側シート体20の全体に形成されていてもよい。
【0019】
裏面側シート体20に対するハーフカットの形成は、公知の各種方法を適用可能であり、例えば、切断刃を有するダイカットロールとアンビルロールとの間に裏面側シート体20を供給して外面側に切断刃を押し当てる方法や、裏面側シート体20の外面側にレーザ光を照射する方法を挙げることができる。
【0020】
以上の構成を備える固形物の包装体1によれば、表面側シート体10を介して内容物を親指などで押圧することにより、裏面側シート体20の脆弱部25を複数の破断予定線に沿って破断することができ、内容物を取り出すのに十分な破断開口を形成することができる。したがって、従来のように、包装体を引き裂く必要がなく、内容物を容易且つ確実に取り出すことができる。
【0021】
脆弱部25を構成するハーフカットは、本実施形態においては、複数の破断予定線に沿って形成しているが、十分な破断長さが得られる場合には、単一の破断予定線に沿って形成されていてもよい。また、破断予定線に沿ったハーフカットの形成は、必ずしも断続的である必要はなく、連続的であってもよい。破断予定線の形状は、本実施形態においては破断及び内容物の取り出しが容易となるように直線状としているが、曲線状であってもよい。
【0022】
また、ハーフカットの切り込み深さは、本実施形態においては表面層21の厚みの半分程度としているが、表面層21を貫通するように切り込みを入れて、表面層21の厚みと同じ深さを有するハーフカットを形成してもよい。ハーフカットの切り込み深さの一例を挙げると、表面層21の厚みが12μmである場合に、6〜12μmとすることができる。更に、裏面側シート体20の破断が中心から周縁に拡がるように、中心部の切り込み深さを周縁部の切り込み深さよりも大きくしてもよい。
【0023】
また、図5に示すように、複数の破断予定線261、262を互いに交差するように形成することで、裏面側シート体20の破断が破断予定線261、262に沿って複数の方向に生じ、十分な大きさの破断開口を容易に得ることができる。この構成においては、少なくとも2つの破断予定線が交差していればよく、交差する破断予定線の本数は特に限定されるものではない。また、破断予定線261,262の交差角度は、本実施形態のように直交していることが好ましいが、直交以外であってもよい。
【0024】
(支持体付き包装体)
図6は、本発明一実施形態に係る固形物の支持体付包装体を示す表面図であり、図7はその裏面図である。本実施形態の支持体付包装体2は、図1及び図2に示す包装体1を備えると共に、この袋状体を挟持する支持体40を備えるものである。したがって、上述した包装体1の変形例は、本実施形態の支持体付包装体においても適用可能である。以下、包装体1の構成については、図1及び図2と同様の構成部分に同一の符号を付して詳細な説明を省略し、支持体40の構成を中心に説明する。
【0025】
図6及び図7に示すように、支持体40は、表面支持板41及び裏面支持板42を備えており、包装体1の表面側シート体10が表面支持板41の内面に接し、裏面側シート体20が裏面支持板42の内面に接するように、包装体1を挟持する。表面支持板41及び裏面支持板42は、それぞれ表面側開口43及び裏面側開口44を有している。
【0026】
表面側開口43及び裏面側開口44は、包装体1にマトリクス状に形成された各区画Bに対応して複数形成されており、包装体1の脆弱部25が裏面側開口44から露出するように、脆弱部25に対応する位置に形成されている。表面側開口43及び裏面側開口44の形状は、いずれも円形状であることが好ましいが、楕円形状、矩形状、多角形状など他の形状であってもよい。
【0027】
図8は、支持体40の展開図である。支持体40は、厚紙、ダンボール紙、金属薄板などの剛性を有する平板状部材を折り曲げて形成することができ、表面支持板41及び裏面支持板42の縁部同士をホットメルトによる接着、或いは両面粘着テープ48,49で貼り合わせることにより、包装体1を挟持することができる。また、厚紙等にヒートシール層を設け、接着することもできる。支持体40は、このような構成以外に、例えば可撓性樹脂の射出成形により形成されたスリット状の開口部を有する筒状体とすることができ、前記開口部から挿入された包装体1を挟持できるように構成してもよい。
【0028】
裏面支持板42には、カバー板45が連接されており、カバー板45を折り曲げて先端の差込片46を表面支持板41の差込口47に差し込むことにより、包装体1の表面側シート体10を覆うことができる。尚、カバー板45は付加的な構成要素であり、図6及び図7においては、カバー板45の図示を省略している。
【0029】
以上の構成を備える固形物の支持体付包装体2によれば、包装体1が支持体40の表面支持板41及び裏面支持板42により挟持されるので、表面側開口43を介して包装体1の表面側を押圧すると、包装体1の裏面側は、裏面側開口44の周縁に接する部分が支持された状態で、裏面側開口44から露出する部分が突出する。したがって、包装体1の表面側に作用させる押圧力を、裏面側の破断力として効率よく伝達することができ、内容物の取り出しをより容易にすることができる。また、包装体1が視認可能に露出する部分は、支持体40の表面側開口43及び裏面側開口44のみであるため、使用者に対して押圧による開封を自然に促すことができる。
【0030】
表面側開口43及び裏面側開口44のそれぞれの大きさは、特に限定されるものではないが、表面側開口43の開口面積を裏面側開口44の開口面積よりも大きくすることが好ましく、これによって、包装体1の裏面側に対して押圧力を集中的に作用させることが可能になり、僅かな押圧力で包装体1を破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る固形物の包装体を示す表面図である。
【図2】図1に示す包装体の裏面図である。
【図3】図1に示す包装体のA−A断面図である。
【図4】図1に示す包装体の要部断面図である。
【図5】図1に示す包装体の変形例を示す裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る固形物の支持体付包装体を示す表面図である。
【図7】図6に示す支持体付包装体の裏面図である。
【図8】図6に示す支持体付包装体の展開図である。
【符号の説明】
【0032】
1 包装体
2 支持体付包装体
10 表面側シート体
20 裏面側シート体
21 表面層
22 接着層
23 防湿層
24 ヒートシール層
25 脆弱部
26 破断予定線
H ハーフカット
30 固形物
40 支持体
41 表面支持板
42 裏面支持板
43 表面側開口
44 裏面側開口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側シート体と裏面側シート体とを周縁部において熱溶着し、内部に固形物を封入した包装体であって、
前記裏面側シート体は、ハーフカットにより脆弱化した脆弱部を有する固形物の包装体。
【請求項2】
前記表面側シート体を介して内容物を押圧することにより前記脆弱部を破断して、内容物を取り出し可能に構成されている請求項1記載の固形物の包装体。
【請求項3】
前記脆弱部は、複数の破断予定線に沿ったハーフカットにより形成してなる請求項1または2に記載の固形物の包装体。
【請求項4】
前記破断予定線は、少なくとも2つが互いに交差する請求項3に記載の固形物の包装体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の包装体と、
前記包装体の表裏面を挟持可能な表面支持板及び裏面支持板を有する支持体とを備え、
前記表面支持板及び裏面支持板は、前記脆弱部に対応する位置に、それぞれ表面側開口及び裏面側開口を有する固形物の支持体付包装体。
【請求項6】
前記表面側開口は、前記裏面側開口よりも開口面積が大きい請求項5に記載の固形物の支持体付包装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−18289(P2010−18289A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178224(P2008−178224)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】